説明

コーティング装置

【課題】良好なコーティングを行えるようにする。
【解決手段】コーティング装置は、上下両面が開放された円筒状をなす回転可能なドラム28Aと、ドラム28Aの下面を塞ぐように配されてドラム28Aと同軸状の回転を可能とされた皿状のディスク38Aとを備えて構成されるコーティング槽25と、ドラム28Aを回転させるための第2モータ17(ドラム用駆動機構)と、ディスク38Aをドラム28Aとは独立して回転させるための第1モータ15(ディスク用駆動機構)と、コーティング槽25を、コーティング槽25の回転軸が概ね鉛直方向を向く起立姿勢と、コーティング槽25の回転軸が鉛直方向に対して斜め方向を向く傾倒姿勢との間で傾動変位させるための傾動機構とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えばチョコレート菓子、チューイングガム、豆菓子等の核となるセンターの表面に被覆層を形成するためのコーティング装置が開示されている。このコーティング装置は、上面開放の固定槽の底部でディスクを鉛直軸回りに回転させるコーティング槽を備えた渦流タイプのものである。このコーティング装置では、コーティング槽内にセンターを投入すると、ディスクにより回転させられたセンターが、遠心力により固定槽の内壁に沿って螺旋方向に上動した後、表層に出現して重力により螺旋方向に滑落してディスク上に戻り、再びディスクにより回転駆動される、という螺旋状の循環流動が繰り返される。この循環流動によって撹拌されているセンター群にチョコレートやシロップなどのコーティング剤を散布すれば、各センターの表面にコーティング層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−301041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の渦流タイプのコーティング装置では、センターに遠心力を付与するためにディスクを高速で回転させるので、センター群の流動速度が速く、撹拌効果も高いので、コーティング処理が短時間で済むという利点があるが、その反面、螺旋流動中におけるセンターへの衝撃が大きくなることは避けられない。そのため、麦チョコ用の麦パフのようにセンターが脆い場合には、螺旋流動中の衝撃でセンターが割れたり欠けたりする虞がある。また、豆菓子用の豆のように表面が皮で覆われているセンターの場合には、螺旋流動中の衝撃によって皮が剥離し、その剥離した皮がコーティングされてしまう虞もある。さらに、螺旋流動中の衝撃が大きいと、チョコ菓子、チューイングガム、錠剤等のような光沢を有するコーティング層を形成することは難しい。
【0005】
また、麦パフのように軽量なセンターの場合、センター群のうち一部のセンターだけにチョコレートがコーティングされた状態になると、コーティングされて重たくなったセンターがディスク上面に溜まってディスクと一体回転し、その溜まっているセンター群の上で、未コーティングの軽いセンター群が螺旋状に循環流動する二層流動と呼ばれる状態となり、コーティングが不均一となる。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、良好なコーティングを行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、上下両面が開放された略円筒状をなす回転可能なドラムと、前記ドラムの下面を塞ぐように配されて前記ドラムと同軸状の回転を可能とされた皿状のディスクとを備えて構成されるコーティング槽と、前記ドラムを回転させるためのドラム用駆動機構と、前記ディスクを、前記ドラムとは独立して回転させるためのディスク用駆動機構と、前記コーティング槽を、前記コーティング槽の回転軸が概ね鉛直方向を向く起立姿勢と、前記コーティング槽の回転軸が鉛直方向に対して斜め方向を向く傾倒姿勢との間で傾動変位させるための傾動機構とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ドラム用駆動機構の駆動軸と前記ディスク用駆動機構の駆動軸は、前記コーティング槽の回転中心と平行であって、互いに偏心した位置関係とされているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記コーティング槽は、前記ドラムの下端縁に一体回転可能に結合されるとともに、前記ディスクの下方を覆う皿状のアンダープレートを有しており、前記ディスク用駆動機構の前記駆動軸は、前記アンダープレートを貫通して前記ディスクに対して同軸状に連結されており、前記ドラム用駆動機構の前記駆動軸は、前記コーティング槽の回転中心から偏心した位置に配されて、前記アンダープレートに一体回転可能に設けた従動ギヤに係合されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記従動ギヤは、内周に歯列を有する内歯歯車であり、前記ドラム用駆動機構の前記駆動軸が前記内歯歯車に係合されているところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載のものにおいて、前記ディスク用駆動機構には、上方へ突出して前記ディスクを貫通した形態の複数の支持部材が設けられ、前記ディスクを持ち上げて前記支持部材に載置した状態では、前記ディスクの外周縁が前記アンダープレートの外周縁よりも上方に位置するようになっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
コーティング槽を起立姿勢にした状態でディスクを高速で回転させると、コーティング槽内のセンター群が螺旋状に流動し、ここにコーティング剤を投入すると、短い時間の間にコーティング処理が進む。一方、コーティング槽を傾倒姿勢にした状態でディスクとドラムを同じ方向に低速で回転させると、コーティング槽内のセンター群がゆっくりと流動するので、起立姿勢での螺旋流動に比べるとセンターへの衝撃が低減される。また、ディスクとドラムの回転速度と回転方向を適宜に変更することによっても、コーティング槽内におけるセンター群の流動形態を変更することができる。
【0013】
本発明のコーティング装置は、デスクとドラムを独立回転させることができるとともに、コーティング槽の回転軸の向きを変更することができるようにしたので、センターの特性に応じた好適なコーティング処理を行うことができるとともに、コーティング中に発生する不具合を解消することが可能である。
【0014】
<請求項2の発明>
ドラム用駆動機構の駆動軸とディスク用駆動機構の駆動軸を同軸状に配置した場合、ドラム用駆動機構とディスク用駆動機構を配置するためのスペースが、コーティング槽の回転中心と平行な方向に大きくなるので、コーティング装置全体が嵩高となる。その点、本発明では、ドラム用駆動機構の駆動軸とディスク用駆動機構の駆動軸を互いに偏心位置した位置関係となるように配置しているので、コーティング装置の低背化を図ることが可能である。
【0015】
<請求項3の発明>
ディスク用駆動機構の駆動軸をディスクと同軸に配置したので、構造の簡素化を図ることができる。また、駆動軸の回転力を効率良くディスクに伝達することができるので、ディスクを高速で連続的に回転させることができる。
【0016】
<請求項4の発明>
駆動軸と従動ギヤとの係合を従動ギヤの内周側で行うようにしたので、駆動軸を従動ギヤの外側で係合させる場合に比べると、小型化できる。
【0017】
<請求項5の発明>
ディスクを洗浄や交換のためにディスク用駆動機構から外す際には、アンダープレートからドラムを外し、その後、ディスクを持ち上げて支持部材に載置すれば、ディスクの外周縁がアンダープレートの外周縁よりも上方に位置する。したがって、ドラムを外さずに、作業者が上半身をドラム内に入り込ませてディスクを取り出す場合に比べると、ディスクを外す作業を行い易い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1においてコーティング槽を起立姿勢にした状態をあらわす正面図
【図2】コーティング槽を起立姿勢にした状態をあらわす断面図
【図3】コーティング槽を傾倒姿勢にした状態をあらわす正面図
【図4】コーティング槽を傾倒姿勢にした状態をあらわす断面図
【図5】ドラムを外した状態をあらわすコーティング槽の断面図
【図6】ディスクの取外の手順をあらわす断面図
【図7】ディスクの取外の手順をあらわす断面図
【図8】ドラムの断面図
【図9】ディスクの平面図
【図10】代替ドラムの一例を示し、回転中心軸を境として半分のみをあらわした半断面図
【図11】代替ドラムの一例を示し、回転中心軸を境として半分のみをあらわした半断面図
【図12】代替ディスクの一例を示し、回転中心軸を境として半分のみをあらわした半平面図
【図13】代替ディスクの一例を示し、回転中心軸を境として半分のみをあらわした半断面図
【図14】代替ディスクの一例を示し、回転中心軸を境として半分のみをあらわした半平面図
【図15】代替ディスクの一例を示し、回転中心軸を境として半分のみをあらわした半断面図
【図16】コーティング槽を起立姿勢にした状態をあらわす側面図
【図17】締付けリングの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図17を参照して説明する。本実施形態のコーティング装置は、コーティング槽25の中で、例えばチョコレート菓子、チューイングガム、豆菓子、錠剤等の核となるセンターの表面に、チョコレートやシロップなどのコーティング剤からなるコーティング層を形成するようにしたものである。コーティング槽25は、床面に載置された基台10に設けた傾動機構11により、図1、図2及び図16に示す起立姿勢(コーティング槽25の回転中心軸が概ね鉛直方向となる姿勢)と図3及び図4に示す傾倒姿勢(コーティング槽25の回転中心軸が鉛直方向に対して斜め方向となる姿勢)との間で変位するようになっている。
【0020】
コーティング装置は、センターの種類に応じて、起立姿勢でのコーティング処理と傾倒姿勢でのコーティング処理とを併用する使用形態と、傾倒姿勢でのみコーティング処理を行う使用形態との、いずれの使用形態にも対応できるようになっている。尚、以下の説明において、上下方向は、コーティング槽25が起立姿勢である状態を基準とする。
【0021】
傾動機構11は、図1、図3及び図16に示すように、基台10に水平方向に間隔を空けて設けた一対の水平な傾動軸12と、傾動軸12を所定の角度回転させるための傾動用モータ13とを備えて構成されている。傾動軸12には、コーティング槽25を支持する傾動フレーム14が一体的に傾動し得るように取り付けられている。
【0022】
傾動フレーム14には、第1モータ15(本発明の構成要件であるディスク用駆動機構)と第2モータ17(本発明の構成要件であるドラム用駆動機構)が、傾動フレーム14と一体に傾動し得るように取り付けられている。第1モータ15は、コーティング槽25の回転中心と同軸状に上向きに突出して正逆両方向に回転する第1駆動軸16を有している。第1駆動軸16には、略円柱形をなす回転部材19が一体回転し得るように取り付けられている。
【0023】
回転部材19の上面には、第1駆動軸16と同心状に位置する中央雌ネジ孔20と、中央雌ネジ孔20から偏心した位置であって中央雌ネジ孔20を挟んで対称な2ヵ所に位置する一対の偏心雌ネジ孔21とが、回転部材19の上面に開口するように形成されている。回転部材19の上面には、中央雌ネジ孔20から偏心した位置であって中央雌ネジ孔20と同心の円弧上において周方向に間隔を空けた4ヵ所に配置された支持ピン22(本発明の構成要件である支持部材)が、回転部材19の上面から突出した形態で取り付けられている。一対の偏心雌ネジ孔21と4つの支持ピン22は、周方向において60°の等角度ピッチで配置されている。
【0024】
第2モータ17は、第1駆動軸16と平行であって上向きに突出する第2駆動軸18を有し、第1モータ15に対して偏心した位置関係に配置されている。第2モータ17と第1モータ15は個別に作動するように制御される。したがって、第2駆動軸18は、第1駆動軸16とは独立して、正逆両方向に回転するようになっている。第2駆動軸18には、駆動ギヤ23が一体回転し得るように取り付けられている。また、第1モータ15と第2モータ17には、水平なベースプレート24が固定して取り付けられている。上記した第1駆動軸16と第2駆動軸18は、ベースプレート24を貫通してその上方へ突出されている。
【0025】
ベースプレート24の上面には、コーティング槽25が回転可能に支持されている。コーティング槽25は、ステンレス製のアンダープレート26と、ステンレス製のドラム28Aと、ステンレス製のディスク38Aとを備えて構成されている。
【0026】
アンダープレート26は、上面が凹んだ円形の皿状をなし、ベースプレート24の上方位置においてベアリングを介すことにより、第1駆動軸16と同軸状に且つ第1駆動軸16に対して相対回転し得るように(つまり、第1駆動軸16とは独立して回転し得るように)ベースプレート24に支持されている。アンダープレート26の中心孔には、第1駆動軸16と一体回転する回転部材19が貫通されている。
【0027】
アンダープレート26の下面には、アンダープレート26と同軸状であって、内周に歯列が形成された内歯歯車27(本発明の構成要件である従動ギヤ)が一体に回転し得るように取り付けられ、この内歯歯車27は、第2駆動軸18の駆動ギヤ23に係合されている。この駆動ギヤ23と内歯歯車27との係合を介すことにより、アンダープレート26は、第2モータ17によって減速された状態で正逆両方向へ回転駆動されるようになっている。
【0028】
ドラム28Aは、全体として上下両面が開放された略円筒状をなし、内周の形状が異なる上下3つの筒状部と、リング状をなす補強用の変形規制部32とが同心状に連なった形態である。一番上の筒状部は、上方に向かって縮径した形態の絞り部29となっている。この絞り部29の内周面は、上辺が下辺よりも短く平面状をなす12の台形状構成面29Aを、周方向に並べて構成されている。絞り部29の上端内周の半径(絞り部29における最小内径)と下端内周の半径(絞り部29における最大内径)との寸法差は、絞り部29の高さ寸法よりも大きくなっている。
【0029】
中央高さの筒状部は、上端から下端に至るまで径寸法がほぼ一定の本体部30となっている。この本体部30の内周面は、頂点が上下反対に位置する2種類(12対)の平面状の三角形状構成面30Aを、周方向に交互に並べて構成されている。2種類の三角形状構成面30Aは、頂点が上端に位置する三角形状構成面30Aが、底辺が円弧形をなす二等辺三角形であるのに対し、頂点が下端に位置する三角形状構成面30Aは、その底辺が直線状をなしているという点において、相違している。また、各三角形状構成面30Aの上端の頂点は、隣接する台形状構成面29A間の境界線の下端に連なっている。
【0030】
一番下の筒状部は、下方に向かって次第に縮径した形態のテーパ部31となっている。テーパ部31の内周面は、周方向において滑らかに連続する1つの曲面によって構成されている。テーパ部31の上端内周の半径(テーパ部31における最大内径)と下端内周の半径(テーパ部31における最小内径)との寸法差は、テーパ部31の高さ寸法よりも小さい。テーパ部31の下端縁の内径は、絞り部29の上端縁の内径よりも大きい。
【0031】
上記の絞り部29と本体部30とテーパ部31の板厚寸法(径方向の寸法)は、それらの全体に亘ってほぼ一定であって、比較的薄い。そのため、ドラム28Aの下端縁の形状を真円形に保持するための手段として、変形規制部32が形成されている。変形規制部32は、真円形のリング状をなし、テーパ部31の下端縁から下方へ突出した形態であり、変形規制部32の径方向の厚さ寸法は、絞り部29、本体部30及びテーパ部31の板厚寸法よりも大きく設定されている。また、変形規制部32の下端部には、外周側へ突出した形態の係止リブ33が全周に亘って形成されている。
【0032】
上記構成になるドラム28Aは、図2に示すように、スペーサ34を介すことによって、アンダープレート26に対して同軸状に一体回転し得るように、且つ離脱可能に取り付けられている。スペーサ34は、円環形をなし、アンダープレート26の外周縁(即ち、アンダープレート26における最も高い位置)に径方向への相対変位を規制された状態で載置されるように嵌合されている。そして、このスペーサ34の上端部には、ドラム28Aの下端部(変形規制部32)が載置された状態で径方向への相対変位を規制された状態で嵌合されている。スペーサ34の上下方向の寸法(高さ)は、ディスク38Aの高さ寸法に応じて、好適な寸法のものが選択されて取り付けられ、また、ディスク38Aの高さが低い場合には、スペーサ34を外してドラム28Aをアンダープレート26に直接嵌合する。
【0033】
また、アンダープレート26にドラム28Aを取り付ける手段として、円形のベースリング35と3本の上向きボルト36と円形の締付けリング37が用いられている。ベースリング35は、アンダープレート26の外面における上端部(アンダープレート26の外周縁に近い位置)に固定されている。ベースリング35には、複数本の上向きボルト36が周方向に等角度間隔を空けた位置において下から組み付けられ、各上向きボルト36の頭部がベースリング35の下面に係止されている。
【0034】
締付けリング37は、図1に示すように、周方向において等角度に3分割された1つの固定側弧状部材37Aと2つの可動側弧状部材37Bとから構成されている。固定側弧状部材37Aの両端部には、可動側弧状部材37Bにおける一方の端部が、軸線を上下方向に向けたヒンジ37Cを介して相対変位可能に連結されている。したがって、締付けリング37は、ヒンジ37Cを介して各弧状部材37A,37Bが水平面上で相対変位することにより、可動側弧状部材37Bの他方の端部同士を合致させることで円形をなす締付け状態と、可動側弧状部材37Bの他方の端部同士を離間させた開放状態(図17を参照)との間で変位することができる。
【0035】
締付けリング37は、図2に示すように、円形の締付け状態でドラム28Aの係止リブ33に対して上から係止され、各弧状部材37A,37Bには、上向きボルト36の雄ネジ部が螺合されている。これらの上向きボルト36の締付けにより、ドラム28Aの下端部(変形規制部32)がアンダープレート26に対し、一体に回転し得るように(つまり、上下方向、径方向及び周方向への相対回転を規制された状態で)組み付けられている。
【0036】
ディスク38Aは、円板状の取付部材39と、円環形をなす機能部材48とを同軸状に組み付けることで皿状に構成されており、取付部材39の上面は、円形をなすセンターカバー58で覆われている。取付部材39の下面には、同心円形の浅い嵌合凹部40が形成されている。取付部材39には、その中心位置において上下方向に貫通する中心貫通孔41と、取付部材39の中心から偏心して一対の偏心雌ネジ孔21と対応する2位置において上下方向に貫通する偏心貫通孔42と、取付部材39の中心から偏心して支持ピン22と対応する4位置において上下方向に貫通する逃がし孔43が形成されている。
【0037】
また、取付部材39には、取付部材39の中心から偏心した部分を比較的大きく貫通させた形態の指掛け部44が、周方向に等角度を空けて形成されている。さらに、取付部材39の外周縁には、その上面を同心円状に凹ませた形態の段差状凹部45が形成されている。そして、段差状凹部45には、周方向において等角度間隔を空けた3ヵ所の位置に平ビス46が取り付けられており、各平ビス46の円形をなす頭部46Hが、段差状凹部45の上面から突出している。
【0038】
この取付部材39は、回転部材19に載置され、嵌合凹部40を回転部材19の上端部に対し嵌合することで、回転部材19に対して同軸状に且つ径方向への相対変位を規制された状態で組み付けられる。そして、偏心貫通孔42に貫通させたハンドル付きボルト47を偏心雌ネジ孔21にねじ込むことにより、取付部材39は、回転部材19に対して、上方への相対変位を規制されるとともに、一体回転するように固定される。また、4つの逃がし孔43には、支持ピン22が嵌合され、これにより、取付部材39は回転部材19に対して相対回転を規制されている。
【0039】
機能部材48は、外枠49と、外枠49の上面側を覆う形態の内枠54とからなる。外枠49は、水平な円形をなす環状部50と、環状部50の外周縁から斜め外上方へ延出するテーパ状の傾斜部51とからなる。環状部50には、その内周縁に沿って周方向に等角度間隔を空けた3位置を上下に貫通した形態の3つの位置決め孔52が形成されている。水平面に対する傾斜部51の傾斜角度は、45°である。外枠49(傾斜部51)の外周縁部(最上端縁部)には、その外周面に沿って径方向の寸法を大きくした補強用の形状保持部53が一体に形成されている。この形状保持部53により、外枠49(つまり、ディスク38A)の外周縁が真円形に維持される。
【0040】
内枠54は、その内周縁を環状部50の上面に対して隙間なく連ねるとともに、傾斜部51よりも小さい傾斜角度(最大でも35°)で斜め外上方へ延出したテーパ状をなす。内枠54の外周縁(最上端縁)は、外枠49の外周縁(最上端縁)に対して隙間なく連なっている。内枠54の内面(上面)は、全体として擂り鉢状をなしているが、詳しくは、花びら形をなす概ね平面状の6つの扇形不連続面55と、二等辺三角形状をなす概ね平面状の6つの三角形不連続面56とを有している。
【0041】
6つの扇形不連続面55と6つの三角形不連続面56は、夫々、周方向において等角度ピッチで配置され、扇形不連続面55と三角形不連続面56が周方向において交互に隣接して並んでいる。周方向に隣り合う扇形不連続面55と三角形不連続面56との境界線は、概ね径方向に沿った方向に延び、この境界線においては扇形不連続面55と三角形不連続面56とが面一状ではなく鈍角状(つまり、不連続状)に連なる。したがって、この内枠54の上面に載置されたセンターは、隣接する不連続面55,56間の鈍角状の境界に引っ掛かることにより、内枠54上での滑りが生じ難くなっている。
【0042】
隣り合う扇形不連続面55の周方向における両端同士は、鋭角状をなしていて、この鋭角状端部同士は、互いに突き合わされた状態で隣接している(連なっている)。一方、三角形不連続面56同士は、直接は隣接していない。また、扇形不連続面55の内周側の縁部は内枠54の内周縁と合致し、三角形不連続面56の内周側の縁部も内枠54の内周縁と合致している。三角形不連続面56の最も外周側の頂点部は、隣接する扇形不連続面55の鋭角状端部の間に挟まるように配置されている。さらに、扇形不連続面55の外周縁は、その全領域が傾斜部51の外周縁よりも内側に位置しており、これにより、内枠54の上面のうち外周縁に沿った領域は、全周に亘って連続した形態であって曲面のみから構成される周縁曲面57となっている。
【0043】
かかる機能部材48は、環状部50の内周縁部を取付部材39の外周縁の段差状凹部45に対して上から載置するように嵌合させるとともに、位置決め孔52を平ビス46の頭部46Hに嵌合することにより、取付部材39に対し水平方向(径方向及び周方向)への相対回転を規制された状態で組み付けられている。機能部材48を取付部材39に組み付けた状態では、環状部50の上面と取付部材39の上面とが面一状に連続する。
【0044】
センターカバー58は、ドーム状をなし、その中央の最上端位置には、上下方向に貫通する取付孔59が形成されている。取付孔59には、固定ボルト60の軸部の上端部が上下方向への相対変位を規制された状態で、且つ相対回転を許容された状態で組み付けられている。センターカバー58は、取付部材39を覆うように配置され、中心貫通孔41に貫通させた固定ボルト60が中央雌ネジ孔20にねじ込まれる。これにより、センターカバー58は、取付部材39及び機能部材48に対して、上下方向及び水平方向への相対変位を規制された状態で、且つ一体に回転するように固定される。組み付けられたセンターカバー58の外周縁は、機能部材48の環状部50における内周縁部(扇形不連続面55と三角形不連続面56よりも内周側の領域)に対し隙間なく当接する。したがって、センターカバー58は、取付部材39の全体と、環状部50における扇形不連続面55及び三角形不連続面56よりも内周側の内周縁領域とを覆い隠す。
【0045】
以上の構成になるディスク38Aは、第1駆動軸16に対し回転部材19を介して一体に回転し得るように結合されている。つまり、ディスク38Aは、高速で回転駆動されるようになっている。また、ディスク38Aは、回転部材19(第1モータ15)に対して着脱可能となっている。
【0046】
次に、本実施形態の作用を説明する。コーティング槽25を図1及び図2に示す起立姿勢にしてコーティングを行う際には、ドラム28Aとアンダープレート26を比較的低速で回転させるとともに、ディスク38Aを高速で回転させ、その状態でコーティング槽25内にセンターを投入する。投入されたセンターは、ディスク38A上において扇形不連続面55と三角形不連続面56との境界による引っ掛かり作用により回転力を付与され、遠心力により機能部材48のテーパ状をなす上面とドラム28Aの内壁に沿って螺旋方向に上動した後、表層に出現して重力により螺旋方向に滑落してディスク38A上に戻り、再びディスク38Aにより回転駆動される、という螺旋状の循環流動が繰り返される。この渦流状の循環流動によって撹拌されているセンター群にコーティング剤を散布すれば、各センターの表面にコーティング層が形成される。
【0047】
この渦流を利用したコーティング方法では、センターに遠心力を付与するためにディスク38Aを高速で回転させる。そのため、螺旋流動中におけるセンターへの衝撃が大きくなることは避けられないのであるが、その反面、センター群の流動速度が速く、撹拌効果も高いので、コーティング処理が短時間で済むという利点がある。尚、このときのドラム28Aの回転数は30rpm以下であって、ドラム28Aの回転を停止させてもよい。一方、ディスク38Aの回転数は90〜180rpmであり、ドラム28Aの回転方向とディスク38Aの回転方向は、互いに同じ方向でもよく、互いに反対方向でもよい。また、このときのコーティング槽25の回転中心軸は、鉛直方向と平行に限らず、鉛直方向に対して15°程度傾いた状態であってもよい。このように少し傾けた場合でも、良好なコーティング処理を行うことができる。
【0048】
これに対し、コーティング槽25を図3及び図4に示す傾倒姿勢にしてコーティングする際には、ドラム28Aとディスク38Aを、比較的低速で、且つ互いに同じ方向へ回転させた状態で、コーティング槽25内にセンターを投入する。コーティング槽25内に投入されたセンターは、コーティング槽25の内周(ドラム28Aの内壁面とディスク38Aの上面)との摩擦、及び不連続面による引っ掛かり作用とによって、回転方向前方へ持ち上げられた後、自重により落下して、再びコーティング槽25の内周との摩擦及び不連続面による引っ掛かり作用により持ち上げられる、という循環流動を繰り返すようになっている。この循環流動によって撹拌されているセンター群にコーティング剤を散布すれば、各センターの表面にコーティング層が形成される。尚、このときの、コーティング槽25の鉛直方向に対する傾き角度は、45°〜70°が好適である。
【0049】
このコーティング槽25を傾けてドラム28Aとディスク38Aを同方向に回転させて行うコーティング方法では、コーティング槽25を高速回転させると、センター群が、強い遠心力によってコーティング槽25の内周に張り付いた状態となって循環流動しなくなるため、コーティング槽25は比較的低速で回転駆動される。具体的には、ドラム28Aの回転数は、起立姿勢のときよりも僅かに速い5〜30rpmの低速に抑えられ、ディスク38Aの回転数は、起立姿勢のときに比べて十分に遅くて、5〜45rpmである。
【0050】
コーティング槽25の回転速度が遅いと、撹拌力が低下するため、コーティング剤の粘度が高い場合には、コーティング済みのセンター同士が粘着することによって流動性の低いセンター群が形成され、このセンター群とコーティング槽25の内周面との間でスリップする現象が生じる。このようになると、センター間でコーティング層の厚さにばらつきが生じる等のコーティング不良を生じることになる。しかし、その反面、センターに対する衝撃が弱いので、センターが破損したり変形したりする、といった不具合の虞はない。
【0051】
この2つのコーティング方法の有利点と不利点に着目することにより、センターやコーティング剤の性状等に応じた好適なコーティング処理を行うことが可能である。以下に、その具体的なコーティング方法を説明する。
【0052】
(1)センターが、麦チョコ用の麦パフのように脆い場合には、起立姿勢でコーティングを行うと、螺旋流動中の衝撃でセンターが割れたり欠けたりする虞がある。この場合には、まず、コーティング槽25を傾倒姿勢として、センターに大きな衝撃を与えない状態で、前処理としてのコーティングを行う。これにより、センターには、破損や変形を来すことなくコーティング層が形成される。この後、コーティング槽25を起立姿勢とし、再度コーティング処理を行う。この起立姿勢でのコーティングは、短時間で効率的に行われる。この間、センターには比較的大きな衝撃が作用するが、センターは、その表面に形成されているコーティング層によって補強(保護)されているので、センターが破損したり変形したりする虞はない。
【0053】
(2)豆菓子用の豆のようにセンターの表面が皮で覆われている場合には、起立姿勢でコーティングを行うと、螺旋流動中の衝撃によって皮が剥離し、その剥離した皮がコーティングされてしまう虞がある。この場合には、前処理として、コーティング槽25を傾倒姿勢にした状態でコーティング処理を行う。この間は、センターに強い衝撃が作用しないので、皮が剥離する虞がなく、良好なコーティング層が形成される。この後、コーティング槽25を起立姿勢にして、短時間で効率的にコーティング処理を完了させる。
【0054】
(3)粒状のチューイングガムのようにセンターが四角くて熱可塑性材料からなる場合には、螺旋流動中の摩擦熱と衝撃により、四角いセンターの角が奥に押されて丸みを帯びるように変形する虞がある。この場合には、前処理として、コーティング槽25を傾倒姿勢にした状態でコーティング処理を行う。この間は、センターに強い衝撃が作用しないので、コーティング槽25の温度が上昇しても、センターの角が丸みを帯びるように変形する虞がなく、良好なコーティング層が形成される。この後、コーティング槽25を起立姿勢にして、短時間で効率的にコーティング処理を完了させる。
【0055】
(4)チョコ菓子、チューイングガム、錠剤等のようにセンターが破損や変形を生じ難く、その表面に光沢を有するコーティング層を形成する場合には、前処理として、コーティング槽25を起立姿勢にした状態で、コーティングを短時間で行う。この後、コーティング槽25を傾倒姿勢にして、仕上げ処理としてのコーティングを行う。この方法によれば、コーティングに要する時間を短縮しながら、光沢を有するコーティング層の形成を行うことができる。
【0056】
(5)麦パフのように軽量なセンターの場合に、コーティング槽25を起立姿勢にしてディスク38Aのみを回転させてコーティングを行うと、センター群のうち一部のセンターだけにチョコレートがコーティングされた状態となり、コーティングされて重たくなったセンター群がディスク38Aの上面に溜まってディスク38Aと一体回転し、その溜まっているセンター群の上で、未コーティングの軽いセンター群が螺旋状に循環流動する二層流動と呼ばれる状態となり、コーティングが不均一になることが懸念される。
【0057】
このような状態になったときには、コーティングの途中で、一時的に、ドラム28Aの回転方向を逆向きにする。これにより、未コーティングのセンター群は、流動性が向上するため、抵抗が少なくなり、二層流動状態が解消される。
【0058】
(6)センターが四角い場合には、コーティング槽25を起立姿勢にしてコーティングを行うと、隣接するセンターの側縁同士がコーティング剤の粘性によって連結するアベック現象と称される状態となる虞がある。アベック現象が発生したときには、コーティングの途中で、一時的に、ドラム28Aの回転方向を逆向きにする。これにより、アベック状態のセンターが、ディスク38Aからドラム28Aに移行するときに、ディスク38Aとドラム28Aとの間における回転方向又は回転速度の違いによって衝撃を受けるので、センター同士が分離して、アベック現象が解消される。
【0059】
上述のように、本実施形態のコーティング装置は、上下両面が開放された略円筒状をなす回転可能なドラム28Aと、ドラム28Aの下面を塞ぐように配されてドラム28Aと同軸状の回転を可能とされた皿状のディスク38Aとを備えて構成されたコーティング槽25と、ドラム28Aを回転させるための第2モータ17と、ディスク38Aをドラム28Aとは独立して回転させるための第1モータ15と、コーティング槽25を、コーティング槽25の回転軸が概ね鉛直方向を向く起立姿勢と、コーティング槽25の回転軸が鉛直方向に対して斜め方向を向く傾倒姿勢との間で傾動変位させるための傾動機構11とを備えている。
【0060】
そして、コーティング槽25を起立姿勢にした状態でディスク38Aを高速で回転させると、コーティング槽25内のセンター群が螺旋状に流動し、ここにコーティング剤を投入すると、短い時間の間にコーティング処理が進む。一方、コーティング槽25を傾倒姿勢にした状態でディスク38Aとドラム28Aを同じ方向に低速で回転させると、コーティング槽25内のセンター群がゆっくりと流動するので、起立姿勢での螺旋流動に比べるとセンターへの衝撃が低減される。また、ディスク38Aとドラム28Aの回転速度と回転方向を適宜に変更することによっても、コーティング槽25内におけるセンター群の流動形態を変更することができる。
【0061】
このように、本実施形態のコーティング装置は、デスクとドラム28Aを独立回転させることができるとともに、コーティング槽25の回転軸の向きを変更することができるようにしたので、センターの特性に応じた好適なコーティング処理を行うことができるとともに、コーティング中に発生する不具合を解消することが可能である。
【0062】
また、本実施形態とは異なり、ドラムを回転駆動するための第2モータの第2駆動軸と、ディスクを回転駆動するための第1モータの第1駆動軸を同軸状に配置した場合には、双方のモータを配置するためのスペースが、コーティング槽の回転中心と平行な上下方向に大きくなるので、コーティング装置全体が嵩高となる。その点、本実施形態では、第1駆動軸16と第2駆動軸18を、コーティング槽25の回転中心と平行であり、且つ互いに偏心した位置関係としているので、コーティング装置の低背化が実現されている。
【0063】
また、コーティング槽25は、ドラム28Aの下端縁に一体回転可能に結合されるとともに、ディスク38Aの下方を覆う皿状のアンダープレート26を有しており、第1モータ15の第1駆動軸16は、アンダープレート26を貫通してディスク38Aに対して同軸状に連結されており、第2モータ17の第2駆動軸18は、コーティング槽25の回転中心から偏心した位置に配されて、アンダープレート26に対し駆動ギヤ23と内歯歯車27を介して一体回転可能に設けた従動ギヤに係合されている。この構成によれば、第1駆動軸16をディスク38Aと同軸に配置したことにより、構造の簡素化を図ることができる。また、第1駆動軸16の回転力を効率良くディスク38Aに伝達することができるので、ディスク38Aを高速で連続的に回転させることができる。
【0064】
また、第2駆動軸18の駆動ギヤ23を内歯歯車27に対しその内側から係合させているので、駆動軸を従動ギヤの外側で係合させる場合に比べると、第2モータ17が、コーティング槽25の回動中心に近い位置に配置されることになり、水平方向において小型化することができる。また、駆動ギヤ23の材料をナイロン製とすることにより、駆動ギヤ23と内歯歯車27との係合部分への潤滑油の供給を不要にすることができる。
【0065】
次に、コーティング槽25を清掃や部品交換などのために分解する手順を説明する。まず、上向きボルト36を緩めて可動側弧状部材37Bを開くように変位させ、円形の締付け状態とされている締付けリング37を、開放状態として、ドラム28Aの下端縁(係止リブ33)から外す。これにより、ドラム28Aがアンダープレート26への固定状態から解放されるので、ドラム28Aを上方へ持ち上げてアンダープレート26から外す。この状態では、図5に示すように、アンダープレート26に嵌合されているスペーサ34の上端と、ディスク38Aの外周縁の形状保持部53の下端とがほぼ同じ位置にある。
【0066】
この後、図6に示すように、固定ボルト60を緩めて、センターカバー58をディスク38Aから外す。次に、ハンドル付きボルト47を緩めて回転部材19から外すことにより、ディスク38Aを回転部材19への固定状態から解放する。この後、指掛け部44に指を引っかけて、ディスク38Aを少し持ち上げることにより逃がし孔43を支持ピン22から外し、逃がし孔43が支持ピン22と非対応の位置に移動するまでディスク38Aを少し回転させ、その状態で、ディスク38Aを支持ピン22の上に載置する。これにより、ディスク38Aの外周縁の形状保持部53が、スペーサ34の上端縁よりも上方に位置する。
【0067】
次に、ディスク38Aの外周縁に指を掛け、機能部材48を持ち上げて、取付部材39から外し、機能部材48のみをアンダープレート26の外へ取り出す。この後、残っている取付部材39をアンダープレート26の外へ取り出す(図7を参照)。ディスク38Aを構成している取付部材39と機能部材48を別々に取り出すようにしたので、作業性がよい。外したディスク38Aを回転部材19に組み付ける作業と、外したドラム28Aをアンダープレート26に組み付ける作業は、上記とは逆の手順で行えばよい。
【0068】
本実施形態では、第1駆動軸16には、回転部材19を介すことにより、上方へ突出してディスク38Aを貫通した形態の複数の支持ピン22が設けられ、ディスク38Aを持ち上げて支持ピン22に載置した状態では、ディスク38Aの外周縁の形状保持部53がアンダープレート26よりも高い位置であるスペーサ34の外周縁よりも、さらに上方に位置するようになっている。この構成によれば、ディスク38Aを洗浄や交換のために第1モータ15から外す際には、アンダープレート26からドラム28Aを外し、その後、ディスク38Aを持ち上げて支持ピン22に載置すれば、ディスク38Aの外周縁の形状保持部53がアンダープレート26及びスペーサ34の外周縁よりも上方に位置する。これにより、作業者は、ディスク38Aの形状保持部53を持つことによって、ディスク38Aの機能部材48を容易に上げ下ろしすることができる。さらに、取付部材39には、作業者が指を引っかけるための指掛け部44を形成しているので、取付部材38を容易に上げ下ろしすることができる。このように、本実施形態では、ディスク38Aを外す作業を行い易くなっている。
【0069】
本実施形態のコーティング装置は、コーティング槽25を起立姿勢にせず、終始コーティング槽25を傾倒姿勢に保ったままでコーティング処理を行う場合にも使用できる。この場合には、コーティング槽25を高速回転させると、センター群が、強い遠心力によってコーティング槽25の内周に張り付いた状態となって循環流動しなくなるため、コーティング槽25は比較的低速で回転駆動される。ところが、コーティング槽25の回転速度が遅いと、撹拌力が低下するため、コーティング剤の粘度が高い場合には、コーティング済みのセンター同士が粘着することにより、重くて流動性の低いセンター群が形成され、これがドラム28Aの開口部に集まってくる。一方で、コーティング剤のかかりの悪い軽いセンター群はドラム28Aの奥の方に集まってくるので、比重分離という現象が生じることになる。比重分離の対処方法としては、ドラム28Aの奥側に位置する未コーティングのセンター群を目掛けてコーティング剤を投入すれは良いのであるが、この場合、コーティング剤の投入範囲がドラム28A内の奥側部分だけとなる。そのため、ドラム28A内の全体に亘って広範囲にコーティング剤を投入する場合に比べると、コーティング層の形成に時間がかかり、効率が良くない。
【0070】
その対策として本実施形態では、コーティング槽25を、上下両面が開放され、上面側の開口部に上方に向かって縮径するように絞られた形状の絞り部29が形成された略円筒状をなす回転可能なドラム28Aと、ドラム28Aの下面を塞ぐように配されているとともに、上面に複数の不連続面55,56を有し、ドラム28Aと同軸状の回転を可能とされた皿状のディスク38Aとを備えた構成とした。さらに、ドラム28Aを回転させるための第2モータ17と、ディスク38Aをドラム28Aとは独立して回転させるための第1モータ15とを備えている。
【0071】
この構成によれば、ドラム28Aとディスク38Aとを互いに異なる速度で回転させた状態でコーティング槽25にセンターとコーティング剤を投入することにより、比重分離に起因する不具合を解消できるとともに、比重分離を利用してコーティング効率の向上を図ることができる。即ち、ドラム28Aに対してディスク38Aの回転速度を遅くした場合には、ドラム28Aとディスク38Aとの回転速度差によってセンター群の流動状態に変化が与えられるとともに、ディスク38Aの上面の不連続面55,56によってセンターが跳ね上げられることにより、センターに対する撹拌力が高められ、比重分離が生じ難くなり、センターの大きさにかかわらず均一なコーティングを効率良く行うことができる。また、ドラム28Aに対してディスク38Aの回転速度を速くすることによって比重分離を強制的に発生させれば、小さいセンターのコーティング層を早く成長させることができる。このように、ドラム28Aとディスク38Aの回転速度を適宜に設定することにより、良好なコーティングを行うことができる。
【0072】
また、撹拌力が高まると、センターがドラム28Aの上面側の開口部からコーティング槽25の外へ飛び出すことが懸念されるのであるが、ドラム28Aの上面側の開口部は絞り部29によって開口面積が絞られているので、センターがコーティング槽25の外へ飛び出す虞はない。
【0073】
また、図1〜4,図8に示す標準型のドラム28Aは、第2モータ17によって回転駆動される状態と、第2モータ17からの回転力伝達を遮断された状態との間で着脱可能とされている。また、標準型のドラム28Aとは別に、下記のように内周の形状が異なる複数種類の代替ドラム28B,28Cが用意されている。この構成によれば、センターの形状やセンターの脆さ等に応じて、好適な形状のドラム28A,28B,28Cを選択することにより、良好なコーティングを行うことができる。
【0074】
図10に示す代替ドラム28Bは、絞り部29の形状は上記の標準型のドラム28Aと同じであるが、本体部61の内周が、平面状をなす12の長方形状構成面62を周方向に並べて構成され、テーパ部63の内周面は、頂点が上下反対に位置する2種類(12対)の平面状の三角形状構成面64を、周方向に交互に並べて構成されている。2種類の三角形状構成面64は、頂点が上端に位置する三角形状構成面64が、底辺が円弧形をなす二等辺三角形であるのに対し、頂点が下端に位置する三角形状構成面64は、その底辺が直線状をなしているという点において、相違している。また、各三角形状構成面64の上端の頂点は、隣接する長方形状構成面62間の境界線の下端に連なっている。この代替ドラム28Bは、センターがボール状をなす場合、コーティング剤がドラム28A,28B,28Cの内壁に付着し易い性状のものである場合、センターがドラム28A,28B,28Cの内壁上でスリップし易いものである場合等に好適である。その他の構成は標準型のドラム28Aと同じである。
【0075】
図11に示す代替ドラム28Cは、本体部65と絞り部66とから構成されており、ドラム28A,28Bのテーパ部31,63に相当する筒状部は有していない。本体部65は、その上端から下端に亘って内径寸法が一定の円筒形をなし、したがって、本体部65の内面は一定曲率の曲面によって構成されている。また、絞り部66は、テーパ状をなし、その内周面は曲面のみから構成されている。この代替ドラム28Cは、錠剤や麦パフのようなセンターが破損し易い場合や、センターが軽い場合等に好適である。その他の構成は標準型のドラム28Aと同じである。
【0076】
上記の標準型のディスク38Aは、第1モータ15によって回転駆動される状態と、第1モータ15からの回転力伝達を遮断された状態との間で着脱可能とされている。また、標準型のディスク38Aとは別に、不連続面55,56の形状と回転軸方向の高さ寸法が異なる複数種類の代替ディスク38B,38Cが用意されている。この構成によれば、センターの重量やコーティング層の厚さ等に応じて、好適なディスク38A,38B,38Cを選択することにより、良好なコーティングを行うことができる。
【0077】
図12及び図13に示す代替ディスク38Bは、標準型のディスク38Aよりも高さ寸法が大きく、水平面に対する外枠49の傾斜部51の傾斜角度が、標準型のディスク38Aよりも大きく60°となっている。また、水平面に対する内枠54の傾斜角度も、標準型のディスク38Aに比べて大きい角度である。扇形不連続面55と三角形不連続面56の形状は標準型のディスク38Aと概ね同じであり、扇形不連続面55と三角形不連続面56の数は標準型のディスク38Aと同じである。その他の形態は、標準型のディスク38Aと同じである。この代替ディスク38Bは、コーティング剤の粘度が高い場合や、軽量のセンターを大量にコーティングする場合等の好適である。尚、この代替ディスク38Bを使用する場合には、その高さに合わせて上記スペーサ34を交換する必要がある。
【0078】
図14及び図15に示す代替ディスク38Cは、標準型のディスク38Aよりも高さ寸法が小さく、扇形不連続面55と三角形不連続面56の数が、標準型のディスク38Aよりも多く8つずつ形成されている。その他の形態は、水平面に対する外枠49の傾斜部51の傾斜角度等も含めて標準型のディスク38Aと同一又は概ね同じである。この代替ディスク38Cは、環状部50の水平面が広く、内枠54(不連続面55,56)の面積が狭いため、ディスク38Cの回転速度が遅くても、ディスク38Cの上面にセンターが滞留し難く、起立姿勢の螺旋流動においてもセンターへの衝撃が少ないという利点がある。
【0079】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ドラム用駆動機構の駆動軸とディスク用駆動機構の駆動軸を互いに偏心した位置関係となるように配置したが、ドラム用駆動機構の駆動軸とディスク用駆動機構の駆動軸は、同軸状に配置してもよい。
(2)上記実施形態では、ドラム用駆動機構の駆動軸をコーティング槽の回転中心と平行に配置したが、ドラム用駆動機構の駆動軸はコーティング槽の回転中心と平行な仮想線に対して交差する方向に配置してもよい。
(3)上記実施形態では、ディスク用駆動機構の駆動軸をコーティング槽の回転中心と平行に配置したが、ディスク用駆動機構の駆動軸はコーティング槽の回転中心と平行な仮想線に対して交差(直交)する方向に配置してもよい。
(4)上記実施形態では、従動ギヤを、内周に歯列を有する内歯歯車とし、この内歯歯車にドラム用駆動機構の駆動軸を係合させたが、従動ギヤを外歯歯車とし、この外歯歯車にドラム用駆動機構の駆動軸を係合させてもよい。
(5)上記実施形態では、ドラムの上面側の開口部を開放した状態のままでコーティングを行うようにしたが、ドラムの上面の開口を、ドラムとは別体の蓋によって開閉できるようにしてもよい。この場合、蓋は、ドラムに対してヒンジ等により開閉動作を可能に且つドラムからは簡単には外せないように取り付けられていてもよく、ドラムに対してボルトや凹凸嵌合などにより比較的簡単に着脱できるようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
11…傾動機構
15…第1モータ(ディスク用駆動機構)
16…第1駆動軸(ディスク用駆動機構の駆動軸)
17…第2モータ(ドラム用駆動機構)
18…第2駆動軸(ドラム用駆動機構の駆動軸)
22…支持ピン(支持部材)
25…コーティング槽
26…アンダープレート
27…内歯歯車(従動ギヤ)
28A,28B,28C…ドラム
38A,38B,38C…ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下両面が開放された略円筒状をなす回転可能なドラムと、前記ドラムの下面を塞ぐように配されて前記ドラムと同軸状の回転を可能とされた皿状のディスクとを備えて構成されるコーティング槽と、
前記ドラムを回転させるためのドラム用駆動機構と、
前記ディスクを、前記ドラムとは独立して回転させるためのディスク用駆動機構と、
前記コーティング槽を、前記コーティング槽の回転軸が概ね鉛直方向を向く起立姿勢と、前記コーティング槽の回転軸が鉛直方向に対して斜め方向を向く傾倒姿勢との間で傾動変位させるための傾動機構とを備えていることを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記ドラム用駆動機構の駆動軸と前記ディスク用駆動機構の駆動軸は、前記コーティング槽の回転中心と平行であって、互いに偏心した位置関係とされていることを特徴とする請求項1記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記コーティング槽は、前記ドラムの下端縁に一体回転可能に結合されるとともに、前記ディスクの下方を覆う皿状のアンダープレートを有しており、
前記ディスク用駆動機構の前記駆動軸は、前記アンダープレートを貫通して前記ディスクに対して同軸状に連結されており、
前記ドラム用駆動機構の前記駆動軸は、前記コーティング槽の回転中心から偏心した位置に配されて、前記アンダープレートに一体回転可能に設けた従動ギヤに係合されていることを特徴とする請求項2記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記従動ギヤは、内周に歯列を有する内歯歯車であり、
前記ドラム用駆動機構の前記駆動軸が前記内歯歯車に係合されていることを特徴とする請求項3記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記ディスク用駆動機構には、上方へ突出して前記ディスクを貫通した形態の複数の支持部材が設けられ、
前記ディスクを持ち上げて前記支持部材に載置した状態では、前記ディスクの外周縁が前記アンダープレートの外周縁よりも上方に位置するようになっていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−189232(P2011−189232A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55417(P2010−55417)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【特許番号】特許第4740419号(P4740419)
【特許公報発行日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(396019631)株式会社チップトン (33)
【Fターム(参考)】