説明

サンドイッチパネル

【課題】軽量で且つ例えば航空機用の内壁材として必要な曲げ強さ及び面内せん断強さを満たすことができる実用性に秀れたサンドイッチパネルの提供。
【解決手段】中空柱状芯体1の上面及び下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る積層材2と表面材3とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記積層材2を、繊維が一方向に引き揃えられた少なくとも4つの一方向繊維体4・5・6・7が、その繊維方向が当該サンドイッチパネルの一辺に対して約0°,約+45°,約−45°,約90°となるように積層され且つこの各一方向繊維体4・5・6・7はステッチ糸8により一体に縫合されて成るものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるような、中空柱状のセルの平面的集合体であるハニカムコアの上下両面(開口端面)に中間層としてのカーボン(炭素)繊維強化プラスチック体が積層され、更に、このカーボン(炭素)繊維強化プラスチック体に表面材を積層して成るハニカムサンドイッチパネルがある。
【0003】
【特許文献1】実公平6−17530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、例えば航空機は、軽量であることが燃費向上につながることから、構造材,内装材ともに軽量化が求められている。この軽量化を図ることができる材料として、上述のようなハニカムコアの上下に繊維強化プラスチック板を配したハニカムサンドイッチパネルが用いられている。
【0005】
特に、航空用の内装材の一つである内壁材は、軽量でありながら、サンドイッチパネルとしての曲げ強さ及び面内せん断強さを満たす必要がある。しかしながら、単に繊維量の増減や中間層を構成する繊維体の層数の増減だけでは、これらを満たすことはできない。
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑み、中間層(積層材)を構成する複数の一方向繊維体の繊維配向を夫々約0°,約+45°,約−45°,約90°に設定すると共に、これらの一方向繊維体をステッチ糸を用いて一体に縫合(各層を貫通する形でステッチング)することで、軽量化を図りつつ、積層材の各層間のズレを抑制して、上記曲げ強さ及び面内せん断強さを満たすことができる例えば航空機用の内壁材として好適な実用性に秀れたサンドイッチパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
中空柱状芯体1の上面及び下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る積層材2と表面材3とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記積層材2は、繊維が一方向に引き揃えられた少なくとも4つの一方向繊維体4・5・6・7が、その繊維方向が当該サンドイッチパネルの一辺に対して約0°,約+45°,約−45°,約90°となるように積層され且つこの各一方向繊維体4・5・6・7はステッチ糸8により一体に縫合されて成るものであることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0009】
また、中空柱状芯体1の上面及び下面に、複数の繊維体を積層して成る積層材2が積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記積層材2は、ガラス繊維が一方向に引き揃えられた少なくとも4つの一方向繊維体4・5・6・7が、その繊維方向が当該サンドイッチパネルの一辺に対して約0°,約+45°,約−45°,約90°となるように積層され且つこの各一方向繊維体4・5・6・7はステッチ糸8により一体に縫合されて成るものであることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0010】
また、請求項1記載のサンドイッチパネルにおいて、前記一方向繊維体4・5・6・7の繊維にはカーボン繊維が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0011】
また、請求項3記載のサンドイッチパネルにおいて、前記表面材3として、ポリフッ化ビニリデン系のフィルム若しくはガラス繊維を含む不織布が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【0012】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載のサンドイッチパネルにおいて、前記積層材2の樹脂含有率は40%以上に設定されていることを特徴とするサンドイッチパネルに係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成したから、軽量化を図りつつ、積層材の各層間のズレを抑制して、上記曲げ強さ及び面内せん断強さを満たすことができる例えば航空機用の内壁材として好適な実用性に秀れたサンドイッチパネルとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0015】
積層材2の各一方向繊維体4・5・6・7をステッチ糸8により一体に縫合することで、各層間の層間剥離が抑制され、加熱加圧時にズレが生じにくくなり、サンドイッチパネルの構造が堅固に保たれることになる。
【0016】
また、各一方向繊維体4・5・6・7の繊維配向が夫々、サンドイッチパネルの一辺に対して0°、+45°、−45°、90°となり、積層材2は擬似等方性を発揮する。従って、それだけ面内せん断強さが向上し、所望の(例えば航空機用の内壁材として好適な)面内せん断強さを得ることが可能となる。
【0017】
また、各一方向繊維体4・5・6・7を積層してステッチ糸により縫合した後に樹脂を含浸させ一体化せしめた構成は、樹脂を含浸させた一方向繊維体を夫々積層した構成に比べ積層材2が厚くなり(詳細は後述)、それだけ剛性が向上し、所望の曲げ荷重を得ることが可能となる。
【0018】
また、積層材2の樹脂含有率を40%以上に設定した場合には、異種材料である中空柱状芯体1と積層材2との接着性を長期にわたって維持することが可能となる。
【実施例】
【0019】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0020】
本実施例は、図1に図示したように、中空柱状芯体1の上面及び下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る積層材2と表面材3とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記積層材2は、繊維が一方向に引き揃えられた4つの一方向繊維体4・5・6・7が、その繊維方向が当該サンドイッチパネルの一辺に対して約0°,約+45°,約−45°,約90°となるように積層され且つこの各一方向繊維体4・5・6・7はステッチ糸8により一体に縫合されて成るものである。
【0021】
具体的には積層材2を構成する一方向繊維体4・5・6・7は、図2に図示したように、一方向繊維体4を最内側とし一方向繊維体7を最外側として順次積層されている。
【0022】
各一方向繊維体4・5・6・7の繊維方向は夫々、一方向繊維体4はサンドイッチパネルの一辺に対して約0°(前記一辺に対して略平行)、一方向繊維体5は前記一辺に対して約+45°、一方向繊維体6は前記一辺に対して約−45°(一方向繊維体5の繊維方向と略直交する方向)、一方向繊維体7は前記一辺に対して約90°(前記一辺に対して略直交)となるように設定されている。
【0023】
従って、積層材2は、サンドイッチパネルの一辺に対して対して0°、+45°、−45°、90°の各方向に繊維方向を有する計4層の一方向繊維体4・5・6・7により、全体として擬似等方性が発揮されることになる。即ち、一方向繊維体5・6の繊維配向が45°、−45°となっているために、面内せん断の引張方向(後記面内せん断試験の鉛直方向)と圧縮方向(後記面内せん断試験の水平方向)に繊維が配されることでサンドイッチパネルの面内せん断強さが向上する。尚、各一方向繊維体の構成順序は上記に限定されるものではない。
【0024】
次に各部を具体的に説明する。
【0025】
中空柱状芯体1としては、有機繊維(例えば、アラミド繊維やセルロース繊維)から成るペーパーに不燃性樹脂を含浸させたものやアルミニウムから成る多数の六角形状のセルの平面的集合体(ハニカムコア1)を採用することができる。本実施例においては、アラミド繊維からなるペーパーに不燃性樹脂を含浸させ、密度3lb/ft(ポンド/立方フィート)、厚さ10.5mm、単位面積当たりの重さ0.51kg/mのハニカムコア1が採用されている。また、六角形の大きさは、対向する二つの辺がなす長さが1/8インチとなるように設定されている。尚、六角形の対向する二つの辺がなす長さ上記1/8インチに限られるものではない。
【0026】
また、セルの形状は六角形状に限らず、四角形状等、中空柱状であれば他の形状としても良いし、内部に無数の孔を有するフォーム材等のスポンジ状の多孔質材を用いることも考えられる。
【0027】
積層材2を構成する一方向繊維体4・5・6・7の繊維としては、ガラス繊維の他、軽量で且つ剛性に秀れたカーボン繊維を採用することができる。さらに一方向繊維体毎に異なる繊維を採用しても良いし、1つの一方向繊維体中に複数種の繊維が含まれていても良い。
【0028】
本実施例の一方向繊維体はガラス繊維を採用している。これによりガラスは破壊靱性に秀れると共に、絶縁性に秀れ腐食しにくく、それだけ耐食性(耐久性)が向上する。また、表面材3が不要となり、サンドイッチパネルの重量をさらに軽量化することが可能となる。
【0029】
尚、本実施例では薄い表面材を用いた構成で説明する。これにより表面外観の設計自由度を向上させることができる。
【0030】
積層材2は、前述した一方向繊維体4・5・6・7を(ポリエステルやナイロン等から成る)ステッチ糸8により縫合一体化せしめた状態で、熱硬化性の樹脂組成物に含浸せしめ、80〜100℃×5〜20分の条件で加熱し、プリプレグ化(半硬化状態に)したものである。
【0031】
表面材3としては、電気絶縁性を有するポリフッ化ビニリデン系のフィルム若しくはガラス繊維を含む不織布(ガラスペーパーやガラスクロス等)を採用するのが望ましい。これにより、最外側の一方向繊維体7の繊維としてカーボン繊維を採用した場合に、航空機の組み立ての過程でアルミニウム材とサンドイッチパネルとが接した場合でも電気腐食が発生せず、耐食性に秀れたものとなるからである。本実施例ではポリフッ化ビニリデン系のフィルムを採用している。
【0032】
サンドイッチパネルは、図1に図示するように、ハニカムコア1の上面及び下面(開口両端面)に積層材2、表面材3の順に積層せしめ、温度が140〜160℃、時間が1〜2時間、圧力が0.2〜0.4MPaとなる条件で加熱加圧して硬化成形せしめて製造される。
【0033】
ここで、本実施例であるステッチ糸8を用いて各一方向繊維体4・5・6・7を一体に縫合した構成について説明する。
【0034】
具体的には、図3に図示したように(簡略化のため一方向繊維体5,6は省略)、ステッチ糸8を、最外側の一方向繊維体7の繊維方向に沿って、最内側の一方向繊維体4及び最外側の一方向繊維体7に夫々掛け回しながら、この一方向繊維体4・7に挟まれる一方向繊維体5・6の交差間隙を挿通するようにこの最外層の一方向繊維体7の繊維間隔毎に縫い込み、各一方向繊維体4・5・6・7を縫合一体化せしめる。尚、本実施例においては、ステッチ糸8が一方向繊維体の繊維を可及的に貫通しないように縫い込んでいるが、一方向繊維体の繊維を貫通するように縫い込んでも良い。
【0035】
上述したように、本実施例は各一方向繊維体をステッチ糸8により縫合一体化せしめることで、後述する各一方向繊維体を樹脂のみで接着する構成(図4)に比し、積層材2の樹脂含有率をそれ程上げることなく(即ち重量化を抑制しつつ)、航空機用内壁材に必要な各一方向繊維体の層間における剥離強度及び曲げ強度を十分満たすことが可能となる。
【0036】
即ち、各一方向繊維体を樹脂のみで接着する構成でも、樹脂含有率を上げることで航空機用内壁材に必要な剥離強度を満たすことは可能ではあるが、樹脂含有率を上げる分だけ重量化することは避けられず、可及的に軽量化が要望される航空用内壁材としては好ましくない。この点、本実施例は、ステッチ糸により各層を一体化できるから、樹脂含有率を可及的に抑えつつ、十分な剥離強度を満たすことが可能で、軽量でありながら層間剥離が生じにくいものとなる。
【0037】
ここで、例えば、上述のような一方向繊維体を用いずに、0°、90°方向に配向する繊維を織成して成る織成繊維体と、+45°、−45°方向に配向する繊維を織成して成る織成繊維体とを積層して構成された積層材12を用いた場合には(図5(a)参照。但し、簡略化のため+45°、−45°方向に配向する繊維は省略)、本実施例と同様、樹脂含有率をそれ程上げることなく、各層間における十分な剥離強度を満たすことが可能である。尚、図5中、10は0°方向に配向する繊維、11は90°方向に配向する繊維である。
【0038】
しかしながら、上記織成繊維体から成る積層材12は、本実施例に比べ曲げ強度が小さい。
【0039】
これは、図6(a)に図示したような(簡略化のため一方向繊維体5,6の繊維及びステッチ糸8は省略)、本実施例の積層材2に応力が加わった場合、図6(b)に図示したように、荷重支持層となる90°方向に配向する一方向繊維体7の繊維9bの図6(b)中上面側には圧縮応力が、下面側には引張応力が作用することになる。即ち、一方向繊維体7の繊維9bの上面側に作用する応力及び下面側に作用する応力は夫々一様となり、これにより十分な曲げ強度が発現するのに対し、図5(a)に図示したような織成繊維体から成る繊維体12に応力が加わった場合、図5(b)に図示したように、荷重支持層となる90°方向に配向する繊維11の上面側に作用する応力及び下面側に作用する応力が夫々部位によって異なり一様でなく、そのため十分な曲げ強度が発現しない。尚、図6中、符号9aは0°方向に配向する一方向繊維体4の繊維である。
【0040】
また、樹脂のみで各一方向繊維体を接着した積層材2’の場合、本実施例の積層材2に比べて曲げ強度が劣る。これは、積層材2’がステッチ糸8により縫合されていないため、荷重が増大すると層間で剥離が生じる(本実施例の積層材2に比し層間接着力が低い)ためである。
【0041】
ところで、上述のようにステッチ糸8により積層した各一方向繊維体4・5・6・7を一体に縫合した後、樹脂を含浸させ一体化せしめた積層材2の厚さは、樹脂を含浸させた一方向繊維体を本実施例と同様の繊維配向となるように積層し一体化せしめた積層材2’よりも、厚くなる。
【0042】
即ち、図4に図示したように(簡略化のため本実施例の一方向繊維体5,6に対応する一方向繊維体は省略)樹脂を含浸させた一方向繊維体を夫々積層した構成は、繊維体を構成する繊維(モノフィラメントを束ねたもの)が扁平状となるために薄くなる。これは、各一方向繊維体4’・7’の表面平滑性を発現させ、繊維間の隙間を無くし、各一方向繊維体の厚さを可及的に一定にすることに起因する。尚、図4中、符号9a’は一方向繊維体4’の繊維、9b’は一方向繊維体7’の繊維である。
【0043】
これに対して本実施例は、図3に図示したように各一方向繊維体4・5・6・7を樹脂含浸前にステッチ糸8を用いて縫合し一体化した後、樹脂を含浸させてプリプレグ化を行うことから、繊維9a・9bを扁平にすることなく平滑な表面を有する積層一方向繊維体を得ることが可能となる。
【0044】
よって、各一方向繊維体をステッチ糸8を用いて縫合した後に樹脂を含浸させ一体化した構成は、樹脂を含浸させた一方向繊維体を夫々積層した構成に比べ、厚くなるため剛性に秀れることになる。
【0045】
更に、積層材2が厚くなることで剛性が向上する理由を、以下の実験例をもとに説明する。
【0046】
(1)樹脂を含浸させた一方向繊維体を夫々積層し一体化した積層材
樹脂を含浸させた一方向繊維体(プリプレグ)を準備し、(サンドイッチパネルの一辺に対する)層配向の角度が、夫々0°、+45°、−45°、90°となるように積層し、所定の熱量を加えて硬化させ、板状のFRPを得た。このときの厚さは0.20mmであった。このFRP板を幅77mmに加工して使用した。尚、長さは610mmに設定した。
【0047】
(2)各一方向繊維体をステッチ糸を用いて縫合し一体化した積層材
上記(1)と同様の配向となるように各一方向繊維体を積層し、各層をステッチ糸を用いて縫合して一体化する。この縫合一体化された一方向繊維体をフリーディッピングにより樹脂を含浸させ、所定の熱量を加えて硬化させ、板状のFRPを得た。このときの厚さは0.35mmであった。このFRP板を幅77mmに加工して使用した。尚、長さは610mmに設定した。
【0048】
ここで、(1)及び(2)のFRP板の剛性は以下の式で表すことができる。
【0049】
D(kg・mm)=E(kg/mm)×I(mm
但し、Dは剛性、Eは材料の弾性率、Iは断面2次モーメントである。
【0050】
尚、(1)及び(2)のFRP板の弾性率E(1)及びE(2)は、繊維体・樹脂は同一のものを使用していることから、E(1)=E(2)である。
【0051】
また、断面2次モーメントIは次式で表すことができる。
【0052】
I=1/12×W×t(mm
但し、WはFRP板の幅(mm)、tはFRP板の厚さ(mm)である。
【0053】
従って、上記断面2次モーメントIの式から、(1)のFRP板の断面2次モーメントI(1)は、0.0513mmとなり、(2)のFRP板の断面2次モーメントI(2)は、0.2751mmとなる。
【0054】
よって、積層材(1)に対する積層材(2)の剛性の比は次式から得られる。
【0055】
(2)/D(1)=E(2)(2)/E(1)(1)=I(2)/I(1)=5.36
以上から、各一方向繊維体をステッチ糸により縫合し、樹脂を含浸させ一体化した積層材は、ステッチ糸により縫合せず樹脂を含浸させた一方向繊維体を夫々積層し一体化した積層材より、5倍以上の剛性を有することになる。
【0056】
プリプレグに用いる樹脂は、航空機内装用内壁材のプリプレグ用樹脂として、不燃性を考慮したレゾール系フェノール樹脂を用いている。具体的には、ヒートリリース試験(HRR)における5分間の熱量のピーク値が30kW/m以下で、2分間の熱量の積分値が30kW・min/m以下であり、且つ、燃焼時の発煙濃度(SMOKE DENSITY)が200以下のレゾール系フェノール樹脂を用いている。尚、上記数値は、HRR及び発煙濃度の測定を、航空機内装品に要求されるFAR25.853規格に準拠して行った際の値である。
【0057】
また、異種材料であるハニカムコア1とステッチ糸8により縫合一体化された一方向繊維体4・5・6・7との接着性を良好にするため、このステッチ糸8により縫合一体化された一方向繊維体4・5・6・7(積層材2)の樹脂含有率は、40%以上に設定するのが好ましい。
【0058】
本実施例は上述のように構成したから、積層材2の各一方向繊維体4・5・6・7をステッチ糸8により一体に縫合することで、各層間の層間剥離が抑制され、加熱加圧時にズレが生じにくくなり、サンドイッチパネルの構造が堅固に保たれることになる。
【0059】
また、各一方向繊維体4・5・6・7の繊維配向が夫々、サンドイッチパネルの一辺に対して0°、+45°、−45°、90°となり、積層材2は擬似等方性を発揮する。従って、それだけ面内せん断強さが向上し、所望の(例えば航空機用の内壁材として好適な)面内せん断強さを得ることが可能となる。
【0060】
また、各一方向繊維体4・5・6・7を積層してステッチ糸により縫合した後に樹脂を含浸させ一体化せしめた構成は、樹脂を含浸させた一方向繊維体を夫々積層した構成に比べ積層材2が厚くなり、それだけ剛性が向上し、所望の曲げ荷重を得ることが可能となる。
【0061】
また、積層材2の樹脂含有率を40%以上に設定した場合には、異種材料である中空柱状芯体1と積層材2との接着性を長期にわたって維持することが可能となる。
【0062】
従って、本実施例は、軽量化を図りつつ、積層材の各層間のズレを抑制して、上記曲げ強さ及び面内せん断強さを満たすことができる例えば航空機用の内壁材として好適な実用性に秀れたサンドイッチパネルとなる。
【0063】
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0064】
中空柱状芯体の上下面に、夫々内方から外方に、4つの一方向繊維体を積層して成る積層材と表面材とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、積層材を構成するガラス繊維から成る各一方向繊維体の繊維方向が夫々サンドイッチパネルの一辺に対し、0°、45°、−45°、90°に設定され、樹脂を含浸させた一方向繊維体を夫々積層し一体化した積層材を用いた比較例1と、一方向繊維体を樹脂ではなくステッチ糸を用いて一体に縫合し、その後樹脂含浸させた積層材を用いた実施例1と、実施例1の構成と同じとし、一方向繊維体の繊維をカーボン繊維とした実施例2と、上記一方向繊維体を積層して成る積層材の代わりに0°、90°方向に配向する繊維を織成して成る2つの織成繊維体をその一方を他方に対し45°傾斜させた状態で積層して構成された積層材を用いた比較例2の夫々について、重量、剥離強さ、曲げ強度、面内せん断力、難燃性及び発煙濃度を測定した。測定結果を図7に示す。
【0065】
尚、剥離強さ(PEEL強度)は、図8に図示したような一般的なドラムピール試験装置を用いて行った。図中、符号Aはハニカムコア、Bは積層材、Cはドラム、Dは下部クランプ部、Eはローディングストラップ、Fは上部クランプ部、Gはフランジである。
【0066】
また、曲げ強度(曲げ荷重)は、曲げ試験規格MIL−STD401Bに基づき、図9に図示したような装置を用い、常温(23±2℃)、常湿(50±5%RH)で、スピードは試料を3〜5分で破壊するスピードに設定して行った。
【0067】
また、面内せん断力(IPS)は、ボーイング社で用いられる面内せん断試験(BMS4−17)を図10に図示したような装置を用いて行った(測定機器は島津製作所製オートグラフAG−10)。
【0068】
実験結果から、比較例1及び比較例2に比べ、実施例1及び実施例2のいずれも重量を増加させることなく、曲げ荷重及びIPSを向上させることができたことが分かった。
【0069】
即ち、ステッチ糸を用いて各一方向繊維体を縫合一体化することにより、ステッチ糸を用いないで一体化する場合に比べ、積層材の剛性が向上し、サンドイッチパネルとしての曲げ荷重が向上することを確認した。
【0070】
また、縫合により加熱加圧時に各層間のズレが生じにくくなり、サンドイッチパネルの構造が堅固に保たれることを目視により確認した。
【0071】
また、実施例1と実施例2の比較から、カーボン繊維を用いることで、曲げ荷重・IPSを一層向上することが分かった。特に、実施例2の曲げ強度は比較例の2.4倍程度にもなり、飛躍的な向上が認められた。一方、発煙濃度は、実施例1、2ともに低くなることを確認した。
【0072】
以上から、積層材を構成する各一方向繊維体をステッチ糸により縫合一体化せしめることで、重量を増加させることなく、航空機用の内壁材として必要な曲げ強さ及び面内せん断強さを満たすことが可能なサンドイッチパネルを実現できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施例の一部を切り欠いた概略説明斜視図である。
【図2】本実施例の要部の拡大概略説明分解斜視図である。
【図3】本実施例の要部の拡大概略説明図である。
【図4】比較例の要部の拡大概略説明図である。
【図5】比較例の応力付与時の概略説明図である。
【図6】本実施例の応力付与時の概略説明図である。
【図7】本実施例の実験結果を示す表である。
【図8】実験装置の概略説明図である。
【図9】実験装置の概略説明図である。
【図10】実験装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1 中空柱状芯体
2 積層材
3 表面材
4・5・6・7 一方向繊維体
8 ステッチ糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空柱状芯体の上面及び下面に、夫々内方から外方に、複数の繊維体を積層して成る積層材と表面材とが積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記積層材は、繊維が一方向に引き揃えられた少なくとも4つの一方向繊維体が、その繊維方向が当該サンドイッチパネルの一辺に対して約0°,約+45°,約−45°,約90°となるように積層され且つこの各一方向繊維体はステッチ糸により一体に縫合されて成るものであることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項2】
中空柱状芯体の上面及び下面に、複数の繊維体を積層して成る積層材が積層せしめられて成るサンドイッチパネルであって、前記積層材は、ガラス繊維が一方向に引き揃えられた少なくとも4つの一方向繊維体が、その繊維方向が当該サンドイッチパネルの一辺に対して約0°,約+45°,約−45°,約90°となるように積層され且つこの各一方向繊維体はステッチ糸により一体に縫合されて成るものであることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項3】
請求項1記載のサンドイッチパネルにおいて、前記一方向繊維体の繊維にはカーボン繊維が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項4】
請求項3記載のサンドイッチパネルにおいて、前記表面材として、ポリフッ化ビニリデン系のフィルム若しくはガラス繊維を含む不織布が採用されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載のサンドイッチパネルにおいて、前記積層材の樹脂含有率は40%以上に設定されていることを特徴とするサンドイッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−933(P2009−933A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165101(P2007−165101)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000132013)株式会社ジャムコ (53)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】