説明

ゴム組成物

【課題】ジエン系ゴムにカーボンブラックやシリカなどの天然鉱物を配合したゴム組成物の粘弾性特性などの物性を更に向上させる。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部、カーボンブラック及び/又はシリカ20〜120重量部、平均粒子径が30〜100μmのシラス3〜50重量部並びにシリカとシラスの合計量の3〜15重量%の硫黄含有シランカップリング剤を含んでなるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関し、更に詳しくはゴムの粘弾性を改善したゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジエン系ゴムにカーボンブラックやシリカなどの天然鉱物を補強性フィラーとして配合してゴム物性を向上させる手法は良く知られている。特に近年自動車の高性能化、高機能化に伴い、タイヤへの要求性能は年々高度になってきている。その一つとして、湿潤路面でのグリップ力、即ちウェットグリップ力を維持しながらも、低燃費性も兼ね備えたタイヤの開発が強く望まれている。従来、タイヤトレッドに用いられてきた補強性充填剤は、カーボンブラックであったが、最近では上記の要望からカーボンブラックと比較して良好な低ヒステリシスロス性とウェットスキッド性を有する超微粒子シリカが、タイヤトレッド用の補強性充填剤として用いられ始めてきた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,227,425号明細書
【特許文献2】特開平11−03576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ジエン系ゴムに、カーボンブラックやシリカなどの天然鉱物を補強性フィラーとして配合したゴム組成物の粘弾性特性、特に発熱性や転がり抵抗を更に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、ジエン系ゴム100重量部、カーボンブラック及び/又はシリカ20〜120重量部、平均粒子径が30〜100μmのシラス3〜50重量部並びにシリカとシラスの合計量の3〜15重量%の硫黄含有シランカップリング剤を含んでなるゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジエン系ゴム100重量部並びにカーボンブラック及び/又はシリカ20〜120重量部を含むゴム組成物に、平均粒子径が30〜100μmのシラス3〜50重量部を配合することにより耐摩耗性に悪影響を及ぼすことなく、発熱性及び転がり抵抗を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく研究を進めた結果、ゴム組成物の配合において、シリカやカーボンブラックなどのフィラーの一部をシラスに置換することにより、粘弾性特性を改善できることを見出した。シラスは高温で焼成・発砲させると微粒の中空体となるため氷上性能改善を目的にスタッドレス用のフィラーとして評価されていたが(特許文献2)、従来、シリカやカーボンの代替フィラーとして考えられていなかった。
【0008】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラック及び/又はシリカを20〜120重量部、好ましくは30〜110重量部、平均粒子径が30〜100μmのシラス3〜50重量部、好ましくは3〜20重量部、硫黄含有シランカップリング剤をシリカとシラスの合計量の3〜15重量%、好ましくは3〜12重量%配合することによって得ることができる。使用するシラスは平均粒子径が上記範囲にあることが必要で、平均粒子径が大きいと耐摩耗性が悪化するので好ましくなく、逆に小さいと市販されていないため、微粉砕処理が必要となるので好ましくない。なお、シラスの平均粒子径は粒度分布測定沈降法によるX線透過型全自動粒度分布測定装置(Quanta Chrome社製マイクロスキャン)を用いて求めた。
【0009】
本発明のゴム組成物に使用するジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどをあげることができ、これらは単独又は任意のブレンドで使用することができる。
【0010】
本発明のゴム組成物に使用するカーボンブラックとしては、従来からタイヤその他用のゴム組成物に配合されている任意のカーボンブラックとすることができ、これらは単独又はブレンドで使用することができる。
【0011】
本発明のゴム組成物に使用するシリカとしては、従来からタイヤその他用のゴム組成物に配合されている任意のシリカとすることができる。シリカの配合量が少ないと強度と耐摩耗が不十分なだけでなく、シリカ配合によるウェット摩擦力と低発熱性の両立も不十分となるので好ましくなく、逆に多いと混合加工性の低下や発熱性の増加となるので好ましくない。本発明において、カーボンブラックとシリカとの配合量には特に制限はないが、カーボンブラック:シリカの比(重量比)が100〜0/0〜100、好ましくは90〜10/10〜90である。
【0012】
シラスは1000℃を越す温度で自然焼成された完全無機質粉状の物質。内部に気泡を有し、その構成成分は典型的には珪酸70%、アルミナ14%、カルシウム3%、ナトリウム3%、磁鉄2%、カリウム2%、その他マグネシウム、チタン、マンガンなどからなる公知の材料であり、例えば清新産業(株)製AS100(平均粒子径60μm)などとして市販されている。シラスの配合量が少ないと粘弾性特性の悪化を招くので好ましくなく、逆に多いとゴムの耐摩耗性が悪化するので好ましくない。
【0013】
本発明のゴム組成物に使用することができる硫黄含有シランカップリング剤としては、これも従来からシリカと共に配合されるもののうち、好ましくは分子中に硫黄原子を含有する任意のものとすることができ、例えば3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕テトラスルフィド、ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕ジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。これらは公知の化合物であり、数多くの市販品が利用できる。硫黄含有シランカップリング剤の配合量が少ないと、シリカの補強性不足によるゴム強度や耐摩耗性の低下が起こるおそれがあるので好ましくなく、逆に多いと加工中のヤケが発生するおそれがあるので好ましくない。
【0014】
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリカ以外の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0016】
標準例1、実施例1〜5及び比較例1〜6
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉型ミキサーで6分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0017】
次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。
【0018】
ゴム物性評価試験法
評価物性は全て標準例1の値を100としたときの指数で表示した。
耐摩耗性:ランボーン摩耗試験機を用いてJIS K6264に準拠し、荷重4.0kg(=39N)、スリップ率30%の条件にて測定した。(標準例1の摩耗量)×100/(試料の摩耗量)を100として指数表示した。この指数値が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
【0019】
tanδ(0℃):上島製作所製粘弾性スペクトロメーターを使用してJIS K6394に準拠して測定した。測定条件は周波数20Hz、伸長変形ひずみ量10±2%。数値が大きいほど湿潤路面でのスキッド性能が良いことを示す。
tanδ(60℃):上島製作所製粘弾性スペクトロメーター使用してJIS K6394に準拠して測定した。測定条件は周波数20Hz、伸長変形ひずみ量10±2%。数値は小さいほど転がり抵抗性能が良いことを示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表I脚注
SBR:LANXCESS製 VSL−5025 HM−1(37.5pHr油展ゴム)
BR:日本ゼオン(株)製 Nipol 1220
カーボンブラック:東海カーボン(株)製 シーストN
シリカ:Rhodia製 Zeosil 1165MP
シラス:清新産業製 AS100(平均粒子径60μm)
シラスバルーン:株式会社アクシーズケミカル製 ウィンライトSC(密度:0.3−0.4g/cm3
シランカップリング剤:Degussa製 Si69
オイル:ジャパンエナジー(株)製 プロセスX−140
ZnO:正同化学工業(株)製 亜鉛華3種
ステアリン酸:日本油脂(株)製 ビーズステアリン酸YR
硫黄:細井化学工業(株)製 5%油処理イオウ(イオウ:油=100:5)
CBS:大内新興化学工業製 ノクセラーCZ−G
DPG:住友化学製 サンセラーP−G
【0022】
標準例1はシラスを配合しない従来例であり、実施例1〜5は本発明に従ってシリカの一部をシラスに置き換えた例である。一方比較例1はシラスの配合量が多い例であり、比較例2〜3はカップリング剤の配合量が適量でない例である。また比較例4〜6はシラスに代えてシラスバルーンを配合した例である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、ジエン系ゴムに、カーボンブラックやシリカなどの天然鉱物を補強性フィラーとして配合したゴム組成物に、カーボンブラックやシリカの一部に代えてシラスを配合することにより、ゴム組成物の粘弾性特性などの物性を向上させることができるので、空気入りタイヤの構成部材、例えばキャップトレッド用として使用するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部、カーボンブラック及び/又はシリカ20〜120重量部、平均粒子径が30〜100μmのシラス3〜50重量部並びにシリカとシラスの合計量の3〜15重量%の硫黄含有シランカップリング剤を含んでなるゴム組成物。
【請求項2】
シラスの配合量が3〜20重量部である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物をキャップトレッドに用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2009−286879(P2009−286879A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139876(P2008−139876)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】