説明

サンプリングされたスペクトル拡散信号ストリームを処理する方法

本発明によれば、少なくとも1つのスペクトル拡散信号を含むサンプリングされた信号ストリームを処理する方法が、該方法のための受信機、コンピュータ、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体及びコンピュータプログラムと共に提供される。当該方法は、サンプルを第1ビットレベルで処理するステップと、並行して又は後続してのいずれかにおいて、サンプルを前記第1ビットレベルとは異なる第2ビットレベルで処理するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのスペクトル拡散信号を含むサンプリングされた信号ストリームを処理する方法と、前記方法のための受信機、コンピュータ、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体及びコンピュータプログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
GPS受信機は、従来、GPS受信されるGPS信号を固定された分解能でサンプリングする単一のアナログ‐デジタルコンバータ(ADC)を有する。通常、このようなADCは1ビット分解能を有するが、例えば、移動電話、パーソナルコンピュータ及び他の電気機器からの不意のナローバンドのジャミングは、屋内環境において特に良くあることであり、一部のGPS受信機は、改善されたジャミング耐性のために1.5又は2ビット分解能を有するADCを使用している。都市環境におけるGPS擬似距離(pseudorange)を測定しようとする場合、即ちGPS信号が、近隣の建造物によって反射され、GPS受信機まで遠回りな経路をとる場合に遭遇し得るマルチパス歪みをマルチビットサンプリングによって緩和することができることも、文献において提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
GPS信号は、GPS衛星から地球表面まで高度な信号減衰を経るので、1ビット分解能においてサンプリングされたGPS信号を取得する計算負荷でさえ重い。このような信号を1.5及び2ビット分解能において取得する計算負荷は、尚更高い。従って、ジャミング及びマルチパスに関する性能と計算的なコストとの間でのトレードオフが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、少なくとも1つのスペクトル拡散信号を含むサンプリングされた信号ストリームを処理する方法が、該方法のための受信機、コンピュータ、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体及びコンピュータプログラムと共に提供される。当該方法は、サンプルを第1ビットレベルで処理するステップと、並行して又は後続してのいずれかにおいて、サンプルを前記第1ビットレベルとは異なる第2ビットレベルで処理するステップとを有する。
【0005】
前記信号ストリームは、前記第1ビットレベル又は前記第2ビットレベルの少なくとも一方よりも高いビットレベルにおいてサンプリングされることができ、サンプルは、該信号サンプルのビットを選択的に無視することによって、前記第1及び第2ビットレベルのいずれか一方において処理される。代替的には、前記信号ストリームは、前記サンプルが処理されるビットレベルに対応する第1又は第2ビットレベルのいずれかの可変ビットレベルにおいてサンプリングされることもできる。
【0006】
前記サンプルは、それぞれのスペクトル拡散信号又は同一のスペクトル拡散信号のいずれかを取得するために、第1及び第2ビットレベルにおいて並行して処理されても良い。
【0007】
スペクトル拡散信号を取得する困難性が生じる際、前記サンプルの前記第1ビットレベルにおける処理から、前記第2ビットレベルへの変更がされても良い。
【0008】
前記信号ストリームがGPSスペクトル拡散信号を含んでいる場合、前記サンプルを前記第1ビットレベルにおいて処理するステップは、GPS信号を取得するのに使用されることができ、前記サンプルを前記第2ビットレベルにおいて処理するステップは、前記GPS信号から擬似距離を測定するのに使用されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、以下で、本発明によるGPS受信機を示している添付の模式図を単に例として参照することによって説明される。
【0010】
レプリカのGPS衛星擬似ランダムノイズ(PRN)コード信号が、連続的に生成され、GPS衛星擬似ランダムノイズコード信号を取得するために受信されるGPS信号と相互に関連付けられるGPS受信機を提供することは、周知である。典型的には、前記レプリカのコードは、受信機と軌道衛星との間のドップラーシフトのために、受信されるGPS信号のコードとは異なるコード位相及び異なる周波数とを持ち易いため、二次元のコード周波数/位相スイープが採用され、このようなスイープによって最終的に、ローカルに生成される前記レプリカのPRNコードと同じ周波数及びコード位相を有する到来するPRNコードが得られる。検出された場合、前記PRNコードは取得され及びトラッキングされ、前記擬似距離の情報が検索されることができ、該擬似距離の情報から、前記受信機の位置が、従来型のナビゲーションアルゴリズムを使用して計算されることができる。
【0011】
添付図面を参照すると、GPS受信機が示されており、該GPS受信機において、NAVSTAR GPS SPS信号は、アンテナ10によって受信され、帯域外RFインタフェース、プリアンプリフィケーション、中間周波数(IF)への下方変換及びアナログ−デジタル変換を最小限にするためのパッシブバンドパスフィルタリングを含むプリプロセッサ11内で前処理される。得られる、デジタル化されたIF信号は変調されて残存しており、利用可能な衛星からの情報の全てを依然として含んでおり、12個の並列受信機チャネル12(全てのチャネルが示されているわけではない)の各々に供給される。30秒のGPSエフェメリスデータ(ephemeris data)メッセージを取得し、各衛星からの擬似距離を測定するために、前記利用可能な衛星の信号は、受信機プロセッサ13と協動して、それぞれのデジタル受信機チャネルにおいて取得される及びトラッキングされる。取得及びトラッキングの方法は周知であり、例えば、Kaplanの同書の第4章(GPS衛星信号の特性)及び第5章(GPS衛星信号の取得及びトラッキング)を参照されたい。
【0012】
前記GPS擬似距離、取得されたナビゲーション情報、及び伝送の到達時間を使用して、ナビゲーションプロセッサ14は、従来のアルゴリズムを使用して前記受信機の位置を計算し、該位置は、ユーザに対してディスプレイ15上に表示される。プリプロセッサ11は、典型的には、汎用マイクロプロセッサ又はGPS特定用途向け集積回路(ASIC)において具現化されているマイクロプロセッサの形態で実施される、デジタル受信機チャネル12と受信機プロセッサ13とナビゲーションプロセッサ14とを有するフロントエンドのアナログ回路の形態で実施される。
【0013】
本発明によれば、前記アナログ−デジタル変換と、前記デジタル受信機チャネル内のデジタル化された信号の取得及びトラッキングとは、以下の例のどちらのシナリオに記載されるようにも、実施されることができる。
【0014】
例1
都市環境において動作する場合、当該GPS受信機は、位置確定(position fix)を決定するのに必要な4つのGPS信号のうちの3つを取得するために、前記デジタル受信機チャネルにおけるリアルタイム1ビットサンプリング及び処理を使用する。4つ目のGPS信号を取得するために、ADCは、前記デジタル受信機チャネルにおけるリアルタイム2ビットサンプリング及び処理に切り替わる。改善された信号取得性能によって、4つ目のGPS信号の取得が可能になる。この後、前記4つ目の取得されたGPS信号からの擬似距離が、位置確定を決定するために測定される。
【0015】
例2
1秒のGPS信号データのスナップショットが、2ビット量子化(−2、−1、1、2を表わす符号及び大きさのビット)においてサンプリングされ、記憶される。この後、前記スナップショットは、4つのGPS信号を取得するための前記デジタル受信機においてのみ、前記符号のビットの1ビット処理に反復的に従う。ひとたび前記4個のGPS信号が取得されると、前記スナップショットは、位置確定を決定するのに必要な前記4つのGPS擬似距離を測定するためのデジタル受信機チャネルにおける2ビット処理に従う。
【0016】
本開示を読むことにより、他の変形は、当業者にとって明らかであると共に、GPS受信機及びGPS受信機の構成要素を含むスペクトル拡散信号受信機の設計、製造及び使用において既に知られているの他のフィーチャを含んでも良く、該他のフィーチャは、本明細書に既に記載されているフィーチャの代わりに又は該フィーチャに加えて、使用されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるGPS受信機を示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのスペクトル拡散信号を含むサンプリングされた信号ストリームを処理する方法であって、サンプルを第1ビットレベルで処理するステップと、並行して又は後続してのいずれかにおいて、サンプルを前記第1ビットレベルとは異なる第2ビットレベルで処理するステップとを有する方法。
【請求項2】
スペクトル拡散信号を取得する困難性が生じる際、前記サンプルの前記第1ビットレベルにおける処理が、前記第2ビットレベルに変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号ストリームはGPSスペクトル拡散信号を含んでおり、前記サンプルを前記第1ビットレベルで処理するステップはGPS信号を取得するのに使用され、前記サンプルを前記第2ビットレベルで処理するステップは、前記GPS信号から擬似距離を測定するのに使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記信号ストリームは、前記第1ビットレベル又は前記第2ビットレベルの少なくとも一方よりも高いビットレベルにおいてサンプリングされ、前記サンプルは、信号の前記サンプルのビットを選択的に無視することにより、前記第1ビットレベル又は前記第2ビットレベルのいずれか一方において処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記信号ストリームは、前記サンプルが処理されるビットレベルに対応する第1又は第2ビットレベルのいずれかの可変ビットレベルにおいてサンプリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルは、それぞれのスペクトル拡散信号を取得するために第1又は第2ビットレベルにおいて並行して処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルは、同一のスペクトル拡散信号を取得するために第1又は第2ビットレベルにおいて並行して処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのスペクトル拡散信号を含む信号を受信し及びサンプリングし、該スペクトル拡散信号を請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法によって処理するように構成された受信機。
【請求項9】
外部受信機から、少なくとも1つのスペクトル拡散信号を含むサンプリングされた信号を受信し、該スペクトル拡散信号を請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法によって処理するように構成されたコンピュータ。
【請求項10】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の方法を実施する命令を含むコンピュータプログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項11】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法を実施する命令を含むコンピュータプログラム。

【公表番号】特表2007−501558(P2007−501558A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522440(P2006−522440)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002576
【国際公開番号】WO2005/015255
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】