説明

ササ抽出物、および該抽出物の使用

【課題】本発明の目的はこれまでササ抽出物の成分としては着目されていなかった化合物の抽出量を考慮し、それらを効率よく得られる製造方法を提供し、もって、広汎な薬理作用に優れたササ抽出物を提供することにある。
【解決手段】乾燥させたササの葉および/または稈と水とを100:50〜100:150の重量混合比の下、蒸煮温度170超250℃以下で蒸煮したのち、水性溶媒で抽出してなり、抽出液の加熱残分を50重量%に調整したときの3−ヒドロキシピリジンを1.0mg/g以上含有することを特徴とするササ抽出物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌剤、抗ウィルス剤、抗腫瘍剤、抗変異原性剤、抗炎症剤として有用なササ抽出物、および該抽出物の製造方法に関する。本発明のササエキスは、ササの葉および/または稈と水を100:50〜150の重量混合比で蒸煮することによって特定の成分を効率よく抽出することができる。
【背景技術】
【0002】
ササ類には古くから薬効が認められており、ササ抽出物にも抗炎症・抗潰瘍、血圧降下作用、抗腫瘍等の薬理作用が数多く報告されている(J.Hokkaido For.Prod.Res.Inst.Vol.9,No.6,1995、昭和医学会雑誌第48巻、第5号、595-600、1988等)。
ササ抽出物中の有効成分としては可溶性ヘミセルロースの抗腫瘍性が注目されており、中でもキシロオリゴ糖を中心とした多糖類が抗腫瘍効果発現に重要な役割を演じていると考えられている。特開平06−197800号公報、特開平11−199502号公報等にはササ類の葉および/または稈を高温、高圧の飽和水蒸気処理することで糖類を効率よく抽出する方法が開示されている。また、特開2002−322079号公報には高温、高圧の飽和水蒸気処理で得られたササ抽出物をピロリ菌に対する抗菌、除菌剤に用いている。
【特許文献1】特開平06−197800号公報
【特許文献2】特開平11−199502号公報
【特許文献3】特開2002−322079号公報
【非特許文献1】J.Hokkaido For.Prod.Res.Inst.Vol.9,No.6,1995
【非特許文献2】昭和医学会雑誌第48巻、第5号、595-600、1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的はこれまでササ抽出物の成分としては着目されていなかった化合物の抽出量を考慮し、それらを効率よく得られる製造方法を提供し、もって、広汎な薬理作用に優れたササ抽出物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、乾燥させたササの葉および/または稈と水とを100:50〜100:150の重量混合比の下、蒸煮温度170超250℃以下で蒸煮したのち、水性溶媒で抽出してなり、抽出液の加熱残分を50重量%に調製したときの、3−ヒドロキシピリジンを1.0mg/g以上含有することを特徴とするササ抽出物に関する。
【0005】
また、本発明は、水性溶媒抽出温度が、100〜150℃であることを特徴とする上記ササ抽出物に関する。
【0006】
また、本発明は、水性溶媒が、水またはアルカリ水溶液である上記ササ抽出物に関する。
【0007】
また、本発明は、乾燥させたササの葉および/または稈と水を100:50〜100:150の重量混合比の下、蒸煮温度170超250℃以下℃で蒸煮したのち、水性溶媒で抽出することを特徴とするササ抽出物の製造方法に関する。
【0008】
また、本発明は、水性溶媒抽出温度が、100〜150℃であることを特徴とする上記ササ抽出物の製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、水性溶媒が、水またはアルカリ水溶液である上記ササ抽出物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、特定化合物の抽出量が多い、広汎な薬理作用に優れたササ抽出物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いるササは、クマザサ属に属するものが好ましく、例えばオクヤマザサ、ゴテンバザサ、カツラギザサ、スズダケ、コウヤチク、フイリスズ、クマスズ、キスジスズ、ケスズ、ウンゼンザサ、ミヤマクマザサ、ネマガリダケ、キンメイチシマ、コンシマネマガリ、シモフリネマガリ、マキバネマガリ、チャボマキバチシマ、キアケボノネマガリ、ノチザエキフネマガリ、タカラネマガリ、ヤネフキザサ、キシマヤネフキザサ、ミヤコザサ、ホソバザサ、フイリホソバザサ、チマキザサ、シャコタンチク、タンナザサ、クマイザサ、ツボイザサ、アケボノイブキザサ、クマザサ、チュウゴクザサ等などが挙げられるが、これに限られるものではない。
特に、クマザサ、クマイザサ、チシマザサなど、葉の周辺に白っぽい隈取りができる総称的にクマザサと呼ばれるものが好ましい。本発明に用いる場合は7〜9月に収穫されるササが最適である。
【0012】
本発明の蒸煮に用いるササの葉および/または稈は十分に乾燥したものが好ましく、好ましい水分はササの葉および/または稈全体に対して10%以下であり、それより多い場合であると腐敗、発酵により成分が変質する恐れがある。本発明の蒸煮に用いるササの葉および/または稈の形態については細片化したものが好ましく、好ましい大きさは0.5〜20mmであり、0.5mmよりも小さいと抽出後の固液分離が困難となり20mmよりも大きいと抽出効率が悪くなる。
【0013】
本発明の蒸煮は高温、高圧に耐えうる装置であれば如何なるものでも実施でき、蒸煮時の乾燥させたササの葉および/または稈と水の比は100:50〜150の混合比が最も好ましい。100:50よりも少ない水の比率下ではヘミセルロース等の加水分解に必要とされる水分量が不足し、100:150よりも多い水の比率下では蒸気がササ葉に到達せず細胞壁の破壊がほとんど起こらないため所望の成分を十分に抽出することができない。また、蒸煮時の温度は170超250℃以下℃が最も好ましい。酢酸、ギ酸、3−ヒドロキシピリジンは、たとえば、ヘミセルロースの加水分解に由来するなど考えられ、170℃以下では、酢酸、ギ酸、3−ヒドロキシピリジンが、充分な量得られない恐れがある。
蒸煮を行なう時間は30秒から1時間の間が好ましく、さらに好ましくは5分から20分の間が良く、30秒より短いとヘミセルロースの加水分解が不十分となり成分量が少なくなり、1時間より長いと得られた成分の分解が起こりやはり得られる成分量が少なくなる場合がある。蒸煮終了後、加圧を解除する際は一気に装置を開放形にして大気圧とする方がササの葉または稈の組織破壊がより進み、抽出効率が向上するので好ましい。
【0014】
水性溶媒で抽出方法は、蒸煮後に、冷却もしくは温度を保持したまま、水性溶媒を添加し、室温から170℃の条件で、前記水性溶媒に、蒸煮されたササの葉または稈を漬浸する。抽出時の温度は100〜150℃が最も好ましい。100℃未満では抽出効率が低下し、150℃より高温では有効成分の分解が激しくなりやはり得られる成分量が少なくなる。抽出を行なう時間は10分から1時間の間が好ましく、さらに好ましくは15分から30分の間が良く、10分より短いと溶出量が少なくなり抽出効率が低下し、1時間より長いと得られた成分の分解が起こりやはり得られる成分量が少なくなる。
【0015】
本発明に用いられる水性溶媒は水が好ましく、ササ抽出物の用途によって許される場合はアルカリ水溶液を用いることで抽出効率を上げることができる。本発明に用いられるアルカリ水溶液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が好ましい。また、用途によって可能な範囲でメタノール、エタノール、アセトン等の水溶性溶媒またはそれらの水溶液を用いることもできる。
【0016】
本発明において、蒸煮工程、抽出工程は、それぞれを本発明の主旨を逸脱しない範囲で、繰り返し行われていてもよい。また、各工程前後に、さらに、保持工程などの他の工程が設けられていてもよい。
【0017】
本発明のササ抽出物に含まれるが抗菌性、抗変異原性、抗酸化作用を発現するメカニズムは明確になってはいないが、酢酸、ギ酸、3−ヒドロキシピリジンとそれ以外のササ抽出成分による相乗効果により各単独成分よりも大きな効果を発揮すると推定される。
【0018】
本発明のササ抽出物に含まれる酢酸、ギ酸の含有量としてササ抽出物に各々加熱残分を50重量%に調製したときの、1.0mg/g以上あればよく、好ましくはギ酸単独で2.0mg/g以上である。
【0019】
本発明のササ抽出物に含まれる3−ヒドロキシピリジンは詳細な合成経路は不明であるが、ササの葉および/または稈を蒸煮する際に生成する物質と推定されており、抗菌剤または抗変異原性剤として必要な含有量は、加熱残分を50重量%に調製したときの、1.0mg/g以上であるが、好ましくは1.5mg/g以上である。
【0020】
本発明のササ抽出物に含まれる糖類はキシロース、アラビノース、グルコース、マンノース、ガラクトース等から構成される単糖および/または多糖類であり加熱残分を50重量%に調製したときの好ましい含有量は50mg/g以下であってそれ以上であると本発明のササ抽出物の効能である抗菌、抗ウィルス、抗腫瘍、抗変異原性、抗炎症等の薬理作用が損なわれる。特に必要以上の糖類は菌類の増殖を促進し、菌が増殖したものは、エキスとしての通常の用途には全く適さない。本発明でいう加熱残分とは、いわゆる固形分であり、水などの低沸点物を加熱で除いた残分の含有量を意味し、例えば、100℃オーブンで60分加熱して残った量を、加熱前の量で割ることで求められる。
【0021】
なお、フェニルプロパノイド、酢酸、ギ酸、3−ヒドロキシピリジンは、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどで定量できる。糖類は、イオンクロマトグラフィーで定量できる。
【0022】
本発明のササ抽出物の形態は、溶液であっても固形であってもよく、また、その他の化合物との混合物であってもよい。混合物である場合は、スプレードライ、凍結乾燥、デキストリンなど造形剤添加等の処理したものであってもよい。さらに、濾過、カラム精製、溶剤洗浄などの選別工程を経たものであってもよい。
【0023】
本発明のササ抽出物は様々な菌類に対して抗菌作用が発揮され、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、破傷風菌、クロストリジウム属ガス壊疸菌、カンジタ菌、白癬菌、ケカビ、クモノスカビ、アスペルギルス属菌、クリプトコッカス属菌、コクシジオイデス属菌、ヒストプラズマ属菌、Peptostreptococcus anaerobius,Peptostreptococcus asaccharolyticus,Peptostreptococcus indolicus, Peptosteptococcus prevotii, Micromonas
micros, Finegoldia magna, Staphylococcus saccharolyticus, Streptococcus intermedius,Steiptococus constellatus,Atopobium parvulum,Gemella morbillorumなどの嫌気
性グラム陽性球菌、
【0024】
Propionibacterium acnes, Propionibacterium granulosum,Eggerthella lenta,Actinomyces odontolyticus, Bifidobacterium adolescentis, Bifidobacterium bifidum, Bifidobacterium breve, Bifidobacterium longum, Bifidobacterium pseudolongum,Mobiluncus
spp. などの嫌気性グラム陽桿菌、
Bacteroides fragilisペニシリン耐性, Bacteroides fragilisカルバペネム耐性, Bacteroides vulgatus, Bacteroides distasonis, Bacteroides ovatus, Bacteroides thetaiotaomicron, Bacteroides uniformis, Bacteroides eggerthii,Bacteroides ureolyticus, Campylobacter gracilis, Sutterella wadsworthensis, Prevotella bivia, Prevotella buccae, Prevotella corporis, Prevotella heparinolytica, Prevotella intermedia, Prevoterlla melaninogenica, Prevotella oralis, Prevotella oris ,Porphyromonas asaccharolytica, Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum, Fusobacterium v
arium, Fusobacterium necrophrum, Bilophila wadsworthia, Desulfovibrio piger, Capnocytophage ochraceaなどの嫌気性グラム陰性桿菌、
【0025】
Clostridium diffioile, Clostriduim sordellii,Clostridium septicum, Clostridium perfringens, Clostridium ramosum, Clostridium clostridiiforme, Clsotridium bifermentans, Clostridium sordellii,Clostridium novyi Type A, Clostridium sporogenes, Clostridium botulinum, clostridium tetaniiなどの嫌気性有芽胞菌
Escherichia coli, Enterobacter cloacae, Flavobacterium meningosepticum, Pseudeomonas aeruginosaなどの通性嫌気性グラム陰性桿菌、
Staphylococcus aureus MSSA,Staphylococcus aureus MRSA, Staphylococcus epidermidis, Staphylococcus hemolyticus, Gardnerella vaginalisなどの通性嫌気性グラム陽性球菌、
Lactobacillus acidophilus, Lactobacillus brevis ss. brevis, Lactobacillus casei ss. casei, Lactobacillus plantarum, Lactobacillus reuteri, Lactobacillus salivarius ss. salivariusなどの通性嫌気性グラム陽性桿菌、などの菌に対する抗菌性を示す。
【0026】
本発明の使用形態は特に限定はなく、固状、液状、半固体状のいずれの形態でもよく、経口、非経口の何れも可能であるが、例えば、経口的に摂取する場合には、食品添加剤として食品に添加して摂取することができる。食品添加剤として用いる場合には、その添加量については、特に限定的ではなく、食品の種類に応じ適宜決めればよい。例えば、清涼飲料、炭酸飲料などの液体食品や菓子類やその他の各種食品等の固形食品に添加して用いることができる。また、その他に、本発明の抽出物を人体に投与する場合の投与方法の一例を示すと次の通りである。投与は、種々の方法で行うことができ、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤等による経口投与とすることができる。経口投与剤は、通常の製造方法に従って製造することができる。例えば、デンプン、乳糖、マンニット等の賦形剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、軽質無水ケイ酸等の流動性向上剤等を適宜組み合わせて処方することにより、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等として製造することができる。
また、化粧品等に添加して皮膚等に塗布することによっても有効に使用できる。化粧品に添加する場合には、化粧品の本来の機能を阻害しない範囲において、添加量を適宜決めればよい。
【0027】
本発明の抽出物のその他の用途としては、噴霧剤、座剤、防腐剤、はみがき剤、石鹸、シャンプー、化粧水、軟膏、皮膚貼り付けフィルム、消毒液、浴用剤、化粧品などの、医療品もしくは医療補助品、耳栓、手袋、帽子、白衣、眼帯などの医療用品、空気清浄機、クーラー、掃除機、換気扇、マスクなどのフィルタ、カーペット、床板、壁板、壁紙などの室内建装材、機器、家具や雑貨などの保護シート、保護カバー、保護板、マスターバッチ、塗料、インキ、衣服、肌あて、寝具、包帯、ガーゼ、ハンカチ、ペナント、クロスなどの日用布製品、包装紙、ノート、メモ書き、ウエットティッシュなどの日用紙製品などが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、%は重量%を示す。
<実施例1>
0.5〜5mmに粉砕された水分7%の乾燥したクマイザサの葉および稈400gと純水400g(含水率50重量%)を高圧蒸煮缶に仕込み、10分間かけて200℃まで昇温させそのままの温度で10分間保持後一気に加圧解除した。高圧加水蒸煮した葉および稈に水4kgを加えて室温から110℃まで5分間かけて昇温し、そのままの温度で30分間保持後加圧状態を解除した。抽出液をろ過、減圧濃縮して加熱残分50%のササ抽出液を得た。
【0029】
<実施例2>
0.5〜5mmに粉砕された水分7%の乾燥したクマイザサの葉および稈400gと純水400g(含水率50重量%)を高圧蒸煮缶に仕込み、10分間かけて220℃まで昇温させそのままの温度で10分間保持後一気に加圧解除した。高圧加水蒸煮した葉および稈に水酸化ナトリウム1.8gを溶解した水4kgを加えて室温から110℃まで5分間かけて昇温し、そのままの温度で30分間保持後加圧状態を解除した。抽出液をろ過、減圧濃縮して加熱残分50%のササ抽出液を得た。
(比較例1)
特開平06−197800号公報の実施例1記載の方法を参考にしてササ抽出液の製造を行なった。即ち0.5〜5mmに粉砕された水分7%の乾燥したクマイザサの葉および稈2kgに20kgの水を加えて80℃で3時間処理したのち、ろ過した。この抽出操作を2回繰り返して、温水抽出物を除去したクマイザサを調製した。次いでこれを含水率45%に調製し高圧蒸煮缶に仕込み、貫流ボイラーで発生させた2MPaの高圧蒸気を減圧弁により1.6MPaまで減圧した蒸気をそのまま直接高圧蒸煮缶に導入した。室温から10分間かけて180℃まで昇温させそのままの温度で10分間保持後徐々に加圧解除した。高圧蒸煮した葉および稈を加圧抽出缶に仕込み水8kgを加えて室温から110℃まで30分間かけて昇温し、そのままの温度で5分間保持しその後1時間かけて加圧状態を解除した。抽出液をろ過、減圧濃縮して加熱残分50%のササ抽出液を得た。
【0030】
(比較例2)
公報特開平11−199502号公報の実施例1記載の方法を参考にしてササ抽出液の製造を行なった。即ち0.5〜5mmに粉砕された水分7%の乾燥したクマイザサの葉および稈2kgを耐熱袋に入れて加圧抽出缶に仕込み37kgの水を加えて室温から120℃まで30分間かけて昇温し、そのままの温度で10分間保持しその後1時間かけて加圧状態を解除した。次いで加圧抽出缶中の熱水を冷却水により80℃まで冷却してから加圧抽出缶の蓋を開け、クマイザサの葉および稈を取り出し、スクリュープレスにいれて含水率50%に調製した。この工程で分離されたエキスは先の加圧抽出缶中の熱水に加えられる。次いでこれを含水率50%に調製しされた固形分を高圧蒸煮缶に仕込み、貫流ボイラーで発生させた2MPaの高圧蒸気を減圧弁により1.6MPaまで減圧した蒸気をそのまま直接高圧蒸煮缶に導入した。室温から10分間かけて180℃まで昇温させそのままの温度で10分間保持後徐々に加圧解除した。高圧蒸煮した葉および稈を再度加圧抽出缶に仕込み室温から110℃まで30分間かけて昇温し、そのままの温度で5分間保持しその後1時間かけて加圧状態を解除した。抽出液をろ過、減圧濃縮して加熱残分50%のササ抽出液を得た。
【0031】
<ササ抽出液の評価>
(組成分析方法)
Shim-pack PREP-ODS(H)カラム(島津)を装着したHPLCにより酢酸、ギ酸、3−ヒドロキシピリジンの定性、定量分析を行なった。
【0032】
またカラムとしてCarboPac PA1、検出器として電気化学検出器を装着したダイオネクス製DXc-500型糖分析装置によりアラビノース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、キシロース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース、キシロヘキサオース、アラビノビオース、アラビノトリオース、アラビノテトラオース、アラビノペンタオース、アラビノヘキサオースの定性、定量分析を行い全成分の合計値を糖類の含有量とした。
(抗菌性試験方法)
試験菌には、黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus NBRC12732を用い以下の条件で試験を行った。菌数をほぼ一定にしたミュラーヒントンブロスに種々の倍率で希釈したササ抽出液を接触させ一定時間培養後菌の増殖を阻止した最小の薬剤濃度(MIC)を求め抗菌効果の指標とした。
MICが小さいほど抗菌効果が高い。
【0033】
(抗変異原性試験方法)
菌株にサルモネラTA100を用い、変異原物質にB(a)P ;benzo(a)pyreneを用いて復帰変異コロニー数を計数した。抗変異原性の指標としてはササ抽出物サンプル未添加の変異コロニー数を100としたとき、ササ抽出物を加えて変異したコロニー数の相対値で示す。数値が低いほど抗変異原性が高い。
【0034】
(評価結果)
以上の評価方法により実施例1および2、比較例1および2により得られたササ抽出液の評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

比較例1、2は、ササ抽出物製造後速やかに菌が繁殖したと考えられエキスとしては全く不適当であることを示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥させたササの葉および/または稈と水とを100:50〜100:150の重量混合比の下、蒸煮温度170超250℃以下で蒸煮したのち、水性溶媒で抽出してなり、抽出液の加熱残分を50重量%に調製したときの、3−ヒドロキシピリジンを1.0mg/g以上含有することを特徴とするササ抽出物。
【請求項2】
水性溶媒抽出温度が、100〜150℃であることを特徴とする請求項1記載のササ抽出物。
【請求項3】
水性溶媒が、水またはアルカリ水溶液である請求項1または2記載のササ抽出物。
【請求項4】
乾燥させたササの葉および/または稈と水を100:50〜100:150の重量混合比の下、蒸煮温度170超250℃以下℃で蒸煮したのち、水性溶媒で抽出することを特徴とするササ抽出物の製造方法。
【請求項5】
水性溶媒抽出温度が、100〜150℃であることを特徴とする請求項4記載のササ抽出物の製造方法。
【請求項6】
水性溶媒が、水またはアルカリ水溶液である請求項4または5記載のササ抽出物の製造方法。

【公開番号】特開2006−298765(P2006−298765A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118014(P2005−118014)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】