説明

コーティング組成物及びその塗装品

【課題】光触媒活性を有すると共に撥水性を長期に亘り維持することのできるコーティング層を形成するためのコーティング組成物を提供する。
【解決手段】コーティング組成物は、次の(A)〜(D)成分を含有する。
(A)Si(OR(Rは炭素数1〜8の炭化水素基)で表される4官能アルコキシシランと、Si(OR(Rは炭素数1〜8の炭化水素基、Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基)で表される3官能アルコキシシランが、モル比で1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、またはその部分加水分解縮重合物
(B)重量平均分子量が10000以下であり、前記(A)成分の固形分100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の範囲の反応性シリコーンオイル
(C)前記(A)成分の固形分100質量部に対して30〜400質量部の光触媒粒子
(D)酸または塩基触媒、及び水。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性を有すると共に撥水性を長期に亘り維持することのできるコーティング層を形成するためのコーティング組成物、及びコーティング層を備える塗装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光触媒を無機材料と複合することによって、コーティング層に防汚性、超親水性やガス分解能を付与する技術はよく知られている(特許文献1参照)。一方で光触媒との複合化だけではなく、コーティング層にさらに撥水性を付与し更なる防汚性を付与した技術も知られてきている。例えば特許文献2では疎水性樹脂と光触媒を複合することでコーティング層への撥水性と光触媒活性の付与を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3052230号
【特許文献2】特許3940983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは、コーティング層は高い光触媒活性を示すが、光触媒の特徴の一つである超親水化によって表面自由エネルギーが上昇するため、汚れ等も含めて物質が付着しやすくなる。このようなコーティング層を外壁などの外回りの部材に設ける場合は、仮に汚れが付着したとしてもコーティング層との界面で汚れが分解され、さらに雨水によって汚れが洗い流される。しかし、このようなコーティング層を内装材などの室内環境の部材に設ける場合には、汚れを水で洗い流すことが困難な場合も多く、付着した汚れは二酸化炭素にまで完全分解しない限り除去することができないものであり、これには長い時間を要してしまう。
【0005】
また、特許文献2は、特許文献1の問題を鑑み、撥水性と光触媒活性を両立したコーティング層に関する技術であるが、コーティング層は初期には撥水性を発揮するものの、時間の経過と共に親水化してしまう為、長期に亘る低付着性・撥水性を実現することができないといった問題が存在した。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、光触媒活性を有すると共に撥水性を長期に亘り維持することのできるコーティング層を形成するためのコーティング組成物及びコーティング層を備える塗装品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
コーティング組成物の光触媒活性の評価方法として、作製したコーティング層を一定濃度のアセトアルデヒドに曝し、コーティング層に光を照射した後のアセトアルデヒド濃度の減少を調べる方法がある。本発明は、光を照射した後のアセトアルデヒド濃度をより減少させることを目標として検討を進めたものである。
【0008】
本発明に係るコーティング組成物は、次の(A)〜(D)成分を含有することを特徴とするものである。
(A)一般式Si(OR(Rはそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示す)で表される4官能アルコキシシランと、一般式Si(OR(Rはそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基を示す)で表される3官能アルコキシシランが、モル比で1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、またはその部分加水分解縮重合物、
(B)重量平均分子量が10000以下であり、前記(A)成分の固形分100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の範囲の反応性シリコーンオイル、
(C)前記(A)成分の固形分100質量部に対して30〜400質量部の光触媒粒子、
(D)酸または塩基触媒、及び水。
【0009】
このように、4官能アルコキシシランと3官能アルコキシシランとを所定の割合で使用すると共に、反応性シリコーンオイルと、光触媒を所定の割合で使用することにより、光触媒活性を有すると共に撥水性を長期に亘り維持することのできるコーティング層を形成するためのコーティング組成物を得ることができるものである。
【0010】
また、本発明において、(B)成分が、下記式(1)または(2)で示す構造で表される、片末端型反応性シリコーンオイルであることが好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
(式(1)において、Rはメチル基、エチル基又はプロピル基を、Rはメチレン基又はエチレン基を、nは1〜100の整数を示す。式(2)において、R、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基又はプロピル基を示し、R及びRはそれぞれ独立にメチレン基又はエチレン基を示し、mは1〜100の整数を示す。)
この場合、撥水性及び光触媒活性に加えて、優れた滑落性を有したコーティング層を形成するためのコーティング組成物を得ることができる。
【0013】
また、本発明において、(B)成分の重量平均分子量が1000〜4000の範囲であることが好ましい。前記重量平均分子量はゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される値であり、分子量の標準サンプルには標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いた。この場合、(B)成分の反応性シリコーンオイルが、(A)成分によって形成されるシリコーン樹脂マトリクス内部に取り込まれることがなく、また、(C)成分の光触媒の周りを覆ってしまうこともないため、優れた光触媒機能を有すると共に撥水性を長期に亘り維持することのできるコーティング層を形成するためのコーティング組成物を得ることができるものである。
【0014】
また、本発明に係る塗装品は、上記コーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層が紫外線照射後でも撥水性を維持し、且つ光触媒機能を有することを特徴とするものである。この場合、光触媒機能を有すると共に優れた撥水性を長期に亘り維持することのできるコーティング層を備えた塗装品を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光触媒活性を有すると共に撥水性を長期に亘り維持することのできるコーティング層を形成するためのコーティング組成物、及びコーティング層を備える塗装品を得ることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
コーティング組成物は、次の(A)〜(D)成分を含有する。
【0018】
(A)成分は、コーティング組成物の樹脂マトリクスを形成する成分であり、4官能アルコキシシランと、3官能アルコキシシランとを含有すると共に、前者対後者のモル比が1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、又はその部分加水分解縮重合物である。
【0019】
ここで、アルコキシシランは、中心原子であるSiが有するアルコキシ基の数に応じて、例えばアルコキシ基を1個有する場合には1官能アルコキシシラン、4個有する場合には4官能アルコキシシランと呼ぶ。本実施形態では、3官能と4官能のアルコキシシランを所定の割合で配合することによって、コーティング層の造膜性と硬度のバランスを確保している。
【0020】
4官能アルコキシシランと3官能アルコキシシランの配合の比率は、前記のとおり前者対後者のモル比が1:1〜1:5の範囲であれば特に制限されない。この範囲であることにより、4官能アルコキシシランの配合比率が多すぎることにより成膜後の塗膜が硬すぎてコーティング組成物にクラックが生じやすくなったり、3官能アルコキシシランの配合比率が多すぎることにより造膜性が悪くなりコーティング組成物の表面状態が悪くなってしまったりすることを防ぐことができる。
【0021】
4官能アルコキシシランは、一般式Si(ORで表され、テトラアルコキシシランとも呼ばれるものである。この一般式中のRはそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子で置換したフッ素化アルキル基も含まれる。この一般式におけるRで表される炭化水素基の具体例としては、直鎖状、分岐状あるいは環状のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。このような4官能アルコキシシランのうち、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン又はテトラt−ブトキシシランが好適に使用される。
【0022】
3官能アルコキシシランは、一般式Si(ORで表され、トリアルコキシシランとも呼ばれるものである。ただし、一般式中のRはそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子で置換したフッ素化アルキル基も含まれる。また、Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基を示すものである。
【0023】
この3官能アルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0024】
上記4官能アルコキシシラン、3官能アルコキシランの一般式において、R、R、Rは、いずれも特に炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。特に、コーティング組成物への低表面自由エネルギー発現、架橋性、耐薬品性等の面からR、R、Rがメチル基、エチル基のいずれかであることが好ましく、特にR、R、Rの全てがメチル基であることが好ましい。
【0025】
尚、R、R、Rが炭素数4を超えるアルキル基である場合には、均一なコーティング組成物を調製するために要する有機溶剤の量が多くなる場合があり、また加水分解性が低下することで、コーティング層でのSiOH基(シラノール基)の生成速度が緩慢となり、架橋性が悪くなる傾向がある。
【0026】
また、(A)成分として3官能アルコキシシラン及び4官能アルコキシシランは、その全てが単量体であってもよく、またその一部又は全部が部分加水分解縮合物となっていてもよい。(A)成分がアルコキシシランの部分加水分解縮合物を含有する場合には、この部分加水分解縮合物の重量平均分子量は500〜10000の範囲であることが好ましい。このようなアルコキシシランの部分加水分解縮合物としては、例えば、4官能アルコキシシランであるテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物であるポリメトキシポリシロキサンとして三菱化学(株)製「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」等が挙げられる。
【0027】
(B)成分はコーティング層に耐クラック性、レベリング性、撥水性を付与させる成分であり、特に撥水性の効果を向上させることができる成分である。(B)成分のシリコーンオイルは反応性のものであれば特に構造は特に限定はされない。(B)成分の反応性シリコーンオイルは重量平均分子量が10000以下のものであれば特に限定はされないが、重量平均分子量が4000以下であることが好ましい。また、重量平均分子量の下限値は特に限定はされないが1000以上であることが好ましい。重量平均分子量を10000以下とすることにより、反応性シリコーンオイルが光触媒の回りを覆って光触媒の活性点が失活してしまい、光触媒活性の発現性が低下するということを防ぐことができる。また、重量平均分子量を1000以上とすることにより、反応性シリコーンオイルの分子量が低く、樹脂マトリックスの内部に取り込まれてしまい撥水性発現の効果が低下するということを防ぐことができる。
【0028】
また、(B)成分の反応性シリコーンオイルは既述の[化1]の式(1)又は式(2)に示される構造で表される、水酸基を1又は2個有する片末端型反応性シリコーンオイルであることが好ましい。この場合、コーティング層に単純に水等の液滴を弾くという撥水性だけではなく、液滴が滑落するという滑落性を付与することができる。
【0029】
ここで、前記滑落性について説明する。滑落性とは水等の液滴が如何に基材表面から転落しやすいかのことであり、滑落性を向上させるためには少なくとも下記2点が必要である。
(1)コーティング層の表面の水との接触角を大きくして液滴とコーティング層との接触面積を低減する。
(2)液滴とコーティング層との接触面の表面摩擦抵抗を下げる。
【0030】
滑落性の評価方法としては、所定重量の液滴を対象表面に載せ、一定速度で対象表面に傾斜角をつけていった際、液滴と対象表面との接触面の前端、後端ともに動き出したときの角度を測定する手法が一般的である。この動き出す瞬間の角度を滑落角又は転落角とよび、コーティング層に滑落性を付与するにあたっては、より転落角を低くすること、及びより小さい重量の液滴が滑落することがより好ましいものである。
【0031】
既述の[化1]の式(1)又は式(2)に示す構造の片末端型反応性シリコーンオイルとしては、例えば、ジオール変性片末端型反応性シリコーンオイルやカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルなどが挙げられる。反応性シリコーンオイルの構造中の水酸基は、(A)成分で形成される樹脂マトリクス中のシラノール基と効率的に反応し、(A)成分で形成されるシリコーン樹脂マトリクスに(B)成分の反応性シリコーンオイルを効率よく固定化する効果がある。また、片末端型反応性シリコーンオイルは一方の末端のみが反応するので撥水成分を効果的に表層に浮かすことができるので、少量で効率よくコーティング組成物に撥水性を付与することができる。一方、シリコーンオイルの水酸基数が0であれば、シリコーン樹脂マトリクス中のシラノール基との反応が遅くなってしまい、シリコーン樹脂マトリクスの中に取り込まれない為に、シリコーンオイルが固定化されにくく撥水維持性が低くなってしまう。また、両末端型反応性シリコーンオイルや側鎖型反応性シリコーンオイルではシラノールとの反応点が増える為、樹脂マトリックスの内部に取り込まれてしまい撥水性の発現性が十分で無くなるおそれがある。
【0032】
コーティング組成物中の(B)成分の配合割合は、(A)成分の固形分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内とする。(B)成分の配合量を0.1質量部以上とすることにより、撥水性向上の効果が小さくなって高滑落性の発現性が低くなったり、得られなかったりすることを防ぐことができる。また、配合量を10質量部以下とすることにより、コーティング組成物の塗膜の硬度が低くなったり塗膜の硬化速度が遅くなったりすることを防ぐことができる。
【0033】
(C)成分は光触媒であり、コーティング層に光触媒活性を与える成分である。ここで光触媒について説明すると、光触媒とは、その結晶の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギーの光を照射したときに、価電子帯中の電子の励起が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる物質を意味する。(C)成分は通常の光触媒機能を有する成分であれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化レニウム、および、これらの単独または2種以上の混合物や金属、色素を担持したものが挙げられる。
【0034】
(C)成分の粒径は特には限定されないが、分散性や光触媒機能付与の面を考えると2〜200nmの範囲内であることが好ましく、5〜100nmの範囲内であることがより好ましい。
【0035】
また、(C)成分として水分散性またはアルコール等の非水系の有機溶媒分散性の粒子のゾルを使用することもできる。一般にこの様な分散ゾルは、固形分としての粒子成分を5〜50質量%含有しており、この値から粒子の配合量を決定できる。水分散性の微粒子ゾルを用いる場合、固形分以外の成分として存在する水は、後述の(D)成分における水に該当し、(A)成分の加水分解に用いることができるとともに、コーティング組成物中の(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進してこのコーティング組成物を硬化させるための硬化剤として用いることができる。
【0036】
有機溶媒分散性粒子ゾルを用いる場合、粒子を分散している溶媒の種類は特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体、及びジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの親水性有機溶媒と併用して、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなども用いることができる。
【0037】
コーティング組成物中の(C)成分の配合割合は、(A)成分の固形分100質量部に対して、30〜400質量部の範囲であることが好ましい。(C)成分の配合量を30質量部以上とすることにより、光触媒粒子が塗膜表層に出てこないため光触媒機能の効果が小さくなることに伴いガス分解能の発現性が低くなったり、得られなかったりするということを防ぐことができる。また配合量を400質量部以下とすることにより、コーティング層を形成する際に寄与しない成分が増えて、コーティング層の硬度等の物性が低下したりすることを防ぐことができる。
【0038】
(D)成分は酸または塩基性触媒、並びに水であり、(A)成分の加水分解、並びにコーティング組成物中の(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進してこのコーティング組成物を硬化させる作用を発揮する。
【0039】
(D)成分の酸または塩基性触媒の例としては特に限定されないが、例えば、アルキルチタン酸塩類;オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレエート等のカルボン酸金属塩類;ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミン塩類;酢酸テトラメチルアンモニウム等のカルボン酸第4級アンモニウム塩;テトラエチルペンタミン等のアミン類、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤;p−トルエンスルホン酸、フタル酸、塩酸等の酸類;アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウム化合物、酢酸リチウム、蟻酸リチウム、蟻酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルモノクロロシラン等のハロゲン化シラン類等が挙げられる。但し、これら以外であっても、(A)成分と(B)成分との縮合反応の促進に有効なものであれば特に制限はない
コーティング組成物中の酸または塩基性触媒の配合割合は、特に限定はされないが、例えば(A)成分と(B)成分との固形分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.0001〜10質量部の範囲内、より好ましくは0.0005〜8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.0007〜5質量部の範囲内である。(D)成分の配合量を0.0001質量部以上とすることにより、コーティング組成物の硬化性が低下することを防ぎ、コーティング層に十分な硬度を与えることができる。また、配合量を10質量部以下とすることにより、コーティング層の耐熱性が低下したり、コーティング層の硬度が高くなりすぎてクラックを生じたりすることを防ぐことができる。
【0040】
また、水の含有量は、(A)成分と(B)成分の固形分の合計量100質量部に対して5〜45質量部の範囲内が好ましい。水の含有量が過少であると樹脂の反応が不十分となり、コーティング層の硬度が低下する傾向が生じる。また、過剰すぎるとコーティング層の硬度が高くなりすぎクラックを生じやすくなったり、(B)成分は疎水性を有するため相溶しなくなり、コーティング組成物中に取り込まれなくなったりする恐れがある。
【0041】
また、このコーティング組成物は必要に応じ、レベリング剤、染料、金属粉、ガラス粉、抗菌剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等も、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で含有していてもよい。
【0042】
また、コーティング用樹脂組成物は、取り扱いの容易さから必要に応じて各種有機溶媒で希釈して使用できる。また、コーティング組成物の使用時に有機溶媒を添加するようにしてもよい。
【0043】
有機溶媒としては、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;および、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム、ジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。有機溶媒での希釈割合は、特に制限はなく、必要に応じて希釈割合を適宜決定すればよい。
【0044】
上記のコーティング組成物を各種基材に塗布成膜することによって、コーティング層を備える塗装品を得ることができる。
【0045】
基材としては、特に限定されるわけではないが、例えば、無機質基材、セラミックス基材、有機質基材、無機有機複合基材等が挙げられる。
【0046】
無機質基材としては、例えば、金属基材;ガラス基材;ホーロー;水ガラス化粧板、無機質硬化体等の無機質建材;セラミックス等が挙げられる。
【0047】
金属基材としては、各種の金属や合金から形成されたものを用いることができ、例えばアルミニウム、ジュラルミン等のアルミニウム合金、銅、亜鉛等の非鉄金属から形成された基材;鉄製の基材;圧延鋼、溶融亜鉛めっき鋼、(圧延)ステンレス鋼、ブリキ等の鋼材から形成された基材などを用いることができる。
【0048】
ガラス基材としては、例えば、ナトリウムガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、無アルカリガラス等から形成された基材が挙げられる。
【0049】
前記ホーローとは、金属表面にガラス質のホーローぐすりを焼き付け、被覆したものである。その素地金属としては、例えば軟鋼板、鋼板、鋳鉄、アルミニウム等が挙げられるが、特に限定はされない。ホーローぐすりも通常のものを用いればよく、特に限定はされない。
【0050】
前記水ガラス化粧板とは、例えば、ケイ酸ソーダをスレートなどのセメント基材に塗布し、焼き付けた化粧板などを指すものである。無機質硬化体としては、特に限定はされないが、例えば、繊維強化セメント板、窯業系サイディング、木毛セメント板、パルプセメント板、スレート・木毛セメント積層板、石膏ボード製品、粘土瓦、厚形スレート、陶磁器質タイル、建築用コンクリートブロック、テラゾ、プレストレストコンクリートダブルTスラブ、ALCパネル、空洞プレストレストコンクリートパネル、普通煉瓦等の無機材料を硬化、成形させた基材全般を用いることができる。
【0051】
セラミックス基材としては、例えばアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等から形成された基材が挙げられる。
【0052】
有機質基材としては例えば、プラスチック、木、木材、紙等が挙げられる。プラスチック基材としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性もしくは熱可塑性プラスチック、及びこれらのプラスチックをナイロン繊維等の有機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等から形成された基材が挙げられる。
【0053】
無機有機複合基材としては、例えば上記プラスチックをガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等から形成された基材が挙げられる。
【0054】
また、コーティング組成物を基材上に塗装する際、基材上に有機系の樹脂組成物を塗布して被膜を形成した後、この有機被膜上にコーティング組成物を塗装するようにしてもよい。前記有機被膜としては、特に限定はされないが、たとえば、アクリル系、アルキド系、ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、アクリルシリコーン系、塩化ゴム系、フェノール系、メラミン系等の有機樹脂を含むコーティング材の硬化被膜等が挙げられる。
【0055】
コーティング組成物の各種基材への塗布方法としては、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が好適に利用できる。硬化方法としては熱処理、室温放置などにより重合させて行うことができる。
【0056】
上記のコーティング組成物及びこれを用いた塗装品は、例えば、下記用途に用いることができる。
1)撥水性が要求される車両用。
具体的な適用例は、自動車ボディー、フロントガラス、サイドミラー、サンルーフ、電車等の車両、マスキングフィルム等。
2)排ガス、煤煙、粉塵等による汚染防止が要求される道路トンネルや高速道路防音壁。
具体的な適用例は、トンネル内装板、ガードレール、防音壁、標識、道路照明ポール等。
3)油汚れ防止が要求されるレンジ回り。
具体的な適用例は、レンジフード、レンジ周辺、カバーフィルム、収納扉、レンジ台、換気扇、キッチン照明カバー、冷蔵庫カバー等。
4)汚染防止が要求される家庭内用品。
具体的な適用例は、浴槽、浴室内壁、浴室内床、壁紙、壁、床等。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0058】
(実施例1)
反応容器中に、メチルポリシリケート(テトラメトキシシランの加水分解重縮合物;コルコート株式会社製、商品名メチルシリケート51;固形分100質量%)を3.5質量部、メチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品番TSL−8113:固形分100質量%)を2質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)を0.3質量部、イオン交換水を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液0.06質量部、メタノール74.5質量部、ダイアセトンアルコールを10質量部、酸化チタンの水分散体(石原産業株式会社製、品番;STS−01、固形分30質量%)8.3質量部を投入し、7時間攪拌することでコーティング組成物を調整した。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0059】
基材としてガラス板を用い、このガラス板にコーティング組成物をエアスプレーにて乾燥膜厚が0.5〜2μmになるように塗装し、150℃の温度で10分焼き付けることによって、塗装板を作製した。
【0060】
(実施例2)
メチルポリシリケートの使用量を4.2質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を1.2質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:1である。
【0061】
(実施例3)
メチルポリシリケートの使用量を3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.5質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:3である。
【0062】
(実施例4)
メチルポリシリケートの使用量を2.1質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を3.3質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:5である。
【0063】
(実施例5)
メチルポリシリケートの使用量を3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.5質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.0007質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:3である。
【0064】
(実施例6)
メチルポリシリケートの使用量を3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.5質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を5質量部、メタノールの使用量を70質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:3である。
【0065】
(実施例7)
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170DX;固形分100質量%;重量平均分子量5900)を使用し、その他は実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0066】
(実施例8)
メチルポリシリケートの使用量を3.3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.45質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0067】
(実施例9)
メチルポリシリケートの使用量を3.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.01質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.07質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0068】
(実施例10)
メチルポリシリケート(テトラメトキシシランの加水分解重縮合物;コルコート株式会社製、商品名メチルシリケート51;固形分100質量%)に代えて、エチルポリシリケート(テトラエトキシシランの加水分解重縮合物;コルコート株式会社製、品番KBE−04;固形分100質量%)を使用し、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0069】
(実施例11)
メチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品番TSL−8113:固形分100質量%)に代えて、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製、品番KBM−503;固形分100質量%)を使用し、その他は実施例1と同様にして塗装板を作製した。尚、テトラメトキシシランと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0070】
(実施例12)
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、カルビノール変性両末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−160AS;固形分100質量%;重量平均分子量1000)を使用し、その他は実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0071】
(実施例13)
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、カルビノール変性側鎖型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−4039;固形分100質量%;重量平均分子量4000)を使用し、その他は実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0072】
(実施例14)
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、カルビノール変性側鎖端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−4015;固形分100質量%;重量平均分子量10000)を使用し、その他は実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0073】
(比較例1)
無機系撥水性塗料であるフレッセラP(パナソニック電工株式会社製)をガラス板にエアスプレーにて乾燥膜厚が0.5〜2μmになるように塗装し、80℃の温度で30分焼き付けることによって、塗装板を作製した。
【0074】
(比較例2)
反応容器中に、メチルポリシリケート(テトラメトキシシランの加水分解重縮合物;コルコート株式会社製、商品名メチルシリケート51;固形分100質量%)を29質量部、メチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品番TSL−8113:固形分100質量%)を17質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)を0.5質量部、イオン交換水を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液0.5質量部、メタノール45質量部を投入し、7時間攪拌することでコーティング組成物を調整した。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0075】
基材としてガラス板を用い、このガラス板にコーティング組成物をエアスプレーにて乾燥膜厚が0.5〜2μmになるように塗装し、150℃の温度で10分焼き付けることによって、塗装板を作製した。
(比較例3)
メチルポリシリケートの使用量を6.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を3.8質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.6質量部、イオン交換水の使用量を2質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を78質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を0.2質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0076】
(比較例4)
メチルポリシリケートの使用量を0.7質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を0.4質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.06質量部、イオン交換水の使用量を0.2質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.01質量部、メタノールの使用量を75質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を15質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0077】
(比較例5)
メチルポリシリケートの使用量を5.3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を0.2質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は9:1である。
【0078】
(比較例6)
メチルポリシリケートの使用量を5.3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を0.8質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は2:1である。
【0079】
(比較例7)
メチルポリシリケートの使用量を1.6質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を4質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:9である。
【0080】
(比較例8)
メチルポリシリケートの使用量を5.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.1質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルを使用せず、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0081】
(比較例9)
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、式(1)に示す構造を有するジオール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−176F;固形分100質量%;重量平均分子量18000)を使用し、その他は実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0082】
(比較例10)
メチルポリシリケートの使用量を2質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を1質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を76.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0083】
(比較例11)
メチルポリシリケートの使用量を3.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.003質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.06質量部、メタノールの使用量を74.5質量部、ダイアセトンアルコールの使用量を10質量部、酸化チタンの水分散体の使用量を8.3質量部とし、その他は実施例1と同様にして塗装品を得た。尚、テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2である。
【0084】
(比較例12)
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、メタクリル変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−2426;固形分100質量%;重量平均分子量10000)を使用し、その他は実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0085】
(評価方法)
上記のようにして作製した実施例1〜14及び比較例1〜12の塗装板を次のような測定によって評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0086】
(耐紫外線撥水維持性測定)
コーティング組成物の塗膜が乾燥膜厚2μmである塗装板を、1mW/cmのブラックライト(AS ONE株式会社製、Handy UV Lamp LUV−16)照射条件下に24時間置いた。紫外線照射後、塗板を接触角計(協和界面科学株式会社製、型番CA−VP)で水の接触角を測定し、撥水性の確認を行った。結果を次のように評価した。
○:水の接触角81度以上
△:水の接触角70〜80度
×:水の接触角70度未満
(光触媒活性測定)
コーティング組成物の塗膜が乾燥膜厚2μmである塗装板を、バックサイズ3Lのテドラーバックの中に適当量の純空気と共に封入後、1mW/cmのブラックライト(AS ONE株式会社製、Handy UV Lamp LUV−16)照射条件下で24時間初期化を行った。初期化後500ppmとなる様に25℃、50%の空気で調製したアセトアルデヒドを気積1.8Lとなる様に封入した。アセトアルデヒドを封入後、16時間以上吸着させた。そして、前記吸着後に1mW/cmのブラックライト(AS ONE株式会社製、Handy UV Lamp LUV−16)照射条件下でガス分解を光音響測定法(INNOVAマルチガスモニター)によって24時間後に測定した。結果を次のように評価した。
〇:24時間後のアセトアルデヒド濃度が初期と比較して10%以上低下
×:24時間後のアセトアルデヒド濃度が初期と比較して10%未満低下
(限界膜厚測定)
コーティング組成物の塗膜が乾燥膜厚0.5μmおよび2μmである塗装板の塗膜のクラックを観察した。結果を次のように評価した。
○:2μm以上でクラックなし
△:0.6〜1.9μmでクラックなし
×:0.5μm以下でクラックあり
(表面状態の観察)
コーティング組成物の塗膜が乾燥膜厚1μmである塗装板の塗膜の状態を目視で観察した。結果を次のように評価した。
○:異常なし
△:表面にブリード物あり
×:表面凹凸もしくはヨリあり
(被膜硬度測定)
JISK5600−5−4に従う鉛筆法により、塗装板のコーティング組成物の塗膜の硬度を測定した。
【0087】
(滑落角測定)
塗装板を接触角計(協和界面科学株式会社製、型番CA−VP)に水平に固定し、水平に載置された塗装板上に蒸留水を20mg滴下して水滴を形成し、ついで塗装板を角度5度ずつ傾斜させていき、水滴が転がり始めたときの塗装板の角度を測定した。結果を次のように評価した。尚、結果は初回の滑落角に基づくものである。
○:20度以下の角度で転がる
△:21〜30度の角度で転がる
×:31度以上の角度でも転がらない
(耐水撥水維持性試験)
コーティング組成物の塗膜が乾燥膜厚2μmである塗装板を、イオン交換水の入った容器に24時間浸漬した後、接触角計(協和界面科学株式会社製、型番CA−VP)で水の接触角を測定し、撥水性の確認を行った。結果を次のように評価した。
○:水の接触角81度以上
△:水の接触角70〜80度
×:水の接触角70度未満
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)〜(D)成分を含有することを特徴とするコーティング組成物;
(A)一般式Si(OR(Rはそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示す)で表される4官能アルコキシシランと、一般式Si(OR(Rはそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基を示す)で表される3官能アルコキシシランが、モル比で1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、またはその部分加水分解縮重合物、
(B)重量平均分子量が10000以下であり、前記(A)成分の固形分100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の範囲の反応性シリコーンオイル、
(C)前記(A)成分の固形分100質量部に対して30〜400質量部の光触媒粒子、
(D)酸または塩基触媒、及び水。
【請求項2】
前記(B)成分が、下記式(1)または(2)で示す構造で表される、片末端型反応性シリコーンオイルであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【化1】

(式(1)において、Rはメチル基、エチル基又はプロピル基を、Rはメチレン基又はエチレン基を、nは1〜100の整数を示す。式(2)において、R、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基又はプロピル基を示し、R及びRはそれぞれ独立にメチレン基又はエチレン基を示し、mは1〜100の整数を示す。)
【請求項3】
前記(B)成分の重量平均分子量が1000〜4000の範囲であることを特徴とするとする請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のコーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層が紫外線照射後でも撥水性を維持し、且つ光触媒機能を有することを特徴とする塗装品。

【公開番号】特開2011−111505(P2011−111505A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268070(P2009−268070)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】