説明

コーナリフレクタアンテナ

【課題】反射板の大きさ、位置などの影響を受けやすいコーナリフレクタアンテナのインピーダンスマッチングが据付現場で手軽に行え、天井裏などの狭小場所においても取り付け可能な大きさに矮小化しても必要な受信特性が得られるようにしたコーナリフレクタアンテナを提供すること。
【解決手段】1/2波長ダイポールアンテナ1の背後に矩形平面の金属反射板をV字形に折り曲げてコーナリフレクタ3を設置し、1/2波長ダイポールアンテナ1に近接してディレクタ6を併設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーナリフレクタアンテナに関し、特に、天井裏の梁などの間に設置するのに適した小型で、かつ、指向性を持ち、受信の信頼性の向上を図る高利得なアンテナであって、かつ、その据付及び調整を簡易に行うことができ、動態管理に適するようにしたコーナリフレクタアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院やビルなど建物の天井裏(固定側)などにアンテナを配設し、また人体や車両等移動する移動体側に携行又は取り付けた微弱な電波を発信するRFIDタグによる動態管理や入退管理システムが提案されている。
この動態管理システムにおいて、RFIDタグには個別情報を予め入力し、固定側のアンテナとの間を、無線信号の送受信により情報を交換するようにしている。
この動態管理システムにおける無線信号の送受信は、特に限定されるものではないが、例えば、RFID(Radio Frequency Identification(電波方式認識)。本明細書において、「RFID」という。)が採用されている。
【0003】
ところで、従来RFID用アンテナとしてダイポールアンテナが汎用されている。このダイポールアンテナは量産され、安価に提供されているとともに比較的小型であるという利点がある。しかし、動態管理システムにおいては指向性を持った高利得の受信アンテナが臨まれているが、ダイポールアンテナは無指向性である。
このため、指向性が必要な場合は、ダイポールアンテナの信号を遮蔽したい側に、所定の大きさの平板やV字形の金属板をリフレクタとして配設して、ある程度の指向性を得るようにしている。
【0004】
しかしながら天井裏などにダイポールアンテナを設置する場合、天井裏の寸法には制限があり、アンテナ設置に理想のサイズにできないことが多く、また梁などの影響で該アンテナの受信特性が変動するので必要な受信特性が得られなかったり、据付場所の設定に時間を要したり、インピーダンスマッチング用のカップラーなどが必要になるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のダイポールアンテナの問題点に鑑み、反射板の大きさ、位置などの影響を受けやすいコーナリフレクタアンテナのインピーダンスマッチングが据付現場で手軽に行え、天井裏などの狭小場所においても取り付け可能な大きさに矮小化しても必要な受信特性が得られるようにしたコーナリフレクタアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のコーナリフレクタアンテナは、1/2波長ダイポールアンテナの背後に矩形平面の金属反射板をV字形に折り曲げて置いたコーナリフレクタアンテナにおいて、1/2波長ダイポールアンテナに近接してディレクタを併設したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、コーナリフレクタアンテナの開口面に、電磁波透射性カバーを配設することができる。
【0008】
また、電磁波透射性カバーの内面又は外面に、略1/2波長ディレクタを併設することができる。
【0009】
また、略1/2波長ディレクタを、1/2波長ダイポールアンテナとの間隔を調節可能に併設することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコーナリフレクタアンテナによれば、1/2波長ダイポールアンテナの背後に矩形平面の金属反射板をV字形に折り曲げて置いたコーナリフレクタアンテナにおいて、1/2波長ダイポールアンテナに近接してディレクタを併設することにより、天井裏等の狭小な設置場所においても、据付が簡易に行われ、かつ、現場の状況に合せた据付状態で簡単にマッチングを取ることができ、利得も3〜6dB程度改善される効果がある。
【0011】
また、コーナリフレクタアンテナの開口面に、電磁波透射性カバーを配設することにより、直接天井面や壁面に露出するようにして取り付ける場合でも体裁よく取り付けることができる。
【0012】
また、電磁波透射性カバーの内面又は外面に、略1/2波長ディレクタを併設することにより、インピーダンスの調整が容易に行われる。
【0013】
また、略1/2波長ディレクタを、1/2波長ダイポールアンテナとの間隔を調節可能に併設することにより、狭小な設置場所にあわせた高さが0.1〜0.2λ、長さが1.05〜1.2λ程度のコーナリフレクタアンテナにおいても同軸ケーブルとのマッチングをディレクタの調整にて簡易に取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明のコーナリフレクタアンテナの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図4に、本発明のコーナリフレクタアンテナの一実施例を示す。
リフレクタアンテナの理想形に近い大きさは、使用する電波の波長をλとすると、長さ4λ以上、高さ1.5λ以上必要とする。(図1において、長さ:L、高さ:H)
波長λ=1m(300MHz)の電波を使用した場合、リフレクタアンテナは非常に大きなものとなり、天井裏などの狭小空間に取り付けるには不適当となる。これを、取り付け可能なサイズに小さくし、必要な特性を得るためには、当然インピーダンスマッチングが必要となる。本発明では、これをコーナリフレクタアンテナにディレクタを付加することで必要な受信特性を得られるようにする。
【0016】
このコーナリフレクタアンテナAは、少なくともアンテナの放射素子にて電波を受ける1面のみを開口するようトラス形としたコンパクトサイズのコーナリフレクタ3と、このトラス形コーナリフレクタ3内でアンテナの固定放射素子が指向性を持つように放射エレメント取付座2を介して垂設した所定周波数用の1/2λのダイポールアンテナの放射エレメント1と、該放射エレメント1を装着した指向性アンテナの前面にディレクタ取付座7を介して設けたインピーダンス調整用のディレクタ6とより構成している。
【0017】
また、このディレクタ6と放射エレメント1との間隔を調節できるように、かつ、コーナリフレクタ3と放射エレメント1とディレクタ6の中心線を、図1〜図2に示すように、略同一平面上に配設するようにするとともに、該放射エレメント1には同軸ケーブル4が接続される。
【0018】
1/2λのダイポールアンテナの放射エレメント1は、図1に示すように、1/4λのエレメントを中央でボルトとナットで組付ける構造になっている。放射エレメント1は誘電体でモールドしたエレメントなので全長は、1/2λより10数%短く作られている。
この例では周波数303.8MHz用で、λ/2≒494mmに対し放射エレメント全長は430mmで、インピーダンス50Ω、定在波率1.5以下にチューニングされている。
【0019】
パラステックなディレクタ6は、特に限定されるものではないが、例えば、太さ12mmのアルミパイプで、長さはアンテナの放射エレメント1に等しいが又は数%程度短い長さとし、アンテナの放射エレメント1との間隔がスライド調整可能にブラケットで固定している。
【0020】
コーナリフレクタ3は、アルミ板を屈曲したもので、特にその大きさは限定されるものではないが、例えば、長さを550mm、高さを約150mmにしている。またコーナ部は取り付け易さを考慮して台形に折り曲げて構成している。
【0021】
次に、このコーナリフレクタアンテナAの取り付け方法を、図3〜図4に基づいて説明する。
この場合、図3は開口側から見た平面図で、図4は側面図で、1階地上側にRFIDタグがあり、梁H1、H2は金属製で、天井ボードCや床Fは電波を透過する部材で作られているものとする。
本発明のコーナリフレクタアンテナAは、図4に示すように、天井裏の梁H1の上にコーナリフレクタ3の開口面を地上側に向けて取り付ける。
ところで、この狭小な天井裏に取り付けるためには、矮小化したコーナリフレクタ3に、1/2λダイポールアンテナを取り付けると指向性は得られるが、チューニングしていない状態では利得は悪くなる。
【0022】
そこで、本発明ではディレクタ6と放射エレメント1との間隔を40〜70mm程度の範囲で調整するようにすることで、利得は約6dB、定在波率は約8から1.2程度に改善され、指向性はF/B比(図の開口側の受信電力とコーナ側からの受信電力比)で10dB以上が得られるようになる。
【0023】
ディレクタ6は、特に限定されるものではなく、放射エレメント1のブラケットを延長して取り付けてもよいし、リフレクタ板やカバーにブラケットを設けて取り付けてもよい。また調整後にそれぞれの相対位置が保てれば天井裏の部材に取り付けることもできる。
なお、カバーは特性上、無くてもよい。
【0024】
以上、本発明のコーナリフレクタアンテナについて、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のコーナリフレクタアンテナは、小型、高利得で指向性を持たせることで、受信の信頼性の向上を図れるという特性を有していることから、動態管理システムのRFIDの用途に好適に用いることができるほか、例えば、電波を利用して通信する通信設備の指向性アンテナの用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のコーナリフレクタアンテナの一実施例を示し、コーナを上に、開口部を下にして図2の切断線を見た断面図である。
【図2】カバーの一部及びカバーの取り付けボルトを省略した側面図である。
【図3】本発明のコーナリフレクタアンテナの取り付け例を下面側から見た説明図である。
【図4】コーナリフレクタアンテナの取り付け側面図である。
【符号の説明】
【0027】
A コーナリフレクタアンテナ
1 放射エレメント
2 放射エレメント取付座
3 コーナリフレクタ
4 同軸ケーブル
5 カバー
6 ディレクタ
7 ディレクタ取付座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1/2波長ダイポールアンテナの背後に矩形平面の金属反射板をV字形に折り曲げて置いたコーナリフレクタアンテナにおいて、1/2波長ダイポールアンテナに近接してディレクタを併設したことを特徴とするコーナリフレクタアンテナ。
【請求項2】
コーナリフレクタアンテナの開口面に、電磁波透射性カバーを配設したことを特徴とする請求項1記載のコーナリフレクタアンテナ。
【請求項3】
電磁波透射性カバーの内面又は外面に、略1/2波長ディレクタを併設したことを特徴とする請求項1又は2記載のコーナリフレクタアンテナ。
【請求項4】
略1/2波長ディレクタを、1/2波長ダイポールアンテナとの間隔を調節可能に併設したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のコーナリフレクタアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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