説明

コーンおよび水車

【課題】簡易な構成で、螺旋渦による脈動を大幅に低減し、振動および騒音の発生を抑制することができるコーンを提供することを課題とする。
【解決手段】流入口から流れ込む用水により回転可能な水車のランナの回転軸の中心に配設されたコーン7であって、その側面に、基端側から先端側にかけて、ランナの回転方向とは反対方向に沿った溝35を設けたことを特徴とする。この場合、コーン7は、ランナに連なるコーン基端部31と、コーン基端部31に連なるコーン先端部32とを備え、溝35は、少なくともコーン先端部32の側面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入口から流れ込む用水により回転可能な水車のランナに設けられたコーンおよび水車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコーンが設けられた水車ランナとして、シュラウドと、シュラウドの上方に位置するクラウンと、シュラウドとクラウンとの間に挟まれた複数の羽根(ランナベーン)と、回転軸中心に設けられたコーンと、を備えた羽根車(水車のランナ)が知られている(特許文献1参照)。このとき、羽根車のコーンの先端部は、シュラウド下端よりも飛び出ている。このコーンによりランナからの流水が下方側にスムーズに整流されることにより、吸出し管上部の内壁面に螺旋渦が衝突することによる騒音の発生を抑制している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−21036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の羽根車の構成によれば、騒音の発生を抑制することができるが、その抑制レベルは小幅であったため、さらに騒音や振動を抑制する場合は、さらなる改良が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成で、螺旋渦による脈動を大幅に低減し、振動および騒音の発生を抑制することができるコーンおよび水車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコーンは、流入口から流れ込む用水により回転可能な水車のランナの回転軸の中心に配設されたコーンであって、その側面に、基端側から先端側にかけて、ランナの回転方向とは反対方向に沿った溝を設けたことを特徴とする。
【0007】
この場合、ランナに連なるコーン基端部と、コーン基端部に連なるコーン先端部とを備え、溝は、少なくともコーン先端部の側面に形成されていることが、好ましい。
【0008】
これらの場合、溝は、断面V字状に形成されていることが、好ましい。
【0009】
また、これらの場合、溝の深さは、コーンの最外径に対して0.005倍以上となっていることが、好ましい。
【0010】
また、これらの場合、溝は、複数形成され、ランナは、コーンの周囲を取り囲む複数のランナベーンを有しており、溝数は、ランナベーン数の2倍以下となっていることが、好ましい。
【0011】
この場合、各ランナベーンは、ランナの周方向に対し、その先端出口側をランナの内周側に傾けて配設され、各溝は、各ランナベーンの先端出口側の延長線上に沿うようにして形成されると共に、複数の溝は、コーンの回転軸の中心に向かって、螺旋状に形成されていることが、好ましい。
【0012】
これらの場合、基端側には、ランナの回転方向とは反対方向に沿ったフィンが設けられていることが、好ましい。
【0013】
この場合、フィンの高さは、ランナの流出口における流路高さに対して、1/2倍以下に形成されていることが、好ましい。
【0014】
これらの場合、フィンは、複数配設され、ランナは、コーンの周囲を取り囲む複数のランナベーンを有しており、フィン数は、ランナベーン数の1/2倍以上となっていることが、好ましい。
【0015】
この場合、各ランナベーンは、ランナの周方向に対し、その先端出口側をランナの内周側に傾けて配設され、各フィンは、各ランナベーンの先端出口側の延長線上に沿うようにして配設されると共に、複数のフィンは、コーンの回転軸の中心に向かって、螺旋状に配設されていることが、好ましい。
【0016】
本発明の水車は、流入口から流れ込む用水により回転可能なランナと、ランナの回転軸の中心に配設されたコーンと、を備えた水車であって、コーンは、上記に記載されたコーンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、請求項1のコーンおよび請求項11の水車によれば、その側面に、水車のランナの回転方向とは反対方向に沿った溝を設けることにより、コーンの側面を流れる用水が、コーンの側面に設けた溝と干渉する。このため、コーンの側面において、剥離渦が発生することにより、螺旋渦の発達を阻害することができ、渦芯が振れ回る事によって生じる脈動を低減することができる。これにより、本発明にかかるコーンは、簡易な構成で、振動および騒音の発生を抑制することができるという効果を奏する。なお、水車としては、通常の水車のみならず、水車の機能を有するポンプ水車を含む。
【0018】
請求項2のコーンによれば、コーンの少なくともコーン先端部の側面に溝を形成すれば、渦芯の振れ回りにより生じる脈動を低減することができるため、コーン先端部のみに溝を設け、コーンの溝加工コストを削減してもよい。
【0019】
請求項3のコーンによれば、溝を断面V字状に形成することで、渦芯の振れ回りにより生じる脈動を効率よく低減することができる。
【0020】
請求項4のコーンによれば、溝の深さをコーンの最外径に対して0.005倍以上とすることで、渦芯の振れ回りにより生じる脈動を効率よく低減することができる。
【0021】
請求項5のコーンによれば、溝数を、ランナベーン数の2倍以下とすることで、さらに渦芯の振れ回りにより生じる脈動を効率よく低減することができる。
【0022】
請求項6のコーンによれば、各ランナベーンの先端出口側の延長線上に沿うようにして、複数の溝を螺旋状に形成することで、さらに渦芯の振れ回りにより生じる脈動を効率よく低減することができる。
【0023】
請求項7のコーンによれば、コーンの基端側に、水車ランナの回転方向とは反対方向に沿ったフィンを設けることで、特定の運転領域において、さらに渦芯の振れ回りにより生じる脈動を低減することができる。
【0024】
請求項8のコーンによれば、フィンの高さを、水車ランナの流出口における流路高さに対して、1/2倍以下に形成することで、渦芯の振れ回りにより生じる脈動を効率よく低減することができる。
【0025】
請求項9のコーンによれば、フィン数を、ランナベーン数の1/2倍以上とすることで、渦芯の振れ回りにより生じる脈動を効率よく低減することができる。
【0026】
請求項10のコーンによれば、各ランナベーンの先端出口側の延長線上に沿うようにして、複数のフィンを螺旋状に形成することで、さらに渦芯の振れ回りにより生じる脈動を効率よく低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付した図面を参照して、本発明にかかるコーンについて説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
ここで、図1は、ポンプ水車の概略構成図であり、図2は、コーンの外観斜視図である。また、図3は、コーンの正面図であり、図4は、コーンの下面図である。さらに、図5は、コーンのA−A’断面図であり、図6は、従来のコーンにおける脈動と実施例1のコーンにおける脈動とを比較したグラフである。
【0029】
先ず、図1を参照して、本実施例にかかるコーンを備えたポンプ水車(水車)について説明する。このポンプ水車1は、いわゆるフランシス形ポンプ水車であり、揚水を行うポンプとしての機能を有すると共に、発電を行う水車としての機能を有している。以下の説明では、主として、水車としての機能について説明する。図示は省略するが、ポンプ水車1は、取水口から導水路および水圧鉄管を介してポンプ水車1に用水を取り込むと共に、取り込んだ用水によりポンプ水車1で発電を行い、放水路を介して用水を排水口へ排出する。
【0030】
ポンプ水車1は、図示しない発電機に基端部を連結した主軸5と、主軸5の先端部に固定され、主軸と一体に回転するランナ6とを備えている。そして、ランナ6の回転に伴って、主軸5が回転することにより、発電機により発電が行われる。
【0031】
ランナ6は、主軸5の先端部に固定される円盤状のクラウン11と、クラウン11と同軸上に配設されたリング状のシュラウド12と、クラウン11とシュラウド12との間に挟まれた6枚のランナベーン13とにより構成されている。
【0032】
ランナ6へ用水が流入する用水流入口16は、ランナ6の外周となっており、また、ランナ6から用水が流出する用水流出口17は、ランナ6の回転軸方向となっている。そして、詳細は後述するが、ランナ6の用水流出口17の回転軸中心には、コーン7が配設されている。
【0033】
クラウン11の回転軸の中心部分には、上記したコーン7を取り付けるためのコーン取付部14が形成されており、コーン7は、ボルトを介してコーン取付部14に取り付けられる。
【0034】
6枚のランナベーン13は、ランナ6の周方向に沿って等間隔に配設されており、各ランナベーン13は、その先端出口側をランナ6の内周側に傾けて配置されている(図4参照)。つまり、各ランナベーン13は、ランナ6の外周から流入した用水を、ランナ6の回転軸へ導いている。
【0035】
ランナ6の用水流入口16から用水が流入すると、用水は、各ランナベーン13間を通過する。すると、ランナ6は、用水を各ランナベーン13に受けることで回転し、この後、用水は、用水流出口17から流出する。
【0036】
ランナ6の周囲には、これを取り囲むように渦巻形状のスパイラルケーシング21が配設されている。スパイラルケーシング21は、ランナ6の用水流入口16へ用水を送り込んでおり、その断面は円筒状に形成され、内部が流水路となっている。流水路は下流側へ向かうにつれて、その断面積が小さく、つまり、円筒の径が小さくなっている。
【0037】
図示は省略するが、スパイラルケーシング21には、取水口から導水路および水圧鉄管を介して取水した用水を取り込む用水取込口が設けられている。また、スパイラルケーシング21の内周側には、用水送出口26が形成されており、ここから、ランナ6の外周へ向けて用水を送り出す。
【0038】
用水取込口を介してスパイラルケーシング21の内部に用水が流入すると、用水は、流水路に案内されて、ランナ6の周方向に沿って流れる。そして、用水は、スパイラルケーシング21内を一周する間に、用水送出口26からランナ6の用水流入口16へ向けて送り出される。
【0039】
スパイラルケーシング21の内周側には、スピードリング22が配設されており、スピードリング22には、その周方向に沿って、スパイラルケーシング21内に流れ込んだ用水を整流するための複数枚のステーベーン23が設けられている。
【0040】
また、スピードリング22の内周側とランナ6の外周側との間には、複数枚のガイドベーン24がランナ6の外周に沿って配設されている。各ガイドベーン24は、図示しない動力源により回動軸を中心として開放位置と閉塞位置との間で回動自在に移動するよう構成され、スパイラルケーシング21内からステーベーン23を介してランナ6に流入する用水の流量を調節している。
【0041】
さらに、ランナ6の軸方向の流出側(図示下方)には、ランナ6の用水流出口17から流し出された用水を放水路に放出するためのドラフトチューブ25が配設されている。
【0042】
取水口から取り込んだ用水が、用水取込口を介してスパイラルケーシング21内に流れ込むと、用水は、スパイラルケーシング21を周方向に移動しつつ、用水送出口26からランナ6の用水流入口16へ向かって流れる。このとき、用水は、各ステーベーン23間を通過することで整流され、また、各ガイドベーン24間を通過することで流量が調節される。この状態でランナ6の用水流入口16から用水が流れ込むと、ランナ6は、各ランナベーン13に用水を受けて回転すると共に、主軸5を介して発電機を作動させる。この後、ランナ6に流入した用水は、ランナ6の用水流出口17を介して、下方のドラフトチューブ25へ向けて流れ込み、放水路を介して排水口から排水される。
【0043】
ところで、ランナ6に流入する用水の流量は、複数のガイドベーン24により調節可能となっているが、例えば、最適な流量よりも少ない流量でポンプ水車1の運転を行った場合、いわゆる、部分負荷運転を行った場合、ランナ6からドラフトチューブ25に用水が流入すると、ドラフトチューブ25内に螺旋渦が発生する。同様に、最適な流量よりも多い流量でポンプ水車1の運転を行った場合、いわゆる、過負荷運転を行った場合も、ドラフトチューブ25内に螺旋渦が発生する。
【0044】
具体的には、部分負荷運転を行うと、ドラフトチューブ25内において、死水領域が形成され、この死水領域の周りを、形成された螺旋渦が振れ回り、これがドラフトチューブ25壁面に接触することで、振動や騒音が発生する。そこで、この問題を解消すべく、本実施例では、コーン7の表面に断面V字状に形成された溝(V溝)35を複数形成することで渦芯が振れ回る事によって生じる脈動を抑制している。
【0045】
以下、図2ないし図5を参照して、コーン7について詳細に説明する。このコーン7は、筒状に形成されており、クラウン11のコーン取付部に取り付けられるコーン基端部31と、コーン基端部31に連なるコーン先端部32とから構成されている。コーン基端部31およびコーン先端部32は、それぞれ円錐台状に形成されている。回転軸の直交方向に対するコーン基端部31の側面の勾配θ1は、回転軸の直交方向に対するコーン先端部32の側面の勾配θ2に比して、小さく(緩やかと)なっている(図3参照)。このため、コーン基端部31とコーン先端部32との境界部分は軸心側へ屈曲した形状となっている。
【0046】
コーン7の側面、つまり、コーン基端部31の側面およびコーン先端部32の側面には、6本のV溝35が形成されている。各V溝35は、コーン7の回転軸を中心にして、コーン7の基端側縁部から先端側縁部へかけて、コーン7の回転方向と逆方向(反対方向)となるような螺旋状に形成されている。また、6本のV溝35は、それぞれ等間隔となるように形成されている。
【0047】
このとき、図4に示すように、各V溝35は、その延在方向が各ランナベーン13の先端出口側の延長線上となるように形成されている。すなわち、各ランナベーン13の先端出口側の傾きと、各V溝35の基端部側の傾きとが、ほぼ同じ傾きとなっており、各ランナベーン13から各V溝35へかけて連続する流線となっている。
【0048】
また、各V溝35の深さは、コーン7の最外径であるコーン基端部31側の端面(上端面)の直径に対し、0.005倍以上となっている。つまり、例えば、コーン7の最外径が2mであれば、各V溝35の深さは1cm以上であれば良い。なお、図5に示すように、本実施例では、コーン7の最外径が2mのときに、各V溝35の深さが3cmであることが好ましく、これにより、渦芯が振れ回る事によって生じる脈動を抑制する効果を最適とすることができる。
【0049】
さらに、コーン7の側面に形成されるV溝35の本数は、ランナベーン13の枚数によって決定されており、V溝35の本数は、ランナベーン13枚数の2倍以下となっている。つまり、例えば、ランナベーン13の枚数が6枚のとき、V溝35の本数は12本以下であれば良いため、場合によっては1本でもよい。なお、図4に示すように、本実施例では、V溝35の本数は、ランナベーン13枚数と同数となることが好ましく、この場合も、渦芯が振れ回る事によって生じる脈動を抑制する効果を最適とすることができる。
【0050】
ここで、図6を参照して、V溝35が形成されていない従来のコーンを用いた場合における渦芯の振れ回りにより生じる脈動、および本実施例にかかるコーン7を用いた場合における渦芯の振れ回りにより生じる脈動について、それぞれ比較する。図6は、その縦軸が、ピーク周波数時における螺旋渦の圧力脈動となっており、その横軸が、各ガイドベーン24の開度となっている。なお、縦軸において、従来のコーンにおける最大脈動を100%としている。また、横軸において、ガイドベーン開度が約40%〜50%の範囲におけるポンプ水車1の運転が部分負荷運転領域となっており、また、ガイドベーン開度が80%のときに、ポンプ水車1が最適な運転を行うよう設計されている。さらに、黒○印は従来のコーンにおける脈動であり、黒□印は実施例1のコーン7における脈動である。
【0051】
この図を見るに、従来のコーンにおいて、ガイドベーン開度が80%のときには、最適な運転がなされているため、螺旋渦による脈動は抑制されている。しかし、ガイドベーン開度が100%に近づくにつれ、言い換えれば、過負荷運転を行うと螺旋渦による脈動は徐々に上昇してゆく。同様に、ガイドベーン開度が80%から小さくしてゆくと、螺旋渦による脈動は徐々に上昇してゆき、ガイドベーン開度が50%あたりで、螺旋渦による脈動が最大となる。ここからさらにガイドベーン開度を小さくしてゆくと、今度は、螺旋渦による脈動が徐々に下降してゆく。
【0052】
本実施例のコーン7も、ガイドベーン開度が80%のときにおいて最適な運転が行われるように設計されており、従来のコーンとほぼ同様の脈動となっている。ここで、部分負荷運転領域、つまり、ガイドベーン開度が40%〜50%の間において、本実施例のコーン7を用いた場合の渦芯の振れ回りにより生じる脈動は、従来のコーンを用いた場合の渦芯の振れ回りにより生じる脈動に比して、低減していることが分かった。具体的には、ガイドベーン開度が50%の時において、本実施例のコーン7の脈動は、従来のコーンの脈動に比して、約15%程度低減されている。
【0053】
同様に、過負荷運転時、つまり、ガイドベーン開度が80%以上のときにおいても、本実施例のコーン7を用いたときの渦芯の振れ回りにより生じる脈動は、従来のコーンを用いた場合の渦芯の振れ回りにより生じる脈動に比して、低減していることが分かった。これにより、コーン7の側面にV溝35を形成することで、渦芯の振れ回りにより生じる脈動が抑制可能であることが分かった。
【0054】
以上の構成によれば、コーン7の側面にV溝35を形成するという簡易な構成で、渦芯の振れ回りにより生じる脈動を低減することができるため、螺旋渦の発生による振動および騒音を抑制することができる。
【0055】
なお、本実施例においては、コーン基端部31の側面およびコーン先端部32の側面に亘って、V溝35を形成したが、少なくともコーン先端部32の側面にV溝35を形成すればよい。この構成によれば、V溝35の加工をコーン先端部32にのみ行えばよいため、加工コストを削減することができる。また、本実施例では、コーン7の側面にV溝を形成したが、これに限らず、U溝等にしてもよい。さらに、本実施例において、ランナ6およびコーン7は別体としたが、一体に形成しても良い。
【実施例2】
【0056】
次に、図7ないし図9を参照して、実施例2にかかるコーン40について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。図7は、コーンの外観斜視図であり、図8は、コーンの上面図である。また、図9は、コーンのB−B’断面図である。
【0057】
実施例1にかかるコーン7では、コーン先端部32の側面およびコーン基端部31の側面に亘ってV溝を形成したが、実施例2にかかるコーン40では、コーン先端部32の側面にV溝を形成し、コーン基端部31の側面に6枚のフィン41を配設している。すなわち、実施例1のコーン基端部31に形成された6本のV溝35に代えて、6枚のフィン41が配設されている。
【0058】
図8に示すように、6枚のフィン41は、コーン先端部32の周囲を取り囲むように等間隔に配設されている。つまり、実施例1においてコーン基端部31に形成された各V溝35上に、各フィン41が配置されている。このため、6枚のフィン41も、コーン40の回転軸を中心に螺旋状に配設されている。同様に、各フィン41は、その延在方向が各ランナベーン13の先端出口側の延長線上となるように形成されている。すなわち、各ランナベーン13の先端出口側の傾きと、各フィン41の基端部側の傾きとが、ほぼ同じ傾きとなっており、各ランナベーン13から各フィン41へかけて連続する流線となっている。
【0059】
また、図9に示すように、各フィン41は、正面視三角形状に形成されると共に、コーン基端部31とコーン先端部32との境界部分からコーン基端部31の基端側へかけて、各フィン41の高さが徐々に高くなるよう形成されている。基端側における各フィン41の高さは、ランナ6の用水流出口17におけるクラウン11およびシュラウド12の間の流路高さに対して、1/2倍以下に形成されている。
【0060】
また、フィン41の枚数は、ランナベーン13の枚数によって決定されており、フィン41の枚数は、ランナベーン13の枚数の1/2倍以上となっている。つまり、例えば、ランナベーン13の枚数が6枚であれば、フィン41の枚数は3枚以上であれば良い。なお、本実施例では、フィン41の枚数は、ランナベーン13の枚数と同数となっている。
【0061】
ここで再び、図6を参照して、溝が形成されていない従来のコーンを用いた場合における渦芯の振れ回りにより生じる脈動、および実施例2にかかるコーン40を用いた場合における渦芯の振れ回りにより生じる脈動について、それぞれ比較する。図6において、黒△印は、実施例2のコーン40における脈動である。
【0062】
この図を見るに、ガイドベーン開度が50%の時において、実施例2のコーン40の脈動は、従来のコーンおよび実施例1のコーン7の脈動に比して、抑制されている。これにより、コーン40のコーン先端部32の側面にV溝35を形成し、コーン40のコーン基端部の側面にフィン41を配設することで、渦芯の振れ回りにより生じる脈動をさらに効果的に抑制できることが分かった。
【0063】
以上の構成によれば、実施例2にかかるコーン40は、実施例1のコーン7に比して、加工は複雑になるものの、フィン41を設けることにより、特定のガイドベーン開度において、渦芯の振れ回りにより生じる脈動をさらに低減することができる。このため、螺旋渦の発生による振動および騒音を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明にかかるコーンは、ポンプ水車等の水車に有用であり、特に、螺旋渦が発生する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1にかかるコーンを備えたポンプ水車の概略構成図である。
【図2】実施例1にかかるコーンの外観斜視図である。
【図3】コーンの正面図である。
【図4】コーンの下面図である。
【図5】コーンのA−A’断面図である。
【図6】従来のコーンにおける脈動と実施例1のコーンにおける脈動とを比較したグラフである。
【図7】実施例2にかかるコーンの外観斜視図である。
【図8】コーンの下面図である。
【図9】コーンのB−B’断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ポンプ水車
6 ランナ
7 コーン(実施例1)
13 ランナベーン
25 ドラフトチューブ
31 コーン基端部
32 コーン先端部
35 V溝
40 コーン(実施例2)
41 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口から流れ込む用水により回転可能な水車のランナの回転軸の中心に配設されたコーンであって、
その側面に、基端側から先端側にかけて、前記ランナの回転方向とは反対方向に沿った溝を設けたことを特徴とするコーン。
【請求項2】
前記ランナに連なるコーン基端部と、前記コーン基端部に連なるコーン先端部とを備え、
前記溝は、少なくとも前記コーン先端部の側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコーン。
【請求項3】
前記溝は、断面V字状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコーン。
【請求項4】
前記溝の深さは、前記コーンの最外径に対して0.005倍以上となっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコーン。
【請求項5】
前記溝は、複数形成され、
前記ランナは、前記コーンの周囲を取り囲む複数のランナベーンを有しており、
前記溝数は、前記ランナベーン数の2倍以下となっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコーン。
【請求項6】
前記各ランナベーンは、前記ランナの周方向に対し、その先端出口側を前記ランナの内周側に傾けて配設され、
前記各溝は、前記各ランナベーンの先端出口側の延長線上に沿うようにして形成されると共に、前記複数の溝は、前記コーンの回転軸の中心に向かって、螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のコーン。
【請求項7】
前記基端側には、前記ランナの回転方向とは反対方向に沿ったフィンが設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のコーン。
【請求項8】
前記フィンの高さは、前記ランナの流出口における流路高さに対して、1/2倍以下に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のコーン。
【請求項9】
前記フィンは、複数配設され、
前記ランナは、前記コーンの周囲を取り囲む複数のランナベーンを有しており、
前記フィン数は、前記ランナベーン数の1/2倍以上となっていることを特徴とする請求項7または8に記載のコーン。
【請求項10】
前記各ランナベーンは、前記ランナの周方向に対し、その先端出口側を前記ランナの内周側に傾けて配設され、
前記各フィンは、前記各ランナベーンの先端出口側の延長線上に沿うようにして配設されると共に、前記複数のフィンは、前記コーンの回転軸の中心に向かって、螺旋状に配設されていることを特徴とする請求項9に記載のコーン。
【請求項11】
流入口から流れ込む用水により回転可能なランナと、前記ランナの回転軸の中心に配設されたコーンと、を備えた水車であって、
前記コーンは、請求項1ないし10のいずれか1項に記載されたコーンであることを特徴とする水車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−115061(P2009−115061A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292313(P2007−292313)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】