説明

サイクロトロンによる粒子ビーム生成のためのツイン内部イオン源

【課題】 同じ粒子の生成のための二つの内部イオン源(1,2)を含むサイクロトロンを提供する。
【解決手段】 このサイクロトロンは、サイクロトロンの稼働時間及び信頼性を強く増大しかつメンテナンス介入を減らす予備イオン源として第二イオン源が使用されることができる。有利には、サイクロトロンはさらに、サイクロトロンの中心領域内の種々の要素の最適化された密接な幾何学形状により特徴付けられる。本発明のサイクロトロンはさらに、加速の第一回転時の粒子損失を避けるための第一及び第二内部イオン源の形状の適合化及び最適化により特徴付けられることができる。サイクロトロンはさらに、間隙(5)中間の加速電場を改善するためにカウンターディー電極装置(4)とおそらくディー電極装置の形状の適合化及び最適化により特徴付けられることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロトロン加速器の分野に関する。より詳細には、本発明は、サイクロトロン加速器のための内部イオン源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクロトロンは再循環粒子加速器であり、それは高減圧下に作動し、そこではイオン源により発生した帯電粒子が円運動で加速される。これは、一方では、磁場を使用することにより達成され、磁場は前記イオン源から来る粒子を前記磁場に垂直な面内の円形経路に従わさせ、他方では、いわゆるディー電極に付与された高周波交流電圧を使用することにより達成され、ディー電極はそれを通過する粒子にそれらのエネルギー増加を付与する。
【0003】
内部イオン源は、典型的には円筒状室またはイオン源本体を含む。電場が陰極と陽極の間に作られる。陰極は電子を生成し、電子は一つの陰極から他の陰極への非常に長い電子移動を作る非常に小さな螺旋経路を描くサイクロトロンの磁場線に従う。ガス(典型的には水素ガス、または粒子ビームのために望ましい粒子に依存して別のガス)が前記イオン源の内部に噴射される。電子はそれらの移動時にそれらのエネルギーの一部をガス中に失い、結果としてプラズマ柱を形成するイオン化を作る。イオン源は負及び/または正に帯電したイオンを生成することができる。
【0004】
幾つかのサイクロトロンモデルは内部イオン源を持って設計され、一方、他のものは外部イオン源を持って設計される。
【0005】
内部イオン源を備えたサイクロトロンでは、イオン源はサイクロトロンのいわゆる中央領域内に設けられる。前記イオン源により発生されたイオンは、イオン源本体からスリットを通して直接抽出され、イオン源本体とプラー(puller)と呼ばれる電極との間に付与された電圧差により前記スリットから引き出され、プラーは交流電位の電力源によりバイアスを掛けられている。イオン源からの抽出後に、イオンは、典型的にはディー電極と呼ばれる電極を通して動く。サイクロトロンはまた、円形経路内の粒子を案内かつ閉じ込めるための(粒子の方向に垂直な)磁場を生成する電磁石;及び交流電圧を前記ディー電極に付与することができ、従って前記ディー電極間の間隙に発生した電場の極性を迅速に交互にすることができる高周波電力供給を含む。電場はディー電極の内側に存在しないので、ディー電極を通して移動する粒子は電場により影響を受けない。従って、もしディー電極に付与された電圧が、粒子がディー電極の内側にある間に逆転されると、粒子が間隙を通過する毎に、それらはエネルギーを獲得することにより螺旋経路に従う加速をますます取得する。あるサイクロトロンは正に帯電したイオンの加速のために設計され、一方で他のものは負に帯電したイオンの加速のために最適化される。前記螺旋経路の終りに、加速された負に帯電されたイオン、例えばHを抽出するために使用される炭素ストリッパーのような抽出部材がある。正に帯電されたイオンが加速されたとき、静電偏向器がサイクロトロンからの粒子の抽出を実現するために使用される。
【0006】
外部イオン源を備えたサイクロトロンでは、前記イオン源により発生されたイオンは、まず外部イオン源から前記サイクロトロン内に運ばれ、次いで内部源を備えたサイクロトロンの場合と同様に加速されるために曲げられる。外部イオン源を備えたサイクロトロンの内部イオン源を備えたサイクロトロンを越える利点は、イオン源がメンテナンス作業のために常に減圧状態を保って容易に接近可能であることである。サイクロトロン内の内部イオン源はこわれやすく、摩耗のために定期的に交換されることが必要である。内部イオン源を交換することは厄介でかつ時間がかかる。減圧が破壊され、サイクロトロンが開かれ、イオン源が交換され、サイクロトロンが閉じられ、サイクロトロンは良好な減圧が得られるまでポンプで空気を引き出される。
【0007】
サイクロトロンが医療用放射性同位元素(例えばPETまたはSPECT同位元素)の商業生産のために使用されるとき、ビーム生成の動作時間及び信頼性が重要でかつ臨界的な因子となる。動作時間及び信頼性を増大するために、サイクロトロンの余分な装置及びシステムが設置される(例えばHビームを抽出するための多数のストリッパー要素の使用)。実際には、内部イオン源は、余分でないサイクロトロンの唯一の必須要素である。さらに、内部イオン源が交換されることが必要であるときのメンテナンス工程時に、メンテナンスを実施する人員は活性化物質からの放射線にさらされる。従って、内部イオン源を備えたサイクロトロンに対しては、特に短命の同位元素(例えば18F半減期=110分)を生産するサイクロトロンに対しては、放射性医療目的のための同位元素の生産時に、内部イオン源の破損の場合に効率的かつ迅速なバックアップ解決策を提供することが必要である。
【0008】
Conardらは、“Current status and future of cyclotron development at IBA”,Proceedings of EPAC Conference,Nice,France(1990)において、二つのタイプの粒子:陽子と重陽子を生産する二つのサイクロトロン(Cyclone 10/5及びCyclone 18/9)を記載する。二つの内部冷陰極PIGタイプのイオン源がこの目的のために使用される。二つの異なる粒子の生産のための同じサイクロトロン内の二つのイオン源の一体化が粒子の異なる物理的性質のために達成されることができる:質量差のため、粒子は異なる磁気剛性を持ち、結果として粒子は異なる曲がりを経験する。陽子及び重陽子のために、これらのサイクロトロンはそれぞれ高周波2及び4で操作される。これらの異なる性質は、異なる粒子のビーム経路が加速の第一回転時に一つまたは他のイオン源と干渉または衝突しないためにサイクロトロンの中心領域内の良好に規定された幾何学的形状内に二つのイオン源を設置することを可能にした。これらのサイクロトロンにより、放射性同位元素の生産のための要求に応じて陽子または重陽子ビームのいずれかを生成することができる。しかし、最も実際的な場合には、最良の可能な動作時間を持つ単一タイプのビームが放射性同位元素(例えば反応18O(p,n)18Fを通して18Fの生産のための陽子)の生産のために必要である。
【0009】
現時点では、一方では内部イオン源を持つサイクロトロンの操作の動作時間及び信頼性を増やすため、他方ではメンテナンス工程時の人員の放射線への露出を減らすための現実的な解決策は提案されていない。本発明は、メンテナンス及びビーム動作時間の上で検討した問題に対する解決策を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の問題を克服する装置を提供することを目的とする。
【0011】
特に、本発明は、同じ粒子を生成するために二つの独立したイオン源がサイクロトロンの中心領域内に一体化されているいわゆるツインイオン源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の好適な実施態様によれば、粒子ビームを発生するためのサイクロトロンが添付請求項に記載のように提供される。特別な実施態様が独立請求項と一つ以上の従属請求項との組合せで記載されている。本発明によるサイクロトロンは:
・ 粒子イオンを生成するための第一内部イオン源(1);
・ 前記粒子イオンを加速するための間隙(5)により互いに分離されたディー電極装置(3)及びカウンターディー電極装置(4);前記カウンターディー電極装置(4)は好ましくは接地されまたは一般的に基準電圧に連結可能である;装置は一つ以上のディー電極及びカウンターディー電極をそれぞれ含むことができる。
・ 前記間隙間に(すなわち前記間隙内に)電場を持つことができるように、前記ディー電極装置(3)に交流高電圧を付与することができる発電器;
・ 粒子イオンを旋回させかつ前記ディー電極装置の加速電圧に多数回遭遇させるためのディー電極を垂直に通過する磁場を生成するための手段;
・ 前記第一内部イオン源(1)と同じ粒子イオンを生成するための第二内部イオン源(2);
を含み、さらに前記サイクロトロンは前記第一内部イオン源または前記第二内部イオン源のいずれかによりまたは同時に両イオン源により発生されたエネルギー粒子ビームを発生することができる。
【0013】
さらに、好適な実施態様によれば、このサイクロトロンは中心垂直軸に対する二重(two−fold)回転対称性により特徴付けられる。中心垂直軸は、サイクロトロンの中心を通過しかつサイクロトロンの内側の磁場の向きと平行である軸として規定される。別の実施態様によれば、イオン源は中心軸から実質的に同じ距離に、しかし必ずしも中心軸に対して対称的にではなく置かれる。
【0014】
一実施態様によれば、サイクロトロンはさらに、サイクロトロンの中心領域内の種々の要素の最適化された密接した幾何学的配置により特徴付けられる。第一内部イオン源(1)と第二内部イオン源(2)の中心垂直軸に対する距離は加速の第一回転時の粒子損失を避けるために最小化される。この実施態様によれば、前記第一内部イオン源(1)と前記第二内部イオン源(2)の前記中心垂直軸に対する距離は、180°移動した後の前記第一/第二内部イオン源からのビームと前記第二/第一内部イオン源との間の距離を増やすために減らされ、それにより加速の第一回転時の粒子損失が最小化される。言い換えれば、一つのイオン源により発生された粒子と他のイオン源の本体との間の衝突がないことを確保するために、イオン源は技術的に可能である最小距離に配置される。イオン源がサイクロトロンの中心軸に対して対称的に置かれるとき、粒子が一つのイオン源から他のイオン源に180°移動したときに衝突が起こりうる。最小の技術的に可能な距離は、イオン源と電極の形状に依存し、かつ粒子源とディー電極の間の最小の必要距離により決定されることができる。
【0015】
別の実施態様によれば、本発明のサイクロトロンはさらに、加速の第一回転時の粒子損失を避けるための第一内部イオン源(1)と第二内部イオン源(2)の形状の適応と最適化により特徴付けられる。この実施態様によれば、前記第一内部イオン源(1)及び第二内部イオン源(2)の本体は前記サイクロトロンの中心垂直軸から離れる方に向いた前記本体の周囲に切欠き(40)を含む。前記切欠きは、一つのイオン源により生成された粒子と他のイオン源の本体との衝突を避けるように配置される。
【0016】
さらに別の実施態様によれば、サイクロトロンは、間隙(5)の中間の加速電場を改良するために、カウンターディー電極装置(4)、及びさらにおそらくディー電極装置の形状の適応と最適化により特徴付けられる。この実施態様によれば、前記粒子ビームが前記間隙(5)を横切る位置の前記カウンターディー電極装置(4)のかどが減らされ、それにより間隙内の前記電場の電場品質が改良される。言い換えれば、カウンターディー電極装置(4)、及びさらにおそらくディー電極装置(3)は、粒子による間隙(5)の横切りが前記間隙(5)内のかどまたは屈曲部のない領域で起こるような方法で構成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明によるサイクロトロンの中心領域の図(サイクロトロンの中間面の投影)を示す。
【0018】
【図2】図2は、本発明による同じサイクロトロンの中心領域の三次元図を示す。
【0019】
【図3】図3は、内部イオン源の作動原理の概略図、典型的な内部イオン源の本体の透視図、及びイオン源の断面の上面図を示す。
【0020】
【図4】図4は、第一イオン源との衝突による第一回転時のイオンの損失を示す第二イオン源のイオンの回転パターンを示す。
【0021】
【図5】図5は、第一及び第二イオン源の背面側が再造形された場合の第二イオン源のイオンの回転パターンを示す。
【0022】
【図6】図6は、本発明による最適化された中心領域構成のための第二イオン源のイオンの回転パターンを示す。
【0023】
【図7】図7は、本発明による内部イオン源の透視図及びその断面の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を添付図面に関して詳細に説明する。しかし、当業者は本発明を実行する幾つかの均等な実施態様または他の方法を考えることができることは明らかである。発明の実施形態の説明、図面及び計算結果は、18MeVサイクロトロン内の二つの内部H陽子イオン源の設置に対して与えられる。本発明はいずれのタイプのサイクロトロンにも適用されることができることは明らかである。従って、本発明の精神及び範囲は請求項の用語によってのみ限定される。
【0025】
図1は、本発明の好適な実施態様によるサイクロトロンの中心領域の図を示す。このサイクロトロンの中心領域は:
・ 帯電粒子を発生するための第一イオン源(1)
・ 帯電粒子を発生するための第二イオン源(2)、但し、第二イオン源(2)は第一イオン源(1)と同一である
・ 高周波電力発生器に連結されたディー電極(3)、但し、この電力発生器は前記ディー電極(3)に交流高電圧を付与することができる
・ 接地されかつディー電極(3)と一緒に間隙(5)を通過する粒子を加速するカウンターディー電極(4)
を含む。
ディー電極は二つの側方部3を持つ単一電極として配置され、一方カウンターディー電極は四つの副部4の組立品として配置される。一つ以上のディー及びカウンターディーの組立品を持つ他の配置は当業者の知識内であり、そのため本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
図1及び図2に示されたような二つの内部イオン源を持つサイクロトロンは、中心垂直軸に対して二重回転対称性を持つ。中心軸は、ここでは、サイクロトロンの中心を通過しかつ磁場の向きと平行である軸として規定される。イオン源は中心軸に対して半径方向に設置される。
【0027】
サイクロトロンは、第一イオン源(1)を使用するかまたは第二イオン源(2)を使用するかのいずれかにより、または同時に両方を使用することにより、エネルギー陽子ビームを発生することができる。典型的に粒子加速器の中心に設けられているイオン源(1または2)は、イオン源本体とプラーの間に作られた電場によりイオン源から引き出される低エネルギーイオンを発生する。イオンは、電場によってディー電極(3)とカウンターディー電極(4)の間の第一間隙(5)を横切るときにディー電極(3)に加速される。
【0028】
好適な実施態様によれば、使用されるイオン源のタイプは、図3に示されたような冷陰極PIGイオン源である。イオン源はガス(例えば水素)により供給される。電位は、電力供給体(12)を用いて陽極(11)と陰極(10)の間に作られる。電子は陰極から放出され、プラズマ(13)はイオン源のいわゆる煙突内に作られ、そこで電子閉じ込めがサイクロトロンの磁場Bを用いて確立される。イオンは抽出開口(14)を通して抽出される。典型的なイオン源(20)の本体の三次元図がまた、上部25からの図(サイクロトロン内に設置されたときの磁場の方向に垂直な面に沿った断面)と一緒に図3に示される。
【0029】
二つのイオン源の粒子は同一であるので、ビーム光学素子は正確に同じである。すなわち、粒子は同じ磁気剛性を持ちかつ同じ曲率半径を持つであろう。結果として、第一イオン源から生じる粒子は一般的に加速の第一回転時に第二イオン源に当たるであろう。これは図4に示され、それは中心領域に焦点を当てたサイクロトロンの中間面の図である。出発点は、二つの内部イオン源(一つは陽子のためのものであり、もう一つは重陽子のためであり、18MeV陽子及び9MeV重陽子のビームを提供する)を持つ既存のサイクロトロン構成であった。重陽子イオン源は第一陽子イオン源と同一の陽子イオン源により置き換えられた。第一イオン源1及び第二イオン源2は図4に示され、図3(25)に示されたような形状を持つ。第二陽子イオン源(2)からの陽子の加速及び回転パターンが計算されかつ図4に示されており、単色円及び単色方形はそれぞれ、ディー電圧(3)が最大及びゼロである瞬間の陽子の位置を表す。イオンは180°に位置した第一イオン源(1)の背面側に当たり、ここで全てのビームが加速の第一回転時に既に失われることがわかる。二つのイオン源の解決策は陽子/重陽子サイクロトロン構成のために役立つけれども、重陽子イオン源の陽子イオン源による単純な置換は達成されない。二つの異なる粒子の発生のための同じサイクロトロン内の二つのイオン源の一体化は粒子の異なる物理的性質のために技術的に達成されることができる:質量差によって、粒子は異なる磁気剛性を持ち、結果として粒子は異なる曲率半径を持つ。
【0030】
サイクロトロン研究及び開発の分野では、同じサイクロトロン内に同じ粒子(例えば陽子)を発生するために二つの内部イオン源を設置する思想は今まで考えられたことがない。実際、内部イオン源は加速及び磁気構造の一体化された部分である。二つのイオン源の粒子は同一であるので、ビーム光学素子は正確に同じであり、すなわち粒子は同じ磁気剛性を持ちかつ同じ曲率半径を持つであろう。結果として、第一イオン源から発生する粒子は一般的に加速の第一回転時に第二イオン源に当たるであろう。加えて、イオン源はまた、ある物理的寸法を持ち、それはサイクロトロンの中心領域内で同じ粒子を発生する二つのイオン源の一体化を複雑にし、今まで決して考慮されなかった。
【0031】
同じサイクロトロン内に二つの同一イオン源を設置する技術的問題を解決するために、サイクロトロンの中心領域を最適化するための一体化工程が開始された。一般的に、本発明によれば、イオン源は、所定の磁場と加速電圧が付与されたとき、一つの源により発生された粒子が他の源の本体により妨げられないような方法で置かれる。第一最適化は、ビームが第二イオン源と干渉(すなわち衝突)することなくその第一回転をすることをさらに保証するためにイオン源(1及び2)の形状を修正することである。粒子軌道の新しい計算がなされかつ図5に示される。イオン源の本体の背面側を切除することにより、すなわちイオン源の本体に切欠きを作ることにより、第一イオン源により発生されたビームは第二イオン源の周りを通過できる。二つのイオン源構成の対称性のため、第二イオン源により発生されたビームはまた、第一イオン源の周りを通過するであろう。
【0032】
本発明の好適な実施態様によるサイクロトロンの中心領域をさらに最適化するために、二つの追加の修正がなされることができる。しかし、これらの修正はまた、切欠き実施態様から独立してなされることができる。第一修正は、180°移動後の前記第一/第二内部イオン源からのビームと前記第二/第一内部イオン源との間の距離を増やすために前記第一内部イオン源1と前記第二内部イオン源2の中心垂直軸に対する距離が減らされるように二つのイオン源を中心に向けて変位することであり、それにより加速の第一回転時の粒子損失が最小化される。好ましくは、イオン源はイオン源の寸法に鑑みて技術的に可能である最も密接な幾何学的形状にもたらされる。「技術的に可能」は、二つのイオン源がディー電極(3)の距離に設けられなければならず、前記距離がイオン源(1,2)とディー電極(3)との間の電場がビームを加速することができるようなものであるということを考慮に入れる。また、二つのイオン源は電場中に並んで設けられることができない。そうでなければ、粒子は異なって加速され、それらは同じ曲率半径を持つことができない。図6に見られるように、軌道と第二イオン源との間の隙間は、図5と比べると増やされている(約3mmから約8mmに)。なされることができる第二修正は、軌道が横切る位置(すなわちそれから離れた)での加速間隙内のかどを除去するためにカウンターディー(4)の形状を修正することである。第二、第三及び第五横断間隙で、粒子が加速間隙幾何学的形状の屈曲部またはかどに接近して通過することが図5に見られる。カウンターディ(4)の形状の修正の結果は図6に示される:粒子による間隙5の横断は前記間隙内のかどまたは屈曲部のない領域で起こる。好ましくは、図に見られるように、これらは縁が真直ぐでかつ平行である領域である。このようにして、軌道横断の間隙幾何学的形状は電場品質に関して改良される。なぜなら電場不均一性はディー電極及びカウンターディー電極のかど(6)によりもはや起こらず、電場はより均一であるからである。この最適間隙幾何学的形状を得るために、カウンターディー電極(単数または複数)(4)の幾何学的形状を適合させるだけでなく、ディー電極(単数または複数)(3)のそれも適合させることが必要であるかもしれない。
【0033】
図6に示された計算の結果に従って、専用の形状を持つイオン源が設計され、三次元図が図7(30)に示される。上面図(35)は、一方では加速の第一回転時のイオン源の背面にイオンが当たるのを避けるようにかつ他方ではイオン源がサイクロトロンの中心領域の密接な幾何学的形状に適合することを可能にするように設計された専用形状を示す。図7(35)に示された最適化された専用形状は、図3(25)に示された標準イオン源形状と明らかに異なる。点線38(図7)は、図3に示された標準イオン源の標準形状を示す。標準イオン源形状に比べると、切欠き(40)がイオン源の背面側に作られている。図7の網掛けされた領域(40)は切欠きを示す。この切欠き(40)は、第一/第二イオン源により作られた180°移動後のビームと第二/第一イオン源の本体との間の距離を増やす。
【0034】
本発明の好適な実施態様によれば、第一イオン源から第二イオン源への切替えまたはその逆は完全に自動化され、サイクロトロン制御システムのユーザーインターフェースから実施されることができる。
【0035】
従って、本発明を使用することにより、多くの利点が達成される。実際、本発明の実施態様は次の利点を特徴とする:
・ ビーム稼動時間及びビーム発生の信頼性の強力な増加。発生時の第二予備イオン源への切替えが簡単、迅速であり、かつ完全に自動化されることができる。
・ メンテナンスの減少。ツインイオン源システムのおかげで、全体的なイオン源寿命が大きく延ばされ、従ってメンテナンス介入の数が減らされ、放射線への人員露出がさらに限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子ビームを発生するためのサイクロトロンであって、
・ 粒子イオンを生成するための第一内部イオン源(1);
・ 前記粒子イオンを加速するための間隙(5)により互いに分離されたディー電極装置(3)及びカウンターディー電極装置(4);
・ 前記間隙に電場を生成するために前記ディー電極装置(3)に交流高電圧を付与することができる発電器;
・ 粒子イオンを旋回させかつ前記ディー電極装置の加速電圧に遭遇させるためのディー電極を垂直に通過する磁場を生成するための手段;
を含むサイクロトロンにおいて、前記サイクロトロンが、前記第一内部イオン源(1)と同じ粒子イオンを生成するように構成された第二内部イオン源(2)を含み、さらに前記サイクロトロンが、前記第一内部イオン源(1)または前記第二内部イオン源(2)のいずれかによりまたは同時に両イオン源により生成されたエネルギー粒子ビームを発生するように構成されていることを特徴とするサイクロトロン。
【請求項2】
前記サイクロトロンが中心垂直軸に対して二重回転対称性を持ち、前記中心垂直軸が、サイクロトロンの中心を通過しかつ前記磁場の向きと平行である軸として規定されていることを特徴とする請求項1に記載のサイクロトロン。
【請求項3】
前記第一内部イオン源(1)及び前記第二内部イオン源(2)の本体が、前記サイクロトロンの中心垂直軸から離れる方に向いた前記本体の周囲に切欠き(40)を含み、前記切欠きが、一つのイオン源により生成された粒子と他のイオン源の本体との衝突を避けるように配置されていることをさらに特徴とする請求項1または2に記載のサイクロトロン。
【請求項4】
前記第一内部イオン源(1)と前記第二内部イオン源(2)の前記中心垂直軸に対する距離が、技術的に可能である最小距離であることをさらに特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサイクロトロン。
【請求項5】
カウンターディー電極(4)装置が、粒子による間隙(5)の横切りが前記間隙(5)内のかどまたは屈曲部のない領域で起こるような方法で構成されていることをさらに特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサイクロトロン。
【請求項6】
カウンターディー電極装置及びディー電極装置が、粒子による間隙(5)の横切りが前記間隙(5)内のかどまたは屈曲部のない領域で起こるような方法で構成されていることをさらに特徴とする請求項5に記載のサイクロトロン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−523185(P2011−523185A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512931(P2011−512931)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056673
【国際公開番号】WO2009/150072
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509125981)
【Fターム(参考)】