説明

ゴム組成物及び動力伝動用ベルト

【課題】ポリエステルロープのロープ屑を有効利用して、コスト安価に調製することができるゴム組成物を提供する。
【解決手段】クロロプレンゴムとエチレン−α−オレフィンエラストマーの少なくとも一方100質量部に対して、ポリエステルロープを粉末化した繊維長0.1〜3mmの短繊維を1〜15質量部配合する。ポリエステルロープを粉末化した短繊維の配合によって、加工性を改善することができると共に、亀裂等の発生を抑制することができる。この短繊維はポリエステルロープのロープ屑を粉末化したものを有効利用することができ、別途ナイロン短繊維などを用いる必要がなくなり、コスト安価にゴム組成物を調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びこのゴム組成物を用いて作製した動力伝動用ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
VリブドベルトやローエッジVベルトなどの動力伝動用ベルトは、ベルト長手方向に沿って心線を埋設したゴム層を含む弾性体によって形成されている。
【0003】
図1(a)はVリブドベルトの一例を示すものであり、ベルト外周側の背面ゴム層1と、ベルト内周側のリブ2を有する圧縮ゴム層3と、背面ゴム層1と圧縮ゴム層3との間の接着ゴム層4とを積層してゴム層5が形成されるものであり、接着ゴム層4にベルト長手方向に沿って心線6を埋設することによって、Vリブドベルトを形成するようにしてある。
【0004】
図1(b)はローエッジVベルトの一例を示すものであり、ベルト内周側のリブ2を有する圧縮ゴム層3と、ベルト外周面の帆布7と圧縮ゴム層3との間の接着ゴム層4とを積層してゴム層5が形成されるものであり、接着ゴム層4にベルト長手方向に沿って心線6を埋設することによって、ローエッジVベルトを形成するようにしてある。
【0005】
そしてこれらの伝動ベルトのゴム層5、特に背面ゴム層1や接着ゴム層4を成形するゴム組成物のゴム素材として、最近では、クロロプレンゴムやエチレン−α−オレフィンエラストマーを用いることが多い。
【0006】
ここで、ゴム素材としてクロロプレンゴムを用いて接着ゴム層4を成形するゴム組成物を調製するにあたって、加工性を改善する目的で、フロック状のナイロン短繊維などをゴム組成物に配合し、ゴム組成物をロール圧延する際のロールへの粘着や、ゴムの収縮を抑制するようにしている。
【0007】
またゴム素材としてエチレン−α−オレフィンエラストマーを用いて背面ゴム層1を成形するゴム組成物を調製するにあたって、エチレン−α−オレフィンエラストマーは引き裂き力が低く、背面ゴム層1の亀裂を抑制するために、フロック状のナイロン短繊維などをゴム組成物に配合するようにしている(例えば特許文献1等参照)。
【0008】
一方、伝動ベルトの心線6などに用いられるポリエステルロープは、ゴムとの接着性を改善する目的で、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液などで接着処理されるが、この処理工程で多量のロープ屑が発生する。
【特許文献1】特開2004−257459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、ゴム組成物のゴム素材としてクロロプレンゴムやエチレン−α−オレフィンエラストマーを用いる場合、別途ナイロン短繊維などを配合する必要があって、コストの上で問題を有するものであった。
【0010】
またポリエステルロープの処理工程で発生するロープ屑は、接着処理などが施されているので、そのままではリサイクルが困難であり、廃棄するしかないのが現状である。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ポリエステルロープのロープ屑を有効利用して、加工性を向上することができると共に、コスト安価に調製することができるゴム組成物を提供することを目的とするものであり、また耐亀裂性などに優れた動力伝動用ベルトを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るゴム組成物は、クロロプレンゴムとエチレン−α−オレフィンエラストマーの少なくとも一方100質量部に対して、ポリエステルロープを粉末化した繊維長0.1〜3mmの短繊維を1〜20質量部配合して成ることを特徴とするものである。
【0013】
ポリエステルロープを粉末化した短繊維の配合によって、加工性を改善することができると共に、亀裂等の発生を抑制することができるものであり、そしてこの短繊維はポリエステルロープのロープ屑を粉末化したものを有効利用することができ、別途ナイロン短繊維などを用いる必要をなくしたり、使用量を低減したりすることができるものであって、コスト安価にゴム組成物を調製することができるものである。
【0014】
また本発明のゴム組成物において、上記短繊維は、ポリエステルロープの処理工程で発生するロープ屑を粉砕して得られるものであることを特徴とするものである。
【0015】
ポリエステルロープのロープ屑はゴムとの接着性を改善する処理などが施されているが、このロープ屑の粉砕物をそのまま短繊維としてゴム組成物に配合することができるものであり、ポリエステルロープの処理工程で発生するロープ屑のリサイクルを容易に行なうことができるものである。
【0016】
また本発明に係る動力伝動用ベルトは、ベルト長手方向に沿って心線2をゴム層5に埋設して形成される伝動ベルトであって、ゴム層5中の接着ゴム層4は上記の短繊維を含有するゴム組成物で形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
上記のゴム組成物で接着ゴム層4を形成するにあたって、ポリエステルロープを粉末化した短繊維がゴム組成物に配合されていることによって、ゴム組成物をロール混練する際のロールへの粘着や、ゴムの収縮をこの短繊維で抑制することができ、加工性を向上することができると共に、接着ゴム層4をこの短繊維で補強することができ、耐亀裂性などを向上することができるものである。
【0018】
また本発明に係る動力伝動用ベルトは、ベルト長手方向に沿って心線2をゴム層5に埋設して形成される伝動ベルトであって、ゴム層5中の背面ゴム層1は上記の短繊維を含有するゴム組成物で形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
上記のゴム組成物で背面ゴム層1を形成するにあたって、ポリエステルロープを粉末化した短繊維がゴム組成物に配合されていることによって、背面ゴム層1をこの短繊維で補強することができ、耐亀裂性などを向上することができるものである。
【0020】
また本発明の動力伝動用ベルトにおいて、短繊維はベルト長手方向に配向していることを特徴とするものであり、短繊維による補強効果を高く得ることができるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ポリエステルロープを粉末化した短繊維の配合によって、加工性を改善することができると共に、亀裂等の発生を抑制することができるものである。そしてこの短繊維はポリエステルロープのロープ屑を粉末化したものを有効利用することができ、別途ナイロン短繊維などを用いる必要をなくしたり、使用量を低減したりすることができるものであって、コスト安価にゴム組成物を調製することができるものである。
【0022】
またこの短繊維を配合したゴム組成物を用いて作製される動力伝動用ベルトは、加工性や、耐亀裂性などに優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0024】
本発明に係るゴム組成物は、クロロプレンゴムとエチレン−α−オレフィンエラストマーをゴム素材とし、これにポリエステルロープを粉末化した短繊維などを配合して調製されるものである。
【0025】
クロロプレンゴムとエチレン−α−オレフィンエラストマーは、一方を単独で用いる他、両者を併用することもできる。またエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)などを用いることができる。EPDMのジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどを挙げることができる。
【0026】
本発明においてポリエステルロープの繊維の材質は、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどを用いることができる。そしてこのポリエステルロープは、動力伝動用ベルトの上記の心線として用いられるものを使用することができるものであり、このポリエステルロープを粉砕して粉末化したものを短繊維としてゴム組成物に配合するものである。
【0027】
ここで、動力伝動用ベルトの心線として用いられるポリエステルロープは、ゴムとの接着性を高めるために、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液などで接着処理されるが、この接着処理工程で多量のロープ屑が発生する。本発明ではこの処理工程で発生するロープ屑を粉砕して得られるものを、短繊維としてゴム組成物に配合することができるものである。このようにポリエステルロープを処理する工程で発生するロープ屑を粉砕して得られる短繊維には、RFL液などの接着処理剤が付着しているが、この接着処理剤はゴム組成物のゴムとの接着性を高める作用をするので、この短繊維をそのままゴム組成物に配合することができるものであり、ロープ屑を何等処理する必要なく、粉砕するだけでリサイクルして使用することができるものである。
【0028】
本発明のゴム組成物には、上記の材料の外、必要に応じて、加硫剤としての硫黄、有機過酸化物、補強剤としてのカーボンブラック、シリカなどの充填剤、軟化剤、老化防止剤、補強繊維等を配合することができるものである。そしてこのゴム組成物を用いて動力伝動用ベルトのゴム層5、例えば図1(a)のVリブドベルトの背面ゴム層1や接着ゴム層4、図1(b)のローエッジVベルトの接着ゴム層4を作製することができるものである。
【0029】
動力伝動用ベルトの製造は一般に次のようにして行なうことができる。ゴム組成物を混練し、混練りゴムをカレンダーロールなどで圧延してゴムシートを作製した後、背面ゴム層1用のゴムシート、接着ゴム層4用のゴムシート、圧縮ゴム層3用のゴムシートを成形ドラムに重ねて巻き付ける。またこのとき接着ゴム層4用のゴムシートの外側に心線6を螺旋状に巻き付けておく。そしてこれを加熱加圧して加硫することによって、スリーブ状に成形し、このスリーブを輪切りするように切断することによって、動力伝動用ベルトを得ることができるものである。
【0030】
ここで、本発明のゴム組成物にはポリエステルロープを粉末化した短繊維が含有されているので、上記のようにゴム組成物を混練りしてロールで圧延するにあたって、ロールへの粘着や、ゴムの収縮を抑制することができるものであり、加工性を向上することができるものである。
【0031】
また本発明のゴム組成物で作製した背面ゴム層1や接着ゴム層4には、ポリエステルロープを粉末化した短繊維が含有されているので、この短繊維による補強効果で引き裂き力を向上することができ、耐亀裂性などを向上することができるものである。このように短繊維による補強効果をより有効に発揮させるためには、背面ゴム層1や接着ゴム層4に含有される短繊維はベルト長手方向に配向していることが望ましい。ゴム組成物の混練りゴムをカレンダーロールなどで圧延してシート化する際に、短繊維はゴムシート中で圧延方向へ繊維長手方向が向くように配向するので、このゴムシートを短繊維が配向する方向で成形ドラムに巻き付けて成形して、動力伝動用ベルトを作製することによって、短繊維がベルト長手方向に配向した背面ゴム層1や接着ゴム層4を形成することができるものである。
【0032】
ここで、本発明のゴム組成物に配合されるポリエステルロープを粉末化した短繊維は、繊維長が0.1〜3mmの範囲のものが使用されるものである。繊維長が0.1mm未満であると、粉末状の形態になるので、短繊維を配合することによる、加工性や耐亀裂性などを向上する効果を十分に得ることができない。また繊維長が3mmを超える場合、ポリエステルロープの撚りの解けが十分ではなく、成形されるゴム層の伸びや屈曲性が低下して、ベルト耐久性が悪くなるおそれがある。ここで、ポリエステルロープを粉末化した短繊維の繊維径は、特に限定されるものではないが、10〜30μmの範囲が好ましい。
【0033】
また本発明のゴム組成物において、ポリエステルロープを粉末化した短繊維の配合量は、クロロプレンゴムやエチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、1〜20質量部の範囲に設定されるものである。短繊維の配合量が1質量部未満であると、短繊維を配合することによる加工性や耐亀裂性などを向上する効果を十分に得ることができない。また短繊維の配合量が20質量部を超えると、ゴム組成物の粘度が高くなって、ゴムシートに圧延することが困難になり、また成形されるゴム層の弾性が不十分になって伸びや屈曲性が低下し、ベルト耐久性が悪くなるおそれがある。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
ポリエステルロープをレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液で接着処理する処理工程で発生したロープ屑を粉砕し、繊維長3.0mm、繊維径25μmの短繊維を得た(この短繊維を「短繊維A」とする)。
【0036】
そして表1に示すように、クロロプレンゴム100質量部、酸化マグネシウム5質量部、ステアリン酸1質量部、老化防止剤(スチレン化ジフェニルアミン)2質量部、カーボンブラック25質量部、シリカ25質量部、上記の短繊維Aを2質量部配合し、さらにアロマティックオイル10質量部、酸化亜鉛5質量部を配合して、これを密閉式混練機で混練し、ゴム組成物を得た。
【0037】
(実施例2)
短繊維Aの配合量を5質量部に変更する他は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0038】
(実施例3)
短繊維Aを2質量部配合する他に、ナイロンフロック(繊維長2mm、繊維径20μmのナイロン短繊維)を3質量部配合するようにした他は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同様なポリエステルロープのロープ屑を粉砕し、繊維長6.0mm、繊維径25μmの短繊維を得た(この短繊維を「短繊維B」とする)。
【0040】
そしてこの短繊維Bを5質量部配合するようにした他は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0041】
(比較例2)
短繊維Aの配合量を0.5質量部に変更する他は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0042】
(比較例3)
短繊維Aの配合量を25質量部に変更する他は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0043】
(参考例)
短繊維として、実施例3で用いたナイロンフロックを5質量部配合するようにした他は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0044】
上記の実施例1〜3、比較例1〜3、参考例において、ゴム組成物を密閉式混練機で混練した混練りゴムについて、ムーニー粘度をJIS K6300−1に準拠して測定した。
【0045】
また混練りゴムをカレンダーロールに通して圧延することによってゴムシートを成形し、このロール圧延の際の、ロールへの粘着と、圧延後のゴムシートの収縮性から、加工性を評価した。
【0046】
このようにして得られたゴムシートを153℃で20分間加硫した。この加硫ゴムについて、切断時の伸び(EB)と、100%伸張時の応力(M100)を、それぞれJIS K6251に準拠して測定した。
【0047】
また、上記のようにして得られたゴムシートを接着ゴム層4に用いて、図1(b)のような周長1055mmのローエッジVベルトを作製した。尚、比較例2,3については、ゴムシートの作製が困難であるので、ローエッジVベルトを作製することはできなかった。
【0048】
そしてこのローエッジVベルトを、駆動プーリ(直径125mm)、従動プーリ(直径125mm)、テンションプーリ(直径70mm)を設けた試験機の各プーリに、初荷重834N(85kgf)で懸架し、駆動プーリの回転数を4700回転/分として85℃の雰囲気で走行させる高温耐久走行試験を行ない、耐久性の評価を行なった。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1〜3は、ロープ処理工程で発生したポリエステルロープの屑を3.0mmに粉砕した短繊維Aを、参考例のナイロンフロックの代替として配合したものに相当するものであり、表1にみられるように、ゴム物性、圧延時の加工性、ベルト耐久走行寿命のいずれにおいても、参考例のものと同等の良好なものであった。
【0051】
一方、比較例1は6.0mmに粉砕した短繊維Bを用いたものであり、圧延時の加工性については問題はなかったが、ロープの撚りの解けが十分ではないので、ゴム物性において伸びの低下、屈曲の低下が大きくなり、ベルト耐久走行寿命が短いものであった。
【0052】
また比較例2は3.0mmの短繊維Aの配合量が少ないので、ロール粘着性、ゴム収縮性が大きく、比較例3は3.0mmの短繊維Aの配合量が多すぎるので、未加硫ゴムの粘度が高く、圧延が困難であり、いずれも加工性が悪いものであった。
【0053】
(実施例4)
表2に示すように、EPDM100質量部、実施例1で得た短繊維Aを10質量部、ステアリン酸1質量部、酸化亜鉛5質量部、カーボンブラック60質量部、パラフィンオイル8質量部、老化防止剤(スチレン化ジフェニルアミン)2質量部、共架橋剤(N−N′−m−フェニレンマレイミド)2質量部、有機過酸化物(1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン)8質量部、硫黄0.3質量部を配合し、これを密閉式混練機で混練し、ゴム組成物を得た。
【0054】
(実施例5)
短繊維Aの配合量を5質量部に変更する他は、実施例4と同様にしてゴム組成物を得た。
【0055】
(実施例6)
短繊維Aの配合量を20質量部に変更する他は、実施例4と同様にしてゴム組成物を得た。
【0056】
(比較例4)
短繊維Aの配合量を0.5質量部に変更する他は、実施例4と同様にしてゴム組成物を得た。
【0057】
(比較例5)
短繊維Aの配合量を30質量部に変更する他は、実施例4と同様にしてゴム組成物を得た。
【0058】
上記の実施例4〜6、比較例4〜5において、ゴム組成物を密閉式混練機で混練した混練りゴムをカレンダーロールに通して圧延することによってゴムシートを作製し、165℃で30分間加硫した。この加硫ゴムについて、硬度(JIS−A)をJIS K6253に準拠して測定し、また短繊維Aの配向方向と平行な方向での、切断時の伸び(EB)と、切断時の応力(TB)を、それぞれJIS K6251に準拠して測定した。さらに、短繊維Aの配向方向に対して直角な方向及び平行な方向での引き裂き力(JIS−A型)をJIS K6252に準拠して測定した。
【0059】
また、上記のゴム組成物をバンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延して得られたゴムシートを背面ゴム層1に用いて、図1(a)のようなVリブドベルトを作製した。このVリブドベルトにおいて、背面ゴム層1の短繊維Aはベルト長手方向に配向しており、また圧縮ゴム層3にはベルト幅方向に配向する短繊維が含まれている。
【0060】
そしてこのVリブドベルトを、駆動プーリ(直径60mm)、アイドラープーリ(直径50mm)、従動プーリ(直径50mm)、テンションプーリ(直径50mm)、アイドラープーリ(直径50mm)の順に設けた試験機の各プーリに懸架し、アイドラープーリへの巻き付け角度90°にして、ベルト張力が800N/6リブになるように駆動プーリに荷重を付加した後、駆動プーリの回転数を3300rpmとして130℃の雰囲気で走行させる耐熱屈曲走行試験を行なった。この耐熱屈曲走行試験において、心線6にまで達する亀裂が圧縮ゴム層3に6個発生するまでの走行時間を測定し、またそのときに背面ゴム層1にクラックが発生しているか否かを調べた。
【0061】
【表2】

【0062】
表1にみられるように、実施例4〜5のものは、耐熱屈曲走行試験において400時間を経過しても心線6に達する6個の亀裂が発生せず、400時間で試験を打ち切った。そしてこのときの背面ゴム層1にクラックは発生していなかった。
【0063】
一方、短繊維Aの配合量が少ない比較例4では、端面からのクラックが発生し易くなり、耐熱屈曲走行試験において400時間の経過でベルト幅方向のクラックが発生した。また短繊維Aの配合量が多すぎる比較例5では、十分なゴム弾性が得られず、耐熱屈曲走行試験において248時間の経過でゴムが破壊された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(a)はVリブドベルトの一例を示す破断斜視図、(b)はローエッジVベルトの一例を示す破断斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 背面ゴム層
4 接着ゴム層
5 ゴム層
6 心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴムとエチレン−α−オレフィンエラストマーの少なくとも一方100質量部に対して、ポリエステルロープを粉末化した繊維長0.1〜3mmの短繊維を1〜20質量部配合して成ることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
上記短繊維は、ポリエステルロープの処理工程で発生するロープ屑を粉砕して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ベルト長手方向に沿って心線をゴム層に埋設して形成される動力伝動用ベルトであって、ゴム層中の接着ゴム層は請求項1又は2に記載の短繊維を含有するゴム組成物で形成されていることを特徴とする動力伝動用ベルト。
【請求項4】
ベルト長手方向に沿って心線をゴム層に埋設して形成される動力伝動用ベルトであって、ゴム層中の背面ゴム層は請求項1又は2に記載の短繊維を含有するゴム組成物で形成されていることを特徴とする動力伝動用ベルト。
【請求項5】
短繊維はベルト長手方向に配向していることを特徴とする請求項3又は4に記載の動力伝動用ベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2009−249519(P2009−249519A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99957(P2008−99957)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】