説明

ゴルフクラブ用シャフトユニットおよびその製造方法、ならびにゴルフクラブ

【課題】いかなる技術レベルの作業者であっても、シャフトに対して装着部材を所定の位置に容易にかつ確実に装着できるゴルフクラブ用シャフトユニットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のゴルフクラブ用シャフトユニットは、細径側の端部10aに切り欠き13が形成されたシャフト10と、シャフト10を装着する装着部材20とを有し、装着部材20は、シャフト10の細径側の端部10aに挿入される一端側の円柱状のシャフト装着部21と、ヘッド部材が装着される他端側のヘッド装着部と、シャフト装着部21の外側に設けられ、切り欠き13を覆い隠す隠蔽部23とを備え、シャフト装着部21の外周面21aに突起24が設けられ、切り欠き13に突起24が差し込まれて、ゴルフクラブ用シャフト10とシャフト装着部21とが接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルククラブに用いられるシャフトユニットおよびその製造方法、ならびにゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ゴルフクラブ用シャフト(以下、シャフトと略す。)は、シャフトメーカーにてあらかじめその曲げ剛性が測定されてからゴルフクラブメーカーに送られる。そして、ゴルフクラブメーカーにて、シャフトにヘッド部材とグリップ部材とを装着してゴルフクラブを得る。
ところで、シャフトが、炭素繊維等を用いた繊維強化樹脂層を1層以上備えたものである場合などでは、層の積層状態に起因して、シャフトの周上の位置によって、測定される曲げ剛性値が若干異なることがある。そのため、シャフトメーカーは、通常、曲げ剛性を測定した測定位置(以下、その測定位置のことをフレックス線という。)をインクなどで外周面にマーキングしたシャフトをゴルフクラブメーカーに納める。ゴルフクラブメーカーでは、そのマーキングに基づき、例えば、ヘッド部材の先端の向き(トゥ−ヒールの方向)がマーキングと一致するように、ヘッド部材をシャフトに、ホーゼルと称される接続部材(カラー部材)等を介して装着する。
上述したようにシャフトをヘッド部材に装着する際には、所定の性能のゴルフクラブを得るために、フレックス線を所定の方向に一致させることが重要である。
【0003】
また、近年、ゴルフクラブ用シャフトとヘッド部材とを任意に組み合わせることができるアジャスタブルゴルフクラブが使用されることがある(例えば、特許文献1,2参照)。アジャスタブルゴルフクラブにおいては、ホーゼルとヘッド部材が着脱自在になっているが、ホーゼルの形状によっては、ヘッド部材の取り付け位置が規制される場合がある。そのような場合に、シャフトをホーゼルに固定する際には、所定の位置にフレックス線を合わせることが重要となる。
【特許文献1】特開2007−229057号公報
【特許文献2】特表2005−533626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヘッド部材とシャフト、ホーゼルとシャフトの位置決めは作業者の目視によるため、位置ずれしやすく、作業者に高度な技能が要求されていた。特に、シャフトやホーゼルに装飾が施されている場合には、僅かな位置ずれでも目立ってしまう。ゴルフにおいては心理状態が競技の結果に影響を及ぼしやすいため、ゴルフクラブの装飾の僅かな位置ずれも防止されていることが求められる。なお、この問題点は、アジャスタブルゴルフクラブに限ったものではなく、通常のゴルフクラブでも同様である。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、いかなる技術レベルの作業者であっても、シャフトに対して装着部材を所定の位置に容易にかつ確実に装着できるゴルフクラブ用シャフトユニットおよびその製造方法を提供することを課題とする。また、そのゴルフクラブ用シャフトユニットを用いたゴルフクラブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 細径側の端部に切り欠きが形成されたゴルフクラブ用のシャフトと、該ゴルフクラブ用シャフトを装着する装着部材とを有し、
前記装着部材は、ゴルフクラブ用シャフトの細径側の端部に挿入される一端側の円柱状のシャフト装着部と、ヘッド部材が装着される他端側のヘッド装着部と、シャフト装着部の外側に設けられ、前記切り欠きを覆い隠す隠蔽部とを備え、シャフト装着部の外周面に突起が設けられ、
前記切り欠きに前記突起が差し込まれて、前記ゴルフクラブ用シャフトと前記シャフト装着部とが接着されているゴルフクラブ用シャフトユニット。
[2] 前記切り欠きがゴルフクラブ用シャフトの周方向に沿って等間隔に複数形成されている[1]に記載のゴルフクラブ用シャフトユニット。
[3] 前記ゴルフクラブ用シャフトおよび装着部材の一方または両方に装飾が施されている[1]または[2]に記載のゴルフクラブ用シャフトユニット。
[4] 細径側の端部に切り欠きが形成されたゴルフクラブ用シャフトと、該ゴルフクラブ用シャフトを装着する装着部材とを一体化するゴルフクラブ用シャフトユニットを製造する方法であって、
前記装着部材として、ゴルフクラブ用シャフトの細径側の端部に挿入される一端側の円柱状のシャフト装着部と、ヘッド部材が装着される他端側のヘッド装着部と、シャフト装着部の外側に設けられ、前記切り欠きを覆い隠す隠蔽部とを備え、シャフト装着部の外周面に突起を設けたものを用い、
前記切り欠きに前記突起を差し込んで、前記ゴルフクラブ用シャフトの内周面と前記シャフト装着部の外周面とを接着するゴルフクラブ用シャフトユニットの製造方法。
[5] [1]〜[3]のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフトユニットを有するゴルフクラブ。
【発明の効果】
【0006】
本発明のゴルフクラブ用シャフトユニットによれば、いかなる技術レベルの作業者であっても、シャフトに対して装着部材を所定の位置に容易にかつ確実に装着できる。
また、本発明のゴルフクラブ用シャフトユニットにおいて、切り欠きがシャフトの周方向に沿って等間隔に複数形成されるので、段階的な位置決めが可能となる。
また、本発明は、突起がシャフト装着部の周方向に沿って切り欠きと同じ間隔で複数設けられていれば、切り欠きや突起による性能の異方性の発生を抑制できる。
また、本発明は、シャフトおよび装着部材の一方または両方に装飾が施されている場合にとりわけ好適である。
本発明のゴルフクラブ用シャフトユニットの製造方法によれば、いかなる技術レベルの作業者であっても、シャフトに対して装着部材を所定の位置に容易にかつ確実に装着できる。
本発明のゴルフクラブは、上記ゴルフクラブ用シャフトを用いているため、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1に、本発明のゴルフクラブ用シャフトユニット(以下、シャフトユニットと略す。)の一実施形態例を示す。このシャフトユニット1は、シャフト10と装着部材20とを一体状に有している。
【0008】
本実施形態例におけるシャフト10の細径側の端部10aには、図2に示すように、切り欠き13が、シャフト10の周方向に沿って等間隔(120°の間隔)で3つ形成されている。
【0009】
本実施形態例におけるシャフト10の切り欠き13は、図2に示すように、シャフト10の長手方向に沿って平行な第1の切り欠き辺13aと、円弧状の第2の切り欠き辺13bとが形成された形状(扇状)のものである。
切り欠き13の長さLは2〜10mmであることが好ましい。切り欠き13の長さLが2mm以上であれば、後述する装着部材20の突起24を確実に差し込むことができ、より確実に位置決めできる。一方、切り欠き13の長さLが10mm以下であれば、切り欠き形成によるシャフト10の細径側の端部10aの強度低下を防止できる。
切り欠き13の細径側の端部10a側の幅Wは1〜5mmであることが好ましい。切り欠き13の細径側の端部10a側の幅Wが1mm以上であれば、装着部材20の突起24をある程度大きくでき、突起24を切り欠き13に差し込む際の作業性を向上させることができる。一方、切り欠き13の細径側の端部10a側の幅Wが5mm以下であれば、切り欠き形成によるシャフト10の細径側の端部10aの強度低下を防止できる。また、この切り欠き13を、シャフト10の曲げ剛性を保証する位置にした場合には、その位置を特定する精度が低下する傾向にある。
切り欠き13の形成方法としては、例えば、ダイヤモンドや砥石などの研削材を備えた切断具を使用して形成する方法などが挙げられる。
【0010】
シャフト10は、ゴルフクラブとして使用することを考慮すると、細径側の端部10aの内径が3〜10mm、太径側の端部10bの内径が10〜25mm、全長が800〜1300mmであることが好ましい。
【0011】
シャフト10の材質としては特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂などのマトリクス樹脂が、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、スチール繊維などの繊維で強化された繊維強化樹脂などが挙げられる。
また、シャフト10は、上記繊維強化樹脂の単層構造でもよいし、例えば繊維の向きが異なる複数層が積層した多層構造でもよい。
シャフト10は、例えば、シートラップ成形、フィラメントワインディング成形、内圧成形などにより製造される。
【0012】
装着部材20は、シャフト10の細径側の端部10aに挿入される一端側の円柱状のシャフト装着部21と、ヘッド部材が装着される他端側のヘッド装着部22と、シャフト装着部21の外側に設けられ、切り欠き13を覆い隠す円筒状の隠蔽部23とを備える。
シャフト装着部21の外径は、シャフト10の細径側の端部10aの内径より小さくなっている。また、本実施形態例におけるシャフト装着部21の外周面21aには、図3に示すように、突起24がシャフト装着部21の周方向に沿って等間隔(120°の間隔)で3つ設けられている。
この突起24は、隠蔽部23に接続されており、これによって、隠蔽部23がシャフト装着部21に固定されている。
【0013】
装着部材20としては、例えば、アジャスタブルクラブに使用されるヘッド部材とシャフト10を着脱可能に取り付けるホーゼルと称される接続部材、打撃時にヘッド部材やホーゼルからの衝撃を緩和する役割を果たすフェルールと称されるカラー部材などが挙げられる。
【0014】
装着部材20のヘッド装着部22は、ヘッド部材(図示せず)を着脱可能に装着する部分である。本実施形態例におけるヘッド装着部22は、雄ねじである。
ヘッド装着部22には、ヘッド部材があらかじめ取り付けられていても構わない。また、装着部材20とヘッド部材は別体であっても一体であってもよい。
【0015】
本実施形態例における隠蔽部23の内径は、シャフト10の外径より大きくなっている。また、隠蔽部23は、シャフト10と装着部材20とを接着した際に切り欠き13を覆い隠せるように、かつ、シャフト装着部21にシャフト10を差し込むことができるように、シャフト装着部21の外側に固定されている。
【0016】
突起24の材質は、切り欠き13の形成によるシャフト10の性能の異方性を抑制できることから、シャフト10と同じものであることが好ましい。
【0017】
シャフト10および装着部材20の一方または両方には装飾が施されていてもよい。装飾が施されている場合、僅かな位置ずれでも目立ってしまう上に機能的にも問題が生じるため、シャフト10と装着部材20との位置ずれを確実に防止できる本発明はとりわけ好適である。
【0018】
上記のシャフト10と装着部材20は一体化されている。具体的には、図4(a)(b)に示すように、シャフト10にシャフト装着部21が挿入されると共に、シャフト10の切り欠き13に装着部材20の突起24が差し込まれて、シャフト10の内周面とシャフト装着部21の外周面とが接着されている。
【0019】
本実施形態例では、シャフト10とシャフト装着部21、シャフト10と隠蔽部23との間に接着剤30が介在して接着を強固なものにしている。また、接着剤30を介在させれば、切り欠き13の形成によるシャフト10の性能の異方性を抑制でき、切り欠き形成によるシャフト10の性能変化を防止できる。
接着剤30としては、アクリル系、エポキシ系樹脂等の各種熱硬化性樹脂が挙げられる。中でも、炭素繊維強化樹脂等の複合材料からなるシャフト10を使用する場合には、接着性、シャフト10の性能の異方性の抑制という観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
シャフトユニット1を製造する方法としては、上記シャフト10と装着部材20とを用い、シャフト10の細径側の端部10aの内周面および外周面に接着剤30を塗布し、シャフト10の細径側の端部10aにシャフト装着部21を挿入すると共にシャフト10の切り欠き13に装着部材20の突起24を差し込んで、シャフト10と装着部材20とを接着する方法が挙げられる。
また、このようにして得たシャフトユニット1の装着部材20のヘッド装着部22にヘッド部材を装着すると共に、シャフト10の太径側の端部10bにグリップ部材を装着することにより、ゴルフクラブを得ることができる。
【0021】
以上説明したシャフトユニット1では、シャフト10の切り欠き13に装着部材20の突起24が差し込まれて、シャフト10の細径側の端部10aと装着部材20とが接着されているため、シャフト10または装着部材20が周方向に位置ずれしにくくなっている。しかも、切り欠き13に突起24を差し込む作業は容易で、確実に装着部材20をシャフト10に装着できる。
特に、本実施形態例では、切り込み13の形状が扇形であるため、突起24をより容易に、かつ、より確実に差し込むことができる。
したがって、シャフトユニット1は、いかなる技術レベルの作業者であっても、シャフト10に対して装着部材20を所定の位置に容易にかつ確実に装着できるものである。
また、本実施形態例では、シャフト10とシャフト装着部21の内周面21aとの間に接着剤30を介在させているため、シャフト10と装着部材20とが強固に接合されている。
また、本実施形態例では、装着部材20の隠蔽部23によって、シャフト10の切り欠き13および装着部材20の突起24を覆い隠すことができ、得られるシャフトユニット1の見栄えを良くすることができる。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、シャフト10の切り欠きの形状は扇形状に限らず、例えば、図5に示すような、シャフト10の長手方向に沿って平行な第1の切り欠き辺14aおよび第2の切り欠き辺14bと、シャフト10の周方向に沿った第3の切り欠き辺14cとが形成された形状(I字状)の切り欠き14であってもよい。
I字状の切り欠き14の長さは2〜10mmであることが好ましい。切り欠き14の長さが2mm以上であれば、装着部材20の突起24を確実に差し込むことができ、より確実に位置決めできる。一方、切り欠き14の長さが10mm以下であれば、切り欠き形成によるシャフトの細径側の端部10aの強度低下を防止できる。
切り欠き14の幅は1〜5mmであることが好ましい。切り欠き14の幅が1mm以上であれば、装着部材20の突起24をある程度大きくでき、突起24を切り欠き14に差し込む作業の作業性が向上する。一方、切り欠き14の幅が5mm以下であれば、切り欠き形成による細径側の端部10aの強度低下を防止できる。また、この切り欠き14を、シャフト10の曲げ剛性を保証する位置にした場合には、その位置を特定する精度が低下する傾向にある。
【0023】
また、切り欠きは、図6に示すような、シャフト10の長手方向に対して斜めになっている第1の切り欠き辺15aおよび第2の切り欠き辺15bが形成され、これら切り欠き辺15a,15bの間隔が太径側の端部10b側に向かって狭くなっている形状(V字状)の切り欠き15であってもよい。
また、図7に示すような、シャフト10の長手方向に沿って平行な第1の切り欠き辺16aおよび第2の切り欠き辺16bと、太径側の端部10b側の円弧状の第3の切り欠き辺16cとが形成された形状(U字状)の切り欠き16であってもよい。
また、図8に示すような、シャフト10の長手方向に沿って平行な第1の切り欠き辺17aと、シャフト10の長手方向に対して斜めになっている第2の切り欠き辺17bとが形成された形状の切り欠き17などであってもよい。
また、切り欠きは、上記のように例示したものであってもよいが、応力集中による強度低下を防止できることから、太径側の端部10b側ができるだけ丸みを帯びていることが好ましい。
【0024】
シャフト10の細径側の端部10aの切り欠き13および突起24は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。切り欠き13が2つ以上である場合、周方向に沿って等間隔に設けることが好ましいが、等間隔でなくても構わない。ただし、擬似等方性とみなすことができ、切り欠き13の形成による性能の異方性をより抑制できることから、3つ以上で等間隔であることが好ましい。
また、切り欠き13と突起24は同数でなくてもよい。例えば、図9に示すように、シャフト10に等間隔の切り欠き13を複数設け、装着部材20の外周面21aに突起24を単数設けたものであってもよい。この場合、装着部材20の装着方向を段階的に設定できる。このとき切り欠き13が多いほど微調整が可能となる。
【0025】
上記実施形態例では、シャフト10とシャフト装着部21の外周面21aとの間に接着剤30を介在させて、シャフト10と装着部材20とを接合したが、通常、切り欠き13がシャフト10の性能の異方性を生じさせる可能性は小さいため、必ずしも接着剤30で接合しなくてもよい。
装着部材20のヘッド装着部22は雄ねじでなくてもよく、雌ねじ等、ヘッド部材の接続部を固定できる手段を適宜選択できる。
また、隠蔽部23は、少なくとも切り欠き13を覆い隠せる形状であれば、円筒状でなくてもよい。例えば、切り欠き13を覆い隠せる大きさの湾曲した板状のものであってもよい。
【0026】
また、上記のシャフトによれば、少なくとも細径側の端部10aに、位置決め用の切り欠き13が形成されているので、図10に示すようなシャフト用印刷装置70を使用することにより、ゴルフクラブ用シャフトの外周面の所望の位置に何らかの印刷を施す場合に、熱転写印刷による印刷はもちろん、スクリーン印刷によって色を重ねていく多色刷りの場合であっても、所望の位置に、ずれなく、美しいロゴマークなどを印刷することができる。また、印刷に限らず、何らかの後工程を行う際に容易に位置決めすることができる。
【0027】
以下、前述の切り欠き13とシャフト用印刷装置70について詳述する。図10は、シャフト用印刷装置70の所定の位置に、図10のゴルフクラブ用シャフト10が配置された状態を示す斜視図である。このシャフト用印刷装置70は、印刷手段として、図中下方向きの印刷面71aを備えた印刷版71を有し、また、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面の少なくとも一部を、この印刷面71aに当接させるとともに、このゴルフクラブ用シャフト10を印刷版71上で相対転動可能に支持するシャフト支持手段72とを備えている。
【0028】
このシャフト用印刷装置70において印刷版71は、ゴルフクラブ用シャフト10の長さ方向に略平行な水平方向に移動可能となっている。この例では、印刷版71は枠部材74に固定され、この枠部材74には2本の水平駆動シャフト76が接続されていて、水平駆動シャフト76が動作することによって、印刷版71が枠部材74ごと水平方向に移動するようになっている。一方、シャフト支持手段72は、ゴルフクラブ用シャフト10の細径側の端部10aを保持しながら、ゴルフクラブ用シャフト10とともに上昇して、その外周面の一部を印刷面71aに当接させることができるとともに、当接した状態でゴルフクラブ用シャフト10が印刷面71a上を転動できるように支持するものである。
この例では、シャフト支持手段72には2本の垂直駆動用シャフト75が接続されていて、この駆動用シャフト75が上下することにより、ゴルフクラブ用シャフト10を保持したシャフト支持手段72も上下するようになっている。
【0029】
すなわち、このシャフト用印刷装置70を使用したゴルクラブシャフトの製造方法においては、図11に模式的に示すように、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面の一部が印刷面71aに当接した状態で、印刷版71が水平な図中矢印方向に移動することによって、ゴルフクラブ用シャフト10がその軸線10cを中心に回転して、相対的には印刷面71a上を転動し、その結果、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面に、印刷面71aから所望のパターンが印刷されるようになっている。
【0030】
そして、ここでシャフト支持手段72は、ゴルフクラブ用シャフト10が印刷面71a上を転動できるように支持する手段として、嵌合治具73を有している。この嵌合治具73は、図12に拡大して示すように、ゴルフクラブ用シャフト10における細径側の端部10a、すなわち、位置決め用切り欠き13が形成された方の端部10aに嵌合して、このゴルフクラブ用シャフト10を保持しつつ、これと一体に、限られた一定角度内で印刷面71a上を相対転動可能なものであって、ゴルフクラブ用シャフト10の端部に嵌合する本体73aと、嵌合時においてゴルフクラブ用シャフト10の位置決め用切り欠き13が係合する凸状の係合突起73bとから構成されている。この例では、本体73aは、ゴルフクラブ用シャフト10の細径側の端部10aの内径よりクリアランス程度小さい外径の円柱からなり、この本体73aの外周上に係合突起73bが形成されている。
【0031】
このように係合突起73bが形成された嵌合治具73を使用すると、ゴルフクラブ用シャフト10にこの嵌合治具73が嵌合する時には、常に位置決め用切り欠き13がこの係合突起73bに係合する。したがって、嵌合治具73は確実にゴルフクラブ用シャフト10を保持することができる。また、嵌合治具73は、限られた一定の角度内のみで相対転動が可能なようにあらかじめ設定されているので、常にその係合突起73bが位置決め用切り欠き13に係合するようにゴルフクラブ用シャフト10を保持することによって、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面における特定の部分のみが、印刷面71a上を転動するように制御することができる。
すなわち、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面における所望の特定の部分に印刷することができる。
【0032】
なお、図10においては、ゴルフクラブ用シャフト10の太径側の端部10bは、支持されておらずフリーな状態となっている。また、シャフト支持手段72は、ゴルフクラブ用シャフト10の長さ方向の中央付近を支持可能な3つの対ローラ77を有していて、これら対ローラ77を適宜使用して、ゴルフクラブ用シャフト10を下方から支持可能となっている。
【0033】
また、印刷手段としては、印刷面71aを備え、その印刷面71a上にゴルフクラブ用シャフト10を相対転動させることによって所望のパターンが印刷されるものであれば制限はなく、熱転写印刷用のフィルムや、スクリーン印刷用のスクリーンを備えたものなどを例示できる。熱転写印刷の場合には所望のロゴマークなどが形成されたフィルムがゴルフクラブ用シャフト10の外周面に熱転写され、一方、スクリーン印刷の場合にはスクリーン印刷がゴルフクラブ用シャフト10の外周面に施され、所望の印刷が施される。
【0034】
また、嵌合治具73は、あらかじめ一定の角度内で相対転動可能なように設定されたものであるが、その角度は任意に設定可能である。例えば、この角度が360°であれば、ゴルフクラブ用シャフト10は印刷面71a上で軸線10cを中心として1周するし、120°であれば1/3周する。そして、この際に印刷面71aに接した部分にのみ、印刷が施される。
【0035】
また、この例のシャフト用印刷装置70は、図示略のフットスイッチなどの制御手段を備えていて、これを作動させることによって、垂直駆動用シャフト75と水平駆動用シャフト76が動き、ゴルフクラブ用シャフト10を保持したシャフト支持手段72が上昇してゴルフクラブ用シャフト10の外周面の一部を印刷面71aに当接させる動作と、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面が印刷面71aに当接した状態の印刷版71が水平に移動する動作と、その後、シャフト支持手段72が下降してゴルフクラブ用シャフト10の外周面が印刷面71aから離れるとともに印刷版71が元の位置に水平移動して戻る動作とが一連に行われるようになっている。
【0036】
次に、図10のシャフト用印刷装置70を使用して、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面の特定の一部に印刷を施す方法について、具体的に説明する。まず、図10に示すように、ゴルフクラブ用シャフト10における位置決め用切り欠き13が形成された方の端部10aaに、シャフト支持手段72の嵌合治具73を嵌合させる。この場合、図12に示すように嵌合治具73の係合突起73bが位置決め用切り欠き13に係合するようにする。
【0037】
ついで、シャフト支持手段72に備えられた図示略の制御手段を作動させることによって、シャフト支持手段72が上昇し、嵌合治具73で保持された状態のゴルフクラブ用シャフト10の外周面が印刷面71aに当接する図11に示す状態となる。ついで、図13に示すように印刷版71が水平方向に移動することによって、ゴルフクラブ用シャフト10が、図13においては図示略の嵌合治具と一体に印刷面71a上を一定の角度内で相対転動して、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面の一部に印刷が施される。その後、図14に示すように、シャフト支持手段72が下降してゴルフクラブ用シャフト10の外周面が印刷面71aから離れるとともに、印刷版71が水平移動して元の位置に戻る。そして、嵌合治具73からゴルフクラブ用シャフト10を取り外すことによって、印刷が施されたゴルフクラブ用シャフト10が得られる。こうした一連の動作を繰り返すことにより、複数のゴルフクラブ用シャフト10を連続的に印刷することができる。
【0038】
このようなシャフト用印刷装置70を使用した製造方法においては、嵌合治具73として、ゴルフクラブ用シャフト10の位置決め用切り欠き13に係合する係合突起73bを有しているとともに、ゴルフクラブ用シャフト10と一体に、設定された一定角度内で相対転動が可能なものを備えている。したがって、各ゴルフクラブ用シャフト10の端部における特定の位置にあらかじめ位置決め用切り欠き13を形成しておき、これが係合突起73bに係合するようにこのゴルフクラブ用シャフト10をシャフト支持手段72の嵌合治具73に取り付けるだけで、目視による位置決めなどを各ゴルフクラブ用シャフト10に対して一々行うことなく、ゴルフクラブ用シャフトの10外周面における所望の特定の位置に、毎回正確に、ずれなく印刷を施すことができる。よって、このようなシャフト用印刷装置70よれば、熱転写印刷による印刷はもちろん、1本のゴルフクラブ用シャフト10に対して2回以上印刷作業を繰り返す、スクリーン印刷による多色刷りの場合であっても、所望の位置に精度よく刷りを重ねることができ、ずれのない、美しい印刷を安定して形成することができる。
【0039】
なお、ゴルフクラブ用シャフト10にあらかじめ形成される位置決め用切り欠き13は、印刷予定位置に対応した特定の位置にあらかじめ形成しておき、ゴルフクラブ用シャフト10の外周面における所望の位置に印刷がなされるようにしておけばよいが、さらに、各ゴルフクラブ用シャフト10の曲げ剛性を保証する位置にも対応するように決定しておくと、ゴルフクラブ用シャフト10にヘッド部材を取り付ける際の作業性が優れるとともに、得られたゴルフクラブは、外観的にも良好なものとなる。
【0040】
すなわち、ゴルフクラブ用シャフト10は、通常、ゴルフクラブ用シャフトメーカーなどにおいて、あらかじめその曲げ剛性が測定されてからゴルフクラブメーカーに送られる。そして、ゴルフクラブメーカーで、そのゴルフクラブ用シャフトにヘッド部材とグリップ部材とが装着されることが多い。この際、例えばゴルフクラブ用シャフト10が、炭素繊維強化樹脂層などの繊維強化樹脂層を1層以上備えたものである場合などには、層の積層状態に起因して、ゴルフクラブ用シャフト10の周上の位置によって、測定される曲げ剛性値が若干異なることがある。そのため、ゴルフクラブ用シャフトメーカーは、通常、曲げ剛性を測定した測定位置がどこであるか、その位置をインクなどで外周面上にマーキングしてから、そのゴルフクラブ用シャフト10をゴルフクラブメーカーに送り、ゴルフクラブメーカーでは、そのマーキングを参考として、例えば、ヘッド部材の先端(トゥヒール)の向きがマーキングと一致するように、ヘッド部材の装着を行っている。
【0041】
しかしながら、以上説明したように、ゴルフクラブ用シャフト10にあらかじめ形成される位置決め用切り欠き13を、単に印刷予定位置に対応させた位置に形成するだけでなく、さらに、測定された曲げ剛性値が保証される位置にも対応させて形成しておくと、消えてしまう可能性もあるインクによるマーキングを別途行う必要がないので、ゴルフクラブ用シャフトメーカーにおける作業性が優れる。また、ゴルフクラブメーカーにおけるヘッド部材の装着も、この位置決め用切り欠き13の位置や、施された印刷を目印として行えばよいので、例えば、印刷されたロゴマークの位置と、ヘッド部材の先端の位置とを容易に一致させることができ、外観が良好なゴルフクラブを容易に得ることも可能となる。
【0042】
なお、以上の説明においては嵌合治具73として、図12に示すように、ゴルフクラブ用シャフト10の細径側の端部10aの内側に嵌合する円柱状の本体73aと、嵌合時においてゴルフクラブ用シャフト10の位置決め用切り欠き13が係合するような凸状の係合突起73bとからなるものを例示しているが、例えば、図15に示すように、ゴルフクラブ用シャフト10の細径側の端部10aの外側に嵌合する円筒状の本体73aと、この本体73aの内周面上に形成された係合突起73bとからなるものでもよい。また、係合突起73bの形状としても、位置決め用切り欠き13に係合するものであれば特に限定はない。
【0043】
また、その他に、様々な内径のゴルフクラブ用シャフトに対応可能な嵌合治具73として、図16に示すような形態のものも例示できる。図16の嵌合治具73は、ゴルフクラブ用シャフト10の細径側の端部10aの内側に嵌合する円柱状の本体73aと、本体73aの周上に形成された係合突起73bに加え、この本体73aがゴルフクラブ用シャフト10の端部10a内に挿入された際に、ゴルフクラブ用シャフト10の端部10a近傍の内周面に対して、内側から付勢するように作用するばね部材73cを有するものである。このような形態の嵌合治具73を使用することによって、嵌合治具73が嵌合される端部10aの径が多少異なるような複数のゴルフクラブ用シャフト10についても、そのばね部材73cの作用によって、これをしっかりと保持することができる。よって、嵌合治具73を、ゴルフクラブ用シャフト10に応じて、一々取り替える必要がなく、作業性が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のシャフトユニットの一実施形態例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すシャフトユニットを構成するシャフトの切り欠きを示す斜視図である。
【図3】図1に示すシャフトユニットを構成する装着部材のシャフト装着部を示す断面図である。
【図4】図1に示すシャフトユニットにおけるシャフトと装着部材との接着部を示す図であって、(a)は断面図、(b)はシャフトの切り欠きに装着部材の突起を差し込んだ状態を示す図である。
【図5】シャフトの切り欠きの他の例を示す斜視図である。
【図6】シャフトの切り欠きの他の例を示す斜視図である。
【図7】シャフトの切り欠きの他の例を示す斜視図である。
【図8】シャフトの切り欠きの他の例を示す斜視図である。との接合部を示す断面図である。
【図9】本発明のシャフトユニットの他の実施形態例におけるシャフトと装着部材との接合部を示す断面図である。
【図10】シャフト用印刷装置の一例を示す斜視図である。
【図11】シャフト印刷方法を説明する模式図である。
【図12】図10のシャフト用印刷装置が具備する嵌合治具に、シャフトが嵌合した状態を示す(a)部分断面図と、(b)側面図である。
【図13】シャフト印刷方法を説明する模式図である。
【図14】シャフト印刷方法を説明する模式図である。
【図15】シャフト用印刷装置が具備する嵌合治具の他の例を示す断面図である。
【図16】シャフト用印刷装置が具備する嵌合治具の他の例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 シャフトユニット(ゴルフクラブ用シャフトユニット)
10 シャフト
10a 細径側の端部
10b 太径側の端部
13,14,15,16,17 切り欠き
13a,14a,15a,16a,17a 第1の切り欠き辺
13b,14b,15b,16b,17b 第2の切り欠き辺
14c,16c 第3の切り欠き辺
20 装着部材
21 シャフト装着部
22 ヘッド装着部
23 隠蔽部
24 突起
30 接着剤
70 シャフト用印刷装置
71a 印刷面
72 シャフト支持手段
73 嵌合治具
73b 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細径側の端部に切り欠きが形成されたゴルフクラブ用のシャフトと、該ゴルフクラブ用シャフトを装着する装着部材とを有し、
前記装着部材は、ゴルフクラブ用シャフトの細径側の端部に挿入される一端側の円柱状のシャフト装着部と、ヘッド部材が装着される他端側のヘッド装着部と、シャフト装着部の外側に設けられ、前記切り欠きを覆い隠す隠蔽部とを備え、シャフト装着部の外周面に突起が設けられ、
前記切り欠きに前記突起が差し込まれて、前記ゴルフクラブ用シャフトと前記シャフト装着部とが接着されているゴルフクラブ用シャフトユニット。
【請求項2】
前記切り欠きがゴルフクラブ用シャフトの周方向に沿って等間隔に複数形成されている請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフトユニット。
【請求項3】
前記ゴルフクラブ用シャフトおよび装着部材の一方または両方に装飾が施されている請求項1または2に記載のゴルフクラブ用シャフトユニット。
【請求項4】
細径側の端部に切り欠きが形成されたゴルフクラブ用シャフトと、該ゴルフクラブ用シャフトを装着する装着部材とを一体化するゴルフクラブ用シャフトユニットを製造する方法であって、
前記装着部材として、ゴルフクラブ用シャフトの細径側の端部に挿入される一端側の円柱状のシャフト装着部と、ヘッド部材が装着される他端側のヘッド装着部と、シャフト装着部の外側に設けられ、前記切り欠きを覆い隠す隠蔽部とを備え、シャフト装着部の外周面に突起を設けたものを用い、
前記切り欠きに前記突起を差し込んで、前記ゴルフクラブ用シャフトの内周面と前記シャフト装着部の外周面とを接着するゴルフクラブ用シャフトユニットの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフトユニットを有するゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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