説明

サイドウォール用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、耐屈曲亀裂性、破壊強度、操縦安定性及び加工性をバランス良く改善できるサイドウォール用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上であるシリカと、軟化点が−20〜20℃である液状レジンとを含有し、上記ゴム成分100質量部に対する前記液状レジンの含有量が3〜40質量部であるサイドウォール用ゴム組成物に関する。
[化1]


(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤの転がり抵抗を低減(転がり抵抗特性を向上)させることにより自動車の低燃費化が行なわれている。例えば、タイヤのトレッドを2層構造(内面層(ベーストレッド)及び表面層(キャップトレッド))とし、ベーストレッドに、優れた低発熱性(低燃費性)を有するゴム組成物が使用されている。しかし、近年、低燃費化への要求が更に強くなり、タイヤにおける占有比率の高いトレッドだけでなく、トレッド以外の部材(例えばサイドウォール)に対しても、より優れた低燃費性が要求されている。
【0003】
サイドウォール用ゴム組成物においては、キャップトレッド用ゴム組成物と異なり、従来から粒子径の大きいカーボンブラックが使用されており、カーボンブラックをシリカに変更しても低燃費性の向上効果はそれほど大きくない。また、低燃費性の向上のためにフィラーの配合量を減らすと、強度が低下して破壊強度や耐屈曲亀裂性が悪化したり、硬度が低下して操縦安定性が悪化するおそれがある。
【0004】
また、シリカをゴム組成物に配合すると、未加硫状態のゴム粘度(ムーニー粘度)が上昇するなど、加工性(混練加工性)についても不利な点がある。加工性を改善する方法として、アロマオイルなどのオイルを添加する方法が知られている。しかし、オイルを添加すると、転がり抵抗が大きくなって低燃費性が悪化したり、硬度が低下して操縦安定性が悪化する傾向があった。したがって、低燃費性、耐屈曲亀裂性、破壊強度、操縦安定性及び加工性をバランス良く改善する方法が望まれていた。
【0005】
特許文献1には、粒子径の異なるシリカを配合し、低燃費性を向上できるゴム組成物が開示されている。また、特許文献2〜5には、インデン系樹脂などのレジン(樹脂)を用いてグリップ性能などを改善することが提案されている。しかし、これらのゴム組成物では、低燃費性、耐屈曲亀裂性、破壊強度、操縦安定性及び加工性をバランス良く改善する点について、未だ改善する余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−101127号公報
【特許文献2】特開2006−124601号公報
【特許文献3】特開2004−137463号公報
【特許文献4】特開2009−7454号公報
【特許文献5】特開2001−240704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、耐屈曲亀裂性、破壊強度、操縦安定性及び加工性をバランス良く改善できるサイドウォール用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上であるシリカと、軟化点が−20〜20℃である液状レジンとを含有し、上記ゴム成分100質量部に対する前記液状レジンの含有量が3〜40質量部であるサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【0009】
上記シリカは、アグリゲートサイズが30nm以上であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、特定値以上のCTAB比表面積及びBET比表面積を有するシリカと、特定の軟化点を有する液状レジンとを配合したサイドウォール用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物をサイドウォールに使用することにより、低燃費性、耐屈曲亀裂性、破壊強度、操縦安定性及び加工性がバランス良く改善された空気入りタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】細孔分布曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴム組成物は、特定の化合物により変性されたブタジエンゴム(変性BR)を含むゴム成分と、特定値以上のCTAB比表面積及びBET比表面積を有するシリカ(微粒子シリカ)と、特定の軟化点を有する液状レジンとを含む。
【0014】
微粒子シリカは従来のシリカと比較して補強性が高いため、微粒子シリカを配合すると、ゴム組成物の強度や硬度が向上し、良好な破壊強度、耐屈曲亀裂性及び操縦安定性が得られる。また、微粒子シリカ及び変性BRの併用により、微粒子シリカの分散性が改善され、上記性能がより向上するとともに、良好な低燃費性も得られる。
【0015】
しかし、微粒子シリカは粒子径が小さく、分散しにくい傾向があるため、微粒子シリカを配合すると、ムーニー粘度が大幅に上昇し、加工性が悪化するおそれがある。また、アロマオイルなどのオイルを配合して加工性を改善すると、低燃費性や操縦安定性が悪化するおそれがある。
【0016】
これに対し、本発明では、オイルの代替品として、特定の軟化点を有する液状レジンを上記成分と併用しているため、低燃費性や操縦安定性を悪化させることなく良好な加工性を確保することができ、これらの性能を高次元でバランス良く改善できる。また、耐屈曲亀裂性も改善できる。
【0017】
本発明のゴム組成物は、上記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム(変性BR)を含む。上記変性BRを含むことにより、微粒子シリカの分散性が改善され、本発明の効果が良好に得られる。
【0018】
上記式(1)で表される化合物において、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。
【0019】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
【0020】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
【0021】
上記シリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0022】
上記アセタール基としては、例えば、−C(RR’)−OR”、−O−C(RR’)−OR”で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基等が挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基等を挙げることができる。
【0023】
、R及びRとしては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。これにより、微粒子シリカの分散性がより改善され、本発明の効果が良好に得られる。
【0024】
上記式(1)で表される化合物において、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。
【0025】
及びRのアルキル基としては、例えば、上記アルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0026】
及びRとしては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1〜2)が好ましく、エチル基がより好ましい。これにより、微粒子シリカの分散性がより改善され、本発明の効果が良好に得られる。
【0027】
n(整数)としては、2〜5が好ましい。これにより、微粒子シリカの分散性がより改善され、本発明の効果が良好に得られる。更には、nは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。nが1以下であると変性反応が阻害される場合があり、nが6以上であると変性剤としての効果が薄れる。
【0028】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、微粒子シリカの分散性がより改善され、本発明の効果が良好に得られるという点から、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0029】
上記変性BRのビニル含量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。ビニル含量が35質量%を超えると、低発熱性が損なわれる傾向がある。ビニル含量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0030】
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ブタジエンゴムと変性剤とを接触させればよく、ブタジエンゴムを重合し、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加する方法、ブタジエンゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0031】
変性されるブタジエンゴム(BR)としては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。
【0032】
ゴム成分100質量%中の変性BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは25質量%以上、最も好ましくは30質量%以上である。5質量%未満であると、微粒子シリカの分散性を十分に改善することができず、低燃費性等の改善効果が期待ほど得られないおそれがある。上記変性BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。70質量%を超えると、破壊強度や耐屈曲亀裂性が十分に得られず、また、加工性が悪化する傾向もある。
【0033】
本発明のゴム組成物に使用される変性BR以外のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムなどが挙げられる。これらのジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、破壊強度、耐屈曲亀裂性及び低燃費性をバランス良く確保できるという理由から、NR及び変性BRの組合せで用いることが好ましい。
【0034】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0035】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。20質量%未満であると、NRを配合することによる破壊強度と低発熱性の向上効果を十分に得られないおそれがある。上記NRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。80質量%を超えると、変性BRの割合が低下し、微粒子シリカの分散性を十分に改善できないおそれがある。
【0036】
本発明では、CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上のシリカ(以下、「微粒子シリカ」ともいう)が使用される。このような微粒子シリカを配合することによって、良好な破壊強度、耐屈曲亀裂性及び操縦安定性が得られる。また、微粒子シリカを変性BR及び特定の軟化点を有する液状レジンと併用することで、微粒子シリカが良好に分散し、上記性能がより向上するとともに、良好な低燃費性及び加工性が得られる。
【0037】
微粒子シリカのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)比表面積は、好ましくは190m/g以上、より好ましくは195m/g以上、更に好ましくは197m/g以上である。CTAB比表面積が180m/g未満であると、破壊強度、耐屈曲亀裂性及び操縦安定性の十分な向上が得られにくくなる傾向がある。該CTAB比表面積は、好ましくは600m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。CTAB比表面積が600m/gを超えると、分散性に劣り、凝集してしまうため、物性が低下する傾向がある。
なお、シリカのCTAB比表面積は、ASTM D3765−92に準拠して測定される。
【0038】
微粒子シリカのBET比表面積は、好ましくは190m/g以上、より好ましくは195m/g以上、更に好ましくは210m/g以上である。BET比表面積が185m/g未満であると、破壊強度、耐屈曲亀裂性及び操縦安定性の十分な向上が得られにくくなる傾向がある。該BET比表面積は、好ましくは600m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは260m/g以下である。BET比表面積が600m/gを超えると、分散性に劣り、凝集してしまうため、物性が低下する傾向がある。
なお、シリカのBET比表面積は、ASTM D3037−81に準じて測定される。
【0039】
微粒子シリカのアグリゲートサイズは、30nm以上、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上、更に好ましくは45nm以上、特に好ましくは50nm以上、最も好ましくは55nm以上である。また、該アグリゲートサイズは、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、更に好ましくは70nm以下、特に好ましくは65nm以下である。このようなアグリゲートサイズを有することにより、良好な分散性を有しながら、優れた補強性、低燃費性、破壊強度、耐屈曲亀裂性及び操縦安定性を与えることができる。
【0040】
アグリゲートサイズは、凝集体径又は最大頻度ストークス相当径とも呼ばれているものであり、複数の一次粒子が連なって構成されるシリカの凝集体を一つの粒子と見なした場合の粒子径に相当するものである。アグリゲートサイズは、例えば、BI−XDC(Brookhaven Instruments Corporation社製)等のディスク遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
【0041】
具体的には、BI−XDCを用いて以下の方法にて測定できる。
3.2gのシリカ及び40mLの脱イオン水を50mLのトールビーカーに添加し、懸濁液を含有するビーカーを氷充填晶析装置内に置く。ビーカーを超音波プローブ(1500ワットの1.9cmVIBRACELL超音波プローブ(バイオブロック社製、最大出力の60%で使用))を使用して懸濁液を8分間砕解し、サンプルを調製する。サンプル15mLをディスクに導入し、撹拌するとともに、固定モード、分析時間120分、密度2.1の条件下で測定する。装置の記録器において、16質量%、50質量%(又は中央値)及び84質量%の通過直径の値、及びモードの値を記録する(累積粒度曲線の導関数は、分布曲線にモードと呼ばれるその最大の横座標を与える)。
【0042】
このディスク遠心沈降式粒度分析法を使用して、シリカを水中に超音波砕解によって分散させた後に、Dwとして表される粒子(凝集体)の重量平均径(アグリゲートサイズ)を測定できる。分析(120分間の沈降)後に、粒度の重量分布を粒度分布測定装置によって算出する。Dwとして表される粒度の重量平均径は、以下の式によって算出される。
【数1】

(式中、miは、Diのクラスにおける粒子の全質量である)
【0043】
微粒子シリカの平均一次粒子径は、好ましくは25nm以下、より好ましくは22nm以下、更に好ましくは17nm以下、特に好ましくは14nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは7nm以上である。このような小さい平均一次粒子径を有しているものの、上記のアグリゲートサイズを有するカーボンブラックのような構造により、シリカの分散性をより改善でき、補強性、低燃費性、破壊強度、耐屈曲亀裂性及び操縦安定性を更に改善できる。なお、微粒子シリカの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0044】
微粒子シリカのD50は、好ましくは7.0μm以下、より好ましくは5.5μm以下、更に好ましくは4.5μm以下である。7.0μmを超えると、シリカの分散性がかえって悪くなっていることを示す。該微粒子シリカのD50は、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは2.5μm以上、更に好ましくは3.0μm以上である。2.0μm未満であると、アグリゲートサイズも小さくなり、微粒子シリカとしては十分な分散性を得にくくなる傾向がある。ここで、D50は、微粒子シリカの中央直径であって粒子の50質量%がその中央直径よりも小さい。
【0045】
また、微粒子シリカは、粒子径が18μmより大きいものの割合が6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。これにより、シリカの良好な分散性が得られ、所望の性能が得られる。なお、微粒子シリカのD50、所定の粒子径を有するシリカの割合は、以下の方法により測定される。
【0046】
凝集体の凝集を予め超音波砕解されたシリカの懸濁液について、粒度測定(レーザー回折を使用)を実施することによって評価する。この方法では、シリカの砕解性(0.1〜数10ミクロンのシリカの砕解)が測定される。超音波砕解を、19mmの直径のプローブを装備したバイオブロック社製VIBRACELL音波発生器(600W)(最大出力の80%で使用)を使用して行う。粒度測定は、モールバーンマスターサイザ−2000粒度分析器でのレーザー回折によって行う。
【0047】
具体的には、以下の方法により測定される。1グラムのシリカをピルボックス(高さ6cm及び直径4cm)中で秤量し、脱イオン水を添加して質量を50グラムにし、2%のシリカを含有する水性懸濁液(これは2分間の磁気撹拌によって均質化される)を調製する。次いで、超音波砕解を420秒間実施し、更に、均質化された懸濁液の全てが粒度分析器の容器に導入された後に、粒度測定を行う。
【0048】
微粒子シリカの細孔容積の細孔分布幅Wは、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.3以上、最も好ましくは1.5以上である。また、該細孔分布幅Wは、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.0以下、最も好ましくは2.0以下である。このようなブロードなポーラスの分布により、シリカの分散性を改善でき、所望の性能が得られる。なお、シリカの細孔容積の細孔分布幅Wは、以下の方法により測定できる。
【0049】
微粒子シリカの細孔容積は、水銀ポロシメトリーによって測定される。シリカのサンプルをオーブン中で200℃で2時間予備乾燥させ、次いでオーブンから取り出した後、5分以内に試験容器内に置き、真空にする。細孔直径(AUTOPORE III 9420粉体工学用ポロシメーター)は、ウォッシュバーンの式によって140°の接触角及び484ダイン/cm(又はN/m)の表面張力γで算出される。
【0050】
細孔分布幅Wは、細孔直径(nm)及び細孔容量(mL/g)の関数で示される図1のような細孔分布曲線によって求めることができる。即ち、細孔容量のピーク値Ys(mL/g)を与える直径Xs(nm)の値を記録し、次いで、Y=Ys/2の直線をプロットし、この直線が細孔分布曲線と交差する点a及びbを求める。そして、点a及びbの横座標(nm)をそれぞれXa及びXbとしたとき(Xa>Xb)、細孔分布幅Wは、(Xa−Xb)/Xsに相当する。
【0051】
微粒子シリカの細孔分布曲線中の細孔容量のピーク値Ysを与える直径Xs(nm)は、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、更に好ましくは18nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、また、好ましくは60nm以下、より好ましくは35nm以下、更に好ましくは28nm以下、特に好ましくは25nm以下である。上記範囲内であれば、分散性と補強性に優れた微粒子シリカを得ることができる。
【0052】
上記微粒子シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは25質量部以上、最も好ましくは30質量部以上である。10質量部未満であると、十分な補強性、低燃費性、破壊強度、耐屈曲亀裂性及び操縦安定性が得られないおそれがある。該微粒子シリカの配合量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、特に好ましくは55質量部以下、最も好ましくは50質量部以下である。100質量部を超えると、加工性が悪化するとともに、良好な分散性を確保することが困難になるおそれがある。
【0053】
本発明のゴム組成物では、上記微粒子シリカ以外のシリカ(通常のシリカ)を含んでもよい。この場合、シリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上、特に好ましくは40質量部以上である。また、該合計含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下、最も好ましくは60質量部以下であり、50質量部以下であってもよい。下限未満の場合や上限を超える場合は、前述の微粒子シリカの配合量と同様の傾向がある。
【0054】
本発明のゴム組成物では、更にシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤を配合することにより、転がり抵抗の低減(低燃費性の向上)と、加工性の改良を同時に達成できる。シランカップリング剤としては、従来公知のシランカップリング剤を用いることができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系;などを挙げることができる。なかでも、加工性が良好である点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
シランカップリング剤の含有量は、シリカの合計含有量100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上、特に好ましくは8質量部以上、最も好ましくは10質量部以上である。2質量部未満では、転がり抵抗の低減効果(低燃費性の向上効果)が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。15質量部を超えると、高価なシランカップリング剤を配合した量に見合った転がり抵抗の低減効果(低燃費性の向上効果)が得られないおそれがある。
【0056】
本発明のゴム組成物は、特定の軟化点を有する液状レジンを含有する。上記液状レジンをオイルの代替品として用いることで、低燃費性や操縦安定性を悪化させることなく良好な加工性を確保することができ、これらの性能を高次元でバランス良く改善できる。また、耐屈曲亀裂性も改善できる。この効果は、上記液状レジンのゴム成分との相溶性と、上記液状レジンの粘度特性とに起因して、微粒子シリカの分散性が改善されたためであると考えられる。
【0057】
上記液状レジンとしては、例えば、液状クマロンインデン樹脂、液状インデン樹脂、液状α−メチルスチレン樹脂、液状ビニルトルエン樹脂、液状ポリイソペンタン樹脂などの液状の石油系又は石炭系樹脂などが挙げられる。なかでも、液状クマロンインデン樹脂、液状インデン樹脂、液状α−メチルスチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、液状クマロンインデン樹脂がより好ましい。
【0058】
上記液状レジンの軟化点は、−20℃以上、好ましくは−5℃以上、よリ好ましくは0℃以上である。−20℃未満であると、液状レジンの粘度が低くなり過ぎて、ゴム成分との混練性が悪化する傾向がある。また、上記液状レジンの軟化点は、20℃以下、好ましくは18℃以下、より好ましくは17℃以下である。20℃を超えると、上記液状レジンの発熱性が上昇し、低燃費性が悪化する傾向がある。なお、本明細書において、軟化点とは、JIS K6220に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0059】
上記液状レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。3質量部未満では、加工性や耐屈曲亀裂性を充分に改善できないおそれがある。また、上記液状レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以下、好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは18質量部以下、特に好ましくは12質量部以下である。40質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0060】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー、カーボンブラック等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0061】
上記液状レジンは、ゴム組成物を軟化する作用を有している。したがって、上記液状レジンを用いることで、ゴム組成物中のオイルの含有量を少なくして、低燃費性や操縦安定性をより改善できる。
【0062】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下、最も好ましくは0質量部(含有しない)である。
【0063】
本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤのサイドウォールに使用することができる。
【0064】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、前記各成分をバンバリーミキサー、オープンロール等のゴム混練装置を用いて混練する方法が挙げられる。
【0065】
本発明のゴム組成物を用い、通常の方法で本発明の空気入りタイヤを製造することができる。すなわち、前記ゴム組成物を用いてサイドウォールを作製し、他の部材とともに貼り合わせ、タイヤ成型機上にて加熱加圧することにより製造できる。
【0066】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック、バス等に用いることができる。
【実施例】
【0067】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0068】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
BR1:宇部興産(株)製のBR130B(シス含量:96質量%、非変性)
BR2:住友化学(株)製の変性ブタジエンゴム(変性BR)(ビニル含量:15質量%、R、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3の化合物により変性)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN550(NSA:42m/g)
シリカ1:Rhodia社製のZeosil 1115MP(CTAB比表面積:105m/g、BET比表面積:115m/g、平均一次粒子径:25nm、アグリゲートサイズ:92nm、細孔分布幅W:0.63、細孔分布曲線中の細孔容量ピーク値を与える直径Xs:60.3nm)
シリカ2:Rhodia社製のZeosil Premium200MP(CTAB比表面積:200m/g、BET比表面積:220m/g、平均一次粒子径:10nm、アグリゲートサイズ:65nm、D50:4.2μm、18μmを超える粒子の割合:1.0質量%、細孔分布幅W:1.57、細孔分布曲線中の細孔容量ピーク値を与える直径Xs:21.9nm)
シリカ3:Rhodia社製のZeosil HRS1200MP(CTAB比表面積:195m/g、BET比表面積:200m/g、平均一次粒子径:15nm、アグリゲートサイズ:40nm、D50:6.5μm、18μmを超える粒子の割合:5.0質量%、細孔分布幅W:0.40、細孔分布曲線中の細孔容量ピーク値を与える直径Xs:18.8nm)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
プロセスオイル:ジャパンエナジー社製のプロセスX−140(アロマオイル)
固体レジン:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C90(クマロンインデン樹脂、軟化点:85〜95℃)
液状レジン1:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:5〜15℃)
液状レジン2:Rutgers Chemicals社製のNOVARES TL10(α−メチルスチレン及びインデンを主成分とする液状レジン、軟化点:5〜15℃)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製の椿
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0069】
実施例1〜6及び比較例1〜5
表1に示す配合内容に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、50℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。また、得られた未加硫ゴム組成物をサイドウォール形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で12分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0070】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴムシート、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1に示す。
【0071】
(1)ムーニー粘度
JIS K6300に準じて、130℃で所定の未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を測定した。測定結果を、比較例1を100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど粘度が低く、加工が容易である(加工性に優れる)ことを示す。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
【0072】
(2)転がり抵抗
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み1096、動歪み2%の条件下で、各配合の加硫ゴムシートのtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗特性(低燃費性)が優れている。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0073】
(3)破壊強度
加硫ゴムシートについて、JIS K6251に準じて3号ダンベルを用いて引張り試験を実施し、破断強度(TB)を破断時伸び(EB)(%)を測定した。TB×EB/2の数値を破壊強度とした。比較例1の破壊強度を100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど破壊強度に優れる。
(破壊強度指数)=(各配合の破壊強度)/(比較例1の破壊強度)×100
【0074】
(4)操縦安定性
試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着してテストコースを実車走行し、ドライバーの官能評価により操縦安定性を評価した。その際に、10点を満点とし、比較例1の操縦安定性を6点としてそれぞれ相対評価を行った。数値が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
【0075】
(5)耐屈曲亀裂性
加硫ゴムシートを用い、JIS K6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−デマッチャ屈曲亀裂試験方法」に基づいてサンプルを作製し、屈曲亀裂成長試験を行い、70%伸張を100万回繰り返してサンプルを屈曲させた後、発生した亀裂の長さを測定した。そして、比較例1の測定値(長さ)を100とし、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、亀裂の成長が抑制され、耐屈曲亀裂性に優れることを示す。
(耐屈曲亀裂性指数)=(比較例1の測定値)/(各配合の測定値)×100
【0076】
【表1】

【0077】
表1より、フィラーとしてカーボンブラックのみを配合した比較例1では、低燃費性、耐屈曲亀裂性、破壊強度、操縦安定性及び加工性を高い次元でバランスよく得られなかった。
通常のシリカ(微粒子シリカ以外のシリカ)を配合した比較例2では、破壊強度、操縦安定性が大幅に低下し、加工性及び耐屈曲亀裂性も劣っていた。
微粒子シリカを配合したものの、変性BR及び液状レジンを配合しなかった比較例3では、加工性、低燃費性及び操縦安定性を高い次元でバランスよく得られなかった。
変性BRと微粒子シリカを配合したものの、液状レジンを配合しなかった比較例4では、加工性及び耐屈曲亀裂性が劣っていた。
アロマオイルの代わりに固体レジンを配合した比較例5では低燃費性が大幅に悪化した。また、加工性及び耐屈曲亀裂性も劣っていた。
【0078】
一方、変性BRと、特定値以上のCTAB比表面積及びBET比表面積を有するシリカ(微粒子シリカ)と、特定の軟化点を有する液状レジンとを併用した実施例では、低燃費性、耐屈曲亀裂性、破壊強度、操縦安定性及び加工性がバランス良く改善された。
【0079】
また、実施例1、2及び比較例4の比較により、液状レジンを用いることで、アロマオイルを用いるよりも良好な加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂性が得られることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上であるシリカと、軟化点が−20〜20℃である液状レジンとを含有し、
前記ゴム成分100質量部に対する前記液状レジンの含有量が3〜40質量部であるサイドウォール用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【請求項2】
シリカは、アグリゲートサイズが30nm以上である請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴム組成物を用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236368(P2011−236368A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110538(P2010−110538)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】