説明

コーナ材及びそれを用いた外壁の施工方法

【課題】外壁の室内側の入隅コーナ部の断熱仕上げ等を能率良く施工するのに役立つコーナ材及びそれを用いた外壁の施工方法を提供する。
【解決手段】直角に交わる第1、第2の外壁パネルA1、A2の室内側の入隅コーナ部に形成される前記パネル間の隙間Eに配される長尺のコーナー材11であって、コーナー材11は、第1の外壁パネルA1の室内側の面材3に添設される第1の平板部12aと、第2の外壁パネルA2の室内側の面材3に添設される第2の平板部12bとからなる内角が略90度で屈曲するアングル状の基部12、基部12の外角を二等分する向きにのび前記隙間Eに室内側から挿入可能な鍔部13、及び前記鍔部13の両面に固着されかつ圧縮変形により室内側からの前記隙間Eに挿入できかつ直角で交差する前記各外壁パネルの室内側の面材3の端面に当接する断熱材14を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁の室内側の入隅コーナ部の断熱仕上げ等を能率良く施工するのに役立つコーナ材及びそれを用いた外壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5には、工業化住宅1の一例を示す平面図である。前記住宅1は、予め定められたモジュールの整数倍の幅に規格化された高強度の大型の外壁パネル2を並べて外壁Wが形成される。
【0003】
図6には、代表例として、上記住宅1の室内i側に入隅を形成するコーナ部C1ないしC6のうち代表例としてコーナ部C1の拡大断面図を示す。前記コーナ部C1は、第1の外壁パネルA1と、この第1の外壁パネルa1と直角に交わる第2の外壁パネルA2と、これらの間に配されたコーナ部材Bとで構成されている。
【0004】
前記第1、第2の外壁パネルA1、A2は、それぞれ断面コ字状の枠材2aが矩形に枠組みされた枠組2と、該枠組2の室内i側に添設された面材3と、前記枠組2に木質下地5を介して屋外側に添設された外装材4とを含んで構成される。
【0005】
前記枠組2の内部には、例えばロックウール等の断熱材6が充填される。
【0006】
また、前記室内i側の面材3は、異質材料が積層された多層構造をなし、例えば、最も室内側に配される石膏ボード3aと、最も屋外側に配されるパーティクルボード3cと、これらの間に配された断熱材としてのポリスチレンフォーム3bとから構成される。
【0007】
なお、各パネルA1、A2の建て込み時のこじれや衝合等を防止するために、面材3の石膏ボード3aの室内側の角部は面取りされている。このため、直角に交わる第1、第2の外壁パネルA1、A2の室内i側の入隅コーナ部eには、パネルA1、A2間に隙間Eが形成される。
【0008】
また、前記コーナ部材Bは、第1の外壁パネルA1の枠組2に添設される断面略コ字状の枠材7aと、第2の外壁パネルA2の枠組2に添設される枠材7bと、各枠材7a、7bに前記木質下地5及び取付金具8を介して支持されるコーナ外装材9とを含んで構成される。
【0009】
なお、枠材7a、7b間にも、ロックウール等の断熱材6が配される。これにより、コーナ部C1において、断熱材6は、第1の外壁パネルA1、コーナ部材B及び第2の外壁パネルA2に亘って連続して配される。なお、他のコーナ部C2ないしC6も略同様の構成を具える。
【0010】
また、室内側の入隅コーナ部eには、コーナ材10が配される。該コーナ材10は、第1の外壁パネルA1の室内側の面材3に添設される平板部10aと、第2の外壁パネルA2の室内側の面材3に添設される平板部10bとからなる内角が略90度で屈曲するアングル状の部材で形成されている。
【0011】
このようなコーナ材10は、面取りされた石膏ボード3a、3a間の隙間Eを閉じ、入隅コーナ部eに例えば鋭なエッジを形成するため、後のクロス貼り作業を見栄え良く仕上げるのに役立つ。
【0012】
関連する技術としては、次のものがある。
【0013】
【特許文献1】特開平9−302888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来のコーナ部の構造では、断熱材6がコーナ部を囲むように連続して配置されているとはいえ、室内側の面材3、3は、隙間Eによって途切れる。このため、前記隙間Eの部分の断熱性能が低下する傾向がある。このような断熱性能の低下は、例えば、クロスが貼られた室内側の入隅コーナ部eに局部的な結露等を生じさせるおそれがあった。
【0015】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、コーナー材を、内角が略90度で屈曲するアングル状の基部と、この基部の外角を二等分する向きにのび前記隙間に室内側から挿入可能な鍔部と、鍔部の両面に各外壁パネルの室内側の面材の端面に当接しうる断熱材とを含めて構成することを基本として、パネル間の隙間部分の断熱性能の低下を有効に防止しうるコーナ材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のうち請求項1記載の発明は、直角に交わる第1、第2の外壁パネルの室内側の入隅コーナ部に形成される前記第1、第2の外壁パネル間の隙間に配される長尺のコーナー材であって、前記コーナー材は、第1の外壁パネルの室内側の面材に添設される第1の平板部と、第2の外壁パネルの室内側の面材に添設される第2の平板部とからなる内角が略90度で屈曲するアングル状の基部、前記基部の外角を二等分する向きにのび前記隙間に室内側から挿入可能な鍔部、及び前記鍔部の両面に固着されかつ圧縮変形により室内側からの前記隙間に挿入できかつ直角で交差する前記各外壁パネルの室内側の面材の端面に当接する断熱材を含むことを特徴とする。
【0017】
また請求項2記載の発明は、前記断熱材は、鍔部の自由端側を露出させることなく前記鍔部を被覆する請求項1記載のコーナ材である。
【0018】
また請求項3記載の発明は、前記断熱材は、横断面において、基部側から鍔部の自由端側に向かって拡幅する略扇状をなす請求項1又は2記載のコーナ材である。
【0019】
また請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のコーナ材を用いた外壁の施工方法であって、直角に交わる第1、第2の外壁パネルを隙間を介して建て込み室内側の入隅コーナ部を形成する工程と、前記コーナー材の断熱材を圧縮変形させながら室内側から前記隙間内に挿入することにより、前記基部の第1の平板部及び第2の平板部を、第1の外壁パネル及び第2の外壁パネルの各室内側の面材に添着させるとともに、前記断熱材を各外壁パネルの室内側の面材の端面に当接させる工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るコーナ材は、第1の外壁パネルの室内側の面材に添設される第1の平板部と、第2の外壁パネルの室内側の面材に添設される第2の平板部とからなる内角が略90度で屈曲するアングル状の基部を具える。従って、コーナ材は、これまでと同様、入隅コーナ部において、各パネル間の隙間を閉じ、後のクロス貼り作業を見栄え良く仕上げるのに役立つ。
【0021】
また、本発明のコーナ材は、基部の外角を二等分する向きにのび前記隙間に室内側から挿入可能な鍔部と、鍔部の両面に固着されかつ圧縮変形により室内側からの前記隙間に挿入できかつ実質的に直角で交差する前記各外壁パネルの室内側の面材の端面に当接する断熱材とを含む。従って、パネル間の隙間部分の断熱性能の低下を防止し、室内側の入隅コーナ部の隅角等に局部的な結露等が発生するのを効果的に防止しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態のコーナ材11の断面図、図2は、その斜視図を示す。また、図3には、本実施形態のコーナ材11を図6に示した前記住宅1のコーナ部C1に装着した部分断面図、図4はその要部拡大図が示される。なお、第1の外壁パネルA1、第2の外壁パネルA2及びコーナ部材Bについては、従来と同一の構成であるので、ここでの説明は省略する。
【0023】
図において、本実施形態のコーナ材11は、直角に交わる第1、第2の外壁パネルA1、A2の室内i側の入隅コーナ部eに形成されるパネル間の隙間Eに配される長尺体として形成され、図1の断面で長手方向に連続してのびている。
【0024】
具体的に述べると、コーナー材11は、基部12と、鍔部13と、断熱材14とから構成される。
【0025】
前記基部12は、第1の外壁パネルA1の室内側の面材3(この例では最も室内側に配される石膏ボード3a)に添設される第1の平板部12aと、第2の外壁パネルA2の室内側の面材3(この例では最も屋内側に配される石膏ボード3a)に添設される第2の平板部12bとからなる内角αが略90度で屈曲するアングル状に形成される。
【0026】
また、各平板部12a、12bの屋外側の面には、例えば外面が離型紙で覆われた粘着部15などが予め固着されるのが好ましい。
【0027】
さらに、本実施形態において、各平板部12a、12bには、図2に示されるように、複数の孔16が形成されている。この孔16は、接着剤で基部12を覆うようにクロス等が貼り付けられる場合に、接着剤を溜める接着剤溜まりとして有効に機能する。
【0028】
前記鍔部13は、図1に示されるように、基部12の外角βを二等分する向きにのび前記隙間Eに室内側から挿入可能な厚さtで形成されている。つまり、鍔部の厚さtは、前記隙間Eの寸法Tよりも小さく形成される。なお、鍔部13は、本実施形態では、一定厚さtで形成されるが、このような態様に限定されるものではない。
【0029】
鍔部13と基部12とは、例えば樹脂、好ましくは剛性、加工性、耐衝撃性及び曲げ疲労性など機械的特性のバランスに優れるABS樹脂等の成形品が好ましい。とりわけ、基部12と鍔部13とは、予め一体に形成されるのが良い。これは、低コストでコーナ材11を製造するのに役立つ。
【0030】
前記断熱材14は、鍔部13の両面に固着されるとともに、図1に示されるように、鍔部13の自由端13eを露出させることなく該自由端13eを覆うように鍔部13に固着されている。
【0031】
前記断熱材14としては、例えば熱伝導率が0.050(W/mk)未満の断熱性能を有するものが望ましい。また、断熱材14は、例えばポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム又はポリエチレンフォーム等のように比較的大きな圧縮変形が可能な発泡樹脂材料が好ましい。
【0032】
さらに、本実施形態の断熱材14は、図1に示されるように、その横断面が、基部12側から鍔部13の自由端13e側に向かって幅FW(この幅は、図1の断面における鍔部13の長手方向と直角方向に測定される)が漸増する略扇状に形成されている。また、この断熱材14の幅FWの最大寸法は、前記隙間Eの寸法Kよりも大きく形成されている。
【0033】
以上のように構成されたコーナ材11は、図3及びその部分拡大図である図4に示されるように、予め隙間Eを介して直角に建て込まれた第1、第2の外壁パネルA1、A2の前記隙間Eに室内i側から挿入される。また、コーナ材11は、その断熱材14側から前記隙間Eに挿入される。この際、断熱材14は、隙間Eの寸法(幅)Tよりも大きい幅を有しているので、弾性的に圧縮変形しながら隙間E内に挿入される。
【0034】
また、コーナ材11の挿入は、第1の平板部12aが第1の外壁パネルA1の室内側の面材3に、また第2の平板部12bが第2の外壁パネルA2の室内側の面材3にそれぞれ粘着部15で添着される位置まで行われる。そして、この挿入終了の状態では、コーナ材11の断熱材14は、各外壁パネルA1、A2の室内側の面材3の端面に密に接触することができる。具体的に述べると、断熱材14は、前記面材3のうち、石膏ボード3aの端面の面取り部3e及び非面取部3nのみならず、ポリスチレンボード3bの端面にも密に接触する。
【0035】
以上のようなコーナ材11は、各パネルA1、A2間の隙間Eを閉じるとともに、入隅コーナ部eに鋭なエッジを形成するので、室内側で後に行われるクロス貼り作業を見栄え良く仕上げるのに役立つ。
【0036】
また、室内側の入隅コーナ部eにおいては、隙間Eが断熱材14に閉塞される。とりわけ、本実施形態では、ポリスチレンボード3b、3b及び断熱材14がコーナ部で途切れることなく連続して断熱しうる。従って、パネルA1、A2間の隙間部分の断熱性を高め、室内側の入隅コーナ部eの隅角等に結露が発生するのを効果的に防止しうる。
【0037】
さらに、本実施形態では、鍔部13の自由端13eが断熱材14で覆われる、コーナ部で露出しない。従って、鍔部13がいわゆる熱橋となって入隅コーナ部eに冷熱が伝わるのも効果的に防止しうる。
【0038】
さらに、本実施形態では、室内i側からコーナ材11をパネル間の隙間Eに挿入するというきわめて簡単な作業により、入隅コーナ部eの断熱をより確実に行うことができる。従って、工業化住宅の生産性を大幅に向上しうる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記の実施形態に限定されることなく種々の態様に変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明も実施形態を示すコーナ材の断面図である。
【図2】その斜視図である。
【図3】コーナ材を装着したコーナ部の断面図である。
【図4】その要部拡大図である。
【図5】住宅の平面図である。
【図6】そのコーナ部C1の拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
A1 第1の外壁パネル
A2 第2の外壁パネル
C1〜C6 コーナ部
B コーナ部材
1 住宅
2 枠組
3 室内側の面材
4 外装材
5 木質下地
6 断熱材
11 コーナ材
12 基部
12a 第1の平板部
12b 第2の平板部
13 鍔部
13e 鍔部の自由端
14 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直角に交わる第1、第2の外壁パネルの室内側の入隅コーナ部に形成される前記第1、第2の外壁パネル間の隙間に配される長尺のコーナー材であって、
前記コーナー材は、第1の外壁パネルの室内側の面材に添設される第1の平板部と、第2の外壁パネルの室内側の面材に添設される第2の平板部とからなる内角が略90度で屈曲するアングル状の基部、
前記基部の外角を二等分する向きにのび前記隙間に室内側から挿入可能な鍔部、及び
前記鍔部の両面に固着されかつ圧縮変形により室内側からの前記隙間に挿入できかつ直角で交差する前記各外壁パネルの室内側の面材の端面に当接する断熱材を含むことを特徴とするコーナー材。
【請求項2】
前記断熱材は、鍔部の自由端側を露出させることなく前記鍔部を被覆する請求項1記載のコーナ材。
【請求項3】
前記断熱材は、横断面において、基部側から鍔部の自由端側に向かって拡幅する略扇状をなす請求項1又は2記載のコーナ材。
【請求項4】
請求項1乃至3のコーナ材を用いた外壁の施工方法であって、
直角に交わる第1、第2の外壁パネルを隙間を介して建て込み室内側の入隅コーナ部を形成する工程と、
前記コーナー材の断熱材を圧縮変形させながら室内側から前記隙間内に挿入することにより、前記基部の第1の平板部及び第2の平板部を、第1の外壁パネル及び第2の外壁パネルの各室内側の面材に添着させるとともに、前記断熱材を各外壁パネルの室内側の面材の端面に当接させる工程とを含むことを特徴とする外壁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−168863(P2010−168863A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14563(P2009−14563)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】