説明

コーティング組成物

(i)テトラフルオロエチレンの非溶融加工性ポリマーを含むフルオロポリマー粒子の水分散液と、(ii)フッ素化界面活性剤と、(iii)非イオン性非フッ素化界面活性剤と、(iv)非フッ素化ポリマーと、を有するコーティング組成物であって、前記フッ素化界面活性剤は、下記一般式(I):
[Rf−O−L−COO-ii+ (I)
(式中、Lは、直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化アルキレン基または脂肪族炭化水素基を表し、Rfは、直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基または1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基を表し、Xi+は価数iを有するカチオンを表し、およびiは1、2、もしくは3である)のフッ素化カルボン酸類またはそれらの塩類から選択される、コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)テトラフルオロエチレンの非溶融加工性ポリマーと、(ii)フッ素化界面活性剤と、を含むコーティング組成物に関する。本発明は更に、こうしたコーティング組成物で基材、特に金属基材をコーティングする方法に関する。本発明はまた、前記方法により得ることのできる基材に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロエチレン(TFE)のポリマー類はそれらの優れた耐熱性、耐化学性、耐腐食性、および耐粘着性に関しては周知である。これらの特性に起因して、TFEのポリマー類は、調理用、ベイク用、およびフライ用の物品を包含する調理器具などの金属基材上におけるいわゆる非粘着コーティング類での使用を包含する、広範囲の用途を見出してきた。
【0003】
一般に、これらのコーティング組成物はまた、例えば、基材への付着性、コーティングの外観、耐スクラッチ性、および/またはコーティングの強靭性を包含するコーティングの1つ以上の特性を最適にするために非フッ素化ポリマーをも含有する。かかるコーティング系の例は、例えばEP894541、EP1614731、PCT国際公開特許WO02/14065、米国特許第5,160,791号;米国特許第5,230,961号;米国特許第5,223,343号;米国特許第5,168,107号、および米国特許第5,168,013号に見出すことができる。また、金属およびガラスのような基材上の耐粘着コーティングは、単層も同様に企図されてもよいが、典型的には2つ以上の層を含み、それにより非フッ素化ポリマーの性質および量が層によって異なってもよい。
【0004】
コーティング組成物中のTFEのポリマーは典型的に、ポリマーの水分散液である。一般に、この水分散液は、フッ素化界面活性剤の存在下でのエマルション重合によって得られる。フッ素化界面活性剤は完全フッ素化アルカン酸またはその塩であることが多く、それはこの界面活性剤が卓越した重合特性を提供し、および、特に非イオン性非フッ素化界面活性剤が更にその分散液に添加された場合に、所望のコロイド安定性とともに剪断安定性を有する分散液をもたらすためである。
【0005】
不都合なことに、8個以上の炭素を有する完全フッ素化アルカン酸類は生体から取り除くことが困難であり、したがってそれらは生体内蓄積性があるということが知られている。フルオロポリマー分散液中の完全フッ素化アルカン酸類およびそれらの塩類の量を、その分散液から除去することによって、例えば分散液を陰イオン交換樹脂と接触させることによって、減少させることが知られているが、なお残留の完全フッ素化アルカン酸またはその塩が分散液中に残存する場合がある。このことは、特にフルオロポリマー分散液が配合されたコーティング組成物が調理器具をコーティングするために使用される場合、なお望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、TFEのエマルション重合においてフッ素化界面活性剤類に替えて使用でき、および好ましくは得られる水分散液から簡便且つコスト効率のよい方法を用いて回収できる代替のフッ素化カルボン酸類を見出すことが望ましい。フルオロポリマー分散液中のフッ素化カルボン酸の残留量にかかわらず、その分散液とともに処方されたあらゆるコーティング組成物が改善された環境特性を有することになるように、この代替のフッ素化カルボン酸類は、8個以上の炭素原子を有する完全フッ素化アルカン酸類よりも低い生体内蓄積性を示すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、(i)テトラフルオロエチレンの非溶融加工性ポリマーを含むフルオロポリマー粒子の水分散液と、(ii)フッ素化界面活性剤と、(iii)非イオン性非フッ素化界面活性剤と、(iv)非フッ素化ポリマーと、を含むコーティング組成物であって、前記フッ素化界面活性剤は下記一般式(I):
[Rf−O−L−COO-ii+ (I)
(式中、Lは、直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化アルキレン基または脂肪族炭化水素基を表し、Rfは、直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基または1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基を表し、Xi+は価数iを有するカチオンを表し、およびiは1、2、もしくは3である)のフッ素化カルボン酸類またはそれらの塩類から選択される、コーティング組成物が提供される。
【0008】
上記の一般式(I)によるフッ素化カルボン酸類および塩類は、8個以上の炭素原子を有する完全フッ素化アルカン酸類よりも、生体、特にラットからより迅速に除去される。さらに、これらの界面活性剤類は、TFEのエマルション重合において使用されて、TFEの非溶融加工性ポリマー類の水分散液を生成することができる。得られる分散液は良好なコロイド安定性と共に良好な剪断安定性を有することもまた見出された。それ故に、得られる分散液は基材、特に調理器具のコーティングにおけるもののような金属基材をコーティングするためのコーティング組成物を生成するために容易に処方されることができる。得られるコーティングは一般に、卓越した耐粘着特性を有し、基材に十分に付着し、および典型的には所望の耐スクラッチ性と強靭性を有する。
【0009】
別の態様では、本発明は、前述のコーティング組成物で基材をコーティングする方法を提供する。本発明は、更に別の態様では、前述のコーティング組成物でコーティングされた基材を提供する。
【0010】
用語「非溶融加工性」とは、TFEポリマーを加工するために従来の溶融加工装置が使用できないほどTFEのホモ−またはコポリマーの溶融粘度が高いということを意味する。このことは、一般に、溶融粘度が少なくとも1010Pa・sであるということを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
フッ素化カルボン酸類
簡便のために、用語「フッ素化カルボン酸」は本明細書では以後、遊離の酸ならびにその塩類を示すために使用する。本発明のプロセスにおいて使用されるフッ素化カルボン酸は、上記の式(I)に相当する。一般に、フッ素化カルボン酸は低分子量の化合物、例えば、化合物のアニオン部分に関する分子量が1000g/mol以下、典型的には600g/mol以下の化合物となり、および特定の実施形態では、フッ素化カルボン酸のアニオンは500g/mol以下の分子量を有していてよい。
【0012】
特に好ましいフッ素化カルボン酸は、ラットに投与されたとき、腎臓排泄によって96時間後に投与された量の少なくとも45%、例えば、少なくとも50%の回収を示すもの、および実施例に記載した方法に従って試験されたとき、ラット内で35時間以下、例えば、30時間以下の腎臓排泄半減期を有するものである。一般に、当該化合物中のフッ素化脂肪族部分がそれぞれ3個以下の炭素原子を有するフッ素化カルボン酸類は、腎臓回収(enal recovery)および半減期についての前述の条件を満たす。従って、好ましい化合物は、いずれのフッ素化アルキレン基も3個以下の炭素原子を有し、およびこの化合物のフッ素化アルキル基が3個以下の炭素原子を有するものである。
【0013】
上記の式(I)において、Lは連結基を表す。一実施形態では、連結基は直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化アルキレンとすることができる。全部フッ素化アルキレン基には、炭素およびフッ素原子のみからなるアルキレン基が包含され、一方部分フッ素化アルキレン基は追加で水素を含有してよい。一般に、部分フッ素化アルキレン基は高度にフッ素化されおよび非テロゲン性(non-telogenic)であるかまたは少なくとも最小限のテロゲン効果(telogenic effects)を有するように、2つよりも多い水素原子を含有すべきではない。全部フッ素化アルキレン基の例としては、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状完全フッ素化アルキレン類、例えば炭素原子1、2、3、4、または5個の直鎖状完全フッ素化アルキレン基が挙げられる。
【0014】
直鎖状部分フッ素化アルキレン基の例としては、1〜6個の炭素原子を有するものが挙げられる。特定の実施形態では、直鎖状部分フッ素化アルキレン連結基は1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有し、そして水素原子は1または2個だけ有する。部分フッ素化アルキレン基が2個の水素原子を有するとき、それらは同じ炭素原子に結合されてもよく、またはそれらは異なる炭素原子に結合されることもできる。それらが異なる炭素原子に結合されるとき、こうした炭素原子は互いに隣接していることもまたはそうでないことも可能である。また、特定の実施形態では、1個または2個の水素原子を有する炭素原子は、連結基が結合しているエーテル酸素原子に隣接していてもよく、またはそのもう一方の端部において連結基が結合しているカルボン酸基に隣接していてもよい。
【0015】
別の実施形態では、連結基Lは脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基の例としては、直鎖状、分枝状、または環状脂肪族基が挙げられる。脂肪族基の特定の例としては、例えばメチレンまたはエチレンのような1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキレン基が挙げられる。
【0016】
連結基Lの特定の例は、以下から選択されてよい:
−(CF2g−(式中、gは1、2、3、4、5、または6である);
−CFH−(CF2h−(式中、hは0、1、2、3、4、または5である);
−CF2−CFH−(CF2d−(式中、dは0、1、2、3、または4である);
−CH2−(CF2h−(式中、hは1、2、3、または4である);
−(CH2c−(式中、cは1、2、3、または4である);
上記の例では、連結基の式の左側は、連結基が式(I)中のエーテル酸素に連結している部位である。
【0017】
式(I)中のRf基は、直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基または1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基を表す。一実施形態では、Rfは、1〜6個の炭素原子を有する、好ましくは1、2、3、もしくは4個の炭素原子を有する直鎖状完全フッ素化脂肪族基である。別の実施形態によれば、Rfは、1つ以上の酸素原子で中断され、その酸素原子の間のアルキレン基が4または6個以下の炭素原子、例えば3個以下の炭素原子を有し、末端アルキル基が4または6個以下の炭素原子、例えば3個以下の炭素原子を有する、直鎖状完全フッ素化脂肪族基である。更に別の実施形態によれば、Rfは1〜6個の炭素原子および2個以下の水素原子を有する直鎖状部分フッ素化脂肪族基または1つ以上の酸素原子で中断され2個以下の水素原子を有する直鎖状部分フッ素化脂肪族基である。後者の実施形態では、いずれの完全フッ素化アルキレン部分も4または6個以下の炭素原子を有し、同様にいずれの末端完全フッ素化アルキル基も好ましくは6個よりも多い炭素原子を有するべきではなく、例えば4個以下の炭素原子を有することが一般に好ましい。部分フッ素化脂肪族基Rfの特定例は、CF3CFH−である。
【0018】
特定の実施形態では、Rfは以下の式:
f1−[ORf2p−[ORf3q− (II)
(式中、Rf1は炭素原子1〜6個(例えば3個以下)の完全フッ素化直鎖状脂肪族基であり、Rf2とRf3とはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、もしくは4個の直鎖状完全フッ素化アルキレンを表し、およびpとqとはそれぞれ独立して0〜4の値を表し、pとqとの合計は少なくとも1である)に相当してよい。
【0019】
別の実施形態では、Rfは以下の式:
7f−(O)t−CFH−CF2− (III)
(式中、tは0または1であり、R7fは任意に1つ以上の酸素原子で中断された、直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基を表す)に相当してよい。典型的にはR7fは4または6個よりも多い炭素原子の完全フッ素化脂肪族部分を含有しない。例えば、一実施形態では、R7fは炭素原子1〜6個の完全フッ素化直鎖状脂肪族基である。別の実施形態では、R7fは上記の式(II)に相当する基である。
【0020】
更に別の実施形態では、Rfは以下の式:
f8−(OCF2a− (IV)
(式中、aは1〜6個の整数であり、およびRf8は1、2、3、もしくは4個の炭素原子を有する直鎖状部分フッ素化脂肪族基または直鎖状全部フッ素化脂肪族基である)に相当してよい。Rf8が部分フッ素化脂肪族基であるとき、炭素原子の数は、好ましくは1〜6個であり、および部分フッ素化脂肪族基中の水素原子の数は、好ましくは1または2個である。
【0021】
更に別の実施形態では、Rfは以下の式:
f9−O−(CF2b− (V)
(式中、bは1〜6の整数であって好ましくは1、2、3、もしくは4であり、およびRf9は1、2、3、もしくは4個の炭素原子を有する直鎖状部分フッ素化脂肪族基または直鎖状全部フッ素化脂肪族基である)に相当してよい。Rf9が部分フッ素化脂肪族基類であるとき、炭素原子の数は、好ましくは1〜6個であり、およびこの部分フッ素化基中の水素原子の数は、好ましくは1または2個である。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、フッ素化カルボン酸は以下の式:
[Rfa−(O)t−CHF−(CF2n−COO-ii+ (VI)
(式中、Rfaは任意に1以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基を表し、tは0または1であり、nは0または1であり、Xi+は価数iを有するカチオンを表し、iは1、2、もしくは3であり、但し、tが0であるとき、Rfaは少なくとも1つのエーテル酸素原子を含有する)に相当する。
【0023】
本実施形態の特定の態様では、Rfaは、炭素原子1〜6個の、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状完全フッ素化脂肪族基、式Rf1−[ORf2p−[ORf3q−の完全フッ素化基(式中、Rf1は炭素原子1〜6個、好ましくは炭素原子1〜4個の直鎖状完全フッ素化脂肪族基であり、Rf2およびRf3はそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、もしくは4個の直鎖状完全フッ素化アルキレンを表し、pとqとはそれぞれ独立して0〜4の値を表し、pとqとの合計は少なくとも1である)、ならびに式Rf4−[ORf5k−[ORf6m−O−CF2−の完全フッ素化基(式中、Rf4は炭素原子1〜6個、好ましくは炭素原子1〜4個の直鎖状完全フッ素化脂肪族基であり、Rf5およびRf6はそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、もしくは4個の直鎖状完全フッ素化アルキレンを表し、kおよびmはそれぞれ独立して0〜4の値を表す)からなる群から選択される。
【0024】
式(VI)のフッ素化カルボン酸は、次の一般式:
af−(O)t−CF=CF2 (VIa)
(式中、Rafおよびtは上記で定義した通りである)のフッ素化オレフィン類から誘導することができる。式(VIa)に従う化合物は当該技術分野において周知であり、それらとしては、フッ素化オレフィン類、例えば完全フッ素化アルキルビニル化合物類、ビニルエーテル類、特に完全フッ素化ビニルエーテル類、およびアリルエーテル類、特に完全フッ素化アリルエーテル類が挙げられる。
【0025】
nが0である式(VI)に従うフッ素化カルボン酸類は、式(VIa)のフッ素化オレフィンを塩基と反応させることによって調製することができる。反応は、一般には水性媒体中で行われる。有機溶媒を添加して、フッ素化オレフィンの溶解性を改善してもよい。有機溶媒の例としては、グライム、テトラヒドロフラン(THF)、およびアセトニトリルが挙げられる。加えて、または代替として、相間移動触媒を使用してよい。塩基として、例えば、アンモニア水酸化物、アルカリ水酸化物、およびアルカリ土類水酸化物を使用することができる。理論に束縛されるものではないが、塩基としてアンモニアを使用する場合、反応は次の順序に従って進行するものと考えられる:
f−(O)t−CF=CF2+NH3+H2O→Rf−(O)t−CHF−COONH4+NH4
【0026】
上記反応は、一般に、0〜200℃の間、例えば、20〜150℃、および約0.1MPa(1bar)から約2MPa(20bar)までの圧力で行われる。更に精製する場合、得られた塩類を、遊離酸を介して蒸留するか、または最初に酸をエステル誘導体に転換した後そのエステル誘導体を蒸留し、次いでそのエステルを加水分解することにより蒸留して、精製されたその酸またはその塩を得ることができる。
【0027】
式中、nが0である式(VI)のフッ素化カルボン酸類はまた、式(VIa)のフッ素化オレフィンを炭化水素アルコールとアルカリ性媒体中で反応させた後、得られたエーテルを酸性条件下で分解し、それによって相当するカルボン酸を形成することによって調製することができる。好適な炭化水素アルコールとしては、1〜4個の炭素原子を有する低級アルカノール類などの脂肪族アルコール類が挙げられる。具体例としては、メタノール、エタノール、およびt−ブタノールを包含するブタノールが挙げられる。フッ素化オレフィンとアルコールとのアルカリ性媒体中での反応は、「ファーリン(Furin)ら、韓国化学会誌(Bull Korean Chem. Soc.)20、220(1999年)」に記載されているようにして行ってよい。この反応の反応生成物は、フッ素化オレフィンのエーテル誘導体である。この得られるエーテルは、「D.C.イングランド(D. C. England)、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリ(J. Org. Chem.)、49、4007(1984年)」に記載されているように酸性条件下で分解されて、相当するカルボン酸またはその塩を生ずることができる。
【0028】
式中、nが1である式(VI)のフッ素化カルボン酸類を調製するために、式(VIa)のフッ素化オレフィンとメタノールとのフリーラジカル反応を行い、次いで得られた反応生成物を酸化してもよい。フリーラジカル反応は、典型的に、フリーラジカル重合反応で通常使用されるようなフリーラジカル反応開始剤を用いて行われる。好適なフリーラジカル反応開始剤の例としては、例えば、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩類が挙げられる。フッ素化カルボン酸のアルコールとのフリーラジカル反応の詳細な条件は、「S.V.ソコロフ(S. V. Sokolov)ら、Zh.Vses.Khim Obsh 24,656(1979年)」に見出すことができる。得られたフッ素化オレフィンのアルコール誘導体は、酸化剤を用いて相当するカルボン酸へ化学的に酸化することができる。酸化剤の例としては、例えば、任意にNaOCl、硝酸/鉄触媒、四酸化二窒素の存在下での、過マンガン酸カリウム、酸化クロム(VI)、RuO4、またはOsO4が挙げられる。典型的には、酸化は、酸性または塩基性条件下、10〜100℃の温度で行われる。化学酸化に加えて、電気化学酸化も同様に使用されてよい。
【0029】
別の実施形態では、フッ素化カルボン酸は以下の式:
fb−(O)t−CFH−CF2−O−R−G (VII)
(式中、Rfbは、任意に1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基を表し、Rは脂肪族炭化水素基であり、Gはカルボン酸またはその塩を表し、tは0または1である)に相当する。Rの特定例としては、メチレン基またはエチレン基が挙げられる。
【0030】
この実施形態の特定の態様では、Rfbは、炭素原子1〜6個の、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状完全フッ素化脂肪族基、式Rf1−[ORf2p−[ORf3q−の完全フッ素化基(式中、Rf1は炭素原子1〜6個、好ましくは炭素原子1〜4個の直鎖状完全フッ素化脂肪族基であり、Rf2とRf3とはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、もしくは4個の直鎖状完全フッ素化アルキレンを表し、pとqとはそれぞれ独立して0〜4の値を表し、pとqとの合計は少なくとも1である)と、式Rf4−[ORf5k−[ORf6m−O−CF2−の完全フッ素化基(式中、Rf4は炭素原子1〜6個、好ましくは炭素原子1〜4個の直鎖状完全フッ素化脂肪族基であり、Rf5とRf6とはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、もしくは4個の直鎖状完全フッ素化アルキレンを表し、kとmとはそれぞれ独立して0〜4の値を表す)からなる群から選択される。
【0031】
式(VII)に従うフッ素化カルボン酸類は、式(VIIa):
fb−(O)t−CFH−CF2−O−R−Z
(式中、Rfb、t、およびRは上記で定義したのと同じ意味を有する)の中間体の調製を介して調製されてよい。Zはカルボン酸エステルまたはカルボキシアミドを表す。
【0032】
式(VIIa)に従う中間体化合物は、一般式(VIa)のフッ素化オレフィンを次式
HO−R−Z (VIIb)
(式中、ZおよびRは上記に定義した通りである)の有機化合物と反応させることにより調製することができる。式(VIIb)に従う化合物は当該技術分野において周知であり、および/または市販されている有機化合物と反応させることにより調製することができる。化合物(VIa)と化合物(VIIb)との反応は典型的には塩基の存在下で行われるが、酸性または中性条件下で反応を行うことも可能である。好適な塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸リチウムなどの炭酸塩類、水酸化物類、アルコラート(alkoholates)類等が挙げられる。使用される塩基の量は、広く変化してよい。例えば触媒量を使用してよい。一般に、使用される塩基の量は、式(VIIb)の反応体の量を基準として少なくとも約1または2重量%となる。特定の実施形態では、塩基の量は、式(VIIb)の反応体のモル量の2倍までとすることができる。反応は、典型的に、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、グライム、ジグライム等のような非プロトン性溶媒中で行なわれる。更なる好適な非プロトン性溶媒類は、DE3828063に開示されている。反応は、典型的に温度0〜200℃、例えば10〜150℃で行なわれる。反応は、一般に、周囲気圧(0.1MPa(1バール))または2MPa(20バール)までで行なわれる。反応後、得られる化合物を、蒸留によって単離および精製してよい。
【0033】
式(VII)のフッ素化カルボン酸類は、上記の式(VIIa)の中間化合物を加水分解することにより容易に調製することができる。上記の式(VIIa)では、Zはカルボン酸エステルまたはカルボキシアミドを表す。典型的には、カルボン酸エステルが使用される。一実施形態では、エステルは、脂肪族エステル、例えばアルキル基の炭素原子数が1〜4であるアルキルエステルとすることができる。中間化合物の加水分解は、酸性または塩基性条件下で行なわれてよく、および一般に中間化合物のアルコール酸性またはアルコール塩基性溶液中で行なわれる。或いは、中間化合物は、ケトン類、エーテル類等のような他の水混和性有機溶媒の酸性溶液または塩基性溶液中で加水分解されてよい。典型的に、例えば、塩基としてアルカリ金属水酸化物を含有するメタノール溶液またはエタノール溶液のような、塩基性アルコール溶液が使用される。典型的に、加水分解は、室温で行なわれるが、例えば溶液の沸点までの高温を使用することも可能である。
【0034】
或いは、フッ素化界面活性剤は、上式(VIa)のフッ素化オレフィンと、ヒドロキシ置換カルボン酸、またはその塩を反応させることにより、調製されてよい。したがって、この実施形態によれば、式(VIa)のフッ素化オレフィンは次式:
HO−R−G (VIIc)
(式中、Gはカルボン酸基またはその塩であり、およびRは上記に定義した通りである)の化合物と反応される。式(VIa)のフッ素化オレフィンと式(VIIc)のヒドロキシ化合物との反応は、式(VIIb)の化合物との反応に関して上述したのと同様の条件下で行うことができる。
【0035】
なお更なる実施形態では、フッ素化カルボン酸は以下の式:
fc−(OCF2u−O−(CF2v−AC (VIII)
(式中、uは1〜6の整数であり、vは1〜6の整数であり、Rfcは炭素原子1、2、3、もしくは4個の直鎖状完全フッ素化脂肪族基を表し、およびACはカルボン酸基またはその塩を表す)、と
fc−O−(CF2y−O−L1−AC (IX)
(式中、yは1、2、3、4、5、または6の値を有し、L1は炭素原子1、2、3、4、5、または6個の直鎖状完全フッ素化アルキレンを表し、または1〜6個の炭素原子と1もしくは2個の水素原子とを有する直鎖状部分フッ素化アルキレンであり、Rfcは上記の式(VIII)において定義されている通りであり、およびACはカルボン酸基またはその塩を表す)のうちの1つに相当する。L1の特定例としては式−CFH−の基が挙げられる。式(IX)に従う特定の化合物としては、式中、RfcがCF3CFH−を表すものが挙げられる。このような基は、JOC 34、1841(1969年)に記載されているように、−CF(CF3)COOX基(Xはカチオン)の、プロトン性物質の存在下における脱カルボキシ化により得ることができる。
【0036】
式(VIII)のフッ素化カルボン酸類は、アンレス社(Anles Ltd.)(ロシア、サンクトペテルブルグ(St. Petersburg))から市販されている。これらの化合物は、例えば、フルオラインノーツ(Fluorine Notes)、4(11)、2002年においてエルソフ(Ershov)およびポポバ(Popova)により記載されているように調製されてよい。また、これらのフッ素化カルボン酸類は典型的に、ヘキサフルオロプロピレンの直接酸化によるヘキサフルオロプロピレンオキシドの製造において副生成物として生成する。
【0037】
式(IX)に従うフッ素化カルボン酸類は、米国特許第6,255,536号に記載されているように、同様にフッ素化ビニルエーテル類の製造において使用される反応体から誘導することができる。
【0038】
別の実施形態では、式(X):
fg−COF (X)
(式中、Rfgは、任意に1つ以上の酸素原子で中断された部分または完全フッ素化直鎖状脂肪族鎖である)の酸フッ化物類は、KFまたはCsFのような金属フッ化物と反応される。この反応はアルコキシラートをもたらし、これを更に式(XI)
Y−(CH2n−Q (XI)
(式中、Yはヨウ化物、臭化物、塩化物、メシラート、トシラート等のような脱離基を表し、nは1〜3の整数であり、およびQはカルボン酸基または低級アルキルエステルを表す)のカルボン酸誘導体と反応させることができる。反応は式(XII)、
fg−CF2−O−(CH2nQ (XII)
(Rfg、n、およびQは上述したのと同様の意味を有する)のフッ素化カルボン酸誘導体類をもたらす。相当する塩類は鹸化により得ることができる。
【0039】
更に別の実施形態では、フッ素化カルボン酸類は式(XIII):
CF3−CF2−O−Rfh−COOX (XIII)
(Rfhは任意に1つ以上の酸素原子で中断された、炭素原子1〜8個の直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化直鎖状炭素鎖、例えば炭素原子1〜6個、例えば炭素原子1、2、3、もしくは4個の完全フッ素化直鎖状脂肪族基であり、およびXは一価のカチオンである)に相当する。この式の化合物は、式(XIV)
FOC−CF(CF3)−O−Rfh−COF (XIV)
の二酸二フッ化物類を、例えばアンチモン五フッ化物の存在下で転換させることによって製造できる。
【0040】
この転換は米国特許第3,555,100号に記載されている方法によって高温において行われてよく、好ましくは2級COF基の脱カルボキシ化をもたらす。得られるモノ酸フッ化物は周知の方法を用いて相当する塩へと転換することができる。
【0041】
−O−CF2−COOX基を有するフッ素化カルボン酸は、相当するビニルエーテル類、−O−CF=CF2から得ることができる。米国特許第4,987,254号によるビニルエーテルと酸素との反応は、−O−CF2COF基を保持する酸フッ化物類を生じ、これは相当する酸または塩に容易に転換することができる。
【0042】
式(I)に従う化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる:
f−O−CHF−COOH
37−O−CHF−COOH
CF3−O−CF2CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−O−CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−O−CF2−O−
CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−(O−CF22−O−
CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−(O−CF23−O−
CF2−CF2−O−CHF−COOH
f−O−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−O−
CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−(O−CF22−O−
CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−(O−CF23−O−
CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
f−O−CF2−CHFCOOH
CF3−O−CF2−CHF−COOH
37−O−CF2−CHF−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−CHF−COOH
CF3−O−CF2−O−
CF2−CF2−O−CF2−CHF−COOH
CF3−(O−CF22−O−CF2−CF2−O−CF2−CHF−COOH
CF3−(O−CF23−O−CF2−CF2−O−CF2−CHF−COOH
f−O−CF2−CHF−CF2COOH
CF3−O−CF2−CHF−CF2−COOH
25−O−CF2−CHF−CF2−COOH
37−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−O−
CF2−CF2−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−(O−CF22−O−
CF2−CF2−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−(O−CF23−O−CF2−CF2−O−CF2−CHF−CF2−COOH
f−(O)m−CHF−CF2−O−(CH2n−COOHn=1、2、または3;m=0または1
CF3−O−CHF−CF2−O−CH2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CHF−CF2−O−CH2−COOH
37−O−CHF−CF2−O−CH2−COOH
37−O−CHF−CF2−O−CH2−CH2−COOH
37−O−CF2−CF2−O−CHF−CF2−OCH2COOH
37−O−CF2−CF2−CF2−O−CHF−CF2−OCH2COOH
37−O−CF2−CHF−CF2−OCH2COOH
CF3−CHF−CF2−O−CH2COOH
37−CF2−CHF−CF2−OCH2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−O−CH2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−CF2−O−CH2ーCOOH
37−O−CF2−CF2−O−CH2−COOH
37−O−CF2−CF2−O−CH2−CH2−COOH
37−O−CF2−CF2−O−CF2−CF2−OCH2COOH
37−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−CF2−OCH2COOH
37−O−CF2−CF2−CF2−OCH2COOH
49−O−CH2−COOH
49−O−CH2−CH2−COOH
37−O−CH2COOH
613−OCH2−COOH
f−O−CF2−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−COOH
25−O−CF2−CF2−COOH
37−O−CF2−CF2−COOH
49−O−CF2−CF2−COOH
f−(O−CF2u−O−CF2−COOH(uは上記で定義した通りである)
CF3−(O−CF23−O−CF2−COOH
CF3−(O−CF22−O−CF2−COOH
CF3−(O−CF21−O−CF2−COOH
f−(O−CF2−CF2k−O−CF2−COOH(kは1、2、または3である)
CF3−(O−CF2−CF21−O−CF2−COOH
25−(O−CF2−CF21−O−CF2−COOH
37−(O−CF2−CF21−O−CF2−COOH
49−(O−CF2−CF21−O−CF2−COOH
25−(O−CF2−CF22−O−CF2−COOH
CF3−(O−CF2−CF22−O−CF2−COOH
37−(O−CF2−CF22−O−CF2−COOH
49−(O−CF2−CF22−O−CF2−COOH
f−O−CF2−COOH
37−O−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−COOH
CF3−CHF−O−(CF2o−COOH(oは1、2、3、4、5、または6の整数である)
CF3CFH−O−(CF23−COOH
CF3CFH−O−(CF25−COOH
CF3−CF2−O−(CF2o−COOH(oは上記の通りである)
CF3−CF2−O−(CF23COOH
CF3−CF2−O−(CF25COOH
【0043】
上記の一般式では、Rfは一般式(I)に関して上記で定義した意味を有する。上記リストの化合物は酸類のみを列挙しているが、相当する塩類、特にNH4+塩、カリウム塩、ナトリウム塩、またはリチウム塩も同様に使用できることが分かる。
【0044】
水分散液およびコーティング組成物中のフッ素化カルボン酸またはその塩の量は、特に限定されず、典型的には、TFEの非溶融加工性ポリマーの分散液を生成するために使用されるフッ素化カルボン酸または塩の量によって決まる。典型的には、フッ素化カルボン酸または塩の量は、フッ素化界面活性剤の量を減少させるための好適な技術によって分散液中で減少される。例えば、フッ素化カルボン酸またはその塩の量は、その分散液を陰イオン交換樹脂と接触させることによって減少されてよい。式(I)による化合物はより容易に生物の体から排除されるが、一般には、コスト面での理由のために分散液からそれらを回収することがなお望ましい。こうして、分散液およびそれらが配合されたコーティング組成物中のフッ素化カルボン酸またはその塩類の量は、典型的にはフルオロポリマー粒子の量に基づいて1000ppm以下となる。特定の実施形態では、この量は、500ppm以下であり、および更に別の実施形態では、300ppm以下である。望ましい量は典型的には0.01ppm〜50ppmである。
【0045】
PTFE粒子
TFEの非溶融加工性ポリマーの粒子(本明細書では以後PTFE粒子とも呼ぶ)は、フッ素化界面活性剤として1つ以上の式(I)のフッ素化カルボン酸類を使用してTFEの水性エマルション重合を用いて都合よく生成される。重合は任意に、例えば完全フッ素化ビニルエーテル、またはヘキサフルオロプロピレン(HFP)のような完全フッ素化C3〜C8オレフィンなどの、完全フッ素化コモノマーの使用を伴ってよい。用語「完全フッ素化モノマー」とは、本発明に関連して使用されるとき、炭素およびフッ素原子からなるモノマー類のみを包含するのではなく、例えばクロロトリフルオロエチレンのような、フッ素原子の幾つかが塩素または臭素で置き換えられたモノマー類をも包含する。それでもなお、完全フッ素化モノマーは、本明細書で使用するとき、分子中に炭素−水素結合を有さない。
【0046】
フッ素化界面活性剤は、全部を重合前に添加してもよく、またはその一部を重合の過程で添加することもできる。
【0047】
フッ素化界面活性剤の量は一般に、固体の量に対して0.001〜1重量%である。重合後に、PCT国際公開特許WO00/35971に開示されているような陰イオン交換樹脂を用いてフッ素化界面活性剤を分散液から回収してもよい。
【0048】
TFEの水性エマルション重合はフリーラジカル反応開始剤により開始される。TFEの水性エマルション重合を開始させるための既知のまたは好適な反応開始剤のいずれかを使用することができる。好適な反応開始剤としては、有機ならびに無機の反応開始剤が挙げられるが、後者が一般に好ましい。使用できる無機の反応開始剤の例としては、例えば、過硫酸類、過マンガン酸類、またはマンガン酸類のアンモニウム−、アルカリ−、またはアルカリ土類塩類が挙げられる。過硫酸塩反応開始剤、例えば過硫酸アンモニウム(APS)は、単独で使用することもでき、または還元剤と組み合わせて使用してもよい。好適な還元剤としては、例えば、亜硫酸水素アンモニウムまたはメタ重亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸水素塩類、例えばチオ硫酸アンモニウム、カリウムまたはナトリウムのようなチオ硫酸塩類、ヒドラジン類、アゾジカルボキシラート類、およびアゾジカルボキシジアミド(ADA)が挙げられる。使用してよい他の還元剤としては、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(ロンガリット(Rongalit)(登録商標))または米国特許第5,285,002号に開示されているようなフルオロアルキルスルフィナート類が挙げられる。還元剤は典型的には、過硫酸塩反応開始剤の半減期を短くする。加えて、例えば銅、鉄または銀塩類のような金属塩触媒を添加してもよい。一般に、マンガン系または過マンガン系反応開始剤を使用する場合、重合後に得られる分散液を陽イオン交換樹脂と接触させることによってマンガンイオンを除去してもよい。
【0049】
重合は典型的には、10〜100℃、好ましくは20℃〜90℃の温度、および0.2MPa(2bar)〜5MPa(50bar)、好ましくは0.6MPa(6bar)〜2.5MPa(25bar)の圧力で行われる。水性エマルション重合系は、緩衝剤類、錯体形成剤類、および気体キャリア類などの補助剤類を更に含んでもよい。特定の実施形態では、PTFE粒子を生成するためにシード重合を使用してもよい。すなわち、重合を50〜100nmの体積平均直径を有するフルオロポリマーの小粒子、典型的にはPTFE小粒子の存在下で開始してもよい。このようなシード粒子は、別個の水性エマルション重合において生成されてよく、および水性エマルション重合における水の重量に基づいて0.5〜10重量%の量で使用されてよい。シード粒子の利用は、望ましいPTFE粒子サイズのより良好な制御を可能にし、および重合中に爆発を引き起こす恐れのある重合中の凝塊の形成を回避する。シード粒子は、例えば少量の部分フッ素化モノマー(例えば下記に開示されているような)、または完全フッ素化アルキルビニルモノマーもしくは完全フッ素化ビニルエーテルなどの完全フッ素化コモノマー、または下記に開示されているような他の完全フッ素化コモノマーの存在下で、TFEを重合することにより生成されてよい。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、コア−シェル粒子が生成される。コアーシェルPTFE粒子は、内側層(コア)が、粒子の外側層におけるTFEポリマーと比較して異なる化学組成を有するTFEポリマーを含む粒子を包含する。コア−シェルPTFE粒子を生成するために、部分フッ素化コモノマーまたは非フッ素化コモノマーを重合の最終段階で添加して、その結果、TFEと部分フッ素化コモノマーもしくは非フッ素化コモノマーとのコポリマーを含むシェルを有する粒子が得られる。最終重合段階において使用するために好適な部分フッ素化コモノマーとしては、次の一般式:
CR12=CFR3
(式中、R1、R2、およびR3の各々は独立して、H、Cl、F、または例えば炭素原子1〜3個の完全フッ素化アルキル基を表し、但し、R1、R2、およびR3のうちの少なくとも1つはHを表す)に従うものが挙げられる。使用してよい部分フッ素化コモノマー類の具体例としては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエテン、ペンタフルオロプロペン、およびヘプタフルオロブテンが挙げられる。好適な非フッ素化コモノマー類としては、エチレンおよびプロピレンなどのα−オレフィン類が挙げられる。
【0051】
コア−シェルPTFE粒子のシェルの製造において添加されまたは使用されてよい更に別のコモノマー類としては、カルボン酸基またはスルホン酸基を包含するアニオン性基を有するフッ素化コモノマー類が挙げられる。イオン基を有する好適なコモノマー類またはその前駆体およびコア−シェルPTFE粒子の製造におけるその使用は、EP1529785に開示されている。
【0052】
前述のコモノマー類の1つ以上が添加される最終重合段階は典型的には、ポリマー固体の最後の25%以下が生成される段階として定義され、したがって、シェルは、PTFE粒子の全重量の25重量%以下を構成し得る。特定の実施形態では、シェルはPTFE粒子重量の20重量%以下、または15重量%以下を構成する。最終重合段階において使用される部分フッ素化および/または非フッ素化モノマーの総量は典型的に、0.05〜20重量%、または典型的には0.1重量%〜15重量%の部分フッ素化および/または非フッ素化コモノマーを有するTFEコポリマーを生成するように選択される。特定の実施形態では、シェルのTFEコポリマー中の部分フッ素化および/または非フッ素化コモノマーの量は、0.5〜10重量%である。
【0053】
特定の実施形態では、最終重合段階において、部分フッ素化または非フッ素化コモノマーに加えて完全フッ素化コモノマーを使用してもよい。完全フッ素化コモノマーの例としては、完全フッ素化ビニルエーテル類、例えば次式:
CF2=CF−O−Rf
(式中、Rfは1つ以上の酸素原子を含有してよい完全フッ素化脂肪族基を表す)のものが挙げられる。具体例としては、完全フッ素化アルキルビニルエーテル類、例えば完全フッ素化メチルビニルエーテル(PMVE)、完全フッ素化エチルビニルエーテル、および完全フッ素化n−プロピルビニルエーテル(PPVE−1)、完全フッ素化−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、完全フッ素化−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテルおよび完全フッ素化−2−メトキシ−エチルビニルエーテルが挙げられる。特定の完全フッ素化アルキルビニルエーテル類としては、ガス状完全フッ素化アルキルビニルエーテル類、または重合温度において少なくとも10kPaの蒸気圧を有するものが挙げられる。好適な完全フッ素化コモノマーの別の例としては、完全フッ素化アリルエーテル類、および、例えばヘキサフルオロプロピレンのような3〜8個の炭素を有する完全フッ素化オレフィン類が挙げられる。
【0054】
PTFE粒子を調製するのに使用されるコモノマーの総量は、全部フッ素化のものでも部分フッ素化のものでも、または非フッ素化のものでも、一般に、そのPTFE粒子の全体としての非溶融加工性特性を損わないように十分低く保たれるべきである。それ故に、コモノマーの総量は典型的に、PTFEの総量基準で1重量%を超えるべきではない。
【0055】
最終重合段階時に、重合速度を増大させおよび/または形成されるコポリマーの分子量を減少させるために、更なる量の反応開始剤または反応開始剤構成成分類を添加してもよい。さらに、最終重合段階時に、同様に1つ以上の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0056】
したがって、特定の実施形態では、PTFE粒子は、TFEと部分フッ素化または完全フッ素化コモノマーとを共重合することにより生成されたPTFE粒子を使用するTFEのシード重合を用いることによって得てもよい。その後重合の最終段階において部分フッ素化または非フッ素化コモノマーを添加してよい。それ故に、このように生成されたPTFE粒子は、TFEのコポリマーのコア、TFEのホモポリマーの中間シェル、およびTFEと部分フッ素化または非フッ素化コモノマーとのコポリマーのシェルを含むことになる。こうしたPTFE粒子を生成するための重合条件に関する更なる詳細は、EP30663に見出され得る。典型的には、コアはPTFE粒子の5〜15重量%を構成し、およびPTFEのホモポリマーは90〜70重量%を構成する。
【0057】
PTFE粒子は典型的には、20nm〜500nm、典型的には50nm〜350nmの平均粒子サイズ(体積平均直径)を有する。本発明に関する特定の実施形態では、混合物の粒子サイズが二峰性または多峰性分布を有するように、別個の平均粒子サイズを有するPTFE粒子の混合物が使用される。例えば、一実施形態では、100nm以下、例えば30〜90nm、または50〜80nmの平均粒子サイズを有するPTFE粒子の混合物が、少なくとも180nm、例えば190nm〜400nm、または200nm〜350nmの平均粒子サイズを有するPTFE粒子と混合される。特定の実施形態では、PTFE粒子の混合物を使用する際、混合物を得るために使用されるPTFE粒子分散液の少なくとも1つは上述のコア−シェルPTFE粒子からなる。
【0058】
コーティング組成物中のPTFE粒子の量は、広く変化してよく、および一般に、コーティング組成物が単一のコーティング系で使用されるべきかまたは多層コーティング系で使用されるべきかによって決まる。多層コーティング系において使用されるとき、本発明によるPTFE粒子の量は一般に、コーティング組成物が下塗り層用か、中塗り層用か、または上塗り層用かによって異なることになる。一般に、下塗り層においては少ない量を使用すべきであり、そして中塗りおよび/または上塗り層においてはより多くの量を使用することができる。一般に、コーティング組成物におけるPTFE粒子の量は、組成物の固体の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、典型的には15重量%から95重量%までである。
【0059】
非イオン性界面活性剤
コーティング組成物は、TFEの非溶融加工性ポリマーおよび非イオン性界面活性剤を包含する。有用な非イオン性界面活性剤の例として次式:
1−O−[CH2CH2O]n−[R2O]m−R3 (XV)
(式中、R1は、少なくとも8個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族、直鎖状または分枝状炭化水素基を表し、R2は3個の炭素原子を有するアルキレンを表し、R3は水素またはC1〜C3アルキル基を表し、nは0〜40の値を有し、mは0〜40の値を有し、およびn+mの合計は少なくとも2である)に従うものが挙げられる。上記の式(X)において、nおよびmにより示される単位は、ブロックとして現れてよく、またはそれらは別のまたはランダムな構成で存在してもよいということが理解される。上記の式(X)による非イオン性界面活性剤の例としては、アルキルフェノールオキシエチラート類(oxethylates)、例えば商標名トリトン(TRITON)(商標)で市販されているエトキシ化p−イソオクチルフェノール、例えばエトキシ単位の数が約10個であるトリトン(商標)X100、またはエトキシ単位の数が約7〜8個であるトリトン(商標)X114が挙げられる。なお更なる例としては、上式(X)中のR1が炭素原子4〜20個のアルキル基を表し、mが0であり、およびR3が水素であるものが挙げられる。それらの例としては、約8個のエトキシ基でエトキシ化されたイソトリデカノールが挙げられ、およびこれはゲナポール(GENAPOL)(登録商標)X080としてクラリアント社(Clariant GmbH)から市販されている。親水性部分がエトキシ基およびプロポキシ基のブロックコポリマーを含む式(X)に従う非イオン性界面活性剤類を、同様に使用してよい。このような非イオン性界面活性剤は、商標名ゲナポール(GENAPOL)(登録商標)PF 40およびゲナポール(登録商標)PF 80としてクラリアント社(Clariant GmbH)から市販されている。市販されている別の好適な非イオン性界面活性剤としては、タージトール(Tergitol)(商標)TMN 6、タージトール(商標)TMN10、またはタージトール(商標)TMN 100Xが挙げられる。非イオン性非フッ素化界面活性剤類の混合物も同様に使用してよい。
【0060】
非イオン性非フッ素化界面活性剤は一般に、PTFE粒子の水分散液をコーティング組成物の非フッ素化ポリマーと混合する前に、その分散液に加えられる。例えば、非イオン性界面活性剤は、PTFE水分散液の濃縮(up-concentration)前に、濃縮(up-concentration)中に、または濃縮(up-concentration)後に、および/または分散液中のフッ素化界面活性剤の量を減少させる工程中に、加えられてよい。所望ならば、追加の非イオン性非フッ素化界面活性剤をコーティング組成物に直接加えてもよい。典型的には、コーティング組成物中の非イオン性非フッ素化界面活性剤の量は典型的に、コーティング組成物中のPTFE粒子の重量に基づいて0.5〜15重量%である。特定の実施形態によれば、この量は1〜12重量%である。
【0061】
非フッ素化ポリマー
組成物は更に、非フッ素化ポリマーを含有する。非フッ素化ポリマーは、最終コーティングにおいて1つ以上の所望の特性を得るために多様なポリマー類から選択してよい。非フッ素化ポリマーとしては、例えば、シリコーン樹脂類、ポリスルホン類、脂肪族および脂環式ポリアミド類を包含するポリアミド類、塩類およびポリアミド酸アミド類を包含するポリアミド酸類、ポリイミド類、ポリアミド−イミド類、ポリビスマレイミド類、アクリル系ポリマー類、メタクリル系ポリマー類、ポリフェニレンスルフィド類などのポリアリーレンスルフィド類を包含するポリスルフィド類、アルキド樹脂類、ポリ塩化ビニル類、ポリブタジエン類、ニトロセルロース類、尿素ホルムアルデヒド樹脂類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、およびビニル環状アセタール類、ならびにこれらの混合物が挙げられる。ポリアミドイミドおよびポリビスマレイミドポリマー類の例としては、米国特許第4,548,986号に開示されているものが挙げられる。好適なポリアミド類の例としては、ポリ(m−フェニレンジアミンイソフタルアミド)のようなおよび米国特許第4,548,986号に開示されているような芳香族ポリアミド類、米国特許第3,179,614号および米国特許第4,049,863号に開示されているようなポリアミド酸類、ならびに米国特許第3,260,691号に記載されているようなポリアミド酸アミド類が挙げられる。好適なポリスルホン樹脂類としては、米国特許第3,981,945号、米国特許第4,090,933号、および米国特許第4,131,711号に開示されているポリエーテルスルホン類が挙げられる。使用することのできるポリスルフィド類としては、米国特許第4,287,112号に開示されているようなポリアリーレンスルフィド類が挙げられる。使用できるアクリル系またはメタクリル系ポリマー類の例としては、米国特許第4,123,401号に開示されているように、シェル・ケミカル・カンパニー(Shell Chemical Company)により「カルデュラ(Cardura)E」エステルとして販売されているグリシジルエステルでエステル化された、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アクリル酸、およびメタクリル酸のポリマー類が挙げられる。特定例としては以下のものが挙げられる:メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸ターポリマー類、好ましくはその40〜50/48〜52/1〜4(重量比)ターポリマー類;ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸ターポリマー類で「カルデュラ(Cardura)E」でエステル化され、それらの単位が好ましくは23〜27/33〜37/15〜19/21〜25の比で存在するもの;スチレン/メチルメタクリレート/アクリル酸ターポリマー類で「カルデュラ(Cardura)E」でエステル化され、それらの単位が好ましくは28〜32/8〜32/15〜19/21〜25の比で存在するもの;およびメチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸ターポリマー類、好ましくはその37〜41/55〜59/1〜6のターポリマー類。
【0062】
非フッ素化ポリマーは典型的には組成物中に、その組成物中の固体の総重量に基づいて少なくとも5または10重量%、典型的には10重量%〜95重量%の量で含まれる。非フッ素化ポリマーの量は、コーティング組成物が、下塗り層用、中塗り層用、または上塗り層用のいずれであるかに応じて変えてよい。一般には、結合剤の量は下塗り層のためのコーティング組成物中ではより多く、そして、中塗り層または上塗り層においてはより少ない量で使用されてよく、または全く使用されなくてもよい。コーティング組成物中での非フッ素化ポリマーとPTFEポリマー粒子との重量比は、9:1〜1:9、典型的には8:1〜1:4、または4:1〜2:1であってよい。
【0063】
コーティング組成物の更なる任意構成成分
組成物は、例えば、溶融加工性であるTFEのコポリマーのような、完全フッ素化溶融加工性フルオロポリマーを更に含有してもよい。このようなコポリマー類の例としては、当該技術分野でFEPポリマー類として既知であるTFEとHFPとのコポリマー類、または当該技術分野でPFAポリマー類として既知であるTFEと完全フッ素化ビニルエーテルとのコポリマー類、例えば上記に開示されているもの、が挙げられる。典型的には、こうしたコポリマー類は、エマルション重合により生成されてよく、および下塗りのために組成物の他の構成成分とブレンドされることのできる水分散液を生ずる。一般には、こうしたコポリマー類の平均粒子サイズは20nm〜500nmであり、および典型的には50〜350nmである。特定の実施形態によれば、PTFE粒子とコポリマー粒子との混合物は二峰性または多峰性粒子サイズ分布を形成する。例えば、一実施形態では、PTFE粒子は少なくとも180nmの平均粒子サイズを有してよく、およびコポリマー粒子の粒子サイズは100nm以下であり、典型的には80nm以下である。
【0064】
コーティング組成物は有機溶媒類、コロイド状シリカ、雲母、充填剤類、着色剤類、レベリング剤類、付着促進剤類、および粘着付与剤類などの更なる構成成分を含有してもよい。組成物は更に、特にPCT国際公開特許WO96/13556に開示されているようなフィルム硬化剤類を包含してもよい。フィルム硬化剤の例としては、金属ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウムのようなケイ酸塩化合物類、および二酸化チタンおよび酸化アルミニウムのような金属酸化物類が挙げられる。
【0065】
特定の実施形態では、コーティング組成物は1つ以上のアニオン性非フッ素化界面活性剤を更に含んでもよい。本発明に関連して使用してよいアニオン性非フッ素化界面活性剤類としては、酸基を有する界面活性剤類が挙げられる。非フッ素化アニオン性界面活性剤の例としては、1つ以上のアニオン基を有する界面活性剤類が挙げられる。アニオン性非フッ素化界面活性剤類は、1つ以上のアニオン性基に加えて、ポリオキシエチレン基などの、オキシアルキレン基中に2〜4個の炭素原子を有するポリオキシアルキレン基のような他の親水性基も包含してよい。典型的な非フッ素化界面活性剤としては、アニオン性炭化水素界面活性剤類が挙げられる。用語「アニオン性炭化水素界面活性剤類」は、本明細書で使用されるとき、分子中の1つ以上の炭化水素部分、および1つ以上のアニオン基、特に酸基、例えばスルホン酸基、硫酸基、リン酸基、およびカルボン酸基およびそれらの塩類、を含む界面活性剤を含む。アニオン性炭化水素界面活性剤類の炭化水素部分の例としては、例えば6〜40個の炭素原子、好ましくは8〜20個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪族基が挙げられる。こうした脂肪族基は直鎖状であっても分枝状であってもよく、環状構造を含有していてもよい。炭化水素部分はまた、芳香族であってもよく、または芳香族基を含有していてもよい。加えて、炭化水素部分は、例えば酸素、窒素、およびイオウなどの1つ以上のヘテロ原子を含有していてもよい。
【0066】
本発明で使用するためのアニオン性炭化水素界面活性剤の特定例としては、ラウリルスルホネートなどのアルキルスルホネート類、ラウリルサルフェートなどのアルキルサルフェート類、アルキルアリールスルホネート類およびアルキルアリールサルフェ−ト類、ラウリン酸(lauric acids)およびその塩類などの脂肪酸類(カルボン酸類)およびそれらの塩類、ならびにリン酸アルキルまたはアルキルアリールエステル類およびそれらの塩類が挙げられる。使用することのできる市販のアニオン性炭化水素界面活性剤としては、ステパン・カンパニー(Stepan Company)からのポリステップ(Polystep)(商標)A16(ドデシルベンジルスルホン酸ナトリウム)、クラリアント社(Clariant GmbH)から入手可能なホストピュア(Hostapur)(商標)SAS30(二級アルキルスルホネートナトリウム塩)、エマルソゲン(Emulsogen)(商標)LS(ラウリル硫酸ナトリウム)およびエマルソゲン(Emulsogen)(商標)EPA1954(C12〜C14アルキル硫酸ナトリウム類の混合物)、およびユニオン・カーバイド(Union Carbide)から入手可能なトリトン(TRITON)(商標)X−200(アルキルスルホン酸ナトリウム)、ならびにコグニス(Cognis)から入手可能なエデノア(Edenor)C12が挙げられる。更に好適なアニオン性界面活性剤としては、EP1538177およびEP1526142に開示されているスルホスクシネート類が挙げられる。カルボン酸基を有するアニオン性炭化水素界面活性剤類が好ましい。
【0067】
コーティング組成物は、組成物を構成する種々の構成成分を共にブレンドすることによって都合よく製造することができる。一般に、PTFE粒子は水分散液の形態であり、任意のTFEのコポリマーもまた一般に、水分散液の形態である。これらの分散液は単に共にブレンドされてよく、および非フッ素化ポリマーをそれに加えてよい。非フッ素化ポリマーも同様に水分散液の形態であってよく、または例えばN−メチルピロリドンのような有機溶媒、またはトルエン、キシレン等のような芳香族溶媒中に溶解または分散されていてもよい。他の更なる成分は、水分散液として、または有機溶媒溶液もしくは分散液から、組成物に加えられてよい。
【0068】
本発明によるコーティング組成物は、基材上に非粘着性コーティングを提供するために使用することができる。当該コーティング組成物は、単層コーティング系に関連して使用することができるが、典型的には多層コーティング系に関連して使用される。一実施形態では、コーティング組成物はPTFEおよび他のフルオロポリマーの強固な付着が所望される種々の基材上に下塗りを提供するために使用される。本発明によるコーティング組成物と共に、多層コーティング系の更なる層を提供してもよくまたは提供しなくてもよい。したがって、二層コーティング系の一実施形態では、本発明によるコーティング組成物を使用することによって下塗りおよび上塗りが提供される。別の実施形態では、本発明によるコーティング組成物を用いて多層コーティング系の下塗り、中塗り(1つまたは複数)および上塗りが提供される。特定の実施形態では、多層コーティングの上塗りのコーティング組成物は、上述したようなアクリル系またはメタクリル系ポリマーラテックスを含有してもよい。下塗りおよび/または中塗りは典型的には、コーティング組成物中に、例えばポリスルホン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリアミド−イミド類、ポリビスマレイミド類、およびこれらの混合物のような耐熱性結合剤を包含することになる。
【0069】
一般には、当該組成物は金属基材またはガラス基材上に少なくとも下塗りを提供するために特に有益である。金属基材の例としては、アルミニウム、スチール、およびステンレススチールが挙げられる。これらの基材に組成物を適用する前に、基材への下塗りの付着を更に高めるために基材を粗面化してもよい。典型的には、金属基材を粗面化するためにサンドブラストまたはエッチングを使用する。基材はいわゆる平滑な基材であってもよい。平滑な基材は典型的には、基材の化学洗浄および光エッチングにより得られ、そして典型的には2.5μm未満、および好ましくは1.25μm未満の平均表面粗さ(Ra)を有する。比較すると、未処理の圧延アルミニウム基材は0.25〜0.5μmの表面粗さを有し、およびサンドブラストまたはグリットブラストされたアルミニウムは4〜5.25μmの平均表面粗さを有し得る。基材にコーティングを適用するために、組成物は、例えば、組成物をスプレーコーティング、ローラーコーティング、カーテンコーティング、またはコイルコーティングすることを包含する既知の技術のいずれかにより適用されてよい。
【0070】
組成物の適用に続き、コーティングは一般にコーティングを40〜100℃の高温に曝すことによって乾燥される。次いで非溶融加工性PTFEの1つ以上の追加の層を同様の方法で提供してもよい。このようなPTFEの1つ以上の層は、TFEの溶融加工性コポリマー類のような溶融加工性フルオロポリマー類を含んでも含まなくてもよい。このような溶融加工性TFEコポリマー類が使用されるとき、多層コーティング中でのそれらの比率を、上塗りに向かってPTFEの量が増大するような勾配を生ずるように変化させてもよい。同様に、非フッ素化ポリマーのPTFE粒子に対する比率を、上塗りに向かって非フッ素化ポリマーの量が減少するような勾配を生ずるように変化させてもよい。
【0071】
1つ以上のコーティングの適用に続き、得られたコーティングされた基材を焼成しまたは焼結する。一般には、焼成はオーブン中で350℃〜450℃、典型的には370℃〜420℃の温度で行われる。焼成および焼結の時間は1〜10分で変化してよく、およびオーブンは一定温度を有していてもよく、または上昇温度プロファイルが使用されてもよく、すなわち温度を焼成サイクルの初期の低温から後期のより高い温度まで上昇させてもよい。一般には、コーティングされた物品の焼成は、そのコーティング物品を入口から出口まで上昇する温度プロファイルを有するオーブンを通して輸送することによって行われる。
【0072】
本発明はさらに、以下の実施例を参照して例示されるが、本発明をそれらに限定するものではない。
【実施例】
【0073】
試験方法
粒径
ラテックスの粒子サイズ測定は、ISO/DIS 13321に従って、マルベルン・ゼータザイザー(Malvern Zetazizer)1000 HASによる動的光散乱を用いて行った。測定に先立ち、重合から得られるようなポリマーラテックスを0.001モル/LのKCl溶液で希釈し、測定温度はどの場合も25℃であった。報告された平均値がZ−平均粒径である。
【0074】
SSG:標準比重はASTM4894−04に従って測定した。
原料分散液の固形物含有量:固形物含有量の決定は、ラテックスサンプルを250℃までの温度に30分間曝すことによって行われた。
濃縮(up-concentrated)分散液の固体含有量:固体含有量の測定はISO 12086に従って行われた。
【0075】
ペンボール試験(Pen Ball test)
コーティングされた基材の硬さは、ホイットフォード試験方法(Whitford Test Method)137Cに従いホイットフォードスクラッチ試験機(Whitford Scratch tester)を用いて試験した。使用された基材は平滑なアルミニウム基材であった。ペンボール試験は、PCT国際公開特許WO02/14065に記載されるように、植物油を用いて170℃で行われる。試験値が高いほど良好である。
【0076】
クロスハッチ試験(Crosshatch test)
基材へのコーティングの付着は、DIN EN ISO 2409に従う、クロスハッチ試験を用いて評価した。コーティングされた基材にナイフを用いることにより1mmのクロスハッチパターンを作製した。接着テープ(テサ(Tesa)(商標)4104/50mm)をカットライン上にできる限りしっかりと適用した。その接着テープを垂直に引っ張った。10回テープを適用しおよび引っ張った後、カットラインの外観を、DIN EN ISO 2409により評価した(0=優良コーティング、5=不良コーティング)。上塗りおよび下塗りのあらゆる損傷を、顕微鏡下で判定し、および下記の表に別個に報告する。
【0077】
水および塩水調理試験
コーティングされた基材を沸騰水または10%の塩水(NaCl水溶液)に48時間浸漬した。室温まで冷却した後、サンプルを上述したクロスハッチ試験により試験した。
【0078】
フッ素化カルボン酸を用いたフッ素化モノマー類(フルオロオレフィン)の重合
重合実験は、インペラ攪拌器およびバッフルを備えた40Lのケトル中で行った。ケトルに30Lの脱イオン水を入れ、および35℃に設定した;酸素を除去するためにケトルを繰り返し真空排気(evacuated)した;攪拌速度は165rpmに設定した。この酸素を含まないケトルに、表3に列挙したような70mmolのフッ素化乳化剤(別個に特定しない限り)を入れ、および以下の材料を加えた:40mgの硫酸銅五水和物および1mgの濃硫酸を含有する溶液0.5mL;25重量%のアンモニア水溶液15gおよびCF3CF2CF2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2(PPVE−2)5.6g。最終的に、反応器をテトラフルオロエチレン(TFE)を用いて0.2MPaに加圧し、そしてヘキサフルオロプロピレン(HFP)47gを加えた。次にTFEを用いてケトルを1.5MPaに設定し、および140mgの二亜硫酸ナトリウムを含有する100mLの反応開始剤水溶液および次に340mgのペルオキソ二硫酸アンモニウムを含有する100mLの溶液を反応器へとポンプで送った。重合の始まりは圧力低下によって示される。重合中、TFEを連続的に供給することによって、圧力を1.5MPaに維持した。TFE3.2kgを加えた後、モノマー弁を閉じ、そして圧力を緩めた。得られたポリマーラテックスの特徴を表3にまとめる。
【0079】
1000mLのこのポリマー分散液を、攪拌下で20mLの塩酸を加えることにより凝析させた。凝固した物質を、ガソリンで凝集させ、そして繰り返し洗浄した。凝集させたポリマーを真空オーブン中、200℃で一晩乾燥させた;試験データを表3に示す。
【表A】

【0080】
化合物1:CF3OCF2CF2CF2OCF2COONH4の調製
米国特許第4987254号に記載されているように、SbF5の存在下で完全フッ素化ビニルエーテル類の酸素による酸化を行った。最初に形成される酸フッ化物類をメタノールでエステル化しおよび蒸留により精製した。蒸留したエステル類はアンモニア水溶液で鹸化することにより相当するアンモニウム塩類へと転換した。磁性攪拌棒、温度計、ドライアイス還流凝縮器、滴下ロート、およびガス導入チューブを装備した乾いたフラスコに5gのグラファイトを入れた。フラスコに窒素を流しおよび332gのCF3OCF2CF2CF2OCF=CF2を室温で加えた。滴下ロートを用いて2.6gのSbF5を加えて周囲気圧にてフラスコに酸素を充填した。発熱反応が酸化を示した。全反応時間は14時間であった。最初の1時間の後に2.6g、および7時間後に3.5gのSbF5を加えた。反応混合物に50gのメタノールをゆっくりと加えることによりエステル化を行った。300gの水と50gのメタノールを加えた後フラッシュ蒸留することにより、得られたエステルをバッチから単離した。留出物は2つの相を形成した。下相を分離し、そして上相はフラスコに戻した。310gの下相が収集された。GC分析により、52%のCF3OCF2CF2CF2OCF2COOCH3を含有することが示された。分留による精製により5.2kPa(52mbar)において51℃の沸点を有する純粋なエステル144gが得られた。CF3OCF2CF2COOCH3が副生成物として単離された。エステルをアンモニア水により60〜80℃で鹸化しおよび蒸留によりメタノールを除去することにより、CF3OCF2CF2CF2OCF2COONH4の水溶液が得られた。構造はすべて、F−NMRスペクトルにより確認された。
【0081】
化合物5:CF3CF2CF2OCF2COONH4の調製
米国特許第4,987,254号に記載されている手順を用いて、CF3CF2CF2OCF=CF2を、CF3CF2CF2OCF2COOCH3(bp 102〜104℃)へと転換した。アンモニア水による鹸化および蒸留によるメタノールの除去により、CF3CF2CF2OCF2COONH4の水溶液を得た。構造はF−NMRスペクトルにより確認された。
【0082】
化合物17:CF3CF2CF2OCHFCOONH4の調製
機械攪拌器、温度計、および還流凝縮器(−80℃)を装備した2リットルのガラスフラスコを使用する。電気加熱マントルによりフロスコの加熱を行う。転換はワンポット反応として行われる。275gの完全フッ素化プロピルビニルエーテル(PPVE)、280gのKOH、602gの水、151gのt−ブタノール、および10gのメチルトリオクチルアンモニウムクロライドをフラスコに入れる。この3相混合物に激しい攪拌を与える。最初の加熱の後、穏やかな発熱反応が起こる。9時間混合を続ける。この時間中、内部温度を27〜33℃に調節する。発熱反応が止まったなら混合を中止する。反応混合物は2つの層を形成する。低温還流凝縮器を標準的な還流凝縮器と交換する。外側を冷却せずに硫酸(392g)をゆっくりと加える。バッチを加熱して還流させる。未反応PPVEを排気する。内部温度約80℃で、ガスが発生し始める。ガスの発生が止まるまで加熱を続ける。この時点で内部温度は101℃に達する。バッチを室温まで冷却しそして還流凝縮器を蒸留装置と交換する。カラムは使用しない。110gのメタノールをバッチに加え、そして蒸留を開始する。凝集された蒸気は2層を形成する。下層を分離し、そして上層はフラスコに戻す。下相が形成されなくなったなら蒸留を中止する。全部で、234gの下相が収集される。下相の分留により、周囲気圧にて120〜122℃の沸点を有するC37OCHFCOOCH3、167gが得られる。
【0083】
計算上の収率:使用した全PPVE基準で59%;転換したPPVE基準で70%。
エステルをアンモニア水と反応させることによりアンモニウム塩へと転換する。分留によりメタノールを除去する。得られる水溶液をフッ素化オレフィンの重合における乳化剤として使用する。
【0084】
化合物12:CF3OCF2CF2CF2OCHFCOONH4の調製
還流凝縮器、温度計、および磁性攪拌機を備えたガラスフラスコを用いた。このフラスコに、完全フッ素化メトキシプロピルビニルエーテル(498g)、t−ブタノール(149g)、水(1007g)、水酸化カリウム(280g)、およびメチルトリオクチルアンモニウムクロライド(10g)を加えた。得られた2相混合物を加熱して、激しく攪拌しながら16時間還流させた。混合物を室温まで冷却させて、硫酸(588g)を加えた。この2相混合物を、激しく攪拌しながら再度加熱した。約70℃でガスが発生し始めた。ガスの発生が止まるまで、加熱を続けた。還流凝縮器を、下相を分離できる蒸留装置に置き換え、また一方で、上相をフラスコに戻した。メタノール(150g)を加え、そして混合物を蒸留するために加熱した。蒸留は、精留を目的とするものではなく、周囲気圧で行った。凝縮した蒸気は2相に分離した。下相を収集し、そして上相はフラスコに戻した。下相がそれ以上凝縮器から分離されなくなるまで、蒸留を続けた。合わせた未精製エステル(493g)を分留によって精製し、その結果、沸点51〜52℃/2.2kPa(22mbar)のCF3O(CF23OCHFCOOCH3、401gが得られた。これは、使用したビニルエーテル基準で収率78%に相当する。
【0085】
このエステルは、アンモニア水と共に加熱し、そして分留によってメタノールを除去することによって、アンモニウム塩へ転換した。
【0086】
別の方法としては、上記の反応を繰り返したが、メチルトリオクチルアンモニウムクロライドの代わりに、CF3O(CF23OCHFCOONH4、11gを含有する水溶液36gを相間移動触媒として使用した。この混合物を内部温度70℃まで徐々に加熱した。合計反応時間は26時間であった。上述と同様にして精製を行った。蒸留されたCF3O(CF23OCHFCOOCH3、438gを回収した。これは、収率83%に相当する(計算値には相関移動触媒の量が包含される)。
【0087】
アンモニウム塩への転換は、上述と同様にして行った。
【0088】
化合物13:C37OCHFCF2COONH4の調製
a.CF3CF2CF2OCHFCF2CH2OHの調製
攪拌棒、温度計、還流凝縮器、および滴下漏斗を備えた2リットルのガラスフラスコ内に、メタノール1008g、完全フッ素化プロピルビニルエーテル266g、およびロンガリット(Rongalit)(登録商標)(ヒドロキシメチルスルフィン酸ナトリウム)9.2gを入れた。この反応混合物を加熱して還流させた結果、内部温度は29℃になった。t−ブチルヒドロペルオキシド(水中70%)7.1gをアリコートに分けて9時間の間に加える。内部温度は最後には52℃に達した。反応混合物は、単一液相と幾つかの固体を現していた。この液体を、GCで分析すると、C37OCHFCF2CH2OHの含有量223gを示した。これは収率75%に相当する。
【0089】
反応混合物の蒸留により、単離収率57%に相当する生成物(bp54℃/2.3kPa(23mbar))、171gが得られた。
【0090】
b.C37OCHFCF2COONH4の調製
温度計、還流凝縮器、滴下漏斗、および攪拌棒を備えた2リットルのガラスフラスコを用いた。674gの水、136gのKMnO4、および38gのNaOHをフラスコに入れる。169gのC37OCHFCF2CH2OHを十分に攪拌した混合物に滴下漏斗を介して加えた。温度を50℃未満に保持する。残留過マンガン酸塩は、少量のメタノールを加えることによって分解した。得られたスラリーを濾過して、MnO2を除去した。ろ過ケークを水で洗浄した後、合わせたろ液を蒸留装置に移し、そして硫酸65gを用いて酸性化した。メタノール100gを加え、そしてフラッシュ蒸留を開始した。留出物は2つの層を形成した。下層を分離し、そして上層は蒸留ポットに戻した。合計で182gの下層を収集した。未精製エステルを分留することにより、沸点55〜56℃/5.2kPa(52mbar)のC37OCHFCF2COOCH3、137gが得られた。これは、収率77%に相当する。
【0091】
このエステルを、アンモニア水を用いて鹸化し、続いて蒸留によってメタノールを除去することによって、アンモニウム塩へ転換した。
【0092】
化合物11:CF3O(CF23OCHFCF2COONH4の調製
a.CF3O(CF23OCHFCF2CH2OHの調製
上述したものと同様の装置を使用して、ラジカル源としてロンガリット(Rongalit)およびt−ブチルヒドロペルオキシドを用いて255gの完全フッ素化メトキシプロピルビニルエーテルおよび730gのメタノールを転換させた。反応温度は、47℃から開始し、そして最後には64℃に達した。蒸留により精製して、沸点60〜61℃/2kPa(20mbar)の純粋なCF3O(CF23OCHFCF2CH2OH、166gを得た。これは、収率59%に相当する。
【0093】
b.CF3O(CF23OCHFCF2COONH4の調製
温度計、還流凝縮器、滴下漏斗、および攪拌棒を備えた2リットルのガラスフラスコを用いた。CF3O(CF23OCHFCF2CH2OH159g、水520g、および硫酸100gをフラスコに加えた。この液体にKMnO4、190gを2時間かけて攪拌しながら手動で加えた。反応温度は時間をかけて95℃まで上げた。2時間の後反応時間の後に、亜硫酸水素ナトリウムの水溶液を、透明な溶液が形成するまで加えた。メタノール100gと、合計で400gの50%硫酸水溶液とを加えた。反応混合物をフラッシュ蒸留することによって、2相の留出物が得られた。下相(120g)を分留することにより、CF3O(CF23OCHFCF2COOCH3(bp34〜35℃/0.6kPa(6mbar);収率50%)、85.5gを得た。
【0094】
このエステルを、アンモニア水を用いて鹸化し、続いて蒸留によってメタノールを除去することによって、アンモニウム塩へ転換した。
【0095】
化合物6の調製
CH3−O−CF2−CF2−COOCH3をPCT国際公開特許WO01/46116に記載されているようにフッ素化した;次に酸フッ化物CF3−O−CF2−CF2−COFをメチルエステルへと転換した。蒸留されたエステルは上述したようにアンモニア塩へと転換した。
【0096】
化合物14:CF3−CFH−O−(CF25COONH4の調製
二塩基酸フッ化物、FCOCF(CF3)−O−(CF25COFのサンプル(500 g、1.1mol)を、米国特許出願番号US2004/0116742に記載されているように完全フッ素化アジポイルフルオライドのヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)カップリングから調製し、そして炭酸ナトリウム(500g、4.7mol)の500gのジグリム中の攪拌されたスラリーに85℃で2時間かけて加え、ジ塩(disalt)を作製した。反応はCO2ガスを放出した。蒸留水(25g、1.4mol)を85℃にて加えた。CO2ガスを排気しながら混合物を168℃まで加熱し、そして30分間保持した。反応物を冷却し、そして1100gの水中の硫酸(350g、3.6mol)を加えて反応混合物を酸性にした。最下相を400gの50%硫酸で洗浄し、そして真空蒸留して132〜135℃/1.9kPa(15mmHg)の沸点を有するCF3−CFH−O−(CF25COOH、426g、1.0molを95%の収率で得た。この後、水63g中のNaOH46gを加えた。塩類を真空オーブン中で112℃/1.9kPa(15mmHg)で乾燥し、386gのかすかに黄色の粘性固体を得た。この塩に硫酸を加えそしてフルオロケミカル下相を真空蒸留した。前述のプロセスを更に2回繰り返し無色の酸を得た。159〜165℃の融点を有する界面活性剤CF3−CFH−O−(CF25COONH4を200gの酸と過剰の水酸化アンモニウムとの反応により定量的に作製し、そして乾燥させた。
【0097】
化合物15:CF3−CFH−O(CF23COONH4の調製
二塩基酸フルオライド、FCOCF(CF3)−O−(CF23COFのサンプル(503g、1.4mol)を、米国特許出願番号2004/0116742に記載されているように完全フッ素化スクシニルフルオライドのHFPOカップリングにより調製し、そして650gのジグリム中の炭酸ナトリウム(387g、3.7mol)の攪拌されたスラリーに78℃にて2時間かけて加えて、ジ塩(disalt)を作製した。反応物はCO2ガスを放出した。蒸留水(35g、1.9mol)を85℃にて加えた。CO2ガスを排気しながら混合物を165℃まで加熱し、そして30分間保持した。反応物を冷却し、そして1250gの水中の硫酸(250g、2.6mol)を加えて反応混合物を酸性にした。最下相に水60g中のNaOH60gを加えた。この塩を真空オーブン中で112℃/1.9kPa(15mmHg)にて乾燥し、そして450gを回収した。この塩に300gの50%硫酸を加え、そしてフルオロケミカル下相を200gの50%硫酸で一度洗浄した。真空蒸留により、111℃/1.9kPa(15mmHg)の沸点を有するCF3−CFH−O−(CF23COOH(400g、1.3mol)を95%の収率で得た。酸を腐食剤(caustic)で処理し、次に硫酸で処理し、そして真空蒸留した。2度目もこれを繰り返して無色の酸を得た。64〜68℃の融点を有する界面活性剤CF3−CFH−O−(CF23COONH4を208gの酸と過剰の水酸化アンモニウムとの反応により定量的に作製し、そして乾燥させた。
【0098】
化合物C−3:C37−O−CF(CF3)−CF2−O−CF2−COONH4の調製
米国特許第4,987,254号に記載されているように、CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF=CF2のCF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2COOCH3(13.3kPa(133mbar)でbp91〜92℃)への転換を行った。このエステルをアンモニア水と反応させ、そして蒸留によりメタノールを除去して、CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2COONH4を得た。構造はすべてF−NMRスペクトルによって確認された。ビニルエーテル中の異性体の含有に起因して、構造CF3CF2CF2OCF2CF(CF3)OCF2COOX(X=CH3、NH4)を有する異性体が見られた。
【0099】
化合物16:C37−O−C2HF3−O−CH2−COONH4の調製
テトラヒドロフラン320mL、ヒドロキシ酢酸メチルエステル40g、およびPPVE188gの混合物を0℃に冷却し、KOH粉末27gを少量ずつ添加する−KOHの添加の間、反応混合物は60℃まで温度上昇した。KOHの添加後、反応混合物全体を25℃で6時間攪拌する。沈殿した塩を濾過により分離し、水300mLに溶解し、そしてその後(濃)H2SO4、57gで処理する。得られた混合物は、二層に分離する;下相は、C37−O−C2HF3−O−CH2−COOH、86g(56%)である。蒸留された酸(bp.125℃、2kPa(20mbar))を25%アンモニア水溶液で中和して30%水溶液を得る。
【0100】
化合物2、3、4を相当するカルボン酸類(アンレス社(Anles Ltd.)(ロシア、サンクトペテルブルグ(St. Petersburg)から購入)からアンモニア水で中和することにより調製した。
【0101】
化合物7、8、10を、相当するカルボン酸フッ化物類(〜COF)(エクスフラー(Exfluor)(米国、テキサス州、ラウンドロック(Round Rock))から購入)から調製した。酸フッ化物類はメタノールを添加することによってメチルエステルに転換された。蒸留されたメチルエステルはアンモニア水で60〜80℃で鹸化した、そしてメタノールは蒸留により除去する。化合物C−2は米国特許第6,703,520号(第7欄)に記載されている通りに調製した。
【0102】
生体内蓄積性の判定
完全フッ素化および部分フッ素化カルボキシレート類を、ラットの薬物動態学研究を用いて尿クリアランスに関して評価した。目的は、尿の排出を介して排泄される親化合物の総量を測定し、および排泄の速度を評価することであった。この調査は、IACUC(動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committees))によって認可され、そして3M社(3M Company)のAAALAC(実験動物管理認定協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care))認定施設において実施された。
【0103】
この調査では、調査開始の時点で6〜8週齢および体重およそ200〜250gのオスのスプラーグドーリーラットを使用した。表2の試験化合物を、ラット(試験化合物当たりの動物数N=3)に体重1kg当たり73マイクロモルの投与量で投与した。すべての試験化合物は、滅菌脱イオン水中で調製し、そして経口強制給飼によりラットに与えた。試験化合物の投与後、ラットは、尿の収集:0〜6時間、6〜24時間、24〜48時間、および72〜96時間、のために代謝ケージ内で個別に飼育された。調査を通して、動物は毒性の臨床的徴候に関して観察された。各調査の終了時(投与後96時間)に肉眼による剖検を行い、各動物からの血清および肝臓のサンプルを保存した。
【0104】
親化合物またはそれらの代謝産物の濃度は、各動物に関する各時間点における各尿サンプルについて、フッ素NMRにより、内部添加標準物質を基準にして定量的に測定した。
【0105】
上記の試験に従って得られた生体内蓄積データを下記の表2に報告する。
【表B】

* 尿中に親化合物は観察されず。T1/2および回収%は、主要な代謝産物であるC37−O−CHFCOO-の排出に基づいている。T1/2は、除去速度がおよそ指数関数的である場合に、生物系内での特定物質の量が生物過程によってその値の2分の1まで減少するのに必要とされる時間である。これらの実施例では、T1/2の値は、指数関数的最小2乗曲線適合法(y=AeBxおよびT1/2=0.693/B)により計算され、ここでyは、尿中の目標物質の濃度を表し、およびxは時間(時間)を表す。


【表C】

【表D】

【0106】
コーティング実施例
使用されたPTFE分散液:
分散液A:
約58重量%のPTFE粒子量を有する濃縮(up-concentrated)PTFE分散液Aは、EP 30663に従いTFEを重合することによって得、この分散液は、DE 19857111に従い固体重量基準で5重量%の非イオン性界面活性剤(トリトン(Triton)(登録商標)X100)の存在下で行われたイオン交換の後、更にアンモニウム完全フッ素化オクタン酸を1ppm未満の少ない量で含有していた。濃縮(up-concentration)の前に、固体重量基準で2000ppmの量のアニオン性界面活性剤(ホスタピュア(Hostapur)(登録商標)SAS 30)を加えた。
【0107】
分散液B:
約58重量%のPTFE粒子量を有する濃縮(up-concentrated)PTFE分散液Bは、EP 30663に従いTFEを重合することによって得、この分散液は、DE 19857111に従い固体重量基準で5重量%の非イオン性界面活性剤(トリトン(Triton)(登録商標)X100)の存在下で行われたイオン交換の後、更にアンモニウム2,4,6,8−テトラオキサ完全フッ素化デカン酸(CF3−(OCF24−COONH4)を100ppmの量で含有していた。濃縮(up-concentration)の前に、固体重量基準で2000ppmの量のアニオン性界面活性剤(ホスタピュア(Hostapur)(登録商標)SAS 30)を加えた。
【0108】
分散液C:
約58重量%のPTFE粒子量を有する濃縮(up-concentrated)PTFE分散液Cは、EP 30663に従いTFEを重合することにより得られた。分散液は、DE 19857111に従い固体重量基準で5重量%の非イオン性界面活性剤(トリトン(Triton)(登録商標)X100)の存在下で行われたイオン交換の後、アンモニウム2,4,6,8−テトラオキサ完全フッ素化デカン酸(CF3−(OCF24−COONH4)を3ppmの量で含有していた。濃縮(up-concentration)の前に、固体重量基準で2000ppmの量のアニオン性界面活性剤(ホスタピュア(Hostapur)(登録商標)SAS30)を加えた。
【0109】
コーティングの調製
平滑なおよびサンドブラストしたアルミニウム板(100×100×1mm)を、コーティングに先立ちアセトンでグリース除去した。2つの塗料系が使用された:
下塗り
下塗りのための組成物はワイルバーガー・ラックファブリック・J.グレーベGmbH(Weilburger Lackfabrik J. Grebe GmbH)から入手された、ポリアミドイミド結合剤(PAI)を含むグレブロン(Greblon)(商標)ブラック系濃縮物67.8部、下記の表4に示されたPTFE分散液A、B、またはC17.24部、および脱イオン水14.96部をブレンドすることによって調製した。コーティング組成物中におけるPAIとPTFEとの重量比は1:1である。下塗りはアルミニウム板に対してビンクス(Binks)(商標)モデル96スプレーガンを用いて圧力0.2MPa(2bar)の噴霧適用によって適用し、その結果、約15〜20μmの乾燥コーティング厚さが得られた。コーティングされたアルミニウム板を90℃で5分間乾燥し、そして室温に冷却した。
【0110】
上塗り
上塗り用の組成物は13.10部のグレブロン(Greblon)(商標)アンティスティック・トップコート濃縮物(Antistic Topcoat Concentrate)(ワイルバーガー・ラックファブリック・J.グレーベGmbH(Weilburger Lackfabrik J. Grebe GmbH)から入手可能)、72.0部のPTFE分散液、および14.9部の脱イオン水をブレンドすることにより調製した。上塗り用の組成物はPAIを含有しなかった。上塗りは、上述したように下塗りでコーティングされたアルミニウム板に、スプレーガンを用いて適用し、25〜35μmの乾燥コーティング厚さが得られた。コーティングされたアルミニウム板を90℃で5分間、続いて250℃10分間乾燥し、そして最後にコーティングされた板を400℃で10分間焼結した。
【0111】
結果
得られたコーティングされたサンプルを試験し、その試験結果を下記の表4に示す。
【表E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)テトラフルオロエチレンの非溶融加工性ポリマーを含むフルオロポリマー粒子の水分散液と、(ii)フッ素化界面活性剤と、(iii)非イオン性非フッ素化界面活性剤と、(iv)非フッ素化ポリマーと、を含むコーティング組成物であって、
前記フッ素化界面活性剤は、下記一般式(I):
[Rf−O−L−COO-ii+ (I)
(式中、Lは、直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化アルキレン基または脂肪族炭化水素基を表し、Rfは、直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基または1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化もしくは全部フッ素化脂肪族基を表し、Xi+は価数iを有するカチオンを表し、およびiは1、2、もしくは3である)
のフッ素化カルボン酸類またはそれらの塩類から選択される、コーティング組成物。
【請求項2】
前記フッ素化界面活性剤は前記組成物中に、前記フルオロポリマー粒子の量を基準として500ppm以下の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記フッ素化カルボン酸類またはそれらの塩類のアニオンは、500g/mol以下の分子量を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記式中のLは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状完全フッ素化アルキレン基、2個以下の水素原子を有する1〜6個の炭素原子を有する直鎖状部分フッ素化アルキレン基、および1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基からなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
fは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状完全フッ素化脂肪族基;1つ以上の酸素原子で中断され、その酸素原子の間のアルキレン基が6個以下の炭素原子を有し、その末端アルキル基が6個以下の炭素原子を有する直鎖状完全フッ素化脂肪族基;1〜6個の炭素原子と2個以下の水素原子とを有する直鎖状部分フッ素化脂肪族基および1つ以上の酸素原子で中断され2個以下の水素原子を有する直鎖状部分フッ素化脂肪族基、からなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記フッ素化カルボン酸またはその塩は、ラットに投与されたとき、投与の96時間後に投与量の少なくとも50%の腎臓回収率を示し、その腎臓の半減期(T1/2)は30時間以下である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記フッ素化カルボン酸または塩類は、そのあらゆるフッ素化脂肪族部分が3個以下の炭素原子を有するフッ素化カルボン酸または塩類から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
Lは、
−(CF2g−(式中、gは1、2、3、4、5、または6である);
−CFH−(CF2h−(式中、hは0、1、2、3、4、または5である);
−CF2−CFH−(CF2d−(式中、dは0、1、2、3、または4である);
−CH2−(CF2h−(式中、hは1、2、3、または4である);および
−(CH2c−(式中、cは1、2、3、または4である)からなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
fは、以下の式:
f1−[ORf2p−[ORf3q− (II)
(式中、Rf1は炭素原子1〜6個の直鎖状完全フッ素化脂肪族基であり、Rf2とRf3とはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、または4個の直鎖状完全フッ素化アルキレンを表し、およびpとqとはそれぞれ独立して0〜4の値を表しpとqとの合計は少なくとも1である)に相当する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
fは、以下の式:
7f−(O)t−CFH−CF2− (III)
(式中、tは0または1であり、R7fは任意に1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化または全部フッ素化脂肪族基を表す)に相当する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
fは、次式:
f8−(OCF2a− (IV)
(式中、aは1〜6の整数であり、Rf8は1、2、3、もしくは4個の炭素原子を有する直鎖状部分フッ素化脂肪族基または直鎖状全部フッ素化脂肪族基である)に相当する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
fは、次式:
f9−O−(CF2b− (V)
(式中、bは1〜6の整数であって好ましくは1、2、3、もしくは4であり、およびRf9は1、2、3、もしくは4個の炭素原子を有する直鎖状部分フッ素化脂肪族基または直鎖状全部フッ素化脂肪族基である)に相当する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記フッ素化カルボン酸は、以下の式:
[Rfa−(O)t−CHF−(CF2n−COO-ii+ (VI)
(式中、Rfaは任意に1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化または全部フッ素化脂肪族基を表し、tは0または1であり、nは0または1であり、Xi+は価数iを有するカチオンを表し、iは1、2、または3であり、但し、tが0であるときRfaは少なくとも1つのエーテル酸素原子を含有する)に相当する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記フッ素化カルボン酸は、以下の式:
fb−(O)t−CFH−CF2−O−R−G (VII)
(式中、Rfbは任意に1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状部分フッ素化または全部フッ素化脂肪族基を表し、Rは脂肪族炭化水素基であり、Gはカルボン酸またはその塩を表し、tは0または1である)に相当する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記フッ素化カルボン酸は、以下の式:
fc−(OCF2u−O−(CF2v−AC (VIII)の一つに相当し、
(式中、uは1〜6の整数であり、vは1〜6の整数であり、Rfcは炭素原子1、2、3、または4個の直鎖状完全フッ素化脂肪族基を表し、およびACはカルボン酸基またはその塩を表す)と、
fc−O−(CF2y−O−L1−AC (IX)
(式中、yは1、2、3、4、5、または6の値を有し、L1は、炭素原子1、2、3、4、5、もしくは6個の直鎖状完全フッ素化アルキレンまたは1〜6個の炭素原子と1もしくは2個の水素原子とを有する直鎖状部分フッ素化アルキレンを表し、Rfcは上記の式(VIII)に定義されている通りであり、およびACはカルボン酸基またはその塩を表す)とに相当する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記フッ素化カルボン酸またはその塩は、
37−O−CHF−COOH
CF3−O−CF2CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−O−CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−O−CF2−O−
CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−(O−CF22−O−
CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−(O−CF23−O−
CF2−CF2−O−CHF−COOH
CF3−O−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−O−
CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−(O−CF22−O−
CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−(O−CF23−O−
CF2−CF2−O−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CHF−COOH
37−O−CF2−CHF−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−CHF−COOH
CF3−O−CF2−O−
CF2−CF2−O−CF2−CHF−COOH
CF3−(O−CF22−O−CF2−CF2−O−CF2−CHF−COOH
CF3−(O−CF23−O−CF2−CF2−O−CF2−CHF−COOH
CF3−O−CF2−CHF−CF2−COOH
25−O−CF2−CHF−CF2−COOH
37−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CF2−O−
CF2−CF2−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−(O−CF22−O−
CF2−CF2−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−(O−CF23−O−CF2−CF2−O−CF2−CHF−CF2−COOH
CF3−O−CHF−CF2−O−CH2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CHF−CF2−O−CH2−COOH
37−O−CHF−CF2−O−CH2−COOH
37−O−CHF−CF2−O−CH2−CH2−COOH
37−O−CF2−CF2−O−CHF−CF2−OCH2COOH
37−O−CF2−CF2−CF2−O−CHF−CF2−OCH2COOH
37−O−CF2−CHF−CF2−OCH2COOH
CF3−CHF−CF2−O−CH2COOH
37−CF2−CHF−CF2−OCH2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−O−CH2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−CF2−O−CH2ーCOOH
37−O−CF2−CF2−O−CH2−COOH
37−O−CF2−CF2−O−CH2−CH2−COOH
37−O−CF2−CF2−O−CF2−CF2−OCH2COOH
37−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−CF2−OCH2COOH
37−O−CF2−CF2−CF2−OCH2COOH
49−O−CH2−COOH
49−O−CH2−CH2−COOH
37−O−CH2COOH
613−OCH2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−COOH
25−O−CF2−CF2−COOH
37−O−CF2−CF2−COOH
49−O−CF2−CF2−COOH
CF3−(O−CF23−O−CF2−COOH
CF3−(O−CF22−O−CF2−COOH
CF3−(O−CF21−O−CF2−COOH
CF3−(O−CF2−CF21−O−CF2−COOH
25−(O−CF2−CF21−O−CF2−COOH
25−(O−CF2−CF22−O−CF2−COOH
CF3−(O−CF2−CF22−O−CF2−COOH
37−O−CF2−COOH
CF3−O−CF2−CF2−CF2−O−CF2−COOH
CF3CFH−O−(CF23−COOH
CF3CFH−O−(CF25−COOH
CF3−CF2−O−(CF23COOH
CF3−CF2−O−(CF25COOH
およびこれらのフッ素化カルボン酸類のいずれかの塩類
から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記非フッ素化非イオン性界面活性剤は、次式:
1−O−[CH2CH2O]n−[R2O]m−R3 (XV)
(式中、R1は少なくとも8個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族炭化水素基を表し、R2は3個の炭素原子を有するアルキレンを表し、R3は水素またはC1〜C3アルキル基を表し、nは0〜40の値を有し、mは0〜40の値を有し、およびn+mの合計は少なくとも2である)に相当する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
前記非フッ素化非イオン性界面活性剤は、前記コーティング組成物中に、前記コーティング組成物中のフルオロポリマー粒子の総重量を基準として0.5〜15重量%の量で含有される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
前記フルオロポリマー粒子は、テトラフルオロエチレンの非溶融加工性ポリマーのコア−シェル粒子を含み、前記シェルはテトラフルオロエチレンと部分フッ素化または非フッ素化コモノマーとのコポリマーを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項20】
溶融加工性フルオロポリマーを更に含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項21】
前記非フッ素化ポリマーは、シリコーン樹脂類、ポリスルホン類、脂肪族および脂環式ポリアミド類を包含するポリアミド類、塩類を包含するポリアミド酸類、ポリアミド酸アミド類およびポリアミド−イミド類;ポリビスマレイミド類を包含するポリイミド類、アクリル系ポリマー類、メタクリル系ポリマー類、ポリフェニレンスルフィド類などのポリアリーレンスルフィド類を包含するポリスルフィド類、アルキド樹脂類、ポリ塩化ビニル類、ポリブタジエン類、ニトロセルロース類、尿素ホルムアルデヒド樹脂類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類およびビニル環状アセタール類、ならびにこれらの混合物、からなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項22】
請求項1のいずれかにおいて定義されているコーティング組成物のコーティングを含む、基材をコーティングする方法。
【請求項23】
前記基材はアルミニウムおよびスチールから選択される金属基材である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法により得ることのできるコーティングを含む基材。

【公表番号】特表2009−538377(P2009−538377A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512210(P2009−512210)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/068528
【国際公開番号】WO2007/140091
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】