説明

サポゲン−3−オンの立体特異的還元

ヒンダード有機ホウ素化合物または有機水素化アルミニウム化合物を用いて、3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニンを還元することにより、ステロイド系サポゲニンまたはその誘導体を立体特異的に調製する方法。3β−ヒドロキシ,5β−H ステロイド系サポゲニンまたはその誘導体は、立体障害が相対的により大きな有機ホウ素化合物試薬を還元剤として用いて、3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニンまたはその誘導体を還元することにより調製してもよく、あるいは、3α−ヒドロキシ,5β−H ステロイド系サポゲニンまたはその誘導体のS2反転により調製してもよい。有機水素化アルミニウム化合物は、3α,5β−H ステロイド系サポゲニンまたはその誘導体を調製するために使用してもよい。本発明は、容易に入手可能であるかまたは簡単に調製可能である出発物質(例えば、ジオスゲニンから調製可能なジオスゲノン)から、サルササポゲニン,エピサルササポゲニン,スミラゲニン,エピスミラゲニン,およびこれらのエステルなどの有用なステロイド系サポゲニンへの好適な経路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンおよびその誘導体の立体特異的合成に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のサポゲニンおよびその誘導体(より具体的には、5βの水素原子を有するサポゲニン、特に、3位のヒドロキシル基および5βの水素原子を有する化合物(サルササポゲニン,エピサルササポゲニン,スミラゲニン,およびエピスミラゲニンなど))は、認知機能障害およびその他の症状の治療に有用である。例えば、WO−99/48482,WO−99/48507,WO−01/49703,WO−02/079221,およびWO−01/23406には、そのような活性が記載され、これらはこの参照によって開示に含まれるものとする。本発明で用いられている環系および炭素の位置の命名に関する法則は、これらの先行刊行物に記載されている通りである。
【0003】
文献には、3−ヒドロキシ ステロイドおよび3−ヒドロキシ ステロイド系サポゲニンの合成方法について記載されている。例えば、対応する3−ケト−5α−H ステロイドからの3β−ヒドロキシ−5α−H ステロイドの合成は、テトラヒドロフラン中で水素化ホウ素ナトリウムを用いることにより、あるいは、ジエチルエーテル中で水素化リチウムアルミニウムを用いることにより達成することができる(ヘルベチカ・ケミカ・アクタ(Helv.Chem.Acta),66, 192−217,1983)。
【0004】
米国特許第3,875,195号(1975年)は、加圧下でラネーニッケルおよび水素を用いて、低級カルボン酸中での3β−ヒドロキシ−5β−ステロイドへの3−ケト−5β−H ステロイドの触媒的還元について記載し、この参照によって開示に含まれるものとする。これらの研究者は、メアーウェイン−ポンドフ−バレイ(Meerwein-Ponndorf-Verley;MPV)還元により、同じ割合で3α−ヒドロキシ ステロイドと3β−ヒドロキシ ステロイドとの混合物へと導かれることについて言及している。
【0005】
1970年代初めに開発され、セレクトライド(登録商標)として知られている、立体障害がより大きなトリアルキル水素化ホウ素化合物の還元剤群を紹介するにあたり(ブラウン他,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J. Amer. Chem. Soc.),94,7159−7161頁(1972))、これらの還元剤がある種のステロール合成法が用いられていることを示す多数の刊行物が存在している。例えば、ステロイズ(Steroids),36,299−303頁(1980)、ステロイズ(Steroids),45,39−51頁(1985)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティ・コミュニケーション(J. Chem. Soc, Commun.),1239−1240頁(1982)、テトラヘドロン(Tetrahedron),40,851−854頁(1984)、ヘルベチカ・ケミカ・アクタ,66,192−217頁(1983)、米国特許第6,150,336号(2000)、およびテトラヘドロン,45,3717−3730頁(1989)が挙げられ、これらはこの参照によって開示に含まれるものとし、ある種の3−ケト−5β ステロイドおよび3−ケト−5α ステロイドを、それぞれ対応する3β−OH,5β―OH ステロールおよび3α−OH,5α−H ステロールへと立体特異的還元することが記載されている。
【0006】
ステロイド系サポゲニンに関しては、イソプロピルアルコール中でアルミニウムイソプロポキシドを用いたスミラゲニンの還元(MPV還元(マーカー(Marker)他,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ,62,2525(1940)))によるスミラゲニンの合成を開示する技術がある。マーカーは、サルササポゲノンのMPV還元によって、サルササポゲニンおよびエピサルササポゲニンの混合物が得られることを報告している(マーカーおよびローマン(Rohrman),ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ,61,943(1939))。これらの刊行物は、この参照によって開示に含まれるものとする。
【0007】
また、ブランデン(Blunden)による、2%の塩化水素酸を含む氷酢酸中でのアダムス触媒(酸化白金(IV))を用いた水素化を用いた(ジャーナル・オブ・ナチュラル・プロダクツ(J. Nat. Prod.),42,478−482(1979);オンデルステポート・ジャーナル・オブ・ヴェテリナリ・リサーチ(Onderstepoort Journal of Veterinary Research),61,351−359(1994))チゴゲノンからエピチゴゲニンの調製により例示されるように、ある種の触媒水素化について報告する技術がある。マーカーは、エタノール中でアダムス触媒を用いるサルササポゲノンの水素化により、エピサルササポゲニンが得られることを報告している(マーカーおよびローマン,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ,61,943(1939))。また、マイルス(Miles)による、水素化ホウ素ナトリウムを用いたエピサルササポゲニンの調製(ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・フード・ケミストリ,41,914−917(1993))に例示されるように、水素化ホウ素ナトリウムによる還元が報告されている。また、ジャラシ(Djerassi)によるスミラゲノンからのエピスミラゲニンの調製(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ,74,422−424(1952))ならびにラジス(Lajis)によるサルササポゲニンからエピサルササポゲニンの調製(ステロイズ,58,387−389(1993))により例示されるように、水素化リチウムアルミニウムによる還元が報告されている。これらの刊行物は、この参照によって開示に含まれるものとする。
【0008】
米国特許第5,703,052号(1997)、米国特許第5,807,834号、および米国特許第5,939,398号(1999)は、この参照によって開示に含まれるものとし、低温でのK−セレクトライド(登録商標)を用いた3α−ヒドロキシ−5α−H サポゲニンの合成方法を報告している。
【0009】
国際公開番号第02/079221号パンフレット(2002年10月10日発行)の実施例6では、リチウム トリ−tert−ブトキシアルミノハイドライドを用いたサルササポゲノンの還元による、エピサルササポゲニンの合成が開示されている。しかしながら、この刊行物は、すべての国において従来技術ではない。
【0010】
本発明は、3−ヒドロキシ−5β−ハイドロゲン ステロイド系サポゲニンの改善された立体特異的合成を提供することを目的とする。3−ヒドロキシ−5β−ハイドロゲン ステロイド系サポゲニンは、より好ましくは、国際公開番号第99/48482号パンフレット,国際公開番号第99/48507号パンフレット,国際公開番号第01/49703号パンフレット,国際公開番号第02/079221号パンフレット,および国際公開番号第01/23406号パンフレットに定義されかつ記載された3β−ヒドロキシ,5β−H サポゲニン、ならびにその誘導体(例えば、対応するサポゲニンや、プロドラッグとして機能しうる他の生理学的に許容しうる形態(塩およびエステルなど))である。
【0011】
最も好ましい形態としては、本発明は、サルササポゲニン、スミラゲニン、エピサルササポゲニン、エピスミラゲニン、およびこれらのプロドラッグ、ならびに他の生理学的に許容しうる形態の効率的な立体特異的合成を提供することを目的とする。
【0012】
[発明の簡単な説明]
本発明は、第1の態様において、3−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンまたはその誘導体を立体特異的に調製する方法を提供する。この方法は、ヒンダード有機ホウ素化合物または有機水素化アルミニウム化合物を含む還元剤を用いて、3−ケト−5β−H ステロイド系サポゲニンを還元することを含む。
【0013】
立体特異的還元により最初に形成された3−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンは、次いで、例えば当業者に良く知られている誘導体化技術を用いて、所望の誘導体へと変換してもよい。この変換は、インシチュまたは異なる反応システムにて達成してもよく、かつ、還元と同時にまたは還元に引き続いて行なってもよい。
【0014】
本発明において、「ヒンダード有機ホウ素化合物」という用語は、特に、アルカリ金属トリアルキルまたはトリアリールボロハイドライド還元剤をさすものであり、このような還元剤としては、例えば、リチウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド(lithium tri-sec-butylborohydride),リチウム トリシアミルボロハイドライド(lithium trisiamylborohydride),またはリチウム トリフェニルボロハイドライド(lithium triphenylborohydride),あるいはリチウムをカリウムまたはナトリウムで置換した、これらに対応する還元剤などが挙げられる。アルキル基は好ましくは1〜7個の炭素原子を含み、最も好ましくは3〜7個の炭素原子を含む。アリール基は好ましくは6〜12個の炭素原子を含み、アルキル基で置換されていてもよい。このような還元剤はしばしば、「セレクトライド(Selectride)」還元剤と総称されるが、本発明において、「セレクトライド」という用語は、いずれか特定の製造業者または製造元から得られる還元剤に限定されることを意図しておらず、いずれの製造業者または製造元から得られる還元剤を用いることができる。より詳細な検討のためには、ジェイ.セイデン−ペンネ(J.Seyden-Penne)による「有機合成におけるアルミノハイドライドおよびボロハイドライドによる還元(Reductions by the Alumino- and Borohydrides in Organic Synthesis)」(VCH出版社(VCH Publishers, Inc.))を参照されたい。本発明において使用される好ましいヒンダード有機ホウ素化合物は、リチウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド(lithium tri-sec-butylborohydride; L−セレクトライド),ポタシウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド(potassium tri-sec-butylborohydride; K−セレクトライド),ソディウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド(sodium tri-sec-butylborohydride; N−セレクトライド),リチウム トリシアミルボロハイドライド(lithium trisamylborohydride; LS−セレクトライド),ポタシウム トリシアミルボロハイドライド(potassium trisamylborohydride; KS−セレクトライド),ポタシウム トリフェニルボロハイドライド(potassium triphenylborohydride),およびリチウム トリフェニルボロハイドライド(lithium triphenylborohydride)である。
【0015】
本発明において、「有機水素化アルミニウム化合物」という用語は、特に、アルミニウム部位および水素化物(ハイドライド)部位と、有機基(例えば、アルキルまたはアルコキシであり、適切には、1〜7個の炭素原子を含む)とを含むいずれかの還元剤をさすものであり、このような還元剤としては、ソディウム ビス−(2−メトキシエトキシ)アルミニウムハイドライド(Red−Al(登録商標)),ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL),またはリチウム トリ−tert−ブトキシアルミノハイドライド(LTBA)などが挙げられる。より詳細な検討のためには、ジェイ.セイデン−ペンネ(J.Seyden-Penne)による「有機合成におけるアルミノハイドライドおよびボロハイドライドによる還元(Reductions by the Alumino- and Borohydrides in Organic Synthesis)」(VCH出版社(VCH Publishers, Inc.))を参照されたい。本発明において使用される好ましい有機水素化アルミニウム化合物は、Red−Al,DIBAL,およびLTBAである。
【0016】
本発明において、「誘導体」という用語は、サポゲニンに関しては、特に、対応するサポニンおよび他の生理学的に許容しうる形態(塩およびエステルなど)をさすものであり、プロドラッグとして機能してもよい。サポゲニンおよびその誘導体は、当業者によく知られている反応によって、容易に相互変換されうる。サポゲニンの誘導体形態は、分子の1またはそれ以上の所望の位置において誘導体化された基を有してもよい。サポニンおよびエステル誘導体は、例えば、A環の3位に誘導体化された基を有してもよい。本発明において使用される「サポゲニン」という表現は、事実と相反することが明らかでない限り、サポゲニンのすべての誘導体形態を含むものとする。
【0017】
本発明の第3の態様に関連して、後述するように、本発明において使用される「誘導体」という用語は、サポゲニンの活性化された誘導体を付加的にさすものであり、その反応に使用可能である。
【0018】
還元剤の適切な選択により、前記方法は、異性体混合物の困難な分離を一般に必要せずに、良好な収率または優れた総収率(例えば、約80%を超える変換率)にて、商業的に入手可能であるかまたは容易に調製される出発物質から、一連の3α−ヒドロキシ,5β−H サポゲニンおよび3β−ヒドロキシ,5β−H サポゲニンならびにこれらの誘導体を、相当にまたは少なくとも優先的に立体特異的に純粋な形態にて調製することができる。
【0019】
還元剤(ヒンダード有機ホウ素化合物または有機アルミノハイドライド)の使用は、以前には3−ケト−5β−H ステロイド系サポゲニンに適用されていない。マイルスによるエピサルササポゲニンの調製(ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・フード・ケミストリ(J. Agric. Food Chem.),41,914−917(1993))は、この参照によって開示に含まれるものとし、この研究が報告された時点では、還元剤として使用される水素化ホウ素ナトリウムや、より選択的な試薬であるLTBAが知られている。
【0020】
還元剤が相対的に大きな立体障害を有する有機ホウ素化合物である場合(有機基が約2個より多い炭素原子を含む場合)、得られるサポゲニンは、優先的に3β−ヒドロキシ,5β−H サポゲニンであることができる。
【0021】
還元剤が相対的に小さい立体障害を有する有機ホウ素化合物である場合(有機基が最大約2個の炭素原子を含む場合)、得られるサポゲニンは、優先的に3α−ヒドロキシ,5β−H サポゲニンであることができる。
【0022】
還元剤が有機水素化アルミニウム化合物である場合、得られるサポゲニンは、優先的に3α−ヒドロキシ,5β−Hサポゲニンであることができる。
【0023】
本発明において、還元のための出発物質に関して、3−ケト,5β−H サポゲニンという表現が便宜上用いられ、3−ケト,5β−Hサポゲニンは、分子の他の部分(例えば、A環の外側)におけるケト基の飽和または不存在を必ずしも示唆するものではなく、必要に応じて、分子の他の部分における望まない反応部位が適切に保護されてもよい。出発物質(3−ケト,5β−H サポゲニン)は、A環の3位以外の分子の部分において、所望の最終生成物と異なっていてもよい。この場合、必要な変換は、所望の最終生成物へと導く全体的な合成ルートの一部として、この分野の当業者に知られている方法にて達成することができる。
【0024】
出発物質(3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニン)は、対応する3−OH サポゲニンの酸化により適切に調製してもよい。例えば、サルササポゲニンは、マイルスにより記載されたように(ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・フード・ケミストリ,41,914−917(1993))、ピリジニウム ジクロロメート(PDC)を用いた酸化や、ブルーデン(ジャーナル・オブ・ナチュラル・プロダクツ,42,478−482(1979))により記載され、かつ国際公開第98/07741号パンフレットに記載されたジョーンズ酸化により調製することができる。スミラゲノンは、α,β−不飽和ケトンの二重結合の還元を利用して、ジオスゲノン(ジオスゲノン自体はジオスゲニンの酸化より調製される)から製造される(マーカー他,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ,62,2525(1940)、イリスメトフ(Irismetov)&ゴルヤエフ(Goryaev),Izv.Akad.Nauk Kaz.SSR,Ser.Khim.,2,47−52(1981))。
【0025】
本発明の好ましい実施形態においては、出発物質(3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニン)は、対応するΔ,3−ケト ステロイド系サポゲニン(例えば、ジオスゲノン)の不均一系触媒水素化により調製される。不均一系触媒水素化は、Δ,3−ケト ステロイド系サポゲニンを、対応する5β−H 3−ケトン生成物(例えば、スミラゲノン)に変換し、次いで、本発明の第1の態様にしたがって還元される。
【0026】
不均一系触媒水素化は、有機溶媒中で水素およびパラジウム触媒を用いて適切に行なってもよい。パラジウム触媒は、例えば硫酸バリウム,炭酸カルシウム,グラファイト,またはカーボンなどの担体上に存在するのが好ましい。パラジウムは、予め還元された形態(pre-reduced)で使用されるのが好ましい。
【0027】
ジオスゲノンが出発物質であり、かつ、触媒水素化が還元剤(ヒンダード有機ホウ素化合物)を用いたスミラゲノンの還元の後に行なわれる場合、得られる生成物はエピスミラゲニンである。
【0028】
本発明は、第2の態様において、3α−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンおよびその誘導体を、3β−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンおよびその誘導体に変換する方法を提供する。この方法は、3位での反転を伴う求核置換が優位な条件下で、3α−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンの3−ヒドロキシ活性化誘導体を求核剤と接触することを含み、引き続いて、所望の3位の置換基の調整を任意に含む。
【0029】
この反応はS2機構によって進行し、必要とされる反転生成物に導くと予測される。特筆すべき反応プロトコルは、光延反応である(ヒュージス(Hughes),オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions),42,337−400(1992))。このようなプロトコルがサポゲニンに適用される場合、3−OH サポゲニンは、その3−ヒドロキシ 活性化形態を経て、3位が反転された相当する3−エステルへと変換される。使用される試薬は、ジアルキルアゾジカルボキシレート、トリアリールホスフィン、および所望のエステルに応じて適切な有機酸または塩である。「アルキル基」という用語は、好ましくは1〜7個の炭素原子をさす。「アリール基」という用語は、好ましくは6〜12個の炭素原子をさし、そのようなアリール基は任意にアルキル基で置換されていてもよい。
【0030】
かわりの反応プロトコルは、求核置換で活躍することができるサポゲニンの活性化誘導体(例えば、3位の酸素位置における有機スルホナート(sulphonate)誘導体(3−メシレート誘導体または3−トシレート誘導体など))の初期の調製を含んでいてもよい。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、上記反応に使用される有機酸は、上記反応において望ましくない参加することがある基(アミノ基など)を含み、このような基は従来の方法にて適切に保護されるだろう。
【0032】
総合的に鑑みると、下記のスキーム1の特定の化合物に示されるように、本発明は、立体化学を制御する選択的還元を利用して、容易に入手可能な材料(例えば、ジオスゲニン)から、有用なステロイド系サポゲニン(例えば、スミラゲニンまたはエピスミラゲニン)を合成するための手順を提供する。
【0033】
(スキーム1)
【0034】
【化2】

【0035】
本発明の方法は、3−ヒドロキシ 5β−H ステロイド系サポゲニン(サルササポゲニン,スミラゲニン,エピサルササポゲニン,およびエピスミラゲニン,ならびにその誘導体など)の調製に使用可能である。サポゲニンのプロドラッグおよび他の生理学的に許容しうる形態は、後により詳述するように、従来からの方法にて3−OH化合物(3位にOH基を有する化合物)から調製してもよい。
【0036】
[発明の詳細な説明]
(サポゲニン最終生成物)
本発明の方法は好ましくは、以下の一般式の化合物から選ばれるサポゲニン最終生成物を調製するために用いられる。
【0037】
【化3】

【0038】
上記式において、R,R,R,R,R,R,R,R,およびRは、それぞれ独立に、H,炭素原子数1〜4のアルキル基,OH,またはOR(ここで、Rは、炭素原子数6〜12のアリール基または炭素原子数1〜4のアルキル基)、または、RおよびRはともに=O(カルボニル基)または保護されたカルボニル基であり、3位の炭素中心の立体化学(すなわち、基R10が結合されているA環)がRまたはSであることができ、かつ、R10はOH,O結合型糖基,またはいずれかの有機エステル基(この有機エステル基は、脂肪族エステルおよびアミノ酸エステルを含む。)であることができる。
【0039】
上記式においてウェッジ(wedge)およびダッシュ(dash)の慣例(convention)を用いて特定された箇所を除いて、かつ、立体特異性が本発明の特徴となる範囲を除いて、上記式の立体化学は特定されず、すべての立体異性体および異性体混合物が含まれる。
【0040】
本発明において、「生理学的に許容しうるプロドラッグ」という用語は、本発明において有用な化合物のプロドラッグを意味し、このようなプロドラッグは、可能であれば本発明の化合物の両イオン性形態(zwitterionic form)とともに、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性,炎症,アレルギー性反応などを示すことなく、ヒトおよび下等動物の組織に接触して使用するのに適しており、合理的な損益比率に見合うものであり、かつ、意図する用途に有効である。「プロドラッグ」という用語は、例えば血中の加水分解により、インビボ(in vivo)で即座に変換されて、上記式の親化合物となる化合物をいう。プロドラックの考察は、以下の刊行物に提供されている:「プロドラッグのデザイン(Design of Prodrugs)」,エイチ.バンドガード(H.Bundgaard)編,エルセビアー(Elsevier),1985;エンズーモロジー(Enzymology)における方法,ケー.ウィダー(K.Widdder)他,アカデミックプレス(Academic Press),42,309−396頁,1985;「ドラッグデザインおよびその開発のテキストブック(A Textbook of Drug Design and Development)」,クロスガード−ラーセン(Krogsgaard-Larsen)およびエイチ.バンドガード(H.Bundgaard)編,第5章;「プロドラッグの設計および応用(Design and Applications of Prodrugs)」,113−193頁,1991;「先端ドラッグデリバリー総説(Advanced Drug Delivery Reviews)」,エイチ.バンドガード(H.Bundgaard)編,8,1−38頁,1992;ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンセス(Journal of Pharmaceutical Sciences),77,285頁(1988);ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン(Chem. Pharm. Bull.),エヌ.ナカヤ(N.Nakaya)他,32,692頁(1984);「新規なデリバリーシステムとしてのプロドラッグ(Pro-drugs as Novel Delivery Systems)」,ティー.ヒグチ(T. Higuchi)およびヴィ.ステラ(V.Stella),A.C.S.シンポジウムシリーズ第14巻;「ドラッグデザインにおける生物可逆的キャリア(Bioreversible Carriers in Drug Design)」,エドワード.ビー.ロシュ(Edward B Roche)編,ペルガモンプレス(Pergamon Press),1978。これらはこの参照により開示に含まれるものとする。
【0041】
「生理学的に許容しうる塩」という用語は、相対的に毒性が低い、本発明の化合物の非有機酸添加塩および有機酸添加塩、ならびに非有機塩基添加塩および有機塩基添加塩を意味する。これらの塩は、前記化合物の最終的な単離および精製時にインシチュ(in situ)で調製可能であるか、あるいは精製された化合物に個別に反応させることにより調製可能である。例えば、エス.エム.バージ(S. M. Berge)他,「薬学的な塩(Pharmaceutical Salts)」,ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンセス,66,1−19頁,1977を参照されたい。この文献はこの参照により開示に含まれるものとする。
【0042】
本発明において「有機エステル」という用語は、R10がOHである化合物と、エステルを形成する有機酸またはその活性化誘導体との反応により形成可能ないずれのエステルをさす。有機酸は、例えば、脂肪族カルボン酸またはアミノ酸であってもよい。限定されないが、有機エステルは、例えば、カチレート(エトキシカルボニルオキシ),アセテート,スクシナート,プロピオナート,n−ブチラート,i−ブチラート,バレラート,イソバレラート,n−カプロエート,iso−カプロエート,ジエチルアセテート,オクタノエート,デカノエート,ラウレート,ミリステート,パルミテート,ステアレート,ベンゾエート,フェニルアセテート,フェニルプロピオナート,シンナマート,フタルイル,グリシナート,アラニナート,バリナート,フェニルアラニナート,イソロイシナート,メチオニナート,アルギニナート,アスパラギネート,アスパルテート,システイナート,グルタミナート,ヒスチジナート,リシナート,プロリナート,セリナート,スレオニナート,トリプトファナート,チロシナート,フマラート,マレアート,置換脂肪族(例えば、クロロアセテート,メトキシアセテート,保護化アミノ酸エステル基(例えば、Boc−アミノグリシナート (Boc=t−ブトキシカルボニル),Boc−アミノバリナート,CBZ−アミノグリシナート(CBZ=ベンジルオキシカルボニル),CBZ−アミノアリナート),および置換芳香族エステル基(例えば、p−ブロモベンゾイルオキシ,m−ブロモベンゾイルオキシ,p−メトキシベンゾイルオキシ,クロロベンゾエート(例えば、p−クロロベンゾイルオキシ),ジクロロベンゾエート(例えば、2,4−ジクロロベンゾイルオキシ),ニトロベンゾエート(例えば、p−ニトロベンゾイルオキシ,または3,5−ジニトロベンゾイルオキシ))などであってもよい。
【0043】
本発明において「糖」という用語は、特に、モノ−サッカライド,ジ−サッカライド,またはトリ−サッカライド、ならびにアセテート形態をさす。限定されないが、そのような糖としては、例えば、5個または6個の炭素原子を有するモノアルドースまたはケトースであってもよく、好ましくは、αまたはβアノマーとして、DまたはL光学異性を有する環状のフラノースまたはピラノースの形態である。適切な糖の例には、グルコース,マンノース,フルクトース,ガラクトース,マルトース,セルビオース,スクロース,ラムノース,キシロース,アラビノース,フコース,キノボース,アピオース,ラクトース,ガラクトース−グルコース,グルコース−アラビノース,フコース−グルコース,ラムノース−グルコース,グルコース−グルコース−グルコース,グルコース−ラムノース,マンノース−グルコース,グルコース−(ラムノース)−グルコース,グルコース−(ラムノース)−ラムノース,グルコース−(グルコース)−グルコース,ガラクトース−(ラムノース)−ガラクトース,およびこれらのアシル化(例えば、アセチル化)誘導体が含まれる。
【0044】
[本発明の第1の態様]
本発明の第1の態様によれば、所望のサポゲニンの調製をもたらす工程に関して、出発物質である3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニンは、3位の基を除いた、分子のすべての箇所において、所望のサポゲニンに相当するのが好ましい。しかしながら、必要に応じてまたは望ましくは、還元のために適切な保護基が付加されていてもよく、次いで、前記保護基は所望のサポゲニンを得るために除去されてもよい。
【0045】
本発明において、「保護基」という用語は、反応性官能基を保護するために使用される基(例えば、ヒドロキシ基またはカルボキシ基)をさし、これらの基は最終生成物において、反応におけるこれらの望ましくない参加を防ぐために必要とされる。従来から使用されている保護基は、標準的なプラクティスにしたがって使用されてもよく、例えば、「有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(Joun Wiley and Sons),1991;ジェイ・エフ・ダブリュー・マッコミー(J. F. W. McOmie),「有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」,プレナムプレス(Plenum Press),1973を参照されたい。
【0046】
下記の表1に示されるように(選択性のパーセンテージは、租生成物における成分をさすものとする)、スミラゲニンまたはエピスミラゲニンのいずれか一方が得られるような選択性をもたらす多くの試薬が発見されている。驚くべきことに、我々は、K−セレクトライド(登録商標)(ポタシウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド),L−セレクトライド(登録商標)(リチウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド,またはN−セレクトライド(登録商標)(ソディウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド)またはその対応するトリフェニルボロハイドライドが、高度に立体選択的な方式にて、3β−ヒドロキシル(例えば、スミラゲニン)の形成を導くことを見出している。より立体障害が低い還元剤(リチウム トリエチルボロハイドライド)の使用は、高度に立体選択的な方式にて、3α−ヒドロキシル(例えば、エピスミラゲニン)の形成を導く。驚くべきことに、我々はまた、有機水素化アルミニウム化合物(LTBAなど)の使用は、高度に立体選択的な方式にて、3α−ヒドロキシル(例えば、エピスミラゲニン)の形成を導くことを見出している。
【0047】
本発明において、3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニンの立体選択的還元では、我々は、最終生成物において、相対する3−異性体よりも、得られた3−ヒドロキシ ステロイドが優位であるモル比(少なくとも約10:1、例えば、少なくとも約15:1)を得ることが可能であることを見出している。
【0048】
【表1】

【0049】
驚くべきことに、我々は、低温(例えば、約−78℃)は本発明の方法には必須ではないことを見出している。還元は一般に、−100℃〜25℃の温度(例えば、−40℃〜25℃の温度,最も好ましくは約−10℃〜10℃)の温度にて行なってもよく、適切には、テトラヒドロフラン(THF),2−メチルテトラヒドロフラン(MTHF),トルエン,1,4−ジオキサン,tert−ブチル メチル エーテル,およびこれらの溶媒の混合物から選ばれる溶媒中で行なわれるのが適当であり、最も好ましくはTHFである。
【0050】
好ましい実施形態においては、出発物質である3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニン(例えば、スミラゲノン)は、対応するΔ,3−ケト ステロイド系サポゲニン(例えば、ジオスゲノン)の不均一系触媒水素化により調製される。
【0051】
このΔ,3−ケト ステロイド系サポゲニン(例えば、ジオスゲノン)自体は、対応するΔ,3−ヒドロキシ ステロイド系サポゲニン(例えば、ジオスゲニン)の酸化により調製されるのが好ましく、これにより、αβ−不飽和ケトンが得られる。触媒としてパラジウム・オン・カーボンを用いてジオスゲニンを直接的に還元することにより、5α−生成物(チゴゲニン)が優先的に得られることを留意すべきだろう。
【0052】
マーカー(Ma rker)(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ,62,2525(1940))は、スミラゲノンへのジオスゲノンの還元は、水素存在下エーテル溶液中でパラジウム−硫酸バリウム触媒を用いて達成可能であることを示している。低濃度(500容積;通常の処理容積は5−30容積の範囲内である)および高い触媒担持能(1000%;通常の触媒担持能は1−20%の範囲内である)は、ラージスケールの処理においては、上述したようなプロセスを実行不能にし、かつ、非経済的なものにする。付加的な検討事項は、安全上の理由により、ラージスケールの処理には不適である。
【0053】
他の研究者は、スミラゲノンへのジオスゲノンの還元について調査している。ジャラシは、大気圧にて、予め還元された10%Pd−C(0.8g)を用いて、エタノール(450ml)中でジオスゲノン(10g)を還元した。租スミラゲノンは、水を用いて沈殿させることにより単離され、クロロホルム/メタノールから再結晶化されて、融点が179−183℃の純粋なスミラゲノン(7.2g,72%)が得られた。この反応が水酸化カリウム(3g)の存在下で行なわれた場合、収率は変化しなかった。分析学的に純粋なサンプルは186−188℃で融解した(ジャラシ,ヤシン(Yashin),およびローゼンクランツ(Rosenkranz),ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ,74,422−424(1952))。ジオスゲノンのエタノールへの溶解性が低いため、このプロセスは、希釈物の濃度が低い点で問題がある。
【0054】
プレゲナンのシリーズで、スボロフ(Suvorov)は、ピリジンがこのような水素化反応の結果に顕著な効果を及ぼすことを見出している。典型的には、この研究においては、触媒として、炭酸カルシウムに担持された10%パラジウム(Pd−CaCO)を選択した。このような場合、選択性は、腐食剤(caustic)を添加する場合であっても、アルコール系溶媒で行なわれる反応における選択性と比較して、顕著に優れていることが見出された(スボロフおよびヤロスラビセバ(Yaroslavtseva),ステロイズ,1270(1961))。本研究で採用された試案(work-up)は、希塩酸でのクエンチおよびクロロホルムへの生成物の抽出である。リトマス紙が中性を示すまで、希塩酸、8%炭酸カルシウム水溶液、および水を用いて有機層抽出物を洗浄した。このような方法は、処分が必要とされるピリジンおよびハロゲン化溶媒を含む大量の水性廃棄物の生成へと導き、プロセスコストをさらに増加させることとなる。
【0055】
イリスメトフは、スミラゲノンへのジオスゲノンの還元において、高い選択性が達成されうることを実証した。この研究では、ジオスゲノン(1g)は、大気圧にてピリジン(30ml)中で5%Pd−CaCO(1g)上で水素化される。濾過により触媒を除去し、溶媒をエバポレイトした後、残渣をアルコールから結晶化させて、融点が209−211℃の固体が得られた。収率は記載されていない(イリスメトフおよびゴルヤエフ,Izv.Akad.Nauk Kaz.SSR,Ser.Khim.,2,47(1982))。ラージスケール生産の場合、この研究は高い触媒担持能および溶液の希釈の点で問題である。ピリジンは有害な溶媒であり、一般に、ラージスケールの処理において、酸捕捉剤として化学量論的な量で使用される。
【0056】
米国特許第736,818号は、非有機塩基の存在下で、無水媒体中で、パラジウム触媒を用いて、5β−H ステロイドへの3−ケト−Δ−ステロイドの還元に関するクレームが設けられている。好ましい溶媒はメタノールであり、好ましい塩基は水酸化カリウムである。ジオスゲノンは例示されていない。我々は、ジオスゲノンがアルコール(特に、エタノール)に貧溶であることを見出しており、このため、このプロセスでは希釈の度合いが大きいだろう。また、このような方法は、抽出物の試案(work-up)手順を必要とする。
【0057】
米国特許第763,301号は、3−ケト−Δ−ステロイドの還元において、5β−H生成物の量を増加させる際のアルカリ(すなわち、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)の効用について言及している。この特許では、この背景におけるトリエチルアミンの効用に関して特定のクレームが設けられている。溶媒として、エタノール,エーテル,酢酸エチル,およびメチルシクロヘキサンが挙げられ、1,4−ジオキサンが好ましい溶媒として挙げられている。
【0058】
我々は、適切な溶媒中で担体(硫酸バリウムまたは炭酸カルシウムなど)上でのパラジウム(Pd−BaSO,Pd−CaCO)の使用が、経済的でかつ拡張性があるプロセスを提供するという、驚くべき発見をした。具体的には、我々は、低い触媒担持能を用いて、商業的に有用な濃度で行なうプロセスを見出した。さらに、我々は、驚くべきことに、下記の表2に示されるように、これらの触媒の還元形態は、非還元形態よりもより選択性が高いことを見出した。
【0059】
【表2】

【0060】
5%Pd/グラファイト(ジョンソン マッテイ(Johnson Matthey)・タイプ450)および10%Pd/C(ジョンソン マッテイ・タイプ39)はまた、このプロセスにおいて適切な触媒である。
【0061】
適切な溶媒は、テトラヒドロフラン(THF),2−メチルテトラヒドロフラン,トルエン,1,4−ジオキサン,酢酸エチル,メチル イソブチル ケトンから選択してもよく、より好ましくはTHFである。これらの溶媒はピリジンよりも好都合であることが見出されている。これらの溶媒を用いて、このプロセスは、1〜50容積の濃度で行なうことができ、好ましくは3〜30容積の濃度で行なうことができ、最も好ましくは3〜10容積の濃度で行なうことができる。触媒担持能は、1〜25%の範囲であり、好ましくは1〜10%の範囲であり、最も好ましくは1〜5%の範囲である。
【0062】
驚くべきことに、我々は、圧力の増加が、このプロセスにおいて選択性の低下をもたらすことを見出した。この反応は、好ましくは、1〜5バール(bar)の水素下で行なわれ、最も好ましくは、1〜2バールの水素下である。
【0063】
また、温度の増加は選択性を低下させることが見出された。この反応は好ましくは、15〜75℃で行なわれ、より好ましくは20〜50℃であり、最も好ましくは20〜30℃である。
【0064】
エタノールおよび他の可能なエーテル置換溶媒(ジエトキシメタンおよびtert−ブチル メチル エーテルなど)と比較して、THFは、ジオスゲノンの溶解性を改善することができる。これにより、より高いスループットおよびより経済的なプロセスが提供される。エタノール/水酸化ナトリウム水溶液のシステムと比較して、このプロセスは単純な試案(work-up)を提供する。
【0065】
この試案(work-up)は、反応混合物の濃度およびスミラゲノンの単離からなる。溶媒は任意にリサイクルしてもよい。
【0066】
スミラゲノンの精製を行なう際、下記表3に示されるものの例のように、シクロヘキサン,2−ブタノン,アセトン,2−プロパノール,およびメタノールを含む多数の溶媒が有効である。
【0067】
【表3】

【0068】
本発明の好ましい態様は、本発明の第1の態様にしたがって、THF中のスミラゲノンの溶液を、水素化から直接的に還元へと導くことである。これにより、中間体であるスミラゲノンの試案(work-up)、単離、乾燥の必要性を除去することができ、時間および設備処理を節約することにより、製造コストの改善が期待できる。驚くべきことに、我々は、租スミラゲニンの再結晶化により、このプロセスによって生じた不純物(主に、エピチゴゲニンおよびエピスミラゲニン)を除去することができる。
【0069】
[本発明の第2の態様]
本発明の第2の態様においては、立体特異的反転反応により、3α−ヒロドキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンおよびその誘導体を、3β−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンおよびその誘導体(例えば、エステル)へと変換することが提供される。例えば、エピサルササポゲニンは、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート、トリフェニルホスフィン、および安息香酸の反応(いわゆる、光延反応(ヒュージス,オーガニック・リアクション(Organic Reaction),42,337−400頁(1992)))により、新規な化合物であるサルササポゲニン ベンゾエートへと容易に変換することができる。したがって、サルササポゲニン ベンゾエートおよびその調製は、本発明のさらなる特徴といえる。類似する方法で、エピスミラゲニンは、既知のエステルであるスミラゲニン ベンゾエートへと変換することができる。このプロセスは安息香酸エステルに限定されないが、脂肪族(例えば、アセテート,プロピオナート,n−ブチラート,i−ブチレート,n−カプロエート,i−カプロエート,パルミテート)、置換脂肪族(例えば、クロロアセテート,メトキシアセテート,保護化アミノ酸エステル基(例えば、Boc−アミノグリシナート,Boc−アミノバリナート,CBZ−アミノグリシナート,CBZ−アミノアリナート,または置換芳香族エステル基(例えば、クロロベンゾエート,ニトロベンゾエート,ジクロロベンゾエート)などであってもよい。
【0070】
あるいは、この反応プロトコルは、メタンスルホナート(メシレート)またはp−トルエンスルホナート(トシレート)などの3α,5β−サポゲニンの活性化形態の優先的形成を含む。この活性化形態は次いで、求核置換のための慣用的手法にて、カルボン酸のアニオン性塩(例えば、ナトリウム塩,カルシウム塩,またはカリウム塩)と反応させることができる。
【0071】
[得られた化合物の回収]
本発明の他の態様によって調製された化合物を、慣用的手段によって反応混合物から回収してもよい。例えば、反応混合物から溶媒を蒸留留去することにより、化合物を回収してもよいし、あるいは、必要に応じて、反応混合物から溶媒を蒸留留去した後に、残渣に水を加え、次いで水と混和しない有機溶媒で抽出し、この抽出物から溶媒を蒸留留去してもよい。付加的には、必要に応じて、この生成物は、再結晶、再沈殿、または種々のクロマトグラフィー技術(著名なカラムクロマトグラフィーまたはプレパラティブ薄層クロマトグラフィーなど)などの良く知られている技法により、さらなる精製を行なうことができる。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、限定されるわけではなく、選択的還元を利用して、立体化学を制御する、エピサルササポゲニン,スミラゲニン,およびエピスミラゲニンの合成を示している。この実施例はまた、3β−ヒドロキシ,5β−H サポゲニンおよびその誘導体への3α−ヒドロキシ,5β−H サポゲニンの立体特異的変換を示す。
【0073】
[実施例1] −10℃でのL−セレクトライド(登録商標)を用いた、スミラゲノンからスミラゲニンの合成
スミラゲノン(657g)をテトラヒドロフラン(4000ml)に溶解させ、その溶液を窒素でパージし、冷却して、約−10℃の内部温度に調整した。L−セレクトライド(登録商標)(2400ml;THF中で1M)を約50分間かけて添加し、90分間攪拌した。水(2000ml)に溶解させて得られたクエン酸(600g)の水溶液をゆっくりと添加し、温度を0℃未満に維持した。この混合物を周囲温度まで戻し、30分間攪拌した。水層を分離し、ジクロロメタン(2000ml)で抽出して、この有機層を分離した。水層をジクロロメタン(1500ml)で抽出した。両方の有機抽出物を水(4000ml)で洗浄し、MgSOを用いて乾燥させた。有機抽出物が乾燥するまでエバポレイトして、スミラゲニンを得た。
【0074】
[実施例2] −15℃でのK−セレクトライド(登録商標)を用いた、スミラゲノンからスミラゲニンの合成
K−セレクトライド(登録商標)(1600ml;THF中で1M)を、窒素雰囲気下、−15℃にて、THF(3500ml)中のスミラゲノン(500g)の溶液に添加した。この反応混合物をこの温度にて30分間攪拌し、クエン酸水溶液(水(1300ml)中に393gのクエン酸を溶解)でクエンチし、約0℃の内部温度に維持した。この混合物を周囲温度まで戻し、固体が生じるまで周囲温度にてTHFをエバポレイトした。この固体を濾別して、ポンプで乾燥させた。
【0075】
固体をジクロロメタン(DCM)(6000ml)に溶解させ、乾燥させ(MgSO)、白色固体が生じるまでエバポレイトして、イソプロピルアルコール(IPA)(5000ml)から再結晶して、スミラゲニンを得た。
【0076】
[実施例3] −78℃でのN−セレクトライド(登録商標)を用いた、スミラゲノンからスミラゲニンの合成
N−セレクトライド(登録商標)(0.64ml THF中で1M)を、−78℃にて、THF(10ml)中のスミラゲノン(206mg)の溶液に10分間かけて添加した。この反応混合物を30分間攪拌し、10%のクエン酸水溶液(水(20ml)中に2gのクエン酸を溶解)でクエンチし、生成物をDCM(2×50ml)で抽出し、乾燥させ(MgSO)、無色オイルが生じるまでエバポレイトした。このオイルをアセトン(20ml)で希釈し、水(50ml)を添加した。沈殿物を濾過にて収集し、乾燥させて、スミラゲニン(200mg,97%)を得た。
【0077】
[実施例4] ジオスゲノンからスミラゲノンの合成
テトラヒドロフラン(THF)(2500ml)にジオスゲノン(500g)を40−45℃にて溶解させ、窒素にて不活性雰囲気下にした。5%Pd−BaSO4(還元型)(100g)を添加し、フラスコを水素でパージし、水素雰囲気下で約6.5時間攪拌した。フラスコを周囲温度まで冷却し、セライトパッド(50g)を使用して、濾過により触媒を除去した。溶媒をエバポレイトして、租スミラゲノンを固体状残渣として得た。
【0078】
このプロセスを繰り返し、2つのバッチを結合させ(902.8g)、窒素雰囲気下でシクロヘキサン(2260ml)中で周囲温度にて約30分間再びスラリー化した。固体を濾過によって得、真空オーブン内で約40℃にて一晩乾燥させて、スミラゲノン(749.1g;75%)を得た。
【0079】
[実施例5] ジオスゲノンからスミラゲノンの合成
テトラヒドロフラン(THF)(4500ml)にジオスゲノン(700g)を溶解させ、窒素にて不活性雰囲気下にした。この混合物を活性化炭素(35g)にて処理し、25℃で5%Pd−BaSO(還元型)(35g)および2.5バーグ(barg)の水素で水素化した。触媒を濾過により除去し、混合物を約1/4の容積まで濃縮した。水(3000ml)を約30分間かけて添加して、得られた固体を濾別した。この固体をメタノール(560ml)で洗浄し、真空下で40〜50℃にて乾燥して、スミラゲノン(630g,90%)を得た。
【0080】
[実施例6] 水素化反応および還元反応のはめ込み(telescoping)
テトラヒドロフラン(2500ml)にジオスゲノン(500g)を溶解させ、窒素にて不活性雰囲気下にした。5%Pd−BaSO(還元型)(100g)を添加した。
フラスコを水素でパージし、水素雰囲気下で約5時間攪拌した。セライトパッド(20g)を使用して濾過により触媒を除去した。残渣をテトラヒドロフラン(1000ml)で洗浄し、この溶液を次のステージで直接使用した。
【0081】
K−セレクトライド(登録商標)(1600ml;THF中で1M)を、窒素雰囲気下、約−15℃にて、スミラゲノン(500g)の溶液に添加した。この反応混合物をこの温度にて30分間攪拌し、クエン酸水溶液(水(1300ml)中に393gのクエン酸を溶解)でクエンチし、約0℃の内部温度に維持した。この混合物を周囲温度まで昇温し、固体が生じるまで周囲温度にてテトラヒドロフランをエバポレイトした。この固体を濾別して、ポンプで乾燥させた。
【0082】
固体をジクロロメタン(6000ml)に溶解させ、乾燥させ(MgSO)、白色固体が生じるまでエバポレイトして、2−プロパノール(5000ml)から再結晶化した。得られた固体をさらにアセトン(5000ml)から再結晶化し、さらにアセトン(3500ml)から再結晶化した。得られた固体を真空オーブン内で80℃で乾燥させ、純粋なスミラゲニン(154.5g)を得た。
【0083】
mp 184.7‐187.0℃; [a]20=-73 .3°; IR Vmax 3456, 2928, 1451, 1376, 1050, 979, 896 cm−1; ESI-MS m/z 417 [M+1]; H NMR(CDC1, 300 MHz): inter alia δ 4.39(1H, br q, J= 8Hz), 4.10(1H, br s), 3.46(1H, br dd, J=11Hz), 3.39(1H, t, J= 11Hz), 0.98(3H, s), 0.97(3H, d, J= 7Hz), 0.79(3H, d, J=7Hz), 0.76(3H, s) ppm ; 13C NMR(CDC1,126 MHz): δ 14.47, 16.43, 17.10, 20.83, 23.86, 26.48, 26.50, 27.75, 28.73, 29.89, 30.24, 31.32, 31.73, 33.46, 35.21, 35.21, 36.45, 39.78, 40.24, 40.63, 41.54, 56.41, 62.19, 66.79, 66.98, 80.87, 109.20 ppm; C 77.94% ; H 10.75% (C2744の理論値: C 77.84% ; H 10.64%)。
【0084】
[実施例7] 水素化反応および還元反応のはめ込み(telescoping)
L−セレクトライド(登録商標)(527ml;THF中で1M)を、窒素雰囲気下、約−10℃にて、スミラゲノン(156g)の溶液(ジオスゲノンの水素化により得られた)に添加した。この反応混合物をこの温度にて30分間攪拌し、周囲温度まで昇温して、一晩攪拌した。この混合物に、クエン酸水溶液(水(3800ml)中に311gのクエン酸を溶解)およびジクロロメタン(2200ml)を添加することによりクエンチし、30℃より低い内部温度に維持した。水層を分離し、ジクロロメタン(400ml)で再抽出した。両方の有機層抽出物をクエン酸水溶液(水(2200ml)中に160gのクエン酸を溶解)で洗浄し、低容積になるまで蒸留した。2−プロパノール(3000ml)をさらに添加して、混合物の容積が約1/2になるまで蒸留した。混合物を還流下まで加熱して、放冷した。この混合物をさらに0〜10℃に冷却した。この固体を真空オーブン内にて60〜65℃で乾燥させて、スミラゲニンを得た。収量は94.0gである。
【0085】
[実施例8] エピスミラゲニンへのスミラゲノンの還元
リチウム トリ−tert−ブトキシアルミノハイドライド(99ml;テトラヒドロフラン中で1M)を、温度が14〜16℃に維持されるような速度にて、スミラゲノン(32.0g,77.2mmol)のテトラヒドロフラン(800ml)溶液に滴下した。滴下が完了したら、この混合物を室温でさらに2時間攪拌した。残っている還元剤を、塩化アンモニウム溶液(塩化アンモニウム30gを水400mlに溶解)を注意深く添加することによりクエンチした。この混合物を濾過して、得られた固体をジクロロメタン(300ml)で洗浄した。合わせた濾液をエバポレイトし、残渣をジクロロメタン(300ml)と水(300ml)とで分配した。水層をさらにジクロロメタン(2×300ml)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、エバポレイトして白色固体(25.7g)を得た。この固体をアセトン(1250ml)で再結晶化し、得られた固体(19.0g)を真空オーブンにて40℃で一晩乾燥させた。最後に、この固体を2−プロパノール(300ml)から再結晶化により精製し、溶液を熱時濾過して非無機物を除去した。濾液を放冷し、固体を濾別して、真空オーブンにて60℃で乾燥させて、エピスミラゲニン(9.0g)を得た。
【0086】
mp 223-227℃; [a]25=-64°(c=5 g1−1, CHC1); IR Vmax(KBr) 3392, 2937, 1451, 1369, 1051, 982, 864 cm−1; ESI-MS m/z 417 [M+1]; H NMR(CDC1, 300MHz): inter aliaδ 4.40(1H, br q, J= 8Hz), 3.62(1H, septet, J= 10, 10, 5,5Hz), 3.48(1H, br dd, V=11Hz), 3.37(1H, t, J=11Hz), 0.97(3H, d, J=7Hz), 0.95 (3H, s), 0.79 (3H, d, J = 7Hz), 0.75 (3H, s) ppm ; 13C NMR(CDC1,75MHz): inter alia : δ 14.91, 16.85, 17.55, 20.99, 23.78, 27.08, 27.49, 30.68, 31.75, 32.18, 35.09, 35.75, 35.85, 40.62, 40.91, 41.04, 41.99, 42.39, 56.74, 62.59, 67.23, 72.10, 81.30, 109.64 ppm; C 77.77% ; H 10.59%C2744の理論値: C 77.84% ; H 10.64%)。
【0087】
[実施例9] エピスミラゲニンからスミラゲニン ベンゾエートの合成
ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(0.81g,4.0mmol)の乾燥THF(2ml)溶液を、攪拌中のエピスミラゲニン(0.83g,2.0mmol),トリフェニルホスフィン(1.05g,4.0mmol),および安息香酸(0.49g,4.0mmol)の乾燥THF(20ml)溶液に添加した。この混合物を室温で攪拌し、TLCでモニタした。2時間後、すべての出発物質が消費されていた。溶媒を真空留去し(in vacuo)、得られたシロップをエーテル(30ml)に溶解し、この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25ml)で洗浄した。MgSOを用いて有機層を乾燥させ、短いシリカパッドを通過させ、このパッドをエーテルで洗浄した。合わせた洗浄液および濾液を真空留去して、スミラゲニン ベンゾエートを白色固体として得た。
【0088】
[実施例10] エピサルササポゲニンからサルササポゲニン ベンゾエートの合成
ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(0.81g,4.0mmol)の乾燥THF(2ml)溶液を、攪拌中のエピサルササポゲニン(0.83g,2.0mmol),トリフェニルホスフィン(1.05g,4.0mmol),および安息香酸(0.49g,4.0mmol)の乾燥THF(20ml)溶液に添加した。この混合物を室温で攪拌し、TLCでモニタした。2時間後、すべての出発物質が消費されていた。溶媒を真空留去し(in vacuo)、得られたシロップをエーテル(30ml)に溶解し、この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25ml)で洗浄した。MgSOを用いて有機層を乾燥させ、短いシリカパッドを通過させ、このパッドをエーテルで洗浄した。合わせた洗浄液および濾液を真空留去して、サルササポゲニン ベンゾエートを白色固体として得た。
【0089】
mp 173-175℃ ;H NMR (500MHz, CDCl) : δ 0.77(3H, s, 18-CH), 1.00(3H, d, J= 6.7Hz, 21-CH), 1.04(3H, s, 19-CH), 1.08(3H, d, J= 7.0Hz, 27-CH), 1.1- 2.1(27H, complex multiplet, aliphatics), 3.31(1H, br. d, J= 10.9Hz, 26-OCHH), 3.96(1H, br. dd, J= 10. 9, 2.0Hz, 26-OCHH), 4.42(1H, m, 16-OCH), 5.34(1H, br. s, H-3), 7.44 (2H, br. t, J = 7.6Hz, aromatic H), 7.55(1H, br. t, J=7.6 Hz, aromatic H), 8.05(1H, br. d, J= 7.6Hz, aromatic H) ppm; 13C NMR(125.6MHz, CDC1): δ 14.56, 16.28, 16.71, 21.17, 24.28, 25.41, 26.01, 26.19, 26.69, 27.31, 31.02, 31.33, 31.98, 35.37, 35.57, 37.92, 40.28, 40.48, 40.91, 42.36, 56.63(C-14), 62.33(C-17), 65.36(C-26), 71.54(C-3), 81.22(C-16), 109.94(C-22), 128.54(aromatic C), 129.73(aromatic C), 131.39(aromatic C), 132.9(aromatic C), 166.13(carbonyl) ppm。
【0090】
[実施例11] サルササポゲノンからエピサルササポゲニンの合成
リチウム トリ−tert−ブトキシアルミノハイドライドのTHF溶液(41.71kg;テトラヒドロフラン中で1M)を、乾燥窒素雰囲気下−23〜−30℃にて、攪拌中のサルササポゲノン(17.38kg)のTHF(約70kg)溶液に滴下した。プロセスラインをTHFで洗浄し、この混合物を−23〜−30℃にて約3時間攪拌した。得られた溶液を硫酸ナトリウム水溶液(5.67kgの硫酸ナトリウムを28.67kgの水に溶解)で注意深くクエンチした。非有機塩を濾過により除去し、THF(184kg)で洗浄した。水(63.18kg)を添加し、大量のTHFを蒸留により除去した。付加的な水(126.44kg)を添加し、生成物を濾過により単離した。この生成物を水(2×17.38kg)およびアセトン(4×13.73kg)で洗浄した。この生成物を35〜40℃で乾燥させて、エピサルササポゲニン(14.48kg)を得た。
【0091】
以上、本発明を限定することなく概括的に説明した。なお、当業者にとって容易に明らかであろう変形および修正は、本出願およびその後に付与されるいずれかの特許の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンまたはその誘導体の立体特異的調製方法であって、
ヒンダード有機ホウ素化合物または有機水素化アルミニウム化合物を含む還元剤を使用して、3−ケト−5β−H ステロイド系サポゲニンを還元することを含む、方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記還元剤は、ヒンダード有機ホウ素化合物であり、
前記有機ホウ素化合物の有機基は、2より大きい個数の炭素原子を含み、
得られる前記サポゲニンは主に、3β−ヒドロキシ,5β−Hサポゲニンである、方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ヒンダード有機ホウ素化合物は、リチウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド、ポタシウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド、ソディウム トリ−sec−ブチルボロハイドライド、リチウム トリシアミルボロハイドライド、ポタシウム トリシアミルボロハイドライド、ポタシウム トリフェニルボロハイドライド、およびリチウム トリフェニルボロハイドライドから選ばれる、方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記ヒンダード有機ホウ素化合物は、リチウム トリ−sec−ブチルボロハイドライドである、方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記有機水素化アルミニウム化合物は、リチウム トリ−tert−ブトキシアルミノハイドライドである、方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
得られる主サポゲニン/該主サポゲニンの3−エピマー(モル比)が、少なくとも約10/1である、方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記モル比が少なくとも15/1である、方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
テトラヒドロフラン、トルエン、tert−ブチル メチル エーテル、ジエトキシメタン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、およびその混合物から選ばれる有機溶媒中で行われる、方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記有機溶媒は、本質的にテトラヒドロフランからなる、方法。
【請求項10】
請求項8において、
前記有機溶媒は、本質的にトルエンからなる、方法。
【請求項11】
請求項8において、
前記有機溶媒は、本質的に1,4−ジオキサンからなる、方法。
【請求項12】
請求項8において、
前記有機溶媒は、本質的に2−メチルテトラヒドロフランからなる、方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかにおいて、
所望の前記サポゲニンは、以下の一般式で表される化合物である、方法。
【化1】

(上記式において、R,R,R,R,R,R,R,R,およびRは、それぞれ独立に、H,炭素原子数1〜4のアルキル基,OH,またはOR(ここで、Rは、炭素原子数6〜12のアリール基または炭素原子数1〜4のアルキル基)、または、RおよびRはともに=O(カルボニル基)または保護されたカルボニル基であり、3位の炭素中心の立体化学がRまたはSであり、かつ、R10はOH,O結合型糖基,またはいずれかの有機エステル基を表す。)
【請求項14】
請求項13において、
前記サポゲニンは、サルササポゲニン,エピサルササポゲニン,スミラゲニン,エピスミラゲニン,およびそのエステルから選ばれる、方法。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかにおいて、
出発物質である3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニンは、対応するΔ,3−ケト ステロイド系サポゲニンの不均一系触媒水素化により調製され、少なくとも前記5β−H,3−ケトンよりも優先して、前記Δ,3−ケト ステロイド系サポゲニンに変換される、方法
【請求項16】
請求項15において、
前記不均一系触媒水素化は、有機溶媒中で水素およびパラジウム触媒を用いて行なわれる、方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記パラジウム触媒は、担体上に存在する、方法。
【請求項18】
請求項15ないし17のいずれかにおいて、
前記Δ,3−ケト ステロイド系サポゲニンは、ジオスゲノンである、方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記ジオスゲノンは、ジオスゲニンの酸化により得られる、方法。
【請求項20】
3α−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンおよびその誘導体を、3β−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンおよびその誘導体に変換する方法であって、
3位での反転を伴う求核置換が優位な条件下で、3α−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンの3−ヒドロキシ活性化誘導体を求核剤と接触させることを含み、引き続いて3位の置換基の任意の調整を要求どおり伴う、方法。
【請求項21】
請求項20において、
前記反応は、光延反応のプロトコルにしたがって行われて、3β−ヒドロキシ−5β−H ステロイド系サポゲニンのエステル誘導体を得る、方法。
【請求項22】
請求項20において、
前記サポゲニンの活性化誘導体は、有機スルホナート誘導体である、方法。
【請求項23】
スミラゲニンの合成方法であって、
ジオスゲノンを触媒的に水素化した後、ヒンダード有機ホウ素化合物を用いて、得られた3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニンを還元することを含む、方法。
【請求項24】
エピスミラゲニンの合成方法であって、
ジオスゲノンを触媒的に水素化した後、有機アルミノハイドライドを用いて、得られた3−ケト,5β−H ステロイド系サポゲニンを還元することを含む、方法。
【請求項25】
請求項1ないし24のいずれかにおいて、
はじめに形成されたサポゲニンは次いで、そのプロドラッグ形態またはその生理学的に許容しうる形態へと変換される、方法。

【公表番号】特表2006−507360(P2006−507360A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501542(P2005−501542)
【出願日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/001780
【国際公開番号】WO2004/037845
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(500471984)フィトファーム・パブリック・リミテッド・カンパニー (6)
【Fターム(参考)】