ゴムシート冷却装置
【課題】急冷液槽を不要とし、ゴムシートに付着した冷却液を除去するためのエアブロワを設ける必要がないようにしたゴムシート冷却装置を提供する。
【解決手段】ゴムシート12を押し出す押出機14から押し出されたゴムシート12の下面を支持しつつ回転駆動することでゴムシート12を搬送する複数のローラ34と、複数のローラ34の内の少なくとも1個のローラを内部から冷却する冷却手段(導入管56、導出管58)と、を設ける。
【解決手段】ゴムシート12を押し出す押出機14から押し出されたゴムシート12の下面を支持しつつ回転駆動することでゴムシート12を搬送する複数のローラ34と、複数のローラ34の内の少なくとも1個のローラを内部から冷却する冷却手段(導入管56、導出管58)と、を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムシート冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押出機から押し出されたゴムシートを急冷することによってゴムシートの表面接着性を保持するゴムシート冷却装置を備えたゴムシート製造装置が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−8308
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に比較例としてのゴムシート冷却装置を示す。押出機から押し出されたゴムシートは複数の駆動ローラからなる搬送装置に載せられて下流側に搬送される。搬送装置の途中にはゴムシートの表面を急冷するための急冷液槽が設けられ、ゴムシートを急冷液槽の冷却液に浸漬させることでゴムシート表面を急冷し、表面接着性を保持するようにしている。
【0005】
しかしながら、ゴムシートを冷却液に浸漬させるため、ゴムシートには冷却液が付着することとなる。ゴムシートに冷却液が付着したままではゴムシートの計量を正確に行うことができないと共にゴムシートにラインマーカを塗布することができないため、ゴムシートに付着した冷却液を除去するためのエアブロワを設ける必要があった。
【0006】
また、冷却液が計量機やラインマーカ塗布装置などの機器にも付着することもあり、それら機器の耐久性を低下させる原因となっていた。さらに、そもそも搬送装置の途中に急冷液槽を設けるためのスペースを要し、ゴムシート製造装置全体として大型化する傾向にあった。
【0007】
そこで、本発明は、急冷液槽を不要とし、ゴムシートに付着した冷却液を除去するためのエアブロワを設ける必要がないようにしたゴムシート冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載のゴムシート冷却装置は、ゴムシートを押し出す押出機から押し出されたゴムシートの下面を支持しつつ回転駆動することで前記ゴムシートを直線的に搬送する複数のローラと、前記複数のローラの内の少なくとも1個のローラを内部から冷却する冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載のゴムシート冷却装置は、請求項1に記載のゴムシート冷却装置において、前記冷却手段は、前記ローラの内部に挿入され、冷却媒体を前記ローラの内部に流入させる流入管と、前記ローラの内部に流入された冷却媒体を前記ローラの外部に流出させる流出管と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載のゴムシート冷却装置によれば、押出機から押し出されたゴムシートの下面を支持しつつ回転駆動することでゴムシートを搬送する複数のローラを備える。そして、複数のローラの内の少なくとも1個のローラを内部から冷却し、ゴムシートを冷却されたローラに接触させて搬送することでゴムシートを冷却する。このため、急冷液槽が不要となり、ゴムシートを急冷するに際して冷却液がゴムシートに付着することを防止でき、エアブロワを不要とすることができる。
【0011】
また、冷却液が計量機やラインマーカ塗布装置などの機器にも付着することがないため、それら機器の耐久性が低下するのを防止することができる。さらに、急冷液槽を設けるためのスペースも不要となるため、ゴムシート製造装置を全体として小型化することができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載のゴムシート冷却装置によれば、流入管をローラの内部に挿入して冷却媒体をローラの内部に流入させ、流出管を通じて冷却媒体をローラ外部に流出させる。そのため、簡易な構成ながら容易にローラを内部から冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るゴムシート冷却装置を備えたゴムシート製造装置を示す図である。
【図2】図1の急冷ローラの詳細を示す縦断面図である。
【図3】比較例としてのゴムシート冷却装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るゴムシート冷却装置1を備えたゴムシート製造装置10を示す図である。尚、本装置によって製造されるゴムシート12は、タイヤの最外部であるトレッドやサイドウォールに用いられる。
【0016】
ゴムシート製造装置10は、押出機14と搬送装置16と急冷装置18とリッヂローラ20とラインマーカ塗布装置22と品質管理センサ24と計量機26と傷入れ装置28と冷却液槽30を備えてなる。ゴムシート冷却装置1は搬送装置16を基礎とする急冷装置18からなる。
【0017】
押出機14は、未加硫ゴム材を金口32から押し出すことによってゴムシート12として連続的に排出する。ゴムシート12の幅は例えば300mmであり、厚みは例えば10mm程度である。押出機14から押し出された直後のゴムシート12の温度は110℃程度である。
【0018】
搬送装置16は、搬送方向に沿って配置された複数のローラ34からなる。各ローラ34は図示しない駆動源によって回転駆動される。各ローラ34は押出機14から押し出されるゴムシート12の下面を支持しつつ回転駆動することでゴムシート12を撓ませることなく押出機14から下流側へ直線的に搬送する。尚、一部のローラ34を従動ローラとしても良い。
【0019】
急冷装置18は、搬送装置16を構成する複数のローラ34の内の例えば14個のローラ34の内部に冷却媒体を流出入させることで構成される急冷ローラ36からなる。詳細については後述する。急冷装置18(急冷ローラ36)はゴムシート12との接触によりゴムシート12の表面温度を低下させ、ゴムシート12表面の粘着性を保持させる。
【0020】
具体的には、押出機14から押し出されたゴムシート12の表面温度を押出直後から2分以内に90℃以上から75℃以下まで急冷させることで、ゴムシート12表面の粘着性を保持させる。ゴムシート12を急冷せずに長時間高温に保つとステアリン酸亜鉛が析出し、ゴムシート12表面がこれによって覆われるため、粘着性が失われる。
【0021】
ゴムシート12表面の粘着性を保持させることにより、ゴム糊を用いることなくゴムシート12を張り付け部材(例えば下地ゴム材)に張り付けることができるため、押出機14から押し出された直後にゴムシート12表面を急冷するようにしている。尚、本装置によって製造されるゴムシート12は、タイヤの最外部であるトレッドやサイドウォールに用いられるため、ゴムシート12の片側表面(下面)を急冷することで十分である。
【0022】
リッヂローラ20は、ゴムシート12表面にゴムシート12の搬送方向に長溝を彫る刃部(図示省略)にゴムシート12を押し付けるための押圧ローラである。尚、ゴムシート12表面に彫られた長溝は、ゴムシート12を張り付け部材に張り付けるに際して間に入り込んだ空気を逃がすための溝(空気逃げ溝)である。
【0023】
ラインマーカ塗布装置22は、インクをゴムシート12に塗布するインク塗布装置からなる。ラインマーカ塗布装置22により、このゴムシート12から製造されるタイヤのサイズなどの規格記号がゴムシート12に予め表記される。
【0024】
品質管理センサ24は、レーザ光をゴムシート12の上下方向において投受光してゴムシート12の幅長を計測する計測センサと、ゴムシート12の表面温度を測定する例えば赤外線放射温度計から構成される温度センサとからなる。
【0025】
計量機26は、搬送装置16の複数のローラ34の内の例えば6個のローラ34の下方に配置され、所定長さ当たりのゴムシート12の重さを計量する。具体的には、6個のローラ34と6個のローラ34によって支持されるゴムシート12との総重量から6個のローラ34の重量を差し引くことにより、所定長さ当たりのゴムシート12の重さを計量する。
【0026】
傷入れ装置28は、ゴムシート12表面にNG品であることを示す傷を入れるための突起38が複数形成された傷入れローラ40と、傷入れローラ40を上下方向に動作させる傷入れローラ動作装置(図示省略)とからなる。
【0027】
傷入れ装置28は、品質管理センサ24によって計測されたゴムシート12の幅長が予め設定された範囲内でない場合や品質管理センサ24によって測定されたゴムシート12の表面温度が予め設定された範囲内でない場合や計量機26によって計量された所定長さ当たりのゴムシート12の重さが予め設定された範囲内でない場合、傷入れローラ動作装置によって傷入れローラ40を下方に動作させ、傷入れローラ40の突起38をゴムシート12に接触させる。一方、幅長や温度や重さが予め設定された範囲内である場合、傷入れローラ40を上方に動作させ、傷入れローラ40の突起38をゴムシート12から離す。
【0028】
それにより、幅長や温度や重さにおいて範囲外であるゴムシート12部位にNG品であることを示す傷が入れられる。尚、NG品としての傷が入れられたゴムシート12部位は裁断され、廃棄される。
【0029】
冷却液槽30は、冷却液(例えば冷却水)をゴムシート12に噴霧する複数の噴霧ノズル42と、噴霧された冷却液が外部に漏れることがないように外壁をなす液槽44と、液槽44内においてゴムシート12を搬送する搬送ベルト46を備える。
【0030】
各噴霧ノズル42は冷却液が圧送される圧送管48に穿設された孔であり、冷却液を孔から吹き出させることで冷却液を霧化し、ゴムシート12に噴霧する。ここで、噴霧ノズル42によって霧化された冷却液の粒径は約500μmである。
【0031】
液槽44下部に溜まった冷却液はポンプ(図示省略)で吸い上げられ、再び圧送管48に送られる。尚、ポンプで吸い上げた冷却液を液槽44外部に設けられるチラー装置(図示せず)を経由させて圧送管48に送るようにしても良い。
【0032】
液槽44内においては、噴射ノズル42と搬送ベルト46は上下段の2段に分けられると共に、ゴムシート12は反転ローラ50に張架されることでその上下方向が反転されることにより、上面と下面の両面からゴムシート12全体が冷却される。具体的には、ゴムシート12は冷却液槽30を経ることにより、30℃程度まで冷却される。
【0033】
尚、ゴムシート12を冷却液槽30に搬送される前に同様な反転ローラ52に張架することでゴムシート12の上下方向を反転するようにしたが、反転ローラ52を設けないようにしても良い。
【0034】
図2は、急冷ローラ36(急冷装置18)の詳細を示す縦断面図である。
【0035】
急冷ローラ36は台座54から立脚した2本のフレーム56に取り付けられる。急冷ローラ36の内部は中空とされ、一端側には冷却媒体を中空内部に流入させるための流入管56と冷却媒体を中空内部から流出させるための流出管58が形成される。流入管56は急冷ローラ36と同軸上に形成されると共に、中空内部の奥の他端付近まで延びる。流出管58は流入管56よりも内径が大きく、流入管56を内部に収容しつつ急冷ローラ36と同軸上に形成される。
【0036】
急冷ローラ36の一端側において流出管58がベアリング60を介してフレーム56に取り付けられる。急冷ローラ36の他端側には回転軸62が備えられ、回転軸62がベアリング64を介してフレーム56に取り付けられる。それにより、急冷ローラ36はフレーム56に回転可能に支持される。尚、回転軸62によって急冷ローラ36の他端側の開口が封止される。
【0037】
電動モータ66の出力軸68に取り付けられたスプロケット70と流出管58の外周に取り付けられたスプロケット72にチェーン74が巻き掛けられ、電動モータ66の回転出力は出力軸68、スプロケット70、チェーン74、スプロケット72を経て急冷ローラ36に伝達される。それにより、急冷ローラ36が回転駆動される。尚、電動モータ66と急冷ローラ36の離間している場合、スプロケット70とスプロケット72の間に中間スプロケット76を設けても良い。
【0038】
流出管58は急冷ローラ36の外周面と共に一体的に回転するが、ロータリジョイント78を介して外部に固定される導出管80に接続されることにより、冷却媒体が流出可能とされている。
【0039】
急冷ローラ36の中空内部には常時冷却媒体が流出入され、急冷ローラ36の外周面は低温に保持される。急冷ローラ36はゴムシート12の下面を支持して搬送するに際し、ゴムシート12との接触によってゴムシート12の表面温度を低下させる。
【0040】
上記のように、本発明の実施形態に係るゴムシート冷却装置1は、押出機14から押し出されたゴムシート12の下面を支持しつつ回転駆動することでゴムシート12を押出機14から下流側へ搬送する複数のローラ34を備え、複数のローラ34の内のいくつかの内部に冷却液を流出入させることで急冷ローラ36を構成し、搬送されるゴムシート12表面を急冷するように構成したので、ゴムシート12を急冷するに際して冷却液がゴムシート12に付着することがなく、比較例(図3)のゴムシート冷却装置100では必要的であった急冷水槽102やエアブロワ104などの設備を不要とすることができる。
【0041】
また、冷却媒体が計量機26やラインマーカ塗布装置22などの機器にも付着することがないため、それら機器の耐久性が低下するのを防止することができる。さらに、急冷液槽102を設けるためのスペースも不要となるため、ゴムシート製造装置10を全体として小型化することができる。また、図1に示すように、リッヂローラ20とラインマーカ塗布装置22を急冷ローラ36と共存させるように配置することでもゴムシート製造装置10を小型化することができる。
【0042】
尚、急冷ローラ36内部に流出入させる冷却媒体としては、冷却水を用いると良いが、液体窒素や圧縮空気などであっても良い。
【0043】
また、流入管56と流出管58に代え、例えば冷却コイルを急冷ローラ36を挿入して冷却コイルによって急冷ローラ36を内部から冷却するように構成しても良い。
【0044】
また、急冷ローラ36を14個設けてゴムシートを急冷するようにしたが、品質管理センサ24によって検出されるゴムシート12の表面温度に応じて14個の急冷ローラ36の内のいくつかへの冷却媒体の流出入を止めるようにしても良い。
【0045】
また、上記においては押出機14から押し出されたゴムシート12の表面を急冷することにより、ゴムシート12表面の粘着性を保持するようにしたが、補足的にゴム糊塗布装置を設けても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 ゴムシート冷却装置
10 ゴムシート製造装置
12 ゴムシート
14 押出機
16 搬送装置
18 急冷装置
22 ラインマーカ塗布装置
26 計量機
30 冷却液槽
34 ローラ
36 急冷ローラ
56 導入管(冷却手段)
58 導出管(冷却手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムシート冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押出機から押し出されたゴムシートを急冷することによってゴムシートの表面接着性を保持するゴムシート冷却装置を備えたゴムシート製造装置が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−8308
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に比較例としてのゴムシート冷却装置を示す。押出機から押し出されたゴムシートは複数の駆動ローラからなる搬送装置に載せられて下流側に搬送される。搬送装置の途中にはゴムシートの表面を急冷するための急冷液槽が設けられ、ゴムシートを急冷液槽の冷却液に浸漬させることでゴムシート表面を急冷し、表面接着性を保持するようにしている。
【0005】
しかしながら、ゴムシートを冷却液に浸漬させるため、ゴムシートには冷却液が付着することとなる。ゴムシートに冷却液が付着したままではゴムシートの計量を正確に行うことができないと共にゴムシートにラインマーカを塗布することができないため、ゴムシートに付着した冷却液を除去するためのエアブロワを設ける必要があった。
【0006】
また、冷却液が計量機やラインマーカ塗布装置などの機器にも付着することもあり、それら機器の耐久性を低下させる原因となっていた。さらに、そもそも搬送装置の途中に急冷液槽を設けるためのスペースを要し、ゴムシート製造装置全体として大型化する傾向にあった。
【0007】
そこで、本発明は、急冷液槽を不要とし、ゴムシートに付着した冷却液を除去するためのエアブロワを設ける必要がないようにしたゴムシート冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載のゴムシート冷却装置は、ゴムシートを押し出す押出機から押し出されたゴムシートの下面を支持しつつ回転駆動することで前記ゴムシートを直線的に搬送する複数のローラと、前記複数のローラの内の少なくとも1個のローラを内部から冷却する冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載のゴムシート冷却装置は、請求項1に記載のゴムシート冷却装置において、前記冷却手段は、前記ローラの内部に挿入され、冷却媒体を前記ローラの内部に流入させる流入管と、前記ローラの内部に流入された冷却媒体を前記ローラの外部に流出させる流出管と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載のゴムシート冷却装置によれば、押出機から押し出されたゴムシートの下面を支持しつつ回転駆動することでゴムシートを搬送する複数のローラを備える。そして、複数のローラの内の少なくとも1個のローラを内部から冷却し、ゴムシートを冷却されたローラに接触させて搬送することでゴムシートを冷却する。このため、急冷液槽が不要となり、ゴムシートを急冷するに際して冷却液がゴムシートに付着することを防止でき、エアブロワを不要とすることができる。
【0011】
また、冷却液が計量機やラインマーカ塗布装置などの機器にも付着することがないため、それら機器の耐久性が低下するのを防止することができる。さらに、急冷液槽を設けるためのスペースも不要となるため、ゴムシート製造装置を全体として小型化することができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載のゴムシート冷却装置によれば、流入管をローラの内部に挿入して冷却媒体をローラの内部に流入させ、流出管を通じて冷却媒体をローラ外部に流出させる。そのため、簡易な構成ながら容易にローラを内部から冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るゴムシート冷却装置を備えたゴムシート製造装置を示す図である。
【図2】図1の急冷ローラの詳細を示す縦断面図である。
【図3】比較例としてのゴムシート冷却装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るゴムシート冷却装置1を備えたゴムシート製造装置10を示す図である。尚、本装置によって製造されるゴムシート12は、タイヤの最外部であるトレッドやサイドウォールに用いられる。
【0016】
ゴムシート製造装置10は、押出機14と搬送装置16と急冷装置18とリッヂローラ20とラインマーカ塗布装置22と品質管理センサ24と計量機26と傷入れ装置28と冷却液槽30を備えてなる。ゴムシート冷却装置1は搬送装置16を基礎とする急冷装置18からなる。
【0017】
押出機14は、未加硫ゴム材を金口32から押し出すことによってゴムシート12として連続的に排出する。ゴムシート12の幅は例えば300mmであり、厚みは例えば10mm程度である。押出機14から押し出された直後のゴムシート12の温度は110℃程度である。
【0018】
搬送装置16は、搬送方向に沿って配置された複数のローラ34からなる。各ローラ34は図示しない駆動源によって回転駆動される。各ローラ34は押出機14から押し出されるゴムシート12の下面を支持しつつ回転駆動することでゴムシート12を撓ませることなく押出機14から下流側へ直線的に搬送する。尚、一部のローラ34を従動ローラとしても良い。
【0019】
急冷装置18は、搬送装置16を構成する複数のローラ34の内の例えば14個のローラ34の内部に冷却媒体を流出入させることで構成される急冷ローラ36からなる。詳細については後述する。急冷装置18(急冷ローラ36)はゴムシート12との接触によりゴムシート12の表面温度を低下させ、ゴムシート12表面の粘着性を保持させる。
【0020】
具体的には、押出機14から押し出されたゴムシート12の表面温度を押出直後から2分以内に90℃以上から75℃以下まで急冷させることで、ゴムシート12表面の粘着性を保持させる。ゴムシート12を急冷せずに長時間高温に保つとステアリン酸亜鉛が析出し、ゴムシート12表面がこれによって覆われるため、粘着性が失われる。
【0021】
ゴムシート12表面の粘着性を保持させることにより、ゴム糊を用いることなくゴムシート12を張り付け部材(例えば下地ゴム材)に張り付けることができるため、押出機14から押し出された直後にゴムシート12表面を急冷するようにしている。尚、本装置によって製造されるゴムシート12は、タイヤの最外部であるトレッドやサイドウォールに用いられるため、ゴムシート12の片側表面(下面)を急冷することで十分である。
【0022】
リッヂローラ20は、ゴムシート12表面にゴムシート12の搬送方向に長溝を彫る刃部(図示省略)にゴムシート12を押し付けるための押圧ローラである。尚、ゴムシート12表面に彫られた長溝は、ゴムシート12を張り付け部材に張り付けるに際して間に入り込んだ空気を逃がすための溝(空気逃げ溝)である。
【0023】
ラインマーカ塗布装置22は、インクをゴムシート12に塗布するインク塗布装置からなる。ラインマーカ塗布装置22により、このゴムシート12から製造されるタイヤのサイズなどの規格記号がゴムシート12に予め表記される。
【0024】
品質管理センサ24は、レーザ光をゴムシート12の上下方向において投受光してゴムシート12の幅長を計測する計測センサと、ゴムシート12の表面温度を測定する例えば赤外線放射温度計から構成される温度センサとからなる。
【0025】
計量機26は、搬送装置16の複数のローラ34の内の例えば6個のローラ34の下方に配置され、所定長さ当たりのゴムシート12の重さを計量する。具体的には、6個のローラ34と6個のローラ34によって支持されるゴムシート12との総重量から6個のローラ34の重量を差し引くことにより、所定長さ当たりのゴムシート12の重さを計量する。
【0026】
傷入れ装置28は、ゴムシート12表面にNG品であることを示す傷を入れるための突起38が複数形成された傷入れローラ40と、傷入れローラ40を上下方向に動作させる傷入れローラ動作装置(図示省略)とからなる。
【0027】
傷入れ装置28は、品質管理センサ24によって計測されたゴムシート12の幅長が予め設定された範囲内でない場合や品質管理センサ24によって測定されたゴムシート12の表面温度が予め設定された範囲内でない場合や計量機26によって計量された所定長さ当たりのゴムシート12の重さが予め設定された範囲内でない場合、傷入れローラ動作装置によって傷入れローラ40を下方に動作させ、傷入れローラ40の突起38をゴムシート12に接触させる。一方、幅長や温度や重さが予め設定された範囲内である場合、傷入れローラ40を上方に動作させ、傷入れローラ40の突起38をゴムシート12から離す。
【0028】
それにより、幅長や温度や重さにおいて範囲外であるゴムシート12部位にNG品であることを示す傷が入れられる。尚、NG品としての傷が入れられたゴムシート12部位は裁断され、廃棄される。
【0029】
冷却液槽30は、冷却液(例えば冷却水)をゴムシート12に噴霧する複数の噴霧ノズル42と、噴霧された冷却液が外部に漏れることがないように外壁をなす液槽44と、液槽44内においてゴムシート12を搬送する搬送ベルト46を備える。
【0030】
各噴霧ノズル42は冷却液が圧送される圧送管48に穿設された孔であり、冷却液を孔から吹き出させることで冷却液を霧化し、ゴムシート12に噴霧する。ここで、噴霧ノズル42によって霧化された冷却液の粒径は約500μmである。
【0031】
液槽44下部に溜まった冷却液はポンプ(図示省略)で吸い上げられ、再び圧送管48に送られる。尚、ポンプで吸い上げた冷却液を液槽44外部に設けられるチラー装置(図示せず)を経由させて圧送管48に送るようにしても良い。
【0032】
液槽44内においては、噴射ノズル42と搬送ベルト46は上下段の2段に分けられると共に、ゴムシート12は反転ローラ50に張架されることでその上下方向が反転されることにより、上面と下面の両面からゴムシート12全体が冷却される。具体的には、ゴムシート12は冷却液槽30を経ることにより、30℃程度まで冷却される。
【0033】
尚、ゴムシート12を冷却液槽30に搬送される前に同様な反転ローラ52に張架することでゴムシート12の上下方向を反転するようにしたが、反転ローラ52を設けないようにしても良い。
【0034】
図2は、急冷ローラ36(急冷装置18)の詳細を示す縦断面図である。
【0035】
急冷ローラ36は台座54から立脚した2本のフレーム56に取り付けられる。急冷ローラ36の内部は中空とされ、一端側には冷却媒体を中空内部に流入させるための流入管56と冷却媒体を中空内部から流出させるための流出管58が形成される。流入管56は急冷ローラ36と同軸上に形成されると共に、中空内部の奥の他端付近まで延びる。流出管58は流入管56よりも内径が大きく、流入管56を内部に収容しつつ急冷ローラ36と同軸上に形成される。
【0036】
急冷ローラ36の一端側において流出管58がベアリング60を介してフレーム56に取り付けられる。急冷ローラ36の他端側には回転軸62が備えられ、回転軸62がベアリング64を介してフレーム56に取り付けられる。それにより、急冷ローラ36はフレーム56に回転可能に支持される。尚、回転軸62によって急冷ローラ36の他端側の開口が封止される。
【0037】
電動モータ66の出力軸68に取り付けられたスプロケット70と流出管58の外周に取り付けられたスプロケット72にチェーン74が巻き掛けられ、電動モータ66の回転出力は出力軸68、スプロケット70、チェーン74、スプロケット72を経て急冷ローラ36に伝達される。それにより、急冷ローラ36が回転駆動される。尚、電動モータ66と急冷ローラ36の離間している場合、スプロケット70とスプロケット72の間に中間スプロケット76を設けても良い。
【0038】
流出管58は急冷ローラ36の外周面と共に一体的に回転するが、ロータリジョイント78を介して外部に固定される導出管80に接続されることにより、冷却媒体が流出可能とされている。
【0039】
急冷ローラ36の中空内部には常時冷却媒体が流出入され、急冷ローラ36の外周面は低温に保持される。急冷ローラ36はゴムシート12の下面を支持して搬送するに際し、ゴムシート12との接触によってゴムシート12の表面温度を低下させる。
【0040】
上記のように、本発明の実施形態に係るゴムシート冷却装置1は、押出機14から押し出されたゴムシート12の下面を支持しつつ回転駆動することでゴムシート12を押出機14から下流側へ搬送する複数のローラ34を備え、複数のローラ34の内のいくつかの内部に冷却液を流出入させることで急冷ローラ36を構成し、搬送されるゴムシート12表面を急冷するように構成したので、ゴムシート12を急冷するに際して冷却液がゴムシート12に付着することがなく、比較例(図3)のゴムシート冷却装置100では必要的であった急冷水槽102やエアブロワ104などの設備を不要とすることができる。
【0041】
また、冷却媒体が計量機26やラインマーカ塗布装置22などの機器にも付着することがないため、それら機器の耐久性が低下するのを防止することができる。さらに、急冷液槽102を設けるためのスペースも不要となるため、ゴムシート製造装置10を全体として小型化することができる。また、図1に示すように、リッヂローラ20とラインマーカ塗布装置22を急冷ローラ36と共存させるように配置することでもゴムシート製造装置10を小型化することができる。
【0042】
尚、急冷ローラ36内部に流出入させる冷却媒体としては、冷却水を用いると良いが、液体窒素や圧縮空気などであっても良い。
【0043】
また、流入管56と流出管58に代え、例えば冷却コイルを急冷ローラ36を挿入して冷却コイルによって急冷ローラ36を内部から冷却するように構成しても良い。
【0044】
また、急冷ローラ36を14個設けてゴムシートを急冷するようにしたが、品質管理センサ24によって検出されるゴムシート12の表面温度に応じて14個の急冷ローラ36の内のいくつかへの冷却媒体の流出入を止めるようにしても良い。
【0045】
また、上記においては押出機14から押し出されたゴムシート12の表面を急冷することにより、ゴムシート12表面の粘着性を保持するようにしたが、補足的にゴム糊塗布装置を設けても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 ゴムシート冷却装置
10 ゴムシート製造装置
12 ゴムシート
14 押出機
16 搬送装置
18 急冷装置
22 ラインマーカ塗布装置
26 計量機
30 冷却液槽
34 ローラ
36 急冷ローラ
56 導入管(冷却手段)
58 導出管(冷却手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムシートを押し出す押出機から押し出されたゴムシートの下面を支持しつつ回転駆動することで前記ゴムシートを直線的に搬送する複数のローラと、
前記複数のローラの内の少なくとも1個のローラを内部から冷却する冷却手段と、
を備えるゴムシート冷却装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記ローラの内部に挿入され、冷却媒体を前記ローラの内部に流入させる流入管と、前記ローラの内部に流入された冷却媒体を前記ローラの外部に流出させる流出管と、を備える請求項1に記載のゴムシート冷却装置。
【請求項1】
ゴムシートを押し出す押出機から押し出されたゴムシートの下面を支持しつつ回転駆動することで前記ゴムシートを直線的に搬送する複数のローラと、
前記複数のローラの内の少なくとも1個のローラを内部から冷却する冷却手段と、
を備えるゴムシート冷却装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記ローラの内部に挿入され、冷却媒体を前記ローラの内部に流入させる流入管と、前記ローラの内部に流入された冷却媒体を前記ローラの外部に流出させる流出管と、を備える請求項1に記載のゴムシート冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−81689(P2012−81689A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231400(P2010−231400)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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