説明

ゴルフパター

【課題】パッティング後のボールの転がり距離を推定可能なゴルフパターを提供する。
【解決手段】ゴルフパター1の本体10に、表示手段5と、表示手段に電気的に接続される制御手段6とを設け、制御手段は、感知部61と算出部62とを有し、感知部は、パッティングする前の素振り動作において、まずボールの開始位置を検出し、算出部には、当該開始位置を記録し、算出部には、ヘッドの質量と、ボールの質量と、ボールの弾性率とを含む固有データを内蔵しており、素振り動作の際、感知部は、ヘッドの開始位置を通過したときのヘッドスピードを検出し、算出部には、ヘッドスピードを記録し、算出部は、固有データ及びヘッドスピードに基づいてボールの転がり距離を算出し、表示手段に、転がり距離を表示させ、当該転がり距離とカップまでの距離との差を判断してパッティングを加減よく調整するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、特にグリーンでゴルフボールをカップインするためのゴルフパターに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブのうち、グリーン上では一般的にパターが用いられており、カップまでの距離、グリーンの傾斜などを目で判断した上でゴルファーがスイングストロークを調整しながらカップを目標とする方向にボールを打つ。
【0003】
図7に示す如く、パター70は、ヘッド701の垂直な平坦面に形成されたフェース面702をボール8に対して直角となるようにスイングしてボール8を打たなければならないが、グリーン芝の状態や、パッティングの力、スイング方向、グリーンの傾斜などにより、ボール8の転がり方向と距離が大きく影響されるため、例えば図7のように、常に練習マット9を用いてボール8に対してパター70のヘッド701のフェース面702が直角となるようにしてカップ90に向かって打つ練習をしなければならない。
【0004】
この際、カップ90に向かうボール8の転がり方向を表示し、パッティング方向を確認できるようにしたものが多く提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
【特許文献1】台湾実用新案公告第401829号(ゴルフパターのパッティング方向の校正装置)
【特許文献2】台湾実用新案公告第M263974号(パッティング精確度調整用ゴルフクラブ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術によれば、パター70のパッティング方向を確認できるようにし、カップインの成功率を高めようとするが、打球するときの力をうまく加減できず、ボール8がカップ90に近付くことができなかったり、カップ90を通り過ぎたりすることがあり、プレーヤーを悔しがらせる。
【0007】
本発明は、以上のような従来の問題点に鑑み、パッティングした後のボール8の転がり距離を推定することができるゴルフパターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、本体の長手方向の一端にヘッドが一体に取り付けられ、プレーヤーがグリーンにボールをパッティングしてカップに入れるためのゴルフパターにおいて、本体に、表示手段と、表示手段に電気的に接続される制御手段とを設け、制御手段は、感知部と算出部とを有し、ヘッドの質量と、ボールの質量と、ボールの弾性率とを含む固有データを内蔵しており、感知部は、パッティングする前の素振り動作において、ボールの開始位置及びヘッドがボールの開始位置を通過したときのヘッドスピードを検出し、算出部には当該開始位置及びヘッドスピードを記録し、固有データに基づいてボールの転がり距離を算出し、表示手段に、転がり距離を表示させ、当該転がり距離とカップまでの距離との差を判断してパッティングを調整するようにすることを特徴とするゴルフパターを提供しようとする。
【0009】
前記ゴルフパターでは、算出部にさらに、予めグリーン状態に対応付けられるグリーンスピードと該グリーンスピードに対応付けられた目盛りを示す対照表を内蔵し、さらに、対照表に対応づけられるスイッチ手段を、制御手段に電気的に接続するように本体に取り付け、パッティング時のグリーン状態に対応してスイッチ手段を切替え、算出部において、グリーン状態に対応付けられたグリーンスピードを考慮してボールの転がり距離を算出するように構成してもよい。
【0010】
前記感知部としては、微小電気機械システム(MEMS)を用いることが好ましい。
【0011】
前記ゴルフパターでは、感知部は、さらにボールの開始位置におけるグリーンの傾斜角度を感知し、算出部に、グリーンの傾斜角度を記録し、算出部において、グリーンの傾斜角度を考慮してボールの転がり距離を算出するように構成してもよい。
【0012】
前記ゴルフパターでは、表示手段はさらに、グリーンスピードを調整可能な調整部を設け、算出部において、調整部により調整したグリーンスピードに応じたグリーンスピードを算出して記録するように構成してもよい。
【0013】
前記ゴルフパターではさらに、スイッチ手段に電気的に接続されるように給電手段を設けるように構成してもよい。
【0014】
前記ゴルフパターでは、給電手段は、日光の放射エネルギーを電力に変換するソーラーセルプレートであり、日光が当たるようにヘッドに設けられるように構成してもよい。
【0015】
前記ゴルフパターでは、表示手段は、プレーヤーが目視可能にヘッドの上面に設けられ、スイッチ手段は、本体の長手方向の他端に取り付けられ、給電手段からの電力を開閉制御する電源スイッチ及びグリーンスピードを設定する切替えスイッチを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、算出部は、ボールやパターに関する固有データを用い、記録したボールの開始位置及びヘッドスピードに基づいて、ボールの転がり距離をカップまでの予測距離として算出し、表示手段に、予測距離を表示させることにより、当該予測距離をカップまでの目視距離と比べて、その間の差によってパッティング力をうまく加減し、カップインの確率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
本発明の実施の形態のゴルフパター1は、図1のようにパター本体であるシャフト10の一端にヘッド2を、他端にグリップ3を取り付けており、ヘッド2は、地面に垂直な平坦面に形成されたフェース面20を有する。プレーヤーはプレーや練習するとき、該フェース面20がボール8に対して直角となるようにスイングしてボール8を打ってカップに入れるようにする。
【0019】
ヘッド2は、シャフト10の一端に一体に取り付けられ、図2に示すようにフェース面20の背面から本体部21が突出て形成され、本体部21のフェース面20寄りの端部にフェース面20の幅方向に張り出て棒状のスイング部22が設けられ、スイング部22の前面は平坦のフェース面20とされている。
【0020】
ヘッド2の本体部21に、図2に示すように、給電手段4と、表示手段5と、制御手段6とを組み込み、グリップ3に、図3に示すように、スイッチ手段7を組み込み、それらをシャフト10内部を通してリード線(図示せず)により接続している。
【0021】
給電手段4は、図1に示すように、ソーラーセルプレート41が日光に当たるように本体部21の上面に設けられ、日光の放射エネルギーを電気に変換してスイッチ手段7に電力を供給するように電気的に接続されている。
【0022】
表示手段5は、スイッチ手段7に電気的に接続されており、プレーヤーが目視可能なようにヘッド2の上面に設けられ、例えばプッシュボタン式の調整部51と、データを表示する表示部52とが設けられている。
【0023】
制御手段6は、表示手段5とスイッチ手段7に電気的に接続されるようにヘッド2に組み込まれている。この例においては、制御手段6は、図4に示すように、感知部61及び算出部62を備えるように構成される。算出部62にはボール及びパターにかかるデータやグリーンスピード参照表などを予め記憶しており、感知部61により感知されたボールの速度やグリーン芝の傾斜角度を記録し、ボールの転がり距離を算出し、表示手段5の表示部52に表示する。感知部61としては、例えば微小電気機械システム(MEMS)を用いて、位置や、角度、速度を検出するようにすることができる。この例では、算出部62には、予めヘッドの質量や、ボールの質量、ボールの弾性率を含む固有データを内蔵している。
【0024】
スイッチ手段7は、図2に示すように、給電手段4に電気的に接続されるようにシャフト10の他端のグリップ3に取り付けられており、給電手段4からの電力を開閉制御する電源スイッチ71と、対照表のグリーンスピードに対応づけられた目盛りに応じて所定のグリーンスピードを設定する切替えスイッチ72とからなる。この例においては、切替えスイッチ72がシャフト10の頂端に取り付けられている。
【0025】
ここで、グリーンスピードv(Green Speed;距離(m)/時間(s))は、グリーン芝の長さやグリーンの硬さなどの抵抗に依存し、パッティングに影響する因子である。ボール8がグリーン芝上を転がる転がり距離dはまた、グリーンスピードのほか、グリーンの傾斜、パッティングの強さ、風速などにも大きく依存する。そのために、的確なパッティングができるまでにはプレーの場数を踏む必要があった。
【0026】
本発明にかかる対照表を以下のように説明する。練習プレーをする前に、まず、グリーンスピードを考慮してパッティングするようにする。例えば、練習グリーン上で平坦な場所を選び、所定のパッティングによって検出したスピードを参照グリーンスピード(以下、参照速度をいう)とする。この参照速度により、様々なグリーンにパッティングをして、それぞれ違うボール転がり距離dを測定する。ほぼ同一のパッティング力により異なるグリーンで転がるボールの参照加速度aを次式で求め、制御手段6の算出部62に記憶しておく。
【数1】

【0027】
具体的に、所定のパッティング力によって得られたボールの参照グリーンスピードを参照速度(v0)として、1.91[m/s]の値を測定し、この参照速度によりボール8が様々なグリーン上に止まる(v=0)までそれぞれ1.24[m]、1.55[m]、1.86[m]、2.17[m]、2.48[m]、2.79[m]、3.10[m]、3.41[m]、3.72[m]の転がり距離dを測定により得たとする。従って上式より参照加速度aを例えば目盛りn(n=1〜9の整数)に対応付けて対照表に示す。この対照表を算出部62に記憶しておく。
【表1】

【0028】
制御手段6に記憶された目盛りと参照加速度の対応関係を示す参照表に従い、スイッチ手段7の切替えスイッチ72の操作により、所定の目盛りに対応付けられた所定の参照加速度を設定することができる。
【0029】
本発明のパターにおいて、プレーの経験により、グリーン芝の状態を判断して、n−1又はn+1とnとの間の参照加速度に設定しようとするとき、表示手段5の調整部51を用いて表示部52に示す転がり距離の変化をみながら算出部62における目盛りに対応付けられた参照加速度を微調整することができる。
【0030】
なお、この例において、対照表はプレーヤーのパッティング力により変わるものであるので、上記数値に限られないことはいうまでもない。
【0031】
あるグリーンでパッティングしようとするとき、先に素振りをし、ボール8の転がり距離を算出することについて説明する。まず、図5において、制御手段6の感知部61によりボール8の静止状態を検出し、ボール8の静止位置を開始点とする。パター1をテークバックし、表示部52に表示したデータを0にリセットする。パター1を目標カップに向かって素振りをするとき、ヘッド2が開始点を通過したときのヘッドスピードを感知部61により検出し、算出部62に記録する。この例では、ヘッドスピードvとしては、ほぼ1.0[m/s]とする。
【0032】
この例においては、算出部62に内蔵した固有データ、具体的にヘッドの質量M=380[g]、ボールの質量m=46[g]、ボールの弾性率e=0.75とする。算出部62において、ボールスピードvBを、次式で計算して記録する。
【数2】

【0033】
ボールスピードvBとしては、計算によりほぼ1.56[m/s]と得られる。
【0034】
感知部61によりボール8の静止状態を検出すると共に、グリーンの傾斜度θを検出して算出部62に記録する。この例においては、グリーンの傾斜度θとしては、8°とする。
【0035】
傾斜付きのグリーン芝での加速度asを下式により算出できる。
【数3】

ただし、gは重力加速度9.8[m/s2]、Iは回転慣性モーメント、ボールの回転慣性モーメントI=(2/5)MR2である。
従って、加速度as=0.98[m/s2]と得られる。
【0036】
プレーヤーは、このグリーンの状態を見て判断して、予め切替えスイッチ72を例えば目盛り=2、即ちa=-1.18[m/s2]に設定する。このグリーンの状態即ちa=-1.18[m/s2]を補正値として以下の計算を行う。
【0037】
例えば、ボールが、カップに至る下り斜面に存在する場合、加速度asが+0.98[m/s2]とすると、下りパッティングの加速度ad=0.98+(-1.18)=-0.2[m/s2]となる。
また、ボールが、カップに至る上り斜面に存在する場合、加速度as=−0.98[m/s2]とすると、上りパッティングの加速度au=-0.98+(-1.18)=-2.16[m/s2]となる。
【0038】
したがって、表示部52には、それぞれの加速度に基づいて、
下りのボール転がり距離dd=(02−1.562)/2(-0.2)=6.08[m]、
上りのボール転がり距離du=(02−1.562)/2(-2.16)=0.56[m]、
とが、場合ごとに表示される。
【0039】
プレーヤーは、表示部52に表示されたデータ(転がり距離)に基づいてボールからカップまでの目視距離を判断し、カップインまでの距離差を判定し、パッティング力を加減よく補正し、カップインの確率を高めることができる。
【0040】
このように、本発明のパターによれば、パッティングを練習する意欲をそぐことなく、短時間でパッティングが上達することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のパターは、パッティング練習用のパターに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】傾斜付きグリーンに立つ本発明にかかるゴルフパターを示す図である。
【図2】同ゴルフパターのヘッドを示す斜視図である。
【図3】同ゴルフパターのグリップを示す斜視図である。
【図4】同ゴルフパターの機能構成を示す図である。
【図5】同ゴルフパターの練習状況を概略示す図である。
【図6】同ゴルフパターの練習状況を概略示す図である。
【図7】従来のゴルフパターの練習状態を概略示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ゴルフパター
10 シャフト
2 ヘッド
20 フェース面
21 本体部
22 スイング部
3 グリップ
4 給電手段
41 ソーラーセルプレート
5 表示手段
51 調整部
52 表示部
6 制御手段
61 感知部
62 算出部
7 スイッチ手段
71 電源スイッチ
72 切替えスイッチ
8 (ゴルフ)ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の長手方向の一端にヘッドが一体に取り付けられ、プレーヤーがグリーンにボールをパッティングしてカップに入れるためのゴルフパターにおいて、
前記本体に、表示手段と、前記表示手段に電気的に接続される制御手段とを設け、
前記制御手段は、感知部と算出部とを有し、
前記算出部には、前記ヘッドの質量と、前記ボールの質量と、前記ボールの弾性率とを含む固有データを内蔵しており、
前記感知部は、パッティングする前の素振り動作において、まず前記ボールの開始位置を検出し、また前記ヘッドの前記開始位置を通過したときのヘッドスピードを検出し、
前記算出部には、当該開始位置及び前記ヘッドスピードを記録し、
前記算出部は、前記固有データ及び前記ヘッドスピードに基づいて前記ボールの転がり距離を算出し、
前記表示手段に、転がり距離を表示させ、当該転がり距離と前記カップまでの距離との差を判断して前記パッティングを調整するようにする
ことを特徴とするゴルフパター。
【請求項2】
前記算出部にさらに、予めグリーン状態に対応付けられるグリーンスピードと該グリーンスピードに対応付けられた目盛りを示す対照表を内蔵し、
さらに、前記対照表に対応づけられるスイッチ手段を、前記制御手段に電気的に接続するように前記本体に取り付け、
前記パッティング時の前記グリーン状態に対応して前記スイッチ手段を切替え、前記算出部において、前記グリーン状態に対応付けられたグリーンスピードを考慮して前記ボールの転がり距離を算出することを特徴とする請求項1に記載のゴルフパター。
【請求項3】
前記感知部として、微小電気機械システム(MEMS)を用いることを特徴とする請求項2に記載のゴルフパター。
【請求項4】
前記感知部は、さらに前記ボールの開始位置における前記グリーンの傾斜角度を感知し、
前記算出部に、前記グリーンの傾斜角度を記録し、
前記算出部において、前記グリーンの傾斜角度を考慮して前記ボールの転がり距離を算出することを特徴とする請求項3に記載のゴルフパター。
【請求項5】
前記表示手段はさらに、前記グリーンスピードを調整可能な調整部を設け、
前記算出部において、前記調整部により調整したグリーンスピードに応じたグリーンスピードを算出して記録することを特徴とする請求項4に記載のゴルフパター。
【請求項6】
さらに、前記スイッチ手段に電気的に接続されるように給電手段を設けることを特徴とする請求項5に記載のゴルフパター。
【請求項7】
前記給電手段は、日光の放射エネルギーを電力に変換するソーラーセルプレートであり、日光が当たるように前記ヘッドに設けられることを特徴とする請求項6に記載のゴルフパター。
【請求項8】
前記表示手段は、前記プレーヤーが目視可能に前記ヘッドの上面に設けられ、
前記スイッチ手段は、前記本体の長手方向の他端に取り付けられ、前記給電手段からの電力を開閉制御する電源スイッチ及び前記グリーンスピードを設定する切替えスイッチを設けることを特徴とする請求項7に記載のゴルフパター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−125523(P2009−125523A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306801(P2007−306801)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(507392613)
【出願人】(507392624)
【Fターム(参考)】