説明

サラウンド・サウンド・システムの低域効果およびサラウンド・チャネルの無線ディジタル伝送

【課題】設置の困難性及び音質を改善可能な無線サラウンド・サウンド・スピーカを提供する。
【解決手段】サブウーファ72は、LFEチャネルに関する情報および両サラウンド・チャネルに関する情報を含む信号を受信するための無線受信機80を備える。このサブウーファ72は、LFEチャネルを利用し、サラウンド・スピーカ74,76に給電し、サラウンド信号をそれぞれのサラウンド・スピーカ74,76に供給する。受信機66はLFE信号を一方または両方のサラウンド・サウンド音声チャネルに多重化する。受信機66のディジタルRF送信機70は、合成サブウーファ/サラウンド・チャネルをサブウーファ72の無線受信機80に送信する。遠隔のサブウーファ72は電源78に接続される。サラウンド・スピーカ74,76は、サラウンド・チャネルを受信し、それによって給電されるようにサブウーファ72に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声情報を伝送する装置および方法に関し、特に、ホーム・シアター・システムにおいて1つまたは複数のスピーカに音声データを無線伝送する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本米国非仮特許出願は、「Low Cost Wireless Digital Transmission of LFE and Surround Channels For Home Theater」と題する2003年9月24日出願の米国仮特許出願第60/505,502号の特典および/または優先権を主張するものである。
【0003】
図1は、従来の、または従来技術による、ホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの全体を10で示すブロック図である。従来のホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システム10は、その主要な構成要素として、ホーム・シアター受信機12を含む。受信機12に対して有線で物理的に接続されるのは、右スピーカ14、左スピーカ16、および中央スピーカ18である。受信機12は、右チャネル音声信号を右スピーカ14に、左チャネル音声信号を左スピーカ16に、中央チャネル音声信号を中央スピーカ18に供給するように動作することができる。
【0004】
また、右サラウンド・スピーカ20、左サラウンド・スピーカ22およびサブウーファ24も、受信機12に有線で物理的に接続される。受信機12は、右サラウンド音声信号を右サラウンド・スピーカ20に、左サラウンド音声信号を左サラウンド・スピーカ22に、サブウーファ信号をサブウーファ24に供給するように動作することができる。全てのスピーカを受信機12に物理的に接続する必要があるので、このようなホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムには、容易且つ/または効率的に設置するために多くの問題があることは明らかである。従って、設置の困難さのために、多くの消費者がホーム・シアター・システムの購入を諦めてしまう可能性がある。
【0005】
サラウンド・サウンド・スピーカは受信機からある程度離れた位置に配置されるので、図1に示すようなホーム・シアター・システムを求める多くの消費者は、サラウンド・スピーカの配線の困難さに直面する。この困難さの原因はいくつか考えられるが、通常は、美観の問題またはロジスティックの(logistical)問題による。このため、多くの消費者はやむなくサラウンド・スピーカを接続することを諦めることになり、結果として、ホーム・シアターの音性能は最適とは言えないものになり、消費者は不満を感じることになる。
【0006】
上記に鑑みて、様々な無線サラウンド・サウンド方式がその解決策として開発されている。ほとんどの無線サラウンド方式では、簡単であり且つ費用効率も良いが音質が悪い「RFアナログ音声(analog audio over RF)」方式を利用している。ホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの目的は、良質な音を得ることであるので、このような悪い音質は、購入の目的を損なうことになる。このことが、アナログ技術ではなくディジタル技術が利用されることの根拠になる。しかし、ディジタル技術を使用する場合には、解決策の実施に非常に費用がかかることになる。さらに、無線サラウンド・サウンド・スピーカをバッテリで駆動しない限り、サラウンド・サウンド・スピーカに電力を供給するために、ホーム・シアター受信機からサラウンド・サウンド・スピーカまでの配線は依然として必要である。バッテリ駆動式のサラウンド・サウンド・スピーカを使用することは、いくつかの明らかな理由から許容できる解決策ではない。
【0007】
例えば、サラウンド・サウンド・スピーカが無線受信機と無線信号用の増幅器とを備える場合には、サラウンド・サウンド・スピーカは、依然としてこの受信機および増幅器を駆動するための電源を必要とする。あるいは、サラウンド・サウンド・スピーカが無線受信機および増幅器を備えない場合には、サラウンド・サウンド・スピーカは、やはり別個の電源を必要とする外部受信機/増幅器に接続する必要がある。
【0008】
従って、このような従来技術の無線システムは、従来のホーム・シアター・システムに比べてある程度は好ましいが、それでも設置の困難さは残っている。
【0009】
従って、上記の考察から、設置の困難さを軽減したサラウンド・サウンド・スピーカが必要とされていることは明らかである。
【0010】
さらに、上記の考察から、従来技術の欠点を軽減する無線サラウンド・サウンド・スピーカ方式が必要とされていることも明らかである。
【0011】
また、上記の考察から、ディジタル音質を提供する無線サラウンド・サウンド・スピーカ方式が必要とされていることも明らかである。
【0012】
上記その他の必要は、本発明の原理、ならびに/あるいは本発明を本明細書に図示および/または記述するような1つまたは複数の様々な形態および/または構造で実施したものを適用することによって満たされる。
【発明の概要】
【0013】
本発明の原理によれば、サブウーファは、低域効果(LFE)チャネルに関する情報および両サラウンド・チャネルに関する情報を含む信号を受信するための無線受信機を備える。このサブウーファは、LFEチャネル情報を利用し、サラウンド・スピーカに給電し、サラウンド・チャネル情報信号をそれぞれのサラウンド・スピーカに供給する。このようにして、サブウーファを、サラウンド・サウンド・システムを設置する部屋の中の後方位置など、サラウンド・サウンド・システム受信機から遠隔の位置に配置することができる。このように、サラウンド・スピーカ用の別個の給電線が不要となり、サラウンド・スピーカは、サラウンド・サウンド・システム受信機から遠隔に配置され、サラウンド・サウンド・システム受信機に接続されない。
【0014】
一実施形態によれば、LFEチャネル信号は、サブウーファに送信されるときに一方または両方のサラウンド・チャネルにディジタル多重化される。サブウーファは、受信した信号を逆多重化して、サラウンド・チャネル信号からLFEチャネル信号を分離する。本発明の一実施形態では、多重化信号は、サブウーファに送信される前に8/14(eight to fourteen)変調(EFM)を用いてレッド・ブックCDフォーマットに変換される。
【0015】
LFEチャネル信号を一方または両方のサラウンド・チャネルに多重化することに加えて、バス周波数音声成分を一方または両方のサラウンド・チャネルに多重化することもできる。
【0016】
別の実施形態によれば、LFEチャネル信号は、サラウンド・サウンド・システム受信機によって、最初にアナログ・フォーマットで一方または両方のサラウンド・チャネルに付加される。これらの信号は、加算され、パルス・コード変調(PCM)フォーマットに変換される。次いで、PCMフォーマット信号は、EFMを用いてレッド・ブックCDフォーマットに符号化され、RF(無線周波数)搬送波を介してサブウーファに送信される。次いで、サブウーファ内またはその付近に位置するRF受信機が、RF・EFM信号を復調し、PCM信号をアナログ音声に変換する。
【0017】
LFEチャネルは、単純な低域フィルタを用いて一方または両方のサラウンド・チャネルから抽出し、サブウーファによって増幅することができる。LFEを両方のチャネルから抽出する場合には、加算増幅器を用いてこの2つのLFE信号を再結合しなければならない。次いで、その結果得られた音声信号を、サブウーファによって増幅する。
【0018】
一形態では、本発明は、サラウンド・サウンド・システムで使用される無線サブウーファを提案する。この無線サブウーファは、サブウーファ成分およびサラウンド成分の両方を含む信号を無線受信する受信機と、サブウーファを駆動するためのサブウーファ成分を受信した信号から抽出する抽出機とを含む。また、このサブウーファは、適当な右および左のサラウンド成分をそれぞれ右および左のサラウンド・スピーカに供給して、サラウンド・スピーカを駆動する。
【0019】
別の形態では、本発明は、サラウンド・サウンド受信機を提案する。このサラウンド・サウンド受信機は、第1のフロント・スピーカに接続する第1のポートと、第2のフロント・スピーカに接続する第2のポートと、サブウーファ・チャネルからの信号とサラウンド・チャネルからの信号とを合成するコンバイナと、合成信号をサブウーファに無線送信する送信機とを含む。このサブウーファは、合成信号を無線受信し、合成信号からサブウーファ・チャネルを抽出し、サラウンド・スピーカに給電し、サラウンド・チャネルを含む信号をサラウンド・スピーカに提供する。このサラウンド・サウンド受信機は、中央スピーカに接続する第3のポートも含むことが好ましいが、必ずしもこれが必要と言うわけではない。
【0020】
さらに別の形態では、本発明は、サブウーファおよび複数のサラウンド・サウンド・スピーカを有するサラウンド・サウンド・サブシステムを駆動する方法を提案する。この方法は、(a)サラウンド・サウンド受信機において、サブウーファ信号とサラウンド信号とを合成するステップと、(b)合成信号を、サラウンド・サウンド受信機と連動するディジタルRF送信機を介して無線送信するステップと、(c)無線送信された合成信号を、サブウーファと連動する無線ディジタルRF受信機によって受信するステップと、(d)合成信号からサブウーファ信号を抽出して、この抽出したサブウーファ信号によってサブウーファを駆動するステップと、(e)サブウーファに接続されたサラウンド・サウンド・スピーカにサラウンド信号を提供して、サラウンド・サウンド・スピーカをサラウンド信号によって駆動するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来技術のホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の原理による例示的なホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムを示すブロック図である。
【図3】本発明の原理による図2のホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの実施形態を示す図である。
【図4】本発明の原理による図2のホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの別の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の原理による図2のホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の例示的な全体の動作の流れを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の本発明の一実施形態の説明を図面と併せて読むことにより、本発明の上記その他の特徴および目的ならびにそれらを実現する方法はより明らかになり、本発明自体もより良く理解されるであろう。
【0023】
いくつかの図面を通じて、対応する部分は対応する参照番号で示してある。これらの図面は本発明のいくつかの実施形態を示すものであるが、これらの図面は必ずしも一定の比率で描かれているわけではなく、本発明の図示および説明が分かりやすくなるように、一部の要素を強調してあることもある。本明細書に記載の例示は、本発明の1つの実施形態の1つの形態を示すものであり、この例示は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されないものとする。
【0024】
本明細書に開示の実施形態は、全てを網羅するものではなく、当業者がその教示を利用できるように開示した厳密な形態に本発明を限定するものではない。
【0025】
図2は、本発明の原理を実施した、全体を30で示すホーム・シアター・システムを示すブロック図である。ホーム・シアター・システム30は、主サブシステムまたは主部分と呼ばれることもある、全体を32で示す第1のサブシステムまたは部分を有する。主サブシステム32は、ホーム・シアター受信機36を含む。このホーム・シアター受信機36は、本発明の原理による本明細書に記載の機能および/または動作に加えて、音声信号または音声/映像信号を、1つまたは複数のソースまたは入力から受信し、処理し、且つ/あるいは1つまたは複数の出力先または構成要素に対して分配する(まとめて言えば「処理する」)など、従来技術で既知のホーム・シアター受信機の機能も果たす。音声プロセッサとして、受信機36は、適当な音声再生装置(例えばスピーカ)を通じて音声を生成するための音声信号を供給する。
【0026】
従って、主サブシステム32は、右音声スピーカ(スピーカ)38、左音声スピーカ(スピーカ)40、および中央音声スピーカ(スピーカ42)を含む。受信機36は、右チャネル音声出力またはスピーカ・ポート37を含み、1つまたは複数の右チャネル音声信号は、このポート37から、図2に示すようなポート37とスピーカ38の間に延びる線による有線接続を介して、右スピーカ38に供給される。また、受信機36は、左音声チャネル出力またはスピーカ・ポート39も含み、1つまたは複数の左チャネル音声信号は、このポート39から、図2に示すようなポート39とスピーカ40の間に延びる線による有線接続を介して、左スピーカ40に供給される。さらに、受信機36は、中央チャネル音声出力またはスピーカ・ポート41も含み、1つまたは複数の中央チャネル音声信号は、このポート41から、図2に示すようなポート41とスピーカ42の間に延びる線による有線接続を介して、中央スピーカ42に供給される。また、主サブシステム32は、その機能、動作および/または特徴について以下で述べるディジタルRF送信機システム50も含む。ただし、ディジタルRF送信機50は、受信機36の一部として、すなわち受信機36に組み込まれるものとして示してあるが、受信機36の外部にある、すなわち受信機36から分離していてもよいことを理解されたい。
【0027】
また、ホーム・シアター・システム30は、サラウンド・サウンド・サブシステム、サラウンド・サブシステムまたは高性能サブウーファ・サブシステムもしくは部分と呼ばれることもある、全体を34で示す第2のサブシステムまたは部分も含む。サラウンド・サブシステム34は、サブウーファ44、右サラウンド・サウンド(サラウンド)スピーカ46、および左サラウンド・サウンド(サラウンド)スピーカ48を含む。サブウーファは、右サラウンド・サウンド(サラウンド)チャネル・ポート45を含み、1つまたは複数の右サラウンド・サウンド(サラウンド)チャネル音声信号は、このポート45から、図2に示すようなポート45とスピーカ46の間に延びる線による有線接続を介して、右サラウンド・スピーカ46に供給される。右および左のサラウンド・スピーカは、右および左のリア・スピーカと呼ばれることもある。また、サブウーファは、左サラウンド・サウンド(サラウンド)チャネル・ポート47も含み、1つまたは複数の左サラウンド・サウンド(サラウンド)チャネル音声信号は、このポート47から、図2に示すようなポート47とスピーカ48の間に延びる線による有線接続を介して、左サラウンド・スピーカ48に供給される。また、サブウーファ・システム34は、その動作、機能および/または特徴について以下で述べるディジタルRF受信機システム52も含む。ただし、ディジタルRF受信機52は、サブウーファ44の一部として、すなわちサブウーファ44に組み込まれるものとして示してあるが、サブウーファ44の外部にある、すなわちサブウーファ44から分離していてもよいことを理解されたい。
【0028】
図2に示すホーム・シアター・システム30は、5つのスピーカ(左右のスピーカ、中央スピーカ、および左右のサラウンド・サウンド・スピーカ)と、1つのサブウーファとを備えるところから、5.1システムと呼ばれる。ただし、本発明は、7.1システム(7つのスピーカおよび1つのサブウーファ)など、その他のスピーカ・システム構成にも適用することができることを理解されたい。
【0029】
主サブシステム32は、受信機36と連動する、またはその一部である、上記のディジタル無線周波数(RF)送信機50をさらに含む。ディジタルRF送信機50は、送信する前に、レッド・ブック規格のCDフォーマットに準拠したものなどのCDフォーマットを用いて音声の変調を行うように動作することができ、そのように構成され、且つ/またはそのように適合される。音声データをレッド・ブックCDフォーマットに変換するプロセスは、当業者には周知であり、Philips社製のSAA7392ICを用いて実施することができる。最初に、音声データは、PCMフォーマットに変換される。この変換では、信号を時間サンプリングし、振幅を量子化して並列2進数にする。これは、通常はアナログ・ディジタル変換器(ADC)で行われる。次いで、このディジタル・データを処理して、クロス・インタリーブド(Cross−Interleaved)リード・ソロモン・コーディング(CIRC)エラー補正符号化および8/14変調(EFM)を行う。
【0030】
レッド・ブックCDフォーマットのデータは、複数のフレームにグループ化され、各フレームは588のチャネル・ビットからなる。各フレームは、27ビット同期部分、8ビットSUBCODE部分(適当または必要な場合)、96ビット・データ部分、32ビット・パリティ部分、第2の96ビット・データ部分、および第2の32ビット・パリティ部分からなる。フレームの構築においては、6つの32ビットPCM音声サンプリング期間を1つのフレームにグループ化し、次いで、各サンプリング・フレームを分割して、4つの8ビット音声シンボルを生成する。起こりうるエラーを分散するために、異なるフレームから得られるシンボルを交互に配置して、1つのフレームの音声信号が様々なフレームから得られるようにする。さらに、各フレームごとに8個の8ビット・パリティ・シンボルを生成し、そのうちの4つは当該フレームの中央に配置し、残りの4つは当該フレームの末端に配置する。フレームの交互配置およびパリティ・フレームの生成により、クロス・インタリーブド・リード・ソロモン・コードに基づくエラー補正符号化が行われる。フレームが構築されたら、このデータをEFM符号化し、各8ビット・ワードに対して特定の14ビット・ワードを割り当てるテーブルを用いて、8ビットのブロックを14ビット・ワードのブロックに変換する。一実施形態では、データの交互配置およびEFM符号化を含むフレームの構築は、全てディジタルRF送信機50内にあるCIRCエンコーダ、制御および表示エンコーダ、時分割マルチプレクサ、およびEFM変調器を含む、CDフォーマット・エンコーダによって実行される。ただし、上記の機能および処理は、当業者には既知のその他の様々な構成要素およびソフトウェア要素によって実施することもできることを理解されたい。この変換によってEFM信号が得られ、次いで、このEFM信号を調整して変調用信号を生成する。
【0031】
さらに、ディジタルRF送信機50は、以下のように動作することもできる。EFM信号は、音声をディジタルRF受信機52に送信する搬送波をこのアナログ状信号で周波数変調するその後の周波数変調ステージを簡略にするために、ディジタルRF送信機50内の信号調整によって、正弦基本波に周波数帯域が制限される。EFM信号は、180kHzから720kHzの間などに帯域を制限することもできる。調整済みのEFM信号を使用して、発振子またはアンテナを備えたディジタルRF送信機50がRF搬送波信号を変調する。
【0032】
ただし、この方式は、ステレオにしか対応していない。従って、CDフォーマットは、2つのチャネルしかサポートすることができない。この場合では、これら2つのチャネルは、右サラウンド・サウンド音声チャネルおよび左サラウンド・サウンド音声チャネルである。しかし、本発明の原理によれば、受信機36は、ディジタルRF送信機50を通して、且つ/または介して、サブウーファ・チャネルとも呼ばれるサラウンド・サウンド・システムのLFE(低域効果)チャネルを、左右のサラウンド・チャネルの一方または両方に多重化する。この1つまたは複数のサブウーファ・システム合成音声信号または高性能サラウンド・サウンド合成音声信号は、上述のように受信機36のディジタルRF送信機50によってCDフォーマットで供給され、サブウーファ44のディジタルRF受信機52に無線送信される。サブウーファ44は、この合成信号から、右サラウンド・サウンド音声チャネル成分、左サラウンド・サウンド音声チャネル成分、およびサブウーファ音声チャネル(LFE)成分を復元するために、この合成音声信号を受信して処理するように動作することができ、そのように構成され、且つ/またはそのように適合される。復元された右サラウンド・サウンド音声チャネルは、右サラウンド・スピーカ46に提供され、復元された左サラウンド・サウンド音声チャネルは、左サラウンド・スピーカ48に供給され、サブウーファ(LFE)チャネルはサブウーファ44に供給される。サブウーファ44は通常はホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの後部に設けられるので、ユーザがサラウンド・スピーカ46および48を配線する際に、問題は生じない。
【0033】
図3を参照すると、本発明の原理、特に図2の実施形態に関連して上述した原理を実施する、全体を60で示すホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの別の例示的な実施形態が示してある。従って、このホーム・シアター・システム60は、主サブシステムまたは主部分と呼ばれることもある、全体を62で示す第1のサブシステムまたは部分と、サラウンド・サウンド・サブシステム、サラウンド・サブシステムまたは高性能サブウーファ・サブシステムもしくは部分と呼ばれることもある、全体を64で示す第2のサブシステムまたは部分とを有する。サブシステム62および64はそれぞれ、上述の原理に従って機能する。
【0034】
主サブシステム62は、ディジタル・サウンド・プロセッサなどのプロセッサ68、またはディジタル・サウンド・プロセッサを含むプロセッサ68を含むホーム・シアター受信機66を含む。プロセッサ68は、ディジタルEF送信機70と連絡している。ディジタルRF送信機70は、ディジタルRF送信機50に関連して上述したように機能する。プロセッサ68は、受信機66の必要な処理および/または制御を行う。分かりやすくするために、受信機66に接続される右スピーカ、左スピーカおよび中央スピーカは、図3には示していない。ディジタルRF送信機70は、ディジタルRF送信機70からサブシステム64に向かって広がる曲線で示すように、1つまたは複数の合成サラウンド/サブウーファ信号を無線で供給する。
【0035】
サラウンド・サブシステム64は、右サラウンド・ポート73および左サラウンド・ポート75を有するサブウーファ72を含む。右サラウンド・スピーカ74は、右サラウンド・スピーカ74と右サラウンド・ポート73の間の直線で表すワイヤを介して右サラウンド・ポート73に接続された状態で示してある。左サラウンド・スピーカ76は、左サラウンド・スピーカ76と左サラウンド・ポート75の間の直線で表すワイヤを介して左サラウンド・ポート75に接続された状態で示してある。サブウーファ72は、電源78に接続される。電源78がサブウーファに電力を供給し、サブウーファがサラウンド・スピーカ74、76に電力を供給する。サブウーファ72は、さらに、ディジタルRF受信機80、プロセッサ82および増幅器84を含む。
【0036】
特に、受信機66と連動する、またはその一部であるディジタルRF送信機70は、送信する前に、レッド・ブック規格のCDフォーマットに準拠したものなどのCDフォーマットを用いて音声の変調を行うように動作することができ、そのように構成され、且つ/またはそのように適合される。音声データをレッド・ブックCDフォーマットに変換するプロセスは、当業者には周知であり、Philips社製のSAA7392ICを用いて実施することができる。最初に、音声データは、PCMフォーマットに変換される。この変換では、信号を時間サンプリングし、振幅を量子化して並列2進数にする。これは、通常はアナログ・ディジタル変換器(ADC)で行われる。次いで、このディジタル・データを処理して、CIRCエラー補正符号化および8/14変調(EFM)を行う。
【0037】
受信機66は、プロセッサ68を通して、且つディジタルRF送信機70を介して、サブウーファ・チャネルとも呼ばれるサラウンド・サウンド・システムのLFE(低域効果)チャネルを、左右のサラウンド・チャネルの一方または両方に多重化する。この1つまたは複数のサブウーファ・システム合成音声信号または高性能サラウンド・サウンド合成音声信号は、上述のように受信機66のディジタルRF送信機70によってCDフォーマットで提供され、サブウーファ72のディジタルRF受信機80に無線送信される。
【0038】
サブウーファ72は、ディジタルRF受信機80を介してこの合成音声信号を受信して処理するように動作することができ、そのように構成され、且つ/またはそのように適合される。プロセッサ82は、回路/論理および/またはファームウェアを介して、この合成信号から、右サラウンド・サウンド音声チャネル成分、左サラウンド・サウンド音声チャネル成分、およびサブウーファ音声チャネル(LFE)成分を復元するように動作することができ、そのように構成され、且つ/またはそのように適合される。復元された右サラウンド・サウンド音声チャネルは、増幅器84によって増幅され、右サラウンド・スピーカ46に供給される。復元された左サラウンド・サウンド音声チャネルは、増幅器84によって増幅され、左サラウンド・スピーカ48に供給される。サブウーファ(LFE)チャネルは、増幅器84によって増幅されることも増幅されないこともあるが、サブウーファ72内のボイス・コイル(図示せず)に供給され、低周波音を発生させる。
【0039】
次に、図4を参照すると、本発明の原理による、全体を90で示すホーム・シアターまたはサラウンド・サウンド・システムの別の実施形態が示してある。図4のシステム90は、本発明または本発明の原理を実施することができるホーム・シアター・システムの典型的なシステム、ならびに複数のサラウンド・チャネルへのLFEの多重化を実施する1つの様式または方法を示すものである。システム90は、主サブシステム92およびサラウンド/サブウーファ・サブシステム94を含む。主サブシステム92は、主要な構成要素としてサラウンド受信機96を含み、サラウンド/サブウーファ・サブシステム94は、その主要な構成要素としてサブウーファ106、ディジタルRF受信機114およびLFE抽出機116を含む。ここでも、分かりやすくするために、受信機96に接続されるスピーカは図示していない。右サラウンド・スピーカ108および左サラウンド・スピーカ110は、ディジタルRF受信機114に接続されて、ディジタルRF受信機114によって処理された後の適当なサラウンド・チャネルを受信する。さらに、受信機96は、適当な電源98に接続され、ディジタルRF受信機114は、必要に応じて電力を供給する適当な電源112に接続される。通常は、これは、米国の家庭用として標準的な120ボルトACである。電源98および112は、通常は、家の中の同じ電源に、異なる電気プラグを介して接続して得られるものである。
【0040】
受信機96など、ほとんどのホーム・シアター受信機は、ディジタル・サウンド・プロセッサ100を含む。さらに、ファームウェア102を設けて、ディジタル音声プロセッサが本明細書で述べた方法で機能または動作することを可能にする。ディジタル・サウンド・プロセッサ100およびファームウェア102により、バス管理および/またはバス・リダイレクションに対応した構成にすることが可能になる。これにより、その他の5つのスピーカ(5:1システムの場合)の全てまたは一部にLFEを付加することが可能になる。また、これにより、音声チャネルの周波数のより低い成分をスピーカからサブウーファに向け直すことも可能になる。従って、また本発明の原理によれば、ディジタル音声プロセッサ100を利用して、LFEチャネルを左および右のサラウンドPCMチャネルにディジタル多重化する。ファームウェア102は、通常の場合のようにLFEを右および左のチャネルに多重化するのではなく、または通常の場合のようにLFEを右および左のチャネルに多重化することに加えて、LFEチャネルを左および/または右のサラウンド・チャネルに多重化することができるように、変更される。さらに、音声のバス成分が5つのスピーカからサブウーファに向け直すことができるので、その後に、サウンド・プロセッサ100によって、LFE信号に加えてこのバスもサラウンド・チャネルに多重化することもできる。ディジタル多重化は、LFEを一方または両方のサラウンド・チャネルに付加する、またはLFEおよびバス周波数音声成分を一方または両方のサラウンド・チャネルに付加するなど、いくつかの選択可能な方法によって実施することができる。従って、システム90は、合成LFE/サラウンド信号を生成し、供給し、受信するためのディジタル領域処理を行う。
【0041】
ディジタルRF受信機114は、ディジタルRF送信機104から無線伝送されたサラウンド/サブウーファ(合成)信号を受信するように動作することができ、そのように構成され、且つ/またはそのように適合される。ディジタルRF受信機114は、受信した合成信号を処理して、右サラウンド・チャネルおよび左サラウンド・チャネルを取り出す。右サラウンド・チャネルは右サラウンド・スピーカ108に供給され、左サラウンド・チャネルは左サラウンド・スピーカ110に供給される。
【0042】
また、ディジタルRF受信機114は、LFE抽出機116にも信号を供給する。LFE抽出機116は、一方または両方のサラウンド・チャネルから、サブウーファで使用されるLFEチャネルを抽出する。LFE抽出機116は、そのために低域フィルタ118を含むこともできる。その結果得られる抽出されたサブウーファ・チャネルは、サブウーファ106に供給される。
【0043】
図5を参照すると、特にLFE音声成分/信号と一方または両方の1つまたは複数のサラウンド音声成分/信号とを合成する別の方法を提供するための、全体を130で示すホーム・シアター/サラウンド・サウンド・システムの別の例示的な実施形態が示してある。システム130は、主サブシステムおよびサブウーファ/サラウンド・サブシステム134を含む。主サブシステム132は、上記と同じ、または同様に、ディジタルRF送信機144を有する受信機136を含む。分かりやすくするために、受信機136に接続されたスピーカおよび電源は図示していない。サブウーファ・サラウンド・サブシステム134は、サブウーファ146、右サラウンド・スピーカ148および左サラウンド・スピーカ150を含む。電力152は、サブウーファ146に供給される。
【0044】
システム130では、LFEはアナログ領域で右サラウンド・チャネルおよび左サラウンド・チャネルの一方または両方と加算され、次いで、その結果得られたステレオ・チャネルが、ディジタルRF送信機144によるディジタル送信に備えてディジタル符号化される。詳細には、LFE、右サラウンド・チャネルおよび/または左サラウンド・チャネルは、加算器138において加算される。その後、加算された信号は、PCM140に供給される。次いで、その結果得られたステレオ・ディジタルPCM信号を、EFM変調器142を用いて符号化し、その後、送信機144からRF搬送波を介して伝送する。この無線信号は、いくつかの曲線で示してある。
【0045】
サブウーファ146内にある、またはこれと連動するRF受信機154は、この合成信号を受信する。次いで、EFM復調器156が、このRF・EFM信号を復調する。次いで、PCM/アナログ・プロセッサ/処理回路158が、ステレオPCM信号をアナログ音声に変換する。このアナログ音声信号は、サラウンド・チャネルの一方または両方のLFEチャネルを含む。PCM/アナログ・プロセッサ/処理回路158は、サラウンド・チャネルを増幅器162に供給し、増幅器162は、右サラウンド・チャネルを右サラウンド・スピーカ148に、左サラウンド・チャネルを左サラウンド・スピーカ150に供給する。PCM/アナログ・プロセッサ/処理回路158は、さらに、この信号をLFE抽出機/抽出回路160にも供給する。LFE抽出機/抽出回路160は、低域フィルタなどを介して、ステレオ・サラウンド・チャネルの一方または両方からLFEチャネルを抽出する。その後、LFE信号は、サブウーファで使用するために増幅器162で増幅される。LFEを両方のサラウンド・チャネルから抽出した場合には、その後に、加算増幅器を用いてこれら2つのLFE信号を再結合し、その後にサブウーファによって増幅しなければならない。
【0046】
あるいは、単純な高域フィルタを用いて、サラウンド・チャネルからLFE成分を除去することもできる。場合によっては(LFE信号がサラウンド・スピーカに損傷を与える場合には)、LFE成分を除去することが有利であることもある。あるいは(サラウンド・スピーカがLFE成分を扱うことができる場合、またはサラウンド・スピーカがLFE成分をフィルタ除去する場合には)、LFE成分を高域フィルタリングする必要がないこともある。
【0047】
図6を参照すると、本発明の例示的な動作の流れを示す、全体を170で示す流れ図が示してある。ステップ172で、サブウーファ(例えばLFE)信号/チャネルが、一方または両方のサラウンド信号/チャネルと合成される。これは、受信機内で、上述のように様々な方法で実施される。次いで、ステップ174で、合成信号が、受信機と連動したディジタルRF送信機を介して無線伝送される。ステップ176で、合成信号は、サブウーファと連動したディジタルRF受信機によって無線受信される。ステップ178で、サブウーファは、この合成信号からサブウーファ信号/チャネルを抽出して、抽出したサブウーファ信号/チャネルによってサブウーファを駆動する。この抽出は、信号/チャネルがどのように合成されたかによって決まる。最後に、ステップ180で、この1つまたは複数のサラウンド信号/チャネルが、サブウーファに接続された一方または両方の(すなわち右および/または左の)サラウンド・スピーカに供給される。
【0048】
上記で説明し、図6に示した流れ図170は、本明細書に記載の本発明の例示的な動作の流れを与えるものであることを理解されたい。本発明は、流れ図170の全てのステップより少ないステップで、またはこれらとは異なるステップを用いて、実施することもできる。このことは、特許請求の範囲に反映されている。さらに、手順、方法または動作170の代替の実施形態において、これより多い、または少ないステップで、本明細書に記載の原理に従って本発明を実施することもできる。また、上記手順170全体ではなく、上記手順の一部分によって、本発明の原理を実施することもできる。さらに、様々な変更が考えられる。
【0049】
好ましい設計を有する本発明について説明したが、本発明は、本開示の趣旨および範囲内でさらに変更することができる。従って、本願は、本発明の一般原理を用いた本発明の任意の変更、用途、改変を包含するものとする。さらに、本願は、本発明が関係する技術分野における既知または従来の手法の範囲内であり、且つ特許請求の範囲の制限内となるような本開示からの逸脱を包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフロント・スピーカに接続する第1のポートと、
第2のフロント・スピーカに接続する第2のポートと、
サブウーファ・チャネルからの信号とサラウンド・チャネルからの信号とを合成するコンバイナと、
当該合成信号を無線送信する送信機とを含む、
メイン・サブシステムと、
前記メイン・サブシステムから前記合成信号を無線受信する受信機と、
サブウーファを駆動するために前記受信信号から前記サブウーファ・チャネルを抽出する抽出機とを含む、
無線サブウーファ・システムとを有し、
前記無線サブウーファ・システムは、前記サラウンド・チャネルをサラウンド・スピーカに供給して該サラウンド・スピーカを駆動する、
サラウンド・サウンド・システム。
【請求項2】
前記コンバイナは、前記サブウーファ・チャネルと前記サラウンド・チャネルとをディジタル多重化するディジタル・マルチプレクサを含む、請求項1に記載のサラウンド・サウンド・システム。
【請求項3】
前記メイン・サブシステムは、前記合成信号を8/14変調を用いて既定のフォーマットに符号化するエンコーダを含む、請求項1に記載のサラウンド・サウンド・システム。
【請求項4】
前記サブウーファ・チャネルは低域効果成分を含む、請求項1に記載のサラウンド・サウンド・システム。
【請求項5】
前記サブウファー・チャンネルはバス周波数音声成分を含む、請求項1に記載のサラウンド・サウンド・システム。
【請求項6】
前記コンバイナは、加算され、パルス・コード変調フォーマットに変換され、8/14変調を用いて既定のフォーマットに符号化された前記サブウーファ・チャネル及び前記サラウンド・チャネルからの信号を合成する、請求項1に記載のサラウンド・サウンド・システム。
【請求項7】
前記抽出機は、前記サブウーファ・チャネルと前記サラウンド・チャネルとをディジタル分離するディジタル・デマルチプレクサを含む、請求項2に記載のサラウンド・サウンド・システム。
【請求項8】
前記抽出機は、8/14変調信号を復調してパルス・コード変調信号を取得し、当該取得されたパルス・コード変調信号をサブウーファ・スピーカ及びサラウンド・スピーカのそれぞれを駆動するためにアナログ・サブウーファ信号及びアナログ・サラウンド信号に変換することによって、前記受信信号からの前記サブウーファ・チャネルから前記信号を抽出する、請求項1に記載のサラウンド・サウンド・システム。
【請求項9】
前記抽出機は、前記サブウーファ・チャネルを除去するローパス・フィルタを含む、請求項1に記載のサラウンド・サウンド・システム。
【請求項10】
前記無線サブウーファ・システムは、サブウーファ・スピーカ及びサラウンド・スピーカを駆動する増幅器を更に含む、請求項1に記載のサラウンド・サウンド・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−211728(P2011−211728A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111024(P2011−111024)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2006−528113(P2006−528113)の分割
【原出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】