説明

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】ゴム組成物中のDPGの使用量を削減するか、又はDPGを使用することなく、加硫速度の低下やゴム中のシリカの分散悪化の問題を解決したゴム組成物の提供。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部、カーボンブラック20〜120重量部又はシリカ及びカーボンブラックを合計量で20〜120重量部並びに酸解離平衡定数(pKa値)が6.5〜14のビシクロ構造を有する窒素含有複素環式化合物0.1〜3.0重量部を含んでなるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関し、更に詳しくはジフェニルグアニジン(DPG)を配合することなく、又はDPGの配合量を減らして、ゴム組成物の加硫速度及び補強性を向上させることができるゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム工業、特にタイヤ工業においてカーボンブラックを補強用充填剤として配合することは古くから行われており、更に近年ではこれにシリカを配合することが盛んに行なわれており、それに伴なう問題点を解決することも種々提案されている。しかしながら、カーボンブラックを配合する系においてもゴムの加硫速度を速くすることは、工場における生産性の面において未だ重要な解決すべき課題である。
一方、自動車の高性能化、高機能化に伴い、タイヤへの要求性能は年々高度になってきている。その一つとして、湿潤路面でのグリップ力、即ちウェットグリップ力を維持しながらも、低燃費性も兼ね備えたタイヤの開発が強く望まれている。従来、タイヤトレッドに用いられてきた補強性充填剤は、カーボンブラックであったが、最近では上記の要望からカーボンブラックと比較して良好な低ヒステリシスロス性とウェットスキッド性を有する超微粒子シリカが、タイヤトレッド用の補強性充填剤として用いられ始めてきた(例えば特許文献1参照)。しかしながら、シリカ系充填剤は、表面上に親水性シラノール基を有するため、カーボンブラックに比較してゴム分子に対する親和性が劣り、そのためシリカ系充填剤は、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド性には優れるものの、補強性や耐摩耗性においてはカーボンブラックには及ばないという問題があった。そこで、シリカ系充填剤の補強性をカーボンブラックと同程度にするために、ゴム分子とシリカ粒子表面を化学的に結び付け、補強性を増大させることを可能とするシランカップリング剤の併用がなされてきた(例えば特許文献2参照)。代表的なシランカップリング剤としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0003】
然るに、シリカ含有ゴム組成物にシランカップリング剤を配合する場合、シリカとシランカップリング剤とのカップリング反応が不十分であると、シリカの良好な分散性は得られず、またカップリング反応が過剰であるとゴム焼けを招いて品質が低下するという問題があった。そのため、従来の混練方法では、混練作業中に熱電対などで常時ゴム温度を測定してゴム温度を一定範囲に維持しながら、経験的に設定した時間内に混練操作をしていたが、シリカとシランカップリング剤の反応量がバッチ毎に必ずしも一定するとは限らず、シリカ配合の混合加工性と所望のゴム特性のバランス化は難易度が高い。
【0004】
ところで、従来加硫促進剤として多用されてきた、ジフェニルグアニジン(DPG)については、近年、ゴム/スチールコード接着への悪影響が懸念されており、DPGの使用量を削減する動きがある。しかしながら、シリカ多量配合系ゴム組成物ではDPGの使用量を削減すると、加硫速度が低下、ゴム中のシリカの分散が悪化するという問題があった。
【0005】
特許文献3にはジエン系ゴムに、ピペリジン骨格を有する2級アミン化合物である2,2,6,6-テトラメチルピペリジン又はその誘導体を配合することにより、高いグリップ性能を有するゴム組成物を得ることができる旨が開示されているが、この文献には当該化合物をシリカと共に配合することは記載されておらず、従ってシリカの分散性や加工性に関する記載もない。
【0006】
特許文献4にはジエンエラストマーポリマーに有機性第4級アンモニウム塩を、シリカやその他の添加剤と共に、配合することによって二次加硫促進剤が添加されないときでも許容加硫速度を維持しながら良好な機械的特性を示す加硫製品が得られる旨記載されている。この文献には、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを有機性第4級アンモニウム塩の調製に使用することは記載されているが(実施例1及び2参照)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)をゴム組成物に配合することは全く記載されていない。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5227425号明細書
【特許文献2】米国特許出願番号第467583号明細書
【特許文献3】特開2005−112921号公報
【特許文献4】特表2006−509851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的はゴム組成物中のDPGの使用量を削減するか、又はDPGを使用することなく、加硫速度の低下や、シリカを配合した場合のゴム中のシリカの分散悪化の問題を解決したゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従えば、ジエン系ゴム100重量部、カーボンブラック20〜120重量部及び式(I)(もしくはその塩)又は式(II):
【化1】

で示されるビシクロ構造を有し、酸解離平衡定数(pKa値)が6.5〜14の化合物0.1〜3.0重量部を含んでなるゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤが提供される。
【0010】
本発明に従えば、更にジエン系ゴム100重量部、シリカ及びカーボンブラックを合計量で20〜120重量部並びに式(I)(もしくはその塩)又は式(II):
【化2】

で示されるビシクロ構造を有し、酸解離平衡定数(pKa値)が6.5〜14の化合物0.1〜3.0重量部を含んでなるゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴム組成物に、ビシクロ構造を有する下記式(I)(もしくはその塩)又は式(II)の化合物を配合することにより、ゴム組成物の加硫速度やシリカの分散、補強性を向上させ、かつDPGの削減が可能となる。
【0012】
【化3】

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく研究を進めた結果、ジエン系ゴムを含むゴム組成物に、前記式(I)(もしくはその塩、以下同じ)又は(II)のビシクロ構造を有する化合物を配合することにより、ゴム組成物の加硫速度やシリカの分散及び補強性を向上させることができ、かつDPGの一部又は全部の代替が可能となることを見出した。
【0014】
本発明の第一の態様は、ジエン系ゴム100重量部、カーボンブラック20〜120重量部及び前記式(I)又は式(II)で示されるビシクロ構造を有し、酸解離平衡定数(pKa値)が6.5〜14の化合物0.1〜3.0重量部を含んでなるゴム組成物に関する。
【0015】
本発明の第二の態様は、ジエン系ゴム100重量部、シリカ及びカーボンブラックを合計量で20〜120重量部並びに前記式(I)又は式(II)で示されるビシクロ構造を有し、酸解離平衡定数(pKa値)が6.5〜14の化合物0.1〜3.0重量部を含んでなるゴム組成物に関する。
【0016】
前記式(I)の化合物は下記構造で示される1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)又はその塩或いは1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)又はその塩である。
【0017】
【化4】

【0018】
前記式(II)の化合物は下記構造を有するキヌクリジン、キヌクリジノール又はDABCOである。
【0019】
【化5】

【0020】
本発明によればゴム組成物の加硫速度やシリカの分散及び補強性を向上させることができ、かつDPGの一部又は全部の代替が可能となる。
【0021】
本発明のゴム組成物に使用するジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどをあげることができ、これらは単独又は任意のブレンドで使用することができる。
【0022】
本発明のゴム組成物に使用するカーボンブラックとしては、タイヤ用ゴム組成物に従来から一般的に配合されているものを使用できるが、本発明の目的を達成させる上からJIS K6217−2に従って測定した窒素吸着比表面積(N2SA)が70〜150m2/gのものが好ましい。
【0023】
本発明のゴム組成物に使用するシリカとしては、従来からタイヤその他用のゴム組成物として配合されている任意のシリカとすることができる。シリカの配合量が少ないと強度と耐摩耗が不十分なだけでなく、シリカ配合によるウェット摩擦力と低発熱性の両立も不十分となるので好ましくなく、逆に多いと混合加工性の低下や発熱性の増加となるので好ましくない。
【0024】
本発明のゴム組成物に使用することができる硫黄含有シランカップリング剤としては、これも従来からシリカと共に配合されるもののうち、好ましくは分子中に硫黄原子を含有する任意のものとすることができ、例えば3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕テトラスルフィド、ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕ジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。これらは公知の化合物であり、数多くの市販品が利用できる。このシランカップリング剤の配合量が少ないと、シリカの補強性不足によるゴム強度や耐摩耗性の低下が起こるおそれがあるので好ましくなく、逆に多いと加工中のヤケが発生するおそれがあるので好ましくない。
【0025】
前記式(I)及び/又は(II)で表わされるピペリジン骨格を有する化合物の配合量は、それら単独で、又はDPGと併用する場合には、それとの合計量で、ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜3.0重量部、更に好ましくは0.1〜2.8重量部であり、これらの式(I)及び/又は(II)で表わされる3級アミン化合物はシラニゼーション反応(即ち、シリカとシランカップリング剤との反応)の段階でシリカ及びシランカップリング剤と同時にゴム組成物中に添加し、混練配合するのが好ましい。
【0026】
本発明のゴム組成物に使用する前記式(I)で表わされる化合物としては、好ましくは前記式(I)で表わされる1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)又はその塩;及び1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)又はその塩から選ばれる、少なくとも1種のビシクロ構造を有する化合物を用いることができる。式(I)で表わされるDBN又はその塩は公知の化合物であり、DBNの塩としては、例えばDBNのオクチル酸塩、DBNのフェノールノボラック樹脂塩などがあげられる。これらは、市販品を使用することができるので特別に合成する必要はなく、例えばサンアプロ社よりDBNとして、またU−CAT1102(DBNのオクチル酸塩)、U−CAT881(DBN−フェノールノボラック樹脂塩)などとして市販されている。一方、DBU又はその塩も公知の化合物であり、DBUの塩としては、例えばDBUのオクチル酸塩、DBUのオレイン酸塩、DBUのp−トルエンスルホン酸塩、DBUのギ酸塩などがあげられる。これらは、市販品を使用することができる。例えば、サンアプロ社よりDBUとして、またU−CAT SA102−50(DBU−オクチル酸塩)、U−CAT SA112(DBU−オクチル酸塩)、U−CAT SA106(DBU−オレイン酸塩)、U−CAT SA506(DBU−p−トルエンスルホン酸塩)、U−CAT SA603(DBU−ギ酸塩)などとして市販されている。
【0027】
本発明のゴム組成物に使用する前記式(II)で表わされる化合物としては、好ましくは(i)前記式で表わされる1−アザビシクロ[2,2,2](Quinuclidine)(キヌクリジン);(ii)前記式で表わされる1−アザビシクロ[2,2,2]−3−オール(3−Quinuclidinol)(キヌクリジオール);及び(iii)前記式で表わされる1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)(ダブコ)から選ばれる、少なくとも1種のビシクロ構造を有する化合物を用いることができる。
【0028】
前記式(II)で表わされるキヌクリジン及びキヌクリジオールはともに市販品で特別に合成する必要はなく、例えばAldrichから試薬として入手することができ、また式(II)で表わされるDABCOも市販されており、例えばAldrichよりDABCOとして入手することができる。
本発明によれば、近年、ゴム/スチールコード接着への悪影響が懸念されているDPGの使用量の削減により生ずる問題点である加硫速度の低下や、シリカを配合する場合にはシリカの分散悪化の問題を、前記DBN,DBU、キヌクリジン(Quinuclidine)、キヌクリジオール(Quinuclidinol)、DABCOを、ゴム組成物に配合することにより、加硫速度やシリカの分散、補強性を向上させ、かつDPG配合量の削減が可能となる。
【0029】
本発明で好適に用いられる式(I)又は式(II)の化合物は、前述の如く、DBN(pKa=12.9)、DBU(pKa=12.5)、Quinuclidine(pKa=11.5)、3-Quinuclidinol(pKa=10.1)、DABCO(pKa=8.8)である。これらの化合物は高い求核性によりシラニゼーション反応を促進し、ペイン効果を低減することが可能である。また、これらの化合物は、DPGと置き換えて使用しても、加硫速度に悪影響を及ぼさない点も大きなメリットのひとつである。
【0030】
DPGは、シリカを配合したゴム組成物において、以下の利点があるため、従来から一般的に使用されている。
(1)2次加硫促進剤として使用することで、シリカの酸性度による加硫速度低下を抑制できる。
(2)シリカ表面との相互作用によりシリカ粒子同士の凝集を防いで、ペイン効果(即ち、シリカ間の相互作用による貯蔵弾性率の増加)を低減することができ、またシラニゼーション促進により補強性を上げることができる。
【0031】
しかしながら、前述の如く、近年、DPGはゴム/スチールコード接着への悪影響が懸念されており、DPG使用量の削減もしくは代替品の探索が課題となっている。
【0032】
本発明者らは、DPGの代替品として前記式(I)及び(II)の化合物でpKa値が大きいものに着目した。シラニゼーション反応(シリカ−シランカップリング剤の反応)では、シランカップリング剤の加水分解速度が重要となる。これらの化合物は、この加水分解を2分子的求核置換反応(SN2)で促進する。特にこれらの化合物は、窒素原子は全てアルキル鎖と結合しており、アルキル基は、電子供与性が高く窒素原子の求核性を著しく向上させる。その結果、シラニゼーションを促進する。また、一般的にシリカ表面の酸性度(pH)は6〜7程度であり、シラニゼーション反応促進のためにはシリカ表面pHよりpKa値を大きくすることが重要となる。
【0033】
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0035】
ゴム物性評価試験法
以下の方法で評価し、結果はすべて標準例1又は2の値を100として指数表示した。
T90:ODRにて測定温度160℃で測定(ASTM−D2084に準拠)した。数値が小さいほど加硫速度が速いことを表す。
Δトルク(MH−HL):JIS K6300−2に準拠し、加硫曲線の最大トルク値と最小トルク値の差を算出した。数値が大きいほど架橋効率が高いことを表す。
M100,M300:JIS K6251に準拠して、引張り試験を行い、その100%および300%伸張時の応力をM100、およびM300とした。数値が大きいほどM100,M300が高いことを表す。
TB,EB:JIS K6251に準拠して引張り試験を行い、引張強さ(TB)および切断時伸び(EB)を測定した。数値が大きいほどTB,EBが高いことを表す。
【0036】
標準例1、実施例1〜5及び比較例1
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉型ミキサーで9分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて上述の試験法で未加硫物性を評価した。結果は表Iに示す。
【0037】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で30分間加硫して加硫ゴムシートを調整し、上述の試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表I脚注
*1:PT.NUSIRA製 Natural Rubber SIR20
*2:東海カーボン(株)製 シーストKH
*3:正同化学工業(株)製 酸化亜鉛3種
*4:日本油脂(株)製 ビーズステアリン酸 YR
*5:Flexsys社製 Santoflex13
*6:(株)ジャパンエナジー製 プロセスX−140
*7:鶴見化学工業(株)製 金華印油入微粉硫黄
*8:Flexsys社製 Santocure CBS
*9:(株)サンアプロ社製 DBN
*10:(株)サンアプロ社製 DBU
*11:Aldrich社製 Quinuclidine
*12:Aldrich社製 3−Quinuclidinol
*13:Aldrich社製 DABCO
*14:Aldrich社製 2−Picoline
【0040】
標準例2、実施例6〜10及び比較例2
サンプルの調製
表IIに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉型ミキサーで分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて上述の試験法で未加硫物性を評価した。結果は表IIに示す。
【0041】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で30分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、上述の試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表IIに示す。
【0042】
【表2】

【0043】
表II脚注
*1:LANXCESS社製 Buna−VSL5025−HM1
*2:LANXCESS社製 Buna−CB24
*3:Rhodia社製 Zeosil 1165MP
*4:Evonick Degussa社製 Si69
*5:表I脚注参照
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、ゴム組成物に、ビシクロ構造を有する前記式(I)(もしくはその塩)又は式(II)のビシクロ構造を有する、pKaが6.5〜14の化合物を配合することにより、ゴム組成物の加硫速度やシリカ配合の場合のシリカの分散、補強性を向上させ、かつDPGの削減が可能となるので、空気入りタイヤ用ゴム組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部、カーボンブラック20〜120重量部及び式(I)(もしくはその塩)又は式(II):
【化1】

で示されるビシクロ構造を有し、酸解離平衡定数(pKa値)が6.5〜14の化合物0.1〜3.0重量部を含んでなるゴム組成物。
【請求項2】
ジエン系ゴム100重量部、シリカ及びカーボンブラックを合計量で20〜120重量部並びに式(I)(もしくはその塩)又は式(II):
【化2】

で示されるビシクロ構造を有し、酸解離平衡定数(pKa値)が6.5〜14の化合物0.1〜3.0重量部を含んでなるゴム組成物。
【請求項3】
前記化合物が1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)及び/又はその塩である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記化合物が1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)及び/又はその塩である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記化合物が1−アザビシクロ[2,2,2](キヌクリジン)である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記化合物が1−アザビシクロ[2,2,2]−3−オール(キヌクリジオール)である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記化合物が1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴムを構成部材に用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2009−263585(P2009−263585A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117858(P2008−117858)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】