説明

コーナーパッド

【課題】 絵画の厚みの違いに対応し、繰り返し使用を可能にする。
【解決手段】 鞘本体1と、鞘本体1に延設した第1及び第2のカバー2,3との組み合わせからなっている。鞘本体1は、方形の基板4の周辺の2辺に互いに直交する立上り部5a,5bが形成され、残りの2辺及び上面が開放された有底の筐体であり、基板4は、開放された2辺に跨って一定範囲が斜め方向に削去されて実質的に略3角形に形成されている。第1及び第2のカバー2,3は、鞘本体1の上面開口を開閉するものであり、鞘本体1に残された互いに直交する2辺の立上り部5a,5bを延長させて上方に一定高さに立ち上がらせた平板部分であり、その板面には、一定の範囲にわたって鞘本体1の立上り部5a,5bの上縁と平行に各カバー2,3の板面を折曲させる複数のヒンジ部6a,6bがそれぞれ直線状に並列に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絵画の輸送の際し、絵画の四隅に取り付けて絵画の破損、損傷を有効に保護するコーナーパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
絵画の輸送は、展覧会への出品、あるいは逆に展覧会からの撤去の際に必要である。そして絵画の輸送の際には、運搬時に受ける外部からの衝撃から絵画や額縁を保護するための対策が必要である。通常その保護対策としては絵画の梱包のほか、簡単には額縁の四隅にコーナーパッドを取り付けるだけでも傷つきやすい額縁の角を有効に保護することができる。
【0003】
しかしながら展覧会に出品された絵画の運搬のケースを調査した結果では必ずしも額縁の四隅にコーナーパッドを取り付けるだけの対策すら有効に行われていないようである。新国立美術館、東京都美術館に出品された絵画の年間約7万件(したがって搬入、搬出された絵画の総数14万件)の例をみると、絵画の四隅にパッドが取り付けられていたのは14万件中、約30%に当たる42000件であったという報告がある。今まで展覧会に出品された絵画について有効な保護が講じられていない理由については様々な事情が考えられるが、その理由の1つに、コーナーパッドの材質、構造に問題があったのではないかと考えられる。
【0004】
従来よりコーナーパッドはダンボール紙製のものが殆どであった。特許文献1には、従来例として図15に示す中空2等辺3角形の中空体に組立てたコーナーパッドの構造を取り上げ、この構成のコーナーパッドではコーナーパッドそのものにて保護すべき梱包体である平板に筋状の傷を生じさせるという問題点を指摘し、平板にかかる局部的な過大荷重を緩和して平板の上下面に筋状の傷を生じることを有効に防止できるコーナーパッドを提案している。
【0005】
改良されたコーナーパッドは、図16に示すように上下の第1の上下壁部31の前縁32から延出部33を延出して梱包すべきパネルの上下面に添設させるとともに延出部33の中央に第1の上下壁部31の前縁32に平行な段押し34を内側方からプレス加工により突設したというものであるが、構造が改良されたといっても、略正方形の単一のダンボール紙などの1枚のボール紙シートを折り曲げて平面視直角二等辺三角形状の定型のコーナーパッドに組立てるという点においては基本的に従来構造と同じである。
【0006】
ところで、絵画、例えば油絵は通常、枠に張られるか、あるいは木の板か厚紙に接着されたキャンバスに描かれ、絵画の大きさについては号数が0から500号まであってその縦横の寸法はさまざまであり、さらに額縁に収められることもあって、その厚みは一定ではない。本発明においては、枠に張られるか、木の板か厚紙に接着されたキャンバス及び額縁に収められたキャンバスを含めて絵画と称している。
【0007】
然るにボール紙シートを折り曲げて一定形状に組立てられたコーナーパッドは、絵画の縦横の寸法の違い(号数の違い)には同じ大きさ、同じ形状で対応できるにしても、単一の種類のコーナーパッドでは、厚みの違いには対応することができず、厚みが違う多種類のコーナーパッドを準備しておかなければならない。もっとも、コーナーパッドにボール紙シートを用いるという発想は、予め一定形状に裁断されたボール紙シートを折り曲げるだけで組み立てできるため構造は簡単ではあるものの重要な絵画の破損防止の機能としては必ずしも十分ではなく、また使用後は再利用されることなく殆どが廃棄処分されるため、資源やエネルギーに無駄が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−40020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、ダンボール紙などのボール紙シートを用いた絵画輸送用のコーナーパッドは、絵画の厚みごとに多種類を準備しなければならず、しかも絵画の破損防止の機能としては必ずしも十分ではなく、また使用後は再利用されることなく殆どが廃棄処分されるため、資源やエネルギーに無駄が生じるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のコーナーパッドにおいては、上面が開放された鞘本体と、該鞘本体の上面開口を開閉可能に覆う第1及び第2のカバーとの組合わせからなり、鞘本体の底部を絵画の表面隅部に、両立上り部を絵画隅部の2面の厚み部分にあてがい、本体の両立上り部に延設された各カバーを絵画裏面上に折り曲げさらに両カバー部分を互いに接合して絵画の四隅に取り付けるものである。特にカバー部分を多段に折曲可能として絵画の厚みの違いに対応できる点を最大の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるコーナーパッドにおいては、繰り返し使用が可能であり、絵画の厚みの違いにも自由に対応でき、また、鞘本体と、カバーとにプラスチックボード、特にハニカム構造又は押し出し成形によるストロータイプのプラスチックボードを用いることによって、軽量にもかかわらず強靭で安定性に優れ、カバーの多段折り曲げ構造を簡単に実現でき、さらに絵画の隅部各面をクッションブロックで支えて外部から加えられる衝撃から絵画を有効に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施例を示すコーナーパッドを開いた状態を示す図である。
【図2】コーナーパッドの第1のカバーを閉じた状態を示す図である。
【図3】さらに第1のカバーの上に第2のカバーを折り重ねた状態を示す図である。
【図4】第1のカバーの上に第2のカバーを折り重ねた状態を鞘本体の基板外面側から見た図である。
【図5】(a)、(b)は絵画の厚みによって第1のカバーの折り曲げ位置が変化する状態を示した図、(c)はクッションで絵画を支えた状態を示す図である。
【図6】本発明によるコーナーパッドの展開図である。
【図7】(a)はコーナーパッドに用いるハニカム構造のプラスチックボードの部分拡大図、(b)は(a)の縦断面図である。
【図8】本発明のコーナーパッドを絵画の四隅に取り付けた状態を示す絵画の正面図である。
【図9】本発明のコーナーパッドを絵画の四隅に取り付けた状態を示す絵画の裏面図である。
【図10】(a)は隔離板の表面図、(b)は裏面図である。
【図11】(a)は絵画の表面を隔離板で覆った状態を示す図、(b)は(a)の平面図である。
【図12】(a)は保管時に2個のコーナーパッドを一体に結合した状態を示す図、(b)は、4個のコーナーパッドを組み合せた状態を示す図である。
【図13】(a)はコーナーパッドに用いる押し出し成形によるストロータイプのプラスチックボードの部分拡大図、(b)は(a)の縦断面図である。
【図14】ストロータイプのプラスチックボードを用いたコーナーパッドの展開図である。
【図15】従来のコーナーパッドの1例を示す図である。
【図16】特許文献1に記載されたコーナーパッドの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、鞘本体と、鞘本体の基板の立上り部2面より上方に延設した第1及び第2のカバーとの組み合わせからなるコーナーパッドである。以下、本発明の実施の形態をハニカム構造のプラスチックボードを用いた場合の例について説明する。
【0014】
(コーナーパッドの基本構成)
図1において、本発明は、鞘本体1と、鞘本体1に延設した第1及び第2のカバー2、3との組み合わせからなるコーナーパッド12である。鞘本体1は、方形の基板4の周辺の2辺に互いに直交する立上り部5a、5bが形成され、残りの2辺及び上面が開放された有底の筐体である。なお、図1に示すように鞘本体1の基板4は、開放された2辺に跨って一定範囲が斜め方向に削去され、実質的に1面が開放された略3角形の立体に形成されている。
【0015】
第1及び第2のカバー2、3は鞘本体1に残された2辺の立上り部5a、5bを延長させて上方に一定高さに立ち上がらせた平板部分である。したがって、第1及び第2のカバー2、3は互いに直交して鞘本体1に取り付けられる。図1では、第1及び第2のカバー2、3と立上り部5a、5bとの関係をわかりやすく示すため、第1及び第2のカバー2、3を外側に倒した状態を示している。
【0016】
また、第1及び第2のカバー2,3の板面には一定の範囲にわたって鞘本体1の立上り部5a、5bの上縁と平行に各カバーの板面を折曲させる複数のヒンジ部6a、6a、・・・、6b、6b、・・・がそれぞれ直線状に並列に形成されている。鞘本体1の内面にはクッションが取り付けられている。すなわち、基板4の内底面にはクッションシート7が貼り付けられ、周辺2辺の直交する立上り部5a、5bの内面にはそれぞれクッションシート7に比べて相対的に肉厚のクッションブロック8a、8bが取り付けられ、第1のカバー2の内面には、クッションブロック8a、8bに比べて軟らかく緩衝性に富んだクッションブロック9が取り付けられている。
【0017】
クッションシート7及びクッションブロック8a、8bおよび9は例えば合成樹脂発泡体であり、搬送すべき絵画の隅部の表面並びに厚み部分を保護するものであり、第1のカバー2の下面のクッションブロック9は、絵画の厚みの違いに追従してクッションの厚みを変化させるものである。
【0018】
なお、コーナーパッドの組立ての際には、図2に示すように、鞘本体1の基板4のクッションシート7上に絵画Pを受入れ、絵画Pのコーナーを直交する立上り部5a、5bのクッションブロック8a、8bに支えた状態で先ず第1のカバー2を絵画の厚みに対応する位置のヒンジ部6aで折り曲げて先に鞘本体1の上面開口上に折り曲げ、ついで第1のカバー2上に第2のカバー3を第1のカバー2の厚みを含めた絵画Pの厚みに対応する位置のヒンジ部6bで折り曲げて図3のように両カバー2,3を上下に重ねて固定する。
【0019】
第1のカバー2の外面及び第2のカバー3の内面には折り重ねた両カバー2,3を脱着可能に固定するため、それぞれ面ファスナーSF1,SF2が取り付けられている。面ファスナーSF1,SF2はいずれが雄型または雌型であってもよい。なお、第2のカバー3の内面の面ファスナーSF2は、方形で相対的に小型の形状のものでよいが、第1のカバー2の外面の面ファスナーSF1は、折り曲げ位置のずれに対応して相対的に長く、しかも傾斜状に取り付けておく必要がある。
【0020】
図4は、両カバー2,3を上下に重ねて固定した状態を鞘本体1の基板4側から見た図である。基板4の外面には、面ファスナーSF4と、SF5aとSF5bとが取り付けられている。面ファスナーSF4は、基板4のコーナーから開口方向に向けて斜め方向に取り付けられたものであり、面ファスナーSF5aとSF5bとは、面ファスナーSF4を挟んで面ファスナーSF4に直交してクロス状に取り付けられたものである。この実施例においては、面ファスナーSF4に雌型、面ファスナーSF5aとSF5bのいずれか1方が雄型、この実施例ではSF5aが雌型、SF5bに雄型を用いた例を示している。面ファスナーSF4(雌型)は、後述するように隔離板の面ファスナーSF3(雄型)に貼り付けるためのものであり、面ファスナーSF5a(雌型)、SF5b(雄型)は、不使用時にコーナーパッド12の対を互いに結合して保管するためのものである。なお、図3に明らかなように互いに直交する立上り部5a、5bの外面に跨って補強並びに養生層10が貼り付けられ、鞘本体1を補強して一定形状に保形し、且つ運搬の際にコーナーパッドが建物の床などに触れても床を傷つけることがないように対応している。
【0021】
図5に、絵画の厚みの違いに対応する要領を示す。図5(a)は厚みが薄い絵画の場合、図5(b)は厚みが厚い絵画の場合である。厚みが相対的に薄い絵画の場合には、図5(a)のように第1のカバー2は、立上り部5aに近い側のヒンジ部6a1から折れ曲げられ、絵画の厚みH1に対応し、厚みが相対的に厚い絵画の場合には、図5(b)のように第1のカバー2は、立上り部5aから離れた側のヒンジ部6anで折れ曲がって絵画の厚みH2(H2>H1)に対応させる。ここではクッションブロック9の厚みを無視してH1、H2を表示した。
なお、クッションブロック9は、図5(c)に示すように絵画Pの裏面側にあてがわれ、カバー2に抑えられ、絵画Pの形状になじんで圧縮変形して絵画を支え、衝撃から保護する。
【0022】
本発明によるコーナーパッドの展開形状を図6に示す。鞘本体1の基板4の直交する2辺にそれぞれ立上り部5a、5bの形成部分を確保し、それそれの外縁から延長方向に第1および第2のカバー部2、3の形成部分が一体に形成され、基板4上にはクッションシート7、両立上り部5a、5bにはクッションブロック8a、8b、第1のカバー2にはクッションブロック9をそれぞれ予め貼り付けておく。
【0023】
組立てに際しては、基板4と各立上り部5a及び5bとの各境界線L1、L2に沿って折曲し、直角に立ち上げられた両立上り部5a、5bの外面に跨って補強用外壁及び養生層10を貼り付けることによって基板4に対し、各立上り部5a及び5bを垂直姿勢に保形して定型に組立てる。なお、補強用外壁及び養生層10は、養生層の面を外側にして張り付けるのは言うまでもない。
【0024】
(コーナーパッドの実施例)
本発明において、鞘本体1及び鞘本体1の2辺の立ち上り部5a、5bから延設した第1及び第2のカバー2,3にハニカム構造のプラスチックボードを用いた例である。プラスチックボードのハニカム構造は、図7(a)、(b)に示すように外面シート11aと、内面シート11b間に6角形の稠密構造のハニカムのマトリックス11を挟んでサンドイッチ構造に構成したものである。ハニカム構造のプラスチックボードは、望ましくはポリプレンハニカムボードであり、ポリプレンのハニカムボードとして岐阜プラスチック工業株式会社製のTECCELL(登録商標)が好適である。このハニカムボード(TECCELL)には曲げ剛性1.5〜3倍、曲げ強度2〜3倍、ASTM−C393の試験にて1000g/m2のプラダン比の特性が得られている。
【0025】
実施例においては、鞘本体1の2辺の立上り部5a、5bの外面には、鞘本体1と同じ材質のハニカムボードによる補強壁を貼り付けて鞘本体1を定型に保形すると共に強度を確保し、さらに補強壁の外面に緩衝シートを貼り付けてコーナーパッドの補強並びに養生層10を構成している。
【0026】
なお、ポリプレンのハニカムボード(TECCELL(登録商標))を用いることによって基板4と両立上り部5a、5bとの境界の折曲線L1、L2並びに第1及び第2のカバー2、3の板面に形成する折り曲げ用の複数のヒンジ部6a、6bは、ボードの外面シート11aを残し、内面シート11b側からハニカムのマトリックス11の列を単に溶融させ、これを除去することにより多段の熱罫線が形成され、残された外面シート11aがヒンジ部となって各ヒンジの列ごとに容易に屈曲できる。
【0027】
本発明において、寸法210×210×75mmのコーナーパッドで、第1及び第2のカバーのシート面に立上り部の上縁からヒンジ部として12mm間隔で5本の熱罫線を引いたものを用いたところ、厚さが50mmから80mmの絵画に対応することができた。
【0028】
(絵画の梱包要領)
次に本発明によるコーナーパッド12を用いて絵画Pを梱包する要領を説明する。本発明によるコーナーパッド12は、図8に示すように絵画の四隅に取り付けるが、取り付けに際しては、鞘本体1の基板4の外面を絵画Pの表面(図が描かれた面)S側に向け、絵画Pの隅の2辺をコーナーパッド12の2辺の立上り部にあてがう。一方、図9(a)に示すように絵画Pの裏面B側は、前述の図1〜図3の要領で先ず第1のカバー2を絵画Pの裏面側に折曲し、その上に第2のカバー3を押し付けて第1のカバー2の上に折り重ね、第1のカバー外面の面ファスナーFS1に第2のカバー3の面ファスナーFS2を接合して両カバー2、3を結合させる。
【0029】
これによって第1のカバー2のクッションブロック9が圧縮され、コーナーパッド12は絵画から落下することなく絵画Pに定着する。同様の操作を絵画Pの四隅に対して行う。さらに、絵画Pの表面Sには隔離板13をあてがう。隔離板13には、図10(a)に示すように表面側13Sには何もなく、四隅は運搬時に建物の床などに接触してもこれを傷つけることがないように曲面に加工されている。一方、裏面側13Bには、図10(b)に示すようにコーナーパッドの基板4に付された面ファスナーSF4(雌型)に対応して雄型の面ファスナーSF3が斜め方向に取り付けられている。
【0030】
この面ファスナーSF3を鞘本体1の基板4の外面に予め取り付けられた面ファスナーSF4に貼り付け、図11(a)に示すように絵画Pの表面Sを隔離板13で覆い、絵画Pに隔離板13を定着させた状態で搬送を行う。隔離板13は、面ファスナーによって絵画Pの四隅のコーナーパッド12に取り付けられ、絵画Pの表面と、隔離板13の板面との間には、一定の緩衝距離(約1cm)が確保され、隔離板13の板面に加えられるかもしれない衝撃から絵画を有効に保護する。面ファスナーSF3が斜め方向に取り付けられているのは、絵画の大きさの大小に適用するためである。図10(b)に隔離板13に適用できる絵画の大きさの関係を示す。隔離板13に斜め方向に取り付けられた面ファスナーSF3の長さの範囲内でコーナーパッド12の取付位置を調整して最大PmaxからPminの範囲内で絵画の大きさの違いに対応することができる。
【0031】
本発明によれば、絵画の搬送中に受けるかもしれない外部からの衝撃から絵画の表面はもとより四隅の角を有効に保護し、また、搬送中に建物の床上を引きずって絵画が運ばれることがあっても、絵画の四隅を覆うコーナーパッド12の鞘本体1の外面に取り付けられた補強並びに養生層10の緩衝によって建物の床を傷つけることがない。
【0032】
搬送先では、絵画から隔離板13を取り外し、絵画の四隅からコーナーパッドを取り外す。取り外した4個のコーナーパッドは回収し、あるいは搬入先で保管して繰り返し使用するが、回収あるいは保管に際しては、図12(a)に示すように第1のカバー2を折り曲げ、その外面に第2のカバー3を折り重ねた状態で第1のコーナーパッド12aと、第2のコーナーパッド12bとを互いに向き合わせれば、それぞれのコーナーパッドの基板外面に取り付けられた一方の面ファスナーSF5a(雄型)と、他方の面ファスナーSF5b(雌型)とが自ずから向き合って互いに貼り付けられる。さらに互いに結合されたコーナーパッド12a、12bの2組を図12(b)のように上下に交互に嵌め合わせれば、合計4個のコーナーパッドを1組としてコンパクトに保管することができる。
【0033】
以上実施例においては、鞘本体1及び鞘本体1の2辺の立ち上り部5a、5bから延設した第1及び第2のカバー2,3にハニカム構造のプラスチックボードを用いた例を説明した。ハニカム構造のプラスチックボード(岐阜プラスチック工業株式会社製のTECCELL(登録商標))によれば軽量で保形性に優れ、強靭なコーナーパッドが得られるが、必ずしもハニカム構造のプラスチックボードに限らず、押し出し成形によるストロータイプのプラスチックボードを用いることによってより構造を簡略化でき、しかも成形性に優れたコーナーパッドが得られる。
【0034】
押し出し成形によるストロータイプのプラスチックボードは、図13(a)、(b)に示すように外面シート28aと、内面シート28b間を一定間隔ごとに並列方向に配列された多列の隔壁28によって支えた構造を有するものである。図14に押し出し成形によるストロータイプのプラスチックボードを用いたコーナーパッドの展開図を示す。この場合にも鞘本体21の基板24の直交する2辺にそれぞれ立上り部25a、5bの形成部分を確保し、各立上り部25a、25bの外縁からその延長方向に向けて第1および第2のカバー部2,3の形成部分を形成されるのは図6のハニカム構造のプラスチックボードを用いる場合と全く同じである。
【0035】
図示は省略するが、基板24上にはクッションシート、両立上り部25a、25bにはクッションブロック、第1のカバー22にはクッションブロックをそれぞれ貼り付けるのも図6のハニカム構造のプラスチックボードを用いる場合と全く同じである。この実施例においても、基板24と両立上り部25a、25bとの境界の折曲線L1、L2並びに第1及び第2のカバー22、23の板面に折り曲げ用の複数のヒンジ部26a、26bを形成するが、押し出し成形によるストロータイプのプラスチックボードの場合に、境界の折曲線L1、L2に沿って板面を傷つけておけば、その線に沿って隔壁28と平行方向あるいは直角方向に板面を折り曲げることができる。
【0036】
また多段のヒンジ部26a、26bの形成に際しては、ボードの裁断の際に、ヒンジ部26a、26bは、折曲線の一部範囲を打ち抜き、折曲線に沿ったスリット27を形成しておくことによって、多段の折曲線を容易に形成することができる。コーナーパッドの組立て並びに絵画の梱包要領は先の実施例と同じであるため、その説明は省略する。コーナーパッドの材料に押し出し成形によるストロータイプのプラスチックボードを用いることによって、強度、絵画の保形性を損なうことなく更に軽量化を図ることができ、簡易なコーナーパッドとして好適である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によるコーナーパッドによれば、展覧会への絵画の出品、あるいは逆に展覧会からの絵画の撤去の際に用いるほか、絵画に限らず、太陽光パネルや建築用窓枠などとしった精密機器パネル、型枠、建材、その他平板状の物品の輸送にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 鞘本体、2,3 カバー、4 基板、5a,5b 立上り部、6a,6b,6a1,6an ヒンジ部、7 クッションシート、8a,8b,9クッションブロック、10 補強並びに養生層、SF1〜SF4 面ファスナー、11 ハニカムのマトリックス、11a,28a 外面シート、11b,28b 内面シート、12 コーナーパッド、13 隔離板、21 鞘本体、22,23 カバー、24 基板、25a,25b 立上り部、26a,26b ヒンジ部、27 スリット、28 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘本体と、鞘本体に延設した第1及び第2のカバーとの組み合わせからなるコーナーパッドであって、
鞘本体は、方形の基板の周辺の2辺に互いに直交する立上り部が形成され、残りの2辺及び上面が開放された有底の筐体であり、
第1及び第2のカバーは、鞘本体の上面開口を開閉するものであり、鞘本体に残された互いに直交する2辺の立上り部を延長させて上方に一定高さに立ち上がらせた平板部分であり、
第1及び第2のカバーの板面には、一定の範囲にわたって鞘本体の立上り部の上縁と平行に各カバーの板面を折曲させる複数のヒンジ部がそれぞれ直線状に並列に形成され、
鞘本体の基板は、開放された2辺に跨って一定範囲が斜め方向に削去されて実質的に略3角形に形成されているものであることを特徴とするコーナーパッド。
【請求項2】
前記基板の内底面にはクッションシートが貼り付けられ、周辺2辺の直交する立上り部の内面にはそれぞれクッションシートに比べて相対的に肉厚のクッションブロックが取り付けられ、第1のカバーの内面には、前記クッションブロックに比べて軟らかく伸縮性に富んだクッションブロックが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のコーナーパッド。
【請求項3】
前記第1のカバーは、絵画の厚みに対応する位置のヒンジ部で折り曲げて先に鞘本体の上面開口上に折り曲げられるものであり、
第2のカバーは、第1のカバーの厚みを含めた絵画の厚みに対応する位置のヒンジ部で折り曲げて第1のカバー上に折り重ねるものであり、
第1のカバーと第2のカバーとは面ファスナーによって脱着可能に接合されるものであることを特徴とする請求項1に記載のコーナーパッド。
【請求項4】
鞘本体は補強並びに養生層を有し、
補強並びに養生層は、鞘本体の互いに直交する立上り部の外面に跨って貼り付けられ、鞘本体を補強して一定形状に保形し、且つ運搬の際にコーナーパッドが建物の床の傷つきを防止するものであることを特徴とする請求項1に記載のコーナーパッド。
【請求項5】
鞘本体の2辺の立ち上り部から延設した第1及び第2のカバーは、ハニカム構造のプラスチックボードであり、
プラスチックボードのハニカム構造は、外面シートと、内面シート間を6角形の稠密構造のハニカムのマトリックスで挟んでサンドイッチ構造に構成したものであり、基板と両立上り部との境界線並びに第1及び第2のカバーの板面に形成する折り曲げ用の複数のヒンジ部は、ボードの外面シートをヒンジ部として残し、内面シート側からハニカムのマトリックスの列を溶融させたものであることを特徴とする請求項1に記載のコーナーパッド。
【請求項6】
鞘本体の基板の2辺の立ち上り部から延設した第1及び第2のカバーは、押し出し成形によるストロータイプのプラスチックボードであり、外面シートと、内面シート間を一定間隔ごとに並列方向に配列された多列の隔壁によって支えた構造を有し、第1及び第2のカバーの板面に形成する折り曲げ用の複数のヒンジ部は、ボードの裁断の際に、ヒンジ部の折り曲げ線の一部範囲を打ち抜くことによって形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のコーナーパッド。
【請求項7】
鞘本体の基板の外面には、絵画の表面を覆う隔離板を脱着可能に取り付ける面ファスナーを設けたことを特徴とする請求項1に記載の記載のコーナーパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−218772(P2012−218772A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86149(P2011−86149)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(507022983)ヤマト包装技術研究所株式会社 (19)
【Fターム(参考)】