説明

コーティング組成物及びそれにより被覆された編織布

改良された硬化性及び、特にエアバッグの製造で使用される合成テキスタイル等の様々な基材への改良された接着性、並びに良好な気圧保持性能を示す硬化性被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編織布(textile fabrics)上に被覆して硬化した場合に優れた自己接着性を有する新規な硬化性シリコーン組成物に関する。
本発明の被覆は、耐揉試験に関して被覆されたファブリック性能へ優れた接着性を提供すると共に、良好な気圧保持性能を提供する。
このような新規な硬化性シリコーン組成物を使用したエアバッグファブリックも又、本発明の範囲内である。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの自動車両は、車両の減速度を測定する加速度センサーを備えている。参考減速値を超えると、爆発性ペレットが追加充填物の燃焼を引き起こし、次に可燃性固体の燃焼が起こる。この固体はガス(例えば窒素)へ変換されてクッションを膨脹させる。エアバッグ(又は膨脹式クッション)は、折りたたまれ緊密縫製されたポリアミドファブリックでできた空気充填バッグである。これら人体保護バッグ又は「エアバッグ」について更に詳細には、特に米国特許5193847号を参照できる。
【0003】
歴史的に、これらバッグは合成繊維、例えばポリアミド、のウェッブにより形成され、その少なくとも1の面をポリクロロプレン等のエラストマー層で被覆されていた。しかし、折りたたまれたエアバッグ完成品サイズの縮小要求や、ポリクロロプレンには熱履歴により劣化して有害な化学物(塩酸成分)を放出する傾向があるため、この用途ではシリコーン組成物が容易にポリクロロプレンと代替されるようになった。
【0004】
従って、シリコーン組成物には、車両の乗員用人体保護バッグ、又は「エアバッグ」として公知のバッグの製造に使用するための可撓性の織物、編物又は不織材料を被覆する重要な用途がある。
【0005】
シリコーン被覆性能の向上を目的として、先行技術である米国特許公開2005137321号は、ポリオルガノシロキサン樹脂及び炭酸カルシウムからなる添加剤を含むシリコン組成物を使用してエアバッグ用の被覆されたファブリックの引き裂き耐性及びコーミング耐性を改良する方法を記載している。ファブリックサポート(基材)を上記組成物で被覆して架橋した後、被覆されたサポートは、接着性、耐性特性、及び高度の引き裂き耐性及びコーミング耐性を示す。
【0006】
従来のシリコーン組成物で被覆されたファブリックは、一般的エアバッグ用途では十分満足させるが、エアバッグ産業は現在、加圧された流体がファブリック包体(envelope)内に比較的長期間保持される要求を満たすことを求められている。この要求は、例えば自動車産業用のサイドカーテンエアバッグの被覆用途に存在する。現在カーテンエアバッグは、運転手用及び乗客用サイドバッグとして素早く膨脹するように設計されているが、転覆及び側面衝撃中に乗員を保護するために気体は非常にゆっくりと抜けてしぼまなければならない。サイドカーテンが展開すると、乗客と窓等の車体のいくつかの側面との間にクッション性カーテンを形成する。従来の運転手用及び乗客用エアバッグの場合のように衝撃そのものを和らげるだけではなく、車が回転した場合に乗客を保護することも目的としているので、サイドカーテンエアバッグは、そのような回転プロセス中、充分に加圧されていることが重要である。従来の運転手用及び乗客用エアバッグはコンマ何秒かの間、圧力を保持することのみを必要とされたが、サイドカーテンエアバッグは適切な圧力を数秒間保持することが求められる。例えば飛行機用緊急(脱出)シュート、膨脹式いかだ等、加圧されたファブリック構造が比較的長期間、所定の流体圧力を保持することを求められる類似の用途も存在する。従って現在、バッグが瞬間的急速膨脹中に最大圧力を経た後、非常に遅い漏れ速度を示すことが求められている。そのため、バッグ上の被覆は、バッグが非常に急速に膨脹する時の衝撃及びストレスを耐えるのに充分な能力が必要である。
【0007】
シリコーンポリマーは、優れた熱的特性を有するが、他のエラストマーと比較して比較的高いガス透過性を有する。これは従来のエアバッグに使用される被覆では、保持時間要求が非常に小さかったため問題では無かった。高い空気保持能を求めるサイドカーテンの出現により、目的とする更なるレベルでの必要な保持能力を達成するための問題が注目されるようになった。
【0008】
又、従来のシリコーン組成物の硬化で得られたシリコーンゴムは、本来接着性に劣り、繊維へ結合又は接着する能力に問題を有する。この問題に対処するため、適切な添加剤成分をシリコーンゴム原料組成物へ添加することにより、シリコーンゴムへ自己接着性を付与する試みがされてきた。
【0009】
例えば、先行技術である米国特許5296298号には、エアバッグサポート(基材)への良好な接着性を示すシリコーン組成物の例が記載されている。しかし、これら組成物は、エアバッグのスリップ性を調整する点で.エアバッグ製造者の新たな期待には添わないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5193847号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2005137321号明細書
【特許文献3】米国特許第5296298号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
更に、エアバッグ分野で使用される、「耐揉試験法(Crease Flex Testing method)」等の標準試験の要求を満たす良好な接着性の要求がある。この方法は、繰り返し屈曲で適用され、乾燥段階及びシリコーンでカバーされ、エアバッグ用に使用される材料により達成される接着性を測定できる。
本発明は、上記先行技術の問題点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の概略:
この点において、本発明の本質的主題の一つは、重付加又はフリーラジカル反応により硬化できるシリコーンコーティング組成物であって、車両用膨脹式安全バッグ又はエアバッグの分野用途で特に有用であり、ファブリック上の硬化及び被覆後、圧力保持特性(空気保持)、急激な膨脹への高い耐性、スリップ性、即ち良好な摩擦係数、耐摩耗性(耐摩擦剥離性)、基材への高い接着性及び良好な耐熱性、の観点から最適な特性を有する組成物を提供する。本発明のシリコーンコーティング組成物で被覆されたエアバッグも又、本発明で開示される。この被覆は、被覆されたファブリックへの優れた接着性を有し、良好な気圧保持性能及び耐揉試験に関する良好な性能を提供する。この新規な硬化性シリコーン組成物を使用したエアバッグファブリックも又、この発明の範囲内である。
【0013】
詳細な説明:
本発明の第一態様では、編織布を被覆するのに有用な硬化性シリコーン組成物(A)であり、下記を含む組成物を提供する:
(1)成分(a−1)又は(a−2);
−(a−1)少なくとも1の有機過酸化物をベースとする触媒の作用により硬化可能な少なくとも1のポリオルガノシロキサン;及び
−(a−2)重付加反応により硬化可能なポリオルガノシロキサンブレンドであり、下記を含むブレンド;
平均で少なくとも2個のシリコン結合された脂肪族性不飽和炭化水素置換基を分子上に有する少なくとも1のオルガノポリシロキサン(I)、並びに
平均で少なくとも2個、最も好ましくは少なくとも3個のシリコン結合された水素を分子上に有する、少なくとも1のオルガノポリオルガノシロキサン(II)及び/又は少なくとも1のオルガノシリコン架橋剤(II’);
(2)有効量の硬化触媒(III)、但し成分(a−1)が使用される場合は、少なくとも1の有機過酸化物からなり、成分(a−2)が使用される場合は、脂肪族性不飽和炭化水素置換基とSiH基との反応を促進できる少なくとも1の触媒からなる;
(3)硬化性シリコーン組成物100重量部当たり少なくとも10重量部の、式MMViQのオルガノポリシロキサン樹脂(IV)であって本質的に下記からなる樹脂(IV);
−(a)式R’R2SiO1/2の一価のシロキサンユニットMVi
−(b)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
−(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
但し、Rは一価の炭化水素基を表し、R’はビニル基を表す;
(4)上記オルガノポリシロキサン樹脂(IV)と異なるオルガノポリシロキサン樹脂(V)であり、式R3SiO1/2のMシロキサンユニット、式R2SiO2/2のDシロキサンユニット、式RSiO3/2のTシロキサンユニット、及び式SiO4/2のQシロキサンユニットの群から選ばれる少なくとも2の異なるシロキサンユニットを含む樹脂(V);
但し、Rは一価の炭化水素基を表し、これらシロキサンユニットの少なくとも1はT又はQシロキサンユニットであり、少なくとも1のM、D及びTシロキサンユニットはアルケニル基を含む;
(5)少なくとも1の接着促進剤(VI);
(6)少なくとも1の強化充填剤(VII);
(7)任意の、少なくとも1のポリジオルガノシロキサンガム(XI)であり、直鎖状又は部分的に分岐したホモポリマー又はコポリマーであり、1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有し、上記ガムは25℃で500,000mPa・sを超える粘度を有するガム(XI);
(8)任意の、少なくとも1の硬化防止剤(VIII);
(9)任意の、少なくとも1の着色添加剤(IX);並びに
(10)任意の、少なくとも1の耐火性(fire resistance)改良添加剤(X)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
出願人は、下記特別な組み合わせの存在の重要性を示す;
硬化性シリコーン組成物100重量部当たり少なくとも10重量部の、式MMViQのオルガノポリシロキサン樹脂(IV)、及び
上記オルガノポリシロキサン樹脂(IV)と異なるオルガノポリシロキサン樹脂(V)であり、その構造中にアルケニル基を有する樹脂(V)。
【0015】
上記硬化性シリコーンコーティング組成物中のこれら特別な組み合わせの存在は、良好な気圧保持性能及び、被覆されたファブリックの耐揉試験(接着性)に関して良好な性能を提供する。
【0016】
更に驚くべきことに、この利点は、シリコーンコーティングのその他の強さ(hardness)、機械的強度、表面均一性及び耐熱性特性を犠牲にして失われることはない。
【0017】
本発明の好ましい態様では、オルガノポリシロキサン樹脂(IV)が、硬化性シリコーン組成物100重量部当たり15〜50重量部、最も好ましくは硬化性シリコーン組成物100重量部当たり20〜40重量部で存在する。
本発明の好ましい態様では、オルガノポリシロキサン樹脂(V)が、硬化性シリコーン組成物100重量部当たり1〜50重量部で添加される。
【0018】
好ましくは、オルガノポリシロキサン樹脂(V)は下記群から選ばれる;
本質的に下記からなる式MTViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式R’SiO3/2の三価のシロキサンユニットTVi
−(b)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
−(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
本質的に下記からなる式MDViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式RR’SiO2/2の二価のシロキサンユニットDVi
−(b)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
−(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
本質的に下記からなる式MDDViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式RR’SiO2/2の二価のシロキサンユニットDVi
−(b)式R2SiO2/2の二価のシロキサンユニットD;
−(c)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
−(d)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
本質的に下記からなる式MViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式R’R2SiO1/2の一価のシロキサンユニットMVi;及び
−(b)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
本質的に下記からなる式MViViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式R’R2SiO1/2の一価のシロキサンユニットMVi
−(b)式R’SiO3/2の三価のシロキサンユニットTVi;及び
−(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
但し、Rは一価の炭化水素基を表し、R’はビニル基を表す。
【0019】
最も好ましいオルガノポリシロキサン樹脂(V)は、本質的に下記からなる式MDViQのオルガノポリシロキサン樹脂である;
(a)式RR’SiO2/2の二価のシロキサンユニットDVi
(b)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
但し、Rは一価の炭化水素基を表し、R’はビニル基を表す。
【0020】
少なくとも1の有機過酸化物をベースとする触媒の作用により硬化するポリオルガノシロキサン(a−1)は、有利には下式(I−1)のシロキシルユニットを含む製品である:
【化1】

【0021】
但し:記号R1は同一又は異なり、1〜12炭素原子、好ましくは1〜8炭素原子を含む炭化水素ベースの基を表し、任意で置換されてもよく、aは1、2又は3である。
好ましくは、記号R1は下記から選択される:
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基;
環状アルキル基、例えばシクロヘキシル基;
アルケニル基、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基;
アリール基、例えばフェニル基、トリル基及び、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基;並びに
上記基であって、1以上の水素原子が、1以上のハロゲン原子、シアノ基又はシアノ基均等物(equivalent)、で置換された上記基、例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル又はシアノエチル基。
【0022】
更に好ましくは、ポリオルガノシロキサン(a−1)はその鎖の末端が、トリメチルシリル、ジメチルビニル、ジメチルヒドロキシシリル又はトリビニルシリルユニットで終わっている。
特に有利な態様では、ポリオルガノシロキサン(a−1)は、1分子当たり少なくとも2のアルケニル基を含む。
【0023】
本発明で成分(a−1)と共に使用できる有機過酸化物中、例えばベンゾイルパーオキシド、ビス(p−クロロベンゾイル)パーオキシド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキシド、上記パーオキシドのハロゲン化誘導体、例えばビス(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキシド、1,6−ビス(p−トルオイルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(ベンゾイルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(p−トルオイルパーオキシカルボニルオキシ)ブタン及び1,6−ビス(2,4−ジメチルベンゾイルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサンが挙げられる。
【0024】
重付加反応による硬化モードに使用されるシリコーンコーティング組成物(A)のポリオルガノシロキサン(I)に、下記が含まれる:
(i)下式(I−1)のシロキシルユニット:
【化2】

【0025】
但し:記号R1はアルケニル基、好ましくはビニル基又はアリル基を表し、
記号Zは同一又は異なり、それぞれ一価の炭化水素−ベースの基を表し、触媒活性に対する有害な作用を示さず、1〜8炭素原子を含むアルキル基であって、任意で少なくとも1のハロゲン原子で置換されていてもよい基、又はアリール基から選択される、
aは1又は2、bは0、1又は2、a+bの合計は1、2又は3である;及び任意で
(ii)式(I−2)の他のシロキシルユニット:
ZcSiOError! (I−2)
但し、Zは上記と同じ意味であり、cは0、1、2又は3である。
【0026】
このポリジオルガノシロキサン(I)の粘度は、少なくとも100mPa.sであり、好ましくは200,000mPa.s未満である。
本発明の明細書記載の全ての粘度は、公知の方法で25℃で測定された動粘度値である。
【0027】
ポリオルガノシロキサン(I)は、式(I−1)のユニットのみから形成されてもよいし、更に式(I−2)のユニットを含むこともできる。同様に、それは直鎖状、分岐状、環状又はネットワーク構造を有してもよい。Zは一般的にメチル、エチル及びフェニル基から選ばれ、少なくとも60mol%(又は数値的terms)の基Zはメチルラジカルである。
【0028】
式(I−1)のシロキシルユニットの例として、ビニルジメチルシロキシル、ビニルフェニルメチルシロキシル、ビニルメチルシロキシル及びビニルシロキシルユニットが挙げられる。
【0029】
式(I−2)のシロキシルユニットの例として、ユニットSiO4/2、ジメチルシロキシル、メチルフェニルシロキシル、ジフェニルシロキシル、メチルシロキシル及びフェニルシロキシルが挙げられる。
【0030】
ポリオルガノシロキサン(I)の例として、直鎖状及び環状化合物、例えば:ジメチルビニルシリル末端基を含むジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を含む(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシリル末端基を含む(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー、及び環状メチルビニルポリシロキサンが挙げられる。
【0031】
有利には、式(II−1)のシロキシルユニットを含むポリオルガノシロキサン(II)は下記で表される:
【化3】

【0032】
但し、基Lは同一又は異なり、それぞれ一価の炭化水素−ベースの基を表し、触媒活性に対する有害な作用を示さず、1〜8炭素原子を含むアルキル基であって、任意で少なくとも1のハロゲン原子で置換されても良い基、有利にはメチル基、エチル基、プロピル基及び3,3,3−トリフルオロプロピル基、並びにアリール基、有利にはキシリル基、トリル基又はフェニル基から選択され;
dは1又は2、eは0、1又は2、d+eの合計は1、2又は3であり;
任意で、少なくとも幾つかの他のユニットは下記平均(mean)式(II−2)のユニットである:
【化4】


但し、基Lは上記と同じ意味であり、gは0、1、2又は3である。
【0033】
このポリオルガノシロキサン(II)の動粘度は、少なくとも10mPa.s、好ましくは20〜1000mPa.sである。
【0034】
ポリオルガノシロキサン(II)は、式(II−1)のユニットのみから形成されてもよいし、式(II−2)のユニットを含むこともできる。ポリオルガノシロキサン(II)は、直鎖状、分岐状、環状又はネットワーク構造を有してもよい。基Lは上記基Zと同じ意味を有する。式(II−1)のユニットの例として、H(CH32SiO1/2、HCH3SiO2/2及びH(C65)SiO2/2が挙げられる。
式(II−2)のユニットの例として、上記式(I−2)のユニットと同一のものが挙げられる。
【0035】
ポリオルガノシロキサン(II)の例として、直鎖状及び環状化合物、例えば下記が挙げられる:
ヒドロゲノジメチルシリル末端基を含むジメチルポリシロキサン、
トリメチルシリル末端基を有する(ジメチル)(ヒドロゲノメチル)ポリシロキサンユニットを含むコポリマー、
ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有する(ジメチル)(ヒドロゲノメチル)ポリシロキサンユニットを含むコポリマー、
トリメチルシリル末端基を含むヒドロゲノメチルポリシロキサン、及び
環状ヒドロゲノメチルポリシロキサン。
【0036】
化合物(II)は任意で、ヒドロゲノジメチルシリル末端基を含むジメチルポリシロキサン及び少なくとも3個のヒドロゲノシロキシル基を含むポリオルガノシロキサンの混合物でもよい。
【0037】
ポリオルガノシロキサン(II)中及び架橋剤(II’)中のケイ素に結合した水素原子数の、ポリオルガノシロキサン(I)のアルケニル不飽和を含む基の総数に対する割合は、0.4〜10、好ましくは0.6〜5、最も好ましくは1.5〜2.5である。
【0038】
特定の態様の一つでは、下記が使用できる:
式(I−2)のユニットから形成された鎖を含む、少なくとも1の直鎖状ポリオルガノシロキサン(I)、但しc=2であり、その末端それぞれは式(I−1)のユニットでブロックされており、a=1及びb=2であり、
少なくとも1の直鎖状ポリオルガノシロキサン(II)は、その構造中に少なくとも3個の、シリコンに結合した水素原子であって、鎖及び/又は鎖末端に位置するものを含む。
【0039】
別の特定の態様では、下記が使用できる:
式(I−2)のユニット(但し、c=2)から形成された鎖を含む少なくとも1の直鎖状ポリオルガノシロキサン(I)であり、それらの末端それぞれは式(I−1)のユニット(但し、a=1及びb=2)でブロックされているポリオルガノシロキサン(I);並びに
式(II−1)のユニット(但しd=1及びe=1)、及び任意で式(II−2)のユニット(但しg=2)から形成された鎖を含む少なくとも1の直鎖状ポリオルガノシロキサン(I)であり、それらの末端それぞれは式(II−1)のユニット(但し、d=1及びe=2)でブロックされているポリオルガノシロキサン(I)。
【0040】
本発明の硬化性シリコーンコーティング組成物で使用されるオルガノシリコン架橋剤(II’)は、好ましくはシラン、低分子量オルガノシリコン樹脂及び短鎖オルガノシロキサンポリマーから選ばれる。オルガノシリコン架橋剤(II’)化合物は、少なくともシリコン結合された3個の水素を有し、それらは、ポリオルガノシロキサン(I)のシリコン−結合された脂肪族性不飽和炭化水素置換基と、架橋オルガノシリコン化合物及びオルガノポリシロキサンとの間の付加反応により反応可能である。
【0041】
オルガノシリコン架橋剤(II’)化合物として作用する適切なシランは、メチルトリヒドロゲノシランである。適切なオルガノシリコン樹脂化合物には、式SiO4/2の四官能性シロキサンユニット及びRywSiO1/2の一官能性ユニットから主に構成されるオルガノシリコン樹脂が含まれ、ここでRは18以下の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、v及びwはそれぞれ0〜3の数であり、v+wの合計は3である。適切な短鎖オルガノシロキサンポリマーには、1分子当たり少なくとも3個のシリコン結合された水素原子を有し、直鎖状でも環状でも良いものが含まれる。好ましいオルガノシリコン架橋剤は一般式:
342SiO(R42SiO)p(R4HSiO)qSiR423又は下式を有する;
【0042】
【化5】

【0043】
但し、R4は10以下の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基を表し、R3は基R4又は水素原子であり、pは0〜20の数であり、qは1〜70の数であり、1分子当たり少なくとも3個の、シリコン結合された水素原子が存在する。重要ではないが好ましいのは、シリコン結合された水素原子が、直鎖状シロキサン化合物の末端シリコン原子上にあることである。R4は好ましくは3個以下の炭素原子を有する低級アルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。R3は好ましくはR4基を表す。好ましくはp=0であり、qは2〜70、更に好ましくは2〜30の数であり、環状オルガノシリコン材料が使用される場合には、3〜8である。最も好ましくは、オルガノシリコン架橋剤は、25℃で1〜150mm2/s、更に好ましくは2〜100mm2/s、最も好ましくは5〜60mm2/sの粘度を有するシロキサンポリマーである。架橋性オルガノシリコン化合物には、数種の上記材料の混合物も含まれる。
【0044】
適切なオルガノシリコン架橋剤の例として、トリメチルシロキサン末端ブロックされたポリメチルヒドロゲノシロキサンであり、例えば20以下の炭素原子を有するもの、ジメチルヒドロゲノシロキサン末端ブロックされたメチルヒドロゲノシロキサン、ジメチルシロキサンメチルヒドロゲノシロキサンコポリマー及びテトラメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
【0045】
オルガノシリコン架橋剤のサイズは重要ではないが、好ましくは、少なくとも3個のシリコン結合された水素原子を有する短鎖オルガノシロキサンポリマーであり、鎖長が2〜50シリコン原子、更に好ましくは5〜20シリコン原子であるポリマーが挙げられる。
【0046】
成分(a−2)が使用される場合は、硬化触媒(III)は少なくとも1の白金族の金属(又は化合物)からなり、それらも又公知である。白金族の金属は白金族元素の名前で公知であり、この文言は、例えば白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムを含むものである。好ましくは白金及びロジウム化合物が使用される。米国特許3159601、米国特許3159602、米国特許3220972及び欧州特許0057459A、欧州特許0188978A及び欧州特許0190530Aに記載された白金及び有機製品の複合体、並びに、米国特許3419593、米国特許3715334、米国特許3377432及び米国特許3814730に記載された白金及びビニルオルガノシロキサンの複合体が、特に使用できる。一般的に好ましい触媒は白金である。この場合、白金金属の重量から計算される触媒(III)重量は一般的に、ポリオルガノシロキサン(I)及び(II)の総重量ベースで2〜400ppm、好ましくは5〜200ppmである。
【0047】
限定するものではないが、接着促進剤(VI)は、エポキシ官能性、オルガノチタン酸(organotitanates)又はアミノ官能性オルガノシリコンを含むと考えられる。
【0048】
好ましい態様では、接着促進剤(VI)化合物は下記の混合物である:
(VI.1)1分子当たり少なくとも1のC2〜C6アルケニル基を含む、少なくとも1のアルコキシオルガノシラン、
(VI.2)少なくとも1のエポキシ基を含む、少なくとも1のオルガノシリコン化合物、及び
(VI.3)少なくとも1の金属キレートM及び/又は一般式M(OJ)nの金属アルコキシド、但し、MはTi、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al及びMgの群から選ばれ、nはMの原子価であり、Jは直鎖状又は分岐状C1-C8アルキルである。
【0049】
本発明では、接着促進剤の有利な組み合わせは下記のものである:
式(VI.1)で表されるビニルトリメトキシシラン(VTMO)、
式(VI.2)で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)及び、
式(VI.3)で表されるチタン酸ブチル。
【0050】
有利には、接着促進剤(VI)は、硬化性シリコーン組成物(A)の全構成要素に対し、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、更に好ましくは0.5〜3重量%の割合で存在する。
【0051】
適切な強化充填剤(VII)の例として、シリカ、例えばヒュームドシリカ、沈降シリカ、ゲル形成シリカ、商品名アエロジル(aerosil)、チタニア、標準的炭酸カルシウム又は、親和性(compatibilization)処理を受けた炭酸カルシウムが挙げられる。
【0052】
充填剤(フィラー)は、例えば適切なシラン、短鎖シロキサン、脂肪酸又は樹脂性シリコーン材料で充填剤を処理して得られた疎水性表面を有することができる。充填剤表面を疎水性とするための適切な材料及びプロセスは、文献に記載され、かつ当業者に公知である。強化充填剤の量も、やはり重要ではないが、充填剤を含む硬化性シリコーン組成物(A)の合計重量の好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは5〜40重量%、最も好ましくは10〜30重量%である。
【0053】
本発明では、硬化性シリコーン組成物(A)には又、標準的半強化又はパッキング充填剤、例えば珪藻土又は粉砕石英も含まれる。
他の非ケイ質鉱物も、半強化又はパッキング鉱物充填剤として含まれても良い:カーボンブラック、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、アルミナ水和物、延伸されたバーミキュライト、非延伸バーミキュライト、酸化亜鉛、マイカ、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰等。
これら非ケイ質鉱物充填剤も又、合計組成物重量に対し5〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の割合で存在できる。
【0054】
ポリジオルガノシロキサンガム(XI)は、好ましくは平均ユニット式RaSiO(4-a)/2(a=1、2又は3)を有し、直鎖状、又は部分的に分岐状構造でもよいが好ましくは直鎖状のポリオルガノシロキサンである。それぞれのRは、同一又は異なる。ポリオルガノシロキサンが1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有する場合、Rは置換又は非置換の一価の炭化水素基であり、例えば下記でもよい:メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びオクチル基等のアルキル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;アラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基及びヘプテニル基等のアルケニル基;並びに、クロロプロピル基及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基。
【0055】
ポリジオルガノシロキサンガム(XI)は、上記基のいずれかを末端としてもよい。Rがアルケニル基の場合、そのアルケニル基は好ましくはビニル基又はヘキセニル基である。実際、アルケニル基は末端基及び/又はポリマー側鎖上に存在しても良い。
【0056】
ポリジオルガノシロキサンガム(XI)の例として:ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのトリメチルシロキシ末端コポリマー、メチルビニルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、メチルヘキセニルシロキサン及びジメチルシロキサンのトリメチルシロキシ末端コポリマー、メチルヘキセニルシロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端コポリマー、メチルフェニルシロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、メチルフェニルシロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端コポリマー、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、及びメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端コポリマーが挙げられる。
【0057】
これらポリジオルガノシロキサンガム(XI)は、例えば米国特許3142655、3821140、3836489及び3839266号に記載されている。これらガムは有利には、25℃で少なくとも500,000mPa・s、好ましくは1,000,000〜10,000,000mPa・sの粘度である。
【0058】
本発明の好ましい態様では、ポリジオルガノシロキサンガム(XI)は、硬化性シリコーン組成物100重量部当たり1〜40重量部で添加される。
【0059】
硬化防止剤(VIII)は下記化合物から選ばれても良い:
アセチレンアルコール;
任意で環状でもよい少なくとも1のアルケニル基で置換されたポリオルガノシロキサンであって、特に好ましくはテトラメチルビニルテトラシロキサン;
ピリジン;
有機ホスフィン及び亜リン酸;
不飽和アミド;及び
マレイン酸アルキル。
【0060】
これらアセチレンアルコール(参照、フランス国特許B−1528464及びA−2372874号)は、好ましいヒドロシリル化反応熱的抑制剤(thermal blocker)であり、下式を有する:
(R’)(R’’)(OH)C−C≡CH
但し、R’は直鎖状又は分岐状アルキル基、又はフェニル基であり;
R’’はH又は直鎖状又は分岐状アルキル基、若しくはフェニル基であり;R’及びR’’基及び三重結合の炭素原子αは、環を形成してもよい。
R’及びR’’中に含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5、好ましくは9〜20である。
【0061】
上記アセチレンアルコールの例として、下記が挙げられる:
1−エチニル−1−シクロヘキサノール;
3−メチル−1−ドデシン−3−オール;
3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール;
1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;
3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール;
2−メチル−3−ブチン−2−オール;
3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール;及び
マレイン酸ジアリル又はマレイン酸ジアリル誘導体。
【0062】
これらα−アセチレンアルコールは、市販品にある。これら硬化防止剤(VIII)は、組成物(A)の合計重量に対し1重量部以下の割合で存在できる。
【0063】
下記他の追加的成分も適切なエラストマー形成組成物中に含まれてもよい:その他の充填剤、鎖(連鎖)延長剤、染料、着色剤、顔料、粘度調節剤、浴寿命延長剤、硬化防止剤(VIII)、着色添加剤(IX)及び可撓性付与剤。
【0064】
耐火性改良のための添加剤(IX)として、アミノ(二級又は三級)基で置換されたフェニル基を有する化合物が挙げられる。このような添加剤の例は、米国特許5516938号に記載されている。これら添加剤の有効量は、組成物の合計重量に対し一般的に0.01〜1重量部である。
【0065】
本発明の硬化性シリコーン組成物(A)へは、様々な従来の添加剤、例えば染料を、公知技術に従い追加できる。
【0066】
本発明の硬化性シリコーン組成物(A)は、成分を単に目的とする割合で混合するだけで調製できる。しかし、貯蔵安定性及び、組成物を編織布へ適用する前及び適用中での浴寿命の理由から、硬化触媒(III)を、ヒドロゲノ置換基を有するオルガノシリコン架橋剤(II’)又はポリオルガノシロキサン(II)から分離して、組成物をA部及びB部の2部で貯蔵することが好ましい。組成物の他の成分はしばしば、使用直前に2部を容易に混合できる割合で2部両方に分配される。これら容易な混合比は、例えば1/10又は1/1比である。
【0067】
混合されると、A及びB部は使用可能状態のシリコーン組成物を形成し、その組成物はいずれか適切な被覆手段(例えばドクターブレード又はロール)によりサポート(基材)へ適用される。
【0068】
本発明は又、合成テキスタイルの被覆方法を目的とし、その方法は上記硬化性シリコーン組成物(A)を合成テキスタイルへ適用するステップ、及び得られたコーティング組成物を硬化させるステップを含む。
好ましい態様では、合成テキスタイルはエアバッグファブリックである。
【0069】
硬化性コーティング組成物(A)は、公知の技術により編織布基材へ適用できる。これら技術にはスプレー法、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフ・オーバー・ローラーによるコーティング、ナイフ・オーバー・エアによるコーティング、パッディング(padding)及びスクリーン印刷が含まれる。組成物は、ナイフ・オーバー・エアー又はナイフ・オーバー・ローラーコーティング法により適用されるのが好ましい。又、組成物は、硬化前の被覆重量が少なくとも20g/m2になるまで適用されるのが好ましい。好ましくは、コーティング厚さは、25〜150g/m2、より好ましくは25〜50g/m2、更に好ましくは、又はサイドカーテンエアバッグ等の、圧力がより長く保持される必要のある用途では30〜35g/m2であり、標準的運転手用エアバッグ等の、圧力保持が長時間保持されることは重要でない用途では30〜50g/m2である。
【0070】
組成物を編織布に容易に適用するために、組成物の粘度(A)は、10,000〜30,000mPa.sが好ましい。編織布は、好ましくは、組成物の良好な接着を保証するために、組成物が適用される前に洗浄される。
【0071】
好ましくはないが、組成物を多層に適用して、全体として上記で設定した好ましい基準を満たすことが可能である。又、本発明のコーティング組成物上に、例えば低摩擦を提供する材料の更なる被覆、又は更なる編織布(織布でも不織布でも)を適用して、編織布の強度及び/又は感触を改善することも可能である。
【0072】
本発明の組成物は、電磁放射(加速電子又は「電子ビーム」の放射)により熱硬化され、及び/又は硬化される。本発明の組成物は、可撓性サポート(基材)、特に織られ、編まれ又は不織の繊維テキスタイル、及び好ましくは織られ、編まれ又は不織の合成繊維、有利にはポリエステル又はポリアミドからなるサポート(基材)をカバー又は被覆するために使用できる。
【0073】
コーティング(被覆)の硬化条件は、好ましくは、高温で、使用される実際の温度に応じて変動可能な期間にわたり、例えば120〜200℃で5分間以下である。
【0074】
本発明の利点は、編織布表面に多層コーティングを組み合わせる必要無しに、ファブリックが圧力の異なる領域間の有効なバリアを形成できることである。本発明で被覆された編織布の特に有用な用途は、ファブリックが包体(envelope)を形成し、例えば包体内にガスを導入して膨張させることにより、包体の内側に圧力がかけられる用途である。特に有用な用途には、自動車用エアバッグ、飛行機の緊急(脱出)シュート、及び熱気球が含まれる。本発明のファブリックの最も重要な用途は、自動車用サイドカーテンエアバッグの製造におけるものであり、その場合包体の内圧は、比較的長期間、例えば1〜5秒間、保持される必要がある。
【0075】
一般的に目標とされる硬化後の最終被覆厚さは、25〜300μm、特に50〜200μmである。サポート(基材)表面が一定でない場合、不規則な被膜を生じる可能性があるので、均一厚さは必要とされない。
【0076】
別の本発明の態様は、上記硬化性シリコーンコーティング組成物(A)を硬化させて得られた、1又は2の面を硬化したコーティング組成物で被覆された編織布に関する。
本発明は又、上記硬化性シリコーンコーティング組成物(A)を硬化させて得られた、1又は2の面を硬化したコーティング組成物で被覆されたエアバッグファブリックに関する。
最後に、本発明は上記プロセスに従い被覆されたエアバッグファブリックを含む膨脹式バッグに関する。
【0077】
以下の実施例は、組成物の調製、及び本発明のプロセスに従いポリアミドファブリックを被覆するためのそれらの適用に関し、本発明を、更に明確に理解し、その利点及び態様の実施を提示するためにある。本発明のプロセスから得られる生成物の性能品質は、比較試験により示される。全ての部及び百分率は、特記しない限り重量基準であり、実施例中の粘度の値は、25℃における動粘度に関して、Brookfield粘度計を使用して1982年5月のAFNOR標準NFT−76−106規格に従い測定された。
【実施例】
【0078】
表1及び2に記載した5種の組成物を、A部とB部の重量比1:1で混合して調製した。組成物を合成テキスタイルに適用し、3種の熱手段の適用により硬化させた。被覆された合成テキスタイルは次に、組成物の合成テキスタイルへの接着性を、耐揉サイクル数を測定する耐揉試験(Crease Flex Test)により試験した。耐揉試験プロトコル及び試験結果を表3に示す。
【0079】
耐揉試験プロトコル及び結果;
この方法は、繰り返し屈曲に採用され、乾燥段階及び、シリコーンで被覆されたエアバッグ用材料により達成された接着性を測定した。
上記調製された被覆された合成テキスタイルが不合格(Failure)となるまでの耐揉サイクル測定用試験プロトコルを、製品名ScottNo.363型、屈曲摩耗試験機、Test Machines, Incorporated社販売(Ronkonkoma、N.Y.)、株式会社東洋精機製作所製造(東京、日本)を使用して実施した。
この試験は、合成テキスタイル、ゴム、及び布の屈曲摩耗及び屈曲疲労耐性を測定するために当分野で広く使用されている。標準試験プロトコルに従い、2種の被覆されたファブリック試験片(測定値25mm×120mmの)を、被覆された側面を互いに向かい合わせに配置した。屈曲の往復運動距離は5cmに設定した。試験片をテストクランプ内に設置し、負荷圧力は1kgに調節した。試験では屈曲サイクルの回数を測定した。サイクル数は商品名ナイロンファブリックへ適用されたコーティング組成物の接着性が失われる不合格時点までの回数を数えた。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
実施例1=比較用;MDViQ型の樹脂(V)1種のみ使用した。
実施例2=比較用;MMviQの樹脂(IV)1種のみ使用した。
実施例3=比較用;両方の樹脂を使用したが、硬化性組成物100部当たり、式MMviQの樹脂(IV)は5重量部のみの量であり、AとB部の重量比1:1の混合物として使用した。
実施例4及び5=発明例;2種の樹脂(IV)(10を超える)及び(V)のブレンドであり、本発明の2種の樹脂のブレンドであるシリコーン組成物は、ファブリック上に被覆され、硬化された場合、耐揉性(Crease Flex Abrasion)と空気保持性能との間に非常に良好なバランス(compromise)をもたらすことを示した。
【0084】
本発明の本質的特徴の範囲内で、本明細書に記載された化合物、組成物、及び方法に関する他の改変も可能である。本明細書に特に記載された本発明の態様は、例示のみのためであり、特許請求の範囲で特定された本発明を限定するためではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編織布を被覆するのに有用な硬化性シリコーン組成物(A)であり、下記を含む組成物:
(1)成分(a−1)又は(a−2);
−(a−1)少なくとも1の有機過酸化物をベースとする触媒の作用により硬化可能な少なくとも1のポリオルガノシロキサン;及び
−(a−2)重付加反応により硬化可能なポリオルガノシロキサンブレンドであり、下記を含むブレンド;
平均で少なくとも2個のシリコン結合された脂肪族性不飽和炭化水素置換基を分子上に有する少なくとも1のオルガノポリシロキサン(I)、並びに
少なくとも1のオルガノポリオルガノシロキサン(II)及び/又は、平均で少なくとも2個、最も好ましくは少なくとも3個のシリコン結合された水素を分子上に有する、少なくとも1のオルガノシリコン架橋剤(II’);
(2)有効量の硬化触媒(III)、但し成分(a−1)が使用される場合は、少なくとも1の有機過酸化物からなり、成分(a−2)が使用される場合は、脂肪族性不飽和炭化水素置換基とSiH基との反応を促進できる少なくとも1の触媒からなる;
(3)硬化性シリコーン組成物100重量部当たり少なくとも10重量部の、式MMViQのオルガノポリシロキサン樹脂(IV)であって本質的に下記からなる樹脂(IV);
−(a)式R’R2SiO1/2の一価のシロキサンユニットMVi
−(b)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
−(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
但し、Rは一価の炭化水素基を表し、R’はビニル基を表す;
(4)上記オルガノポリシロキサン樹脂(IV)と異なるオルガノポリシロキサン樹脂(V)であり、式R3SiO1/2のMシロキサンユニット、式R2SiO2/2のDシロキサンユニット、式RSiO3/2のTシロキサンユニット、及び式SiO4/2のQシロキサンユニットの群から選ばれる少なくとも2の異なるシロキサンユニットを含む樹脂(V);
但し、Rは一価の炭化水素基を表し、これらシロキサンユニットの少なくとも1はT又はQシロキサンユニットであり、少なくとも1のM、D及びTシロキサンユニットはアルケニル基を含む;
(5)少なくとも1の接着促進剤(VI);
(6)少なくとも1の強化充填剤(VII);
(7)任意の、少なくとも1のポリジオルガノシロキサンガム(XI)であり、直鎖状又は部分的に分岐したホモポリマー又はコポリマーであり、1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有し、上記ガムは25℃で500,000mPa・sを超える粘度を有するガム(XI);
(8)任意の、少なくとも1の硬化防止剤(VIII);
(9)任意の、少なくとも1の着色添加剤(IX);並びに
(10)任意の、少なくとも1の耐火性改良添加剤(X)。
【請求項2】
オルガノポリシロキサン樹脂(V)は下記群から選ばれる、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物(A);
本質的に下記からなる式MTViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式R’SiO3/2の三価のシロキサンユニットTVi
−(b)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
−(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
本質的に下記からなる式MDViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式RR’SiO2/2の二価のシロキサンユニットDVi
−(b)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
−(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
本質的に下記からなる式MDDViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式RR’SiO2/2の二価のシロキサンユニットDVi
−(b)式R2SiO2/2の二価のシロキサンユニットD;
−(c)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
−(d)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
本質的に下記からなる式MViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式R’R2SiO1/2の一価のシロキサンユニットMVi;及び
−(b)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
本質的に下記からなる式MViViQのオルガノポリシロキサン樹脂;
−(a)式R’R2SiO1/2の一価のシロキサンユニットMVi
−(b)式R’SiO3/2の三価のシロキサンユニットTVi;及び
−(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
但し、Rは一価の炭化水素基を表し、R’はビニル基を表す。
【請求項3】
オルガノポリシロキサン樹脂(V)は、本質的に下記からなる式MDViQのオルガノポリシロキサン樹脂である請求項1又は2記載の硬化性シリコーン組成物(A);
(a)式RR’SiO2/2の二価のシロキサンユニットDVi
(b)式R3SiO1/2の一価のシロキサンユニットM;及び
(c)式SiO4/2の四価のシロキサンユニットQ;
但し、Rは一価の炭化水素基を表し、R’はビニル基を表す。
【請求項4】
オルガノポリシロキサン樹脂(IV)が、硬化性シリコーン組成物100重量部当たり15〜50重量部、最も好ましくは硬化性シリコーン組成物100重量部当たり20〜40重量部で添加される請求項1〜3いずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物(A)。
【請求項5】
オルガノポリシロキサン樹脂(V)が、硬化性シリコーン組成物100重量部当たり1〜50重量部で添加される請求項1〜4いずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物(A)。
【請求項6】
ポリジオルガノシロキサンガム(XI)が、硬化性シリコーン組成物100重量部当たり1〜40重量部で添加される請求項1〜5いずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物(A)。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物(A)を合成テキスタイルへ適用するステップ、及び得られたコーティング組成物を硬化させるステップを含む合成テキスタイル被覆方法。
【請求項8】
合成テキスタイルはエアバッグファブリックである請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜6いずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物(A)を硬化させて得られた、1又は2の面を硬化したコーティング組成物で被覆された編織布。
【請求項10】
請求項1〜6いずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物(A)を硬化させて得られた、1又は2の面を硬化したコーティング組成物で被覆されたエアバッグファブリック。
【請求項11】
請求項10記載の被覆されたエアバッグファブリックを含む膨脹式バッグ。

【公表番号】特表2012−514143(P2012−514143A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544554(P2011−544554)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/069567
【国際公開番号】WO2010/078235
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511160000)ブルースター・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES USA CORP.
【住所又は居所原語表記】2,Tower Center,Suite 1601,East Brunswick,NJ 08816 U.S.A.
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーンズ・フランス (62)
【Fターム(参考)】