説明

ゴム組成物と有機塩硬化剤

硬化剤として使用されるカルボン酸の金属塩、高度不飽和ジエンゴム、充填剤、及び硫黄が0.5phr〜8phrの硫黄加硫系及び少なくとも1つの加硫促進剤を含む、ゴム組成物である。特定の実施形態では、更に、同様の硬化エラストマー組成物と比較して、少なくとも50%硬化エラストマー組成物の比引裂指数を増加させる1phr〜6phrのカルボン酸の金属塩とを含み、このような同様の硬化エラストマー組成物は組成物において、(1)カルボン酸の前記金属塩を含まないこと、及び(2)促進剤に対する同じ硫黄の比率において、硬化ゴム組成物のモジュラスの15%の範囲内に対し、23℃において伸び率10%を維持するように増加した硫黄加硫系の量を有することにおいてのみ、異なる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2009年12月30日に出願された、米国仮出願番号第61/291,227号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般にゴム組成物に関し、より具体的には、硬化剤として有機塩を有するゴム組成物、及びそれから製造される物品に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願の特定の実施形態は、架橋性ゴム組成物に基づく硬化ゴム組成物を含み、前記架橋性ゴム組成物は、ゴムの100重量部当たり、高度不飽和ジエンゴム、20phr〜150phrの充填剤、及び、硫黄が0.5phr〜8phrの硫黄加硫系(前記硫黄加硫系は、硫黄対促進剤の比率有する)及び少なくとも1つの加硫促進剤を有する。特定の実施形態は、更に、同様の硬化エラストマー組成物と比較して、少なくとも50%硬化エラストマー組成物の比引裂指数を増加させる1phr〜6phrのカルボン酸の金属塩を含み、前記同様の硬化エラストマー組成物は組成物において、前記同様の硬化エラストマー組成物が(1)カルボン酸の前記金属塩を含まないこと、及び(2)促進剤に対する同じ硫黄の比率において、硬化ゴム組成物のモジュラスの15%の範囲内に対し、23℃において伸び率10%を維持するように増加した硫黄加硫系の量を有することにおいてのみ、異なる。
【0004】
本発明の、前述及び他の目的、特性、及び有利な点は、以下の、本発明の特定の実施形態のより詳細な記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特定の実施形態は、架橋性ゴム組成物に基づく硬化ゴム組成物、及びそれから製造される物品を含み、前記架橋性ゴム組成物は、硬化剤として使用される、カルボン酸の金属塩を含む。本明細書において使用される用語「〜に基づく」は、前記ゴム組成物及びそれから製造される物品は、加硫または硬化ゴム組成物(その組み立ての際には、未硬化又は緑色である)であると理解される。前記硬化組成物は、従って、未硬化ゴム組成物に基づいている。言い換えると、架橋化ゴム組成物は、架橋性ゴム組成物に基づいている。
【0006】
カルボン酸の金属塩の添加は、硫黄加硫硬化系を有するゴム組成物において、驚くべきことに、硬化剤として振る舞うことが見出されてきた。金属塩が、硬化剤として振る舞うため、硫黄加硫系の量は、硬化組成物における同様の硬化状態を維持するのに十分な量に減少させられる。驚くべきことに、そのような硬化ゴム組成物の物理的特性は、カルボン酸の金属塩を有さずに相当する多量の硫黄加硫系を有する、同様のゴム組成物の物理学的組成と比較して、有意に改善されている。
【0007】
より具体的には、カルボン酸の金属塩を有するゴム組成物及び、その硫黄加硫系の対応する減少量は、例えば、改善された引裂抵抗、別のゴム材料への改善された硬化接着、及び/又は、非経年特性と比較した場合の改善された経年特性である。経年特性は、非経年特性が古くなっていない一方、経年特性は古くなったゴム組成物の特性である。
【0008】
本発明の特定の実施形態における、硬化剤として有用な、カルボン酸の適切な金属塩は、特に、不飽和カルボン酸の金属塩を含んでもよい。そのような適切な塩の例は、亜鉛ジメタクリレート(ZDMA)、亜鉛ジアクリレート(ZDA)、マグネシウムジメタクリレート、マグネシウムジアクリレート、又はそれらの組み合わせを含み得る。他の有用な塩は、単独で又は、他の塩と組み合わせて、例えば、亜鉛モノメタクリレート(ZMMA)又は亜鉛モノアクリレートを含む。当業者に公知の他の適切なアクリレートは、単独で又はその他のアクリレート(メタクリレートを含む)と組み合わせて使用され得る。
【0009】
より一般的には、本発明の特定の実施形態における含有物のために有用な金属塩は、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びそれらの組み合わせから製造され得る。
【0010】
前記カルボン酸を用いて有用な金属塩を形成するために使用される金属は、例えば、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、リチウム、カドミウム、コバルト及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0011】
前記カルボン酸の金属塩は、1〜6phrの間の量で、ゴム組成物の特定の実施形態へ、硬化剤として添加され得る。また、金属塩は、0.5〜7phr、1〜5phr、1〜4phr、及び1〜3phrの量で、添加され得る。
【0012】
前記硫黄加硫系は、当業者に公知の方法で加熱された場合、架橋性ゴム組成物を硬化するか、又は加硫する。前記硫黄加硫系は、硫黄及び少なくとも1つの促進剤を含む。硫黄は、任意の許容形状(例えば、粉砕された硫黄、ゴムメーカーの硫黄、市販の硫黄及び不溶性硫黄を含むような)で、添加され得る。本発明を限定するものではないが、特定の実施形態において、硫黄は、0.5phr〜8phr又は、1〜8phrの量で添加され得る。また、硫黄は、1〜12phr、1〜10phr、1〜6phr、1〜4phr、又は、0.5〜4phr、又は0.5〜6phrの量で添加され得る。他の実施形態は、0.1〜2phr、0.2〜1.5phr、又は0.1〜1phrを含み得る。
【0013】
適切な促進剤は、当業者に公知の方法によって、特定の適用量で、選択され且つ、添加され得る。適切な促進剤タイプの例は、チアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チオ尿素誘導体、アミン誘導体、チウラム、ジチオカルバメート、キサンテート及びそれらの組み合わせを含む。そのような促進剤は、遅い促進剤、適度に高速な促進剤、高速な促進剤、及び超高速な促進剤を含む。これらは、ベンゾチアジル−2−シクロヘキシルスルフェンアミド(CBS)、ベンゾチアゾイル−2−tert−ブチルスルフェンアミド(TBBS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛又はナトリウム塩(ZMBT)、ベンゾチアジル−2−スルフェンモルフォリド(MBS)、ベンゾチアジルジシクロヘキシ−1−スルフェンアミド(DCBS)、ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン(TPG)、ジオルトトリルグアニジン(DOTG)、オルトトリルビグアニジン(OTBG)、エチレンチオ尿素(ETU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)、エチリデンアニリン(EA)、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(ZBEC)、亜鉛−N−ジメチル−ジチオカルバメート(ZDMC)、亜鉛−N−ジエチルジチオカルバメート(ZDEC)、亜鉛−N−ジブチルジチオカルバメート(ZDBC)、亜鉛−N−エチルフェニルジチオカルバメート(ZEBC)及びそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。
【0014】
前記カルボン酸の金属塩は、硬化剤として振る舞うため、架橋性ゴム組成物へ添加した硫黄及び促進剤の総量は、金属塩に起因する加硫の活性を補うために減らされる。それは、老朽化した、及び老朽化していないゴム組成物の両方の物理的特性において、驚くべき改善を提供する、加硫系の部分の金属塩の置換である。前記硫黄及び促進剤は、比例して減少する、即ち、硫黄が減少すると促進剤に対硫黄を概ね一定に維持するための量で促進剤が減少するように(例えば、4%以内、又は、2%以内、又は0.5%以内)、促進剤に対する硫黄の比率は一定に維持される。促進剤に対する硫黄の比率は、硫黄phr/促進剤phrである。
【0015】
より具体的には、前記硫黄加硫系は、前記カルボン酸の金属塩を含まない同様のゴム組成物において得られた硬化ゴム組成物における場合と同じ硬化レベルを提供する量によって、減少させられる。硬化ゴム組成物の伸び率の測定法を使用して、前記加硫系は、2つの組成物間のモジュラスが10%の範囲内に維持されるように減少され得る。前記伸び率は、ダムベル試験片についてのASTM標準D412に基づいて、23℃の温度で、10%(MA10)、100%(MA100)、及び300%(MA300)で測定され得る。いくつかの実施形態においては、モジュラスの内の1つのみ、又は2つが10%の範囲内に維持される一方、幾つかの実施形態において、3つのモジュラス全て(MA10、MA100、MA300)は、金属塩及び変更された加硫系の有無にかかわらず、お互いに10%範囲内に維持される。
【0016】
例えば、前記金属塩を含まないゴム組成物のMA10が3MPaである場合、金属塩を含むゴム組成物は、2.7〜3.3MPaのMA10を提供するような量になるその硫黄加硫系を有するべきである。また、MA10は、15%、12%、8%、又は6%以内に維持され得る。特定の実施形態において、これは40重量%で、制限された硫黄加硫系によって達成され得る。
【0017】
金属塩及び硫黄加硫系に加えて、ゴム組成物は、高度不飽和ジエン系ゴムを更に含む。「ジエン」エラストマー又はゴムは、所謂、一般的には、少なくとも部分的に(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)、共役するかどうかに関わらず、2つの二重炭素−炭素結合を有する、ジエンモノマーから生成するエラストマーであると理解されている。「本質的に不飽和」なジエンエラストマーは、少なくとも共役ジエンモノマーから部分的に生成し、15mol%以上の共役ジエン由来のユニット含有量を有する。「高度不飽和」ジエンエラストマーは、本質的に不飽和ジエンエラストマーのカテゴリ内に収まるが、50mol%以上の共役ジエン由来のユニット含有量を有すると理解されている。
【0018】
「本質的に飽和」なジエンエラストマーは、非常に低い共役ジエン由来のユニット含有量を有するジエンエラストマーを意味すると理解されており、それは、常に15%未満である。従って、例えば、ブチルゴム、ジエンのコポリマー及びエチレン−プロピレンジエンテルポリマー(EPDM)型のアルファ−オレフィンのコポリマー、又は、エチレン−ビニルアセテート方のコポリマーは、本質的に不飽和ジエンエラストマーの定義に該当しない。本発明に関するゴム組成物の特定の実施形態は、本質的には如何なる飽和ジエンエラストマーも含んでいない。他の実施形態は、例えば、総エラストマー含有量の1、3又は5重量%未満を含む実施形態のような、実質的に飽和ジエンエラストマーの低い量を、任意に含んでもよい。
【0019】
当業者に知られているように、高度不飽和ジエンエラストマーは、例えば、
(a)4〜12の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合化によって得られた、任意のホモポリマー
(b)共役ジエンの、お互いともコポリマー化又は、8〜20の炭素原子を有するビニル−芳香族化合物とのコポリマー化によって得られた、任意のコポリマー
から得られ得る。
【0020】
適切な共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、並びに、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエン、アリル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及び2,4−ヘキサジエンのような2,3−ジ(C1−C5アルキル)−1,3−ブタジエンを含む。適切なビニル−芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト−、メタ−、及びパラ−メチルスチレン、市販の「ビニルトルエン」混合物、パラ−tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、及びビニルナフタレンを含む。
【0021】
前記コポリマーは、99重量%〜20重量%のジエンユニット及び1重量%〜80重量%のビニル芳香族ユニットを含み得る。エラストマーは、任意の微細構造を有し得、それは特に変性剤及び/又は無作為化剤の存在下又は不存在下で使用された重合化条件、並びに、使用された変性剤及び/又は無作為化剤の量の機能である。エラストマーは、例えば、ブロック状の、統計的な、連続的な、又は極小の連続的なエラストマーであり得、且つ、分散液中又は溶液中に調整され得、それらは、結合される、及び/又は主役化されたか又は、カップリング及び/又は主役化剤又は官能化剤によって代替的に官能化される。
【0022】
本発明の特定の実施形態に有用な前記ゴムエラストマーは、カルボン酸の金属塩と硫黄加硫系で硬化性がある、天然ゴム、実質的に不飽和な合成ゴム又は、それらの組み合わせを含む。
【0023】
前記ゴム組成物の特定の実施形態では、前記組成物のジエンエラストマーは、高度に不飽和であり、且つ、例えば、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)、ブタジエン−イソプレンコポリマー(SBIR)、及びそれらの混合物から選択され得る。ゴム組成物の特定の実施形態は、高度不飽和ジエンエラストマーのような天然ゴムのみを含み得る。
【0024】
前記ゴム組成物の特定の実施形態は、更に補強充填剤を含み、そのような充填剤は、無機、有機又はそれらの組み合わせである。無機補強充填剤は、本明細書においては、任意の無機又は鉱物充填剤を意味すると理解され、その色及び起源(天然又は合成)は何でもよく、又、カーボンブラックに対して、「白色」充填剤又は時には「透明」充填剤とも呼ばれる。そのような無機充填剤は、中間カップリング剤以外の如何なる手段を用いず、それ自体で、タイヤのトレッドや他のタイヤ要素を製造することを目的としたゴム組成物を補強することができる、即ち、従来のタイヤグレードのカーボンブラックを、その補強機能と置換することが可能である。
【0025】
有機充填剤であるカーボンブラックは、単独の充填剤又は、1つ以上の無機充填剤の組み合わせとして使用され得る。エラストマー組成物における、カーボンブラックの配合量は、制限されない。本発明の特定の実施形態において、カーボンブラックの配合量は、役200phr以下、又は約10〜約180phrであり得る。他の有用なカーボンブラックの負荷範囲は、本発明のいくつかの実施形態における30〜100phr又は35〜70phrを含み得る。
【0026】
適切なカーボンブラックは、任意のカーボンブラックであり、特に、タイヤに従来使用されるカーボンブラック及び、特にトレッドに使用されるカーボンブラックである。非限定的なカーボンブラックの例は、例えば、N115、N134、N234、N330、N339、N343、N347、及びN375カーボンブラックである。他の有用なカーボンブラックは、例えば、N440、N539、N550、N650、N660、N754及びN765である。
【0027】
補強充填剤としてシリカを採用するそれらの実施形態について、使用されるシリカ(SiO2)は、当業者に知られている任意の補強シリカであり得る。特定の実施形態は、BET表面積及び特定のCTAB表面積(それらの両方が、450m2/g未満であるか、30〜400m2/gである)を有する、任意の沈殿または熱分解法シリカを含む。高分散性沈降シリカ(「HD」と呼ばれる)は、特定の実施形態、低い転がり抵抗を有するタイヤの製造のために使用されるそれらの実施形態に特に含まれる。「高分散性シリカ」は、公知の方法で、エラストマーマトリックス内で非凝集能及び分散能を有する任意のシリカを意味すると理解されており、公知の方法で、薄片上で、電子又は光学顕微鏡によって観察できる。そのような好ましい高分散性シリカの非限定的な例として、Degussa社のシリカBV3380及びUltrasil7000、Rhodia社のシリカZeosil 1165MP及び1115MP、PPG社のシリカHi−Sil 2000、Huber社のシリカZeopol8715又は8745、及び、例えばアルミニウム「添加」シリカのような、処理された沈降シリカであってもよい。
【0028】
補強無機充填剤が存在している物理的状態は、粉、マイクロビーズ、顆粒、ボール、またはその他の形状でも、重要ではない。
【0029】
補強無機充填剤の量は、0〜100phrであり得、又は、例えば、5phr〜100phr、又は5〜10phrであり得る。補強無機充填剤の量は、制限されることを意味するものではなく、特定の目的について適切な任意の量であり得る。補強無機充填剤は、いくつかの適用例については、カーボンブラックと混合し得る。そのような適用例において、カーボンブラックの量及び無機充填剤の量は、当業者に良く知られている、適切な特定の目的に従って、調整する。
【0030】
ゴム組成物の特定の実施形態は、可塑化オイルを含み得る。可塑化オイルは、それが十分に混合され処理されることが可能なように、即ち、ゴム組成物の全ての構成要素を適切に分散させるのに十分に混合できるように、緑色ゴム混合物のムーニー粘度を低下させるのに有用である。当業者に公知であるそのようなオイルは、一般に石油から抽出され(しかしながら、植物油、例えばヒマワリ油もまた有用である)、パラフィン系、芳香族又はナフテン系型の可塑化オイルとして分類されている。そのようなオイルの例は、MES及びTDAEオイルを含む。代替的に、緑色ゴム組成物のムーニー粘度を低下させる為に、可塑化樹脂も使用し得る。そのような樹脂も公知であり、また、例えばポリテルペン樹脂及びポリリモネン樹脂を含む。
【0031】
カルボン酸の金属塩は、可塑剤として振る舞い得るため、それらの可塑化オイル又は樹脂を含む組成物にとって、同等の硬化性エラストマー組成物における可塑材(オイル及び/又は樹脂)の量は、組成物へ添加される金属塩の量によって増加し得る。言い換えると、金属塩を含まない同等のゴム組成物の弾性率と、カルボン酸の金属塩を含むゴム組成物を比較すると、同等の組成物中の可塑材の量は、特定の実施形態において、ゴム組成物中の金属塩の量によって増加される。
【0032】
その他の添加剤を、当業者に公知な本明細書に開示したゴム組成物へ添加し得る。そのような添加剤は、例えば、以下のカップリング剤(無機補強充填剤を使用する場合)、劣化防止剤、酸化防止剤、脂肪酸、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、その他の促進剤を含み得る。劣化防止剤及び酸化防止剤の例は、6PPD、77PD、IPPD、及びTMQを含み、例えば、0.5〜5phrの量で、ゴム組成物に添加され得る。酸化亜鉛は、例えば、1〜6phr、又は2〜4phrの量で添加され得る。ワックスは、例えば、1〜5phrの量で添加され得る。
【0033】
本発明は、更に以下の例によって示されるが、それは例示の目的においてのみ意図されるものであり、如何なる方法でも発明を限定するものではない。実施例に開示された、組成物の特性は、以下に記載するように評価した。
【0034】
伸長率(MPa)は、10%(MA10)、100%(MA100)、及び300%(MA300)で、23℃において、ダムベル試験片についてのASTM標準D412に基づいて測定した。測定は、第2の伸長、即ち、適用サイクルの後で行った。これらの測定は、MPaにおける割線弾性率であり、試験片の元の断片に基づく。
【0035】
ヒステリシス損失(HL)は、次式に従って、第6のインパクトで60℃のリバウンドによって、百分率で測定し;
〔式1〕
HL(%)=100(W0−W1)/W1,
式中、Woは供給されたエネルギーであり、W1は再充電されたエネルギーである。
【0036】
引裂抵抗指数(TR):引裂抵抗指数(TR)は、100℃で測定した。破断荷重(FRD)は、百分率で、厚さN/mm及び破断時の伸長(ARD)を、大きさ10×142×2.5mmで中央に切り込み(互いに約5mm離間し、深さ3mmの3つの切り込み)のある試験片上で測定する。試験を、500mm/分のクロスヘッド速度でインストロン5565試験機で行った。引裂抵抗指数は、次に、次式で与えられる。
〔数1〕
TR=(FRD*ARD)/100
【0037】
繰り返し疲労
繰り返し疲労試験は、ダンベル形状で、65mm長の硬化試験サンプル上で行った。試験は、試験片上で0%〜75%の繰返しひずみを課すことによって、周辺温度で行った。故障までの繰り返しの総数は、繰り返し疲労の測定として、各試験サンプルについて記録した。
【0038】
ムーニー可塑性(ML1+4)
ムーニー可塑性は、ASTM基準D1646−04によって測定する。一般に、硬化していない状態の組成物は、円筒形の筐体に成形され、100℃まで加熱する。事前加熱1分後、ローターは2rpmで試験サンプル内で回転し、この動きを維持するために使用されたトルクは、回転の4分後に測定する。ムーニー可塑性は、「ムーニー単位」(MU、1MU=0.83ニュートン−メートル)で表される。
【0039】
複合硬化静的接着
硬化静的接着は、共に硬化されているが、中央に窓きりの有るアルミニウム箔シートで区切られている、試験ゴムサンプル及び対照ゴムサンプル(トレッドゴム組成物)から成る、複合ゴムサンプルを分離するために必要な力を測定する。窓は、40mm×7mmのサイズである。両試験の長さ、幅及び厚さ、及び対照複合部品は、152mm×22mm×5mm。試験ゴムサンプル及び対照ゴムサンプルは、150℃で25分間硬化中に、窓を介して架橋結合する。硬化ゴム組成物は、INSTRONモデル1122のグリップに固定され、架橋結合したサンプルを分離するために必要な力を測定する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実施例1
本実施例は、硬化剤としてカルボン酸金属塩を有するゴム配合物の完全された物理的特性を示す。
【0041】
2つの熱化学段階が、表1において示された(量はphrで示されている)材料要素を有するゴム組成物を準備するために使用した。合成は、165℃までのバンバリーミキサー内の硫黄、及び硬化剤を除き、表1に与えられた要素の混合によって準備した。混合物を次に、概ね周囲の温度まで降下し、冷却した。硫黄及び硬化剤を次に、ロールミルへ添加した。加硫は、125℃で40分間実施した。配合は、次に、それらの物理的特性を測定するために試験した。
【表1】

エイジング条件:非循環空気オーブン内、77℃で7日間
【0042】
実施例2
本実施例は、更に、硬化剤としてカルボン酸の金属塩を含むゴム配合物の改善された物理的特性を示す。実施例1に記載されたのと同じ混合手順及び硬化過程をしようして、表2に示された金属要素を有するゴム配合物を準備した。配合物を次に、それらの物理的特性を測定するために、試験した。
【表2】

【0043】
表2において開示された第1の2つの組成物である、W2及びF2は、天然ゴムを有し、硫黄を用いて硬化されたゴム組成物である。これらの組成物は、組成物へのZDMAの添加は、モジュールを増加させるが、材料の引裂強度が大幅に減少することを示している。
【0044】
表2において開示された最後の3つの組成物である、W3、F4及びF5は、天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴムが50−50のゴム組成物である。W3及びF4の比較は、硬化ゴム組成物の引裂抵抗へのZDMA添加の良くない硬化を、再度示している。しかしながら、硫黄加硫系を例えば、MA10の結果と比較して同じ硬化レベルに維持するように制限する場合、続いて、引裂抵抗は、添加された金属塩を有するゴム組成物について、驚くべきことにより高くなる。
【0045】
本請求の範囲及び本明細書において使用されるように、「具備する」、「含む」、「有する」という用語は、指定していないほかの要素を含み得る、開いた群として考えられるべきである。本請求の範囲及び本明細書において使用されるように、用語「から本質的に成る」は、それらの他の要素が実質的に請求項に係る発明に基づき、新規な特性を変更しない限り、指定していないほかの要素を含み得る、部分的に開いた郡として考えられるべきである。用語「a」、「an」及び単語の単数形は、1つ以上の何かが提供されることを意味するように、同じ単語の複数形も含むことを考慮に入れるべきである。用度「少なくとも1つ」及び「1つ以上」は、同じ意味で使用される。用語「1つ」又は「単数」は、何かが1つ及び1つのみであることを意図することを示すために使用するべきである。同様に、「2」のような他の特定の整数値は、それが特定の数を意図する場合に使用する。用語「好ましくは」「好ましい」「好ましく」「任意に」「し得る」及び同様の用語は、本発明の任意の(必須ではない)特性を示す、項目、状態、又はステップを示すために使用される。「a〜b」で示される範囲は、「a」及び「b」の値を含む。
【0046】
前述の記載から、様々な修正及び変化が、本発明の請求の範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態についてなし得ることを理解すべきである。前述の記述は、例示の目的のみについて提供するものであり、何ら制限することを意図するものではない。以下の特許請求の範囲の言語によってのみ、本発明の範囲を制限すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性ゴム組成物に基づく硬化ゴム組成物であって、前記架橋性ゴム組成物は、ゴム100重量部あたり、
高度不飽和ジエンゴムと、
20phr〜150phrの充填剤と、
硫黄が0.5phr〜8phrである硫黄加硫系(前記硫黄加硫系は、硫黄対促進剤の比率有する)及び、少なくとも1つの加硫促進剤と、
同様の硬化エラストマー組成物と比較して、少なくとも50%硬化エラストマー組成物の比引裂指数を増加させる1phr〜6phrのカルボン酸の金属塩とを含み、
前記同様の硬化エラストマー組成物は組成物において、前記同様の硬化エラストマー組成物が(1)カルボン酸の前記金属塩を含まないこと、及び(2)促進剤に対する同じ硫黄の比率において、硬化ゴム組成物のモジュラスの15%の範囲内に対し、23℃において伸び率10%を維持するように増加した硫黄加硫系の量を有することにおいてのみ、異なる、
硬化ゴム組成物。
【請求項2】
前記金属塩が、亜鉛ジメタクリレート、亜鉛ジアクリレート、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項3】
前記金属塩が、マグネシウムジメタクリレート、マグネシウムジアクリレート、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸の前記金属塩が、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、リチウム、カドミウム又はコバルトから選択される金属の塩から選択される、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項5】
カルボン酸の前記金属塩が、1phr〜4phrの量である、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項6】
1phr〜40phrの可塑性材料を更に含む、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項7】
前記同様の硬化エラストマー組成物が、前記硬化ゴム組成物に添加された金属塩の前記量と同等の、前記可塑材の増加した量を有することによって、組成物において更に異なる、請求項6に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項8】
23℃における前記10%の伸び率が、前記硬化ゴム組成物のモジュラスの10%の範囲内に維持される、請求項7に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項9】
前記高度不飽和ジエンゴムが、天然ゴムである、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項10】
前記高度不飽和ジエンゴムが、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、及びそれらのコポリマー又はそれらの組み合わせから選択される合成ゴムである、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項11】
前記硫黄加硫系が、1phr〜6phrの硫黄を含む、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項12】
前記硫黄加硫系が、0.5phr〜4phrの硫黄を含む、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項13】
23℃における前記10%の伸び率が、前記硬化ゴム組成物のモジュラスの10%の範囲内に維持される、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項14】
23℃における前記100%の伸び率が、前記硬化ゴム組成物のモジュラスの10%の範囲内に維持される、請求項13に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項15】
23℃における前記100%の伸び率が、前記硬化ゴム組成物のモジュラスの10%の範囲内に維持される、請求項1に記載の硬化ゴム組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の硬化ゴム組成物からなる成分を有するタイヤ。

【公表番号】特表2013−515845(P2013−515845A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547233(P2012−547233)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/062206
【国際公開番号】WO2011/082157
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【Fターム(参考)】