サスペンションアーム
【課題】サスペンションアームにおける溶接箇所の接合信頼性を向上する技術を提供する。
【解決手段】サスペンションアームは、一方向に開放された開断面形状のアーム本体部12と、アーム本体部12の車幅方向外側端部に設けられたボールジョイント取付部と、アーム本体部12の車幅方向内側端部かつ車両前後方向前側端部に溶接により接合された筒状部と、アーム本体部12の車幅方向内側端部かつ車両前後方向後側端部に設けられた支持部と、を備える。アーム本体部12は、その上面が荷重作用線よりも下方に位置するように構成されており、筒状部は、サスペンションアームに対する荷重作用線L1’が筒状部の中心よりも下方に位置するように構成されている。
【解決手段】サスペンションアームは、一方向に開放された開断面形状のアーム本体部12と、アーム本体部12の車幅方向外側端部に設けられたボールジョイント取付部と、アーム本体部12の車幅方向内側端部かつ車両前後方向前側端部に溶接により接合された筒状部と、アーム本体部12の車幅方向内側端部かつ車両前後方向後側端部に設けられた支持部と、を備える。アーム本体部12は、その上面が荷重作用線よりも下方に位置するように構成されており、筒状部は、サスペンションアームに対する荷重作用線L1’が筒状部の中心よりも下方に位置するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアームに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサスペンションを構成する部品の1つにサスペンションアームがある。近年、このようなサスペンションアームとして、一枚の高張力鋼板をプレスしたものが開発されている。例えば、一方向に開放された開断面形状のアーム本体部を備えたサスペンションアームであって、サスペンションアームに対する荷重作用面が開断面形状の閉側のアーム本体部に一致若しくは外方に存在すように構成されているサスペンションアームが考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−123722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなサスペンションアームにおいては、ブッシュが挿入される筒状の部材がアーム本体に溶接されている場合がある。そのため、溶接部においては高い信頼性が求められることになる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サスペンションアームにおける溶接箇所の接合信頼性を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のサスペンションアームは、一方向に開放された開断面形状のアーム本体部と、前記アーム本体部の車幅方向外側端部に設けられ、ボールジョイントを介してホイールキャリア側に支持されるボールジョイント取付部と、前記アーム本体部の車幅方向内側端部かつ車両前後方向前側端部に溶接により接合され、車体側に支持される筒状部と、前記アーム本体部の車幅方向内側端部かつ車両前後方向後側端部に設けられ、車体側に支持される支持部と、を備えるサスペンションアームであって、前記アーム本体部は、その上面が荷重作用線よりも下方に位置するように構成されており、前記筒状部は、中心軸が車両前後方向に向くように前記アーム本体部に設けられており、前記筒状部は、前記サスペンションアームに対する荷重作用線が該筒状部の中心よりも下方に位置するように構成されている。
【0007】
この態様によると、アーム本体部の上面が荷重作用線よりも下方に位置しているため、アーム本体部と筒状部との溶接箇所は、荷重作用線よりも下方に偏っている。しかしながら、筒状部の構成により、荷重作用線が筒状部の中心よりも下方に位置しているため、溶接箇所の中心線と、荷重作用線とのオフセットが低減される。その結果、溶接箇所に加わる曲げモーメントが減少し、接合箇所における接合信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サスペンションアームにおける溶接箇所の接合信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係るロアアームの上面図である。
【図2】図1の矢印A方向から見たロアアームの側面図である。
【図3】図1に示すロアアームのB−B断面図である。
【図4】図1に示すロアアームのC−C断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る筒状部の拡大側面図である。
【図6】比較例に係る筒状部の拡大側面図である。
【図7】比較例の溶接部の応力分布を示す図である。
【図8】第1の実施の形態に係る筒状部の拡大側面図である。
【図9】第1の実施の形態の溶接部の応力分布を示す図である。
【図10】第2の実施の形態に係る筒状部の軸部の斜視図である。
【図11】第2の実施の形態に係る筒状部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、車両のフロントサスペンションに用いるロアアームを例に説明する。図1は、第1の実施の形態に係るロアアームの上面図である。図2は、図1の矢印A方向から見たロアアームの側面図である。図3は、図1に示すロアアームのB−B断面図である。図4は、図1に示すロアアームのC−C断面図である。
【0012】
サスペンションアームの一例である図1に示すロアアーム10は、上方から見てL型に加工されているアーム本体部12と、アーム本体部12の車幅方向外側端部に設けられたボールジョイント取付部14と、アーム本体部12の車幅方向内側端部かつ車両前後方向前側端部に溶接により接合され、車体側に支持される筒状部16と、アーム本体部12の車幅方向内側端部かつ車両前後方向後側端部に設けられ、車体側に支持される支持部18と、を備える。ロアアーム10は、例えば、一枚の高張力鋼板をプレスすることで製造される。これにより、所望の強度を確保しつつ軽量化が図られる。
【0013】
ボールジョイント取付部14は、ボールジョイント(不図示)を介してホイールキャリア側に支持される。筒状部16および支持部18は、ブッシュを介して車体側に支持される。ロアアーム10は、ボールジョイント中心点(P1)から荷重が入力されて入力荷重が車両前方のブッシュ中心点(P2)と車両後方のブッシュ中心点(P3)とで受け持たれる。したがって、ロアアーム10にかかる荷重が作用する荷重作用面は、P1〜P3の各点を通る平面となる。
【0014】
図2に示すように、アーム本体部12は、ボールジョイント取付部14と筒状部16との間の部分の上面12aが、荷重作用線L1よりも概ね下方に位置するように構成されている。ここで、荷重作用線L1は、荷重作用面内にあって、ボールジョイント取付部14の中心と筒状部16の中心とを結ぶ線である。また、アーム本体部12は、図3や図4に示すように、下方向が開放された開断面形状を有している。
【0015】
筒状部16は、中心軸X(図1参照)が車両前後方向に向くようにアーム本体部12に設けられている。図5は、第1の実施の形態に係る筒状部の拡大側面図である。筒状部16は、アーム本体部12の溶接部12bにおいて直接溶接されている円筒部16aと、車体側に直接固定される円柱状の軸部16bと、円筒部16aおよび軸部16bの間に配設されている円筒状のブッシュ16cとで構成されている。
【0016】
このような構成のロアアームにおいて、溶接部に働く応力について説明する。図6は、比較例に係る筒状部の拡大側面図である。図7は、比較例の溶接部の応力分布を示す図である。図6に示すように、比較例に係る筒状部20は、アーム本体部12の溶接部12bにおいて直接溶接されている円筒部16aと、車体側に直接固定される円柱状の軸部16bと、円筒部16aおよび軸部16bの間に配設されている円筒状のブッシュ20aとで構成されている。前述の第1の実施の形態に係る筒状部16とは、ブッシュ20aの形状のみが異なる。
【0017】
アーム本体部12の上面12aは、荷重作用線L1よりも下方に位置しているため、アーム本体部12と筒状部16との溶接部12bは、荷重作用線L1よりも下方に偏っている。したがって、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1とはオフセットS1が生じる。このような構成で、ロアアーム10に荷重が入力されると、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1とのオフセットS1に起因して、溶接部12bに曲げモーメントが発生する。そのため、図7に示すように、溶接部12bにおける応力は均一にはならず、上部(点線領域)で大きな応力(アーム本体部12を筒状部20から引き離す力)が発生する。そのため、溶接箇所の接合信頼性に改善の余地があった。
【0018】
そこで、本実施の形態に係る筒状部は、溶接部12bの中心線と荷重作用線とのオフセットを小さくするためにブッシュの形状を工夫している。図8は、第1の実施の形態に係る筒状部の拡大側面図である。図9は、第1の実施の形態の溶接部の応力分布を示す図である。第1の実施の形態に係る筒状部16は、図8に示すように、ブッシュ16cの上側に切り欠き16c1が形成されている。そのため、ブッシュ16cの上側での荷重伝達が減少し、荷重作用線L1’は、比較例の荷重作用線L1よりも下方に位置する。その結果、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1’とのオフセットS2は、オフセットS1よりも小さくなる。
【0019】
本実施の形態に係る筒状部16においても、ロアアーム10に荷重が入力されると、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1’とのオフセットS2に起因して、溶接部12bに曲げモーメントが発生する。また、図9に示すように、溶接部12bにおける応力は均一にはならず、上部(点線領域)で応力(アーム本体部12を筒状部20から引き離す力)が発生する。しかしながら、オフセットS2が比較例の筒状部におけるオフセットS1よりも低減されているため、溶接部12bに加わる曲げモーメントが減少し、接合箇所で発生する応力も減少する。そのため、溶接部12b(特に点線領域)における接合信頼性を向上することができる。
【0020】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、筒状部の軸部の形状を工夫している。図10は、第2の実施の形態に係る筒状部の軸部の斜視図である。図11は、第2の実施の形態に係る筒状部の部分断面図である。
【0021】
第2の実施の形態に係る筒状部22は、アーム本体部12の溶接部12bにおいて直接溶接されている円筒部16aと、車体側に直接固定される円柱状の軸部22aと、円筒部16aおよび軸部22aの間に配設されている円筒状のブッシュ22bとで構成されている。軸部22aは、図10に示すように、長手方向の中央部に面取りされた平面部22a1が形成されている。そのため、図11に示すように、面取りされた平面部22a1の上部は他の場所よりブッシュが占める割合が多くなる。一般的に、ブッシュ22bを構成する材料は、軸部22aを構成する材料よりも剛性が低い。そのため、ブッシュ22bの上側での荷重伝達が減少し、荷重作用線L1’’は、比較例の荷重作用線L1よりも下方に位置する。その結果、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1’’とのオフセットS3は、オフセットS1よりも小さくなる。
【0022】
本実施の形態に係る筒状部22においても、ロアアーム10に荷重が入力されると、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1’’とのオフセットS3に起因して、溶接部12bに曲げモーメントが発生する。しかしながら、オフセットS3が比較例の筒状部におけるオフセットS1よりも低減されているため、溶接部12bに加わる曲げモーメントが減少し、接合箇所で発生する応力も減少する。そのため、溶接部12b(特に図11に示す点線領域)における接合信頼性を向上することができる。
【0023】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0024】
10 ロアアーム、 12 アーム本体部、 12a 上面、 12b 溶接部、 14 ボールジョイント取付部、 16 筒状部、 16a 円筒部、 16b 軸部、 16c ブッシュ、 18 支持部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアームに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサスペンションを構成する部品の1つにサスペンションアームがある。近年、このようなサスペンションアームとして、一枚の高張力鋼板をプレスしたものが開発されている。例えば、一方向に開放された開断面形状のアーム本体部を備えたサスペンションアームであって、サスペンションアームに対する荷重作用面が開断面形状の閉側のアーム本体部に一致若しくは外方に存在すように構成されているサスペンションアームが考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−123722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなサスペンションアームにおいては、ブッシュが挿入される筒状の部材がアーム本体に溶接されている場合がある。そのため、溶接部においては高い信頼性が求められることになる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サスペンションアームにおける溶接箇所の接合信頼性を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のサスペンションアームは、一方向に開放された開断面形状のアーム本体部と、前記アーム本体部の車幅方向外側端部に設けられ、ボールジョイントを介してホイールキャリア側に支持されるボールジョイント取付部と、前記アーム本体部の車幅方向内側端部かつ車両前後方向前側端部に溶接により接合され、車体側に支持される筒状部と、前記アーム本体部の車幅方向内側端部かつ車両前後方向後側端部に設けられ、車体側に支持される支持部と、を備えるサスペンションアームであって、前記アーム本体部は、その上面が荷重作用線よりも下方に位置するように構成されており、前記筒状部は、中心軸が車両前後方向に向くように前記アーム本体部に設けられており、前記筒状部は、前記サスペンションアームに対する荷重作用線が該筒状部の中心よりも下方に位置するように構成されている。
【0007】
この態様によると、アーム本体部の上面が荷重作用線よりも下方に位置しているため、アーム本体部と筒状部との溶接箇所は、荷重作用線よりも下方に偏っている。しかしながら、筒状部の構成により、荷重作用線が筒状部の中心よりも下方に位置しているため、溶接箇所の中心線と、荷重作用線とのオフセットが低減される。その結果、溶接箇所に加わる曲げモーメントが減少し、接合箇所における接合信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サスペンションアームにおける溶接箇所の接合信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係るロアアームの上面図である。
【図2】図1の矢印A方向から見たロアアームの側面図である。
【図3】図1に示すロアアームのB−B断面図である。
【図4】図1に示すロアアームのC−C断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る筒状部の拡大側面図である。
【図6】比較例に係る筒状部の拡大側面図である。
【図7】比較例の溶接部の応力分布を示す図である。
【図8】第1の実施の形態に係る筒状部の拡大側面図である。
【図9】第1の実施の形態の溶接部の応力分布を示す図である。
【図10】第2の実施の形態に係る筒状部の軸部の斜視図である。
【図11】第2の実施の形態に係る筒状部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、車両のフロントサスペンションに用いるロアアームを例に説明する。図1は、第1の実施の形態に係るロアアームの上面図である。図2は、図1の矢印A方向から見たロアアームの側面図である。図3は、図1に示すロアアームのB−B断面図である。図4は、図1に示すロアアームのC−C断面図である。
【0012】
サスペンションアームの一例である図1に示すロアアーム10は、上方から見てL型に加工されているアーム本体部12と、アーム本体部12の車幅方向外側端部に設けられたボールジョイント取付部14と、アーム本体部12の車幅方向内側端部かつ車両前後方向前側端部に溶接により接合され、車体側に支持される筒状部16と、アーム本体部12の車幅方向内側端部かつ車両前後方向後側端部に設けられ、車体側に支持される支持部18と、を備える。ロアアーム10は、例えば、一枚の高張力鋼板をプレスすることで製造される。これにより、所望の強度を確保しつつ軽量化が図られる。
【0013】
ボールジョイント取付部14は、ボールジョイント(不図示)を介してホイールキャリア側に支持される。筒状部16および支持部18は、ブッシュを介して車体側に支持される。ロアアーム10は、ボールジョイント中心点(P1)から荷重が入力されて入力荷重が車両前方のブッシュ中心点(P2)と車両後方のブッシュ中心点(P3)とで受け持たれる。したがって、ロアアーム10にかかる荷重が作用する荷重作用面は、P1〜P3の各点を通る平面となる。
【0014】
図2に示すように、アーム本体部12は、ボールジョイント取付部14と筒状部16との間の部分の上面12aが、荷重作用線L1よりも概ね下方に位置するように構成されている。ここで、荷重作用線L1は、荷重作用面内にあって、ボールジョイント取付部14の中心と筒状部16の中心とを結ぶ線である。また、アーム本体部12は、図3や図4に示すように、下方向が開放された開断面形状を有している。
【0015】
筒状部16は、中心軸X(図1参照)が車両前後方向に向くようにアーム本体部12に設けられている。図5は、第1の実施の形態に係る筒状部の拡大側面図である。筒状部16は、アーム本体部12の溶接部12bにおいて直接溶接されている円筒部16aと、車体側に直接固定される円柱状の軸部16bと、円筒部16aおよび軸部16bの間に配設されている円筒状のブッシュ16cとで構成されている。
【0016】
このような構成のロアアームにおいて、溶接部に働く応力について説明する。図6は、比較例に係る筒状部の拡大側面図である。図7は、比較例の溶接部の応力分布を示す図である。図6に示すように、比較例に係る筒状部20は、アーム本体部12の溶接部12bにおいて直接溶接されている円筒部16aと、車体側に直接固定される円柱状の軸部16bと、円筒部16aおよび軸部16bの間に配設されている円筒状のブッシュ20aとで構成されている。前述の第1の実施の形態に係る筒状部16とは、ブッシュ20aの形状のみが異なる。
【0017】
アーム本体部12の上面12aは、荷重作用線L1よりも下方に位置しているため、アーム本体部12と筒状部16との溶接部12bは、荷重作用線L1よりも下方に偏っている。したがって、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1とはオフセットS1が生じる。このような構成で、ロアアーム10に荷重が入力されると、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1とのオフセットS1に起因して、溶接部12bに曲げモーメントが発生する。そのため、図7に示すように、溶接部12bにおける応力は均一にはならず、上部(点線領域)で大きな応力(アーム本体部12を筒状部20から引き離す力)が発生する。そのため、溶接箇所の接合信頼性に改善の余地があった。
【0018】
そこで、本実施の形態に係る筒状部は、溶接部12bの中心線と荷重作用線とのオフセットを小さくするためにブッシュの形状を工夫している。図8は、第1の実施の形態に係る筒状部の拡大側面図である。図9は、第1の実施の形態の溶接部の応力分布を示す図である。第1の実施の形態に係る筒状部16は、図8に示すように、ブッシュ16cの上側に切り欠き16c1が形成されている。そのため、ブッシュ16cの上側での荷重伝達が減少し、荷重作用線L1’は、比較例の荷重作用線L1よりも下方に位置する。その結果、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1’とのオフセットS2は、オフセットS1よりも小さくなる。
【0019】
本実施の形態に係る筒状部16においても、ロアアーム10に荷重が入力されると、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1’とのオフセットS2に起因して、溶接部12bに曲げモーメントが発生する。また、図9に示すように、溶接部12bにおける応力は均一にはならず、上部(点線領域)で応力(アーム本体部12を筒状部20から引き離す力)が発生する。しかしながら、オフセットS2が比較例の筒状部におけるオフセットS1よりも低減されているため、溶接部12bに加わる曲げモーメントが減少し、接合箇所で発生する応力も減少する。そのため、溶接部12b(特に点線領域)における接合信頼性を向上することができる。
【0020】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、筒状部の軸部の形状を工夫している。図10は、第2の実施の形態に係る筒状部の軸部の斜視図である。図11は、第2の実施の形態に係る筒状部の部分断面図である。
【0021】
第2の実施の形態に係る筒状部22は、アーム本体部12の溶接部12bにおいて直接溶接されている円筒部16aと、車体側に直接固定される円柱状の軸部22aと、円筒部16aおよび軸部22aの間に配設されている円筒状のブッシュ22bとで構成されている。軸部22aは、図10に示すように、長手方向の中央部に面取りされた平面部22a1が形成されている。そのため、図11に示すように、面取りされた平面部22a1の上部は他の場所よりブッシュが占める割合が多くなる。一般的に、ブッシュ22bを構成する材料は、軸部22aを構成する材料よりも剛性が低い。そのため、ブッシュ22bの上側での荷重伝達が減少し、荷重作用線L1’’は、比較例の荷重作用線L1よりも下方に位置する。その結果、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1’’とのオフセットS3は、オフセットS1よりも小さくなる。
【0022】
本実施の形態に係る筒状部22においても、ロアアーム10に荷重が入力されると、溶接部12bの中心線L2と荷重作用線L1’’とのオフセットS3に起因して、溶接部12bに曲げモーメントが発生する。しかしながら、オフセットS3が比較例の筒状部におけるオフセットS1よりも低減されているため、溶接部12bに加わる曲げモーメントが減少し、接合箇所で発生する応力も減少する。そのため、溶接部12b(特に図11に示す点線領域)における接合信頼性を向上することができる。
【0023】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0024】
10 ロアアーム、 12 アーム本体部、 12a 上面、 12b 溶接部、 14 ボールジョイント取付部、 16 筒状部、 16a 円筒部、 16b 軸部、 16c ブッシュ、 18 支持部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に開放された開断面形状のアーム本体部と、
前記アーム本体部の車幅方向外側端部に設けられ、ボールジョイントを介してホイールキャリア側に支持されるボールジョイント取付部と、
前記アーム本体部の車幅方向内側端部かつ車両前後方向前側端部に溶接により接合され、車体側に支持される筒状部と、
前記アーム本体部の車幅方向内側端部かつ車両前後方向後側端部に設けられ、車体側に支持される支持部と、を備えるサスペンションアームであって、
前記アーム本体部は、その上面が荷重作用線よりも下方に位置するように構成されており、
前記筒状部は、中心軸が車両前後方向に向くように前記アーム本体部に設けられており、
前記筒状部は、前記サスペンションアームに対する荷重作用線が該筒状部の中心よりも下方に位置するように構成されていることを特徴とするサスペンションアーム。
【請求項1】
一方向に開放された開断面形状のアーム本体部と、
前記アーム本体部の車幅方向外側端部に設けられ、ボールジョイントを介してホイールキャリア側に支持されるボールジョイント取付部と、
前記アーム本体部の車幅方向内側端部かつ車両前後方向前側端部に溶接により接合され、車体側に支持される筒状部と、
前記アーム本体部の車幅方向内側端部かつ車両前後方向後側端部に設けられ、車体側に支持される支持部と、を備えるサスペンションアームであって、
前記アーム本体部は、その上面が荷重作用線よりも下方に位置するように構成されており、
前記筒状部は、中心軸が車両前後方向に向くように前記アーム本体部に設けられており、
前記筒状部は、前記サスペンションアームに対する荷重作用線が該筒状部の中心よりも下方に位置するように構成されていることを特徴とするサスペンションアーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−91724(P2012−91724A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242006(P2010−242006)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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