説明

サブトラクション画像処理装置及び処理方法

【課題】モーションアーチファクトが生じるおそれのある場合であっても、その影響のない適切なサブトラクション画像を容易且つ迅速に得ることのできるサブトラクション画像処理装置及び処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、サブトラクション画像処理装置及び処理方法に関するものであり、2ショットで得た2つの放射線画像情報に対して、アフィン変換処理を行うことで線形補正処理による位置合わせを行った後、放射線画像情報の撮影部位にモーションアーチファクトが生じる可能性がある場合、設定した処理領域に対して歪曲位置合わせ処理を行うことで非線形補正処理による位置合わせを行い、次いで、これらの放射線画像情報に対してサブトラクション処理を施すことにより、適切なサブトラクション画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる時間に取得した同一被写体の同一部位における複数の放射線画像情報をサブトラクション処理するサブトラクション画像処理装置及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療分野においては、放射線源から放射線を被写体(患者)に照射し、被写体を透過した放射線を放射線変換パネルに導いて放射線画像情報に変換した後、所望の画像処理を施す放射線画像処理装置が広汎に使用されている。処理された放射線画像情報は、表示装置を用いて表示することで診断等に利用される。
【0003】
なお、放射線変換パネルには、放射線を電荷情報に変換して蓄積し、電気信号として読み出すことのできる固体検出器や、放射線エネルギを蛍光体に蓄積し、レーザビーム等の励起光を照射することで、蓄積された放射線エネルギに応じて輝尽発光する蓄積性蛍光体パネル等がある。
【0004】
このような放射線画像処理装置を用いて、被写体の関心領域、例えば、肋骨の下部に配置される心臓や肺等の軟部組織を抽出する方法が実用化されている。この方法は、肋骨等の骨部と心臓等の軟部組織とで放射線の吸収特性が異なることを利用し、被写体に対してエネルギ分布の異なる放射線を照射することで、撮影条件の異なる2種類の放射線画像情報を取得し、これらの放射線画像情報の差分を所定の重み付けをして求めることにより、骨部又は軟部組織を抽出するものであり、エネルギサブトラクション処理と称されている。
【0005】
また、サブトラクション処理には、例えば、被写体の撮影対象部位に造影剤を注入して放射線を照射することで放射線画像情報を取得する一方、造影剤が注入されていない状態の撮影対象部位に放射線を照射して放射線画像情報を取得し、これらの放射線画像情報の差分を求めることにより、被写体から特定の撮影対象部位のみを抽出する時間サブトラクション処理と称される方法がある。
【0006】
これらのサブトラクション処理においては、取得した複数の放射線画像情報同士の位置を正確に一致させて差分を求めることが重要である。放射線画像情報間に位置ずれがあると、サブトラクション画像にぼけや疑似輪郭が生じたり、場合によっては、所望の部位を抽出できなくなってしまうおそれがある。
【0007】
このような問題を解消するため、特許文献1に開示された従来技術では、一方の放射線画像情報の全体を平行移動し、回転し、あるいは、拡大縮小することにより他方の放射線画像情報に重ね合わせるアフィン変換処理を放射線画像情報に施している。
【0008】
しかしながら、アフィン変換処理は、線形補正処理であり、放射線画像情報の全体の単純な位置ずれを補正するのには有効であるが、例えば、胸部X線撮影のように、放射線画像情報の一部に心臓や大動脈等の動体組織が含まれている場合、特に、異なる時間に取得した複数の放射線画像情報間にモーションアーチファクトが生じるため、アフィン変換処理によっては、放射線画像情報同士を正確に重ね合わせることができない。
【0009】
特許文献2に開示された従来技術では、このような放射線画像情報間のモーションアーチファクトを考慮した非線形補正処理を行う方法を提案している。この従来技術では、放射線画像情報に設定した複数の関心領域に対して可能なシフトのエッジ強度を計算し、このエッジ強度を最小にする空間座標に基づき、放射線画像情報を構成する各画素のシフトベクトルを計算する。そして、このシフトベクトルを用いて放射線画像情報を他方の放射線画像情報にシフトする非線形な歪曲位置合わせ処理を行うことにより、モーションアーチファクトを減少させ、動体組織を含む放射線画像情報同士を高精度に重ね合わせることを可能としている。
【0010】
【特許文献1】特開平7−244722号公報
【特許文献2】特開2003−244542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に開示された従来技術では、放射線画像情報を構成する画素毎にシフトベクトルを計算して歪曲位置合わせ処理を行うため、その処理に多大な時間、あるいは、処理能力が要求される。しかも、放射線画像情報間の位置ずれが大きい場合には、シフトベクトルの誤差も大きくなってしまい、高精度なサブトラクション画像を得ることができなくなってしまう。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、モーションアーチファクトが生じるおそれのある場合であっても、その影響のない適切なサブトラクション画像を容易且つ迅速に得ることのできるサブトラクション画像処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るサブトラクション画像処理装置は、異なる時間に取得した同一被写体の同一部位における複数の放射線画像情報をサブトラクション処理するサブトラクション画像処理装置において、
少なくとも1つの前記放射線画像情報に対して線形補正処理を施し、線形補正処理された前記放射線画像情報と他の前記放射線画像情報との位置合わせを行う線形補正処理部と、
少なくとも1つの前記放射線画像情報の一部の処理領域に対して非線形補正処理を施し、非線形補正処理された前記処理領域の前記放射線画像情報と他の前記放射線画像との位置合わせを行う非線形補正処理部と、
前記放射線画像情報の前記処理領域にモーションアーチファクトが生じるか否かを判定し、前記モーションアーチファクトが生じると判定した場合には、前記線形補正処理及び前記非線形補正処理を選択し、前記モーションアーチファクトが生じないと判定した場合には、前記線形補正処理のみを選択する補正処理選択部と、
前記線形補正処理又は前記非線形補正処理が施された前記放射線画像情報を用いて、サブトラクション処理を行うサブトラクション処理部と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るサブトラクション画像処理方法は、異なる時間に取得した同一被写体の同一部位における複数の放射線画像情報をサブトラクション処理するサブトラクション画像処理方法において、
少なくとも1つの前記放射線画像情報に対して線形補正処理を施し、線形補正処理された前記放射線画像情報と他の前記放射線画像情報との位置合わせを行うステップと、
前記放射線画像情報の一部の処理領域にモーションアーチファクトが生じるか否かを判定するステップと、
前記処理領域に前記モーションアーチファクトが生じると判定した場合、少なくとも1つの前記放射線画像情報の前記処理領域に対して非線形補正処理を施し、非線形補正処理された前記処理領域の前記放射線画像情報と他の前記放射線画像との位置合わせを行うステップと、
前記線形補正処理又は前記非線形補正処理が施された前記放射線画像情報を用いて、サブトラクション処理を行うステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モーションアーチファクトが生じる可能性がない場合には、線形補正処理のみを施した放射線画像情報を用いてサブトラクション処理を行い、モーションアーチファクトが生じる可能性がある場合には、線形補正処理を施すとともに、一部の処理領域に非線形補正処理を施した放射線画像情報を用いてサブトラクション処理を行うことにより、被写体の高精度なサブトラクション画像を容易且つ迅速に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明のサブトラクション画像処理装置及び処理方法が適用される本実施形態の放射線画像処理装置10の構成ブロック図である。
【0017】
放射線画像処理装置10は、被写体12に放射線Xを照射する放射線源14と、設定された管電圧、管電流、照射時間等の曝射条件に基づいて放射線源14を制御する放射線源制御部16と、被写体12を透過した放射線Xを電荷情報としての放射線画像情報に変換する放射線固体検出器18と、矢印方向に振動し、放射線固体検出器18に照射される放射線Xの散乱線を除去するブッキー20と、放射線固体検出器18によって検出された放射線画像情報に対してサブトラクション処理を含む画像処理を施す画像処理部22と、前記曝射条件に加えて、被写体12の撮影部位、撮影枚数、画像処理条件等の撮影条件を設定する撮影条件設定部24(撮影部位設定部)と、画像処理部22によって処理されることで得られたサブトラクション画像を表示する表示部26とを備える。
【0018】
画像処理部22は、放射線固体検出器18により取得した放射線画像情報を記憶する画像情報記憶部28と、異なる時間に取得した同一の被写体12の同一の部位における複数の放射線画像情報の位置合わせを行うため、これらの放射線画像情報に対して線形補正処理であるアフィン変換処理を施すアフィン変換処理部30(線形補正処理部)と、被写体12の撮影部位に心臓や大動脈等の動体組織が含まれている場合、撮影条件設定部24で設定された撮影部位に係る撮影条件に従い、その領域を処理領域として設定する処理領域設定部32と、設定された処理領域の複数の放射線画像情報の位置合わせを行うため、これらの放射線画像情報に対して非線形補正処理である歪曲位置合わせ処理を施す歪曲位置合わせ処理部34(非線形補正処理部)と、モーションアーチファクトが生じる可能性のある撮影部位が撮影条件として設定されているとき、処理領域設定部32及び歪曲位置合わせ処理部34による画像処理を選択する画像処理選択部36(補正処理選択部)と、アフィン変換処理及び必要に応じて歪曲位置合わせ処理が施された複数の放射線画像情報に対してサブトラクション処理を施すサブトラクション処理部38とを備える。
【0019】
図2は、放射線固体検出器18の回路構成ブロック図である。放射線固体検出器18は、センサ基板40と、ゲート線駆動回路44と、信号読出回路46と、ゲート線駆動回路44及び信号読出回路46を制御するタイミング制御回路48とを備える。
【0020】
センサ基板40は、放射線Xを感知して電荷を発生させるアモルファスセレン(a−Se)等の物質からなる光電変換層51を行列状の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)52のアレイの上に配置した構造を有し、発生した電荷を蓄積容量53に蓄積した後、各行毎にTFT52を順次オンにして、電荷を画像信号として読み出す。図2では、光電変換層51及び蓄積容量53からなる1つの画素50と1つのTFT52との接続関係のみを示し、その他の画素50の構成については省略している。なお、アモルファスセレンは、高温になると構造が変化して機能が低下してしまうため、所定の温度範囲内で使用する必要がある。各画素50に接続されるTFT52には、行方向と平行に延びるゲート線54と、列方向と平行に延びる信号線56とが接続される。各ゲート線54は、ゲート線駆動回路44に接続され、各信号線56は、信号読出回路46に接続される。
【0021】
本実施形態の放射線画像処理装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作について図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0022】
先ず、オペレータは、撮影条件設定部24を用いて、放射線源14に対する管電圧、管電流、放射線Xの照射時間、ターゲットの種類等の曝射条件、被写体12の撮影部位、撮影枚数、画像処理条件等の撮影条件を設定する(ステップS1)。
【0023】
次いで、放射線源制御部16は、撮影条件設定部24で設定した曝射条件から、例えば、所定のエネルギ分布の放射線Xを被写体12に照射することのできる第1曝射条件を選択して放射線源14を制御し(ステップS2)、1ショット目の曝射を行う(ステップS3)。
【0024】
第1曝射条件に設定された放射線源14から出力された放射線Xは、被写体12を透過した後、ブッキー20を介して放射線固体検出器18に照射される。放射線固体検出器18は、照射された放射線Xを各画素50の光電変換層51によって電気信号に変換した後、蓄積容量53に電荷として蓄積する。次いで、各蓄積容量53に蓄積された被写体12の1ショット目の放射線画像情報である電荷情報は、タイミング制御回路48からゲート線駆動回路44及び信号読出回路46に供給されるタイミング制御信号に従い、センサ基板40から読み出される。
【0025】
すなわち、ゲート線駆動回路44は、タイミング制御回路48からのタイミング制御信号に従ってゲート線54の1つを選択し、選択されたゲート線54に接続されている各TFT52のベースに駆動信号を供給する。一方、信号読出回路46は、タイミング制御回路48からのタイミング制御信号に従い、信号線56を行方向に順次切り替えながら選択する。選択されたゲート線54及び信号線56に対応する画素50の蓄積容量53に蓄積された放射線画像情報は、画像信号として画像処理部22に供給される。行方向に配列された各画素50から画像信号が読み出された後、ゲート線駆動回路44は、列方向の次のゲート線54を選択して駆動信号を供給し、信号読出回路46は、選択されたゲート線54に接続されたTFT52から同様にして画像信号を読み出す。以上の動作を繰り返すことにより、センサ基板40に蓄積された二次元の放射線画像情報が読み出され、第1放射線画像情報として画像処理部22の画像情報記憶部28に記憶される(ステップS4)。
【0026】
次いで、放射線源制御部16は、撮影条件設定部24で設定した曝射条件から、例えば、第1曝射条件とは異なるエネルギ分布の放射線Xを被写体12に照射することのできる第2曝射条件を選択して放射線源14を制御し(ステップS5)、2ショット目の曝射を行う(ステップS6)。
【0027】
放射線固体検出器18によって検出された2ショット目の第2放射線画像情報は、1ショット目の第1放射線画像情報と同様にして読み出され、画像処理部22の画像情報記憶部28に記憶される(ステップS7)。
【0028】
次に、画像情報記憶部28に記憶された第1放射線画像情報及び第2放射線画像情報を用いたサブトラクション処理を行う。
【0029】
そこで、図4に示すように、例えば、第1放射線画像情報S1を4等分し、各領域60a〜60dの放射線画像情報に対してフィルタリング処理を施すことにより、濃度が極端に変化する点を基準対応点62a〜62dとして各領域60a〜60dから1つずつ決定する(ステップS8)。
【0030】
次いで、各基準対応点62a〜62dを中心とする所定範囲のテンプレート領域64a〜64dを設定し、第1放射線画像情報S1及び第2放射線画像情報S2間において、対応するテンプレート領域64a〜64dが重ね合わさるように、テンプレートマッチング処理を行う(ステップS9)。なお、テンプレートマッチングとしては、相関法またはSSDA(Sequential Similarity Detection Algolithms)を利用することができる。テンプレートマッチング処理を施すことにより、第1放射線画像情報S1上で決定した基準対応点62a〜62dに対応する第2放射線画像情報S2上の対応点が求まる。
【0031】
以上のようにして求めた第1放射線画像情報S1上の基準対応点62a〜62dと、第2放射線画像情報S2上の対応点とを一致させるべく、アフィン変換処理を行う(ステップS10)。アフィン変換処理は、基準対応点62a〜62dの座標をu、v、対応点の座標をx、y、回転移動及び拡大、縮小の係数をa、b、c、d、平行移動の係数をe、fとし、
【0032】
【数1】

【0033】
の関係式から、最小自乗法を用いて各係数a〜fを求めた後、この関係式を用いて、第2放射線画像情報S2を構成する各画素の位置を補正することにより行われる。
【0034】
次に、画像処理選択部36は、撮影条件設定部24で設定された撮影条件から、被写体12の撮影された放射線画像情報の撮影部位にモーションアーチファクトの生じる可能性のある部位が含まれるか否かを判定する(ステップS11)。例えば、図4に示すように、胸部X線撮影によって取得された放射線画像情報の場合、動体組織として心臓が撮影部位に含まれており、この心臓の鼓動によって、放射線画像情報にモーションアーチファクトの生じる可能性がある。
【0035】
ステップS11において、モーションアーチファクトの生じる可能性のある部位が含まれていると判定された場合、画像処理選択部36によって処理領域設定部32及び歪曲位置合わせ処理部34が選択され、アフィン変換された放射線画像情報に対して、以下の歪曲位置合わせ処理が行われる。
【0036】
なお、上記の判定処理としては、例えば、撮影条件として胸部X線撮影を行うメニューを選択したとき、そのメニューに対応して予め設定されているデータテーブルを用いて、歪曲位置合わせ処理を行うことを自動的に判定するようにしてもよい。また、撮影条件に従って設定される放射線源14の曝射方向や曝射範囲から撮影部位を自動的に決定し、その結果に従って歪曲位置合わせ処理の要否を判定するようにしてもよい。
【0037】
処理領域設定部32は、図4に示すように、歪曲位置合わせ処理を施す歪曲位置合わせ処理領域66を設定する(ステップS12)。歪曲位置合わせ処理領域66は、例えば、画像情報記憶部28に記憶されている放射線画像情報を表示部26に表示させ、オペレータが表示された放射線画像情報に対して指定することができる。
【0038】
次に、歪曲位置合わせ処理部34は、歪曲位置合わせ処理領域66内の第1放射線画像情報S1における複数の基準対応点を決定する(ステップS13)。この処理は、アフィン変換処理に先立つステップS8での基準対応点62a〜62dの決定処理と同様にして行うことができる。
【0039】
次いで、ステップS9での処理と同様にして、テンプレートマッチング処理により、ステップS13で決定した第1放射線画像情報S1上の各基準対応点に対する第2放射線画像情報S2上の対応点を求める(ステップS14)。なお、第2放射線画像情報S2は、ステップS10においてアフィン変換処理されることで、第1放射線画像情報に対応して位置補正されているものである。
【0040】
基準対応点及び対応点が求められた後、対応点を各基準対応点にシフトするシフトベクトルを算出し、このシフトベクトルを補間処理することにより、歪曲位置合わせ処理領域66内における全ての画素に対するシフトベクトルを算出する(ステップS15)。
【0041】
歪曲位置合わせ処理領域66内の各画素のシフトベクトルが算出された後、各シフトベクトルを用いて、歪曲位置合わせ処理領域66内の第2放射線画像情報S2の全画素を、歪曲位置合わせ処理領域66内の第1放射線画像情報S1の全画素に位置合わせする歪曲位置合わせ処理を行う(ステップS16)。
【0042】
なお、ステップS12〜S16による歪曲位置合わせ処理では、モーションアーチファクトの生じる可能性のある歪曲位置合わせ処理領域66内のみを処理対象としているため、迅速に歪曲位置合わせ処理を行うことができる。また、歪曲位置合わせ処理の対象となる第2放射線画像情報S2は、ステップS10においてアフィン処理が施されたものであるため、第1放射線画像情報S1に対する位置ずれが最小限になっている。従って、シフトベクトルを用いた歪曲位置合わせ処理を高精度に行うことができ、これによって、極めて正確な位置合わせを行うことができる。
【0043】
以上のようにして、第1放射線画像情報S1及び第2放射線画像情報S2の位置合わせが終了する。なお、ステップS11において、撮影部位にモーションアーチファクトの生じる部位が含まれていない場合には、ステップS12〜S16による歪曲位置合わせ処理は行わない。従って、高精度に位置合わせされた第1放射線画像情報S1及び第2放射線画像情報S2を迅速に得ることができる。
【0044】
第1放射線画像情報S1及び第2放射線画像情報S2の位置合わせが終了した後、サブトラクション処理部38は、これらの放射線画像情報に対してサブトラクション処理を行う(ステップS17)。
【0045】
サブトラクション処理によるサブトラクション画像情報Sは、例えば、画像処理条件として設定された重み付け係数をαとし、第1放射線画像情報S1及び第2放射線画像情報S2を用いて、
S=α・S1+S2
として算出することができる。算出されたサブトラクション画像情報Sは、表示部26に表示される(ステップS18)。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0047】
例えば、サブトラクション処理は、画像のコントラスト及び濃度を適切なものとするため、重み付け係数K1、K2、K3を用いて、サブトラクション画像情報Sを、
S=K1・S1+K2・S2+K3
として求めるようにしてもよい。また、サブトラクション処理は、2つの放射線画像情報から求める場合に限られるものではなく、3つ以上の放射線画像情報から求めるようにしてもよい。
【0048】
また、照射された放射線Xを直接電荷情報に変換する放射線固体検出器18に代えて、シンチレータによって放射線Xを一旦可視光に変換し、その可視光を電荷情報に変換する構成からなる放射線検出器を利用することもできる。また、放射線Xを静電潜像として蓄積した後、読取光を照射することで電荷情報として読み出す光読出方式の放射線検出器を利用することもできる。さらに、放射線エネルギを蛍光体に蓄積し、レーザビーム等の励起光を照射することで、蓄積された放射線エネルギに応じて輝尽発光する蓄積性蛍光体パネルを利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る放射線画像処理装置の構成ブロック図である。
【図2】放射線画像処理装置に使用される放射線検出器の回路構成ブロック図である。
【図3】本実施形態に係るサブトラクション画像処理のフローチャートである。
【図4】アフィン変換処理及び歪曲位置合わせ処理が適用される放射線画像情報の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10…放射線画像処理装置
12…被写体
14…放射線源
16…放射線源制御部
18…放射線固体検出器
22…画像処理部
24…撮影条件設定部
26…表示部
28…画像情報記憶部
30…アフィン変換処理部
32…処理領域抽出部
34…歪曲位置合わせ処理部
36…画像処理選択部
38…サブトラクション処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる時間に取得した同一被写体の同一部位における複数の放射線画像情報をサブトラクション処理するサブトラクション画像処理装置において、
少なくとも1つの前記放射線画像情報に対して線形補正処理を施し、線形補正処理された前記放射線画像情報と他の前記放射線画像情報との位置合わせを行う線形補正処理部と、
少なくとも1つの前記放射線画像情報の一部の処理領域に対して非線形補正処理を施し、非線形補正処理された前記処理領域の前記放射線画像情報と他の前記放射線画像との位置合わせを行う非線形補正処理部と、
前記放射線画像情報の前記処理領域にモーションアーチファクトが生じるか否かを判定し、前記モーションアーチファクトが生じると判定した場合には、前記線形補正処理及び前記非線形補正処理を選択し、前記モーションアーチファクトが生じないと判定した場合には、前記線形補正処理のみを選択する補正処理選択部と、
前記線形補正処理又は前記非線形補正処理が施された前記放射線画像情報を用いて、サブトラクション処理を行うサブトラクション処理部と、
を備えることを特徴とするサブトラクション画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記線形補正処理は、アフィン変換処理であることを特徴とするサブトラクション画像処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記非線形補正処理は、歪曲位置合わせ処理であることを特徴とするサブトラクション画像処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記被写体の撮影部位を設定する撮影部位設定部を備え、
前記補正処理選択部は、前記撮影部位設定部により設定された前記撮影部位に基づいて補正処理を選択することを特徴とするサブトラクション画像処理装置。
【請求項5】
異なる時間に取得した同一被写体の同一部位における複数の放射線画像情報をサブトラクション処理するサブトラクション画像処理方法において、
少なくとも1つの前記放射線画像情報に対して線形補正処理を施し、線形補正処理された前記放射線画像情報と他の前記放射線画像情報との位置合わせを行うステップと、
前記放射線画像情報の一部の処理領域にモーションアーチファクトが生じるか否かを判定するステップと、
前記処理領域に前記モーションアーチファクトが生じると判定した場合、少なくとも1つの前記放射線画像情報の前記処理領域に対して非線形補正処理を施し、非線形補正処理された前記処理領域の前記放射線画像情報と他の前記放射線画像との位置合わせを行うステップと、
前記線形補正処理又は前記非線形補正処理が施された前記放射線画像情報を用いて、サブトラクション処理を行うステップと、
を有することを特徴とするサブトラクション画像処理処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、
前記線形補正処理は、アフィン変換処理であることを特徴とするサブトラクション画像処理方法。
【請求項7】
請求項5記載の方法において、
前記非線形補正処理は、歪曲位置合わせ処理であることを特徴とするサブトラクション画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−81996(P2010−81996A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251540(P2008−251540)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】