サッシ
【課題】 フレームを通じて換気を行いつつ断熱性能を高めることのできるサッシの提供。
【解決手段】 断熱性のフレーム2を備え、断熱性のフレーム2は、室内外に連通する通気路5と、通気路5を流れる空気に熱を伝達する伝熱部21a,21b,21cと、通気路5を流れる空気に抵抗を与える抵抗付与部6とを有する。
【解決手段】 断熱性のフレーム2を備え、断熱性のフレーム2は、室内外に連通する通気路5と、通気路5を流れる空気に熱を伝達する伝熱部21a,21b,21cと、通気路5を流れる空気に抵抗を与える抵抗付与部6とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性に優れたサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高気密・高断熱の建物では、窓部からの熱のロスが大きいのが問題となっている。窓部の断熱性を高めるために、窓のフレームとして樹脂製のフレームやアルミと樹脂の複合構造のフレームも知られているが、そのような断熱性のフレームであっても熱貫流率をゼロにすることはできず、冬季にはフレームを通じて室内の熱が室外に逃げ、夏季にはフレームを通じて室外の熱が室内に入ってくるため、窓部を大きくすればするほど冷暖房のコストが増大する。
【0003】
特許文献1には、窓のフレームの内部と二重ガラス間の隙間に空気を通して換気を行い、空調負荷の軽減を図るものが記載されている。しかしこの窓はフレームが断熱構造になっておらず、冬季にはフレームを伝わって室内の熱が逃げる上、フレーム内を通じて室外の空気を室内に導入したとすると、冷たい外気によって室内が冷やされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−185186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、フレームを通じて換気を行いつつ断熱性能を高めることのできるサッシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明によるサッシは、断熱性のフレームを備え、断熱性のフレームは、室内外に連通する通気路と、通気路を流れる空気に熱を伝達する伝熱部と、通気路を流れる空気に抵抗を与える抵抗付与部とを有することを特徴とする。
ここで「フレーム」には、窓枠を構成する上枠、下枠及び竪枠の他、方立や無目、障子の框等が含まれる。断熱性のフレームとしては、例えば全体を樹脂等の非金属で形成したもの、樹脂等の非金属とアルミ等の金属を組合わせたものとすることができる。伝熱部と抵抗付与部は、別々に設けることもできるが、伝熱部が抵抗付与部を兼ねるものとすることもできる。
【0007】
請求項2記載の発明によるサッシは、請求項1記載の発明の構成に加え、断熱性のフレームは、室内側が金属製であり、室外側が非金属製であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明によるサッシは、請求項1記載の発明の構成に加え、断熱性のフレームは、室内側が金属製であり、室内外方向の中間部が非金属製であり、抵抗付与部が、フレームの室内側の金属製の部分よりも室外側に設けてあることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明によるサッシは、請求項2又は3記載の発明の構成に加え、フレームの室内側の金属製の部分に伝熱部が設けてあり、伝熱部よりも室外側に抵抗付与部が設けてあることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明によるサッシは、請求項1,2,3又は4記載の発明の構成に加え、通気路を開閉する蓋を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によるサッシは、断熱性のフレームを備えることで、フレーム自体の室内外の熱移動を抑えられることに加え、フレームの通気路を通じて換気を行うことができ、しかも伝熱部と抵抗付与部により、通気路を流れる空気に効率良く熱が伝達されることで、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられるので、極めて高い断熱性能を発揮する。また冬季には、室内に流入する外気が室温に近い温度となるため、フレームの室内側の結露を防止できる。フレームに通気路を設けたので、壁に換気のための穴を開けずにすみ、新築以外にも戸建て住宅のリフォームやマンションのリフォーム等、気密住宅に幅広く対応できる。
【0012】
請求項2記載の発明によるサッシは、フレームの室内側が金属製であることで、フレームの室内側が室温に近い温度となり、通気路を流れる空気により効率よくフレームの熱を伝達できるため、上述の空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱の効果を高めることができる。また、フレームの室外側が非金属製であるため、フレーム自体の室内外の熱移動を抑えられる。
【0013】
さらに請求項3記載の発明によるサッシは、フレームの室内側が金属製であることで、フレームの室内側が室温に近い温度となり、尚且つフレームの室内側の金属製の部分よりも室外側に抵抗付与部が設けてあることで、抵抗付与部により空気の流れをゆっくりにしてから室内側の金属製の部分を空気が通過することで、通気路を流れる空気により効率よくフレームの熱を伝達できるため、上述の空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱の効果をより一層高めることができる。また、フレームの室内外方向の中間部が非金属製であるため、フレーム自体の室内外の熱移動を抑えられる。
【0014】
請求項4記載の発明によるサッシは、フレームの室内側の金属製の部分に伝熱部が設けてあり、伝熱部よりも室外側に抵抗付与部材が設けてあるので、抵抗付与部によって勢いが抑えられた空気がフレーム室内側の金属製の部分に流れ込み、伝熱部によって効率良くフレームの熱が伝えられるため、上述の空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱の効果をより一層高めることができる。
【0015】
請求項5記載の発明によるサッシは、通気路を開閉する蓋を有しているので、強風時に通気路を蓋で塞ぐことで、冷たい外気が室内に流れ込むのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のサッシのフレーム(上枠)の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明のサッシの一実施形態を示す室外側正面図である。
【図3】同サッシの縦断面図である。
【図4】同サッシの横断面図である。
【図5】本発明のサッシが組み込まれた住宅の縦断面図である。
【図6】本発明のサッシのフレーム(上枠)の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図7】第1・第2実施形態のフレームと図17に示す比較例のフレームの解析結果を示す表である。
【図8】本発明のサッシのフレーム(上枠)の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明のサッシのフレームのさらに別の実施形態を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す各フレームの解析結果を示す表である。
【図11】本発明のサッシの他の実施形態を示す縦断面図である。
【図12】同サッシの横断面図である。
【図13】第1実施形態のフレームを用いたサッシについて、ガラスを含めたサッシ全体の熱貫流率の解析結果を示す表である。
【図14】本発明のサッシのさらに別の実施形態を示す縦断面図である。
【図15】(a)〜(c)は本発明のサッシのフレームの実施例を示す縦断面図であり、(d)は比較例の縦断面図である。
【図16】図15に示す各フレームについての解析結果を示す表である。
【図17】サッシのフレームの比較例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2〜4は、本発明のサッシ1の一実施形態を示し、図1はそのサッシ1の上枠2を拡大した縦断面図であり、図5はそのサッシ1が組み込まれた住宅を示している。図5に示すように、本住宅は床10と壁11と天井12とで室内が仕切られ、床10と壁11と天井12には断熱材を埋め込んで断熱性を高めてある。一方の壁11には窓開口部13を設けてサッシ1を取付けてあり、他方の壁11には換気用の開口部14を設けて送風機15が取付けてある。サッシ1は、窓枠16に室内外に連通する通気路5を備えており、送風機15を運転して室内の空気を屋外に吸い出すことで室内を負圧に調整し、それに伴い室外の空気を窓枠16の通気路5から室内に取り込み、24時間換気を行っている。
また、住宅には公知の冷暖房設備を備え、冷暖房設備により室内の気温を20℃前後の快適な温度に保っている。図5は、冷暖房設備としてヒートポンプ17を採用した場合を示している。ヒートポンプ17は、室内側ユニット17aと室外側ユニット17bとを備え、内蔵する熱交換器と冷媒回路により室内外の空気間で熱交換を行い、室内側ユニット17aの送風口17cより冬季には温風を、夏季には冷風を室内に噴き出す。なおヒートポンプ17は、冬季には送風機15から排出される室内の空気をダクト18を通して室外側ユニット17bに送り、その空気から熱を回収することで、暖房コストを節約できるようにしている。
【0018】
サッシ1は、図2〜4に示すように、上枠2と下枠3と左右の竪枠4,4とを方形に枠組みして窓枠16が構成され、窓枠16内には3枚のガラス板19を間隔をおいて保持した複層ガラスを取付けてあり、いわゆる嵌め殺し窓となっている。
上枠2は、図1に示すように、アルミニウム合金の押出形材よりなる室外側枠材20と室内側枠材21とを、樹脂製の断熱材22,22にかしめ連結した構造になっており、断熱材22により室内外の熱の伝達を防いでいる。室外側枠材20は、室外側壁と室内側壁に開口23a,23bを設けてあり、室外側壁の開口23aは、雨や強風が吹き込むのを防ぐためにカバー24を取付けて覆ってある。断熱材22,22間には、抵抗付与部としてのポーラス材6が埋め込んである。ポーラス材6としては、グラスウールを用いている。
室内側枠材21は、内周側に凹部25を形成し、凹部25に換気ユニット26が取付けてあり、室外側壁と内周側壁とに開口23c,23dを形成し、室外側から導入された空気を換気ユニット26の排気口26aよりガラス板19に沿うように噴き出すようにしている。このように通気路5を内周側に曲げ、且つ換気ユニット26に空気を通過させることで、通気路5の室内側を長く複雑化している。なお、室内側上枠材21の通気路5に面した壁21a,21b,21c全体が、通気路5を通過する空気に室内の熱を伝達する伝熱部に相等する。また換気ユニット26は、抵抗付与部及び伝熱部として機能する。換気ユニット26内には、排気口26aを開閉する蓋27を有している。図1は、蓋27が開いた状態を示しており、台風などの強風時には、図示しない操作部を操作することで蓋27を排気口26aに密着させ、排気口26aを塞ぐことができる。
【0019】
冬季には、室内側枠材21は熱伝導率のよいアルミニウム合金製のため室内の温度と略同じ温度に暖められ、室外側枠材20との間に断熱材22が介在しているため、室内側枠材21の熱が室外側に伝わるのが遮断される。室外側枠材20の開口23aより侵入した室外の冷たい空気は、ポーラス材6の内部を通過することで流速が抑えられ、その後、室温に暖められた室内側枠材21の内部の壁21a,21b,…と換気ユニット26の内部に接触することで熱が空気に効率よく伝わり、室温に近い温度に暖められて排気口26aより室内に排出される。これにより空気の流入する方向とは逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられ、極めて高い断熱性を発揮し、上枠2の熱貫流率U(W/m2K)をほぼゼロにすることができる。また、室内に流入する外気が室温に近い温度になるため、上枠2の室内側に結露が生ずるのを防止できる。また、室外側にカバー24を設け、空気を下から取り込むようにしたので、雨水の浸入を防止して水密性を確保できる。さらに、室内側の排気口26aを内周側に向けて設けたので、風が人体に直接あたらない。
【0020】
これまで上枠2について説明したが、下枠3と竪枠4も上枠2と同様の構造となっており、上述の通気路5を流れる空気にフレームの熱を伝えることで、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱効果により、下枠3と竪枠4の熱貫流率Uもほぼゼロになっている。
【0021】
図6は、上枠2の第2実施形態を示している。この上枠は、樹脂製の室外側枠材28と、アルミニウム合金製の室内側枠材21とを結合した構造となっており、室外側枠材28の通気路5内部にポーラス材6を埋め込んでいる。他の点は、図1に示す第1実施形態と同様である。
【0022】
図1に示す第1実施形態のフレーム(上枠2)と図6に示す第2実施形態のフレームについて、室外側の気温が0℃、室内側の気温が20℃で、通気路5を通過する空気の流量を変化させたときに、フレームの室内側と室外側の表面温度、出入口の空気温度、内外圧力差、フレームの熱貫流率Ufを解析によって求めた。また比較のために、図17に示すように、フレーム90全体がアルミニウム合金製で、ポーラス材6がフレーム90の通気路5内に埋め込んでいないものについても同様に解析を行った。解析結果を図7に示す。
【0023】
図7に示すように、第1・第2実施形態のフレームでは、通気路5内にポーラス材6を埋め込んだことで、内外圧力差が比較例のものより大きくなり、フレームの熱貫流率Ufは比較例ではおよそ1〜5であるのに対して、第1・第2実施形態のものはほぼゼロになった。ちなみに、通気路が無い通常のサッシのフレームの熱貫流率Ufは、アルミフレームで7〜9、アルミ断熱フレーム(室外側と室内側のアルミフレームを樹脂で連結したもの)で3.5〜4、室外側がアルミで室内側が樹脂の複合フレームで3〜4、樹脂フレームで2〜2.5である。
【0024】
図1に示す第1実施形態のフレームを用いたサッシ1について、室外側の気温が0℃、室内側の気温が20℃で、通気路5を通過する空気の流量を変化させたときの、ガラス19を含めたサッシ全体の熱貫流率Uwを解析により求めた。サッシ1は、フレームの面積が0.4m2、ガラスの面積が1.6m2、総面積が2m2である。解析結果を図13に示す。
【0025】
図13に示すように、サッシ全体の熱貫流率Uwは、フレームの熱貫流率Ufと比べて大きくなる。これは、ガラスの熱貫流率Ugが0.8であり、ガラスがサッシの面積の大半を占めているため、その影響を受けるためである。サッシ全体の熱貫流率Uwは、流量が増加するにつれて小さくなり、流量が5.5m3/h以上ではガラスの熱貫流率Ug(0.8)より小さくなった。
【0026】
図8は、本発明のサッシ1のフレーム(上枠2)の第3実施形態を示している。図1に示す第1実施形態と異なる点について説明すると、換気ユニット26内に風量調整羽根29を内蔵しており、風量調整羽根29はバネ30で付勢して内外周方向に移動可能に設けてあり、風圧を受けると内周側に移動して流量を調節する。風が強いときには、仮想線で示すように風量調節羽根29が内周側に移動して排気口26aを塞ぐ。また換気ユニット26には、排気口26aを開閉する手動式の蓋31も備えている。排気口26aには網戸32が取付けてある。
本実施形態によれば、第1・第2実施形態と同様に、通気路5を流れる空気にフレームの熱を伝えることで、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱効果により、フレームの熱貫流率をほぼゼロにできることに加え、風の強さに応じて室内に流入する空気の量を自動的に調節でき、また台風などの強風時には排気口26aを自動的に閉鎖して、冷気が室内に流入するのを防止できる。
【0027】
第1〜第3実施形態のサッシは、フレームがアルミと樹脂を組み合わせたものとなっているが、フレーム全体を樹脂で形成することもできる。
【0028】
図9(a)は、本発明のサッシのフレーム7の第4実施形態を示しており、フレーム7は樹脂で形成され、フレーム7内にはアルミ製の板状のフィン8が室内外方向に間隔をおいて、且つフレーム7の内周側と外周側の壁から交互に延出するように配置され、フィン8,8,…によりフレーム7内に室内外に連通する通気路5が迷路のように形成されている。本実施形態では、フィン7が伝熱部と抵抗付与部の両方の役割を担い、空気が通気路5を通過する間に室温付近に暖められて室内に流入する。
図9(b)は、本発明のサッシのフレーム7の第5実施形態を示している。フレーム7は、室外側の部分7aが樹脂製で、室内側の部分7bがアルミニウム合金製となっており、室内側の部分7bには室内の熱を吸収しやすいようにフランジ部33が設けてある。フレーム7内部には、第4実施形態と同様に複数のフィン8,8,…が設けてある。本実施形態は、フレーム7の室内側の部分7bをアルミニウム合金製としたことで、通気路5内を通過する空気に対してフィン8からの伝熱が促進される。
図9(c)は、本発明のサッシのフレーム7の第6実施形態を示している。フレーム7は、室外側の部分7aと室内側の部分7bがアルミニウム合金製となっており、中間部7cが樹脂製となっている。室外側と室内側のアルミニウム合金製の部分7a,7bの内部にはフィン8が設けてあり、中間の樹脂製の部分7cにはポーラス材6が埋め込んである。本実施形態によれば、中間部7cに埋め込んだポーラス材6により通気路5内を通過する空気の流速が抑えられ、その後にアルミニウム合金製の室内側の部分7bの通気路5内壁とフィン8とから効率よく熱が伝達されるため、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱効果をより一層高められる。
図9(d)は、本発明のサッシのフレーム7の第7実施形態を示しており、フレーム7は樹脂で形成され、フレーム7内にはアルミ製のパンチングパネル9,9,…が室内外方向に間隔をおいて配置されている。本実施形態では、パンチングパネル9が伝熱部と抵抗付与部の両方の役割を担い、空気が室外側からパンチングパネル9を順次通過する間に流速が次第に抑えられると同時に、パンチングパネル9から熱が伝達され、室温付近に暖められて室内に流入する。パンチングパネル9は、隣接するもので孔9aの位置をずらしたり、孔9aの大きさや開口率を異ならせたりすることで、抵抗の強さを簡便に調節できる。
図9(e)は、本発明のサッシのフレーム7の第8実施形態を示している。フレーム7は、室外側の部分7aと室内側の部分7bがアルミニウム合金製となっており、中間部7cが樹脂製となっており、室内側の部分7cには室内の熱を吸収しやすいようにフランジ部33が設けてある。フレーム7内部には、第7実施形態と同様にパンチングパネル9,9,…が室内外方向に間隔をおいて配置してある。本実施形態は、フレーム7の室内側の部分7bをアルミニウム合金製としたことで、通気路5内を通過する空気に対してパンチングパネル9からの伝熱が促進される。
図9(f)は、本発明のサッシのフレーム7の第9実施形態を示している。フレーム7は、室外側の部分7aと室内側の部分7bがアルミニウム合金製となっており、中間部7cが樹脂製となっている。室外側と室内側のアルミニウム合金製の部分7a,7bの内部にはフィン8が設けてあり、さらに室内側の部分7bの内部にパンチングパネル9を設けてある。中間の樹脂製の部分7cにはポーラス材6が埋め込んである。本実施形態によれば、中間部に埋め込んだポーラス材6により通気路5内を通過する空気の流速が抑えられ、その後にアルミニウム合金製の室内側の部分7bの通気路5内壁とフィン8及びパンチングパネル9とから効率よく熱が伝達されるため、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱効果をより一層高められる。
【0029】
上述の第4〜第9実施形態のフレーム7についても、室外側の気温が0℃、室内側の気温が20℃で、通気路を通過する空気の流量を変化させたときに、フレームの室内側と室外側の表面温度、出入口の空気温度、出入口風速、圧力、フレームの熱貫流率Ufを、解析によって求めた。解析結果を図10に示す。
【0030】
図10に示すように、いずれのフレーム7も熱貫流率Ufはゼロに近い値となった。フレーム7の室内側の部分7bをアルミニウム合金製とした第5,6実施形態と第8,9実施形態は、フレーム7全体が樹脂製の第4,7実施形態と比較して、出口の空気温度が高くなった。また通気路5内にポーラス材6を配置した第6,9実施形態は、ポーラス材6を配置しないものと比較して室内外の圧力差が大きくなった。
【0031】
次に、図15(a)〜(d)に示すように、通気路5内に複数のフィン8を室内外方向に間隔をおいて互い違いに設けた同一の断面形状のフレーム7について、室外側の気温が0℃、室内側の気温が20℃で、通気路を通過する空気の流量を変化させたときに、フレーム7の材質の違いにより、フレーム室内側表面温度、出口空気温度、フレームの熱貫流率Ufがどのように変化するか解析を行った。図15(a)は、フレーム7全体が樹脂で形成されたオール樹脂フレームであり、図15(b)は、フレーム7の室外側の部分7aと室内側の部分7bがアルミで、室内外方向の中間部7cが樹脂で形成されたアルミ−樹脂−アルミフレームであり、図15(c)は、フレーム7の室外側の部分7aが樹脂で形成され、室内側の部分7bがアルミで形成された樹脂−アルミフレームであり、図15(d)は、フレーム7全体がアルミで形成されたオールアルミフレームである。解析結果を図16に示す。
【0032】
図16に示すように、オール樹脂フレームは熱伝導率が小さいため、熱貫流率Ufが最も小さくなり、また室内側表面温度が最も高くなり、室内側の結露を防止する効果が高い。室内側の部分7bがアルミで形成されたアルミ−樹脂−アルミフレームと樹脂−アルミフレームは、熱貫流率Ufがオール樹脂フレームとほとんど変わらない小さい値となり、出口空気温度がオール樹脂フレームよりも高くなる。
【0033】
図11,12は、本発明のサッシ1の他の実施形態を示している。本サッシ1は、たてすべり出し窓に適用したものであり、上枠2と下枠3と左右の竪枠4,4とを枠組みした窓枠16に、障子34が金具35,35を介して室外側にすべり出しながら回動して開くように取付けてある。
上枠2と下枠3と竪枠4は、アルミニウム合金の押出形材よりなる室外側枠材20と室内側枠材21を樹脂製の断熱材22で連結して構成してあり、内部に室内外に連通する通気路5が形成され、断熱材22,22間にポーラス材6が埋め込んである。空気の吹き出し口36は、内周側に向けて開口している。空気の取り込み口37は室外側に向けて開口し、雨が入らないようにカバー24で覆ってある。
【0034】
障子34は、上框38と下框39と竪框40,40とを四周框組みし、その内側に複層ガラス41を納めて構成してある。上框38と下框39と竪框40は、上枠2と下枠3と竪枠4と同様に、アルミニウム合金の押出形材よりなる室外側框材42と室内側框材43を樹脂製の断熱材44で連結して構成してあり、内部に室内外に連通する通気路5が形成され、断熱材44,44間にポーラス材6が埋め込んである。空気の吹き出し口45は、内周側に向けて開口している。空気の取り込み口46は室外側に向けて開口し、雨が入らないようにカバー47で覆ってある。
【0035】
本サッシ1は、窓枠16だけでなく障子34の框38,39,40内にも通気路5が設けられ、空気が通気路5を通過する間に室内側框材43から熱が伝わって温められることで、空気の流入する方向と逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられることによる優れた断熱効果を発揮し、これにより框38,39,40の熱貫流率Uもほぼゼロとすることができる。
【0036】
図14は、本発明のサッシ1のさらに別の実施形態を示している。図1に示す第1実施形態とは、フレーム(上枠2)の室外側に設けたカバー24の内部に、フレームの室外側壁の開口23aを覆うように、抵抗付与部としてのポーラス材48を設けている点が異なっている。このポーラス材48は、着脱自在である。
冬期など、内外温度差が大きい場合、窓の上下で圧力差がつき、上枠部で温度差換気による逆流が生じるおそれがある。また、外部風による窓面の風圧は大きく異ならないが、風の乱れなどにより窓枠の場所により圧力差が生じ、逆流が起きるおそれがある。本実施形態のように、枠の逆流が起きやすい箇所の室外側に適宜ポーラス材48を埋め込んで抵抗を与えることで、圧力差による逆流を防止することができる。これにより四周の枠から均一に空気を取り込むことが可能になり、室内外気圧差が過度に大きくなり過ぎず、ドアの開閉などに支障をきたすこともない。
【0037】
これまで冬季の場合について説明したが、本サッシは夏季においても冬季と同様に優れた断熱性能を発揮する。夏季の場合は、送風機15により室内を正圧に調整し、フレームの通気路5を空気が室内側から室外側に流れるようにする。室内の空気の温度は室外よりも低いので、通気路5内を空気が室内側から室外側に流れる間に空気にフレームの熱が伝達され、空気が流出する方向とは逆方向である室外側から室内側への熱輸送が妨げられることによる優れた断熱効果を発揮して、室内が涼しく保たれる。
【0038】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。通気路5は、上枠2と下枠3と左右の竪枠4,4のうち、少なくとも一箇所に設けてあればよい。伝熱部は、通気路5内を通過する空気に熱を伝えられればよく、パンチングパネル9やフィン8に限らず、その形態は適宜変更することができる。ポーラス材6は、多孔質の材料であればよく、グラスウールの他、ウレタンフォーム、絨毯等を適宜選択して用いることができ、その材質と設置する場所によっては抵抗付与部としての機能に加え、伝熱部として機能させることもできる。伝熱部と抵抗付与部の配置は、適宜変更することができる。フレームの金属製の部分は、アルミの他、ステールやマグネシウム合金等とすることができ、フレームの非金属製の部分は、金属製の部分よりも熱伝導率が低い材質であればよく、樹脂の他に木材等を用いることができる。本発明のサッシは、嵌め殺し窓やたてすべり出し窓の他、引違い窓、開き窓等、あらゆる窓種に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 サッシ
2 上枠(フレーム)
3 下枠(フレーム)
4 竪枠(フレーム)
5 通気路
6 ポーラス材(抵抗付与部)
7 フレーム
8 フィン(伝熱部兼抵抗付与部)
9 パンチングパネル(伝熱部兼抵抗付与部)
20 室外側枠材(フレームの金属製の部分)
21 室内側枠材(フレームの金属製の部分)
22 断熱材(フレームの非金属製の部分)
21a,21b,21c 室内側枠材の通気路に面した壁(伝熱部)
26 換気ユニット(伝熱部兼抵抗付与部)
27,31 蓋
29 風量調整羽根(蓋)
48 ポーラス材(抵抗付与部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性に優れたサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高気密・高断熱の建物では、窓部からの熱のロスが大きいのが問題となっている。窓部の断熱性を高めるために、窓のフレームとして樹脂製のフレームやアルミと樹脂の複合構造のフレームも知られているが、そのような断熱性のフレームであっても熱貫流率をゼロにすることはできず、冬季にはフレームを通じて室内の熱が室外に逃げ、夏季にはフレームを通じて室外の熱が室内に入ってくるため、窓部を大きくすればするほど冷暖房のコストが増大する。
【0003】
特許文献1には、窓のフレームの内部と二重ガラス間の隙間に空気を通して換気を行い、空調負荷の軽減を図るものが記載されている。しかしこの窓はフレームが断熱構造になっておらず、冬季にはフレームを伝わって室内の熱が逃げる上、フレーム内を通じて室外の空気を室内に導入したとすると、冷たい外気によって室内が冷やされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−185186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、フレームを通じて換気を行いつつ断熱性能を高めることのできるサッシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明によるサッシは、断熱性のフレームを備え、断熱性のフレームは、室内外に連通する通気路と、通気路を流れる空気に熱を伝達する伝熱部と、通気路を流れる空気に抵抗を与える抵抗付与部とを有することを特徴とする。
ここで「フレーム」には、窓枠を構成する上枠、下枠及び竪枠の他、方立や無目、障子の框等が含まれる。断熱性のフレームとしては、例えば全体を樹脂等の非金属で形成したもの、樹脂等の非金属とアルミ等の金属を組合わせたものとすることができる。伝熱部と抵抗付与部は、別々に設けることもできるが、伝熱部が抵抗付与部を兼ねるものとすることもできる。
【0007】
請求項2記載の発明によるサッシは、請求項1記載の発明の構成に加え、断熱性のフレームは、室内側が金属製であり、室外側が非金属製であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明によるサッシは、請求項1記載の発明の構成に加え、断熱性のフレームは、室内側が金属製であり、室内外方向の中間部が非金属製であり、抵抗付与部が、フレームの室内側の金属製の部分よりも室外側に設けてあることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明によるサッシは、請求項2又は3記載の発明の構成に加え、フレームの室内側の金属製の部分に伝熱部が設けてあり、伝熱部よりも室外側に抵抗付与部が設けてあることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明によるサッシは、請求項1,2,3又は4記載の発明の構成に加え、通気路を開閉する蓋を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によるサッシは、断熱性のフレームを備えることで、フレーム自体の室内外の熱移動を抑えられることに加え、フレームの通気路を通じて換気を行うことができ、しかも伝熱部と抵抗付与部により、通気路を流れる空気に効率良く熱が伝達されることで、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられるので、極めて高い断熱性能を発揮する。また冬季には、室内に流入する外気が室温に近い温度となるため、フレームの室内側の結露を防止できる。フレームに通気路を設けたので、壁に換気のための穴を開けずにすみ、新築以外にも戸建て住宅のリフォームやマンションのリフォーム等、気密住宅に幅広く対応できる。
【0012】
請求項2記載の発明によるサッシは、フレームの室内側が金属製であることで、フレームの室内側が室温に近い温度となり、通気路を流れる空気により効率よくフレームの熱を伝達できるため、上述の空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱の効果を高めることができる。また、フレームの室外側が非金属製であるため、フレーム自体の室内外の熱移動を抑えられる。
【0013】
さらに請求項3記載の発明によるサッシは、フレームの室内側が金属製であることで、フレームの室内側が室温に近い温度となり、尚且つフレームの室内側の金属製の部分よりも室外側に抵抗付与部が設けてあることで、抵抗付与部により空気の流れをゆっくりにしてから室内側の金属製の部分を空気が通過することで、通気路を流れる空気により効率よくフレームの熱を伝達できるため、上述の空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱の効果をより一層高めることができる。また、フレームの室内外方向の中間部が非金属製であるため、フレーム自体の室内外の熱移動を抑えられる。
【0014】
請求項4記載の発明によるサッシは、フレームの室内側の金属製の部分に伝熱部が設けてあり、伝熱部よりも室外側に抵抗付与部材が設けてあるので、抵抗付与部によって勢いが抑えられた空気がフレーム室内側の金属製の部分に流れ込み、伝熱部によって効率良くフレームの熱が伝えられるため、上述の空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱の効果をより一層高めることができる。
【0015】
請求項5記載の発明によるサッシは、通気路を開閉する蓋を有しているので、強風時に通気路を蓋で塞ぐことで、冷たい外気が室内に流れ込むのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のサッシのフレーム(上枠)の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明のサッシの一実施形態を示す室外側正面図である。
【図3】同サッシの縦断面図である。
【図4】同サッシの横断面図である。
【図5】本発明のサッシが組み込まれた住宅の縦断面図である。
【図6】本発明のサッシのフレーム(上枠)の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図7】第1・第2実施形態のフレームと図17に示す比較例のフレームの解析結果を示す表である。
【図8】本発明のサッシのフレーム(上枠)の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明のサッシのフレームのさらに別の実施形態を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す各フレームの解析結果を示す表である。
【図11】本発明のサッシの他の実施形態を示す縦断面図である。
【図12】同サッシの横断面図である。
【図13】第1実施形態のフレームを用いたサッシについて、ガラスを含めたサッシ全体の熱貫流率の解析結果を示す表である。
【図14】本発明のサッシのさらに別の実施形態を示す縦断面図である。
【図15】(a)〜(c)は本発明のサッシのフレームの実施例を示す縦断面図であり、(d)は比較例の縦断面図である。
【図16】図15に示す各フレームについての解析結果を示す表である。
【図17】サッシのフレームの比較例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2〜4は、本発明のサッシ1の一実施形態を示し、図1はそのサッシ1の上枠2を拡大した縦断面図であり、図5はそのサッシ1が組み込まれた住宅を示している。図5に示すように、本住宅は床10と壁11と天井12とで室内が仕切られ、床10と壁11と天井12には断熱材を埋め込んで断熱性を高めてある。一方の壁11には窓開口部13を設けてサッシ1を取付けてあり、他方の壁11には換気用の開口部14を設けて送風機15が取付けてある。サッシ1は、窓枠16に室内外に連通する通気路5を備えており、送風機15を運転して室内の空気を屋外に吸い出すことで室内を負圧に調整し、それに伴い室外の空気を窓枠16の通気路5から室内に取り込み、24時間換気を行っている。
また、住宅には公知の冷暖房設備を備え、冷暖房設備により室内の気温を20℃前後の快適な温度に保っている。図5は、冷暖房設備としてヒートポンプ17を採用した場合を示している。ヒートポンプ17は、室内側ユニット17aと室外側ユニット17bとを備え、内蔵する熱交換器と冷媒回路により室内外の空気間で熱交換を行い、室内側ユニット17aの送風口17cより冬季には温風を、夏季には冷風を室内に噴き出す。なおヒートポンプ17は、冬季には送風機15から排出される室内の空気をダクト18を通して室外側ユニット17bに送り、その空気から熱を回収することで、暖房コストを節約できるようにしている。
【0018】
サッシ1は、図2〜4に示すように、上枠2と下枠3と左右の竪枠4,4とを方形に枠組みして窓枠16が構成され、窓枠16内には3枚のガラス板19を間隔をおいて保持した複層ガラスを取付けてあり、いわゆる嵌め殺し窓となっている。
上枠2は、図1に示すように、アルミニウム合金の押出形材よりなる室外側枠材20と室内側枠材21とを、樹脂製の断熱材22,22にかしめ連結した構造になっており、断熱材22により室内外の熱の伝達を防いでいる。室外側枠材20は、室外側壁と室内側壁に開口23a,23bを設けてあり、室外側壁の開口23aは、雨や強風が吹き込むのを防ぐためにカバー24を取付けて覆ってある。断熱材22,22間には、抵抗付与部としてのポーラス材6が埋め込んである。ポーラス材6としては、グラスウールを用いている。
室内側枠材21は、内周側に凹部25を形成し、凹部25に換気ユニット26が取付けてあり、室外側壁と内周側壁とに開口23c,23dを形成し、室外側から導入された空気を換気ユニット26の排気口26aよりガラス板19に沿うように噴き出すようにしている。このように通気路5を内周側に曲げ、且つ換気ユニット26に空気を通過させることで、通気路5の室内側を長く複雑化している。なお、室内側上枠材21の通気路5に面した壁21a,21b,21c全体が、通気路5を通過する空気に室内の熱を伝達する伝熱部に相等する。また換気ユニット26は、抵抗付与部及び伝熱部として機能する。換気ユニット26内には、排気口26aを開閉する蓋27を有している。図1は、蓋27が開いた状態を示しており、台風などの強風時には、図示しない操作部を操作することで蓋27を排気口26aに密着させ、排気口26aを塞ぐことができる。
【0019】
冬季には、室内側枠材21は熱伝導率のよいアルミニウム合金製のため室内の温度と略同じ温度に暖められ、室外側枠材20との間に断熱材22が介在しているため、室内側枠材21の熱が室外側に伝わるのが遮断される。室外側枠材20の開口23aより侵入した室外の冷たい空気は、ポーラス材6の内部を通過することで流速が抑えられ、その後、室温に暖められた室内側枠材21の内部の壁21a,21b,…と換気ユニット26の内部に接触することで熱が空気に効率よく伝わり、室温に近い温度に暖められて排気口26aより室内に排出される。これにより空気の流入する方向とは逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられ、極めて高い断熱性を発揮し、上枠2の熱貫流率U(W/m2K)をほぼゼロにすることができる。また、室内に流入する外気が室温に近い温度になるため、上枠2の室内側に結露が生ずるのを防止できる。また、室外側にカバー24を設け、空気を下から取り込むようにしたので、雨水の浸入を防止して水密性を確保できる。さらに、室内側の排気口26aを内周側に向けて設けたので、風が人体に直接あたらない。
【0020】
これまで上枠2について説明したが、下枠3と竪枠4も上枠2と同様の構造となっており、上述の通気路5を流れる空気にフレームの熱を伝えることで、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱効果により、下枠3と竪枠4の熱貫流率Uもほぼゼロになっている。
【0021】
図6は、上枠2の第2実施形態を示している。この上枠は、樹脂製の室外側枠材28と、アルミニウム合金製の室内側枠材21とを結合した構造となっており、室外側枠材28の通気路5内部にポーラス材6を埋め込んでいる。他の点は、図1に示す第1実施形態と同様である。
【0022】
図1に示す第1実施形態のフレーム(上枠2)と図6に示す第2実施形態のフレームについて、室外側の気温が0℃、室内側の気温が20℃で、通気路5を通過する空気の流量を変化させたときに、フレームの室内側と室外側の表面温度、出入口の空気温度、内外圧力差、フレームの熱貫流率Ufを解析によって求めた。また比較のために、図17に示すように、フレーム90全体がアルミニウム合金製で、ポーラス材6がフレーム90の通気路5内に埋め込んでいないものについても同様に解析を行った。解析結果を図7に示す。
【0023】
図7に示すように、第1・第2実施形態のフレームでは、通気路5内にポーラス材6を埋め込んだことで、内外圧力差が比較例のものより大きくなり、フレームの熱貫流率Ufは比較例ではおよそ1〜5であるのに対して、第1・第2実施形態のものはほぼゼロになった。ちなみに、通気路が無い通常のサッシのフレームの熱貫流率Ufは、アルミフレームで7〜9、アルミ断熱フレーム(室外側と室内側のアルミフレームを樹脂で連結したもの)で3.5〜4、室外側がアルミで室内側が樹脂の複合フレームで3〜4、樹脂フレームで2〜2.5である。
【0024】
図1に示す第1実施形態のフレームを用いたサッシ1について、室外側の気温が0℃、室内側の気温が20℃で、通気路5を通過する空気の流量を変化させたときの、ガラス19を含めたサッシ全体の熱貫流率Uwを解析により求めた。サッシ1は、フレームの面積が0.4m2、ガラスの面積が1.6m2、総面積が2m2である。解析結果を図13に示す。
【0025】
図13に示すように、サッシ全体の熱貫流率Uwは、フレームの熱貫流率Ufと比べて大きくなる。これは、ガラスの熱貫流率Ugが0.8であり、ガラスがサッシの面積の大半を占めているため、その影響を受けるためである。サッシ全体の熱貫流率Uwは、流量が増加するにつれて小さくなり、流量が5.5m3/h以上ではガラスの熱貫流率Ug(0.8)より小さくなった。
【0026】
図8は、本発明のサッシ1のフレーム(上枠2)の第3実施形態を示している。図1に示す第1実施形態と異なる点について説明すると、換気ユニット26内に風量調整羽根29を内蔵しており、風量調整羽根29はバネ30で付勢して内外周方向に移動可能に設けてあり、風圧を受けると内周側に移動して流量を調節する。風が強いときには、仮想線で示すように風量調節羽根29が内周側に移動して排気口26aを塞ぐ。また換気ユニット26には、排気口26aを開閉する手動式の蓋31も備えている。排気口26aには網戸32が取付けてある。
本実施形態によれば、第1・第2実施形態と同様に、通気路5を流れる空気にフレームの熱を伝えることで、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱効果により、フレームの熱貫流率をほぼゼロにできることに加え、風の強さに応じて室内に流入する空気の量を自動的に調節でき、また台風などの強風時には排気口26aを自動的に閉鎖して、冷気が室内に流入するのを防止できる。
【0027】
第1〜第3実施形態のサッシは、フレームがアルミと樹脂を組み合わせたものとなっているが、フレーム全体を樹脂で形成することもできる。
【0028】
図9(a)は、本発明のサッシのフレーム7の第4実施形態を示しており、フレーム7は樹脂で形成され、フレーム7内にはアルミ製の板状のフィン8が室内外方向に間隔をおいて、且つフレーム7の内周側と外周側の壁から交互に延出するように配置され、フィン8,8,…によりフレーム7内に室内外に連通する通気路5が迷路のように形成されている。本実施形態では、フィン7が伝熱部と抵抗付与部の両方の役割を担い、空気が通気路5を通過する間に室温付近に暖められて室内に流入する。
図9(b)は、本発明のサッシのフレーム7の第5実施形態を示している。フレーム7は、室外側の部分7aが樹脂製で、室内側の部分7bがアルミニウム合金製となっており、室内側の部分7bには室内の熱を吸収しやすいようにフランジ部33が設けてある。フレーム7内部には、第4実施形態と同様に複数のフィン8,8,…が設けてある。本実施形態は、フレーム7の室内側の部分7bをアルミニウム合金製としたことで、通気路5内を通過する空気に対してフィン8からの伝熱が促進される。
図9(c)は、本発明のサッシのフレーム7の第6実施形態を示している。フレーム7は、室外側の部分7aと室内側の部分7bがアルミニウム合金製となっており、中間部7cが樹脂製となっている。室外側と室内側のアルミニウム合金製の部分7a,7bの内部にはフィン8が設けてあり、中間の樹脂製の部分7cにはポーラス材6が埋め込んである。本実施形態によれば、中間部7cに埋め込んだポーラス材6により通気路5内を通過する空気の流速が抑えられ、その後にアルミニウム合金製の室内側の部分7bの通気路5内壁とフィン8とから効率よく熱が伝達されるため、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱効果をより一層高められる。
図9(d)は、本発明のサッシのフレーム7の第7実施形態を示しており、フレーム7は樹脂で形成され、フレーム7内にはアルミ製のパンチングパネル9,9,…が室内外方向に間隔をおいて配置されている。本実施形態では、パンチングパネル9が伝熱部と抵抗付与部の両方の役割を担い、空気が室外側からパンチングパネル9を順次通過する間に流速が次第に抑えられると同時に、パンチングパネル9から熱が伝達され、室温付近に暖められて室内に流入する。パンチングパネル9は、隣接するもので孔9aの位置をずらしたり、孔9aの大きさや開口率を異ならせたりすることで、抵抗の強さを簡便に調節できる。
図9(e)は、本発明のサッシのフレーム7の第8実施形態を示している。フレーム7は、室外側の部分7aと室内側の部分7bがアルミニウム合金製となっており、中間部7cが樹脂製となっており、室内側の部分7cには室内の熱を吸収しやすいようにフランジ部33が設けてある。フレーム7内部には、第7実施形態と同様にパンチングパネル9,9,…が室内外方向に間隔をおいて配置してある。本実施形態は、フレーム7の室内側の部分7bをアルミニウム合金製としたことで、通気路5内を通過する空気に対してパンチングパネル9からの伝熱が促進される。
図9(f)は、本発明のサッシのフレーム7の第9実施形態を示している。フレーム7は、室外側の部分7aと室内側の部分7bがアルミニウム合金製となっており、中間部7cが樹脂製となっている。室外側と室内側のアルミニウム合金製の部分7a,7bの内部にはフィン8が設けてあり、さらに室内側の部分7bの内部にパンチングパネル9を設けてある。中間の樹脂製の部分7cにはポーラス材6が埋め込んである。本実施形態によれば、中間部に埋め込んだポーラス材6により通気路5内を通過する空気の流速が抑えられ、その後にアルミニウム合金製の室内側の部分7bの通気路5内壁とフィン8及びパンチングパネル9とから効率よく熱が伝達されるため、空気の流入する方向とは逆方向の熱輸送が妨げられることによる断熱効果をより一層高められる。
【0029】
上述の第4〜第9実施形態のフレーム7についても、室外側の気温が0℃、室内側の気温が20℃で、通気路を通過する空気の流量を変化させたときに、フレームの室内側と室外側の表面温度、出入口の空気温度、出入口風速、圧力、フレームの熱貫流率Ufを、解析によって求めた。解析結果を図10に示す。
【0030】
図10に示すように、いずれのフレーム7も熱貫流率Ufはゼロに近い値となった。フレーム7の室内側の部分7bをアルミニウム合金製とした第5,6実施形態と第8,9実施形態は、フレーム7全体が樹脂製の第4,7実施形態と比較して、出口の空気温度が高くなった。また通気路5内にポーラス材6を配置した第6,9実施形態は、ポーラス材6を配置しないものと比較して室内外の圧力差が大きくなった。
【0031】
次に、図15(a)〜(d)に示すように、通気路5内に複数のフィン8を室内外方向に間隔をおいて互い違いに設けた同一の断面形状のフレーム7について、室外側の気温が0℃、室内側の気温が20℃で、通気路を通過する空気の流量を変化させたときに、フレーム7の材質の違いにより、フレーム室内側表面温度、出口空気温度、フレームの熱貫流率Ufがどのように変化するか解析を行った。図15(a)は、フレーム7全体が樹脂で形成されたオール樹脂フレームであり、図15(b)は、フレーム7の室外側の部分7aと室内側の部分7bがアルミで、室内外方向の中間部7cが樹脂で形成されたアルミ−樹脂−アルミフレームであり、図15(c)は、フレーム7の室外側の部分7aが樹脂で形成され、室内側の部分7bがアルミで形成された樹脂−アルミフレームであり、図15(d)は、フレーム7全体がアルミで形成されたオールアルミフレームである。解析結果を図16に示す。
【0032】
図16に示すように、オール樹脂フレームは熱伝導率が小さいため、熱貫流率Ufが最も小さくなり、また室内側表面温度が最も高くなり、室内側の結露を防止する効果が高い。室内側の部分7bがアルミで形成されたアルミ−樹脂−アルミフレームと樹脂−アルミフレームは、熱貫流率Ufがオール樹脂フレームとほとんど変わらない小さい値となり、出口空気温度がオール樹脂フレームよりも高くなる。
【0033】
図11,12は、本発明のサッシ1の他の実施形態を示している。本サッシ1は、たてすべり出し窓に適用したものであり、上枠2と下枠3と左右の竪枠4,4とを枠組みした窓枠16に、障子34が金具35,35を介して室外側にすべり出しながら回動して開くように取付けてある。
上枠2と下枠3と竪枠4は、アルミニウム合金の押出形材よりなる室外側枠材20と室内側枠材21を樹脂製の断熱材22で連結して構成してあり、内部に室内外に連通する通気路5が形成され、断熱材22,22間にポーラス材6が埋め込んである。空気の吹き出し口36は、内周側に向けて開口している。空気の取り込み口37は室外側に向けて開口し、雨が入らないようにカバー24で覆ってある。
【0034】
障子34は、上框38と下框39と竪框40,40とを四周框組みし、その内側に複層ガラス41を納めて構成してある。上框38と下框39と竪框40は、上枠2と下枠3と竪枠4と同様に、アルミニウム合金の押出形材よりなる室外側框材42と室内側框材43を樹脂製の断熱材44で連結して構成してあり、内部に室内外に連通する通気路5が形成され、断熱材44,44間にポーラス材6が埋め込んである。空気の吹き出し口45は、内周側に向けて開口している。空気の取り込み口46は室外側に向けて開口し、雨が入らないようにカバー47で覆ってある。
【0035】
本サッシ1は、窓枠16だけでなく障子34の框38,39,40内にも通気路5が設けられ、空気が通気路5を通過する間に室内側框材43から熱が伝わって温められることで、空気の流入する方向と逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられることによる優れた断熱効果を発揮し、これにより框38,39,40の熱貫流率Uもほぼゼロとすることができる。
【0036】
図14は、本発明のサッシ1のさらに別の実施形態を示している。図1に示す第1実施形態とは、フレーム(上枠2)の室外側に設けたカバー24の内部に、フレームの室外側壁の開口23aを覆うように、抵抗付与部としてのポーラス材48を設けている点が異なっている。このポーラス材48は、着脱自在である。
冬期など、内外温度差が大きい場合、窓の上下で圧力差がつき、上枠部で温度差換気による逆流が生じるおそれがある。また、外部風による窓面の風圧は大きく異ならないが、風の乱れなどにより窓枠の場所により圧力差が生じ、逆流が起きるおそれがある。本実施形態のように、枠の逆流が起きやすい箇所の室外側に適宜ポーラス材48を埋め込んで抵抗を与えることで、圧力差による逆流を防止することができる。これにより四周の枠から均一に空気を取り込むことが可能になり、室内外気圧差が過度に大きくなり過ぎず、ドアの開閉などに支障をきたすこともない。
【0037】
これまで冬季の場合について説明したが、本サッシは夏季においても冬季と同様に優れた断熱性能を発揮する。夏季の場合は、送風機15により室内を正圧に調整し、フレームの通気路5を空気が室内側から室外側に流れるようにする。室内の空気の温度は室外よりも低いので、通気路5内を空気が室内側から室外側に流れる間に空気にフレームの熱が伝達され、空気が流出する方向とは逆方向である室外側から室内側への熱輸送が妨げられることによる優れた断熱効果を発揮して、室内が涼しく保たれる。
【0038】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。通気路5は、上枠2と下枠3と左右の竪枠4,4のうち、少なくとも一箇所に設けてあればよい。伝熱部は、通気路5内を通過する空気に熱を伝えられればよく、パンチングパネル9やフィン8に限らず、その形態は適宜変更することができる。ポーラス材6は、多孔質の材料であればよく、グラスウールの他、ウレタンフォーム、絨毯等を適宜選択して用いることができ、その材質と設置する場所によっては抵抗付与部としての機能に加え、伝熱部として機能させることもできる。伝熱部と抵抗付与部の配置は、適宜変更することができる。フレームの金属製の部分は、アルミの他、ステールやマグネシウム合金等とすることができ、フレームの非金属製の部分は、金属製の部分よりも熱伝導率が低い材質であればよく、樹脂の他に木材等を用いることができる。本発明のサッシは、嵌め殺し窓やたてすべり出し窓の他、引違い窓、開き窓等、あらゆる窓種に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 サッシ
2 上枠(フレーム)
3 下枠(フレーム)
4 竪枠(フレーム)
5 通気路
6 ポーラス材(抵抗付与部)
7 フレーム
8 フィン(伝熱部兼抵抗付与部)
9 パンチングパネル(伝熱部兼抵抗付与部)
20 室外側枠材(フレームの金属製の部分)
21 室内側枠材(フレームの金属製の部分)
22 断熱材(フレームの非金属製の部分)
21a,21b,21c 室内側枠材の通気路に面した壁(伝熱部)
26 換気ユニット(伝熱部兼抵抗付与部)
27,31 蓋
29 風量調整羽根(蓋)
48 ポーラス材(抵抗付与部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性のフレームを備え、断熱性のフレームは、室内外に連通する通気路と、通気路を流れる空気に熱を伝達する伝熱部と、通気路を流れる空気に抵抗を与える抵抗付与部とを有することを特徴とするサッシ。
【請求項2】
断熱性のフレームは、室内側が金属製であり、室外側が非金属製であることを特徴とする請求項1記載のサッシ。
【請求項3】
断熱性のフレームは、室内側が金属製であり、室内外方向の中間部が非金属製であり、抵抗付与部が、フレームの室内側の金属製の部分よりも室外側に設けてあることを特徴とする請求項1記載のサッシ。
【請求項4】
フレームの室内側の金属製の部分に伝熱部が設けてあり、伝熱部よりも室外側に抵抗付与部が設けてあることを特徴とする請求項2又は3記載のサッシ。
【請求項5】
通気路を開閉する蓋を有することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のサッシ。
【請求項1】
断熱性のフレームを備え、断熱性のフレームは、室内外に連通する通気路と、通気路を流れる空気に熱を伝達する伝熱部と、通気路を流れる空気に抵抗を与える抵抗付与部とを有することを特徴とするサッシ。
【請求項2】
断熱性のフレームは、室内側が金属製であり、室外側が非金属製であることを特徴とする請求項1記載のサッシ。
【請求項3】
断熱性のフレームは、室内側が金属製であり、室内外方向の中間部が非金属製であり、抵抗付与部が、フレームの室内側の金属製の部分よりも室外側に設けてあることを特徴とする請求項1記載のサッシ。
【請求項4】
フレームの室内側の金属製の部分に伝熱部が設けてあり、伝熱部よりも室外側に抵抗付与部が設けてあることを特徴とする請求項2又は3記載のサッシ。
【請求項5】
通気路を開閉する蓋を有することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のサッシ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−193602(P2012−193602A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31349(P2012−31349)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【Fターム(参考)】
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