説明

ゴルフクラブヘッドの製造方法

【課題】質量を低減するとともに、金属材料からなるヘッド本体と低比重材料からなるカバー部材との接合部の耐久性に優れる。
【解決手段】開口部Mが設けられたヘッド本体1Aと、開口部Mを覆うカバー部材1Bとからなる中空構造のゴルフクラブヘッド1を製造するための方法である。開口部Mを含む第1の部材を準備する工程を含む。準備する工程は、均一の厚さを有する板材Tをプレス加工することにより、開口部Mの回りでヘッド仕上げ面4oからステップ状に凹んでカバー部材1Bの周縁部15を支持することになる受け部14を成形する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量を低減するとともに、金属材料からなるヘッド本体と低比重材料からなるカバー部材との接合部の耐久性に優れたゴルフクラブヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、図6(a)に示されるように、ゴルフクラブヘッドの低重心化を図るため、金属材料からなりかつ開口部bが設けられたヘッド本体cと、該ヘッド本体cの前記開口部bを覆うように配されかつ前記金属材料よりも小さい比重を有する低比重材料からなるカバー部材dとからなるゴルフクラブヘッドaが提案されている。そして、前記ヘッド本体cには、前記カバー部材dの周縁部eを支持する受け部fが形成されている。
【0003】
上記ヘッド本体cは、生産性等の観点より、ロストワックス鋳造で製法されていた。しかしながら、鋳造の場合、図6(a)のD−D断面である図6(b)に拡大して示されるように、ワックスモデルを形成する中子(図示せず)の抜け等を考慮して、ヘッド本体cの内面c1側と受け部fとの入隅のコーナ部hが円弧で面取りされ、この部分の厚さが大きくなり、このため、鋳造により製造されたヘッド本体cでは、該ゴルフクラブヘッドの質量が増加し、重心設計等の自由度が低下するという問題があった。また、前記周縁部eと受け部fとの剛性段差が生じるため、ヘッド本体cとカバー部材dとの接合部の境界にクラックが生じ易くなるなど耐久性が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−52458号公報
【特許文献2】特開2005−66148号公報
【特許文献3】特開2005−58634号公報
【特許文献4】特開2004−283543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、開口部を含む第1の部材を、均一の厚さを有する板材をプレス加工により準備することを基本として、ヘッド本体の受け部の厚さを均一化することにより、余分な質量を低減するとともに、受け部と周縁部との剛性段差を低減して、ヘッド本体とカバー部材との接合部の耐久性に優れたゴルフクラブヘッドの製造方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、金属材料からなりかつ開口部が設けられたヘッド本体と、前記ヘッド本体の前記開口部を覆うように配されかつ前記金属材料よりも小さい比重を有する低比重材料からなるカバー部材とからなる中空構造のゴルフクラブヘッドを製造するための方法であって、前記開口部を含む第1の部材を準備する工程を含み、該準備する工程は、均一の厚さを有する板材をプレス加工することにより、前記開口部の回りでヘッド仕上げ面からステップ状に凹んで前記カバー部材の周縁部を支持することになる受け部を成形する工程を含むことを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記第1の部材は、ヘッド上面をなすクラウン部に開口部を有するクラウン部材であり、前記カバー部材は、繊維強化樹脂材料である請求項1記載のゴルフクラブヘッドの製造方法である。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記カバー部材の前記受け部に支持される周縁部の厚さt1と、該カバー部材の引張強度σ1との積であるカバー部材の周縁部の剛性指数GA、及び前記受け部の厚さt2と該受け部の引張強度σ2との積であるヘッド本体の受け部の剛性指数GBの比GA/GBが0.45〜0.80である請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法である。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記受け部は、ヘッド仕上げ面から凹むとともに該ヘッド仕上げ面と略平行にのびる受け面と、該受け面と前記ヘッド仕上げ面とを継ぐ斜面とを含み、前記斜面と前記ヘッド仕上げ面との交点での厚さtaは0.5〜1.5mmであり、かつ、前記受け面の開口部側の端部での厚さtbの0.8〜1.8倍である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法では、金属材料からなりかつ開口部が設けられたヘッド本体と、前記ヘッド本体の前記開口部を覆うように配されかつ前記金属材料よりも小さい比重を有する低比重材料からなるカバー部材とからなる中空構造のゴルフクラブヘッドを製造する。そして、本発明では、前記開口部を含む第1の部材を準備する工程は、均一の厚さを有する板材をプレス加工することにより、前記開口部の回りでヘッド仕上げ面からステップ状に凹んで前記カバー部材の周縁部を支持することになる受け部を成形する工程を含む。このため、本発明の製造方法で製造された受け部は、鋳造で成形された場合に比して、厚さが均一に形成され、従来のように、コーナ部(特に、ヘッド内面側の入隅部)が厚肉となるのを防止できる。従って、受け部での余分な質量が低減され、ひいては、ヘッドが軽量化できる。また、受け部を含む開口部の周りが均一厚さで形成されるため、周縁部と受け部との剛性段差が低減され、ヘッド本体とカバー部材との接合部の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッドの基準状態の平面図である。
【図2】(a)は、図1のA−A断面図、(b)は、(a)のB部の分解拡大図である。
【図3】本実施形態のゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【図4】(a)は圧延材からクラウン部材を部品取りする例を示す平面図、(b)はそれをプレス加工する断面図である。
【図5】プリプレグを説明する分解斜視図である。
【図6】(a)は、従来の技術を説明するヘッドの斜視図、(b)は、(a)のD−D拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1及び図2(a)に示されるように、本発明の製造方法で形成されるゴルフクラブヘッド(以下単に「ヘッド」という場合もある。)1は、ボール打撃面をなすフェース面2を有するフェース部3と、前記フェース面2の上縁2aに連なりかつヘッド上面をなすクラウン部4と、前記フェース面2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、前記クラウン部4とソール部5との間をフェース面2のトウ側縁2cからバックフェースBFを通ってヒール側縁2dまでのびるヘッド側面を形成するサイド部6と、図示しないシャフトが装着されるシャフト差込孔7aを有したホーゼル部7とを具える。
【0013】
また、図1及び図2(a)に示されるヘッド1は、基準状態に置かれているものとする。該基準状態とは、ヘッド1を、当該ヘッドに定められたライ角及びロフト角に保持して水平面HPに接地させた状態とする。特に言及されていない場合、ゴルフクラブヘッド1は、この基準状態に置かれているものとする。
【0014】
また、ヘッド1は、内部に中空部iが設けられた中空構造を有し、好ましくは、ドライバー(#1)又はフェアウェイウッドといったウッド型として作られる。
【0015】
ヘッド1は、何ら限定されるものではないが、好ましくは400cm3 以上、より好ましくは420cm3 以上の体積を有するものが望ましい。これにより、ヘッド1の慣性モーメントが大きくなり、打球の方向性が改善される。また、上述のような体積を有するヘッドは、例えばクラウン部4等に大きな開口部を設けることができるので、重量削減効果が十分に期待できる点で好ましい。他方、ヘッド1の体積が大きすぎると、クラブ質量が増加し、例えばスイングバランスの悪化や耐久性の低下を招くおそれがある。このような観点より、ヘッド1の体積は、好ましくは480cm3 以下、より好ましくは470cm3以下が望ましい。
【0016】
また、ヘッド1の重量は、スイングバランスなどを考慮し、好ましくは175g以上、より好ましくは180g以上が望ましく、かつ、上限については、好ましくは210g以下、より好ましくは205g以下が望ましい。
【0017】
本実施形態のヘッド1は、開口部Mが設けられたヘッド本体1Aと、前記ヘッド本体1Aの前記開口部Mを覆うように配されるカバー部材1Bとからなる。
【0018】
図3に示されるように、ヘッド本体1Aは、例えば、フェース面2を有するフェース部材8と、クラウン部4を構成するクラウン部材9と、ソール部5及びサイド部6を一体に有するソールサイド部材10と、ホーゼル部7を有するホーゼル部材11とからなる4ピース構造として形成される。
【0019】
ヘッド本体1Aは、比強度に優れた金属材料からなり、例えば、純チタン、チタン合金、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
本実施形態において、前記フェース部材8は、フェース面2の全域を形成する基部8Aを含むとともに、前記ホーゼル部7と接合される部分を除いて該フェース面2の各縁部2a、2b、2c及び2dで折れ曲がり、ヘッドの後方にのびるクラウン側の折曲げ部8a、ソール側の折曲げ部8b、トウ側の折曲げ部8c及びヒール側の折曲げ部8dを有するお椀状をなす。なおホーゼル部7との接続部分には前記折曲げ部を切り欠いた凹所8eが形成されている。
【0021】
前記各折曲げ部8aないし8dの前記フェース面2の各縁部2aないし2dからヘッドの後方への長さ(各折曲げ部表面に沿って測定される長さ)Lは、特に限定はされないが、好ましくはホーゼル部7との接合部を除き、好ましくは5mm以上、より好ましくは8mm以上が望ましく、また好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下が望ましい。これにより、フェース部材8と、クラウン部材9又はソールサイド部材10との接続箇所を、大きな衝撃力が作用するフェース部3からヘッド後方側の領域へと遠ざけて耐久性を向上することができる。
【0022】
前記クラウン部材9は、前記開口部Mと、該開口部Mの周りに設けられたクラウン縁部12とを有する板状で形成されている。
【0023】
前記開口部Mは、本実施形態では、クラウン部4からはみ出すことなくその領域の中に収められている。また、開口部Mの形状は、本実施形態のように、クラウン部4の輪郭にほぼ沿うような滑らかな輪郭形状を有するものが、耐久性の観点から望ましい。
【0024】
本実施形態の開口部Mの面積は、耐久性と軽量化とをバランスよく確保するために、好ましくは40cm2 以上、より好ましくは45cm2 以上が望ましく、また、好ましくは80cm2 以下、より好ましくは75cm2 以下が望ましい。ここで、開口部Mの面積は、図1に示されるように、基準状態のヘッド1の平面視において水平面HPに投影されたその平面の面積として計算されるものとする。
【0025】
本実施形態のクラウン縁部12は、実質的にクラウン部4の外面をなすヘッド仕上げ面4oを形成する主部13と、前記ヘッド仕上げ面4oからステップ状に凹んで前記カバー部材1Bの周縁部15を支持する受け部14とを含む。
【0026】
本実施形態の受け部14は、開口部Mの周りを環状に連続するものとして設けられる。このような受け部14は、カバー部材1Bを確実に保持しつつ、クラウン縁部12の剛性を確保し得る。
【0027】
前記受け部14は、図2(b)に示されるように、前記ヘッド仕上げ面4oから凹むとともに該ヘッド仕上げ面4oと略平行にのびる受け面14aと、該受け面14aと前記ヘッド仕上げ面4oとを継ぐ斜面14bとを含んで構成される。このような受け面14aは、前記周縁部15の内側面15iを安定して支持するのに役立つ。
【0028】
本実施形態の斜面14bは、前記主部13から開口部Mの中心側に傾斜している。このような傾斜を有する斜面14bは、該斜面14bと前記受け面14aとの交わり部14cに、カバー部材1Bを精度良く位置決めさせるのに役立つ。また、受け面14a上で支持されたカバー部材1Bの外周縁1Beと、前記斜面14bとの間には、ヘッド外方に向かって大きくなる間隙jを形成できる。この間隙jは、例えば接着剤をためる空間として好適に利用される。
【0029】
また、前記斜面14bとヘッド仕上げ面4oとの交点14dは、カバー部材1Bの輪郭形状とほぼ近似するが、それよりも僅かに大きな輪郭形状を持っている。従って、上方からカバー部材1Bを受け部14に嵌め込みし易い。
【0030】
前記ソールサイド部材10は、図3に示されるように、前記ソール部5をなすソール壁部17と、このソール壁部17の周囲に立設されかつトウ側からヒール側にのびるサイド壁部18とを具えている。また、サイド壁部18の上部には、前記クラウン部材9と固着されるサイド縁部18aが設けられる。
【0031】
前記ホーゼル部材11は、筒状をなし図示しないシャフトが差し込まれる受け筒19と、その上部に形成されかつ前記クラウン部材9の外面と滑らかに連なる傘状のホーゼル上部20とから形成される。
【0032】
前記カバー部材1Bは、板状をなし、クラウン部4のヘッド仕上げ面4oを形成するとともに、前記ヘッド本体1Aの受け部14に支持される周縁部15と、該周縁部15に囲まれる基部16とを含んで形成される。本実施形態のカバー部材1Bは、前記受け部14の交点14dよりもわずかに小さい輪郭形状で形成される。
【0033】
また、カバー部材1Bは、ヘッド本体1Aの金属材料よりも小さい比重を有する低比重材料からなる。このようなカバー部材1Bは、ヘッド1を軽量化し、本実施形態のように、ヘッド上部に設けたときには、低重心化させるのに役立つ。カバー部材1Bを形成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、チタン合金、アルミ合金、マグネシウム合金、繊維強化樹脂などの1種又は2種以上の材料が好適であり、とりわけ、本実施形態のように、比重が特に小さい繊維強化樹脂で形成されるのが望ましい。
【0034】
前記繊維強化樹脂は、マトリックス樹脂と補強繊維との複合材料である。マトリックス樹脂としては、特に限定はされないが、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。また補強材としての繊維も特に限定はされないが、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維又はポリフェニレンベンズオキサゾール樹脂繊維(PBO繊維)といった有機繊維や、アモルファス繊維又はチタン繊維等の金属繊維などを用いることができ、とりわけ比重が小さくかつ引張強度が大きい炭素繊維が好適である。
【0035】
以上のように構成された本実施形態のゴルフクラブヘッド1の製造方法の手順について説明する。本実施形態の製造方法では、先ず、ヘッド本体1Aと、カバー部材1Bとが夫々準備される。
【0036】
ヘッド本体1Aは、前記開口部Mを含む第1の部材、即ち、本実施形態では、クラウン部材9を準備する工程と、ヘッド本体1Aのうち該クラウン部材9を除く第2の部材、即ち本実施形態では、フェース部材8、ソールサイド部材10及びホーゼル部材11を準備する工程と、クラウン部材9と第2の部材とを接合する工程とを含んで準備される。
【0037】
前記クラウン部材9を準備する工程は、均一の厚さを有する金属材料の板材をプレス加工することにより、前記受け部14を成形する工程が含まれる。
【0038】
前記板材には、例えば、回転する一対のロール間に金属材料を摩擦によって噛み込ませ、厚さないし断面積を減じて所望の一定厚さに成形された圧延材T(図4(a)に示す)が好適に用いられる。このような圧延材は、加工硬化による材料の機械的特性の向上、均一な厚さ及び欠損の少ない結晶組織という利点を有する。従って、第1の部材としてのクラウン部材9をより薄くして軽量化を図ることができる。
【0039】
また、図4(a)に示されるように、前記圧延材Tからクラウン部材9用の部品S1を切り出す工程が行われる。前記部品S1は、前記開口部Mを設けないクラウン部材9の輪郭形状で切り出される。この輪郭形状には、部品S1の周縁に削り代などが見込まれても良い。この工程は、プレス型等による打ち抜き又はレーザーカットなど種々の方法で行うことが可能である。
【0040】
次に、図4(b)に示されるように、前記部品S1が、加熱プレス加工されて、クラウン部材9が成形される。プレス加工は、例えば一対の雄型D1及び雌型D2でプレスされ、前記受け部14が形成される。このクラウン部材9には、開口部Mが形成されていない。このクラウン部材9のヘッド仕上げ面の厚さt3(図2(b)に示す)は、好ましくは0.40mm以上、より好ましくは0.45mm以上が望ましく、また好ましくは1.3mm以下、より好ましくは1.2mm以下が望ましい。
【0041】
次に、クラウン部材9は、例えば、レーザーカットにより、開口部Mが精度良く形成される。また、必要により開口部Mの端部が切削されて輪郭形状が整えられる。
【0042】
このように成形された受け部14は、図2(b)に示したように、厚さが均一に形成されるため、鋳造等で成形された場合に比して質量が低減されるとともに、図6(b)に示したような前記ヘッド本体cの内面c1側と受け部fとの入隅のコーナ部hの円弧による面取りが不要となる。また、本実施形態の受け部14は一定の厚さで形成されるとともに、前記受け面14aがヘッド仕上げ面4oと略平行にのびるため、前記周縁部15も、一定の厚さで形成され易い。即ち、受け部14と周縁部15とが、夫々一定の厚さで形成されるため、これらの接合部において、剛性が変化する剛性段差部が小さくなる。従って、本実施形態のゴルフクラブヘッド1は、ヘッド本体1Aとカバー部材1Bとの接合部の耐久性を向上できる。
【0043】
本実施形態において、前記第2の部材、即ち、フェース部材8と、ソールサイド部材10と、ホーゼル部材11の各部材は、種々の製造方法から形成される。成形精度を高めるために、フェース部材8及びソールサイド部材10は、プレス加工により形成されるのが望ましい。また、ホーゼル部材11は、丸棒材をNC旋盤等で切削して形成されるのが望ましい。
【0044】
そして、本実施形態では、クラウン部材9と、フェース部材8、ソールサイド部10及びホーゼル部材11とが夫々溶接により固着されて、ヘッド本体1Aが、形成される。
【0045】
また、前記カバー部材1Bは、図5に示されるように、予め所定の形状に切断された繊維強化樹脂材料からなるプリプレグpを複数枚(本実施形態では7枚)重ね、熱と圧力を付加することで一体に形成される。
【0046】
最後に、ヘッド本体1Aとカバー部材1Bとが接着により一体化されてヘッド1が形成される。接着方法としては、接着剤による方法が好ましい。このとき、前記受け部14と周縁部15との間の間隙jに十分接着剤等が配されるため、打球時の振動を吸収し易い。特に、クラウン部材9は、ヘッド外面側ほど曲げによる変形が大きいが、この外面側により多くの接着剤を配することにより歪の緩和を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、図2(b)に示されるように、前記受け部14には、該受け部14とヘッド本体1Aの内面をなすヘッド内面4iとが交わる内端点14fが形成される。そして、この内端点14fと前記交点14dとの距離が、該交点14dでの厚さtaとして定義される。なお、ヘッド内面4iと受け部14との入隅のコーナ部14eが円弧で形成され、前記内端点14fが明瞭でない場合は、該円弧の法線が前記交点14dと交わる接点を内端点14fと定義される。
【0048】
本実施形態のゴルフクラブヘッド1では、前記交点14dでの厚さtaは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上が望ましく、また好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.3mm以下が望ましい。前記厚さtaが、大きくなると、交点14d付近の剛性が大きくなるため、打撃時の振動等により、カバー部材1Bの周縁部15を損傷させるおそれがある。逆に、前記交点の厚さtaが小さくなると、受け部14が損傷するおそれがある。
【0049】
また、同様の観点より、前記交点14dでの厚さtaは、前記受け面14aの開口部側の端部14gでの厚さtbの好ましくは0.8倍以上、より好ましくは1.0倍以上が望ましく、また好ましくは1.8倍以下、より好ましくは1.6倍以下が望ましい。
【0050】
また、図2(b)に示されるように、カバー部材1Bの前記受け部14に支持される周縁部15の厚さt1と該カバー部材1Bの引張強度σ1との積であるカバー部材1Bの周縁部15の剛性指数GA、及び前記受け部14の厚さt2と該受け部14の引張強度σ2との積であるヘッド本体1Aの受け部14の剛性指数GBの比GA/GBが規定される。即ち、前記比GA/GBが大きくなっても、また、逆に小さくなっても、周縁部15と受け部14との剛性段差が大きくなるため、ヘッド本体1Aとカバー部材1Bとの接合部の耐久性が悪化する傾向がある。このような観点より、前記比GA/GBは、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上が望ましく、また好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下が望ましい。なお、前記受け部14の厚さt2は、前記受け面14aと斜面14bでの厚さの平均値として定義される。
【0051】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定させることなく、必要に応じて種々の態様に変更しうる。
【実施例】
【0052】
本発明の効果を確認するために、図1〜4の基本構成を有しかつ表1の仕様に基づいたゴルフクラブヘッドが試作され、耐久性のテストが行なわれた。なお、受け面の開口部側の端部での厚さの設計値tb`を確保するよう、プレス加工における圧延材や鋳造における金型の最適厚さ及び寸法が選択される。表1に示すパラメータ以外は上記を除きすべて同一であり、主な共通仕様は次の通りである
【0053】
ライ角:57.5°
ロフト角:11°
ヘッド体積:460cm3
フェース板の厚さt:3.3mm
カバー部材の厚さt1:1.3mm
クラウン部材:Ti−4111
フェース部材:Ti−6Al−4V 圧延材
ソールサイド部材:Ti−4111 圧延材
ホーゼル部材:純チタン 丸棒材のNC加工品
カバー部材:繊維強化樹脂材料
ヘッド本体の各部材の接合:溶接
ヘッド本体とカバー部材との接合:接着
テスト方法は、次の通りである。
【0054】
<耐久性>
各供試ヘッドをSRIスポーツ社製のカーボンシャフト(SV−3003J、フレックスX)に装着して45インチのウッド型クラブを試作し、これをミヤマエ社製のスイングロボット(ショットロボ4)に取り付けてヘッドスピード54m/s、フェースのスイートスポット位置でゴルフボールを打撃し、ヘッドが破損するまでの打撃数(上限を10000発とする。)を計測した。なお、破損の有無が、打撃を100球ごとに中止して確認された。数値が大きいほど良好である。
【0055】
<クラウン部材の質量>
上記プレス加工及び鋳造で製造されたクラウン部材単体の質量が測定された。結果は、比較例の質量を100としたときの受け面の開口部側の端部での設計厚さtb`が同一である実施例の質量を指数で表している。指数が小さいほどクラウン部材の質量が小さく良好である。
テストの結果等を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
テストの結果、実施例のゴルフクラブヘッドは、比較例に比べて耐久性が有意に向上していることが確認できる。また、クラウン部材の質量が、比較例に比して実施例が夫々小さくなっているため、ゴルフクラブヘッドの質量が小さくなり、重心設計などの自由度が向上することが理解できる。
【符号の説明】
【0058】
1 ゴルフクラブヘッド
1A ヘッド本体
1B カバー部材
4 クラウン部
4o ヘッド仕上げ面
9 クラウン部材
14 受け部
15 周縁部
14a 受け面
14b 斜面
M 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなりかつ開口部が設けられたヘッド本体と、前記ヘッド本体の前記開口部を覆うように配されかつ前記金属材料よりも小さい比重を有する低比重材料からなるカバー部材とからなる中空構造のゴルフクラブヘッドを製造するための方法であって、
前記開口部を含む第1の部材を準備する工程を含み、
該準備する工程は、均一の厚さを有する板材をプレス加工することにより、前記開口部の回りでヘッド仕上げ面からステップ状に凹んで前記カバー部材の周縁部を支持することになる受け部を成形する工程を含むことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記第1の部材は、ヘッド上面をなすクラウン部に開口部を有するクラウン部材であり、前記カバー部材は、繊維強化樹脂材料である請求項1記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記カバー部材の前記受け部に支持される周縁部の厚さt1と、該カバー部材の引張強度σ1との積であるカバー部材の周縁部の剛性指数GA、及び前記受け部の厚さt2と該受け部の引張強度σ2との積であるヘッド本体の受け部の剛性指数GBの比GA/GBが0.45〜0.80である請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記受け部は、ヘッド仕上げ面から凹むとともに該ヘッド仕上げ面と略平行にのびる受け面と、該受け面と前記ヘッド仕上げ面とを継ぐ斜面とを含み、
前記斜面と前記ヘッド仕上げ面との交点での厚さtaは0.5〜1.5mmであり、かつ、前記受け面の開口部側の端部での厚さtbの0.8〜1.8倍である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−110429(P2012−110429A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260339(P2010−260339)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】