説明

ゴム材料及びその製造法

少なくとも1種のゴム種、少なくとも1種の充填剤並びに加工助剤を含有する、特にウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用の、又は自動車タイヤ用のゴム材料が記載されている。該ゴム材料は、含まれているゴム種の少なくとも1種において第一及び第二のフラクションを有し、該フラクションは、加硫されていない状態でその粘度に関して異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用の、又は自動車タイヤ用のゴム材料並びに独立請求項の上位概念に記載のその使用に関する。
【0002】
従来技術
ウインドスクリーンワイパーブレードにおいて、ウインドスクリーンワイパーブレードが自動車のウインドスクリーンの輪郭に出来る限り良好に適合することができ、種々の温度でも柔軟性を維持することが重要である。従って、ワイパーブレードは通常エラストマー成形体から製造されており、その際、主にゴム材料、例えば天然ゴム又は合成ゴム種、例えばクロロプレンゴム又はEPDMが使用される。更に、シリコーンゴム又はポリウレタンゴムから成るワイパーブレードも公知である。
【0003】
このようなワイパーブレードは例えばDE19615421A1に記載されている。前記ワイパーブレードは、金属フレーム内でのワイパーブレードの保持を可能にするベース部、並びに、ウェブを介して前記ベース部と結合しているワイパーリップを含み、かつ、その拭き取りすべきガラス面に向いている端部にリップ領域を有する。ベース部及びウェブはゴムマトリックスから形成されており、該ゴムマトリックスは少なくとも大部分がポリクロロプレンから成る一方で、これに対して、ワイパーリップは異なる材料組成を有する。更に、ワイパーブレードは酸化亜鉛及びカーボンブラックを充填剤として含有し、該充填剤はワイパーブレードの機械的特性及びその加工性に影響を及ぼす。ワイパーブレードは有利に同時押出成形法により製造される。
【0004】
本発明の課題は、形状安定でかつ機械的に負荷に耐えうる成形体の製造を可能にするゴム材料及びその製造法を提供することである。
【0005】
発明の利点
請求項1の特徴による本発明によるゴム材料は、先行技術に対して、良好に再現可能であり、従って廉価に製造することができる、有利な特性プロフィールを有するワイパーブレードないし自動車タイヤの製造に適当なゴム材料が得られるという利点を有する。これは、ゴム材料が充填剤として少なくとも2種のカーボンブラックの混合物を含有することにより達成され、それというのも、2種のカーボンブラックの混合物によって、最終状態におけるゴム材料の機械的特性を、例えばその硬度に関して劣化させることなく、1種のみのゴム種を単独で使用した場合よりも高いゴム材料の充填度が可能となるためである。
【0006】
有利に、2種のカーボンブラックの量割合は、ゴム材料の加工のためにより有利で出来る限り高い充填度が達成され、他方では、硬化されたゴム材料の全体の硬度が高すぎないように選択され、それというのも、さもなくば系は脆性であり、例えばもはやワイパーとして機能しなくなるためである。
【0007】
本発明の有利な実施態様は、引用形式請求項に挙げられた手段から明らかである。
【0008】
ゴム材料が充填剤として特にファーネスブラックとサーマルブラックとの混合物を含む場合有利であり、それというのも、これらのカーボンブラックはその粒度及びゴム材料に関して生じる機械的特性に関して極めて異なっており、従って2種のカーボンブラックの混合比によりゴム材料の機械的特性の最適な調節が可能となるためである。
【0009】
更に、ゴム材料中に含まれるゴム種の少なくとも1種が2種のフラクションを含有し、該フラクションは、加硫されていない状態でその粘度に関して異なっている場合、有利である。2種のフラクションの量比は、この場合、ゴム材料の加工のために有利な粗製ゴム材料の全粘度が調節されるように選択される。粗製ゴム材料の全粘度は例えば押出成形の際の材料の膨張特性に実質的な影響を与えるため、これは、製造されたゴム成形体の十分な形状安定性のための必要条件である。
【0010】
更に、ゴム材料が均質剤を例えば有機樹脂の形で含有するため、ゴム材料が2つのゴムフラクション並びに他のゴム材料中に含まれる物質の安定な分散液を形成する場合が有利である。
【0011】
特に有利な実施態様において、ゴム材料は酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを含有しない。酸化カルシウムは通常ゴム材料に加工の間に特に乾燥剤として添加されるが、この酸化カルシウムは得られるゴム材料の機械的特性を劣化させる。
【0012】
図面
次に、図面を参照しながら実施例に基づき本発明について詳しく説明する。図1は、外側にあるスプリングストリップ(Federschiene)を有する本発明によるワイパーブレードの断面図を示す。
【0013】
実施例
図1に、本発明の第一の実施例によるワイパーブレード10を示す。ワイパーブレードは実質的にストリップ状の態様を有する。ワイパーブレードは幅の広げられたヘッド部1を含み、このヘッド部1は折り曲げウェブ2を介してウェッジ3に結合している。ヘッド部1は図示されていない外側にあるスプリングストリップを収容するための凹部8を有する。ウェッジ3は、その、ヘッド部1と向かい合いかつ清浄化すべきガラス面に向いている側で、ワイパーリップ4に向かってテーパされている。
【0014】
ヘッド部1ないし折り曲げウェブ2は有利にEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー)、EPR(エチレン−プロピレン−コポリマー)、CR(クロロプレン)、NR(天然ゴム)、BR(ポリブタジエン)、SBR(スチレン−ブタジエン−ゴム)又はIR(ポリイソプレン)ないしその混合物から製造されている。ウェッジ3は有利に同様に上記の材料から製造されるが、しかしながらその材料組成に関してはヘッド部1の材料組成と異なる。ウェッジ3に折り曲げウェブ2をより良好に固定するために、折り曲げウェブ2に隣接したウェッジ3の領域5を折り曲げウェブ2の材料から製造することができる。
【0015】
ゴム材料は、上記のゴム種EPDM、SBR、EPR、CR、BR、NR又はIRの少なくとも1種において2種のフラクションを含み、この2種のフラクションは、同一のゴム種に分類することができるが、その粘度は加硫されていない状態で異なっている。ゴム材料は例えば、例えば20〜95ムーニー、有利に20〜50ムーニーの(125℃での)第一のムーニー粘度を有するフラクションEPDM1と、例えば20〜95ムーニー、有利に50〜95ムーニーの第二のムーニー粘度を有するフラクションEPDM2とを含有する。EPDM1及びEPDM2の2種のフラクションの量比は、粗製ゴム材料の全粘度が有利に30〜60ムーニーの範囲内となり、従って粗製ゴム材料の最適な加工が保証されるように選択される。
【0016】
フラクションEPDM1及びEPDM2の種々の粘度は、例えば、相応する、フラクション中に含まれる添加剤か、又は、ターポリマーEPDMのベースとなるモノマーエチレン、プロピレンないしジエンの量比の相応する選択に依存し得る。粘度を制御するためのもう1つの方法は、EPDMのベースとなるジエンを変化させることである。
【0017】
更に、EPDM中でのエチレン割合の増加により、その押出成形可能性の改善がもたらされ、その一方で、ポリプロピレン割合の増加によって、得られるEPDMの弾性が改善される。同様のことが、EPRのエチレン−ないしプロピレン割合に応じたEPRの特性に関しても当てはまる。
【0018】
ゴム材料は複数のゴム種を含んでよい。この場合、ゴム種において2種又は2種を上回るフラクションが含有されていてよいが、ゴム材料中に含まれるゴム種の少なくとも2種において、2種又は2種を上回るフラクションを予定することも可能である。この場合、フラクションとは、常に、ベースとなるゴム種と構造が類似しているか又は同一である物質量であると理解される。
【0019】
有利な実施態様において、ヘッド部1はEPDM、CR又はこれらの混合物から製造されており、一方でウェッジ3ないしワイパーリップ4はBRから製造されている。有利に、ウェッジ3ないしワイパーリップ4は少なくとも2種の異なるBRフラクションの混合物から構成されており、該フラクションは、例えばその側鎖ないしそのシス−/トランス順序が異なる。
【0020】
ゴム材料は更に均質剤を含有し、この均質剤は粗製ゴム材料中での種々のゴム種ないしゴムフラクションのより良好な完全混合可能性を保証する。同時に、均質剤は、粗製ゴム材料中での充填剤及び助剤の分散液としての粗製ゴム材料全体の安定化をもたらす。均質剤として、例えば芳香族樹脂又は脂肪族樹脂が使用される。
【0021】
ゴム材料は更に少なくとも1種の充填剤を含有する。充填剤は有利にカーボンブラックから形成されている。カーボンブラックとして、例えばいわゆるファーネスブラックが使用される。しかしながら、充填剤として、ファーネスブラックとサーマルブラックとの混合物を使用するのが有利であることが判明した。ファーネスブラックが、一般に比較的微細な粒度を有し、かつ高い充填度の場合に、確かに耐摩耗性ではあるがしかしながら比較的硬質のゴム材料をもたらすのに対して、サーマルブラックは粗い粒度を有し、これは高い充填度の場合にもゴム材料の硬度のわずかな増加をもたらすに過ぎない。
【0022】
有利に、2種のカーボンブラックの量割合は、ゴム材料の加工のために有利で出来る限り高い充填度が達成され、他方では、硬化されたゴム材料の全体の硬度が高すぎないように選択され、それというのも、さもなくば系は脆性であり、例えばもはやワイパーとして機能しなくなるためである。
【0023】
ゴム材料に付加的に可塑剤を添加した場合には特に高い充填度を達成することができ、それというのも、充填剤含分の増加に伴って高まるゴム材料の脆化に効果的に対抗することができるためである。可塑剤として、例えば合成可塑剤並びに鉱油が適当である。
【0024】
通常、ゴム材料の製造の際、粗製ゴム材料に乾燥剤が添加される。このような乾燥剤を使用しないことによって、出発材料中に含まれる湿気は、押出成形又は加硫の間に、このように製造されたゴム成形体の多孔質表面をもたらす。ゴム材料において使用される慣用の乾燥剤は、例えば酸化カルシウムである。酸化カルシウムは、ゴム材料中に含まれる湿気と接触した際に水酸化カルシウムを形成する。しかしながら、酸化カルシウムを使用した場合には、生じる水酸化カルシウムの結晶形成が生じた場合には問題が生じる。
【0025】
前記理由から、本発明のゴム材料の製造は有利に酸化カルシウムの添加なしに行われる。それにもかかわらず、製造された成形体の十分に良好な表面品質を達成するために、一方では、ゴム材料の製造のために必要な出発材料の湿度が検査され、この出発材料は場合により湿気遮断下に別個に貯蔵される。更に、粗製ゴム材料の加硫は出来る限り短い反応時間で実施される。このためには、特にペルオキシドをベースとする加硫系が適当である。
【0026】
例示的に、以下に、ゴム材料ないしそれぞれエラストマー100質量部に対するその組成(phr)の実施例を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
ゴム材料の製造は、まず1種又は多種のゴム種ないし当該ゴム種の1種又は多種のフラクションを1種又は多種の充填剤、均質剤及び他の加工助剤と一緒に押出機に供給し、そこで強力に混合することにより行われる。また、出発材料を混合機に供給し、そこで混合し、例えば圧縮成形するか又は射出成形処理に供することもできる。
【0030】
このようにしてストランド成形体を製造し、その際、該ストランド成形体はウインドスクリーンワイパー用ワイパーゴムの製造の際に二重ストランドの形状を有し、その際、2つのワイパーゴム−単一ストランドはワイパーリップの範囲内で二重ストランドの縦方向で相互に結合している。製造された二重ストランドは、加硫のために例えば塩浴又は炉に送られ、そこで約220℃の温度で加硫される。もう1つの工程において、必要な場合には、表面変性が例えば黒鉛処理、ハロゲン化、塗装又は被覆により行われる。その後、加硫されたエラストマー成形体は最後に縦方向ないし横方向に切断される。
【0031】
また、意図的に、ワイパーブレードの特定の表面部分のみを変性させることも可能である。適当な工程操作により、ワイパーブレードの変性すべきでない領域を意図的に被覆した場合、例えば清浄化すべき表面と接触するワイパーリップのみを変性させるか、又は更にもしくはそれとは別に、ワイパーブレードを相応するワイパーブレードホルダに挿入することのできるワイパーブレードのガイド溝を変性させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】外側にあるスプリングストリップを有する本発明によるワイパーブレードの断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 ヘッド部、 2 折り曲げウェブ、 3 ウェッジ、 4 ワイパーリップ、 5 領域、 8 凹部、 10 ワイパーブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のゴム種、少なくとも1種の充填剤並びに加工助剤を含有する、特にウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用の、又は自動車タイヤ用のゴム材料において、充填剤が少なくとも2種の異なるカーボンブラック種の混合物を含むことを特徴とするゴム材料。
【請求項2】
充填剤がファーネスブラックとサーマルブラックとから成る混合物を含む、請求項1記載のゴム材料。
【請求項3】
ゴム材料がエラストマー100質量部に対して充填剤40〜320質量部を含有する、請求項1又は2記載のゴム材料。
【請求項4】
可塑剤及び/又は鉱油が含まれている、請求項1から3までのいずれか1項記載のゴム材料。
【請求項5】
ゴム種がEPDM、EPR、BR、SBR、IR又はCRである、請求項1から4までのいずれか1項記載のゴム材料。
【請求項6】
少なくとも1種のゴム種が第一及び第二のフラクションを有し、該フラクションは、加硫されていない状態でその粘度に関して異なっている、請求項1から5までのいずれか1項記載のゴム材料。
【請求項7】
第一のフラクションが20〜95ムーニーのムーニー粘度を有する、請求項6記載のゴム材料。
【請求項8】
ゴム材料が本質的に酸化カルシウム不含である、請求項1から7までのいずれか1項記載のゴム材料。
【請求項9】
ゴム材料が本質的に酸化亜鉛不含である、請求項1から8までのいずれか1項記載のゴム材料。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のゴム材料を特徴とする、ウインドスクリーンワイパー用のワイパーブレード。
【請求項11】
ワイパーブレードのヘッド部(1)及び/又はウェブ(2)がEPDM及び/又はCRから製造されており、かつワイパーブレードのワイパーリップ(4)がBRから製造されている、請求項10記載のワイパーブレード。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517085(P2007−517085A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541793(P2006−541793)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002525
【国際公開番号】WO2005/056356
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】