説明

コードのゴム被覆ヘッド及びゴム被覆装置

【課題】コードへのゴム付着量の変動を抑制し、配列した各コード間で均一にゴムを付着させることが可能なコードのゴム被覆ヘッド及びコードのゴム装置を提供する。
【解決手段】押出機4からゴム組成物を取り入れるゴム取入口8と、複数のコード2にゴム組成物を被覆してそれぞれゴム被覆コード6として送り出す複数のダイス孔5とを備えたゴム被覆ヘッド1において、複数のダイス孔5は、各ダイス孔5の軸方向がゴム取入口8からのゴム供給方向Aに対して直交し、かつそれぞれのダイス孔5がゴム供給方向Aの上流側から下流側に沿って配列するように形成され、配列した複数のダイス孔5がゴム供給方向Aに沿って複数個ずつに区分され、ゴム供給方向A下流側の区分ほどダイス孔径Dが大きくなるような構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品を補強するために用いられるゴム被覆コードの製造するのに用いられるコードのゴム被覆ヘッド及びコードのゴム被覆装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム被覆コードを得る方法として、特許文献1に示すように、押出機の出口側に接続されたゴム被覆ヘッド内にコードを通過させてゴム被覆したコードを送り出す押出し方式のゴム被覆装置が知られている。押出し方式以外のゴム被覆装置としては、特許文献2に示すように、カレンダーロールを使用してコードにゴムを被覆するカレンダー方式のゴム被覆装置も知られている。
【0003】
上述した2種類のゴム被覆装置を比較すると、特許文献1に記載された押出し方式の装置の方が、カレンダー方式の装置に比べて押出し圧力が高く、コードへのゴムの含浸性に優れ、その結果、耐久性に優れたゴム被覆コードを得ることができるという利点を有している。
【特許文献1】特開2005―246736号公報
【特許文献2】特開2004−090589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、ゴム被覆コードを送り出すダイス孔の軸方向が押出機からのゴム供給方向に対して直交する方向とされ、かつダイス孔がゴム供給方向上流側から下流側に沿って配列されているため、ゴム供給方向の上流側と下流側とではダイス孔にかかる圧力が変化する。これにより、コードに被覆されるゴムの量がゴム供給方向上流側で多くなる一方、下流側では少なくなり、得られるゴム被覆コードの厚みが変化するおそれが生じていた。
【0005】
上記のように、複数本が配列した状態で引き出されたゴム被覆コードは、耐圧ゴムチューブ等のゴム被覆製品の表面に螺旋状に巻き付けられ、ゴムチューブの補強層を形成するために使用されることがある。
【0006】
このとき、配列した各コード間で不均一にゴムが被覆されたゴム被覆コードをゴム製品の補強材として使用した場合には、ゴム製品使用時に圧力保持に変動が起き、製品の早期破損に繋がるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明では、上記に鑑み、コードへのゴム付着量の変動を抑制し、配列した各コード間で均一にゴムを付着させることが可能なコードのゴム被覆ヘッド及びコードのゴム被覆装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、押出機からゴム組成物を取り入れるゴム取入口と、複数のコードに前記ゴム組成物を被覆してそれぞれゴム被覆コードとして送り出す複数のダイス孔とを備えたゴム被覆ヘッドにおいて、ダイス孔は、その形成位置が前記ゴム取入口から遠くなるほど、孔径が大きくなるように形成されたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ダイス孔の孔径を、ゴム取入口からの距離に応じて調整することにより、各ダイス孔から送り出されるコードに付着するゴム量を均一にすることが可能となる。
ここで、ゴム取入口に対するダイス孔の位置と、ダイス孔からのゴム流量との関係について説明する。押出機から近い位置に形成されたダイス孔D1にかかる圧力(水頭圧)をh1とし、押出機から遠い位置に形成されたダイス孔D2にかかる圧力(水頭圧)をh2とすると、ゴム取入口から離れるほどゴム圧力が低下するため、h1>h2となる。
【0010】
各ダイス孔におけるゴム流速Uは、ベルヌーイの定理より、U=(2gh)1/2であらわされる。ゴムの流量Qは、ダイス断面積をAで一定とするとQ=UAとなる。すなわち、ダイス孔D1から流出するゴム流量Q1は、Q1=A×(2gh1)1/2となり、ダイス孔D2から流出するゴム流量Q2=A×(2gh2)1/2よりも大きくなる。
【0011】
上記Q1とQ2とを等しくするには、ダイス孔D2のダイス断面積をA2とすると、
A×(2gh1)1/2=A2×(2gh2)1/2
∴A2=A×(h1/h2)1/2
となる。ここで、h1>h2であることから、A2>Aとなる。すなわち、ダイス孔D2の孔径をダイス孔D1の孔径よりも大きくすることでQ1及びQ2のゴム流量を揃えることが可能となる。なお、上記ゴム流速Uの関係式は、厳密にはニュートン流体に適用されるものであって、ゴム組成物のようなビンガム流体では誤差が大きくなるが、各ダイス孔におけるゴム流速を相対的に比較することは可能である。
【0012】
ゴム被覆ヘッドにおける複数のダイス孔の配置については、具体的に、各ダイス孔の軸方向が前記ゴム取入口からのゴム供給方向に対して直交し、かつそれぞれのダイス孔がゴム供給方向上流側から下流側に沿って配列するように形成し、ゴム供給方向下流側になるほどダイス孔径が大きくなるように形成することができる。
【0013】
ダイス孔をゴム供給方向上流側から下流側に沿って配列するとは、具体的に、ダイス孔を一定間隔で直線上に一列に並べることができるほか、千鳥状の二列に並べることも可能である。
【0014】
ゴム被覆ヘッドにダイス孔が多数配列形成される場合、各ダイス孔は、孔径を連続的に少しずつ変化するように形成してもよいが、隣接するダイス孔では孔径の差異はごくわずかであり、ダイス孔ごとに孔径を変化させるのも手間がかかる。
【0015】
そこで、本発明では、複数のダイス孔の配置について、各ダイス孔の軸方向が前記ゴム取入口からのゴム供給方向に対して直交し、かつそれぞれのダイス孔がゴム供給方向上流側から下流側に沿って配列するように形成し、配列した複数のダイス孔をゴム供給方向に沿って複数個ずつに区分し、ゴム供給方向下流側の区分ほどダイス孔径が大きくなるように形成するようにした。このように、ダイス孔径を複数個ずつ段階的に変化させることにより、ダイス孔を容易に形成することが可能となる。
【0016】
以上説明したコードのゴム被覆ヘッドを用い、さらにゴム被覆ヘッドにゴム組成物を供給する押出機と、ゴム被覆ヘッドからゴム被覆コードを引き取る引取ローラとからコードのゴム被覆装置を構成すれば、ゴムが均一に付着したコードを複数配列した状態で得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ダイス孔の形成位置がゴム取入口から遠くなるほど、ダイス孔径が大きくなるように形成したため、各ダイス孔から送り出されるコードに付着するゴム量を均一にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るコードのゴム被覆ヘッドを用いた押出し方式のコードのゴム被覆装置を示す概略図である。このゴム被覆装置は、ゴム被覆ヘッド1と、ゴム被覆ヘッド1にコード2を供給するコード供給部3と、ゴム組成物を加熱混練しながら押し出してゴム被覆ヘッド1に供給する押出機4と、ゴム被覆ヘッド1に形成された複数のダイス孔5からゴム被覆コード6を引き出す引取ローラ7とを備えている。
【0019】
コード供給部3では、図示しない複数のボビンからそれぞれ引き出されたコード2を配列した状態でゴム被覆ヘッド1に供給するようになっている。ゴム被覆ヘッド1には、ゴム組成物を取り入れるゴム取入口8が形成されている。ゴム被覆ヘッド1は、押出機4の出口側に接続されており、ゴム取入口8を介して押出機3から供給されたゴム組成物をダイス孔5から押し出すようになっている。
【0020】
また、ゴム被覆ヘッド1は、コード供給部3から導入した配列状態の複数のコード2をゴム組成物に通過させてダイス孔5から送り出すようになっており、これにより、コード2にゴムを被覆する構造とされている。コード2の種類は特に制限はなく、ナイロンやポリエステル、レーヨン、アラミド、スチール等からなるコードを用いることができる。その中でも特に、撚り線構造のスチールコードのようにゴム含浸性が低いコードを用いれば、ゴムの付着量が均一でコード内部までゴムが含浸したゴム被覆コードを得ることが可能となる。
【0021】
図2は、ゴム被覆ヘッド3の正面図である。ゴム被覆ヘッド1には、前述のごとく、ゴム取入口8と複数のダイス孔5とが形成されており、両者の間にはゴム流路9が形成されている。すなわち、押出機4からゴム被覆ヘッド1に供給されたゴム組成物は、ゴム取入口8から取り入れられ、ゴム流路9を通って、ダイス孔5から押し出される。なお、ゴム流路は、ゴム被覆ヘッド1の先端に行くほど狭くなるようにテーパ状に形成されており、これによってゴム供給方向Aの下流側におけるゴム圧力の低下をできるだけ抑制するようになっている。
【0022】
ゴム被覆ヘッド1におけるダイス孔5の形成位置は、ゴム取入口8からゴム流路9内を流れるゴム組成物の方向、すなわち、ゴム供給方向Aに対してダイス孔5の軸方向が直交するように形成されており、さらにダイス孔5はゴム供給方向Aの上流側から下流側に沿って千鳥状の二列に配列形成されている。なお、ゴム被覆ヘッド1におけるダイス孔5の数は特に制限はないが、配列したダイス孔5の上流側と下流側とで明らかな圧力差を生じるという観点からいえば、使用するコード2の本数が100本を超えるような場合に特に効果が大きくなる。
【0023】
コード供給部3からゴム被覆ヘッド1内に導入されたコード2は、ダイス孔5の軸方向に沿ってゴム被覆ヘッド1内のゴム流路9を横切るように通過する。すなわち、コード2の通過方向は、ゴム供給方向Aに対して直交する方向とされている。
【0024】
ゴム被覆ヘッド1に複数配列形成されたダイス孔5は、ゴム供給方向Aに沿って5つの区分10a〜10eに区分けされ、各区分10a、10b、10c、10d及び10eのダイス孔の孔径はそれぞれd1、d2、d3、d4及びd5に形成されている。
【0025】
各区分におけるダイス孔径の関係は、ゴム供給方向上流側から下流側になるほどダイス孔径が大きくなるように、すなわち、d1<d2<d3<d4<d5になるように設定されている。このように、ダイス孔5にかかる圧力が高いゴム供給方向Aの上流側の区分のダイス孔径を小さくし、ダイス孔5にかかる圧力が低くなるゴム供給方向Aの下流側の区分のダイス孔径を小さくすることによって、コード2に付着するゴム量を均一に揃えることが可能となる。
【0026】
以上のようにして得られたゴム被覆コード6は、複数が配列した状態のままゴム被覆製品の表面に巻きつけて使用することができる。また、得られたゴム被覆コード6をいったん保管しておくことも可能である。
【0027】
この場合には、配列した状態の複数のゴム被覆コード6を互いに接着させて一体化することにより、コード入りゴムテープとして巻取ローラ等に巻き取っておけばよい。
【0028】
ゴム被覆コードを一体化するには、ゴム被覆コードの互いの間隔が小さいときには、互いに接着して一体化してテープ状とすることができる。また、引取ローラ7でゴム被覆コード6を挟みこんで引き出す際に、引取ローラ7の押圧力により、ゴム被覆コードを互いに接着させてテープ状にすることもできる。また、引取ローラ7とは別に、ゴム被覆コード6を押圧してテープ状にする押圧ローラを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るコードのゴム被覆装置を示す概略図
【図2】図1におけるゴム被覆ヘッドの正面図
【符号の説明】
【0030】
1 ゴム被覆ヘッド
2 コード
3 コード供給部
4 押出機
5 ダイス孔
6 ゴム被覆コード
7 引取ローラ
8 ゴム取入口
9 ゴム流路
A ゴム供給方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機からゴム組成物を取り入れるゴム取入口と、複数のコードに前記ゴム組成物を被覆してそれぞれゴム被覆コードとして送り出す複数のダイス孔とを備えたゴム被覆ヘッドにおいて、前記ダイス孔は、その形成位置が前記ゴム取入口から遠くなるほど、孔径が大きくなるように形成されたことを特徴とするコードのゴム被覆ヘッド。
【請求項2】
前記複数のダイス孔は、各ダイス孔の軸方向が前記ゴム取入口からのゴム供給方向に対して直交し、かつそれぞれのダイス孔がゴム供給方向上流側から下流側に沿って配列するように形成され、ゴム供給方向下流側になるほどダイス孔径が大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項1記載のコードのゴム被覆ヘッド。
【請求項3】
前記複数のダイス孔が、各ダイス孔の軸方向が前記ゴム取入口からのゴム供給方向に対して直交し、かつそれぞれのダイス孔がゴム供給方向上流側から下流側に沿って配列するように形成され、配列した複数のダイス孔がゴム供給方向に沿って複数個ずつに区分され、ゴム供給方向下流側の区分ほどダイス孔径が大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項1記載のコードのゴム被覆ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のゴム被覆ヘッドと、該ゴム被覆ヘッドにゴム組成物を供給する押出機と、前記ゴム被覆ヘッドからゴム被覆コードを引き取る引取ローラとを備えたことを特徴とするコードのゴム被覆装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−160698(P2007−160698A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359737(P2005−359737)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】