説明

コードパターン記録媒体およびコードパターン読取りシステム

【課題】記録媒体の表面に書換え可能に記録される光学読取りコードに対し、安定的に読取り可能となるようなコードパターン記録媒体、およびコードパターン読取りシステムを提供する。
【解決手段】コードパターン読取システム30は、書換え可能な情報表示領域2を備え複数のコードパターン3が記録されたコードパターン記録媒体1を、撮像部31に付帯するカメラ311で撮像し、判別部32でコードパターンの画像43を抽出する。さらに欠損検出部33でコードパターンの欠損部を抽出し、欠損のある領域を特定する。特定された欠損部に相当する画像を他のコードパターンの像で補填する。これにより、欠損や汚れのあるコードパターンから復号可能なコードパターン44を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体上に記録されたバーコードなどのコードパターンの読取りシステムおよび当該システム用のコードパターンを記録する記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
商店の顧客サービスの一環としてポイントサービスが広く普及している。その典型は、磁気カードやバーコードを形成したカードなど、顧客が携行しやすい形状のカードを介して購買毎に金額に応じたポイントを付与し、貯まったポイントを金銭相当や景品などに交換するものである。
ポイントサービスに用いるカード(ポイントカード)のうち、バーコード方式は、顧客コードを固定的に記録するのみなのでカード自体は低廉であるが、顧客のポイントを一括して管理するデータベースが別途必要となり、全体の仕組は大規模なものとなる。また同方式は、保有ポイントがカード上に表示されない弱点がある。
【0003】
一方、磁気カード方式は、多くは、表面に感熱発色材による書換え可能な画像記録面、反対面に磁気層によるデータ記録面を持ち、画像記録面には目視用のデータ(保有ポイント数や有効期限など)を表示し、データ記録面には機械読取り用のデータを格納する構成となっている。したがって、表示機能があり、機械処理に要するデータもカードに格納されるため、専用のリーダライタがあれば最低限の運用ができるなど利便性は高いが、目視用と機械読取り用の二つの記録機構を要するカードやリーダライタはコストの高いものとなる。
【0004】
特許文献1には、感熱記録媒体を用いて書換え可能な表示部を持ち、反対面には磁気記録部を持つポイントカードと、これを用いたポイントカードシステムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−109636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対し、画像記録面に、単一の記録機構で、目視用のデータとともに機械読取り用のデータをも記録しようとする試みがある。すなわち、特許文献1の磁気記録部に記録する機械読取り用のデータを、磁気記録に代えて、バーコードなどの光学読取りコードとして画像記録面にプリンタによって記録しようとするものである。
ところが、利用者に携行され繰り返し利用されるカードは変形や異物の付着が避け難く、これによりコードパターンに擦れや乱れが生じるため、光学読取り方式では読取り精度の低下を来たす。
【0007】
そこで、本発明は、プリンタによって記録媒体の表面に書換え可能に記録される光学読取りコードに対し、安定的に読取り可能となるようなコードパターン記録媒体、およびコードパターン読取りシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本願第1の発明は、
基材上にプリンタにより印字記録可能な記録面が設けられ、前記記録面上に、プリンタにより光学読取り可能なコードパターンが記録されたコードパターン記録媒体であって、
前記コードパターンは、同一のコードが前記記録面の複数の領域に記録されたものであることを特徴とするコードパターン記録媒体である。
また、前記記録面は、書換え可能な記録材からなることを特徴とする。
また、前記コードパターンは、バーコードであることを特徴とする。
さらに、前記コードパターンは、二次元コードであってもよい。
【0009】
本願第2の発明は、前記コードパターン記録媒体から前記コードパターンを読取り、読取ったコードパターン中に欠損がある場合は、前記欠損を復元するコードパターン読取システムであって、
該システムは、前記記録面を撮影して画像として取り込む撮像手段と、前記撮像手段で取り込まれた画像から前記複数の領域に記録された個々のコードパターンを抽出するパターン識別手段と、前記パターン識別手段により抽出された個々のコードパターンに対し、パターン形状の欠損部分を抽出し、前記コードパターンの欠損領域を特定する欠損領域検出手段と、検出された欠損領域に対して、当該欠損領域に対応する領域に欠損が存在しないコードパターンに基づいて、前記欠損部に相当するパターン形状を埋め込むパターン補完手段とを設けることにより、欠損のないコードパターンを生成し、元の欠損のないコードを復元することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコードパターン記録媒体は、ポイントカードのような形態で利用者に携行されコードパターンの書換えの際に同パターンが部分的に損傷しても、画像記録面に複数のコードパターンが表示されているため、パターン同士の相互補完が可能となる。
また、本発明のコードパターン読取システムは、画像記録面上の複数のコードパターンを読込み、欠損のないコードパターンを生成するので、変形や異物付着を伴うコードパターン記録媒体から正確なデータを復元することが可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のコードパターン記録媒体を示す図
【図2】コードパターンの配置例を示す図
【図3】本発明のコードパターン読取システムの機能ブロック図
【図4】本発明のコードパターン読取システムの処理過程を示す図
【図5】フロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<コードパターン記録媒体>
図1は、本発明のコードパターン記録媒体をカードの形態で表わしたものである。
コードパターン記録媒体1の基材11には、プリンタにより印字記録可能な記録面12が設けられている。図1の構成では、記録面12は書換え可能な可視情報を表示する情報表示領域2を備えており、情報表示領域2には、プリンタによる可視情報の書換え(書込みおよび消去)を可能とする感熱記録材が塗布されている。
【0013】
ここに用いる感熱記録材は、特定の温度領域で発色し、別の特定の温度領域で消色する特性を持っており、よって情報表示領域2は可視情報の書込みおよび消去が可能となっている。
画像の書込み/消去は、通常、ラインサーマルヘッドにより行われ、同ヘッドの各ドットの制御により、任意の形状の画像が記録可能となる。
情報表示領域2には、複数のコードパターン3が記録されており、図1ではバーコードが並列に配置された態様で表わしている。なお、目視用表示5は利用者のための可読性のある情報である。
【0014】
コードパターン3としては、バーコードに限らず、二次元コードなども利用可能である。また、コードパターン3は、欠損部が分散するよう、離散的に、また角度を持って配置されてもよい。
図2はコードパターンの配置例であり、図2(a)はバーコード、図2(b)は二次元コードを用いた態様を表わしている。
【0015】
<コードパターン読取システム>
図3は、本発明のコードパターン読取システムの構成図である。
コードパターン読取システム30は、コードパターン記録媒体1の記録面12を画像として取込むためのカメラ311を持つ撮像手段(撮像部31)と、取込まれた画像から個々のパターンの領域を識別し、取り出すパターン判別手段(判別部32)と、個々のパターン(取込パターンと呼ぶ)を解析し、取込パターンの欠損部分を判別する欠損領域検出手段(欠損検出部33)と、各パターンを比較し、欠損部を相互に補充する補完手段(補完整形部34)からなる。
【0016】
以下、図4により、コードパターン記録媒体1を用いたコードパターン読取システム30による、欠損のあるコードパターンの読取りおよび復元の過程を説明する。
【0017】
まず、撮像部31は、付帯するカメラ311によりコードパターン記録媒体1を撮影し画像を取込む(S11)。カメラ311が撮影する領域は情報表示領域12をカバーすればよく、画像41のような画像が取込まれる。なお、コードパターン記録媒体1上のコードパターン3にはパターン3a、3b、3cに示すように部分的欠損や汚れがあるものとする。なお、パターン3a、3bはパターンの欠損を表わし、パターン3cは汚れ付着を表わす。
【0018】
続いて、判別部32で、画像41からコードパターン3に相当する部分を抽出する(S12)。コードパターン3の占める領域の位置、形状、寸法等が予めわかっていればコードパターン3に部分的欠損があってもコードパターン3を抽出することは比較的容易である。また、パターンマッチングなどの認識技術を用いれば、位置が不定の場合、あるいはコードパターン3に部分的欠損や汚れがあっても、コードパターン3の抽出は可能である。
【0019】
このような過程で、判別部32では複数の取込みパターンが得られる。画像42はコードパターン3の占める領域(パターン領域421と呼ぶ)を認識した状態を表わす。画像43はそれぞれのパターン領域421からパターン3a、3b、3cの画像(抽出パターンと呼ぶ)を抽出した状態を表わす。
【0020】
欠損検出部33は、それぞれの抽出パターン43a、43b、43cから欠損部分を特定する(S13)。欠損部分の判別は、細線化、輪郭抽出、モルフォロジーなど、特徴抽出に用いる画像処理の手法を組み合わせることによって実現可能であるが、例として図5に細線化による判別のフローを示す。なお、モルフォロジーについては例えば特開2004−318693に記載がある。
【0021】
以上により欠損部分の領域が特定されるため、補完整形部34では、欠損のない他の取込みパターンから欠損部分に相当する部分を複写すればよい(S14)。画像44は、抽出パターン43aの欠損部44aを抽出パターン43bの相当部で補填することにより抽出パターン43aが補完された状態を表わす。
【0022】
以上述べたように、本発明のコードパターン読取システムは、擦れや汚れのあるコードパターンから復号可能なコードパターンを生成するため、ポイントカードのように利用者に携行され繰り返し書換えが行われるコードパターン記録媒体に対しても、安定した読取りが可能となる。また、本発明のコードパターン記録媒体は、目視用データと機械読取り用データがプリンタのみによる単一の記録方式で記録されるため、低廉なコストで製造可能となり、さらに同記録媒体の記録書換えのための機器のコスト低減にも繋がる。
【符号の説明】
【0023】
1 コードパターン記録媒体
2 情報表示領域
3 コードパターン
30 コードパターン読取システム
31 撮像部
32 判別部
33 欠損検出部
34 補完整形部
43a、43b、43c 抽出パターン
44a 欠損部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にプリンタにより印字記録可能な記録面が設けられ、前記記録面上に、プリンタにより光学読取り可能なコードパターンが記録されたコードパターン記録媒体であって、
前記コードパターンは、同一のコードが前記記録面の複数の領域に記録されたものであることを特徴とするコードパターン記録媒体。
【請求項2】
前記記録面は、書換え可能な記録材からなることを特徴とする請求項1記載のコードパターン記録媒体。
【請求項3】
前記コードパターンは、バーコードであることを特徴とする請求項1記載のコードパターン記録媒体。
【請求項4】
前記コードパターンは、二次元コードであることを特徴とする請求項1記載のコードパターン記録媒体。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか一項記載のコードパターン記録媒体から前記コードパターンを読取り、読取ったコードパターン中に欠損がある場合は、前記欠損を復元するコードパターン読取システムであって、
該システムは、前記記録面を撮影して画像として取り込む撮像手段と、
前記撮像手段で取り込まれた画像から前記複数の領域に記録された個々のコードパターンを抽出するパターン識別手段と、
前記パターン識別手段により抽出された個々のコードパターンに対し、パターン形状の欠損部分を抽出し、前記コードパターンの欠損領域を特定する欠損領域検出手段と、
検出された欠損領域に対して、当該欠損領域に対応する領域に欠損が存在しないコードパターンに基づいて、前記欠損部に相当するパターン形状を埋め込むパターン補完手段と、
を設けることにより、
欠損のないコードパターンを生成し、元の欠損のないコードを復元することを特徴とするコードパターン読取システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208586(P2012−208586A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72108(P2011−72108)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】