説明

コーヒー組成物

【課題】本発明は、コーヒー抽出物、茶抽出物、乳製品、甘味料および栄養補給剤等の追加成分を含む被覆組成物により被覆されたコーヒー粉の粒を提供するものである。
【解決手段】本発明は、被覆コーヒー粉の粒の製造方法であって、被覆組成物の融点より低く、被覆組成物がコーヒー粉の少なくとも一部の上に被膜を形成する温度まで、被覆組成物とコーヒー粉の混合物を加熱するステップと、混合物を冷却し、コーヒー粉の表面の少なくとも一部の上に形成された被覆組成物の被膜を有するコーヒー粉を含む粒を得るステップとを含む方法を提供する。本発明は、この方法により製造できる被覆グラインドコーヒー組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆グラインドコーヒーを含むコーヒー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー組成物は、コーヒー消費者にいくつかの様々な形態で供給できる。消費者の中には、ローストコーヒー豆全粒を得て、入れる直前に自ら粉砕することを好む者もいる。他の消費者は、予め粉砕されたローストコーヒーを得て、その後入れる方がより便利に感じる。他の消費者は、インスタントコーヒーの使用を好む。
【0003】
グラインドコーヒー組成物の中には、グラインドコーヒーだけではなく、追加成分も含有するものもある。例えば、特許文献1は、香味成分を、例えば、グラインドコーヒーにどのように添加できるかについて記載している。クリーマー、香気増強剤、甘味料および増粘剤を含めた他の追加成分も添加できる。特許文献1では、コーヒー粒子および香味粒子を互いに転動(tumble)させることによる従来の混合によって、香味成分および追加成分がグラインドコーヒーと混合される。
【0004】
1種だけではなくそれ以上のコーヒー成分を含有するコーヒー組成物の提供の1つの問題は、コーヒー組成物の個々の成分が、徐々に互いから分離および隔離することである。結果的に、コーヒー組成物を容器に入れ、沈降させると、小さい成分またはより高密度の成分が容器の底部で塊となり、一方、より大きいまたは密度の低い成分は、容器の頂部で塊となる。例えば、コーヒー組成物に添加される成分の中には、該組成物のコーヒー成分よりサイズが小さいものもある。したがって、最終消費者は、コーヒーが、該組成物が含有される容器の頂部に由来するのか底部に由来するのかに従って、例えば、香味成分の増大した濃度または香味成分の低減した濃度を経験できる。
【0005】
特許文献1には、分離問題に対する2つの可能な解決策について記載されている。第1の解決策は、凝集香味成分の使用を伴い、その結果、香味成分のサイズが、コーヒー組成物中のコーヒーのサイズと同じようになり、それにより分離を低減する。第2の解決策は、コーヒー成分の粒子のサイズの、香味成分のサイズに対する固有の比の使用を伴い、2種の成分の間のファンデルワールス相互作用を制御し、分離を予防することを伴うと報告されている。
【0006】
グラインドコーヒーに添加できる特定の一追加成分は、インスタントコーヒー粉末である。例えば、特許文献2では、コーヒー組成物から入れる時間を減少させるためにインスタントコーヒー粉末がグラインドコーヒーに添加され、その結果、コーヒーは、自動販売機でより早く製造される一方で、入れ途中のコーヒー液にグラインドコーヒーの好ましい香味の一部を維持することができる。さらなる例として、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7には、グラインドコーヒーが、例えば噴霧により、溶解した水性インスタントコーヒーと接触している、グラインドコーヒーとインスタントコーヒーの混合物について記載されている。特許文献6には、噴霧はコーヒー粉の凝集を起こさないとされているが、一方、特許文献7には、噴霧は意図的に凝集を引き起こすのに使用されるとされている。それとは別に、特許文献8には、破裂したコーヒー粒子の溶融ショ糖による含浸が示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,841,185号明細書
【特許文献2】EP0928561
【特許文献3】EP0220889
【特許文献4】GB2006603
【特許文献5】GB0229920
【特許文献6】米国特許第3,261,689号明細書
【特許文献7】米国特許第3,713,842号明細書
【特許文献8】米国特許第2,278,473号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、コーヒー抽出物、茶抽出物、乳製品、甘味料および栄養補給剤等の追加成分を含む被覆組成物により被覆されたコーヒー粉の粒を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被覆コーヒー粉の粒の製造方法であって、被覆組成物の融点より低く、被覆組成物がコーヒー粉の少なくとも一部の上に被膜を形成する温度まで、被覆組成物とコーヒー粉の混合物を加熱するステップと、混合物を冷却し、コーヒー粉の表面の少なくとも一部の上に形成された被覆組成物を含む被膜を有するコーヒー粉を含む粒を得るステップとを含む方法を提供する。本発明は、この方法を含む方法により入手可能なコーヒー組成物をさらに提供する。
【0010】
本発明は、被覆コーヒー粉の粒を含むコーヒー組成物であって、被覆組成物の被膜がコーヒー粉の表面の少なくとも一部の上に形成され、被膜の密度が被覆組成物の理論密度と実質的に等しい組成物をさらに提供する。
【0011】
本発明は、被覆コーヒー粉の粒を含む非凝集コーヒー組成物であって、被膜がコーヒー粉の表面の少なくとも一部の上に形成され、被膜が粒の合計重量の8%と50%の間である組成物をさらに提供する。
【0012】
本発明は、被覆コーヒー粉の粒を含むコーヒー組成物であって、被膜がコーヒー粉の表面の少なくとも一部の上に形成され、少なくとも80重量%の粒が4mm未満の篩サイズを有し、被膜が粒の合計重量の8%と50%の間である組成物をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、以下の図に関して例として記載する。
【図1】本発明にしたがったプロセスの流れ図である。
【図2A】本発明の特定の態様を示す図である。
【図2B】図2Aの拡大図である。
【図3A】本発明の特定の態様を示す図である。
【図3B】図3Aの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明をさらに説明する。以下の各節では、本発明の様々な態様をより詳細に定義する。そのようにして定義する各態様は、相反することを明確に示さない限り、任意の他の態様(複数可)と組み合わせてもよい。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示される任意の他の特徴(複数可)と組み合わせてもよい。
【0015】
本発明は、コーヒー粉を含むコーヒー組成物に関する。「コーヒー粉(複数)」とは、コーヒー豆の粉砕により形成されたグラインドコーヒーの粒(複数)を意味する。「コーヒー粉」は、グラインドコーヒーの単一の粒である。一般に、グラインドコーヒーは、生コーヒー豆を焙煎し、ローストコーヒー豆を粉砕することから得られる製品である。コーヒー粉は、粉砕プロセスの直接的製品として提供しても、中間処理後に提供してもよい。コーヒー粉に水を添加すると、コーヒー飲料が入り、不溶性コーヒー固形分が通常残り、それは消費の前にコーヒー飲料から濾過される。
【0016】
グラインドコーヒーは、任意のタイプのコーヒー豆から製造してもよい。コーヒー豆(コーヒーチェリーと呼ばれることもある)は、コーヒー(Coffea)属植物に属する植物の種として収穫される。例えば、アラビアコーヒーは、アラビアコーヒーノキ(Coffea Arabica)植物からの豆に由来し、ロブスタコーヒーは、コンゴコーヒーノキ(Coffea canephora)植物の豆に由来する。コーヒーの他の非限定的なタイプとしては、ブラジルコーヒー、ならびにリベリアコーヒーノキ(Coffea liberica)およびスーダンコーヒーノキ(Coffea esliaca)植物に由来するコーヒーが挙げられる。個々のコーヒーのタイプの範囲内に多くの変種が存在し、各変種は、例えばコーヒーの地理的な起源を示す。本発明では、コーヒーの任意の変種もしくはタイプに由来するグラインドコーヒー、または任意の変種および/またはタイプの任意の組合せを使用してもよい。
【0017】
コーヒーの焙煎の前に、生コーヒー豆を加工してもよい。例えば、生コーヒー豆からカフェインを除去してもよい。好適なカフェイン除去方法としては、加熱したコーヒー抽出物による豆の処理、ジクロロメタン、酢酸エチルまたはトリグリセリドなどの溶媒による直接的または間接的カフェイン除去、および超臨界二酸化炭素を使用する抽出を含む。焙煎前の他の処理ステップ、例えば生コーヒー豆中の香味生成化合物を調整するための処理も実施できる。
【0018】
次いで、生コーヒー豆を焙煎する。焙煎は当技術分野でよく知られている。一般に、焙煎は、生豆の色が変わるまでの加熱を伴う。焙煎に好適に使用される装置としては、オーブンおよび流動床が挙げられる。
【0019】
焙煎の程度は、ローストコーヒー豆の色により判断される。焙煎レベルとしては、浅煎り(シナモン、ハーフシティ、ライトおよびニューイングランド)、中浅煎り(ライトアメリカン、ライトシティおよびウェストコースト)、中煎り(アメリカン、ブレックファースト、ブラウン、シティおよびミディアム)、中深煎り(フルシティ、ライトフレンチおよびウィンナー)、深煎り(アフターディナー、コンチネンタル、ヨーロピアン、フレンチ、イタリアンおよびニューオーリンズ)および極深煎り(ダークフレンチおよびヘビー)が挙げられる。
【0020】
焙煎後、コーヒーを処理し、例えばその水和のレベルを増大(または減少)させてもよい。別の例では、コーヒーを加工し、エスプレッソなどの独特な香味特性を反映させてもよい。
【0021】
焙煎後、コーヒーを粉砕し、コーヒー粉を生成する。粉砕方法としては、バール粉砕、細断、パウンディングおよびローラー粉砕が挙げられる。粉砕後、コーヒーはコーヒー粉の粒からなる。一般に、粉は、易流動性であり、互いから容易に離れる。粉は、沈降が原因で徐々に圧縮されることがあるが、粉は、一般に、軽い撹拌、例えば容器を手で振盪させることによりその圧縮状態から容易に解放される。
【0022】
一般的粉砕方法は、2mm以下、例えば1.5mm以下、1.2mm以下などの標準粒径を有する粉を生成する。一般に、コーヒー粉は、0.1mm以上、例えば0.2mm以上、例えば0.5mm以上の標準粒径を有する。したがって、一実施形態では、コーヒー粉は、0.20から2mmの標準粒径を有する。この範囲のサイズの粉によって、消費者が期待する時間で、消費者が通常望む濃度のコーヒーを入れることが促進される。
【0023】
標準粒径(すなわち平均粒径)は、回折分光装置を使用して測定できる。回折分光装置を使用して粒径を測定する好適な方法は、実施例で記載する。
【0024】
粒径を測定する代替の方法は、篩測定によるものである。この測定によると、好ましくは少なくとも80重量%のコーヒー粉が、2mm以下、例えば1.5mm以下、1.2mm以下などの篩サイズ(Tyler篩を使用して測定できる)を有する。一般に、少なくとも80重量%のコーヒー粉は、0.1mm以上、例えば0.2mm以上、例えば0.5mm以上の標準篩サイズを有する。したがって、一例では、80重量%のコーヒー粉は、0.20から2mmの篩サイズを有する。例えば、粉は、これらの条件のいずれかを満たす90重量%以上、例えば95重量%以上の粉を有してもよい。篩サイズを測定するために、Tyler Rotap機を使用できる。#30およびより小さいサイズのTyler篩に関しては、該篩は、各使用後に高速度空気で洗浄してもよい。
【0025】
本発明の発明者らは、グラインドコーヒーと追加成分の両方を含む組成物を研究してきた。これらの研究の間、本発明者らは、分離が、グラインドコーヒーと追加成分の両方を含有するコーヒー組成物において発生する重要な問題であるということを認識した。次いで、本発明者らは、追加成分がコーヒー粉上に被覆している組成物において、分離が発生しないということを認識した。これは、被膜が、追加成分およびグラインドコーヒーを様々な粒子の混合物として提供するのではなく、追加成分のコーヒー粉上への物理的付着をもたらすためである。
【0026】
本発明者らは、グラインドコーヒーおよび追加成分を含む組成物の単純な混合物が不均一であるということも認識した。これは、分離が発生しなかったとしても、コーヒー組成物はその組成によって変化するため、コーヒー組成物一杯毎にわずかに異なるコーヒーが調製されるということを意味する。該組成物の不均一な性質も、本物のグラインドコーヒーとしてのコーヒーの消費者受容性にとって不利益である。さらに、一部の追加成分およびグラインドコーヒーの外観の相違は、まだらな外観を混合物にもたらす恐れがあり、それは不利益であると消費者により認識される。
【0027】
これらの研究の間、驚いたことに、本発明者らは、コーヒー粉を追加成分と混合させるならば、追加成分がコーヒー粉の少なくとも一部の上に被膜を形成する追加成分の融点未満の温度まで混合物を加熱することが可能であるということを見出した。好ましくは、この温度は、追加成分のガラス転移温度以上である。追加成分を「被覆組成物」と呼び、被膜をコーヒー粒上に形成するその役割を反映させることができる。
【0028】
インスタントコーヒーなどの、コーヒー粉と追加成分の混合物の先の研究では、例えば、インスタントコーヒーの香味を改善するために、追加成分のマトリックス内に埋め込まれたコーヒー粉を含有するマトリックスを形成することが目的であった。例えば、特許文献3には、コーヒー抽出物とコーヒー粉の混合物の凍結乾燥を含む、コーヒー粉を含有するコーヒー抽出物のマトリックスの形成方法が記載されている。別の例を挙げると、特許文献4には、微グラインドコーヒーを可溶性コーヒーで凝集させる方法が記載されている。
【0029】
次に、本発明の発明者らは、コーヒー粉をマトリックスに埋め込むことが、コーヒー粉と追加成分の混合物を提供する唯一の方法ではないということを見出した。代わりに、本発明者らは、コーヒー粉中の個々の粒子が、それら自体の個々の個性を本質的に維持する、または、換言すると、コーヒー粉の粒子が本質的に個々に被覆されている被覆コーヒー粉を含む組成物を提供することが可能であるということを見出した。したがって、一部の先行技術のように、グラインドコーヒーが追加成分に香味を添えるように作用するのではなく、追加成分がグラインドコーヒーに香味を添えるグラインドコーヒー組成物を提供できる。
【0030】
理論により制限されることを望むことなく、本発明者らは、要素の組合せが、コーヒー粉を埋め込む連続マトリックスではなく、被覆コーヒー粉の生成を促進することを提唱する。
【0031】
第1に、被覆組成物対コーヒー粉の比較的低い重量比を使用することにより、本発明者らは、コーヒー粉上への被覆組成物の被覆が好ましいということを見出した。例えば、好ましくは、被覆組成物は、本発明の方法で約1:1から約1:1000の重量比で提供される。しかし、加工条件の制御により、被覆組成物対コーヒー粉の重量比がより高い組成物を形成できることが予見される。例えば、被覆組成物のガラス転移温度に近い温度への加熱を制御すること(以下で論じるように)および/または被覆手順の間に該組成物を連続的に混合することにより、より大きい割合のコーヒー粉上への被覆組成物の被覆を促進できる。さらに、被覆温度まで加熱した後の該組成物の穏やかな振盪は、加熱プロセスの間に形成された粒の間の緩くて弱い結合を破るであろう。
【0032】
さらに、被覆組成物とコーヒー粉の間の引力により本発明のプロセスを促進できる。これらの引力は、コーヒー粉埋込みマトリックスを形成するのではなく、コーヒー粉の個々の粒の周囲に被膜を形成する被覆組成物に関与できる。これらの引力は、混合物を被覆温度まで加熱している間、および/または前もって作用し、被覆組成物のコーヒー粉に対する付着を提供できる。
【0033】
例えば、本発明者らは、コーヒー粉中の油が、被覆組成物の粒子のコーヒー粉の表面に対する付着に寄与できることを認識した。コーヒー粉の表面の油の量は、例えば、焙煎の長さおよび温度を制御することにより、ならびに、例えば、コーヒー粉の焙煎後の処理により制御してもよい。油状物質の添加などの他の方法も、コーヒー粉の「油状」の表面に寄与するのに使用できると考えられる。
【0034】
さらに、被覆組成物の粘着性は、コーヒー粉上への被覆組成物の被覆を促進できる。例えば、インスタントコーヒーおよび他の被覆組成物が単糖類および/または二糖類を含有してもよいことが知られている。これらは、インスタントコーヒーに「ねばねばした」感触を付与できる。この粘着性は、コーヒー粉と被覆組成物の間の引力に寄与できる。
【0035】
本発明の発明者らは、被覆プロセスを促進するのに静電付着を使用できることも予期する。例えば、コーヒーの粉砕の間にコーヒー粉の摩擦帯電が発生してもよく、その後の新しく粉砕したコーヒーの被覆組成物との混合は、被覆組成物のコーヒー粉に対する弱い付着をもたらすことができ、それは加熱時に被覆コーヒー粉に転換される。
【0036】
したがって、コーヒー粉上への被覆組成物の被覆は、以下のステップ、
(1)被覆組成物の融点より低く、被覆組成物がコーヒー粉の少なくとも一部の上に被膜を形成する温度まで、被覆組成物とコーヒー粉の混合物を加熱するステップと、次いで、
(2)混合物を冷却し、固体被膜を有する被覆コーヒー粉の粒を得るステップと
により実施してもよい。
【0037】
ステップ(1)で混合物を加熱する温度は、本明細書では被覆温度と呼ぶ。この温度は、被覆組成物の融点未満であり、融点は、被覆組成物が液体となる温度である。被覆組成物が2種以上の成分を含有するならば、被覆温度は、被覆組成物の成分のいずれかの最低融点未満である。融点は、当業者に容易に知られている方法により、例えば従来の融点装置で測定される。融点を測定する別の固有の方法は、本明細書でさらに記載する示差走査熱量測定法である。液体に溶解した被膜を含む被覆組成物にコーヒー粉を曝す方法は、被覆組成物全体が被覆の間液体であるため、その融点を上回る被覆組成物にコーヒー粉を曝すことを伴うことに留意する。本発明者らが、被覆組成物は自由に流れ、コーヒー粉埋込みマトリックスを形成する傾向があるということを別の方法で見出したため、被覆温度は、被覆組成物の融点未満である。
【0038】
本発明の方法で、被覆組成物対コーヒー粉の重量比は、好ましくは約1:1から約1:1000である。例えば、該重量比は、約1:3から約1:100、約1:4から約1:40など、例えば1:5から約1:50、約1:1から約1:10などでもよい。これらの範囲内では、被覆組成物は、マトリックスを形成しないが、代わりに個々のコーヒー粉の上に被膜を形成する傾向を有するであろう。
【0039】
前述したように、これらの範囲内で加工することは、コーヒー粉上への被覆組成物の被覆を促進できる。特に、下限未満では、組成物全体の特性に対する添加剤の効果が低減することがあり、上限を上回ると、マトリックスを形成することなく被覆組成物をコーヒー粉上へ被膜する容易さが低減する。大部分の被覆組成物はコーヒー粒を被覆することになり得るが、ある割合(例えば、20wt%以下、10wt%など、5wt%以下など)の元の被覆組成物が、被覆後にコーヒー粉の上で被覆しないまま残存するか、またはコーヒー粉から分離したままであろうということを認識する。この残存被覆組成物は、被覆コーヒー粉から分離できるか、またはコーヒー粉中に分散したままでいることができる。被覆していない被覆組成物の量は、被覆温度での加熱の間の混合により低減できる。
【0040】
被覆組成物は、室温(約20℃)で固体として提供してもよい。被覆組成物は、単一の物質でも物質の混合物でもよい。被覆組成物の少なくとも1種の成分は、150℃以下のガラス転移温度を有してもよい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定できる。好ましくは、被覆組成物の1種の成分は、100℃以下、好ましくは75℃以下、好ましくは60℃以下のガラス転移温度を有する。好ましくは、これらのガラス転移温度は、被覆組成物の最低ガラス転移温度を表す。これらのガラス転移温度の上限が好ましく、その結果、コーヒー粉が被覆の間にさらなる焙煎を受ける可能性なしで、被覆を実施できる。
【0041】
好ましくは、被覆組成物は、貯蔵の間の該組成物の固化を予防するために、25℃以上、好ましくは30℃以上、35℃以上などのその最低ガラス転移温度を有する。したがって、「固体」という用語が、その範囲内にそのガラス転移温度を上回るがその融点未満である物質を含む一方、被覆組成物は、好ましくは室温(約20℃)を上回るその最低ガラス転移温度を有する。
【0042】
例えば、被覆組成物のガラス転移温度(好ましくは該組成物の最低ガラス転移温度)は、好ましくは、30℃から75℃などの30℃から100℃でもよい。本発明者らは、この範囲内のガラス転移温度を有する被覆組成物を提供することが、加熱の間のコーヒーアロマの有害な劣化なしで被覆組成物の被覆を行うことを可能にすることを見出した。
【0043】
好ましくは、コーヒー粉の被覆の前に提供する少なくとも20重量%の被覆組成物が、上記範囲内のガラス転移温度を有する。好ましくは、少なくとも50重量%、より好ましくは80%、90%など、例えば約100重量%がこれらのガラス転移温度を有する。特に、上記範囲内のガラス転移温度を有する被覆組成物の量がより多いと、より制御されてより均等な、コーヒー粉上への被覆組成物の被覆がもたらされるであろう。
【0044】
好ましくは、被覆組成物は、コーヒー抽出物、茶抽出物、乳製品、甘味料、および栄養補給剤からなる群から選択される1種または複数の成分を含む。本発明者らは、この成分の選択肢が、被覆組成物として特に適していることを見出した。好ましくは、これらの成分は、該組成物が上で定義したTgを有するように選択される。好ましくは、被覆組成物は、被覆組成物としてのそれらの使用において多能であることに本発明者らが気づいたコーヒー抽出物もしくは茶抽出物であるか、またはコーヒー抽出物または茶抽出物を含む。好ましくは、被覆組成物は、コーヒー抽出物であるか、またはコーヒー抽出物を含む。
【0045】
被覆組成物は、コーヒー抽出物を含んでもよい。「コーヒー抽出物」という用語は、当技術分野でよく知られている。コーヒー抽出物は、本明細書で記載した範囲内のガラス転移温度を有するように選択できる。
【0046】
一般に、コーヒー抽出物は、溶媒、例えば水による抽出によりコーヒーから得られる抽出物である。コーヒー抽出物は、他の方法、例えばコーヒーの凍結乾燥によっても得ることができる。可溶性コーヒーとしても知られているインスタントコーヒーは、本発明での使用に適したコーヒー抽出物の一例である。インスタントコーヒーは、例えば凍結乾燥コーヒーまたは噴霧乾燥コーヒーとして提供してもよい。
【0047】
被覆組成物は、茶抽出物を含んでもよい。「茶抽出物」という用語も当技術分野でよく知られている。茶抽出物は、本明細書で記載した範囲内のガラス転移温度を有するように選択できる。
【0048】
一般に、茶抽出物は、溶媒、例えば水により茶から得られる抽出物である。該抽出物は、任意のタイプの茶から、例えば緑茶から得てもよい。
【0049】
被覆組成物は、乳製品を含んでもよい。乳製品は、乳牛源に由来するタンパク質などの1種または複数の乳タンパク質を含んでもよい。例えば、被覆組成物は、クリーマーまたはホワイトナーを含んでもよい。乳製品は、本明細書で記載した範囲内のガラス転移温度を有するように選択できる。
【0050】
被覆組成物は、甘味料を含んでもよい。甘味料は、本明細書で記載した範囲内のガラス転移温度を有するように選択できる。
【0051】
被覆組成物は、栄養補給剤を含んでもよい。栄養補給剤(栄養補助食品としても知られている)という用語は、食事を補うことを目的とした製品として当業者によく知られている。例えば、栄養補助食品は、1994年の米国栄養補助食品健康教育法(US Dietary Supplement Health and Education Act)に従って分類できる。栄養補助食品としては、ミネラル、食物繊維、生化学的前駆体および植物ステロールが挙げられる。栄養補給剤は、本明細書で記載した範囲内のガラス転移温度を有するように選択できる。
【0052】
栄養補給剤は、1つ以上のミネラルを含んでもよい。ミネラルは、一般に無機塩、例えば周期表の群1および/または群2の元素および/または1種または複数のハロゲンおよび/またはスルフェートを含有する塩である。例えば、ミネラルは、1種または複数のカリウムおよび/またはカルシウム塩を含んでもよい。
【0053】
栄養補給剤は、食物繊維を含んでもよい。食物繊維は、好ましくは可溶性食物繊維である。食物繊維は、フルクトース、グルコースおよびマンノースの1種または複数などの、1種または複数の糖のモノマー単位を含むポリマーでもよい。ポリマーは、例えば、10から10,000モノマー単位、例えば10から1000モノマー単位、20から200モノマー単位、例えば20から60モノマー単位などを含んでもよい。コポリマーとして提供するならば、コポリマーは、ランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。
【0054】
例えば、食物繊維は、フルクタン、例えばイヌリンを含んでもよい。食物繊維は、グルカン、例えばβ−グルカンおよび/またはFibersolを含んでもよい。食物繊維は、マンナンオリゴ糖(MOS)を含んでもよい。
【0055】
栄養補給剤は、生化学的前駆体を含んでもよい。例えば、生化学的前駆体は、グルコサミン−HClでもよい。
【0056】
栄養補給剤は、植物ステロールを含んでもよい。例えば、被覆組成物は、フィトステロールを含んでもよい。
【0057】
1種または複数の成分を組み合わせ、好適な被覆組成物を形成できることが理解されよう。例えば、被覆組成物は、コーヒー抽出物および/または茶抽出物、ならびに場合により乳製品、甘味料、および栄養補給剤からなる群から選択される1種または複数を含んでもよい。
【0058】
例えば、被覆組成物は、粉末の混合物として提供してもよい。この場合、好ましくは、被覆組成物とコーヒー粉の混合物を加熱する温度より高いTgを有する任意の成分は、被覆組成物とコーヒー粉の混合物を加熱する温度未満のTgを有する成分(複数可)の平均粒径の半分未満、より好ましくは3分の1以下、4分の1以下など、例えば5分の1以下の平均粒径を有する。例えば、好ましくは、60℃超(またはTgを全く有さない)、例えば75℃超、100℃超など、例えば150℃以上のTgを有する任意の成分は、この平均粒径を有する。例えば、コーヒー抽出物および/または茶抽出物とは別の成分は、上で定義した粒径を有してもよい。
【0059】
あるいは、またはさらに、様々な成分を予めブレンドしてもよく、その結果、それらは同じ粒子中に含有される。
【0060】
被覆組成物は、好ましくは、その粘着性に寄与し、被覆プロセスを促進するための1種または複数の単糖類および/または二糖類を含む。例えば、被覆組成物中の単糖類および二糖類の含量は、0.5wt%以上、1wt%から50wt%など、5wt%から25wt%などでもよい。上限は、単糖類および/または二糖類を含む被覆組成物のグラインドコーヒーへの添加により実現できる任意の甘味の制御に役立つ。例えば、本発明者らは、その糖類含量に起因するコーヒー抽出物および茶抽出物の粘着性が、これらの物質のグラインドコーヒー上への被覆を促進することを見出した。
【0061】
一実施形態では、被覆組成物は、コーヒーの抽出物、例えばインスタントコーヒーを含む。インスタントコーヒーの提供方法は、当技術分野でよく知られている。インスタントコーヒーは、凍結乾燥コーヒーでも噴霧乾燥コーヒーでもよい。
【0062】
本発明では、被覆組成物およびコーヒー粉を共に混合する。多くの混合方法、例えば各成分を互いに転動させ、成分相互の間で比較的均一な成分分布を得ることを可能にする方法が当技術分野で知られている。
【0063】
混合により形成された混合物を加熱する。例えば、混合は、加熱の前に発生できるか、または加熱している間に発生できる。混合物は、被覆組成物がコーヒー粉の少なくとも一部の上に被膜を形成する被覆組成物の融点未満の温度まで加熱する。例えば、混合物は、実質的に被覆組成物のガラス転移温度以上の温度まで加熱できる。混合物は、被覆組成物中のいずれの成分も液体ではない温度(例えば160℃未満、例えば100℃未満、60℃未満など)まで加熱する。被覆組成物が様々なガラス転移温度を有するいくつかの個々の成分を含むならば、混合物は、実質的に少なくとも1種の成分のガラス転移温度以上の温度、例えば被覆組成物の最低ガラス転移温度まで加熱してもよい。
【0064】
例えば、混合物は、30℃から160℃、例えば30℃から110℃、30℃から80℃などの被覆温度まで加熱してもよい。例えば、混合物は、35℃から60℃まで加熱してもよい。これらの温度では、被覆プロセスは、コーヒー粉のさらなる焙煎なしで促進できる。
【0065】
好ましくは、混合物は、被覆組成物のガラス転移温度の5と50℃の間の被覆温度まで加熱してもよい。下限は、被覆組成物が被覆におけるその役割を果たすのに役立つことができる。上限は、グラインドコーヒーの不均等な被覆を予防でき、コーヒー粉埋込みマトリックスの形成ではなく、コーヒー粉の実際の被覆を促進できる。例えば、混合物は、被覆組成物のガラス転移温度の40℃以下、例えば30℃以下、20℃などの温度まで加熱してもよい。同様に、混合物は、被覆組成物のガラス転移温度の10℃以上、例えば15℃以上の温度まで加熱してもよい。被覆組成物のガラス転移温度は、例えば、水分含量の制御により制御してもよく、その結果、コーヒー加工に関して所望される温度範囲内にあることは理解されよう。
【0066】
本発明の方法で使用する混合物を被覆組成物の軟化点まで加熱できることに留意する。例えば、軟化点は、ガラス転移温度未満でもよい。軟化点は、ビカーA試験により測定できる。被覆組成物の軟化点を低下させるために、被覆組成物を前処理し、その粘着性を増大させてもよい。例えば、被覆組成物は、湿り大気で前処理してもよい。例えば、単糖類および/または二糖類および/またはクエン酸を含む被覆組成物の粘着性は、湿り大気に曝すことにより増大させてもよい。
【0067】
加熱時間の長さは、加熱の実際の温度および加熱が実施される条件に左右されるであろう。一般的加熱時間は、30分以上、例えば2時間以上、例えば6時間以上、24時間以上などでもよい。便宜上、最大加熱時間は、2週間以下、例えば1週間以下でもよい。したがって、一般的な加熱の長さは、1時間から2週間でもよい。
【0068】
被覆組成物とコーヒー粉の混合物の混合は、被覆温度まで加熱しながら実施してもよい。この混合は、コーヒー粉埋込みマトリックスの形成ではなく、特に被覆組成物対コーヒー粉のより高い重量比で、コーヒー粉上への被覆組成物の被覆を促進できる。
【0069】
グラインドコーヒーのさらなる反応を予防するために、加熱を不活性雰囲気下で実施してもよい。例えば、加熱は、0.5vol.%以下、例えば0.1vol.%以下、例えば0.01vol.%以下の酸素を含有する雰囲気などの、酸素を含まない雰囲気で実施してもよい。さらに、コーヒーのさらなる焙煎を予防するために、被覆が実施される温度を上記の範囲内に制御してもよい。
【0070】
一般に、被覆組成物は、粒子形態で提供される。被覆組成物は、使用するコーヒー粉の粒径の50%以下、例えば30%以下、例えば25%以下である平均粒径(例えば、回折分光装置を使用して測定する)を有するように提供してもよい。
【0071】
一般に、被覆組成物は、3mm以下、例えば1mm以下、例えば0.5mm以下、0.3mm以下などの平均粒径を有する。例えば、粒径を篩測定により測定するならば、好ましくは少なくとも80重量%の被覆組成物は、3mm以下、例えば1mm以下、例えば0.5mm以下の粒径を有してもよい。例えば、少なくとも90重量%以上、例えば95重量%以上の被覆組成物は、この範囲内の粒径を有してもよい。
【0072】
これらの限度未満の粒径(回折により測定しようと篩サイズにより測定しようと)は、コーヒー粉上への被覆組成物の被覆を促進できる。さらに、より小さい粒径は、より高い表面積対体積比を有するため、被覆組成物の粒子とグラインドコーヒーの粒子の間により大きい引力を比例的にもたらすことができ、それによりコーヒー粉上への被覆組成物の被覆をさらに促進する。しかし、小さすぎる粒径は、取り扱いが困難である恐れがある場合もある。したがって、平均粒径(先に言及したように、回折によりまたは篩サイズにより測定する)は、0.01mm以上、0.05mm以上など、例えば0.1mm以上でもよい。したがって、被覆組成物の粒径の好ましい範囲は、約0.01mmから約1mm、0.05mmから0.5mmなどである。
【0073】
本発明では、コーヒー粉より小さい粒径を有するインスタントコーヒーを有利に使用できる。したがって、好ましくは0.5mm以下、例えば0.3mm以下の粒径を有する噴霧乾燥コーヒーが、本発明での使用に理想的である。
【0074】
冷却後、さらなるプロセスステップを使用してもよい。例えば、形成された粒の弱い振盪は、例えば、コーヒー粉上に被覆組成物を多量に使用して形成できる、隣接する粒との間の任意の弱い付着を緩めることに役立つであろう。他のさらなるプロセスステップとしては、コーヒー粉を被覆しなかった任意の残存被覆組成物の分離、ならびに、例えば、コーヒーの香味を調整する、および/またはコーヒーの保存寿命を延長する、および/またはコーヒーの表面特性を調整する(例えば、コーヒーの水和レベルの調整により)ためのさらなる物理的または化学的加工が挙げられる。さらに、本発明の被覆方法は、2回以上(例えば、2回または3回)実施してもよく、その結果、2種以上の被覆組成物がコーヒー粉上で積層する。
【0075】
本発明の被覆方法により形成された製品を見てみると、個々のコーヒー粉の上に形成された被膜は、コーヒー粉を完全にカバーできるか、該粉を部分的にカバーできる。例えば、被膜は、各粉の全てまたは実質的に全てをカバーしてもよい。したがって、被膜は、コーヒー粉を包んでもカプセル化してもよい。粉上の被膜のカバーの量は、光学顕微鏡により測定できる。
【0076】
一実施形態では、コーヒー粉の全てまたは実質的に全てが、個々に被膜材料でカプセル化される。例えば、少なくとも80重量%の粒子(粉)は、個々に被膜材料でカプセル化される。カプセル化は、均一な被膜の厚さを促進するための被膜を形成する条件、例えばガラス転移温度により近い温度への加熱の使用により達成できる。保護被膜をコーヒー粉に付与し、製品の保存寿命を増大させるのに役立つことができるため、カプセル化は有利になり得る。本発明の被覆方法の制御された性質のため、本発明の方法を使用するカプセル化は、例えば、コーヒー粉上への溶解した被膜の噴霧を使用するより、より容易に達成できる。
【0077】
本発明により提供するコーヒー組成物は、粒(すなわち顆粒状または粒子状の形態で)として提供する。この顆粒状組成物は、非凝集形態で提供してもよい。したがって、コーヒー組成物の各粒は、ほんの数個のコーヒー粉、好ましくは1個だけを含有してもよい。例えば、コーヒー組成物の各粒に含有されるコーヒー粉の平均数は、好ましくは5以下、好ましくは3以下、例えば、2以下である。これにより、消費者にとって期待され、許容できる、信頼できるコーヒーの入れ方を提供できる。
【0078】
一般に、コーヒー組成物の粒は、粒に含有されるコーヒー粉の粒径と同じ程度の大きさの粒径を有する。例えば、粒は、粒に含有されるコーヒー粉の標準粒径の2.5倍以下、1.5倍以下、1.3倍以下など、例えば1.2倍以下、例えば1.1倍以下の標準粒径を有してもよい。例えば、コーヒー組成物の粒は、5mm以下、例えば3mm以下、2mm以下など、例えば1mm以下の平均粒径を有してもよい。
【0079】
篩サイズに関しては、少なくとも80重量%のコーヒー組成物の粒は、一般に5mm以下、例えば3mm以下、2mm以下など、例えば1mm以下の篩サイズ(Tyler篩を使用して測定できる)を有してもよい。例えば、粒は、この条件を満たす粒を90重量%以上、例えば95重量%以上有してもよい。
【0080】
凝集は、拡散した、緩く形成された粒子をもたらす傾向がある。これらの緩く形成された粒子は、取り扱いが困難な傾向にあり、同等な非凝集コーヒーと同じ濃度に入れるためにより多くの体積のコーヒーの添加を必要とする。対照的に、本発明の被覆コーヒー粉の粒を含有するコーヒー組成物は、0.2g/cm3以上、例えば0.25g/cm3以上、0.35g/cm3以上または0.4g/cm3以上など、例えば0.45g/cm3以上の密度を有してもよい。しかし、本発明のコーヒー組成物は、高密度充填にすると入れるのが遅くなる傾向があるため、好ましくは高密度に充填されていない。例えば、該組成物は、0.55g/cm3以下、例えば0.50g/cm3以下の密度を有してもよい。
【0081】
密度を測定するために、フリーフロー密度測定装置を使用できる。例えば、底部に制御ゲートを有する5インチ(12.7センチメートル)の丸いホッパーは、重量および体積に関して較正済の4インチ(10.16センチメートル)の四角いLuciteキューブに注ぐことができる。コーヒーは、ホッパーの頂部の1インチ(2.54センチメートル)以内に詰め込み、次いで、スライドゲートを開く。次いで、ホッパーは空にし、該キューブは自由に溢流させる。過剰なコーヒーは、タッピングなしで試料が該キューブの頂部と同じ高さとなるまで、押し引き運動により注意深く除去する。次いで、該キューブ中のコーヒーの重量を測定し、密度を算出する。
【0082】
本発明の組成物では、好ましくは、顆粒は、約0.1から約50重量%の被膜(被覆組成物から形成された)を含む。より好ましくは、顆粒は、約1から約25重量%、約2から約20重量%などの被膜を含む。
【0083】
本発明の方法は、例えば、顆粒上への被膜の噴霧より大きい重量%の被膜を付与できることが認められている。したがって、有利には、顆粒上により多量の被膜を載せることができる。したがって、一実施形態では、顆粒は、約8重量%の被覆組成物として約10重量%の被覆組成物などを含む。しかし、溶融被覆組成物中への浸漬による被膜の付与は、多量の被膜を載せる傾向がある。これは、入れ途中の液がコーヒー粉に達する際の大きな障壁となることにより、コーヒー粉の香味を左右し、コーヒー粉から入れ作る時間に影響を及ぼす恐れがある。したがって、顆粒は最大で約50重量%の被覆組成物、最大で約25重量%の被覆組成物など、例えば約20重量%の被覆組成物を含んでもよい。
【0084】
本発明者らは、本発明のコーヒー組成物が、いくつかの特定の特性を有してもよいということを見出した。第1に、コーヒー組成物は、非凝集形態で提供してもよい。これは、通常のグラインドコーヒーの外観をより良好に再現する。コーヒーの非凝集性質は、5mm以下の標準粒径を有するコーヒーに反映されるであろう。
【0085】
第2に、コーヒー組成物の被膜の密度は、被覆組成物の理論密度と実質的に等しくてもよい。特に、本発明者らは、グラインドコーヒー上に噴霧される組成物が、拡散し、多少多孔性でもよいということを見出した。理論により制限されることを望むことなく、これは、蒸発性溶媒が被膜に気孔を残すためであろう。同様に、溶融被膜の凝固は、例えば、凝固時の収縮が原因で被膜の表面に気孔を形成するであろう。対照的に、本発明の被覆は、より高密度の被膜と共に提供してもよい。このより高密度の被膜は、被膜の保護性を増大させ、被膜のコーヒー粉上への付着性を増大させることができる。
【0086】
例えば、被覆組成物の理論密度と実質的に等しい密度を有する被膜は、本明細書で記載した方法により堆積するであろう。例えば、被膜の密度は、被膜の理論密度の10%以内、例えば理論(すなわちバルク)密度の5%以内、例えば3%以内でもよい。被覆組成物のバルク密度と比較した被膜の密度は、粒の表面上の気孔の密度を顕微鏡により測定することにより算出し得る。換言すると、被膜中の気孔密度は、10%以下、例えば5%以下、例えば3%以下でもよい。
【0087】
第3に、コーヒーを被覆するための本明細書で記載した方法は、生成物を乾燥させるために溶媒を蒸発させるさらなる加工ステップを必要としないため、例えば、グラインドコーヒーに被覆組成物を噴霧するよりずっと単純である。
【0088】
本発明のコーヒー組成物は、被覆組成物およびコーヒー粉のみを含んでもよい。あるいは、該組成物は、コーヒー粉上に被覆されないさらなる追加成分を含んでもよい。例えば、該組成物は、香味添加剤、クリーマー、香気増強剤、甘味料および/または増粘剤を含むか、またはさらに含んでもよい。これらの追加成分は、コーヒー粉上への被覆組成物の被覆後に添加してもよい。
【実施例】
【0089】
以下に、本発明を、いくつかの実施例に関して説明するが、これらが、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0090】
以下の組成物を提供した。
【0091】
(A)可溶性噴霧乾燥コーヒー粉末
(B)緑茶抽出物
これらの熱的特性は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定した。DSCは、Perkin Elmerから入手可能な機器を使用して、例えばPerkin Elmerの「Hyper DSC」機を使用して実施できる。走査を実施できる走査速度の例は、2℃/分である。
【0092】
DSCを使用して、以下のガラス転移温度(Tg)を測定した。ガラス転移温度は、Dual Sample Cellを装着されたTA Instruments DSC Model 2920を使用して測定した。試料を気密封止アルミニウムパンに入れ、空の対照パンと対照して走査した。走査速度は5℃/分であり、分析した温度範囲は0℃から125℃であった。曲線は、TA Instruments Universal Analysis Programを使用して分析した。ガラス転移は、ステップ転移(ベースラインシフト)により識別し、曲線の変曲点は、報告した臨界温度であった。
【0093】
これらの組成物の両方のTgが、該組成物を室温(20℃)で湿気に曝すことにより制御できたことに留意した。
組成物 前処理 Tg(℃)
(A) なし 60
相対湿度33%で24時間 43
相対湿度33%で55時間 8
相対湿度33%で75時間 −29
(B) なし 102
相対湿度33%で24時間 83
相対湿度33%で55時間 49
相対湿度33%で75時間 24
次いで、これらの組成物は、ローストグラインドコーヒー(R&Gコーヒー)と混合した。
【0094】
次いで、以下の混合物を調製した。
【0095】
(C)87重量%のグラインドコーヒー+13重量%の噴霧乾燥可溶性コーヒー粉末の混合物
(D)97重量%のグラインドコーヒー+3重量%の緑茶抽出物の混合物
次いで、これらの混合物を加熱した。加熱前、混合物の外観は、2種の異なる成分を含有するものであった。加熱後、単一の成分でできているように見える、ローストグラインドコーヒーに似た粉末が生成した。
【0096】
1つの特定の例では、30と40℃の間のTgを有する噴霧乾燥可溶性コーヒー粉末を混合物(C)で使用した。混合物の半分を40℃で1週間加熱し、一方、混合物のもう一方の半分を20℃で1週間加熱した。結果は図2および3に示しており、それぞれ、図2Bは図2Aの拡大図であり、図3Bは図3Aの拡大図である。これらの図は、40℃で加熱した混合物が通常のローストグラインドコーヒーに類似の外観を有する一方、わずか20℃で加熱した混合物が、混合物の2種の個々の成分が目に見える、分離している外観を有することを示す。
【0097】
次いで、回折分光装置を使用することにより組成物(C)の粒径の変化を測定した。特に、2000mmの焦点距離および1000msの時間分解能が設定された2000mm光学系を有するSympatec Helos/LAlaser回折分光装置を使用した。Princeton、NJのSympatec Inc.により供給されたソフトウェアパッケージバージョン4.7.23と共に該装置を使用した。該装置は、Rodos上に1.0バールの空気圧、および50ミリバールとなるインジェクター減圧設定(設定値5)で操作した。Rodosノズルは、ビームの端から5mmのところでレーザービームに焦点を合わせた。測定は、室温(20℃)および室圧(1気圧)で実施した。該系は、70から80グラムのコーヒーをその供給漏斗に収容できる。出力データは、サイズ分布の表として得られた。次いで、これらの平均値を数で求め、平均粒径を得た。
【0098】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆コーヒー粉の粒を含むコーヒー組成物であって、
被覆組成物の被膜はコーヒー粉の表面の少なくとも一部の上に形成され、
被覆組成物の被膜の密度は被覆組成物の理論密度と等しい、
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記コーヒーは非凝集であることを特徴とする、請求項1に記載のコーヒー組成物。
【請求項3】
前記被膜は粒の合計重量の8%と50%の間であることを特徴とする、請求項1または2に記載のコーヒー組成物。
【請求項4】
前記被膜は粒の合計重量の10%と25%の間であることを特徴とする、請求項3に記載のコーヒー組成物。
【請求項5】
少なくとも80重量%の粒は4mm未満の篩サイズを有することを特徴とする、請求項3または4に記載のコーヒー組成物。
【請求項6】
前記コーヒー組成物の密度は0.55g/cm3以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーヒー組成物。
【請求項7】
前記コーヒー組成物の密度は0.2g/cm3から0.5g/cm3であることを特徴とする、請求項6に記載のコーヒー組成物。
【請求項8】
被覆組成物対コーヒー粉の重量比は1:1から1:1000であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーヒー組成物。
【請求項9】
前記被覆組成物対コーヒー粉の重量比は1:3から1:100であることを特徴とする、請求項8に記載のコーヒー組成物。
【請求項10】
前記被覆組成物はコーヒー抽出物、茶抽出物、乳製品、甘味料および栄養補給剤からなる群から選択される1種または複数を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーヒー組成物。
【請求項11】
前記栄養補給剤は食物繊維を含むことを特徴とする、請求項10に記載のコーヒー組成物。
【請求項12】
被覆組成物の融点より低く、被覆組成物がコーヒー粉の少なくとも一部の上に被膜を形成する温度まで、被覆組成物とコーヒー粉の混合物を加熱するステップと、
前記混合物を冷却し、コーヒー粉の表面の少なくとも一部の上に形成された被覆組成物の被膜を有するコーヒー粉を含む粒を得るステップと、
を含む方法により得られることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーヒー組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2013−27409(P2013−27409A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−244432(P2012−244432)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【分割の表示】特願2010−70094(P2010−70094)の分割
【原出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(508247877)クラフト・フーヅ・グローバル・ブランヅ リミテッド ライアビリティ カンパニー (53)
【Fターム(参考)】