説明

サイトカインムテイン

本発明は一般に、インターロイキン-11(IL-11)媒介性状態の治療に関する。より詳細には、本発明は、IL-11媒介性状態の治療における、IL-11シグナル伝達を調節する改変型IL-11の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願データ
本出願は、2007年10月26日に提出された米国仮特許出願第61/000,576号と関連し、かつそれによる優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本発明は一般に、インターロイキン-11(IL-11)媒介性状態の治療に関する。より詳細には、本発明は、IL-11媒介性状態の治療における、IL-11シグナル伝達をモジュレートする改変型のIL-11の使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
本明細書中に提示している参考文献の文献学的詳細は、明細書の最後に列記されている。
【0004】
いかなる先行技術に対する言及も、この先行技術が任意の国において共通の一般的知識の一部を形成することの承認でも、またはいかなる示唆の形態でもなく、かつそのように解釈されるべきでもない。
【0005】
インターロイキン-11(IL-11)は、IL-6、ウイルス性IL-6(vIL-6)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、カルジオトロフィン様サイトカイン/サイトカイン様因子-1(CLC/CLF)、IL-27およびニューロポエチン(NP)を含む、サイトカインのIL-6ファミリーのメンバーである。IL-11は、単独で、または他のサイトカインとの相乗作用により、さまざまな造血細胞系列の増殖および分化を刺激する。IL-11はまた、巨核球形成および血小板産生も刺激することができ、化学療法誘発性血小板減少症を予防するために臨床的に用いられており(Tepler et al, Blood 87(9):3607-3614, 1996)、現在は化学療法誘発性胃腸粘膜炎の治療のための新たなアプローチとしての評価が進行中である(Herrlinger et al, Am J Gastroenterol 101(4):793-797, 2006)。IL-11はまた、関節炎および炎症性腸疾患における便益がある可能性も示唆されている。
【0006】
IL-11はまた、造血系以外でも種々の生物活性を発揮する。これは破骨細胞発生の調節因子であり、骨代謝の調節因子であるとも考えられている(Girasole et al, J clin Invest 93:1516-1524, 1994;Hughes et al, Calcif tissue Int 53:362-364, 1993;Heymann and Rousselle, Cytokine 12(10):1455-1468, 2000)。IL-11はCNSの細胞において高レベルで発現され(Du et al, J Cell Physiol 168:362-372, 1996)、神経始原細胞の生存および増殖を刺激する(Mehler et al, nature 362:62-65, 1993)。雌性マウスにおいて、IL-11は胚着床の成功のために不可欠であり(Dimitriadeis et al, Mol Hum Reprod. 6(10):907-914, 2000;Robb et al, Nat Med 4:303-308, 1998;Bilinski et al, Genes Dev 12:2234-2243, 1998)、月経周期の過程におけるIL-11およびその受容体の発現パターンはヒトにおける同様な役割を示唆する。IL-11のその他の非造血系活性には、脂質生成の阻害(Ohsumi et al, FEBS Lett 288:13-16, 1991;Ohsumi et al, Biochem Mol Biol Int 32:705-712, 1994)、発熱反応の誘導(Lopez-Valpuesta et al, Neruopharmacology 33:989-994, 1994)、細胞外マトリックス代謝のモジュレーション(Maier et al, J Biol chem. 268:21527-21532, 1993)、急性期反応物質の賦活(Baumann and Schendel, J Biol Chem 266:20424020427 1991)が含まれ、炎症誘発的および抗炎症的な役割も提唱されている(Trepicchio et al, J Clin Invest 104:1527-1537, 1999;Redlich et al, J Immunol 157:1705-1710,1996)。
【0007】
IL-11はまた、放射線誘発性肺損傷(Redlich et al, 前記、1996)、敗血症(Chang et al, Blood Cells Mol Dis 22(1):57-67, 1996)および乾癬(Trepicchio et al, 前記、1999)を含む、さまざまな他の炎症性疾患における潜在的な治療薬としても示唆されている。米国特許第6,270,759号は、IL-11が、喘息および鼻炎を含む、種々の炎症性状態に対して、治療的に有用である可能性を示唆している。
【0008】
IL-11における治療的関心を指し示すものとして、米国特許出願第2007/0190024号は、IL-11のアゴニストおよびハイパーアゴニストとして作用する、His 182(H182)およびAsp 186(D186)に突然変異を有する改変型のIL-11を記載している。
【0009】
IL-11はその効果を、特異的な細胞表面受容体(IL-11Rα)ならびに共有性受容体サブユニットgp130との会合を介して発揮する。IL-6ファミリーのサイトカインはすべて、1つまたは複数のgp130分子を伴う受容体複合体を通じてシグナルを伝達するが、IL-11シグナル伝達複合体は、それがサイトカイン、特異的α鎖受容体およびgp130のそれぞれを2分子ずつ含むという点で、IL-6のそれと最も類似している(Barton et al, J Biol Chem (2000) 275:36197-36203, 2000)。
【0010】
中和抗体および可溶性受容体タンパク質は、サイトカインを阻害するための一般的な戦略であるが、一方で、2つの受容体鎖の一方のみと結合することによってシグナル伝達を妨げる、第3のクラスのアンタゴニスト分子は「サイトカインムテイン」と呼ばれている。数多くのこれらのムテインが以前に記載されており、その1つである成長ホルモンのアンタゴニスト性変異体は、先端巨大症を治療するために臨床的に用いられている(Cunningham and Wells, Science 244:1081-1085, 1989)。IL-6ファミリーのサイトカインの中では、サイトカインムテインはIL-6、CNTF、LIFおよびIL-11に関して記載されている(Ehlers et al, J Biol Chem 270:8158-8163, 1995;Brakenhoff et al, J Biol Chem 269:86-93, 1994;Savino et al, Embo J 13:5863-5870, 1994;Hudson et al, J Biol Chem 271:11971-11978, 1996;Saggio et al, Embo J 14;3045-3054, 1995;Underhill-Day et al, Endocrinology 144;3406-3414, 2003)。いずれの場合にも、これらのサイトカインムテインは、gp130に対するサイトカインの結合を妨げる特定の突然変異を含む。IL-11の場合には、単一の点突然変異であるW147A(アミノ酸残基147でのトリプトファンからアラニンへの置換)が、IL-11Rαに対する親和性を変化させずに、IL-11をIL-11シグナル伝達のアゴニストからアンタゴニストに変換させるのに十分である(Underhill-Day et al, 前記、2003)。
【0011】
加えて、構造-機能研究により、IL-11Rα結合のために重要な、マウスおよびヒトのIL-11のさまざまな領域も同定されている(Czupryn et al, J. Biol. Chem. 270(2): 978-985, 1995;Miyadai et al, Biosci. Biotechnol. BioChem. 60.3:541-542, 1996;Czupryn et al, Ann. N.Y. Acad. Sci. 762:152-164, 1995;Tacken et al, Eur. J. BioChem. 265.2:645-655, 1999;Harmegnies et al, BioChem J. 375(1):23-32, 2003)。特に、D-ヘリックスのC末端にある残基D165、W166、R169、L172およびL173、ならびにA-Bループ内のM58、L64およびL67は、IL-11Rα結合に寄与することが見いだされている。
【0012】
米国特許出願第2007/0190024号は、IL-11のHis 182(H182)およびAsp 186(D186)に突然変異を有するIL-11ムテインを、IL-11のアゴニストおよびハイパーアゴニストとして記載しているが、アンタゴニストであることは示唆していない。IL-11ムテインであるW147A IL-11は、IL-11受容体複合体へのgp130の動員を妨げて、それによってIL-11シグナル伝達を妨げる、IL-11のアンタゴニスト性変異体である(Underhill-Day et al, 前記、2003)。しかし、W147A IL-11は、IL-11Rαに対して野生型IL-11と同じ親和性を有する。
【0013】
IL-11モジュレーターには治療法における役割がある。IL-11モジュレーターの同定はさらに必要とされている。
【発明の開示】
【0014】
概要
本明細書の全体を通じて、文脈が別のものを要求しない限り、「含む(comprise)」という用語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形物は、言及した要素または整数または要素もしくは整数の群を含むものの、他の要素または整数または要素もしくは整数の群を除外しないことを意味するものと解釈されるものとする。
【0015】
ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、配列識別番号(SEQ ID NO:)によって参照される。SEQ ID NO:は、配列識別子<400>1(SEQ ID NO:1)、<400>2(SEQ ID NO:2)などに数値的に対応する。配列識別子の概要は表1に提示されている。配列表は特許請求の範囲の前に提示されている。
【0016】
本発明は一般に、IL-11受容体α鎖(IL-11Rα)に対する強化された結合性を呈する、改変型の哺乳動物インターロイキン11(本明細書では以後、「IL-11ムテイン」と称する)に関する。より詳細には、本発明のIL-11ムテインはIL-11シグナル伝達をモジュレートし、このためIL-11媒介性状態の治療または予防における治療薬として有用である。「モジュレートする」とは、アップレギュレートする(「アゴナイズする」)またはダウンレギュレートする(「アンタゴナイズする」)ことを意味する。
【0017】
従って、本発明は、野生型哺乳動物IL-11の58〜62位にあるアミノ酸配列AMSAG(一文字アミノ酸コードを使用)[SEQ ID NO:23]が、アミノ酸配列PAIDY(SEQ ID NO:24)またはFMQIQ(SEQ ID NO:25)に置き換えられている、あるアミノ酸配列を有するIL-11ムテインを提供する。1つの態様において、IL-11ムテインは単離された形態にあるが、本発明はそのように限定されるべきではない。
【0018】
もう1つの局面において、IL-11ムテインは、野生型哺乳動物IL-11のアミノ酸58〜62位での突然変異に加えて、それのgp130との結合を阻害する突然変異も有する。
【0019】
もう1つの局面において、IL-11ムテインは、野生型哺乳動物IL-11のアミノ酸58〜62位での突然変異を有することに加えて、野生型IL-11のアミノ酸147位のトリプトファンが、それのgp130との結合を阻害するように突然変異している。この文脈における「突然変異している」への言及は、アミノ酸の置換、付加および/または欠失を含む。
【0020】
本発明の具体的なIL-11ムテインには、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:4のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:4のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:5のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:5のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:6のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:6のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:8のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:8のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:13のアミノ酸10〜178位またはSEQ ID NO:13のアミノ酸10〜175位を含むIL-11ムテインが含まれる。
【0021】
本発明の他の具体的なIL-11ムテインには、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:9のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:9のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:14のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:14のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:16のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:16のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:17のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:17のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:18のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:18のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:21のアミノ酸10〜178位、またはSEQ ID NO:21のアミノ酸10〜175位を含むIL-11ムテインが含まれる。
【0022】
本発明はまた、本明細書に記載したIL-11ムテインをコードする核酸配列も提供する。
【0023】
もう1つの局面において、本発明は、PEG化されているIL-11ムテインを提供する。
【0024】
もう1つの局面において、本発明は、IL-11媒介性状態の治療のための方法であって、前記対象に対して本発明のIL-11ムテインの有効量を投与する段階を含む方法を想定している。
【0025】
本発明はさらに、IL-11媒介性状態の治療のための医薬の製造における、本発明のIL-11ムテインの使用も対象とする。
【0026】
IL-11媒介性状態には、(a)外因性IL-11またはIL-11アゴニストによる治療を強めることによって便益を受ける、または便益を受ける可能性のある任意の状態、例えば、血小板減少症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、不妊症、ならびに化学療法および/または放射線療法による粘膜障害;ならびに(b)内因性IL-11の活性を低下または阻止するためのIL-11アンタゴニストによる治療によって便益を受ける、または便益を受ける可能性のある任意の状態、例えば、転移性骨悪性腫瘍、骨髄腫、ページェット骨病および骨粗鬆症を含む、全身骨量の減少をもたらす状態、ならびに妊孕性(すなわち、IL-11アンタゴニストを避妊のために用いることもできる)が含まれる。1つの態様において、IL-11ムテインアンタゴニストは、アミノ酸58〜62位でのAMSAGの置換を、gp130との結合を妨害する突然変異とともに含む。後者の一例は、アミノ酸147での突然変異である(例えば、W147突然変異、またはW147AもしくはW147C置換)。
【0027】
本発明は、本発明のIL-11ムテイン、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または添加剤を含む組成物にも及ぶ。
【0028】
(表1)配列識別子の概要

【0029】
アミノ酸の一文字および三文字コードの概要は表2に提示されている。
【0030】
(表2)アミノ酸の略号

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】本発明のヒト、マウスおよびサルIL-11ムテインのアミノ酸配列を開示している。
【図1b】本発明のヒト、マウスおよびサルIL-11ムテインのアミノ酸配列を開示している。
【図1c】本発明のヒト、マウスおよびサルIL-11ムテインのアミノ酸配列を開示している。
【図1d】本発明のヒト、マウスおよびサルIL-11ムテインのアミノ酸配列を開示している。
【図1e】本発明のヒト、マウスおよびサルIL-11ムテインのアミノ酸配列を開示している。
【図1f】本発明のヒト、マウスおよびサルIL-11ムテインのアミノ酸配列を開示している。
【図1g】本発明のヒト、マウスおよびサルIL-11ムテインのアミノ酸配列を開示している。
【0032】
詳細な説明
本明細書で用いる場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈で明らかに別の指示がなされない限り、複数の局面を含む。したがって、例えば、「1つのムテイン(a mutein)」に対する言及は、単一のムテインのほかに、2つまたはそれ以上のムテインを含み;「1つの薬剤(an agent)」に対する言及は、単一の薬剤のほかに、2つまたはそれ以上の薬剤を含み;「本発明」に対する言及は、本発明の単一または複数の局面を含み;その他についても同様である。
【0033】
「IL-11」という用語またはその正式名称である「インターロイキン-11」は、本明細書で用いる場合、マウス(murine)、マカクザル(macaque)およびヒトのものを含む、すべての成熟型の野生型哺乳動物IL-11、ならびに、IL-11活性、すなわちIL-11Rαと結合してgp130と機能性の受容体複合体を形成する能力を保っている、すべての短縮型のそのようなIL-11を含む。成熟ヒトIL-11(SEQ ID NO:1)は178アミノ酸のタンパク質であり(すなわち、NP_000632、NCBIタンパク質データベースアクセッション番号の21アミノ酸のリーダー配列を欠く)、成熟マウスIL-11(SEQ ID NO:2)は178アミノ酸のタンパク質であり(すなわち、NP_032376、NCBIタンパク質データベースアクセッション番号の21アミノ酸のリーダー配列を欠く)、成熟マカクザルIL-11(SEQ ID NO:3)は178アミノ酸のタンパク質である(すなわち、P20808、NCBIタンパク質データベースアクセッション番号の21アミノ酸のリーダー配列を欠く)。
【0034】
「IL-11ムテイン」という用語は、本明細書で用いる場合、野生型タンパク質のアミノ酸配列が、IL-11ムテインアゴニストを作製するためにIL-11Rα鎖に対する強化された結合がもたらされるように、アミノ酸の置換、付加および/もしくは欠失によって変更されている、またはIL-11ムテインアンタゴニストの場合には、アミノ酸配列が、IL-11Rα鎖に対する強化された結合は保ちながら、gp130とのIL-11受容体複合体の形成を阻害することによってIL-11シグナル伝達をアンタゴナイズするために、アミノ酸の置換、付加および/もしくは欠失によってさらに変更されている、IL-11のことを指す。特に、IL-11ムテインは、ヒト、マカクザルまたはマウスのIL-11、より詳細にはヒトIL-11を基にしている。IL-11ムテインを、例えばそれらのインビボ半減期を延長するために、さらに改変することもでき、これには例えばPEG基などの他の要素の結合(attachment)によるものが含まれる。ペプチドのPEG化のための方法は当技術分野で周知である。IL-11ムテインは時にはIL-11突然変異タンパク質と、またはIL-11突然変異体と称されることもある。
【0035】
「IL-11受容体α(IL-11Rα)鎖に対する強化された結合」という表現は、本発明のIL-11ムテインに関して用いる場合、競合ELISAによる判定で、IL-11ムテインが、IL-11Rα鎖に対して、対応する野生型IL-11よりも大きな親和性を呈することを意味する。
【0036】
「アンタゴニスト」、「アゴニスト」および「化合物」という用語は、それぞれ、本明細書において、明細書の全体を通じて記載するIL-11ムテインを指して用いられる。これらの用語はまた、塩を含む、それらの薬学的に許容される形態および薬理活性のある形態も範囲に含む。
【0037】
「有効量」という用語は、本明細書で用いる場合、IL-11シグナル伝達をアンタゴナイズするといった、所望の生理的および/または治療的効果をもたらすのに十分な、IL-11ムテインの量のことを意味する。加えて、効果は、IL-11媒介性状態の症状の緩和であってもよい。所望の生理的および/または治療的な効果とともに、望ましくない作用、例えば副作用が顕在化することが時にある;それ故に、臨床医(practitioner)は、どれが適切な「有効量」であるかを決定する時に、潜在的な便益と潜在的なリスクとを秤に掛ける。必要とされる正確な量は、対象の種、齢および全身状態、投与の様式などに応じて、対象ごとに異なると考えられる。このため、正確な「有効量」を特定することは可能でないように思われる。しかし、任意の個々の症例における適切な「有効量」は、当業者により、定型的な実験を用いて決定されうる。当業者は、必要とされる量を、対象のサイズ、対象の症状の重症度、および選択される具体的な組成物または投与経路といった要因に基づいて決定することができるであろう。
【0038】
本発明の1つの態様がIL-11ムテインの使用に関するものである限り、有効量には、約10μg/kg体重〜20mg/kg体重の抗体、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μg/kg体重、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μg/kg体重、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20mg/kg体重が含まれる。同程度の量が、単剤療法または併用療法のために与えられる。
【0039】
「IL-11によって媒介される状態」または「IL-11媒介性状態」に対する言及は、(a)外因性IL-11またはIL-11アゴニストによる治療を強めることによって便益を受ける、または便益を受ける可能性のある任意の状態、例えば、血小板減少症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、不妊症、ならびに化学療法および/または放射線療法による粘膜障害;ならびに(b)内因性IL-11の活性を低下または阻止するためのIL-11アンタゴニストによる治療によって便益を受ける、または便益を受ける可能性のある任意の状態、例えば、転移性骨悪性腫瘍、骨髄腫、ページェット骨病および骨粗鬆症を含む、全身骨量の減少をもたらす状態、ならびに妊孕性(すなわち、IL-11アンタゴニストを避妊のために用いることもできる)が含まれる。
【0040】
「薬学的に許容される」担体および/または希釈剤は、生物学的にも他の点でも望ましくないのではない材料、すなわち、いかなるまたは実質的な有害反応も引き起こすことなしに、選択されたムテインととも対象に投与することのできる材料で構成される薬学的媒体である。担体および希釈剤には、いずれかおよびすべての、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、張性を調整するために用いられる薬剤、緩衝剤、キレート剤および吸収遅延剤などが含まれうる。
【0041】
同様に、本明細書で提供される化合物の「薬理学的に許容される」塩は、生物学的にも他の点でも望ましくないのではない塩である。
【0042】
「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」という用語は、本明細書で用いる場合、治療的処置のことを指す。例えば、治療は、状態の症状の重症度および/または頻度の低下、状態の症状および/または基礎をなす原因の解消、状態の症状の発生および/またはそれらの基礎をなす原因の防止、ならびに障害の改善または修復または緩和をもたらすことができる。それ故に、治療は、症状の「治癒」ではなくて緩和をもたらしてもよい。加えて、治療は、増悪イベントが起こるまで開始しなくてもよい。この文脈において、「予防」という用語は、起こっている状態に付随するイベントが生じる見込み(likelihood)の防止または治療に対しても適用される。
【0043】
「治療すること」および「治療」という用語は、本明細書で用いる場合、それらの状態に付随する1つまたは複数の症状または特徴の軽減のことも指す。
【0044】
「対象」とは、本明細書で用いる場合、本発明の薬学的組成物および方法によって便益を受けることのできる、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトのことを指す。他の好ましい哺乳動物は実験室試験動物であり、その例にはマウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ネコおよびイヌが含まれる。ここで説明している薬学的組成物および方法によって便益を受けられると考えられる動物の種類に対して何ら限定はない。対象は、ヒトであるか非ヒト動物であるかにかかわらず、対象のほか、個体、罹患体(patient)、動物またはレシピエントと称することができる。本発明の方法は、ヒトの医学および獣医学において用途がある。
【0045】
本明細書には、野生型哺乳動物IL-11の58〜62位にあるアミノ酸配列AMSAG(一文字アミノ酸コードを使用)[SEQ ID NO:23]が、アミノ酸配列PAIDY(SEQ ID NO:24)またはFMQIQ(SEQ ID NO:25)に置き換えられると、IL-11Rα鎖に対する強化された結合性を有するIL-11ムテインが生成されることが示されている。
【0046】
したがって、本発明は、野生型哺乳動物IL-11の58〜62位にあるアミノ酸配列AMSAG(SEQ ID NO:23)が、アミノ酸配列PAIDY(SEQ ID NO:24)またはFMQIQ(SEQ ID NO:25)に置き換えられているIL-11ムテインを提供する。
【0047】
本発明の1つの局面は、野生型ヒトIL-11(SEQ ID NO:1)、マウスIL-11(SEQ ID NO:2)またはマカクザルIL-11(SEQ ID NO:3)の58〜62位にあるアミノ酸配列AMSAGが、アミノ酸配列PAIDY(SEQ ID NO:24)に置き換えられているIL-11ムテインを提供する。
【0048】
本発明のもう1つの局面は、野生型ヒトIL-11(SEQ ID NO:1)、マウスIL-11(SEQ ID NO:2)またはマカクザルIL-11(SEQ ID NO:3)の58〜62位にあるアミノ酸配列AMSAGが、アミノ酸配列FMQIQ(SEQ ID NO:25)に置き換えられているIL-11ムテインを提供する。
【0049】
1つの局面において、本発明のIL-11ムテインは、対応する野生型IL-11の結合親和性よりも、10倍の高さ、より特定的には15倍の高さ、さらにより特定的には20倍の高さである、IL-11Rα鎖に対する結合親和性を有する。
【0050】
IL-11Rα鎖に対する強化された結合性を保つがgp130との結合は阻害する別の突然変異を含めることで、IL-11Rα鎖に対する結合を巡ってIL-11と競合するがgp130とのIL-11受容体複合体は形成しないIL-11ムテインアンタゴニストがもたらされる。
【0051】
したがって、もう1つの局面において、IL-11ムテインは、野生型哺乳動物IL−11のアミノ酸58〜62位での突然変異に加えて、gp130との結合を阻害する別の突然変異も有しうる。
【0052】
野生型マウスIL-11のアミノ酸147位にあるトリプトファン(W)残基のアラニン(A)への突然変異は、結果として生じるIL-11突然変異体のgp130との結合を阻害することが知られている。本明細書では、野生型マウスIL-11のアミノ酸147位にあるトリプトファン残基のシステインへの置換突然変異が、結果として生じるIL-11突然変異体のgp130との結合を阻害することが示されている。「突然変異」に対する言及には、アミノ酸の置換、付加および/または欠失が含まれる。置換突然変異は、トリプトファン(W)からアラニン(A)またはシステイン(C)への変化を表すためには、W147AまたはW147Cとして本明細書では簡便に記述される。
【0053】
したがって、もう1つの局面において、IL-11ムテインは、野生型哺乳動物IL-11のアミノ酸58〜62位での突然変異を有することに加えて、野生型IL-11のアミノ酸147位のトリプトファンが、それのgp130との結合を阻害するように突然変異している。
【0054】
もう1つの局面において、野生型哺乳動物IL-11のアミノ酸147位にあるトリプトファンは、アラニンまたはシステインに突然変異している。
【0055】
もう1つの局面において、IL-11ムテインは、野生型ヒトIL-11(SEQ ID NO:1)、マウスIL-11(SEQ ID NO:2)またはマカクザルIL-11(SEQ ID NO:3)のアミノ酸58〜62位での突然変異に加えて、それのgp130との結合を阻害する別の突然変異も有する。
【0056】
もう1つの局面において、IL-11ムテインは、野生型ヒトIL-11(SEQ ID NO:1)、マウスIL-11(SEQ ID NO:2)またはマカクザルIL-11(SEQ ID NO:3)のアミノ酸58〜62位での突然変異を有することに加えて、野生型哺乳動物IL-11のアミノ酸147位にあるトリプトファン残基が、gp130との結合を阻害するように突然変異している。もう1つの局面において、野生型哺乳動物IL-11のアミノ酸147位にあるトリプトファン残基は、アラニンまたはシステインに突然変異している。
【0057】
本発明者らは、9個までのN末端アミノ酸残基を、活性の喪失を伴うことなしに、マウスIL-11から除去しうることを観察している。Wang et al, Eur J Biochem. 269(1):61-68, 2002は、ヒトIL-11から10個のN末端アミノ酸残基を除去している。Barton et al, J Biol Chem. 274(9):5755-61, 1999は、マウスIL-11のアミノ酸残基13位が、部位II gp130結合部位の一部をなすこと、および置換が活性の喪失を引き起こすことを報告しており、このことは最初の12個までのN末端アミノ酸残基を、著しい活性の喪失を伴うことなしに除去しうることを示唆している。IL-11アゴニストであるIL-11ムテインを記載している米国特許出願第20070190024号は、最初の13個のN末端アミノ酸残基を、活性の喪失を伴うことなしに除去しうることを示唆している。
【0058】
また、ヒトIL-11のC末端から、末尾の3個までの、しかし4個ではない、アミノ酸残基を、活性の喪失を伴うことになしに除去しうることも報告されている(Czupryn et al, 前記、1995)。
【0059】
もう1つの局面において、本発明のIL-11ムテインは、野生型IL-11のアミノ酸58〜62位での突然変異を有することに加えて、対応する野生型IL-11の最初の13個までの、好ましくは最初の12個までのみのN末端アミノ酸残基が欠失している、および/または対応する野生型IL-11の末尾の3個までのC末端アミノ酸残基が欠失している。
【0060】
本発明の具体的なIL-11ムテインには、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:4のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:4のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:5のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:5のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:6のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:6のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:8のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:8のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:13のアミノ酸10〜178位またはSEQ ID NO:13のアミノ酸10〜175位を含むIL-11が含まれる。
【0061】
本発明の他の具体的なIL-11ムテインには、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:9のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:9のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:14のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:14のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:16のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:16のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:17のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:17のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:18のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:18のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:21のアミノ酸10〜178位またはSEQ ID NO:21のアミノ酸10〜175位を含むIL-11ムテインが含まれる。
【0062】
サル(SEQ ID NO:3)およびマウス(SEQ ID NO:2)由来のIL-11は、ヒト配列(SEQ ID NO:1)とかなり高い同一性を示す(それぞれ、ほぼ94%およびほぼ87%の同一性)。これらのすべてのタンパク質は完全な異種間反応性を示し、このことはそれらの三次構造が類似していること、および他の機能上決定的な残基がおそらく保存されていることを指し示している(Czupryn et al, 前記、1995)。異なる種からのIL-11の交差反応性を考慮すれば、IL-11が、ある程度のレベルのアミノ酸変更に耐えてIL-11活性を保つことができることは明白である。したがって、本発明のIL-11ムテインには、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:4のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:4のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:5のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:5のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:6のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:6のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:8のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:8のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:9のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:9のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:13のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:13のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:14のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:14のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:16のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:16のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:17のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:17のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:18のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:18のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:21のアミノ酸10〜178位またはSEQ ID NO:21のアミノ酸10〜175位のもののいずれか1つに対して少なくとも85%同一な、好ましくは少なくとも90%同一な、より好ましくは少なくとも94%同一な配列を含むIL-11ムテインが含まれる。
【0063】
本発明はまた、本明細書に記載したIL-11ムテインをコードする核酸配列も提供する。核酸配列または核酸は、ポリヌクレオチド分子または核酸分子を含む。
【0064】
本発明は、野生型IL-11核酸配列を改変して本発明のIL-11ムテインを作製するために、従来の分子生物学、微生物学および組換えDNAの手法を用いる。これらの手法は当技術分野で周知であり、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y, 1989.;DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985), Ausubel, et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., 1994, Sidhu et al, Methods Enzymol 328.333-363, 2000)およびKunkel et al, Methods Enzymol 204: 1991といった、さまざまな刊行物に記載されている。
【0065】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」という用語は、一本鎖形態、二本鎖形態または他の形態にある、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン;「RNA分子」)もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはデオキシシチジン、「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態、またはホスホロチオエートおよびチオエステルといったそれらの任意のホスホエステル類似体のことを指す。
【0066】
「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」という用語は、DNAまたはRNAなどの核酸中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも称する)のことを指し、2個またはそれ以上のヌクレオチドの任意の鎖のことを意味する。
【0067】
「コード配列」、またはRNA、ポリペプチド、タンパク質もしくは酵素などの発現産物を「コードする」配列という用語は、発現された時に、その産物の産生を結果的にもたらすヌクレオチド配列のことである。
【0068】
「遺伝子」という用語は、1つまたは複数のRNA分子、タンパク質または酵素の全体または一部を含むリボヌクレオチドまたはアミノ酸の特定の配列をコードするか、またはそれに対応するDNA配列のことを意味し、これは、例えばその遺伝子が発現される条件を決定づける、プロモーター配列などの調節性DNA配列を含むこともあれば、または含まないこともある。遺伝子はDNAからRNAに転写されうるが、それはアミノ酸配列に翻訳されることもあれば、または翻訳されないこともある。
【0069】
ヌクレオチド配列の「増幅」という用語は、本明細書で用いる場合、ヌクレオチド配列配列の混合物の内部の特定のヌクレオチド配列の濃度を高めるための、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)の使用を表すことができる。Saiki, et al, Science 239:487, 1988は、PCRの説明を提示している。
【0070】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、ゲノムDNA分子、cDNA分子、または関心対象のmRNA、cDNAもしくは他の核酸をコードするmRNA分子とハイブリダイズしうる、一般に少なくとも10ヌクレオチド、特定的には少なくとも15ヌクレオチド、より特定的には少なくとも20ヌクレオチドの、特に100ヌクレオチドを上回らない核酸のことを指す。オリゴヌクレオチドは、例えば、32P-ヌクレオチド、3H-ヌクレオチド、14C-ヌクレオチド、35S-ヌクレオチド、またはビオチンなどの標識を共有結合させたヌクレオチドの組み入れによって標識することができる。1つの態様において、標識されたオリゴヌクレオチドは、核酸の存在を検出するためのプローブとして用いることができる。もう1つの態様において、オリゴヌクレオチド(その一方または両方を標識しうる)は、遺伝子の全長もしくは断片のクローニングのため、または核酸の存在を検出するための、PCRプライマーとして用いることができる。一般に、オリゴヌクレオチドは、好ましくは核酸合成装置で、合成的に調製される。
【0071】
任意の核酸(例えば、野生型IL-11タンパク質またはIL-11ムテインをコードする核酸)の配列を、化学的シークエンシングまたは酵素的シークエンシングといった当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。DNAの「化学的シークエンシング」は、個々の塩基に対して特異的な反応を用いてDNAをランダムに切断する、Maxam and Gilbertの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74(2): 560-564, 1977)によって行うことができる。DNAの「酵素的シークエンシング」は、Sangerの方法(Sanger et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74(12):5463 5467, 1977)によって行うことができる。
【0072】
本発明の核酸は、天然の調節性(発現制御)配列と隣接させてもよく、または、プロモーター、配列内リボソーム進入部位(IRES)および他のリボソーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、サプレッサー、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5'および3'非コード領域などを含む、異種配列と結合させてもよい。
【0073】
「プロモーター」または「プロモーター配列」とは、細胞内でRNAポリメラーゼと結合して、コード配列の転写を開始させることのできる、DNA調節領域のことである。プロモーター配列は一般に、その3'末端で転写開始部位と境を接しており、5'方向に上流に伸びて、転写を任意のレベルで開始させるために必要な最小限の数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター配列の内部には、転写開始部位のほかに、RNAポリメラーゼの結合を担当するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)も見られる。プロモーターは、エンハンサー配列およびリプレッサー配列を含む他の発現制御配列と、または本発明の核酸と、機能的に結合することができる。遺伝子発現を制御するために用いうるプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第5,385,839号および第5,168,062号)およびSV40初期プロモーター領域(Benoist, et al, Nature 290:304-3 10, 1981)が非限定的に含まれる。
【0074】
コード配列は、細胞内の転写制御配列および翻訳制御配列が、コード配列のRNA、好ましくはmRNAへのRNAポリメラーゼ媒介性転写を導き、続いてそれがトランス-RNAスプライシングを受け(trans-RNA spliced)(それがイントロンを含む場合)、かつ任意で、コード配列によってコードされるタンパク質へと翻訳される場合には、それらの「制御下にある」、それらと「機能的に結合されている」または「作動可能に結合されている」。
【0075】
「発現する」および「発現」という用語は、遺伝子配列、RNA配列またはDNA配列の中の情報が産物に変換されるのを可能にすること、またはそれを引き起こすこと;例えば、ヌクレオチド配列の転写および翻訳に関与する細胞機能を活性化することによってタンパク質を産生させることを意味する。DNA配列は、細胞内で、または細胞によって発現されて、RNA(mRNAなど)またはタンパク質(IL-11ムテインなど)などの「発現産物」を形成する。また、発現産物それ自体を、細胞によって「発現された」ということもできる。
【0076】
「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」という用語は、宿主を形質転換するため、かつ任意で、導入された配列の発現および/または複製を促すために、DNA配列またはRNA配列をそれによって宿主細胞に導入することのできる、媒体(プラスミドなど)のことを意味する。
【0077】
「トランスフェクション」または「形質転換」という用語は、細胞への核酸の導入のことを意味する。これらの用語は、細胞への、IL-11ムテインをコードする核酸の導入を指すこともできる。導入された遺伝子または配列は「クローン」と呼ばれることがある。導入されたDNAまたはRNAを受け取った宿主細胞は「形質転換され」ており、それは「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、宿主細胞と同じ属もしくは種の細胞、または異なる属もしくは種の細胞を含む、任意の源に由来することができる。
【0078】
「宿主細胞」という用語は、細胞による物質の生産のため、例えば、細胞による、遺伝子、DNA配列もしくはRNA配列、タンパク質または酵素の発現または複製のために、選択される、改変される、トランスフェクトされる、形質転換される、増殖される、または何らかの様式で用いられるかもしくは操作される、任意の生物体の任意の細胞のことを意味する。
【0079】
「発現系」という用語は、適した条件下で、ベクターによって運ばれて宿主細胞に導入されるタンパク質または核酸を発現することのできる、宿主細胞および適合性ベクターのことを意味する。一般的な発現系には、大腸菌(E.coli)宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物性の宿主細胞およびベクターが含まれる。
【0080】
本発明は、野生型哺乳動物IL-11のアミノ酸58〜62位に対応するアミノ酸セグメントを変化させる改変を除く、本明細書に記載した配列のIL-11ムテインに対応する、またはそれらをコードする、アミノ酸またはヌクレオチド配列の任意の軽微な改変を想定している。該セグメントは、配列PAIDY(SEQ ID NO:24)またはFMQIQ(SEQ ID NO:25)を有する。特に、本発明は、本発明のIL-11ムテインをコードする核酸の配列保存的変異体を想定している。ポリヌクレオチド配列の「配列保存的変異体」とは、所与のコドン中の1つまたは複数のヌクレオチドの変化が、その位置でコードされるアミノ酸の変更を全くもたらさないもののことである。本発明のIL-11ムテインの機能保存的変異体も、本発明によって想定されている。「機能保存的変異体」とは、タンパク質の中の1つまたは複数のアミノ酸残基が、タンパク質の全体的なコンフォメーションおよび機能を変更することなしに変化しているもののことであり、これには、決して限定的ではないが、アミノ酸の、類似の特性を有するものへの置き換えが含まれる。類似の特性を有するアミノ酸は当技術分野で周知である。例えば、交換可能である可能性のある極性/親水性アミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、トレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる;交換可能である可能性のある非極性/疎水性アミノ酸には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる;交換可能である可能性のある酸性アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ、交換可能である可能性のある塩基性アミノ酸には、ヒスチジン、リジンおよびアルギニンが含まれる。好ましくは、本発明のIL-11ムテインの機能保存的変異体は、20個未満、より好ましくは15個未満、より好ましくは10個未満のアミノ酸の変化を有する。
【0081】
野生型哺乳動物IL-11の58〜62位にあるアミノ酸配列AMSAG(SEQ ID NO:23)がアミノ酸配列PAIDY(SEQ ID NO:24)またはFMQIQ(SEQ ID NO:25)に置き換えられていて、かつ、各々の参照配列の全長にわたって各々の配列間に最大の一致が得られるようにアルゴリズムのパラメーターを選択して、比較をBLASTアルゴリズムによって行った時に、本明細書に記載したアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一な、特定的には少なくとも90%同一な、より特定的には少なくとも94%(例えば、94%、95%、96%、97%、98%、99%)同一なアミノ酸配列を含むIL-11ムテインも、同じく本発明に含まれる。
【0082】
配列同一性とは、比較されている2つの配列のアミノ酸の間での正確な一致のことを指す。
【0083】
BLASTアルゴリズムに関する説明は、以下の参考文献中に見いだすことができ、それらは参照により本明細書に組み入れられる:BLAST ALGORITHMS: Altschul et al, J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990;Altschul et al, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997;Altschul, J. Mol. Biol. 219:555-565, 1991。
【0084】
本発明のIL-11ムテインは、例えば、大腸菌発現系において、組換え的に産生させることができる。形質転換は、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための任意の公知の方法によることができる。哺乳動物細胞への異種ポリヌクレオチドの導入のための方法は当技術分野で周知であり、これには、デキストランを介したトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレンを介したトランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔、およびポリヌクレオチドのリポソーム中への封入、微粒子銃による注入(biolistic injection)、および核内へのDNAの直接微量注入が含まれる。さらに、核酸分子をウイルスベクターによって哺乳動物細胞に導入することもできる。細胞を形質転換する方法は当技術分野で周知である。例えば、米国特許第4,399,216号;第4,912,040号;第4,740,461号および第4,959,455号を参照。
【0085】
1つの局面において、本発明は、本発明のIL-11ムテインの生産のための方法であって、IL-11ムテインをコードする核酸配列を適切なベクター中にクローニングする段階、宿主細胞系をそのベクターによって形質転換する段階、および形質転換された宿主細胞系を本発明の抗体の発現のために適した条件下で培養する段階を含む方法を提供する。
【0086】
宿主細胞系におけるクローニングおよび発現のために利用可能なベクターは当技術分野で周知であり、これには、哺乳動物細胞系におけるクローニングおよび発現のためのベクター、細菌細胞系におけるクローニングおよび発現のためのベクター、ならびに昆虫細胞系でのクローニングおよび発現のためのベクターが非限定的に含まれる。IL-11ムテインは、標準的なタンパク質精製法を用いて回収することができる。
【0087】
もう1つの局面において、本発明は、SEQ ID NO:5〜12に示されたアミノ酸配列を有するIL-11ムテインをコードする核酸配列を提供する。
【0088】
さらにもう1つの局面において、本発明は、本発明のベクターによって形質転換された宿主細胞系を提供する。宿主細胞系には、大腸菌などの細菌細胞、および哺乳動物細胞系が非限定的に含まれる。
【0089】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は当技術分野で周知であり、これには、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系が含まれる。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、およびさまざまな他の細胞系が含まれる。哺乳動物宿主細胞には、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマおよびハムスターの細胞が含まれる。特に好ましい細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有するかを判定することによって選択される。用いうる他の細胞系には、Sf9細胞などの昆虫細胞系、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞および真菌細胞がある。重鎖またはその抗原結合部分、軽鎖および/またはその抗原結合部分をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合には、宿主細胞における抗体の産生、またはより好ましくは宿主細胞が増殖している培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって、抗体を産生させる。
【0090】
IL-11ムテインは、標準的なタンパク質精製法を用いて培地から回収することができる。さらに、産生細胞系からの本発明のIL-11ムテインの発現を、さまざまな公知の手法を用いて増強させることもできる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、ある特定の条件下での発現を増強させるための一般的なアプローチである。GS系については、欧州特許第0 216 846号、第0 256 055号および第0 323 997号ならびに欧州特許出願第89303964.4号に関連して全体または一部が考察されている。
【0091】
異なる細胞系によって、またはトランスジェニック動物において発現されるIL-11ムテインは、互いに異なるグリコシル化を有する可能性が高い。しかし、本明細書で提供した核酸分子によってコードされる、または本明細書で提供したアミノ酸配列を含む、すべてのIL-11ムテインは、IL-11ムテインのグリコシル化にかかわらず、本発明の一部である。
【0092】
1つのさらなる局面において、本発明は、インビボでのそれらの薬物動態特性および半減期を向上させるためにさらに改変された、ヒトまたはマウスのIL-11ムテインを提供する。改変には、ポリエチレングリコールによるPEG化(Clark et al, J Biol Chem. 271(36):21969-77, 1996)、アルブミン(Yeh et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 89(5):1904-8, 1992)またはIgのFc部分(Ashkenazi and Chamow, Curr Opin Immunol. 9(2):195-200, 1997)といった大型の長寿命タンパク質との融合、およびグリコシル化部位の導入(Keyt et al, Proc Natl Acad Sci USA. 91(9):3670-4, 1994)が含まれる。
【0093】
本発明の1つの局面は、PEG化されているIL-11ムテインアンタゴニストを提供する。
【0094】
本発明の1つの局面は、PEG化されている、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:21のアミノ酸10〜178位またはSEQ ID NO:21のアミノ酸10〜175位のアミノ酸配列を有する、IL-11ムテインを提供する。
【0095】
本発明のIL-11ムテインは、薬学的用途のために適した組成物中にある状態で都合良く供給することができる。そのような組成物は、本発明のもう1つの局面である。
【0096】
投与は全身性でも局所性でもよい。全身投与は特に有用である。「全身投与」に対する言及には、関節内、静脈内、腹腔内および皮下注射、輸注、ならびに経口、直腸および鼻経路を介した、または吸入を介した投与が含まれる。
【0097】
全身用途のために適した組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)、滅菌注射液の用時調製のための滅菌粉末、および吸入のための滅菌粉末が含まれる。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適した混合物および植物油を含む、任意の薬学的に許容される担体および/または希釈剤でありうる。適切な流動性は、例えば、界面活性剤の使用によって維持することができる。さまざまな抗菌薬および抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを含めることもできる。多くの場合には、張性を調整するための薬剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含めることが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによって生じさせることができる。
【0098】
滅菌溶液は、適切な溶媒中に、必要な量の活性物質を、任意で、必要に応じて他の有効成分および添加剤とともに組み入れ、その後に滅菌濾過を行うことによって調製される。滅菌粉末の場合には、適した調製の方法には、適切な粒径で作ることのできる、有効成分に任意の別の所望の成分を加えたものの粉末が得られる、真空乾燥および凍結乾燥が含まれる。
【0099】
活性物質が適切に保護されている場合には、それを例えば不活性希釈液または吸収性の可食担体とともに経口投与することもでき、またはそれを硬ゼラチンカプセルもしくは軟ゼラチンカプセル内に封入することもでき、または圧縮して錠剤にすることもできる。経口治療投与のためには、有効成分を添加剤とともに組み入れて、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形で用いることができる。
【0100】
投薬レジメンは、最適な所望の反応(例えば、治療反応)が得られるように調整することができる。例えば、単回ボーラス投与を行ってもよく、時間をかけて数回の分割投与を行ってもよく、または治療状況の緊急度によって指定されるように用量を減量もしくは増量してもよい。投与の容易さおよび投与量の均一性のためには、非経口用組成物を単位投薬剤形として製剤化することが特に有益である。
【0101】
当技術分野における通常の技量を有する医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物中に用いられるアンタゴニストの投薬を、所望の治療効果を達成するために必要なものよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。一般に、本発明の組成物の適した用量は、治療効果を生じさせるために有効な最低用量となる化合物の量であろう。
【0102】
治療適用のためには、本発明のIL-11ムテイン、またはそれらのムテインを含む組成物を、哺乳動物、好ましくはヒトに対して、ボーラスとして静脈内に、またはある期間にわたる持続輸注によってヒトに投与することのできるものを含む、以上で考察したようなものなどの薬学的に許容される剤形で投与する。
【0103】
1つの局面において、本発明は、IL-11によって媒介される状態の治療のための方法であって、前記対象に対して、本発明のIL-11ムテインの有効量を投与する段階を含む方法を想定している。
【0104】
アゴニストである本発明のIL-11ムテイン、およびそのようなムテインを含む組成物は、IL-11が正の作用(positive effect)を発揮するIL-11媒介性状態の治療のために用いることができる。
【0105】
アンタゴニストである本発明のIL-11ムテイン、およびそのようなムテインを含む組成物は、IL-11が負の作用(negative effect)を発揮するIL-11媒介性状態の治療のために用いることができる。
【0106】
本発明のIL-11ムテイン、およびそのようなムテインを含む組成物は、IL-11媒介性状態の治療のための医薬の製造の方法に用いることができる。
【0107】
本発明の特定的なIL-11ムテインアンタゴニストは、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜178位 SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:21のアミノ酸10〜178位またはSEQ ID NO:21のアミノ酸10〜175位のアミノ酸配列を有し、かつPEG化することのできる、IL-11ムテインである。特に、PEG化は、SEQ ID NO 11、12、15、19、20または21の147位に対応するシステイン残基に対する結合を介したものである。
【0108】
本発明はさらに、IL-11媒介性状態の治療のための医薬の製造におけるIL-11ムテインの使用を想定している。
【0109】
本発明をさらに、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0110】
実施例1
IL-11突然変異タンパク質
A.可溶性IL-11突然変異タンパク質の組換え生産
IL-11突然変異体1.21(SEQ ID NO:10)、1B.382(SEQ ID NO:17)およびmIL-11-W147Aを、改変型のpET15bベクター(Novagen Cat #69661-3)中にクローニングした。pET15bベクターは、トロンビン切断部位およびマルチクローニング部位をAscIおよびEcoRI制限部位に置き換えること、ならびにM13複製起点を挿入することによって改変しており、そのためこのベクターはファージミドとして用いることができた。
【0111】
対応するN末端ヘキサヒスチジンタグ付加タンパク質を、大腸菌株BL21-CodonPlus[登録商標](DE3)-RIL大腸菌(Strategene cat # 230245)において発現させた。典型的には、2% v/vグルコースおよび100μg/mLアンピシリンを含むsuperbroth中にある400mLの振盪フラスコ培養物を、光学密度(600nm)が0.5になるまで増殖させた。続いて、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドの最終濃度200uMでの添加によってタンパク質発現を誘導し、培養物を振盪しながら37℃でさらに4時間インキュベートした。組換えタンパク質を、固定化ニッケルイオンアフィニティークロマトグラフィーによって細菌細胞(7M塩酸グアニジニウム中に溶解させた)から精製し、PBS中への透析によってリフォールディングさせた。リフォールディングさせた試料を0.15%トリフルオロ酢酸水溶液に対してさらに透析した。場合によっては、試料を、0.15% v/vトリフルオロ酢酸中でのアセトニトリル勾配を用いた逆相HPLCによっても精製し、その後に凍結乾燥を行った。試料は少量の水で再構成し、その後に緩衝液で希釈した。
【0112】
選択したIL-11突然変異体のIL-11Rαに対する親和性は、競合ELISA実験で決定した。mIL-11Rα-Fcでコーティングした96ウェルプレートを、一定の準飽和量のファージディスプレイさせたIL-11変異体とともに、種々の濃度の可溶性IL-11タンパク質の存在下でインキュベートした。室温での2時間のインキュベーションの後にプレートを洗浄し、続いて、結合したファージを、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた抗M13ポリクローナル抗体で標識した。0.05% Tween 20を含むPBSで洗浄することによって余分な抗体を除去した後に、TMB基質を各ウェルに添加して10分間インキュベートし、その後に2Mリン酸の添加によって反応を停止させた。続いて、マイクロタイタープレートリーダーでの分析により、450nmでの吸光度を各ウェルに関して決定した。
【0113】
W147A突然変異は、IL-11Rα結合に対しては何ら影響を及ぼさないが、IL-11受容体複合体へのgp130の動員は妨げて(Underhill-Day et al, 2003、前記)、それによってIL-11シグナル伝達を妨げる。W147A IL-11は、IL-11のアンタゴニスト性変異体である。
【0114】
IL-11Rα-Fcに対する結合に関する、mIL-11-W147Aおよび突然変異タンパク質の親和性の間には明らかな違いが観察された。W147A IL-11に比して、クローン1.21(SEQ ID NO:10)はIL-11Rαと20倍の高さの親和性で結合し、クローン1B.382(SEQ ID NO:17)もIL-11Rαと20倍の高さの親和性で結合した。
【0115】
B.アンタゴニストのインビトロ活性
突然変異IL-11タンパク質がIL-11生物活性を阻止する能力を調べるために、IL-11応答性Ba/F3細胞系を作製した。通常はIL-11Rαもgp130も発現せず、IL-11に応答して増殖することもない、マウスのプロBリンパ球細胞系であるBa/F3細胞に対して、野生型マウスIL-11Rαおよび補助受容体マウスgp130をコードする構築物を安定的にトランスフェクトし、IL-11を含む培地中での増殖によって選択した。クローン化細胞系を限界希釈クローニングによって導き出した。安定的にトランスフェクトされたさまざまなクローンを、IL-11の存在下で培養した場合のそれらの用量応答性増殖(MTTアッセイを用いて)に関して分析し、1つを以降の検討のために選択した。
【0116】
マウスIL-11Rα/gp130が安定的にトランスフェクトされたIL-11応答性Ba/F3細胞を、10%(v/v)ウシ胎仔血清および種々の濃度の突然変異IL-11タンパク質を、一定の準最大濃度のマウスIL-11(50pM)の存在下で含む、50uLのダルベッコ変法イーグル培地中にある状態で、総容積100uL/ウェルとして、3×104個/ウェルで播いた。48時間のインキュベーションの後に、増殖を、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT;Sigma-Aldrich)を用いて570nmで比色的に測定した。アッセイは常に2回ずつ行い、その後に各アッセイポイントに関する平均値をプロットした。
【0117】
W147A IL-11は以前に、IL-11生物活性のアンタゴニストとして特徴づけられている(Underhill-Day et al, 2003、前記)。IL-11Rα/gp130 Ba/F3細胞を準最大用量のIL-11で刺激したところ、W147A IL-11は細胞増殖を用量依存的な様式で阻害することができた。突然変異IL-11タンパク質のいくつかを、それらがIL-11で誘導される増殖を阻害する能力に関してアッセイして、W147A IL-11と比較した(表4)。突然変異IL-11タンパク質は、標準的なMTTアッセイにおける測定で、IL-11によって誘導される増殖を阻止する効力が有意により高かった。クローン1.21(SEQ ID NO:10)および1B.382(SEQ ID NO:17)はいずれも、W147A IL-11よりも効力が20〜30倍高い、IL-11のアンタゴニストであった。
【0118】
実施例2
PEG化IL-11ムテイン
PEG化IL-11ムテインの生産
マウスIL-11の成熟タンパク質配列は、トロンビンによって切断可能であって、その結果として最初の9個のアミノ酸の除去が起こる、アミノ酸配列を含む。最初の9個のアミノ酸を有するIL-11ムテイン1.21(SEQ ID NO:10)とそれを有しないものとの比較では同一な活性が示され、このことからマウスIL-11の最初の9個の残基はIL-11 Rα結合には必要でないことが指し示された。その内部トロンビン部位を、効率的な切断を可能にするための部位指定突然変異誘発により、残基6および7位の、それぞれLeu(L)およびVal(V)への突然変異によって最適化した。SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜178位のPEG化IL-11ムテインの大規模生産のために、改変mIL-11配列のアミノ末端Hisタグおよび最初の9個の残基をトロンビン消化によって除去した。
【0119】
N末端ヘキサヒスチジンタグの切断のためには、該当するIL-11ムテインタンパク質の凍結乾燥試料をトロンビン切断用緩衝液(150 mM NaCl、2.5 mM CaCl2、20 mM Tris.HCl pH 8.4)中に0.5mg/mLの濃度で再懸濁させて、5単位のトロンビン/mgタンパク質により室温で4時間処理した。これらの条件下で、トロンビンはマウス由来のIL-11ムテインを残基Arg9-Val10の間の最適化された内部部位で効率的に切断し、トロンビンで消化された試料はVal10-Ser11-Ser12というN末端配列を有する。トロンビンによる処理後に、切断された試料を以前に記載された通りに逆相HPLCによって精製した。
【0120】
部位特異的PEG化
小型タンパク質のインビボ使用の制約となるのは、血行からのそれらの迅速な排除である。排除の主な経路の1つは腎臓を通しての濾過を介したものであり、その効率は分子量と反比例する。小型タンパク質のインビボでの排除速度を低下させるための1つの戦略は、ポリエチレングリコールによる化学的改変を通じてのものであるが(Tsutsumi et al, Thjromb. Haemost. 77.1:168-73, 1997)、これは、不適切な部位に結び付いた場合にはタンパク質の活性を低下させ、さらにはそれを消失させてしまう恐れがある。
【0121】
インビボ使用のために突然変異IL-11タンパク質の潜在的な薬物動態特性を改良するために、40kDaのポリエチレングリコール部分による突然変異IL-11タンパク質の部位特異的改変のための戦略をデザインした。IL-11の配列にシステインが存在しないことを利用して、部位特異的突然変異誘発によって単一の一意的なCys残基を147位に導入した。これにより、マレイミド誘導体化PEG試薬によって部位特異的に改変しうる化学反応性側鎖が得られた。さらに、PEG結合の部位はIL-11の表面上の部位IIIに対応しており、突然変異IL-11タンパク質のIL-11Rαとの結合とも、部位II表面と結合するgp130分子との結合とも干渉しないはずである。
【0122】
W147C突然変異および上記の最適化された内部トロンビン部位を含む、改変型の突然変異IL-11タンパク質を作製した。これらのタンパク質を、実施例1に記載した通りに、大腸菌において発現させ、精製して、リフォールディングさせた。続いて、上記の通りに、N末端Hisタグおよび最初の9個のN末端アミノ酸を切断した。トロンビン処理した試料を、実施例1に記載した通りに精製したが、ただし、試料はpH 8.0に調整し、5mM DTTで還元して、その後に2mM EDTAおよび2mM DTTを含むPBS中でリフォールディングさせた。
【0123】
人工的に導入されたCys残基をSEQ ID NO:12の147位に対応する位置に含む突然変異IL-11タンパク質を、続いて、40kDaのマレイミド誘導体化ポリエチレングリコールによって改変した。手短に述べると、凍結乾燥したトロンビン処理後の突然変異IL-11タンパク質を、5mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンを含む1mM酢酸水溶液中に濃度5mg/mLで再懸濁させて、4倍の容積の12.5mg/mL mPEG2-マレイミド(Nektar Therapeutics cat #2D3YOTO1)PBS溶液と混合した。反応物を室温で16時間インキュベートし、続いてタンパク質-PEG結合物を、20mM酢酸ナトリウム、pH 5.5緩衝液中でのNaCl勾配を用いたSP Sepharoseカラムでの陽イオン交換クロマトグラフィーによって非結合成分から分離した。PEG化産物を含む画分をプールし、5mM酢酸アンモニウム緩衝液、pH 5.5に対して透析し、その後に凍結乾燥した。
【0124】
W147C突然変異および最適化された内部トロンビン部位を含む改変型のクローン1.21を、上に記載した通りに、大腸菌において発現させ、精製して、リフォールディングさせた。N末端のHisタグおよび9個のアミノ酸残基の断片をトロンビンで切断し、続いてCys147において部位特異的にPEG化した(Cys147はSEQ ID NO:12の147位に対応する位置である)。余分なPEG試薬をイオン交換クロマトグラフィーによって除去した。PEG化されて短縮された改変型のクローン1.21(本明細書ではΔ1.21と称する)のSDS-PAGEによる分析により、単一の40kDaのPEG部分の結合に対応する、見かけの分子量の推移が示された。
【0125】
Δ1.21の活性をIL-11Rα結合性ELISAおよびBa/F3細胞アッセイで調べ、非PEG化1.21(147位にAlaを含む)および非PEG化W147A IL-11と比較した。どちらのアッセイでも、Δ1.21の活性は非PEG化1.21に比して低かった。IL-11Rα結合親和性はおよそ5分の1に低下しており、一方、Δ1.21がIL-11で誘導されるBa/F3細胞増殖をアンタゴナイズする能力は10分の1の低さであった。PEG化タンパク質では効力の中程度の低下が観察されることが一般的であり、これは多くの場合、タンパク質とその標的受容体との間の結合率の低下に起因する。効力の低下にもかかわらず、Δ1.21はどちらのアッセイにおいても非PEG化W147A IL-11よりも効力が高かった。
【0126】
実施例3
インビボ半減期
雌性C57BL/6Jマウス(8週齡前後および20±2g)を、PEG化ムテイン(Δ1.21)およびPEG化していないトロンビン切断したムテイン1.21(すなわち、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜178位)のインビボ半減期の決定のために用いた。各マウスに1回のIP注射を行った。マウスに対して、トロンビン切断したムテイン1.21を1mg/kgの用量(動物個体当たり20ug)で、または等モル用量のΔ1.21を3.2mg/kg(動物個体当たり64ug)の用量で注射した。IP注射後の適切な時点で、マウスをCO2吸入およびその後の頸椎脱臼によって殺処理し、心臓穿刺によって血液を採取した。37℃での1時間のインキュベーション、および続いて4℃で一晩置くことによって血清を血液から分離させ、その後に遠心によって赤血球をペレット化した。血液は、トロンビン切断したムテイン1.21を注射したマウスからは5分、10分、30分、1時間、2時間および5時間の時点で採取し、Δ1.21を注射したマウスからは10分、1時間、2時間、6時間、24時間、48時間および72時間の時点で採取した。各時点について合計4匹のマウスを用いた。
【0127】
トロンビン切断したムテイン1.21の濃度を、捕捉用ELISAを用いて定量した。手短に述べると、ELISAプレートを2μg/mlのmIL-11Rα-Fc(50μl/ウェル)[R&D systems]でPBS中にて4℃で一晩かけてコーティングし、続いてプレートを、5% w/v脱脂乳(200μl/ウェル)を含むPBSによって室温で2時間かけてブロッキングした。ブロッキングしたプレートを0.05% v/v Tween 20を含むPBSで洗浄した後に、血清試料を1% w/v BSAおよび0.05% v/v Tween 20を含むTris緩衝食塩水(TBS+BT)で系列希釈し、プレートに添加した(100μl/ウェル)。プレートを4℃で一晩インキュベートした。血清中のムテインと、プレート上にコーティングしたmIL-11Rα-Fcとを一晩かけて結合させた後に、0.05% v/v Tween 20を含むPBSでプレートを洗浄し、続いてTBS+BT中にある0.3μg/mlのポリクローナルビオチン化抗mIL-11(50μl/ウェル)[R&D systems, cat#BAF418]とともに室温で2時間インキュベートした。0.05% v/v Tween 20を含むPBS中で洗浄した後に、プレートを、TBS+BT中に1000倍に希釈したストレプトアビジン-HRP(Sigma)[50μl/ウェル]とともに室温で1時間インキュベートした。0.05% v/v Tween 20を含むPBS中で洗浄した後に、TMB基質を各ウェルに添加し(100μl/ウェル)、10分間のインキュベーション後に2Mリン酸(50μL/ウェル)の添加によって反応を停止させ、マイクロタイタープレートリーダーを用いてプレートを波長450nmで読み取った。トロンビン切断したムテイン1.21およびΔ1.21の両方に関して、既知の濃度のタンパク質を用いて標準曲線を作成した。続いて、これらの標準曲線を用いて、血清中に含まれるトロンビン切断したムテイン1.21およびΔ1.21に関するELISAデータをnM値に変換した。
【0128】
ムテインのPEG化は、半減期を明らかに改善した。PEG化されていないトロンビン切断したムテイン1.21の血清中での最大濃度は投与5分後という最も初期の時点で認められ、以後は連続的に低下した。PEG化されていないトロンビン切断したムテイン1.21は、投与5時間後にはごくわずかな量しか血清中に残存せず、半減期は1時間未満であると判断された。これに比較して、Δ1.21の血清中での最大濃度は投与6時間後に認められ、注射72時間後にも依然として測定可能な濃度で存在した。Δ1.21の半減期はおよそ24時間であると判断された。
【0129】
実施例4
PEG化ヒトIL-11ムテイン
PEG化ヒトIL-11ムテインを、SEQ ID NO:11に基づいて調製した。マウスIL-11ムテインに関して上述した一般的アプローチを用いて、これを記載した通りに発現させ、精製して、リフォールディングさせた上で、Cys147(番号付けはSEQ ID NO:11に基づく)において部位特異的にPEG化した。ヒトIL-11は内部トロンビン部位を含まないため、ヒトIL-11配列の最初の9個のアミノ酸ならびにベクター由来のタグ配列は保持されてSEQ ID NO:22のムテインが得られた。
【0130】
SEQ ID NO:22のPEG化ヒトIL-11ムテインは、ELISAおよびBa/F3アッセイのいずれにおいても、上記のPEG化マウスIL-11ムテインΔ1.21と等しい活性を有していた。
【0131】
当業者は、本明細書に記載した本発明に対して、具体的に記載したもの以外に変更および改変を行えることを理解しているであろう。本発明はそのようなあらゆる変更物および改変物を含むことが理解される必要がある。本発明はまた、本明細書において個別的または一括的に言及または指摘されたすべての段階、特徴、組成物および化合物、ならびに前記の段階または特徴の任意の2つまたはそれ以上の任意およびすべての組み合わせも含む。
【0132】
(表3)細胞アッセイデータ

【0133】
参考文献一覧





【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型哺乳動物IL-11の58〜62位のアミノ酸配列AMSAGが、アミノ酸配列PAIDYまたはFMQIQに置き換えられている、IL-11ムテイン。
【請求項2】
アミノ酸配列AMSAGがPAIDYに置き換えられている、請求項1記載のIL-11ムテイン。
【請求項3】
アミノ酸配列AMSAGがFMQIQに置き換えられている、請求項1記載のIL-11ムテイン。
【請求項4】
そのgp130との結合を阻害するかまたは低下させるさらなる突然変異を含む、請求項1または2または3のいずれか一項記載のIL-11ムテイン。
【請求項5】
前記さらなる突然変異が、野生型IL-11のアミノ酸147位におけるトリプトファン(W)のアミノ酸置換である、請求項4記載のIL-11ムテイン。
【請求項6】
前記トリプトファン(W)がアラニン(A)またはシステイン(C)に置換されている、請求項5記載のIL-11ムテイン。
【請求項7】
SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:4のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:4のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:5のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:5のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:6のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:6のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:8のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:8のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:13のアミノ酸10〜178位およびSEQ ID NO:13のアミノ酸10〜175位から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のIL-11ムテイン。
【請求項8】
SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:9のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:9のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:10のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:11のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:12のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:14のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:14のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:15のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:16のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:16のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:17のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:17のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:18のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:18のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:19のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜178位、SEQ ID NO:20のアミノ酸10〜175位、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:21のアミノ酸10〜178位およびSEQ ID NO:21のアミノ酸10〜175位から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のIL-11ムテイン。
【請求項9】
PEG化されている、請求項1または7または8のいずれか一項記載のIL-11ムテイン。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載のIL-11ムテイン、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または添加剤を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項記載のIL-11ムテインの有効量を対象に投与する段階を含む、IL-11媒介性状態を治療するための方法。
【請求項12】
IL-11媒介性状態の治療のための医薬の製造における、請求項1〜9のいずれか一項記載のIL-11ムテインの使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図1g】
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【公表番号】特表2011−501754(P2011−501754A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530226(P2010−530226)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001587
【国際公開番号】WO2009/052588
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【Fターム(参考)】