説明

コーヒー豆のマーブル焙煎法、及びその装置

【課題】一つの連続したコーヒー生豆の焙煎工程を中断する事が無く、一つのコーヒー煎り豆を様々な煎り上がり状態で得る事が出来るマーブル焙煎方法を提供する。
【解決手段】コーヒー生豆を焙煎する際、開始から完了までの間に、焙煎される生豆に加えられる熱量に、ある一定以上の熱量変化を付けるために、攪拌速度と時間、焙煎機の回転速度と時間を調整し、生豆の表面だけではなく、生豆内部の各部位に様々な焙煎強度を施すことにより、甘味・苦味・酸味・旨味・香気を引き出す事が出来、従来の焙煎方法では決して得る事の出来なかった、複雑で奥深い風味を持つ、コーヒー煎り上がり豆を得る事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー生豆を煎り上げる工程において、必要量のコーヒー生豆を焙煎機に投入して行う一焙煎工程において、コーヒー生豆に加える熱量の速度と時間を調整して煎り上げる事により、コーヒー生豆一粒ごとに様々な風味を持ち複雑で豊かな風味のコーヒー煎り豆に煎り上げるためのマーブル焙煎方法と、それを実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコーヒー焙煎方法では、生豆の投入時間を短くする事で、コーヒー生豆に均一に熱量を煎り上がり豆の排出時間も短くする事に主眼が置かれ、単一の煎り上がり状態にする事を目的としていた。
【0003】
開閉可能な、コーヒー生豆の投入装置と、煎り上がり豆の排出装置は、生豆の投入や、煎り上がり豆の排出時点での、時間差を無くし加える熱量を均一化するための方法と装置として使用されていた。
【0004】
なお、関連技術には下記二段階焙煎・コーヒー生豆がある。
【特許文献】 特開昭59−11143号 公報 二段階焙煎・コーヒー豆
生のコーヒー豆を、200乃至250℃の温度下で2分間焙煎し、次にこれを減圧した容器内に移し、6時間乃至24時間室温に保存した后に、再度190乃至200℃の温度下で約2分乃至6分間加熱して出来るコーヒー豆。
従来の焙煎コーヒー豆は、生豆が1回加熱焙煎されて作られたものであるのにたいして、本発明にかかる焙煎コーヒーは、加熱→冷却保存→加熱と言う2回の間歇過熱により焙煎されて作られている。初回の加熱により生豆成分より生成した熱分解成分の分解と結合を完了后に再度これが加熱され、分解と結合が行われる結果、従来の1回焙煎によっては得られない香・味・色を持つ事を特長とする焙煎コーヒーである。
初回の焙煎を終ったコーヒー豆を減圧下に置くと、多量の炭酸ガスを発生する。これは加熱されたコーヒー豆の中で、生豆の加熱によって生成した物質の分解結合等が進んでいる事を示す。この複雑な分解と結合反応の完結には数時間を要する。
多量に発生する炭酸ガス・水蒸気の除去には、減圧下に初回の加熱を終えた豆を置く必要がある。この分解結合の結果生成した物質は、焙煎コーヒーの香り・味・色の形成する前駆物質とも呼ぶべき物で、これを再度加熱する事によって、焙煎コーヒーが持つべき香・味・色の形成が容易となる。従来の1回加熱焙煎ではこの前駆物質と呼ぶ成分が豆中にて生成されるに必要な時間が無いのである。
【0005】
二段階焙煎では、焙煎途中でコーヒー豆を減圧し冷却していたために、加熱の中断の無い1つの連続した焙煎工程ではなく、複数の焙煎工程となる。
【0006】
従来のコーヒー焙煎方法では、煎り上がりコーヒー豆を焙煎機から排出し、冷却に掛かるまでの時間を、短くする事で、煎り上がりコーヒー豆の風味を均一化していた。
【0007】
従来のコーヒー焙煎方法は、一焙煎工程でコーヒー生豆に加える熱量を大きくする事で焙煎に要する時間を短くし、均一な風味に煎り上げていた。
【発明の開示1】

【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一つの連続した焙煎工程において、煎り上がりコーヒー豆の風味を単一化させない事。
【0009】
コーヒー生豆が持つ様々な風味、甘味・酸味・苦味・渋味・香り等を、一つの連続した焙煎工程で同時に得る事。
【0010】
焙煎工程での均質な加熱により失われる、コーヒー豆の香気成分を、加熱を中断する事無く、煎り上がったコーヒー豆により多く残す事。
【0011】
従来の焙煎方法では、同時に得る事の出来ない、様々な甘味・酸味・苦味・渋味・香りを潤沢に持つ、煎り上がりコーヒー豆を同時に得る事。
【0012】
雑臭気を持つ低級生豆から雑臭気を除去し、芳香・甘味・酸味・苦味・香りを引き出し強調する事。
【0013】
雑臭気を持つ低級生豆で雑臭気の生成を阻害し、芳香・甘味・酸味・苦味・香りを引き出し強調する事。
【問題を解決するための手段】
【0014】
単一の焙煎工程において、複雑で豊かな風味のコーヒー煎り上がり豆を得るために、コーヒー生豆に加える熱量と時間を変化させ、マーブル焙煎方法を行う事で、複雑で豊かな風味のコーヒー煎り上がり豆を得る事が出来る。
【0015】
コーヒー生豆を煎り上げる工程において、一焙煎工程に必要な熱量をコーヒー生豆に加える速度と時間を調整して焙煎機に投入して煎り上げるマーブル焙煎方法を行う事で、一焙煎工程において煎り上がり状態の異なる、複雑で豊かな風味の煎り上がり豆を同時に得る事が出来る。
【0016】
一焙煎工程にコーヒー生豆に加える事が必要な熱量を、加える速度と時間を調整して煎り上げるマーブル焙煎方法を行う事で、複数回の焙煎工程で得られる、様々な風味、甘味・酸味・苦味・渋味・香り等を併せ持ったコーヒーを同時に煎り上げる事が出来る。
【0017】
焙煎のための加熱の過程で、生豆内に存在する香気成分が放出されてしまうが、コーヒー生豆に加える熱量と加える時間の調整を行い、成分が散逸・放散しないようするマーブル焙煎方法を行う事で、煎り上がり豆に多くの香気成分を残す事が出来る。
【0018】
雑臭気を持つ低級豆の雑臭気は、爆発的膨張の後、香気成分が放散される過程において生成されるので、香気成分の放散を抑止するマーブル焙煎方法を行う事で、雑臭気の形成を防止する事が出来る。
【0019】
内部に攪拌機構を有する焙煎機では、攪拌機構を無段階で調整し、攪拌速度を調整する事で、コーヒー生豆に加えられる熱量を調整し、焙煎時にコーヒー生豆に加える必要のある熱量を調整するマーブル焙煎方法を実行できる。
【0020】
内部に攪拌機構を有せず、焙煎機の内部ドラムが回転する機構を持つ焙煎機では、焙煎機の内部ドラムの回転速度と時間を無段階で任意に調整できる機構を設けてコーヒー生豆を焙煎機に投入し、印加する熱量の時間と量を調整、設定可能な機構を焙煎機に設ける事でマーブル焙煎方法を実行できる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明の手法では、一つの連続したコーヒー生豆の焙煎工程を中断する事が無く、一つのコーヒー煎り豆を様々な煎り上がり状態で得る事が出来るので、焙煎工程の簡略化と、複雑で豊かな風味の煎り上がりコーヒー豆を得る事が出来る。
【0022】
焙煎機内部の攪拌機構の回転速度と時間を調整する事で、コーヒー生豆焙煎時にコーヒー生豆に印加される熱量の増減や時間を調整出来るので、煎り上がりコーヒー豆に豊かな風味を持たせる事が出来る。
【0023】
焙煎機の内部ドラムの回転速度と時間を調整する事で、コーヒー生豆焙煎時にコーヒー生豆に印加される熱量の増減や時間を調整出来るので、煎り上がりコーヒー豆に豊かな風味を持たせる事が出来る。
【0024】
焙煎機内攪拌機構の回転速度と時間を調整する事で、コーヒー生豆に印加される熱量が変化し、雑臭気を持つ低級豆では香気成分散逸後に形成される雑臭気の形成を抑止でき、低級豆でも風味豊かなコーヒー豆を得る事が出来る。
【0025】
焙煎機の内部ドラムの回転速度と時間を調整する事で、コーヒー生豆に印加される熱量を変化させ、コーヒー生豆が膨張し切った後で生成・放散するような雑臭気を持つ低級豆では香気成分散逸後に形成される雑臭気の形成を抑止でき、低級豆でも風味豊かなコーヒー豆を得る事が出来る。
【0026】
焙煎開始時のコーヒー生豆投入時から、コーヒー生豆に、ある一定時間は限定された箇所に集中して熱量を印加するため、投入されたコーヒー生豆一粒ごとに煎り上がり状態の異なる部位を作り出し、一焙煎工程で煎り上げるコーヒー豆で様々な煎り上がり状態のコーヒー豆を得る事が出来るので、複雑で風味豊かにコーヒー豆を煎り上げる事が出来る。
【0027】
焙煎開始時からコーヒー生豆に加える熱量を調整する事で、煎り上げ途中の生豆が均一に膨張し、均一に加熱されるのを防ぎ、焙煎工程においてコーヒー豆から、香気成分が散逸してしまう状態になるのを抑制できるため、焙煎途中で散逸してしまう香気成分を、コーヒー豆中の様々な煎り上がり部分に封じておく事が出来るので、複雑で風味豊かなコーヒー豆を煎り上げる事が出来る。
【0028】
攪拌機構を有する焙煎機においては、攪拌機の回転速度を任意に設定出来るような電気回路を組み込む事で、コーヒー生豆に印加される熱量と印加場所、印加時間を調整できるのでマーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0029】
攪拌機構を有する焙煎機においては、駆動用モーターの変速比を変化させるための可変ギアや無段階変速機を組み込む事で、コーヒー生豆に印加される熱量と印加場所、印加時間を調整できるのでマーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0030】
焙煎機内部が回転して攪拌を行う焙煎機においては、焙煎機の内部構造の回転速度を任意に設定出来るような電気回路を組み込む事で、コーヒー生豆に印加される熱量と印加場所、印加時間を調整できるのでマーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0031】
焙煎機内部が回転して攪拌を行う焙煎機においては、駆動用モーターの変速比を変化させるための可変ギアや無段階変速機を組み込む事で、コーヒー生豆に印加される熱量と印加場所、印加時間を調整できるのでマーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0032】
熱風吹き込みのみで焙煎を行う焙煎機では、攪拌を行う気流の速度と流量を調整する電気回路を組み込む事で、コーヒー生豆に印加される熱量と印加場所、印加時間を調整できるのでマーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0033】
熱風吹き込みのみで焙煎を行う焙煎機では、攪拌を行う気流によりコーヒー生豆に印加する熱量を、可変調整できる吸気・給気ダンパーを設ける事で、熱風の吸気・給気量を調整しコーヒー生豆に印加される熱量の印加部位、印加時間を調整できるので、マーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0034】
熱風吹き込みのみで焙煎を行う焙煎機では、攪拌を行う気流によりコーヒー生豆に印加する熱量を、可変調整できる排気ダンパーを設ける事で、排気量の調整を行う事で、コーヒー生豆に印加される熱量の印加部位、印加時間を調整できるので、マーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
攪拌機構を制御する電気回路に、変速回路を設ける事で、マーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0036】
焙煎機内部が回転する形状の焙煎機においては、内部の回転を制御する電気回路に、変速回路を設ける事で、マーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0037】
焙煎機内部に熱風を吹き込んで焙煎する焙煎機においては、熱風を吹き込むブロアーの制御回路に、ブロアーの変速回路を設ける事で、マーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0038】
焙煎機内部に熱風を吹き込んで焙煎する焙煎機においては、熱風を吹き込む風量調整ダンパーの制御回路に、開閉量を可変調整する制御回路を設ける事で、マーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0039】
攪拌機構を駆動するモーターと、動力伝達部の間に、無段変速機構を設ける事で、攪拌機構の攪拌速度を調整できるので、マーブル焙煎方法を実行する事ができる。
【0040】
焙煎機内部の回転部を駆動するモーターと、動力伝達部の間に、無段変速機構を設ける事で、攪拌機構の攪拌速度を調整できるので、マーブル焙煎方法を実行する事ができる
【0041】
マーブル焙煎方法を行うと、攪拌速度や回転速度、熱風の吹き込み速度や吹き込み量を調整する事で、コーヒー生豆に印加する熱量と印加部位を調整できるので、様々な煎り上がり状態を有する煎り上がりコーヒー豆を得る事が出来、複雑で風味豊かな煎り上がりコーヒー豆を同時に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】 本発明の実施形態の一例を示す、焙煎機の内部回転機構や攪拌機構を制御する電気回路に、インバーター回路を組み込み、周波数を可変調整する事で、回転速度を調整する。
【図2】 本発明の実施形態の一例を示す、焙煎機の内部回転機構の回転速度を機械的に制御するための動力伝達経路の模式図
【符号の説明】
【0043】
1 スイッチ
2 駆動モーター
3 インバーター回路
4 タイムディレードリレー
5 焙煎機の内部回転機構(ドラム)
6 受動台
7 動力伝達板
8 シャフトスライダ(駆動シャフトを前後させる)
9 駆動モーター
10 モーター移動スライダ
11 動力伝達プーリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー生豆を煎り上げる工程において、一焙煎工程に必要な熱量の掛け方を調整するため、焙煎機の回転速度や攪拌速度を調整し、コーヒー生豆に掛かる熱量を変化させる事により、焙煎を行うマーブル焙煎方法。
【請求項2】
コーヒー生豆を煎り上げる工程において、一焙煎工程に必要な熱量の掛け方を調整するため、熱風の吹き込み速度や風量を調整し、コーヒー生豆に掛かる熱量を変化させる事により、焙煎を行うマーブル焙煎方法。
【請求項3】
生豆に掛かる熱量を調整し、マーブル焙煎方法を事項するために、焙煎機の回転速度を無段階に調整でき、速度と時間を任意に設定できる調整機構。
【請求項4】
生豆に掛かる熱量を調整し、マーブル焙煎方法を事項するために、焙煎機の攪拌機構の回転速度を無段階に調整でき、速度と時間を任意に設定できる調整機構。
【請求項5】
生豆に掛かる熱量を調整し、マーブル焙煎方法を事項するために、焙煎機への熱風の送り込み量や送り込み速度を無段階に調整でき、速度と量と時間を任意に設定できる調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−239466(P2012−239466A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122722(P2011−122722)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(506156849)
【Fターム(参考)】