説明

コーティング剤

【課題】 基材との密着性に優れ、離型性及び表面平滑性に優れた皮膜を与えるコーティング剤を提供する。
【解決手段】 下記の(A)成分及び(B)成分を含む水性樹脂組成物からなることを特徴とするコーティング剤とする。
(A)成分:
(A−1)成分:水酸基及び式:R1O−(R1は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)で表される基からなる群から選ばれる基と、下記式(1)で表される基とが、ポリシロキサン鎖の少なくとも2つの末端の同一ケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサン、


(A−2)成分:下記式(2)で表されるアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、


(A−3)成分:(A−1)成分と(A−2)成分の合計量100重量部に対して0〜10重量部の縮合触媒、
からなる硬化性シリコーン組成物:100重量部、
(B)成分:ポリウレタン樹脂:10〜200重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材との密着性に優れ、離型性及び表面平滑性に優れた皮膜を与える、コーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック、金属又はゴムからなる基材の表面に離型性及び平滑性を付与するために、シリコーン樹脂組成物を該基材の表面に塗布した後、硬化して皮膜を形成させ、該基材の表面を皮膜でコーティングする方法が利用されている。
その場合に使用されるシリコーン樹脂組成物としては、例えば、エポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンとアミノ基を含有するアルコキシシランとからなる組成物(特許文献1参照)、水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとアミノ基を含有するアルコキシシランとエポキシ基を含有するアルコキシシランとからなる組成物(特許文献2参照)、水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとエポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンとアミノ基を含有するアルコキシシランとからなる組成物(特許文献3〜5参照)、水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとアミノ基を含有するジアルコキシシランの加水分解縮合物とからなる組成物(特許文献6参照)、水酸基又はビニル基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとからなる組成物(特許文献7参照)、アミノ基を含有するシラン又はシロキサンとエポキシ基を含有するシラン又はシロキサンとの反応生成物、水酸基を含有するポリジオルガノシロキサン、及びポリオルガノハイドロジェンシロキサンとからなる組成物(特許文献8参照)、アミノ基とアルコキシ基とを含有するシラン又はシロキサン及びエポキシ基とアルコキシ基とを含有するシラン又はシロキサンとの反応生成物、ならびに、アルコキシ基又は水酸基とアミノ基とを含有するポリオルガノシロキサンとからなる組成物(特許文献9参照)、水酸基とエポキシ基とを含有するポリオルガノシロキサン、アミノ基を含有するアルコキシシラン及びメルカプト基を含有するアルコキシシランからなる組成物(特許文献10参照)、水酸基を含有するジオルガノシロキサンとエポキシ樹脂とアミノ基を含有するシランとからなる組成物(特許文献11参照)等が提案されている。
【0003】
これらに示される組成物は、有機溶剤溶液であり、水性樹脂組成物は具体的に示されない。有機溶剤溶液からなる組成物は、その使用にあたり、引火性の問題や環境の問題がある。
【0004】
そこで、シリコーン樹脂の水性樹脂組成物が提案されており、例えば、水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとアミノ基を含有するジアルコキシシランの加水分解縮合物とからなる組成物(特許文献12参照)、加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサンとエポキシ基又はアミノ基及び加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサンとエポキシ基又はアミノ基を含有する加水分解性シランとからなる組成物(特許文献13参照)、水酸基を含有するポリジオルガノポリシロキサン、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、水溶性アミノ基を含有するポリオルガノシロキサン、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、カルボン酸及びアルキルアミンオキシドからなる組成物(特許文献14参照)、アクリル−シリコーングラフト共重合体とアミノ基含有ジアルコキシシランの加水分解縮合物とエポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンとからなる組成物(特許文献15参照)、ポリジオルガノシロキサンとウレタン樹脂とエポキシ基を含有するシランとからなる組成物(特許文献16参照)等が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭54−43891号公報
【特許文献2】特開昭52−123394号公報
【特許文献3】特開昭54−45361号公報
【特許文献4】特開昭54−90369号公報
【特許文献5】特開昭54−90375号公報
【特許文献6】特開平7−109441号公報
【特許文献7】特開昭62−215667号公報
【特許文献8】特開昭56−78960号公報
【特許文献9】特開平11−43647号公報
【特許文献10】特開平5−5082号公報
【特許文献11】特開平4−318021号公報
【特許文献12】特開平7−126417号公報
【特許文献13】特開平7−196984号公報
【特許文献14】特開2002−188057号公報
【特許文献15】特開平7−109440号公報
【特許文献16】特開2005−125656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、[従来の技術]で述べた、シリコーン樹脂の水性樹脂組成物は基材に対する密着性が満足できるものではなく、また、得られる皮膜は、離型性及び表面平滑性に乏しいという欠点がある。
本発明の目的は、上記のような従来のシリコーン樹脂組成物からなるコーティング剤が抱える問題点を解消し、プラスチック、金属、及びゴムの表面との密着性に優れ、塗布して硬化させると、離型性及び表面平滑性に優れた皮膜を与える水性のコーティング剤を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、上記の目的を達成するため、下記の(A)成分及び(B)成分を含む水性樹脂組成物からなることを特徴とするコーティング剤を提供する。
(A)成分:
(A−1)成分:水酸基及び式:R1O−(R1は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)で表される基からなる群から選ばれる基と、下記式(1)で表される基とが、ポリシロキサン鎖の少なくとも2つの末端の同一ケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサン、

[式中、R2は非置換又は置換の炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、R3は炭素原子数1〜4の2価炭化水素基、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子又は非置換もしくは置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、mは0〜6の整数であり、mが0ではないとき、前記R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは水素原子であり、またmが0であるとき、前記R5及びR6のうち少なくとも1つは水素原子である。]
(A−2)成分:下記式(2)で表されるアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、

[式中、R7は非置換又は置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基、R8は独立に炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、aは0又は1である。]
(A−3)成分:(A−1)成分と(A−2)成分の合計量100重量部に対して0〜10重量部の縮合触媒、
からなる硬化性シリコーン組成物:100重量部、
(B)成分:ポリウレタン樹脂:10〜200重量部。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコーティング剤は、密着性に優れたコーティング剤であり、ゴム(エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリルゴム等)、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル等)又は金属(鉄、アルミニウム、ステンレス、銅等)からなる基材に塗布した後、室温または加温により硬化させると、離型性及び平滑性に優れた皮膜を形成する。そのため、ゴム、プラスチック成形用の金型、樹脂型やゴム型の離型剤として有用である。また、本発明のコーティング剤でコーティング処理されたゴム物品は、その優れた表面平滑性により、自動車用ウェザーストリップ材料、Oリング、ガスケット、各種パッキン等のシール材料、ゴムホース材料等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のコーティング剤は、前記したように、少なくとも(A)成分及び(B)成分を含む水性樹脂組成物である。
本発明のコーティング剤の(A)成分は、必須成分である(A−1)成分、(A−2)成分、そして、任意成分である(A−3)成分で構成される。
(A−1)成分のオルガノポリシロキサンは、水酸基及び式:R1O−(R1は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)で表される基からなる群から選ばれる基(i)と、下記式(1)で表される基(ii)とが、ポリシロキサン鎖の少なくとも2つの末端の同一ケイ素原子に結合した構造を有するものである。この(A−1)成分のオルガノポリシロキサンの構造としては、直鎖状、分岐状、又は2個以上の分岐を有する環状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状である。本発明では、(A−1)成分のオルガノポリシロキサンは、通常、平均重合度が10〜2,000のものを使用する。

【0010】
(A−1)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、前記した基(i)及び基(ii)は、ポリシロキサン鎖の末端の同一ケイ素原子に、少なくとも1つの基(i)と、1つの基(ii)、すなわち合計2個が結合していればよい。特には、(A−1)成分のオルガノポリシロキサンは、ポリシロキサン鎖の末端にあるケイ素原子の2個以上、好ましくは2〜5個、更に好ましくは2個のケイ素原子のそれぞれに、前記した基(i)及び基(ii)が、それぞれ1つ又は2つ結合していることが、保存時の安定性の理由から好ましい。
【0011】
前記した基(i)において、上記R1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0012】
式(1)中、R2は非置換又は置換の炭素原子数1〜6の2価炭化水素基である。R2としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基、p−フェニレン基等のアリーレン基;及び前記炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子で置換された、例えば、1−クロロトリメチレン基等が挙げられ、中でもトリメチレン基が好ましい。
【0013】
式(1)中、R3は炭素原子数1〜4の2価炭化水素基である。R3としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基等が挙げられ、中でもエチレン基が好ましい。
【0014】
式(1)中、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子又は非置換もしくは置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基である。R4、R5及びR6は、同一又は異なり、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;及び前記炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子で置換された、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、中でも水素原子及びメチル基が好ましい。
【0015】
式(1)中、mは0〜6の整数であり、mが0ではないとき、前記R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは水素原子であり、またmが0であるとき、前記R5及びR6のうち少なくとも1つは水素原子である。
【0016】
上記式(1)で表される基の好ましい例として、具体的には、下記のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
−C36NH2、 −C36NHC24NH2
−C36(NHC242NH2
−C36(NHC243NH2
−C36NHCH3、 −C36NHC24NHCH3
【0017】
この(A−1)成分のオルガノポリシロキサンとしては、特に、下記式(3)及び/又は下記式(4)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサンが好ましい。

【0018】
上記式(3)中、R9は独立に水素原子又は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。R9の1価炭化水素基としては、R1と同様のものが例示され、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0019】
上記式(3)中、R10、R12は独立に炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。R10、R12としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;及び前記炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子で置換された、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の炭素原子数1〜20、好ましくは1〜6の非置換又は置換1価炭化水素基が挙げられる。特に、複数あるR12の90モル%以上がメチル基であることが、工業的に、また離型性能を付与する上で好ましい。
また、上記式(3)中、R11は上記式(1)で表される基である。
【0020】
上記式(3)中、nは10〜2,000、好ましくは20〜1,700の整数である。nが10未満であると、得られる皮膜は脆いものとなるおそれがあり、2,000を超えると、上記オルガノシロキサンが高粘度となりすぎて、後記乳化分散系において微小に分散させることができなくなり、保存安定性の良好なエマルジョンを得ることが困難となる場合がある。
【0021】
上記(A−1)成分のオルガノポリシロキサンの製造方法は特に限定されないが、例えば、α,ω−ジヒドロキシ−ジメチルポリシロキサンと、ケイ素原子に結合したアルキルアミノ基を有するジアルコキシシラン化合物とを脱アルコール縮合反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
また、本発明においては、(A−1)成分のオルガノポリシロキサンに有機酸を反応させてもよい。有機酸は、オルガノポリシロキサン中のアミノアルキル基と反応してアミン塩(即ち、イオン対)を形成し、それによって(A)成分に親水性を付与することができ、後述する水性媒体中でより微小に分散させることができる。
有機酸としては、前記アミン塩を形成し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、クエン酸等の炭素原子数1〜6の脂肪族カルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の炭素原子数1〜6のスルホン酸、エタンスルフィン酸等の炭素原子数1〜6のスルフィン酸等が挙げられ、これらの中では、特にギ酸、酢酸が好ましい。この有機酸は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
有機酸の添加量は、アミノアルキル基のアミノ基に対して1モル当量以下添加することが好ましい。
【0023】
(A−2)成分は、(A−1)成分の架橋剤として機能するものであり、下記式(2)で表されるアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物である。

【0024】
式(2)中、aは0又は1であり、R7は非置換又は置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である。R7としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;あるいは前記炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子などのハロゲン原子あるいはメルカプト基、アクリロイルオキシ基、アミノ基等を含有する官能基で置換された基、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;γ−メタクリロイルオキシプロピル基、γ−アクリロイルオキシプロピル基等のアクリロイルオキシアルキル基;γ−メルカプトプロピル基等のメルカプトアルキル基;N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル基、γ−アミノプロピル基等のアミノアルキル基等の炭素原子数1〜20、好ましくは1〜6の非置換又は置換1価炭化水素基が挙げられ、これらの中でも好ましくはメチル基、フェニル基、ビニル基、γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
【0025】
式(2)中、R8は独立に炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。R8としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基等が挙げられ、これらの中でも好ましくはメチル基、エチル基である。
【0026】
上記式(2)で表されるアルコキシシランとして、具体的には、上記aが1である場合、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、等が、また、aが0である場合、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等、及びこれらのアルコキシシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランである。
また、この(A−2)成分は、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0027】
(A−2)成分は上記(A−1)成分の架橋剤であり、縮合反応により硬化してシリコーンエラストマーを得ることができるものである。前記縮合反応は、専ら、(A−1)成分中の水酸基及び/又はR1O−基と(A−2)成分中のR8O−基との縮合反応であるが、(A−2)成分中のR8O−基同士の縮合反応も含まれる。
【0028】
(A−1)成分に対する(A−2)成分の使用量は、(A−1)成分中の水酸基及びR1O−基の合計1モルに対し、(A−2)成分中のR8O−基の量が、通常、0.5〜100モル、好ましくは1.0〜50モルとなる量とするのがよい。
前記(A−2)成分の使用量が少なすぎると縮合硬化反応が不十分となり、シリコーンエラストマーを得ることができない場合がある。また、逆に多すぎると(A−2)成分中のR8O−基同士の縮合反応が多くなりすぎて、硬化物の硬度が高くなって弾性に乏しいものとなったり、副生成物であるアルコール類の量が多くなる場合がある。
【0029】
(A−3)成分は、上記縮合反応を促進するための縮合触媒であり、ナトリウム化合物、アルミニウム化合物、カリウム化合物、カルシウム化合物、バナジウム化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物及びバリウム化合物から選ばれる1種以上の金属化合物である。
具体的には、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸アルミニウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸バナジウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸バリウム、ネオデカン酸ナトリウム、ネオデカン酸アルミニウム、ネオデカン酸カリウム、ネオデカン酸カルシウム、ネオデカン酸バナジウム、ネオデカン酸鉄、ネオデカン酸コバルト、ネオデカン酸ニッケル、ネオデカン酸亜鉛、ネオデカン酸ジルコニウム、ネオデカン酸バリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸アルミニウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸バナジウム、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレイン酸ニッケル、オレイン酸亜鉛、オレイン酸ジルコニウム、オレイン酸バリウム、ナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸アルミニウム、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸バナジウム、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸バリウム等のカルボン酸金属塩、アルミニウムアセチルアセトネート、カルシウムアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、亜鉛アセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセトネート、カルシウムエチルアセトアセトネート、コバルトエチルアセトアセトネート、鉄エチルアセトアセトネート、ニッケルエチルアセトアセトネート、亜鉛エチルアセトアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセトネート等の有機金属錯体、塩化ナトリウム、塩化アルミニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化バナジウム、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化亜鉛、塩化ジルコニウム、塩化バリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸バナジウム、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸ジルコニウム、硫酸バリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸バナジウム、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニウム、硝酸バリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アルミニウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸バナジウム、リン酸鉄、リン酸コバルト、リン酸ニッケル、リン酸亜鉛、リン酸ジルコニウム、リン酸バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アルミニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バナジウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸ジルコニウム、炭酸バリウム等の無機金属塩、水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バナジウム、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化亜鉛、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物などが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
錫化合物も、単独でも他の化合物と組み合わせて使用できるが、近年、その毒性が問題視されているため、好ましくない。
【0030】
(A−3)成分の配合量は、(A−1)成分と(A−2)成分との合計量100重量部に対して、通常、0〜10重量部、好ましくは0〜2重量部程度である。配合する場合は有効量として、通常0.1重量部以上必要であり、(A−1)成分及び(A−2)成分の反応性が高い場合には(A−3)成分は必要としないか、微量でもよく、多すぎると効果はさほど変わらないばかりか、経済的にも不利となる。
なお、(A−3)成分のみでは触媒活性が低く、十分な硬化性が得られない場合には、助触媒としてアミン化合物やアミノ基含有のアルコキシシランを添加することもできる。
【0031】
本発明のコーティング剤を水性樹脂組成物として得るためには、(A)成分を水性乳濁液として、(B)成分と配合することが必要である。(A)成分の水性乳濁液は、上記(A−1)成分、(A−2)成分及び(A−3)成分又は上記(A−1)成分及び(A−2)成分を、界面活性剤を用いて水に乳化することによって得ることができる。
その場合に用いる界面活性剤としては特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、N-アシルタウリン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、カルボン酸高分子、スチレンオキシアルキレン酸無水物共重合体等が挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、トリポリオキシエチレンアルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、モノアルキルアミン塩、モノアルキルアミドアミン塩等が挙げられ、また、両イオン性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルカルボキシベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルカルボキシベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0032】
(A−1)成分、(A−2)成分、及び(A−3)成分から、界面活性剤を使用して、(A)成分の水性乳濁液を得るには、(A−1)成分のオルガノポリシロキサン、(A−2)成分のアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、及び(A−3)成分の金属化合物の混合物を、界面活性剤を用いて水に乳化分散させればよい。(A)成分の水性乳濁液の調製において、十分に均一な水性乳濁液を形成する前に(A−1)成分の硬化反応が進行してしまい、乳化分散できなくなる場合には、先ず(A−1)成分を、界面活性剤を用いて水に乳化分散させ、それから、(A−2)成分及び(A−3)成分を添加、撹拌する方法、先ず(A−1)成分及び(A−2)成分の混合物を、界面活性剤を用いて水に乳化分散させ、それから、(A−3)成分を添加、撹拌する方法、或いは先ず(A−1)成分及び(A−3)成分の混合物を、界面活性剤を用いて水に乳化分散させ、それから、(A−2)成分を添加、撹拌する方法により行えばよい。
また、(A−3)成分が水溶性の場合は、(A−1)成分もしくは(A−1)成分及び(A−2)成分を水に乳化分散させた後に(A−3)成分を添加する方法、又は(A−3)成分を水に溶解しておき、この水に(A−1)成分もしくは(A−1)成分及び(A−2)成分を乳化分散する方法がよい。
【0033】
(A−1)及び(A−2)成分から、界面活性剤を使用して、(A)成分の水性乳濁液を得るには、(A−1)成分のオルガノポリシロキサン及び(A−2)成分のアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物の混合物を、界面活性剤を用いて水に乳化分散させればよい。(A)成分の水性乳濁液の調製において、(A−1)成分の硬化反応が進行してしまい、乳化分散できなくなる場合には、先ず(A−1)成分を、界面活性剤を用いて水に乳化分散させ、それから、(A−2)成分を添加、撹拌する方法により行えばよい。
乳化分散のためには、プロペラ羽根、パドル翼、ホモミキサー、ディスパーミキサー等の撹拌装置又は高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機等の乳化装置を用いて行えばよい。
【0034】
上記(A)成分の水性乳濁液中における(A−1)成分及び(A−2)成分の合計配合量は、通常、5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%程度とするのがよい。前記配合量が少なすぎると、不経済であるし、また、逆に多すぎると水性乳濁液の粘度が高くなりすぎて、取扱いが困難となる場合がある。
【0035】
(B)成分は、本発明のコーティング剤を塗布して得られる皮膜と基材との密着性を向上させる成分であり、ポリオール(水酸基(−OH)を2個以上含有する化合物)とポリイソシアネート(イソシアネート基(−NCO)を2個以上含有する化合物)が付加反応して得られるポリウレタン樹脂である。
上記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ヒマシ油ポリオール等が挙げられ、これらの混合物も使用できる。これらのうち、特には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。
上記ポリオールの数平均分子量は、400〜5,000の範囲が好ましい。
【0036】
上記ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート等が使用できる。この他に、上記ポリイソシアネートをカルボジイミドで変性したポリイソシアネート、上記ポリイソシアネートをイソシアヌレートで変性したポリイソシアネート等も使用できる。これらは単独あるいは混合物として使用してもよい。これらのうち、特には、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0037】
本発明のコーティング剤を水性樹脂組成物として得るためには、(B)成分を水性乳濁液又は水性可溶液として、(A)成分と配合することが必要である。(B)成分の水性乳濁液又は水性可溶液は、ポリオールと過剰のポリイソシアネートとを、ポリオール:ポリイソシアネートのモル比が1:1.1〜10、好ましくは1:1.3〜5の割合で付加反応させて、イソシアネート基を分子末端にもつウレタンプレポリマーを合成し、次いで、界面活性剤を用いて、該ウレタンプレポリマーを水に乳化分散又は可溶化させることによって得ることができる。ポリオール:ポリイソシアネートのモル比が1:1.1より小さいと、逐次付加重合が起こりやすく、高分子量体が生成するし、1:10より大きいと、遊離イソシアネート残存量が多くなり、保存時の安定性が低下する場合がある。
上記界面活性剤としては特に制限はなく、前述した非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤が挙げられる。また、前記乳化分散又は可溶化は、前述した乳化装置を用いて行えばよい。
【0038】
(B)成分の水性乳濁液又は水性可溶液を調製する場合、上記ポリオールとポリイソシアネートに加え、更にイソシアネート基と反応する活性水素原子及び塩形成基を有する化合物を使用してウレタンプレポリマーを合成し、得られたウレタンプレポリマーを、塩形成剤を使用して水に乳化又は可溶化させてもよい。
イソシアネート基と反応する活性水素原子及び塩形成基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシ酸、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、ヒドロキシスルホン酸類等であり、それに対する塩形成剤とは、金属水酸化物、アンモニア、3級アミン化合物等である。
また、上記とは異なる他のイソシアネート基と反応する活性水素原子及び塩形成基を有する化合物としては、アミノアルコール、アミン類等が挙げられ、それに対する塩形成剤としては、有機酸、無機酸、反応性ハロゲン原子を有する化合物が挙げられる。
更に、上記とは異なる他のイソシアネート基と反応する活性水素原子及び塩形成基を有する化合物としては、ハロゲン原子を有するアルコールが挙げられ、それに対する塩形成剤としては、3級アミン、スルフィド類、フォスフィン類等が挙げられる。この方法において、上述の界面活性剤を併用してもよい。塩形成剤は、通常、等量になる量を添加する。
【0039】
また、(B)成分の水性乳濁液又は水性可溶液を調製する場合、上記ポリオールとポリイソシアネート、更にポリオキシエチレンモノアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテルを使用してウレタンプレポリマーを合成し、得られたウレタンプレポリマーを、水に乳化又は可溶化させてもよい。この方法において、前述の界面活性剤を併用してもよい。
【0040】
水性乳濁液又は可溶化液中のウレタンプレポリマーは、水との反応により高分子量化させるか、又は得られた水性乳濁液又は可溶化液に多価アミン化合物を添加して、多価アミン化合物との反応により高分子量化させることにより、(B)成分のポリウレタン樹脂の水性乳濁液又は可溶化液とすることができる。
こうして得られる(B)成分のポリウレタン樹脂は、その数平均分子量が4,000〜100,000の範囲が好ましい。
【0041】
(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して10〜200重量部、好ましくは15〜150重量部、特に好ましくは20〜100重量部である。前記の配合量が10重量部未満であると、本組成物から得られる皮膜はゴムとの密着性に乏しくなり、200重量部を超えると、本組成物から得られる皮膜は、離型性及び表面平滑性が低下する。
【0042】
本発明のコーティング剤には、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、上記(A)成分及び(B)成分に加えて、任意成分として、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、カーボンブラック、有機樹脂粉末、無機粉末、各種有機顔料あるいは無機顔料、濡れ剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等を配合することができる。
【0043】
上記の各成分の混合は、従来公知のパドル型、錨型等の撹拌翼を備えた混合撹拌機により行えばよい。次いで、必要に応じて、水を添加して希釈すればよい。
【0044】
本発明のコーティング剤は、刷毛塗り、ロールコート、スプレーコート、ナイフコート、ディップコートなどの方法で基材の表面に塗布した後、常温放置もしくは加熱乾燥させ硬化皮膜を形成する。
本発明のコーティング剤は、タイヤをはじめ各種のゴム製品やプラスチック製品の離型剤として有用である。基材に対する密着性が良好なことから、金型、樹脂型やゴム型に1回の処理で、繰り返し成形することが期待できる。また、ゴム製品にコーティングすることにより、滑り性を付与することができることから、自動車用ウェザーストリップ材料、Oリング、ガスケット、各種パッキン等のシール材料、ゴムホース材料等のコーティング剤として有用である。
【実施例】
【0045】
以下、測定方法、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中における粘度はオストワルド粘度計により測定した25℃における値である。
【0046】
<測定方法>
1.表面平滑性
図1に示すように、2個のエチレン-プロピレン-ジエンゴムシート1及び1'(10mm×50mm、厚さ2mm)の片面を、後述する水性樹脂組成物で刷毛塗りによりコーティング処理し、該処理のされていない他方の面に両面テープを貼り付け、次いで、ほぼ正方形の鉄板2(50mm×50mm、厚さ0.3mm)の向かい合う辺に沿って、該ゴム1及び1'をそれぞれ貼り付けて試験片を作製した。この鉄板2の他の二辺の一方の近くには穴3(半径1mm)が開けられており、穴3には試験片を引っ張ることができるように、ひも4(長さ50mm)が通されている。
次に、図2に示すように、該ゴムシート1及び1'を貼り付けた面が下側となるように、この試験片をガラス板5(60mm×190mm、厚さ3mm)上に載せ、更に荷重6(重量1kg)をかけた。その後、ガラス板5上を、引張速度が100mm/分となるように、ひも4を引張方向7(矢印)の方向へ水平に引っ張り、該試験片を移動させた。この時のゴムシート1及び1'の前記コーティング処理面とガラス板との動摩擦係数を測定した。
2.密着性
ブチルゴムシート(50mm×50mm、厚さ2mm)の表面、ポリプロピレン板(50mm×50mm、厚さ2mm)の表面、及び鉄板(50mm×150mm、厚さ0.2mm)の表面を、後述する水性樹脂組成物で刷毛塗りによりコーティング処理して皮膜を形成させ、この皮膜を親指で2回強く擦り、皮膜が脱落するか否かを観察した。
3.離型性
ブチルゴムシート(50mm×50mm、厚さ2mm)、及び鉄板(50mm×150mm、厚さ0.2mm)の表面を、後述する水性樹脂組成物で刷毛塗りによりコーティング処理して皮膜を形成させた。コーティング面に未加硫のブチルゴムの塊1gを置き、鉄板に挟み、プレス電熱器(庄司鉄工株式会社製)を用い190℃、10kg荷重で、10分間加熱加圧して、未加硫のブチルゴムを加硫させた。室温で30分間放冷後、加硫させたブチルゴムを手で剥がし、剥がしやすさを調べた。
【0047】
<調製例>
−(A)成分−
(調製例1)
1,000mLガラスビーカーに、下記式(5)で示される粘度65mm2/sのオルガノポリシロキサン350g、及びビニルトリメトキシシラン50gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)20g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)15g、及び水265gを加え、ホモミキサーで15分間撹拌し、更に圧力30MPaに設定した高圧ホモジナイザーに2回通すことにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-1)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。

【0048】
(調製例2)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(5)で示される粘度65mm2/sのオルガノポリシロキサン350g、及びビニルトリメトキシシラン35gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)20g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)15g、及び水280gを加え、ホモミキサーで15分間撹拌し、更に圧力30MPaに設定した高圧ホモジナイザーに2回通すことにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-2)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0049】
(調製例3)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(5)で示される粘度65mm2/sのオルガノポリシロキサン350g、及びフェニルトリメトキシシラン50gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)20g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)15g、及び水265gを加え、ホモミキサーで15分間撹拌し、更に圧力30MPaに設定した高圧ホモジナイザーに2回通すことにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-3)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0050】
(調製例4)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(5)で示される粘度65mm2/sのオルガノポリシロキサン350g、及びテトラメトキシシラン35gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)20g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)15g、及び水280gを加え、ホモミキサーで15分間撹拌し、更に圧力30MPaに設定した高圧ホモジナイザーに2回通すことにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-4)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0051】
(調製例5)
1,000mLガラスビーカーに、下記式(6)で示される粘度770mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びビニルトリメトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、10%炭酸カリウム水溶液3g、及び水378gを加え、ホモミキサーで15分間撹拌し、更に圧力100MPaに設定した高圧ホモジナイザーに2回通すことにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-5)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。

[式中、R13は−C36NHC24NH2で表される基である。]
【0052】
(調製例6)
1,000mLガラスビーカーに、下記式(7)で示される粘度11,400mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びビニルトリメトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水25gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に10%炭酸カリウム水溶液3gを加えてディスパーミキサーで10分間混練り撹拌し、これに水353gを加えて希釈することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-6)を得た。
シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。

[式中、R13は−C36NHC24NH2で表される基である。]
【0053】
(調製例7)
1,000mLガラスビーカーに、下記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びビニルトリメトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、10%炭酸カリウム水溶液3gを加えてディスパーミキサーで10分間混練り撹拌し、これに水357gを加えて希釈することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-7)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。

[式中、R13は−C36NHC24NH2で表される基である。]
【0054】
(調製例8)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びγ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、10%炭酸カリウム水溶液3gを加えてディスパーミキサーで10分間混練り撹拌し、これに水357gを加えて希釈することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-8)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0055】
(調製例9)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及び3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、10%炭酸カリウム水溶液3gを加えてディスパーミキサーで10分間混練り撹拌し、これに水357gを加えて希釈することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-9)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0056】
(調製例10)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、ディスパーミキサーで10分間混練り撹拌した後、これに水355gを加えて希釈し、ビニルトリエトキシシラン11g及び2−エチルへキサン酸鉄のミネラルスピリット溶液(金属Fe含有量=8%)5gを添加し、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-10)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0057】
(調製例11)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びフェニルトリエトキシシラン14gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、ディスパーミキサーで10分間混練り撹拌した後、これに水351gを加えて希釈し、2−エチルへキサン酸ジルコニルのミネラルスピリット溶液(金属Zr含有量=12%)6gを添加し、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-11)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0058】
(調製例12)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びテトラエトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、ディスパーミキサーで10分間混練り撹拌した後、これに水342gを加えて希釈し、ナフテン酸バナジウムのトルエン溶液(金属V含有量=2%)18gを添加し、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液物(硬化性シリコーン水性乳濁液A-12)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0059】
(調製例13)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びメチルトリエトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、ディスパーミキサーで10分間混練り撹拌した後、これに水353gを加えて希釈し、2−エチルヘキサン酸ニッケルのトルエン溶液(金属Ni含有量=6%)7gを添加し、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-13)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0060】
(調製例14)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びγ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン17gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、ディスパーミキサーで10分間混練り撹拌した後、これに水342gを加えて希釈し、2−エチルヘキサン酸バリウムのトルエン溶液(金属Ba含有量=8%)12gを添加し、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-14)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0061】
(調製例15)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びメチルトリメトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、ディスパーミキサーで10分間混練り撹拌した後、これに水356gを加えて希釈し、2−エチルヘキサン酸コバルトのミネラルスピリット溶液(金属Co含有量=12%)4gを添加し、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-15)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0062】
(調製例16)
1,000mLガラスビーカーに、下記式(9)で示される粘度232,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びメチルトリメトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、塩化カルシウム2水和物1gを加えてディスパーミキサーで10分間混練り撹拌し、これに水359gを加えて希釈することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-16)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。

【0063】
(調製例17)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(9)で示される粘度232,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びジブトキシアセチルアセトネートアルミニウム2gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、ディスパーミキサーで10分間混練り撹拌した後、これに水358gを加えて希釈し、メチルトリメトキシシラン11gを加え、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-17)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0064】
(調製例18)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(9)で示される粘度232,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びメチルトリメトキシシラン11gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、10%炭酸ナトリウム水溶液3gを加えてディスパーミキサーで10分間混練り撹拌し、これに水357gを加えて希釈することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-18)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0065】
(調製例21)
1,000mLガラスビーカーに、上記式(8)で示される粘度112,000mm2/sのオルガノポリシロキサン280gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水21gを加え、ホモミキサーで撹拌したところ、増粘が認められた。更に、ディスパーミキサーで10分間混練り撹拌した後、これに水355gを加えて希釈し、ビニルトリエトキシシラン11g及び2−エチルヘキサン酸亜鉛のミネラルスピリット溶液(金属Zn含有量=8%)5gを添加し、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-21)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させて固形物を得た。これは、指触により、タック性がなく弾性を有するものであることが確認された。
【0066】
−(B)成分−
・ポリウレタン樹脂水性乳濁液 B-1:
スーパーフレックス600(商品名、第一工業製薬(株)製、エーテル系、不揮発分=25重量%)
・ポリウレタン樹脂水性乳濁液 B-2:
スーパーフレックス150HS(商品名、第一工業製薬(株)製、エステル・エーテル系、不揮発分=38重量%)
・ポリウレタン樹脂水性乳濁液 B-3:
スーパーフレックス420NS(商品名、第一工業製薬(株)製、カーボネート系、不揮発分=32重量%)
【0067】
<実施例1〜23>
上記の調製例に示した(A)成分及び(B)成分を、表1及び表2に示した配合量(g)で配合し、これらを錨型攪拌翼により均一に混合して、(A)成分及び(B)成分(表中、有効成分)が、表1及び表2に示した重量比(表中における数値は重量部数を表す)であるコーティング剤としての水性樹脂組成物を調製した。
そして、これをエチレン-プロピレン-ジエンゴムシート、鉄板、ポリプロピレン板、及びブチルゴムシートの表面に刷毛で塗布し、150℃に設定した熱風循環式恒温槽内に5分間放置して皮膜を形成させ、上記の測定方法1〜3に従って、表面平滑性、密着性、及び離型性を測定ならびに評価した。その結果を表1及び表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
<比較例1〜4>
上記の調製例で得た(A)成分及び(B)成分以外に、必要に応じて、(A)成分として下記のA-19成分、A-20成分も用いた以外は実施例1〜23と同様にして、コーティング剤としての水性樹脂組成物を調製した。
そして、前記の調製した(A)成分及び(B)成分を、表3に示した配合量(g)で配合し、前記の操作により(A)成分及び(B)成分(表中、有効成分)が表3に示した重量比(表中における数値は重量部数を表す)である水性樹脂組成物を用いて、実施例と同様にしてエチレン-プロピレン-ジエンゴムシート、鉄板、ポリプロピレン板、及びブチルゴムシートの表面処理を行い、上記の測定方法1〜3に従って、表面平滑性、密着性、及び離型性を測定ならびに評価した。その結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
(調製例19)
1,000mLガラスビーカーに、下記式(10)で示される粘度62mm2/sのオルガノポリシロキサン350g、及びビニルトリメトキシシラン50gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)20g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)15g、10%炭酸カリウム水溶液3g、及び水262gを加え、ホモミキサーで15分間撹拌し、更に圧力30MPaに設定した高圧ホモジナイザーに2回通すことにより、シリコーンエマルジョンを得た。これに水359gを加えて希釈することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-19)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させたが、残存物は液状でありシリコーンは硬化していなかった。

【0073】
(調製例20)
1,000mLガラスビーカーに、下記式(11)で示される粘度750mm2/sのオルガノポリシロキサン280g、及びビニルトリメトキシシラン15gを仕込み、ホモミキサーで5分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=4)16g、ポリオキシエチレンデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=40)12g、及び水371gを加え、ホモミキサーで15分間撹拌し、更に圧力100MPaに設定した高圧ホモジナイザーに2回通した。そこに2−エチルへキサン酸ジルコニウムのミネラルスピリット溶液(金属Zr含有量=12%)6gを添加し、錨型撹拌翼で1時間撹拌することにより、シリコーン水性乳濁液(硬化性シリコーン水性乳濁液A-20)を得た。
該シリコーン水性乳濁液調製24時間後、数gをシャーレに採り、24時間室温下で水を揮発させたが、残存物は液状でありシリコーンは硬化していなかった。

【0074】
(評価)
上記の結果から分かるように、本発明に係る実施例1〜23においては、表面平滑性、密着性、及び離型性のいずれにおいても良好な結果が得られた。
それに対し、比較例1のように、(A−1)成分が式(1)で表される基を含有していないオルガノポリシロキサンの場合には、(A)成分の硬化性は不十分となり、その結果、得られる皮膜の表面平滑性及び密着性は乏しいものになる。
また、比較例2のように、(A−1)成分が分子鎖末端ではなく、側鎖に式(1)で表される基を含有しているオルガノポリシロキサンの場合には、(A)成分の硬化性は不十分となり、その結果、得られる皮膜の表面平滑性及び密着性は乏しいものになる。
また、比較例3のように、(B)成分のポリウレタン樹脂が配合されていない場合には、得られる皮膜の表面平滑性及び密着性は乏しいものになる。
また、比較例4のように、(B)成分のポリウレタン樹脂の添加量が多い場合には、得られる皮膜の表面平滑性及び離型性は乏しいものとなることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】皮膜の表面平滑性を評価するために使用される試験体を示す斜視図である。
【図2】上記の試験体を用いて、動摩擦係数を測定する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 エチレン-プロピレン-ジエンゴムシート
1' エチレン-プロピレン-ジエンゴムシート
2 鉄板
3 穴
4 ひも
5 ガラス板
6 荷重
7 引張方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分及び(B)成分を含む水性樹脂組成物からなることを特徴とするコーティング剤。
(A)成分:
(A−1)成分:水酸基及び式:R1O−(R1は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)で表される基からなる群から選ばれる基と、下記式(1)で表される基とが、ポリシロキサン鎖の少なくとも2つの末端の同一ケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサン、

[式中、R2は非置換又は置換の炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、R3は炭素原子数1〜4の2価炭化水素基、R4、R5及びR6はそれぞれ水素原子又は非置換もしくは置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、mは0〜6の整数であり、mが0ではないとき、前記R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは水素原子であり、またmが0であるとき、前記R5及びR6のうち少なくとも1つは水素原子である。]
(A−2)成分:下記式(2)で表されるアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、

[式中、R7は非置換又は置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基、R8は独立に炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、aは0又は1である。]
(A−3)成分:(A−1)成分と(A−2)成分の合計量100重量部に対して0〜10重量部の縮合触媒、
からなる硬化性シリコーン組成物:100重量部、
(B)成分:ポリウレタン樹脂:10〜200重量部。
【請求項2】
前記(A−1)成分に対する(A−2)成分の使用量は、(A−1)成分中の水酸基及びR1O−基の合計1モルに対し、(A−2)成分中のR8O−基の量が、0.5〜100モルとなる量である請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記(A−1)成分のオルガノポリシロキサンが、下記式(3)及び/又は(4)で表されるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング剤。

[式中、R9は独立に水素原子又は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、R10は独立に炭素原子数1〜20の1価炭化水素基、R11は請求項1に記載の式(1)で表される基、R12は独立に炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、nは10〜2,000である。]
【請求項4】
前記(A−2)成分のアルコキシシランが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のコーティング剤。
【請求項5】
前記(A−3)成分の縮合触媒が、ナトリウム化合物、アルミニウム化合物、カリウム化合物、カルシウム化合物、バナジウム化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物及びバリウム化合物から選ばれる1種以上の金属化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング剤を塗布してなる物品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−100063(P2007−100063A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80726(P2006−80726)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】