説明

ゴム組成物

【課題】ジエン系ゴムにカーボンなどの充填材を配合する場合ゴムと補強材との結合及びゴムの架橋構造を強化させることによりゴムの性能を向上させる方法を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴムとカーボンなどの充填材に(1)一般式


(式中、Rは2から20個のメチレン基を有する2価又は3価のアルキレン基、オキシアルキレン基からなりxは1から6の整数、nは1から50の整数であり、そしてAは、一般式


の構造を示す環状アミノ基を有するものであり、Rは3から12個のメチレン基を有する2価のアルキレン基、オキシアルキレン基からなり、Rは炭素数1から12個の炭素からなる2価の炭化水素基又は酸素を含む2価の炭化水素基またはR=0、または


の構造を示す3級アミノ基を有するものであり、R、Rは1から12個の炭素からなるアルキル基、オキシアルキル基からなる。)なるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は末端にアミノ基を有するポリサルファイド重合体とジエン系ゴムとカーボンなどの充填材のゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
末端基を環状アミノ基にしたSBRまたはBRゴムと充填材にカーボンを用いたゴムは省燃費タイヤとして効果があることは未来材料Vol7(No.12)によれば公知である。一方モルフォリンジスルフィドは耐熱性、耐圧縮永久ひずみ、耐ブルーミング性としての加硫剤として工業品に広く使われている。また加硫剤機構を有するシリカ系カップリング剤であるビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドを用いるとUSP5,227,425(1993)によればシリカ系充填材を用いたゴムは制動性と省燃費性を兼ねたタイヤとして有効であることが示されており良く知られている。
【0003】
しかしゴムにシリカ充填材を用いると親油性のゴムと親水性のシリカでは相溶性が悪く加工性に工夫をこらす必要があり、一般普及化を阻害している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の述べた従来の制動性と低燃費性を兼ねたタイヤ用ゴムは特定のSBRまたはBRゴムを用いる必要があり、別法ではシリカを充填材にする必要があり汎用性に乏しいものであった。
【0005】
本発明は鋭意検討した結果、ジエン系ゴムと充填材にカーボンなどの補強材を用いた一般配合においてその硬化物ゴムが補強材とゴムの結合をポリサルファイド重合体の一部を介してより強化にすることにより制動性、耐摩耗性、低燃費性を合わせもつ性能にするものである。更に化合物Aが持つ加硫剤効果により硬化物が耐熱性などの耐老防性を向上せしめるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はポリマー末端にアミノ基を有するポリサルファイド重合体とジエン系ゴムとカーボンなどの充填材のゴム組成物に関するものであり、アミノ基がカーボンなどの充填材の表面の官能基と高い相互作用によりポリサルファイド重合体の一部を介してゴムと結合を形成させ、更にゴムにポリサルファイド重合体から派生する新たな架橋構造の形成させることにより優れた性能を発揮するものであり、以下の請求範囲によって達成される。
【0007】
(1)一般式
【化1】

(式中、
は2から20個のメチレン基を有する2価のアルキレン基、オキシアルキレン基からなりxは1から6の整数、nは1から50の整数であり、そして
Aは、一般式
【化2】

の構造を示す環状アミノ基を有するものであり、Rは3から12個のメチレン基を有する2価のアルキレン基、オキシアルキレン基からなり、Rは炭素数1から12個の炭素からなる2価の炭化水素基もしくは酸素を含む2価の炭化水素基またはR=0で、特に炭素数3の水酸基を有する炭化水素基などが上げられる、
または
【化3】

の構造を示す3級アミノ基を有するものであり、R、Rは1から12個の炭素からなるアルキル基、オキシアルキル基からなる。)
【本発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のジエン系ゴムとは天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水添ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EP)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ノルボルネンゴム(NOR)などが含まれ、これらのブレンドゴムも上げられる。
【0009】
ゴムに配合するカーボン系充填材とは通常カーボンブラックと呼び主としてサーマル法による油や天然ガスの熱分解により製造される。カーボンブラックは窒素吸着法による比表面積の大小により分類され、その値が大きい方が補強効果としては大きく、通常FEF,HAF,ISAF,SAFなどの使用が望ましい。勿論カーボン以外にシリカなどゴム充填材の使用を併用することは可能である。
【0010】
〔化1〕で示される一般式は例えば以下の方法で合成することができる。環状2級アミンと多硫化塩素SClにより一般式〔化1〕の原料となる〔化4〕が得られる。
【化4】

末端SH基を有するポリサルフィドポリマー(例えば東レ・ファインケミカル(株)製のLP2)と硫黄と〔化4〕の構造を有する化合物を原料にして特許第3978736号の製造方法により末端環状アミンである〔化1〕の構造を有する化合物を得ることができる。
【0011】
あるいは2級アミンとエピクルヒドリンを反応させ、その生成物の末端を塩素からチオルール基に変換した後にポリサルフィドポリアーと硫黄を原料にして特許第3978736号の製造方法により末端アミノ基である〔化1〕の構造を有する化合物を得ることができる。
【0012】
ここで〔化2〕に示される環状アミンには例えばピペリジン、ピペコリン、ピロリジン、ピペラジンあるいはそれらの誘導体などから合成される。〔化3〕に示されるアミンは例えばジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミンなどの2級アミンから合成される。
【0013】
本目的のゴムを得るのに〔化1〕に示す化合物自身に加硫性能を有するが、更に硫黄粉末、不溶性硫黄、ジチオジモルフォリンなどの加硫剤を加えて加硫速度や硬化物物性の調整は可能である。
【0014】
また加硫速度を速めたりする加硫速度を調整するために2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾルスルフェンアミド、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド類、チオウレア類、テトラメチルチウラムモノスルフィドおよびジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのチウラム類、ジチオカルバメート類などの加硫促進剤、加硫遅延剤を添加することができる。
【0015】
更に必要に応じて老防剤や可塑剤、分散剤や分散助剤も添加することができる。
【0016】
これらのゴム組成物を練るためにロールやバンバリーミキサーなどの密閉型混練機、連続混練機などの装置を用いるのが通常である。混練の添加順序や混練時の温度も適当な条件でおこなうのが望ましい。温度の高い条件で混練すると混練中に加硫が始まってしまうことを考慮しなくてはならない。温度が低すぎたり、高すぎるとゴムとカーボンと〔化1〕で示される化合物の分散が阻害されることも考慮しなくてはならない。
【0017】
配合物を練った後、配合物を加硫工程に移しそこで型にはめて所定の温度、時間で加硫させて成形させる。
【0018】
加硫工程から取り出した成形物は自動車・自転車・トラック・バス・自動二輪車などのタイヤ各部品、各種ローラー、靴の材料、各種ホース、シート、パッキング、制震材、免震材、電線絶縁・被覆材料、緩衝材料、ケーブル、ガスケット、自動車・家電・土木建築用外装表材及びその部品などの用途に用いられる。
【実施例】
【0019】
合成例 ピロリジンを42グラム、3級アミン0.2グラム入ったDMF溶媒200グラムと混合し、そこにエピクロリヒドリンを54.6グラム、50℃下30分に渉って添加した。更に攪拌を続行し、温度上昇が無くなり60分後にフレークの水硫化ソーダを45.7グラム投入した。60℃の温度で40分攪拌した。途中で塩の析出により良好な攪拌が維持できなくなり、溶媒を50グラム追加した。攪拌終了後中和して濾過した。得られたケークは湿潤状態で93グラムであった。濾液を80℃にて真空蒸発させて釜残78.4グラム得た。この合成物にポリサルファイドポリマー(SH1.8重量%,東レ・ファインケミカル製チオコールLP2)を150グラム、硫黄粉末57グラム及びトリエチルアミン2.5グラムを溶媒120グラムに溶かして窒素雰囲気下120分混合攪拌した。80℃にて真空蒸発させて溶媒及び触媒を除去して粘ちょうな液体Aを得た。A中の窒素の含有量は元素分析した所2.6重量%であった。
【0020】
ゴムの評価
天然ゴム(RSS#1)100部、HFAカーボンブラック60部、酸化亜鉛4部、ステアリン酸2部、老化防止剤1部(6C)、加硫促進剤(DM)1部、加硫剤として硫黄粉末2部にした配合物の硬化物のサンプル1を製造した。加硫剤として硫黄粉末を0.5部および合成物Aを4部とし他はサンプル1と同じにした配合物の硬化物のサンプル2を製造した。硬化物を製造するにあたり、配合物を練るのにJISK6299に準拠してロールを使用した。サンプル1の配合物は150℃で15分、サンプル2の配合は150℃で25分にて硬化させた。
【0021】
JISK6300に準拠して150℃での加硫試験した結果、サンプル1及びサンプル2の配合物のt(10)は各々1.8分、1分.0分であり、t(90)は各々8.2分、9.3分であった。またサンプル1は加硫戻りが見られたが、サンプル2は加硫戻りがなかった。
【0022】
JISK6251に準拠した硬化物の引張強さ、破断時の伸び、100%引張応力(MPa)、200%引張応力(MPa)、300%引張応力(MPa)は以下の通りであった。

サンプル1よりもサンプル2の方が破断時の引張応力、伸びは優れていた。
【0023】
硬化物を80℃、168時間養生した後の物性は以下の通りであった。

サンプル2は初期とほぼ同じ物性を示したが、サンプル1はより大きな応力の上昇、伸びの低下を示し耐老化性はサンプル2よりも劣っていた。
【0024】
サンプルを短冊状にして周波数10Hz、引っ張りモードにて粘弾性測定をおこなった。25℃においてのtanδはサンプル1では0.120であったが、サンプル2では0.100であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)一般式
【化1】

(式中、
は2から20個のメチレン基を有する2価又は3価のアルキレン基、オキシアルキレン基からなりxは1から6の整数、nは1から50の整数であり、そして
Aは、一般式
【化2】

の構造を示す環状アミノ基を有するものであり、Rは3から12個のメチレン基を有する2価のアルキレン基、オキシアルキレン基からなり、Rは炭素数1から12個の炭素からなる2価の炭化水素基もしくは酸素を含む2価の炭化水素基または
=0、
または
【化3】

の構造を示す3級アミノ基を有するものであり、R、Rは1から12個の炭素からなるアルキル基、オキシアルキル基、ベンジル基からなる。)
(2)ジエン系ゴム
(3)カーボン系充填材
からなるジエン系ゴム100重量部に対してカーボン系充填材5〜100重量部及び一般式〔化1〕で示される化合物0.2〜15重量部を配合してなることを特徴とするゴム組成物
【請求項2】
一般式AにおいてRがC又はCOCで示され、一般式〔化1〕においてRがC、COCHOC、COCOC、CHCHCHからなる群から一つ以上のアルキレン基又はオキシアルキレン基を示される末端にアミノ基を有するポリサルファイド重合体を用いることを特徴とするゴム組成物

【公開番号】特開2010−174237(P2010−174237A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38568(P2009−38568)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(509049573)有限会社松井研究所 (2)
【Fターム(参考)】