説明

サイドメンバ構造

【課題】サイドメンバに斜め方向に荷重が入力されても、十分に衝撃を吸収することができるサイドメンバ構造を提供する。
【解決手段】サイドメンバ1には、サイドメンバ1の長手方向に対して垂直方向に延びる複数の折れ線溝4〜6が形成されている。折れ線溝4〜6は、サイドメンバ1に荷重が入力されたときにサイドメンバ1を折れ変形させるための断面V字状の溝である。また、サイドメンバ1には、サイドメンバ1の長手方向に沿って波状に延びる複数の折れ線溝7が形成されている。各折れ線溝7は、サイドメンバ1に荷重が入力されたときに折れ線溝4〜6による折れ変形とは異なる方向にサイドメンバ1を折れ変形させるための断面V字状の溝である。各折れ線溝7は、サイドメンバ1の長手方向に対して斜め方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に設置されるサイドメンバ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサイドメンバ構造としては、例えば特許文献1に記載されているように、サイドメンバの長手方向に対して垂直方向に延びる凹ビードをサイドメンバに複数段設けたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−136660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、サイドメンバにその長手方向に荷重が入力されると、凹ビードによってサイドメンバが蛇腹状に変形するため、衝撃を吸収することができる。しかし、サイドメンバに斜め方向に荷重が入力されたときは、荷重が入力された面部側の圧縮が促進され、サイドメンバが長手方向に均一に変形されないため、十分な衝撃吸収効果を上げることが困難である。
【0005】
本発明の目的は、サイドメンバに斜め方向に荷重が入力されても、十分に衝撃を吸収することができるサイドメンバ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のサイドメンバ構造は、サイドメンバの長手方向に対して垂直方向に延びるようにサイドメンバに設けられ、サイドメンバに荷重が入力されたときにサイドメンバを折れ変形させるための複数の第1折れ線部と、サイドメンバの長手方向に対して斜め方向に延びるようにサイドメンバに設けられ、サイドメンバに荷重が入力されたときに第1折れ線部による折れ変形とは異なる方向にサイドメンバを折れ変形させるための第2折れ線部とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明のサイドメンバ構造においては、サイドメンバにその長手方向に荷重が入力されると、サイドメンバの長手方向に対して垂直方向に延びる第1折れ線部に沿ってサイドメンバが折り畳まれて変形する。一方、サイドメンバに斜め方向に荷重が入力されると、サイドメンバの長手方向に対して斜め方向に延びる第2折れ線部に沿ってサイドメンバが折り畳まれて変形する。このため、サイドメンバに斜め方向に荷重が入力されても、サイドメンバにその長手方向に荷重が入力される場合と同様に、サイドメンバの潰れ方が安定するため、十分に衝撃を吸収することができる。
【0008】
好ましくは、第1折れ線部及び第2折れ線部は、サイドメンバの外壁面または内壁面に形成された凹状溝である。第1折れ線部及び第2折れ線部を凹状溝とすることにより、第1折れ線部及び第2折れ線部に沿ってサイドメンバを折り畳みやすくなると共に、第1折れ線部及び第2折れ線部を容易に形成することができる。
【0009】
また、好ましくは、第2折れ線部は、サイドメンバの長手方向に沿って波状に形成されている。この場合には、サイドメンバに斜め方向に荷重が入力されたときに、波状の第2折れ線部に沿ってサイドメンバが折り畳まれて変形するため、サイドメンバの潰れ方がより安定するようになる。
【0010】
また、本発明のサイドメンバ構造は、サイドメンバの前端部にサイドメンバの長手方向からの荷重が入力されたときに、サイドメンバを折れ変形させるための複数の第1折れ線部と、サイドメンバの前端部にサイドメンバの長手方向に対して斜め方向からの荷重が入力されたときに、サイドメンバを折れ変形させるための第2折れ線部とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
このような本発明のサイドメンバ構造においては、サイドメンバの前端部にサイドメンバの長手方向からの荷重が入力されると、第1折れ線部に沿ってサイドメンバが折り畳まれて変形する。一方、サイドメンバの前端部にサイドメンバの長手方向に対して斜め方向からの荷重が入力されると、第2折れ線部に沿ってサイドメンバが折り畳まれて変形する。このため、サイドメンバに斜め方向に荷重が入力されても、サイドメンバにその長手方向に荷重が入力される場合と同様に、サイドメンバの潰れ方が安定するため、十分に衝撃を吸収することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サイドメンバに斜め方向に荷重が入力されても、サイドメンバにその長手方向に荷重が入力される場合と同様に、十分に衝撃を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わるサイドメンバ構造の一実施形態の概観を示す斜視図である。
【図2】図1に示したサイドメンバの外壁面及び内壁面の展開図である。
【図3】比較例として従来一般のサイドメンバ構造の概観を示す斜視図である。
【図4】図1に示した折れ線溝が形成されたサイドメンバの変形方向を示す断面図である。
【図5】サイドメンバがアコーディオン状に折り畳まれるときの展開図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係わるサイドメンバ構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わるサイドメンバ構造の一実施形態の概観を示す斜視図である。同図において、本実施形態のサイドメンバ構造は、車体の左右両側に前後方向に延びるように配置されるフロントサイドメンバの構造である。なお、以下の説明では、フロントサイドメンバを単にサイドメンバという。
【0016】
サイドメンバ1は、断面矩形状を有する筒状体である。サイドメンバ1は、1対の外壁面2a及び1対の外壁面2bと、1対の内壁面3a及び1対の内壁面3bとを有している。各内壁面3aは互いに対向し、各内壁面3bは互いに対向している。各外壁面2aは、各内壁面3aの反対側の面であり、各外壁面2bは、各内壁面3bの反対側の面である。
【0017】
図2(a)は、外壁面2a,2bの展開図であり、図2(b)は、内壁面3a,3bの展開図である。図1及び図2において、各外壁面2aには、サイドメンバ1の長手方向に対して垂直方向に延びる複数の折れ線溝4がそれぞれ形成されている。折れ線溝4は、サイドメンバ1に荷重が入力されたときにサイドメンバ1を折れ変形させるための断面V字状の溝(図4参照)である。各折れ線溝4は、等間隔に配置されている。
【0018】
各外壁面2bには、サイドメンバ1の長手方向に対して垂直方向に延びる複数の折れ線溝5がそれぞれ形成されている。折れ線溝5は、サイドメンバ1に荷重が入力されたときにサイドメンバ1を折れ変形させるための断面V字状の溝である。各折れ線溝5は、折れ線溝4と繋がるように、各折れ線溝4の1つおきに等間隔に配置されている。
【0019】
各内壁面3bには、サイドメンバ1の長手方向に対して垂直方向に延びる複数の折れ線溝6がそれぞれ形成されている。折れ線溝6は、サイドメンバ1に荷重が入力されたときにサイドメンバ1を折れ変形させるための断面V字状の溝である。各折れ線溝6は、隣り合う各折れ線溝5の中央に対応する位置に形成されている。つまり、各折れ線溝6は、各折れ線溝4の1つおきに等間隔に配置されている。
【0020】
各内壁面3aには、サイドメンバ1の長手方向に沿って波状に延びる2つの折れ線溝7がそれぞれ形成されている。各折れ線溝7は、サイドメンバ1に荷重が入力されたときに折れ線溝4〜6による折れ変形とは異なる方向にサイドメンバ1を折れ変形させるための断面V字状の溝である。
【0021】
各折れ線溝7は、サイドメンバ1の長手方向に対して斜め方向に延びている。具体的には、各折れ線溝7は、内壁面3aの縁(サイドメンバ1の内隅)から内壁面3aの中央側に向かって、サイドメンバ1の長手方向に対して45度の角度で延びている。このとき、波状の折れ線溝7の変曲部(山及び谷)の位置は、各折れ線溝4の位置に対応している。
【0022】
図3は、比較例として従来一般のサイドメンバ構造の概観を示す斜視図である。図3において、サイドメンバ10には、上記の折れ線溝4〜7は形成されていない。
【0023】
サイドメンバ10の前端にサイドメンバ10の長手方向からの荷重F1が入力されたときは、サイドメンバ10が長手方向に変形(軸圧縮)する。しかし、サイドメンバ10の前端に、サイドメンバ10の長手方向に対して斜め方向からの荷重F2が入力されたときは、サイドメンバ10が単に斜め方向に押し潰されるだけであるため、入力荷重F2に対するサイドメンバ10の変形具合が安定しない。
【0024】
これに対し本実施形態では、サイドメンバ1の長手方向に対して垂直方向に延びる折れ線溝4〜6をサイドメンバ1に複数ずつ形成すると共に、サイドメンバ1の長手方向に対して斜め方向に延びる波状の折れ線溝7をサイドメンバ1に複数形成したので、以下のような作用効果が得られる。
【0025】
即ち、サイドメンバ1の前端にサイドメンバ1の長手方向からの荷重F1が入力されたときは、折れ線溝4〜7に沿ってサイドメンバ1が折り畳まれて変形する。このとき、サイドメンバ1は、図4に示すように、折れ線溝4〜7の底を起点として折れ線溝4〜7の開口側に折り畳まれる。従って、サイドメンバ1は、結果的にアコーディオン状に圧縮するようになる。
【0026】
一方、サイドメンバ1の前端に、サイドメンバ1の長手方向に対して斜め方向からの荷重F2が入力されたときは、まず折れ線溝7に沿ってサイドメンバ1が折り畳まれて変形する。そして、サイドメンバ1は、更に折れ線溝4〜7に沿って折り畳まれて変形するため、結果的にアコーディオン状に圧縮するようになる。
【0027】
このように入力荷重が作用する方向に関わらず、サイドメンバ1はアコーディオン状に座屈変形するため、サイドメンバ1の変形具合が安定化し、十分に衝撃を吸収することができる。
【0028】
ここで、サイドメンバ1がアコーディオン状に折り畳まれるときの展開図を図5(a)に示し、図5(a)のA−A断面図及びB−B断面図をそれぞれ図5(b),(c)に示す。サイドメンバ1の変形前の寸法b,dと変形後の寸法b’,d’との間には、次のような関係がある。なお、λは、座屈波長である。
b’=b−λ
d’=d−λ
【0029】
サイドメンバ1がアコーディオン状に折り畳まれるには、変形後の寸法b’,d’が負になってはならない。
【0030】
また、サイドメンバ1の長手方向に対して垂直方向に延びる折れ線溝4〜6のみをサイドメンバ1に形成した場合には、サイドメンバ1の前端にサイドメンバ1の長手方向からの荷重F1が入力されたときに、サイドメンバ1が蛇腹状に圧潰するようになる。このため、サイドメンバ1の折れにより生じる余肉がそのまま残ってしまう。
【0031】
本実施形態では、サイドメンバ1の長手方向に対して斜め方向に延びる折れ線溝7がサイドメンバ1に形成されていることで、上記のようにサイドメンバ1がアコーディオン状に圧潰するので、サイドメンバ1の折れによる余肉が生じにくくなる。これにより、サイドメンバ1の変形が良好に行われるため、サイドメンバ1の変形具合を更に安定化させることができる。
【0032】
さらに、折れ線溝4,5はサイドメンバ1の外壁面2a,2bにそれぞれ形成され、折れ線溝6,7はサイドメンバ1の内壁面3b,3aにそれぞれ形成されているので、サイドメンバ1の折り畳み方向をバランス良くコントロールすることができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、サイドメンバ1の長手方向に対する折れ線溝7の傾斜角度を45度としたが、折れ線溝7の傾斜角度としては、特に45度には限られない。例えば、左右反対側のサイドメンバ1への荷重入力に対応するために、サイドメンバ1の長手方向(車体の前後方向)に対するサイドメンバ1の前端と車体前部のバンパの車幅方向中心とを結ぶ線の角度を、折れ線溝7の傾斜角度に設定しても良い。
【0034】
また、上記実施形態では、折れ線溝4,5をサイドメンバ1の外壁面2a,2bにそれぞれ形成し、折れ線溝6,7をサイドメンバ1の内壁面3b,3aにそれぞれ形成したが、サイドメンバ1の長手方向に対して垂直方向に延びる折れ線溝をサイドメンバ1の内壁面及び外壁面のいずれか一方のみに形成し、同様にサイドメンバ1の長手方向に対して斜め方向に延びる折れ線溝をサイドメンバ1の内壁面及び外壁面のいずれか一方のみに形成しても良い。
【0035】
さらに、上記実施形態では、サイドメンバ1に荷重が入力されたときにサイドメンバ1を折れ変形させるために、サイドメンバ1に折れ線溝4〜7を形成したが、サイドメンバ1を折れ変形させるための構造としては、特に凹状の溝には限られない。例えば、凸状のビードをサイドメンバ1に設けることで、サイドメンバ1に厚みが異なる領域(厚い領域と薄い領域)を形成しても良い。また、複数の小孔をサイドメンバ1に直列に形成したり、サイドメンバ1に切り欠きを形成したり、或いは焼き入れによりサイドメンバ1の硬度を部分的に変化させても良い。要は、サイドメンバ1を折れ変形させやすい構造であれば良い。
【符号の説明】
【0036】
1…サイドメンバ、2a,2b…外壁面、3a,3b…内壁面、4〜6…折れ線溝(第1折れ線部)、7…折れ線溝(第2折れ線部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドメンバの長手方向に対して垂直方向に延びるように前記サイドメンバに設けられ、前記サイドメンバに荷重が入力されたときに前記サイドメンバを折れ変形させるための複数の第1折れ線部と、
前記サイドメンバの長手方向に対して斜め方向に延びるように前記サイドメンバに設けられ、前記サイドメンバに荷重が入力されたときに前記第1折れ線部による折れ変形とは異なる方向に前記サイドメンバを折れ変形させるための第2折れ線部とを備えることを特徴とするサイドメンバ構造。
【請求項2】
前記第1折れ線部及び前記第2折れ線部は、前記サイドメンバの外壁面または内壁面に形成された凹状溝であることを特徴とする請求項1記載のサイドメンバ構造。
【請求項3】
前記第2折れ線部は、前記サイドメンバの長手方向に沿って波状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のサイドメンバ構造。
【請求項4】
サイドメンバの前端部に前記サイドメンバの長手方向からの荷重が入力されたときに、前記サイドメンバを折れ変形させるための複数の第1折れ線部と、
前記サイドメンバの前端部に前記サイドメンバの長手方向に対して斜め方向からの荷重が入力されたときに、前記サイドメンバを折れ変形させるための第2折れ線部とを備えることを特徴とするサイドメンバ構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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