説明

コーティングされた無機酸化物粒子の層およびガス選択性材料のオーバー層を有する基体を含んでいるガス分離膜、ならびにその製造および使用

ガス分離膜、および金属コーティングされた無機酸化物粒子の層で処理された多孔質基体を含み、ならびに該金属コーティングされた無機酸化物粒子の層がガス選択性材料のオーバー層でコーティングされている、該ガス分離膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素透過性材料のオーバー層で覆われた貴金属卵殻触媒の層が載っている多孔質基体を含むガス分離膜、このガス分離膜の製造、およびこれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長年、ガス混合物からの特定ガスの選択的分離のための、改良された新しい複合ガス分離膜を開発しようとする努力が継続されてきた。例えば多孔質支持体材料上の薄い貴金属コーティングからなる水素透過性複合金属膜は、水素含有気体ストリームからの水素の分離において有用であることが知られている。しかしながらこれらの型の水素分離膜は、高温水素分離用途に用いられる時、性能が不安定になる傾向がある。この安定性の欠如は、これが高温用途において用いられる時、貴金属コーティング層とこの膜の透過性ベース金属との間の金属間拡散によって引き起こされると考えられる。透過性ベース金属内から貴金属コーティング層中への鉄および他の元素の拡散は、貴金属コーティング層の選択的透過性の減少を引き起こす。水素分離膜に関連するこの問題および他の問題を解決するために、金属拡散バリヤーとして作用するための、貴金属層と多孔質支持体材料との間に配置された中間層を有する複合ガス分離膜を開発するための努力がなされてきた。
【0003】
従来技術の複合ガス分離モジュールの一例は、US2006/0016332によって教示されたものであり、この文献は、予め活性化された粉末の中間層、および多孔質基体上に付着された中間層全体に均一に分配されたバインダー金属の中間層であって、この上に濃密なガス選択性膜オーバー層が載っている中間層を有するモジュールを開示している。予め活性化された粉末は、金属、金属酸化物、セラミック、またはゼオライト粉末であってもよく、これは例えば水性活性化溶液を用いて水素選択性金属をこの粉末に播種することにより、この粉末の表面上に金属核、例えばパラジウム核を付着させることによって表面活性化される。この公報は、表面活性化が、まず水性塩化第一錫(SnCl)増感溶液で粉末を増感させ、次いで水性塩化パラジウム(PdCl)活性化溶液でこれを活性化することによって行なわれてもよいことを教示している。この公報は、表面活性化の他の方法をまったく教示していない。
【0004】
US2006/0016332は、このガス分離モジュールの製造における卵殻触媒中間層の使用を開示していない。さらに、US2006/0016332によって教示されているような水性塩化第一錫増感溶液を用いることによって調製された表面活性化粉末の使用は、表面活性化粉末上に望ましくない量の錫を残す傾向があることが、本発明者らによって確認されている。パラジウムフィルム中の錫汚染の望ましくない効果は、Paglieriらの論文「A New Preparation Technique for Pd/Alumina Membranes with Enhanced High−Temperature Stability」(Ind.Eng.Chem.Res.1999,38,1925−1936)において注目されている。この文献は、錫の存在が、高温ガス分離膜安定性に対して悪影響をもたらすことがあると記載している。増感方法のもう1つの欠点は、これが水性塩化第一錫溶液を利用しているということである。これは、この処分前に追加処理を必要とする水性廃棄物である。
【0005】
US2006/0016332はさらに、機械的安定性を付与する目的で、このガス分離モジュールの中間層におけるバインダー金属の使用および適用の必要性も示唆している。このバインダー金属の使用の排除は、この製造における少なくとも1工程を排除することによって、複合ガス分離モジュールのより低い製造コストを提供することができ、同様にこれは、この製造において用いられることが要求される金属の量を減少させることによって、複合ガス分離モジュールのコストを低下させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0016332号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Paglieriら、「A New Preparation Technique for Pd/Alumina Membranes with Enhanced High−Temperature Stability」(Ind.Eng.Chem.Res.1999,38,1925−1936)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、高温条件下に水素含有ガスストリームからの水素の選択的分離において有用な複合ガス分離膜を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0009】
複合ガス分離膜の改良製造方法を提供することが、本発明のまた別の目的である。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、水素含有ガスストリームから水素を選択的に分離する方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、ガス分離膜の調製における卵殻触媒の新規利用である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って本発明の1つの態様は、ガス分離膜であって、貴金属卵殻触媒の層で処理された多孔質基体を含み、上記層がガス選択性材料のオーバー層でコーティングされている膜である。
【0013】
本発明のもう1つの態様は、ガス分離膜の製造方法であって、多孔質基体の表面へ貴金属卵殻触媒の層を適用し、これによって、表面処理された多孔質基体を供給する工程;および上記表面処理された多孔質基体を、ガス選択性材料のオーバー層でコーティングし、これによって、上記ガス分離膜としての使用に適した、コーティングされた表面処理多孔質基体を供給する工程を含む方法である。
【0014】
本発明のさらにもう1つの態様は、水素含有ガスストリームから水素を分離する方法であって、貴金属卵殻触媒の層で処理された多孔質基体を含み、上記層がガス選択性材料のオーバー層でコーティングされているガス分離膜上に上記水素含有ガスストリームを、上記水素含有ガスストリームからの水素が上記ガス分離膜を選択的に通過するような温度および圧力条件下で通過させる工程を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のガス分離膜の製造において、多孔質基体の表面へ適用される貴金属卵殻触媒の特徴を描いている。
【図2】図1に描かれている貴金属卵殻触媒が製造され得る1つの適切な方法を示す、ブロック図を表わしている。
【図3】本発明のガス分離膜の1つの実施形態の横断面図を表わしており、これは、図1に描かれているものと同様であり、およびガス選択性水素透過性材料のオーバー層がこの層の上に載っている貴金属卵殻触媒の層を上に配置している多孔質基体を示している。
【図4】ガス混合物からのガス成分の選択的分離方法において用いられる、本発明のガス分離膜の横断面図を描いている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のガス分離膜は、貴金属卵殻触媒の層で処理された多孔質基体を含んでいる。この貴金属卵殻触媒の層は、多孔質基体とガス選択性材料のオーバー層との間に中間層としてサンドイッチ状に挟まれ、コーティングされた表面処理多孔質基体を供給し、これはガス分離膜として用いることができる。貴金属卵殻触媒の層の中間層としての使用は、本発明のガス分離膜の特に独特な特徴であり、これは、従来技術の複合ガス分離膜系またはモジュールでは見られなかった利点を提供する。
【0017】
本発明のガス分離膜は、多孔質金属材料から製造された多孔質基体の表面へ、貴金属卵殻触媒の層を適用し、これによって、表面処理された多孔質基体を供給することによって製造される。次いでこの表面処理された多孔質基体は、水素透過性ガス選択性材料のオーバー層でコーティングされ、これによって、ガス分離特性を有する、コーティングされた表面処理多孔質基体を供給する。
【0018】
本発明の多孔質基体は、貴金属卵殻触媒の層およびガス選択性材料のオーバー層のための支持体として適切であり、および水素によって透過可能であるいずれの多孔質金属材料を含んでいてもよい。この多孔質基体は、いずれの形状または幾何学形状を有していてもよい。ただしこれは、貴金属卵殻触媒の層の適用、およびガス選択性材料のコーティングの付着を可能にする表面を有するという条件がある。このような形状は、一緒になってシート厚さを画定する下面および上面を有する多孔質金属材料の平面もしくは曲線のシートを包含し得る。またはこの形状は、管状、例えば長方形、正方形および円管形状であってもよく、これらは、一緒になって壁厚を画定する内側表面および外側表面を有し、この管形状の内側表面は管状導管を画定する。
【0019】
多孔質金属材料は、当業者に公知の材料のいずれから選択されてもよく、これは、ステンレス鋼、例えばステンレス鋼の301、304、305、316、317および321シリーズ、HASTELLOY(登録商標)合金、例えばHASTELLOY(登録商標)B−2、C−4、C−22、C−276、G−30、Xなど、およびINCONEL(登録商標)合金、例えばINCONEL(登録商標)合金600、625、690および718を包含するが、これらに限定されるわけではない。この多孔質金属材料はこのようにして、水素透過性であり、および鉄およびクロムを含む合金を含んでいてもよい。この多孔質金属材料はさらに、ニッケル、マンガン、モリブデンおよびこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択された追加の合金金属を含んでいてもよい。
【0020】
多孔質金属材料としての使用に適した1つの特に望ましい合金は、ニッケルを合金の総重量の、上方は約70重量%までの範囲内の量で、およびクロムを合金の総重量の10から35重量%の範囲内の量で含んでいてもよい。多孔質金属材料としての使用に適した別の合金は、30から70重量%の範囲内のニッケル、12から35重量%の範囲内のクロム、および5から30重量%の範囲内のモリブデンを含んでおり、これらの重量パーセントは、合金の総重量を基準にしている。Inconel合金が、他の合金よりも好ましい。
【0021】
厚さ(例えば上に記載されているような壁厚もしくはシート厚さ)、多孔度、および多孔質金属基体の細孔の細孔サイズ分布は、所望の特性を有し、および本発明のガス分離膜の製造において要求されるような本発明のガス分離膜を供給するために選択された多孔質基体の特性である。多孔質基体の厚さが増加するにつれて、これが水素分離用途に用いられる時、水素フラックスは減少する傾向があると理解されている。操作条件、例えば圧力、温度、および流体ストリーム組成もまた、水素フラックスに影響を与えることがある。しかしながらいずれにしても、全体を通して高いガスフラックスを提供するために、合理的に小さい厚さを有する多孔質基体を用いることが望ましい。下で考察されている典型的な用途のための多孔質基体の厚さは、約0.1ミリメートル(mm)から約25mmの範囲内にあってもよいが、好ましくはこの厚さは、1mmから15mm、より好ましくは2mmから12.5mm、最も好ましくは3mmから10mmの範囲内にある。
【0022】
この多孔質金属基体の多孔度は、0.01から1.0の範囲内にあってもよい。多孔度という用語は本明細書において、この多孔質金属基体材料の非固体容積対総容積(即ち非固体および固体)の割合として規定される。より典型的な多孔度は、0.05から0.8の範囲内にあり、さらに0.1から0.6でさえある。
【0023】
この多孔質金属基体の細孔の細孔サイズ分布は様々であってもよく、この多孔質金属基体材料の細孔の細孔直径の中央値は、約0.1μmから約50μmの範囲内に典型的にはある。より典型的には、この多孔質金属基体材料の細孔の細孔直径の中央値は、0.1μmから25μm、最も典型的には0.1μmから15μmの範囲内にある。
【0024】
貴金属卵殻触媒が、多孔質基体とガス分離膜のガス選択性材料のオーバー層との間の層、または中間層として用いられることが、本発明の特に重要な態様である。本明細書において用いられているような「貴金属卵殻触媒」という用語は、主として無機酸化物粒子の外側表面上に含有されているが、無機酸化物粒子全体に分配されていない金属の金属層でコーティングされている無機酸化物材料を含んでいる粒子を意味する。金属層の金属(金属コーティング)は、高温においてでさえ、酸化への顕著な抵抗性を有する幾つかの金属化学元素のいずれをも包含し得る貴金属の群から選択されてもよい。この群は、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金および金の元素(即ち元素周期表の第二および第三遷移系列の第VIIA族、第VIII族および第IB族の金属)を包含し得る。
【0025】
貴金属卵殻触媒の上記使用は、これが、時間量、および本発明のガス分離膜の製造において発生する廃棄物の量を減少させるという点で特に有益である。貴金属卵殻触媒の使用は、他の利点も同様に提供する。例えば本発明のガス分離膜の製造における貴金属の効率的な利用を可能にする。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、貴金属卵殻触媒は、小さな無機酸化物粒子を、貴金属もしくは貴金属化合物でスプレーコーティングもしくは噴霧乾燥し、次いでこのスプレーコーティングされた無機酸化物粒子を減少させ、本発明のガス分離膜の製造における使用に適した貴金属コーティングされた無機酸化物粒子を生じさせることによって製造される。
【0027】
貴金属卵殻触媒の噴霧乾燥された粒子は、本明細書に記載された噴霧乾燥もしくはコーティング技術によって、または論文「The Distribution of Active Ingredients in Supported Catalysts Prepared by Impregnation」(Catalyst Reviews Science and Engineering,Volume27,pages 207−340(1985))に記載されているような方法によって製造されてもよい。この論文は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0028】
スプレーコーティングもしくは噴霧乾燥は、水溶液が粒子全体に浸透する前に水溶液を迅速に乾燥させ、このようにして結果として粒子の外側表面だけが金属塩でコーティングされる噴霧乾燥条件下に、無機酸化物材料の粒子上に金属層を形成するために選択された特定金属の塩の水溶液をスプレーすることによって実施されてもよい。
【0029】
スプレー工程を実施することができる1つの手段は、金属塩の水溶液中に含有された無機酸化物材料の粒子のスラリーが、高温の乾燥ガス、例えば空気、酸素、窒素、または二酸化炭素が通過する容器中に噴霧され、スプレーして入れられる噴霧乾燥条件下にある。これらの噴霧乾燥条件は、噴霧されたスラリーが迅速に乾燥し、これによって、粒子の外側表面上に金属塩残渣を残すようなものである。高温の乾燥ガスは、50℃(122°F)から500℃(932°F)の範囲内にある乾燥温度であってもよく、噴霧乾燥容器は、1気圧から10気圧の範囲内の乾燥圧力で操作されてもよい。
【0030】
スプレーコーティングされた無機酸化物粒子は、金属塩の金属をこの元素形態へ還元し、これによって、本発明の金属コーティングされた無機酸化物粒子を供給するのに適した、当業者に公知のいずれかの方法によってその後処理される。1つの好ましい方法は、金属がこの元素形態へ還元されるような水素処理条件下に、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子を水素で処理する方法である。この処理は、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子と水素雰囲気とを、50℃(122°F)から500℃(932°F)の範囲内にある水素処理温度、および1気圧から10気圧の範囲内の水素処理圧力で接触させ、これによって、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子の金属を元素形態に還元し、金属コーティングされた無機酸化物粒子を供給することを含んでいてもよい。
【0031】
金属の湿潤還元は用いないことが好ましいが、湿潤還元を、金属コーティングされた無機酸化物粒子が本明細書に記載されているような物理的性質を有するように利用することができるならば、湿潤還元方法は、金属の還元における使用の1つの選択肢であり得る。しかしながらスプレーコーティングされた無機酸化物粒子の使用の幾つかある利点のうちの1つは、これらが、金属または元素形態へのこの金属コーティングを還元させるための水素処理を受け易く、このようにして金属の湿潤還元の必要性を排除し得ることである。
【0032】
潜在的湿潤還元剤は、蟻酸ナトリウム、蟻酸、ヒドラジン、アルカリ金属ホウ化水素、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸およびデキストロースを包含する。
【0033】
本発明の貴金属卵殻触媒の特に有益な特徴は、これが調製されるかまたは製造される方法によって、この金属層が、貴金属卵殻触媒の特性、またはこのような貴金属卵殻触媒を用いて製造されるガス分離膜の特性に実質的に影響を及ぼすことがある、望ましくない金属成分の実質的な不存在を有するということである。
【0034】
無機酸化物粒子の金属層に好ましいコーティング金属は、白金、パラジウム、金、銀およびこれらの組み合わせからなる金属群から選択された金属であり、このようにして、この金属層は、白金、パラジウム、金、銀およびこれらの組み合わせからなる金属群から選択された金属を含んでおり、さらにこの金属層は、ガス分離膜の性能に対して望ましくない影響を有し得る他の金属成分、例えば鉄もしくは錫の実質的不存在を有してもよい。このようにしてこの金属層はまた、白金、パラジウム、金、銀およびこれらの組み合わせからなる金属群から選択された金属から本質的になっていてもよい。これらの金属のうち好ましいのは、パラジウム、銀、金およびパラジウムと銀もしくは金との組み合わせである。
【0035】
金属コーティングされた無機酸化物粒子の無機酸化物粒子をコーティングするための金属の塩の水溶液の使用は、全体の含浸とは対照的に無機酸化物粒子の表面コーティングを可能にし、および金属コーティングされた無機酸化物粒子の金属層中に含有された望ましくない金属成分の量の制御を可能にする。同様に、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子の水素処理の使用は、この中の金属のこの元素形態への還元、または1以上の金属が適用されるならば合金、および他の還元方法が用いられる場合よりも高い純度を有する金属層の形成を提供する。
【0036】
望ましくない湿潤還元方法の一例は、US2006/0016332に開示されており、この文献は、予め活性化された粉末を製造するための粉末の活性化に用いられているパラジウムを還元するための塩化第一錫の使用を教示している。この方法は、本発明にとって望ましい金属還元方法ではないが、その理由はこれが、金属コーティングされた無機酸化物粒子の金属層中に少なくとも微量の望ましくない錫を残す傾向があるからである。この金属層は好ましくは錫の実質的な不存在、より好ましくは錫のかなり大きい不存在を含む。金属コーティング中の錫の存在は、多孔質基体の表面へのガス選択性材料オーバー層の接着と関連した問題をもたらすことがある。
【0037】
無機酸化物粒子をコーティングするために用いられる水溶液は一般に、水中に溶解された水溶性金属塩である。パラジウム、白金、金、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、ニオブおよび銀の金属塩を用いることができる。この水溶液は、1つまたはこれ以上の金属塩を含んでいてもよく、従って例えばこの水溶液は、可能性のある金属塩の中でも特に、水中に溶解されたパラジウム塩のみを含んでいてもよく、またはこれは、水中に溶解されたパラジウム塩および銀塩の両方を含んでいてもよい。可能性のある適切なパラジウム塩の例は、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウムおよびパラジウムアミン錯体を包含する。可能性のある白金塩は、塩化白金、酢酸白金および白金アミン錯体を包含する。可能性のある銀塩は、硝酸銀、酢酸銀および過塩素酸銀を包含する。
【0038】
金属コーティングされた無機酸化物粒子の無機酸化物粒子は、好ましくは無機酸化物材料を含んでいる小さな粒子である。可能性のある適切な無機酸化物材料の例は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリアおよびアルミノシリケートを包含するが、これらに限定されるわけではない。無機酸化物粒子の好ましい無機酸化物材料は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、アルミノシリケートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。最も好ましい無機酸化物材料は、アルミナである。
【0039】
本発明の無機酸化物粒子は、これらもしくはこれらの粒子の少なくとも一部分が、多孔質金属基体材料の細孔の幾つかの中に少なくとも一部がはめ込まれ得るような粒子サイズを有することになっており、このようにしてこれらは一般に、約50マイクロメートル(μm)未満の最大寸法を有する。無機酸化物粒子の粒子サイズ(即ちこの粒子の最大寸法)はまた一般に、本発明のガス分離膜の調製において利用される多孔質基体の細孔の細孔サイズ分布に応じ、典型的には粒子サイズ中央値は、0.01μmから50μmの範囲内にある。より具体的には粒子サイズ中央値は、0.1μmから15μmの範囲内にある。無機酸化物粒子の粒子サイズ中央値は、0.2μmから3μmの範囲内にあるのが好ましい。
【0040】
無機酸化物粒子上にコーティングされ、および金属層中にある金属の量が、金属コーティングされた無機酸化物粒子の総重量に対して少量であることが、本発明のさらに1つの重要な特徴である。一般に金属層の金属は、金属コーティングされた無機酸化物粒子の総重量の5重量%未満の量である。このようにして、金属コーティングされた無機酸化物粒子の金属含量は、この金属コーティングされた無機酸化物粒子の総重量の0.01から5重量%の範囲内の量である。好ましくはこの金属コーティングされた無機酸化物粒子の金属含量は、0.01から2重量%、最も好ましくは0.01から0.1重量%の範囲内の量である。
【0041】
本明細書の他のところで詳細に考察されているように、これらの無機酸化物粒子が、無機酸化物粒子の残りの部分全体に透過する金属をともなわずに、これらの外側表面上にコーティングされた金属層を有することが、本発明の1つの重要な態様である。このようにして一般に金属層は、0.01μmから2.5μm、好ましくは0.05μmから2μm、最も好ましくは0.1μmから1μmの範囲内の金属コーティングされた無機酸化物粒子中の深さもしくは厚さを有する。無機酸化物粒子の外側表面上にコーティングされ、これによって、貴金属卵殻触媒を供給する金属層の深さは、無機酸化物粒子のサイズに応じて様々である。例えば約50μmのサイズを有する無機酸化物粒子は、約0.5μmから約2.5μmの範囲内の金属層コーティング厚さを典型的には有するが、一方、約1μmのサイズを有する無機酸化物粒子は、約0.1μmから0.2μmの範囲内の金属層コーティング厚さを典型的には有する。このようにして金属層コーティングの厚さは、無機酸化物粒子のサイズの上方は約20パーセント(%)までの範囲内、より具体的にはこの粒子サイズの0.1%から18%、最も具体的には0.2%から15%の範囲内にあってもよい。
【0042】
本発明のガス分離膜の製造において、貴金属卵殻触媒の層は、粉末を多孔質表面へ適用して、表面処理された多孔質基体を供給するための、当業者に公知のいずれかの適切な方法によって、多孔質基体の表面上に適用もしくは付着される。例えば金属コーティングされた無機酸化物粒子は、ガスでの輸送によって、または金属コーティングされた無機酸化物粒子のスラリーもしくは懸濁液の適用によって、または多孔質基体の表面上への金属コーティングされた無機酸化物粒子の粉末の押し付けもしくは摩擦によって、多孔質基体の表面へ適用されてもよい。
【0043】
多孔質基体の表面へ適用される金属コーティングされた無機酸化物粒子の量は、この細孔を覆うようなものであり、このようにしてこれは、0.01μm超、一般に0.01μmから25μmの範囲内の層厚さを有する、金属コーティングされた無機酸化物粒子の層を供給するが、この層厚さは、0.1μmから20μm、最も好ましくは2μmから3μmの範囲内にあることが好ましい。
【0044】
例えば多孔質基体としての使用に利用可能な比較的大きな細孔サイズの細孔を有することを包む、広い範囲の細孔構造特徴を有する多様な多孔質金属材料が存在することが認められている。例えば多孔質金属材料の細孔が、比較的大きな細孔サイズの細孔を有する時、非コーティング無機酸化物粒子のこの当初層および多孔質基体の表面の上に、金属コーティングされた無機酸化物粒子の層を適用する前に、金属コーティングされていない無機酸化物粒子(非コーティング無機酸化物粒子)の当初層を多孔質基体の表面上に付着させることが有益になり得る。非コーティング無機酸化物粒子のこの当初層は、多孔質金属基体の大きな細孔の少なくとも一部分を覆うという利点を与え、従って小さな粒子は、大きな細孔を充填せず、多孔質支持体のフラックスを有意に減少させる。
【0045】
金属コーティングされた無機酸化物粒子の層が多孔質基体の表面へ適用され、これによって、表面処理された多孔質基体が供給されると、次いでこの表面処理された多孔質基体は、ガス選択性材料のオーバー層でコーティングされ、これによって、ガス分離特性を有する、コーティングされた表面処理多孔質基体を供給する。
【0046】
ガス選択性材料は、本明細書においてこの用語が用いられているように、ガスへ選択的に透過性がある材料であり、このようにして、このような材料のオーバー層は、選択されたガスの通過を選択的に可能にするが、一方で、他のガスの通過を妨げるように機能する。可能性のあるガス選択性金属は、パラジウム、白金、金、銀、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、ニオブおよびこれらの2つまたはこれ以上の合金を包含する。本発明の好ましい実施形態において、ガス選択性材料は、合金を含む水素選択性金属、例えば白金、パラジウム、金、銀およびこれらの組み合わせである。好ましいガス選択性材料は、パラジウム、銀およびパラジウムと銀との合金である。
【0047】
ガス選択性材料は、いずれかの適切な手段により、または当業者に公知の方法により、表面処理された多孔質基体上に付着される。可能性のある付着方法は、無電解めっき、熱蒸着、化学蒸着、電気めっき、噴霧蒸着、スパッターコーティング、e−ビーム蒸発、イオンビーム蒸発および噴霧熱分解を包含する。好ましい付着方法は、無電解めっきである。表面処理された多孔質基体上へのガス選択性材料の付着に適した無電解めっき方法の一例は、US2006/0016332に開示されているものである。この文献の開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0048】
ガス選択性材料のオーバー層コーティングの厚さは、大きなガスフラックスを供給し、一方で、ある幾つかのガス分子の通過を選択的に可能にするが、他のものの通過を妨げる機能を依然として与えるように、実行可能な程度に小さいことが望ましい。典型的にはオーバー層の厚さは50μm未満であるが、好ましくはオーバー層の厚さは20μm未満であり、より好ましくは10μm未満であり、最も好ましくは8μm未満である。オーバー層の厚さの典型的な下限は1μm超であり、このようにしてオーバー層の厚さは、1μmから50μm、または1μmから20μmの範囲内にあってもよい。オーバー層の厚さの好ましい範囲は、1μmから10μm、最も好ましくは1μmから8μmである。
【0049】
本発明のガス分離膜は、ガス混合物からの厳選ガスの選択的分離において用いられてもよい。このガス分離膜は、特に高温用途において、水素含有ガスストリームからの水素の分離において特に有用である。本発明のガス分離膜を用いることができる高温用途の一例は、一酸化炭素および水素を生じるための、炭化水素例えばメタンの蒸気リホーミングにおいて、次いで二酸化炭素および水素を生じるためのいわゆる水−ガスシフト反応における、この生じた一酸化炭素と水との反応においてである。これらの接触反応は、平衡型反応であり、本発明のガス分離膜は、水素収率を高めるための平衡条件を向上させるためにこれらの反応を実施しつつ、生じた水素の同時分離において有用になり得る。これらの反応が同時に実施される反応条件は、400℃から600℃の範囲内の反応温度、および1から30バールの範囲内の反応圧力を包含し得る。
【0050】
既に注目されているように、本発明のガス分離膜は、他のガス、例えば二酸化炭素、水、メタン、またはこれらの混合物からなるガス群から選択されたガスを含んでいるガスストリームからの水素の分離に関わる多様な用途において用いることができる。このような用途において、温度条件は、上方は600℃までの範囲内、例えば100℃から600℃の範囲内にあってもよく、圧力条件は、上方は50バールまで、例えば1から40バールの範囲内にあってもよい。
【0051】
図面は、本発明のある幾つかの態様を例証するのを助けるために示されており、図1を参照すると、本発明の貴金属卵殻触媒10の横断面図の描写が提示されている。貴金属卵殻触媒10は、形状が球形であるとして示されているが、いずれかの特定の形状を有することが要求されているわけではないと理解される。この粒子は不規則形状であってもよく、または規則的形状であってもよい。しかしながら重要なことは、この粒子が、本明細書の他のところで詳細に考察されているような寸法を有する小さなサイズであるということ、およびこれは、無機粒子12全体に金属が分配されているのとは対照的に、主としてこの外側表面上に金属層またはコーティングを有するということである。貴金属卵殻触媒10はこのようにして、金属層14でコーティングされている無機酸化物粒子12を含んでいる。金属層14は、粒子12に浸透し、これによって、本明細書の他のところで詳細に考察されているような寸法を有する金属層厚さを提供する。
【0052】
図2に示されているのは、図1の金属コーティングされた無機酸化物粒子10が製造され得る1つの製造方法200において用いられる工程を図解しているブロック図である。
【0053】
製造方法200において、金属水溶液中に含有された小さな無機酸化物粒子のスラリーが、ライン204によって容器202中に導入される。このスラリーは霧化され、霧化されたスプレーストリーム208として形成され、これは容器202中に噴霧される。噴霧乾燥条件は、ライン210によって高温の乾燥ガスを容器202中に導入し、高温の乾燥ガスを容器202に通過させて、金属水溶液および無機酸化物粒子のスラリーの急速乾燥を与えるように容器202内で維持される。
【0054】
高温の乾燥ガス流出物は、ライン212によって容器202から出る。無機酸化物粒子の急速乾燥は、無機酸化物粒子全体に浸透する金属塩をともなわずに、金属塩残渣をこれらの表面上に有する、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子を結果として生じる。
【0055】
次いでスプレーコーティングされた無機酸化物粒子は、上にコーティングされた金属塩を元素形態へ還元するように、還元工程へ付される。当業者に公知のいずれの型の還元方法も、金属を還元するために用いることができるが、どの方法が用いられても、最終的に調製される、金属コーティングされた無機酸化物粒子中に残留する汚染性化合物もしくは材料の量が最小限にされることが重要である。このようにして、湿潤還元はこの発明において適切に用いられ得るが、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子中の金属塩の還元の実施において水素処理を用いることが好ましい。
【0056】
次いでスプレーコーティングされた無機酸化物粒子は、ライン216によって容器214へ供給される。容器214の中で、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子は、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子の金属塩の、この金属の元素形態への還元を与える温度および圧力条件下、水素雰囲気に暴露される。水素ガスが、ライン218によって容器214に導入される。オフガスは、ライン220によって容器214から出て行き、金属コーティングされた無機酸化物粒子は、ライン222によって容器214から出る。
【0057】
図3に提示されているのは、貴金属卵殻触媒の層304が上に載っている多孔質金属材料の多孔質基体302を含む、本発明のガス分離膜300の一部分の横断面図の描写である。この層304は、ガス選択性材料のオーバー層306でコーティングされている。多孔質基体302は、下面308および上面310を有し、これらは一緒になってシート厚さ312を画定する。ガス分離膜300は、平面であるとして描かれているが、これはまた、形状が曲線または管状であってもよいと認められる。
【0058】
貴金属卵殻触媒の層304は、貴金属卵殻触媒の層厚さ314を与え、これによって、表面処理された多孔質基体を供給するような適切な量で、多孔質基体302の表面310へ適用される。次いで表面処理された多孔質基体の層304は、コーティングされた表面処理多孔質基体を供給するような量で、ガス選択性材料のオーバー層306でコーティングされ、この場合オーバー層306は、オーバー層厚さ316を有し、これによってガス分離膜300を供給する。
【0059】
ここで図4が参照されるが、この図面は、ガス混合物からのガス成分の選択的分離方法において用いられる、本発明の管状ガス分離膜系400の横断面図を描いている。管状ガス分離膜系400は、導管410を画定する内側表面404および外側表面408を有する多孔質基体402を含む。貴金属卵殻触媒の層412は、多孔質基体402の外側表面408を覆っている。貴金属卵殻触媒の層412は、ガス選択性材料のオーバー層414でコーティングされている。
【0060】
管状ガス分離膜系400の1つの使用方法は、水素ガスを含んでいるガス混合物からの水素ガスの選択的分離のためであってもよい。この方法において、ガス混合物416は、導管410の流入末端418に導入され、導管410を通され、ここから流出ガス420は、導管410の流出末端422から取り出される。ガス混合物が導管410を通過するにつれて、ガス混合物中に含有された水素ガスは、ガス分離膜を選択的に横断して通過し、オーバー層414の外側にある外部帯域424へ流れる。
【0061】
導管410および外部帯域424内の相対的圧力条件は、導管410の中からオーバー層414の外部帯域424への水素フラックスの方向付けを促進するようなものである。従って導管410内の水素ガスの分圧は、ガス分離膜系400のオーバー層414の外側の外部帯域424の中の水素ガスの分圧以下である。
【0062】
次の実施例は、本発明をさらに例証するために示されているが、これらは本発明の範囲を限定すると考えるべきではない。
【実施例】
【0063】
(実施例I)
この実施例Iは、本発明のガス分離膜の製造における多孔質基体の表面の処理において適切に用いることができる、金属コーティングされた無機酸化物粒子(この実施例Iにおいては、アルミナ卵殻触媒上の0.1重量%パラジウム)が、どのようにして調製され得るかについて記載している。
【0064】
パラジウム塩の水溶液中のアルファアルミナ粉末のスラリーが、蒸留水2,500g、500gのアルファアルミナ粉末(Sumitomo AKP15アルミナ粉末)、および10.01重量%のPdの溶液濃度を有する、水中の硝酸パラジウム(Pd(NO)の水溶液1.08gを混合することによって調製された。アルミナ粉末が沈降しないようにするためにスラリーを撹拌しつつ、このスラリーは、NIRO Minor Hi−Tec噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥された。
【0065】
噴霧乾燥条件は、約350℃の温度、1.5バールのノズル圧力で5.8から6kg空気/時の率で噴霧乾燥機中に温風を導入することを含んでいた。スラリーは、約1.5kgスラリー/時の率で噴霧乾燥機中に導入された。噴霧乾燥機の流出温度は、約100℃であった。噴霧乾燥機ノズル型は、2流体、1.5mm先端の噴水構成であった。
【0066】
噴霧乾燥された粉末は、マッフルキルンにおいて450℃で3時間焼成され、その後200℃の温度で2時間、ガラス反応器において水素還元された。
【0067】
(実施例II)
この実施例IIは、本発明のガス分離膜の、実施例IIIに記載されているような製造における多孔質基体の表面の処理において用いられる、合金パラジウム−銀金属コーティングされた無機酸化物粒子(即ち、アルファアルミナ卵殻触媒上の1.23重量%合金パラジウム−銀)の調製について記載している。
【0068】
蒸留水2500g中の500gのアルファアルミナ粉末のスラリーへ、アルミナ粉末が沈降しないように撹拌しつつ、硝酸パラジウムの10重量%溶液108.27g、および硝酸銀の10重量%溶液18.11gが添加された。スラリーは、NIRO Minor Hi−Tec噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥された。
【0069】
噴霧乾燥条件は、350℃の流入温度、1.5バールのノズル圧力で5.8から6kg空気/時の率で噴霧乾燥機中に温風を導入することを含んでいた。スラリーは、約1.5kgスラリー/時の率で噴霧乾燥機中に導入された。噴霧乾燥機の流出温度は、約100℃であった。噴霧乾燥機ノズル型は、2流体、1.5mm先端の噴水構成であった。
【0070】
噴霧乾燥された粉末は、マッフルキルンにおいて450℃で3時間焼成され、その後200℃の温度で2時間、ガラス反応器において水素還元された。
【0071】
(実施例III)
この実施例IIIは、実施例IIに記載されているような貴金属卵殻触媒を利用し、無電解めっきを用いてパラジウムコーティングがオーバーレイされている、複合ガス分離モジュールもしくは膜系の製造について記載している。
【0072】
複合ガス分離モジュールは、Mott Corporationによって供給された1インチOD×6インチ長さのデュプレックス多孔質Inconel支持体を用いて調製された。この支持体は、実験における使用の適切性を保証するために完全に脱脂され、広範囲にわたってテストされた。
【0073】
脱イオン水中の、実施例IIに記載されているようなアルファアルミナ卵殻触媒上の1.23重量%合金パラジウム−銀のスラリーが、真空濾過によってInconel支持体の表面へ適用されて、卵殻触媒の層をこの上に形成し、これによって、表面処理されている支持体を供給した。次いでこの表面処理された支持体は、パラジウムめっき溶液450mLおよび1Mヒドラジン水和物溶液1.8mLを含有するめっき浴において、いずれの活性化方法も用いることなく、表面処理された支持体をパラジウムで無電解めっきすることによって、パラジウムのオーバー層でコーティングされた。このパラジウムめっき溶液は、30%水酸化アンモニウム溶液198ml、4gのテトラアミンパラジウム(II)クロライド、40.1gエチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム塩、および1リットルの脱イオン水を含んでいた。
【0074】
めっきの間、5から6インチのHgのわずかな真空が、支持体の内部上に5分間維持され、その後、真空源が停止され、真空は3から4分の間にゼロに衰退した。次いでこのモジュールは、60℃脱イオン水で完全に洗浄され、次いで140℃で8時間乾燥された。
【0075】
次いでこのモジュールは、パラジウムめっき溶液450mLおよび1Mヒドラジン水和物溶液1.8mL中で、真空も活性化もともなわずに90分間めっきされた。次いでこのモジュールは、熱い脱イオン水で完全に洗浄されて、あらゆる残留塩が除去され、次いで140℃で8時間乾燥された。
【0076】
このモジュールは、支持体の管側へ適用された28から30インチのHgの真空下にある間、パラジウムめっき溶液450mLおよび1Mヒドラジン水和物溶液1.8mLを含有する2つのパラジムめっき浴中でめっきすることによって完了された。次いでこのモジュールは、熱い脱イオン水で完全に洗浄されて、残留塩が除去され、次いで140℃で8時間乾燥された。
【0077】
Inconel支持体上のパラジウムの、結果として生じた濃密なガス選択性複合水素ガス分離モジュールは、5.08ミクロンのガス濃密層厚さを有していた。このモジュールのテストは、72.6m/(m)(時間)(バール)の水素浸透を示した。
【0078】
(実施例IV)
この実施例IVは、パラジウム−銀合金金属粉末のコーティングのオーバー層が上に載せられている表面上への層の形成において、実施例IIに記載されているような貴金属−卵殻触媒を利用する、複合ガス分離モジュールもしくは膜系の製造について記載している。
【0079】
複合ガス分離モジュールは、Mott Corporationによって供給された1インチOD×6インチ長さの18−15−MF−20多孔質支持体上で調製された。このガス分離モジュールは、パラジウム−銀コーティングされたアルファアルミナ卵殻触媒の層で処理された多孔質基体であり、これはその後、パラジウム−銀合金金属粉末でコーティングされ、複合ガス分離モジュールを生じる。
【0080】
この支持体は、実験における使用の適切性を保証するために完全に脱脂され、広範囲にわたってテストされた。酸化はまったく実施されなかった。アルファアルミナの層が当初、真空蒸着によって支持体へ適用された。
【0081】
上記の脱イオン水中の上記のようなアルファアルミナ卵殻触媒上の1.23%合金パラジウム−銀のスラリーが、真空濾過によって支持体へ適用された。次いで卵殻触媒の層で処理された支持体は、パラジウムめっき溶液450mL(上記の実施例に記載されている。)および1Mヒドラジン水和物溶液1.8mLを含有するめっき浴において、いずれの活性化方法も事前に用いることなく、パラジウムで無電解めっきされた。めっきの間、10から15インチのHgのわずかな真空が、支持体の内部に15分間維持された。当初のパラジウムめっきの直後、脱イオン水中のパラジウム−銀合金金属粉末のスラリーが、20から25インチのHgでの真空濾過によって支持体へ適用された。次いでこのモジュールは、60℃脱イオン水で完全に洗浄され、次いで140℃で8時間乾燥された。
【0082】
次いでこのモジュールは、0から28インチのHgから漸増する真空での8×90分パラジウムめっきを用いてめっきされた。次いでこのモジュールは、60℃脱イオン水で完全に洗浄され、次いで140℃で8時間乾燥された。
【0083】
18−15−MF−20支持体上のパラジウムの、結果として生じた濃密なガス選択性水素ガス複合分離モジュールは、18.81ミクロンのガス濃密層厚さを有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分離膜の製造方法であって、
多孔質基体の表面へ貴金属卵殻触媒の層を適用し、これによって、表面処理された多孔質基体を供給する工程;および
前記表面処理された多孔質基体をガス選択性材料のオーバー層でコーティングし、これによって、前記ガス分離膜としての使用に適した、コーティングされた表面処理多孔質基体を供給する工程、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記貴金属卵殻触媒が、5マイクロメートル未満の粒子サイズを有し、および金属層でコーティングされた無機酸化物粒子を含んでおり、前記金属層が、白金、パラジウム、金、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、ニオブおよびこれらの2つ以上の組み合わせからなる金属群から選択される金属を含み、ならびに前記金属コーティングされた無機酸化物粒子はさらに、前記金属コーティングされた無機酸化物粒子の総重量の5重量%未満の範囲内の量で前記金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属コーティングされた無機酸化物粒子が、
噴霧乾燥条件下に前記金属の水溶液中に含有された前記無機酸化物粒子のスラリーを乾燥し、これによって、スプレーコーティングされた無機酸化物粒子を供給する工程;および
前記スプレーコーティングされた無機粒子を、前記金属がこの元素形態に還元されるような水素処理条件下に水素で処理し、これによって、前記貴金属卵殻触媒を供給する工程
を含む方法によって製造される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属層の前記金属が、パラジウムおよび銀を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属層の前記金属が、パラジウムおよび銀の合金を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記金属層の前記金属が、パラジウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記層が、前記貴金属卵殻触媒から本質的になる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記層が、バインダー材料が実質的に不存在な材料を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記金属層が、0.1μmから2μmの範囲の金属層厚を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記層が、0.1μmを超える層厚を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記オーバー層は、25μm未満のオーバー層厚を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ガス分離膜であって、
貴金属卵殻触媒の層で処理された多孔質基体を含み、前記層が、ガス選択性材料のオーバー層でコーティングされている、ガス分離膜。
【請求項13】
前記貴金属卵殻触媒が、50マイクロメートル未満の粒子サイズを有し、および金属層でコーティングされた無機酸化物粒子を含んでおり、前記金属層は、白金、パラジウム、金、銀およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される金属を含み、ならびに前記貴金属卵殻触媒は、前記金属コーティングされた無機酸化物粒子の総重量の5重量%未満の範囲の量で前記金属を含む、請求項12に記載のガス分離膜。
【請求項14】
水素含有ガスストリームから水素を分離する方法であって、
貴金属卵殻触媒の層で処理された多孔質基体含み、前記層がガス選択性材料のオーバー層でコーティングされているガス分離膜上に前記水素含有ガスストリームを、前記水素含有ガスストリームからの水素が前記ガス分離膜を選択的に通過するような温度および圧力条件下で通過させる工程、
を含む方法。
【請求項15】
前記貴金属卵殻触媒が、5マイクロメートル未満の粒子サイズを有し、および金属層でコーティングされた無機酸化物粒子を含んでおり、前記金属層が、白金、パラジウム、金、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される金属を含んでおり、ならびに前記貴金属卵殻触媒は、前記金属コーティングされた無機酸化物粒子の総重量の5重量%未満の範囲の量で前記金属を含み、ならびに前記層は、前記水素含有ガスストリームからの水素が、前記ガス分離膜を選択的に通過するような温度および圧力条件下に、ガス選択性材料のオーバー層でコーティングされる、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−509055(P2010−509055A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536429(P2009−536429)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/083684
【国際公開番号】WO2008/127406
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】