説明

ゴムモールド部品

【課題】 直径の異なる電力ケーブルに対して同じサイズのゴムモールド部品を装着する場合、いずれの電力ケーブルであってもスムーズに装着することのできるゴムモールド部品を提供する。
【解決手段】 電力ケーブルの端末部に装着されるゴムモールド部品である。ゴムモールド部品には、絶縁ゴムからなる筒状の本体部と、半導電性ゴム又は高誘電率ゴムから形成されて、本体部の中間内周に全周にわたって配置された電界緩和層とが備えられている。電界緩和層における電力ケーブルの挿入口側の内周面には、中心に向かって凸となる凸条が本体部の軸方向に沿うように、少なくとも一つ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムモールド部品に係り、特に電力ケーブルの端末部に装着されるゴムモールド部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばCVケーブルなどの電力ケーブルの端末部にはゴムモールド部品が装着されている。このゴムモールド部品としては、電力ケーブルとの間に隙間を形成し、電力ケーブルに塗布されたグリース等の潤滑剤を奥まで案内しやすくすることで、スムーズな装着を可能とする半球状突起が形成されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−289650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、外径の異なる複数種類の電力ケーブルに対しても、同じサイズのゴムモールド部品を装着することが望まれている。しかしながら、従来のゴムモールド部品は、電力ケーブルの外径に対する適合範囲が狭く、適合範囲よりも外径の大きな電力ケーブルに装着すると、半球状突起が完全につぶれてしまい、ゴムモールド部品と電力ケーブルの間の隙間が形成されないおそれがある。この場合、潤滑剤がその位置で遮断されてしまい、ゴムモールド部品を電力ケーブルにスムーズに装着をできないおそれがあった。
このため、本発明の課題は、外径の異なる電力ケーブルに対して同じサイズのゴムモールド部品を装着する場合、当該電力ケーブルの外径に対する適合範囲が広く、当該電力ケーブルにスムーズに装着することのできるゴムモールド部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、
電力ケーブルの端末部に装着されるゴムモールド部品において、
絶縁ゴムからなる筒状の本体部と、
半導電性ゴム又は高誘電率ゴムから形成されて、前記本体部の中間内周に全周にわたって配置された電界緩和層を備え、
前記電界緩和層における前記電力ケーブルの挿入口側の内周面には、中心に向かって凸となる凸条が前記本体部の軸方向に沿うように、少なくとも一つ形成されていることを特徴としている。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、電界緩和層における電力ケーブルの挿入口側の内周面に、本体部の軸方向に沿う凸条が少なくとも一つ形成されているので、半球状突起の場合と比べて、ゴムモールド部品が内側(電力ケーブル中心側)へ収縮しようとする力を支える部分の体積を大きくすることができる。これにより、電力ケーブルが挿入された際にゴムモールド部品が内側へ収縮しようとする力を支える部分(凸条)が受ける力を分散させて、ゴムモールド部品と電力ケーブルとの間に隙間を確保することができる。また凸条は本体部の軸方向に沿うように形成されているので、電力ケーブルを挿入する際に、電力ケーブルの外周に塗布された潤滑剤をゴムモールド部品の内部にガイドすることができる。例えば、外径の大きい電力ケーブルが挿入された場合は、外径の小さな電力ケーブルが挿入された場合よりもゴムモールド部品が内側へと収縮しようとする大きな力が付与されるが、凸条は半球状突起よりも体積が大きいため、凸条が支えるゴムモールド部品の内側に収縮しようとする単位面積あたりの力が小さくなる。これにより、ゴムモールド部品が内側に収縮しようとする力を支える部分である凸条が完全につぶれてしまうことは防止され、電力ケーブルとゴムモールド部品との間に隙間が形成される。このように隙間が形成されていると、電力ケーブルに塗布された潤滑剤は、ゴムモールド部品の奥まで案内されることになり、スムーズな装着が可能となる。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のゴムモールド部品において、
前記本体部における前記電界緩和層よりも前記電力ケーブルの挿入口側の内周面には、前記電界緩和層の内周面から前記挿入口側に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面が形成されていて、
前記凸条は、前記本体部の軸方向に沿って連続するように前記テーパー面上に形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、本体部における電界緩和層よりも電力ケーブルの挿入口側の内周面にテーパー面が形成されているので、電力ケーブルが挿入される際に、電力ケーブルの端末部がテーパー面に案内され、スムーズな装着が可能となる。特に、凸条がテーパー面上にも形成されているので、電力ケーブルとゴムモールド部品との隙間もテーパー面から奥に向けて連続するため、徐々に肉厚となる部分から潤滑剤を案内することができる。したがって、よりスムーズな装着が可能となる。
【0009】
また、請求項1または2記載のゴムモールド部品において、前記凸条は、前記電界緩和層の内側に少なくとも、本体部の一番厚い部分の厚さよりも長く形成されていることが好ましい。このようにすると、電界緩和層を形成する半導電性ゴム又は高誘電率ゴムと電力ケーブルとの接触を確実な者にすることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のゴムモールド部品において、
前記本体部における前記電力ケーブルの挿入口側の開口端に、当該開口端に向けて小径となる絞り部を形成したことを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、電力ケーブルの挿入口側の開口端に絞り部が形成されているので、挿入口の内径よりも小さな外径の電力ケーブルが挿入した場合に、本体部の挿入口側の一端部が締まりの悪い状態のままとならず、絞り部が電力ケーブルに対して挿入口側の端部を保持して安定した装着状態を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数種類の電力ケーブルに対して同じサイズのゴムモールド部品を、外径の異なる電子ケーブルに際の適合範囲を広くすることができ、また電力ケーブルをスムーズに装着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施形態に係るゴムモールド部品の概略構成を示す部分断面図である。
【図2】第二の実施形態に係るゴムモールド部品の概略構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第一の実施形態について、図1に基づいて詳細に説明する。図1は本実施形態に係るゴムモールド部品の概略構成を示す説明図であり、(a)は(b)におけるa−a切断線から見た断面図、(b)はゴムモールド部品の側面図であり、その上部のみを断面図とした部分断面図である。この図1に示すように、ゴムモールド部品1は、絶縁ゴム及び半導電性ゴム、又は絶縁ゴム及び高誘電率ゴム、により二層成型されることで形成されており、絶縁ゴムから形成された本体部2と、半導電性ゴム又は高誘電率ゴムから形成された電界緩和層3とを備えている。
【0015】
本体部2は、筒状に形成されていて、その中間内周の全周にわたって電界緩和層3が配置されている。本体部2のうち、例えば図1(b)における左側の開口が電力ケーブル(図示省略)の挿入口21である。そして、本体部2における挿入口21側の一端部22は、その内径が均一に他の部分よりも大きく形成されている。本体部2の一端部22と電界緩和層3との間の内周面には、電界緩和層3の内周面から一端部22の内周面まで挿入口21側に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面23が形成されている。
このテーパー面23上と、電界緩和層3の挿入口21側の内周面上には、中心に向かって半円形状に凸となる凸条4が本体部2の軸方向に沿って連続するように形成されている。この凸条4は、本体部2に内周に一定の間隔を開けて6つ形成されている。
そして、電界緩和層3に形成された凸条4の長さH1は、本体部2の一番厚い部分の厚さHよりも長く形成されている。
【0016】
次に、本実施形態のゴムモールド部品1の作用について説明する。
挿入口21に対して電力ケーブルが挿入される際においては、予め電力ケーブルの表面にグリース等の潤滑剤が塗布されている。そして、電力ケーブルが挿入口21からゴムモールド部品1に挿入されると、この電力ケーブルによってゴムモールド部品1が押し広げられる。このとき、凸条4も若干つぶれることになるが、ある程度凸条4の表面積が確保されているために、ゴムモールド部品1が内側に収縮しようとする単位面積あたりの力が緩和され完全にはつぶれない。これにより、電力ケーブルとゴムモールド部品1との間に隙間が形成される。この隙間によって電力ケーブル表面の潤滑剤がゴムモールド部品1の奥まで案内されることになり、電力ケーブルに対してゴムモールド部品1がスムーズに装着される。
【0017】
以上のように、本実施形態によれば、電界緩和層3における電力ケーブルの挿入口21側の内周面に、本体部2の軸方向に沿う凸条4が形成されているので、半球状突起の場合と比べてゴムモールド部品1が内側(電力ケーブル中心側)へ収縮しようとする力を支える部分の体積を大きくすることができる。これにより、電力ケーブルが挿入された際にゴムモールド部品1が内側に収縮しようとする力を支える部分が受ける力を分散させてゴムモールド部品1と電力ケーブルとの間に隙間を確保することができる。また、凸条4は、本体部2の軸方向に沿うように形成されているので、電力ケーブルを挿入する際に、電力ケーブルの外周に塗布された潤滑剤をゴムモールド部品1の内部にガイドすることができる。例えば、直径の大きい電力ケーブルが挿入された場合は、外径の小さい電力ケーブルが挿入された場合よりも、ゴムモールド部品1が内側へ収縮しようとする力が大きくなるが、凸条4は従来の半球状突起よりも体積が大きいため、凸条4が支えるゴムモールド部品1が内側に収縮しようとする単位面積あたりの力は小さくなる。これにより、ゴムモールド部品1が内側に収縮しようとする力を支える部分である凸条4が完全につぶれてしまうことは防止され、電力ケーブルとゴムモールド部品1との間に隙間が形成されるため、潤滑剤を奥まで案内することができ、上述したようにスムーズな装着が可能となる。
【0018】
また、本体部2における電界緩和層3よりも挿入口21側の内周面にテーパー面23が形成されているので、電力ケーブルが挿入される際に、電力ケーブルの端末部がテーパー面23に案内され、スムーズな装着が可能となる。特に、凸条4がテーパー面23上にも連続して形成されているので、電力ケーブルとゴムモールド部品1との隙間もテーパー面23から奥に向けて連続するため、徐々に肉厚となる部分から潤滑剤を案内することができる。したがって、よりスムーズな装着が可能となる。
【0019】
次に、本発明の第二の実施形態について、図2に基づいて詳細に説明する。図2は本実施形態に係るゴムモールド部品1Aの概略構成を示す説明図であり、(a)は(b)におけるb−b切断線から見た断面図、(b)はゴムモールド部品1Aの側面図であり、その上部のみを断面図とした部分断面図である。
【0020】
このゴムモールド部品1Aは、絶縁ゴムから形成された本体部2Aにおける挿入口21側の一端部22の開口端に絞り部24を形成した点のみが前述したゴムモールド部品1と異なっており、それ以外の構成については同一であるため、ゴムモールド部品1と同じ符号を付して説明は省略する。
本体部2の一端部22の開口端に形成された絞り部24は、挿入口21の奥側から開口端に向かって内径・外径共に小径となる形状を呈している。この絞り部24は、挿入口21の奥から開口端に向かって、一定の傾きで縮径するテーパ状としてもよいし、開口端に近づくにつれて傾きが急峻となるように外側に凸となる形状で縮径してもよいし、開口端に近づくにつれて傾きが緩慢となるように外側に凹となる形状で縮径してもよい。
また、この絞り部24の内縁部24aは角を除去して丸みを持たせた形状とすることが望ましい。
【0021】
上記ゴムモールド部品1Aは、ゴムモールド部品1と同一の技術的効果を具備すると共に、本体部2の挿入口21側の一端部22の開口端に絞り部24を形成したので、比較的細い電力ケーブル、例えば、本体部2の挿入口21側の一端部22の内径(絞り部24とテーパ面23との間の部分の内径)よりも外径が小さい電力ケーブルを挿入した場合にも、絞り部24が電力ケーブルを保持して締まりの悪い状態を解消し、安定した装着状態を維持することが可能となる。
【0022】
なお、上述した第一と第二の実施形態はいずれも各図に示した構成に限らず適宜変更可能である。
例えば、上記各実施形態においては、凸条4が6つ形成されている場合を例示したが、凸条4は、少なくとも1つ形成されていればよく、その設置個数は如何様でもよい。
また、上記実施形態では、凸条4の断面形状が半円形状である場合を例示したが、中心に向かって凸となっているのであればその形状は如何様でもよい。半円形状以外にも、例えば三角形状、四角形状等の多角形状や、半楕円形状等が挙げられる。
【符号の説明】
【0023】
1,1A ゴムモールド部品
2,2A 本体部
3 電界緩和層
4 凸条
21 挿入口
22 一端部
23 テーパー面
24 絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの端末部に装着されるゴムモールド部品において、
絶縁ゴムからなる筒状の本体部と、
半導電性ゴム又は高誘電率ゴムから形成されて、前記本体部の中間内周に全周にわたって配置された電界緩和層を備え、
前記電界緩和層における前記電力ケーブルの挿入口側の内周面には、中心に向かって凸となる凸条が前記本体部の軸方向に沿うように、少なくとも一つ形成されていることを特徴とするゴムモールド部品。
【請求項2】
請求項1記載のゴムモールド部品において、
前記本体部における前記電界緩和層よりも前記電力ケーブルの挿入口側の内周面には、前記電界緩和層の内周面から前記挿入口側に向けて徐々に内径が大きくなるテーパー面が形成されていて、
前記凸条は、前記本体部の軸方向に沿って連続するように前記テーパー面上に形成されていることを特徴とするゴムモールド部品。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴムモールド部品において、
前記本体部における前記電力ケーブルの挿入口側の開口端に、当該開口端に向けて小径となる絞り部を形成したことを特徴とするゴムモールド部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−152099(P2012−152099A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277897(P2011−277897)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(000139872)株式会社井上製作所 (13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】