サンプル処理カートリッジおよび遠心力の下でサンプルを処理および/または分析する方法
本発明は、遠心力に対してカートリッジの方向が変更されるとき、少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施するためのサンプル処理カートリッジ(10)に関し、カートリッジは、サンプルを収容するよう適合された第1キャビティ(18)、第1キャビティと流体連通する第2キャビティ(22)を含み、第1および第2キャビティは、カートリッジに働く遠心力が第1方向(30)から第2方向(36)に変更されるとき、第1キャビティ内のサンプルがそこから第2キャビティに移動するように配置され、第1キャビティは、第1方向に働く遠心力に垂直に延びて存在し、第2キャビティは第1キャビティと比較して浅く、第1キャビティが第1方向に働く遠心力の方向に延びる程度と比較して、第2方向に作用する遠心力の方向にさらに延びている。本発明は、遠心力の下でサンプルを処理および/または分析する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプル処理カートリッジまたは容器に関する。本発明は、遠心力の下でサンプルを処理および/または分析する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
細胞、粒子、および沈殿物の沈殿を促進するための、並びに密度が異なる液体または細胞の分離のための手段としての遠心分離は、長い間化学および生物化学の所定の手順として欠くことができない部分であった。
【0003】
2次元の遠心分離は、一つの軸の周りの個々のカートリッジの回転を実行する装置内で一般的に得られ、これらのカートリッジは他の遠位の軸の周りの分離手段によって回転される。
【0004】
米国特許第4,883,763号公報(Holenら)は、その中に供給する試薬を含む実質的に閉じたチャンバで形成されるサンプルプロセッサカードを開示する。カードはサンプルをカードに供給するための入口手段、カードに供給されるサンプルを受け取るために入口手段と連通するキャピラリー手段、およびカードに与えられた第1方向の遠心力の影響下で入口手段からキャピラリー手段を通って進んできた過剰なサンプルを受け取るためにキャピラリー手段と連通するオーバーフロー手段を含む。カードは試薬供給から試薬を、第2方向でカードに作用する遠心力に対応してキャピラリー手段からサンプルを受け取るために使用される保持チャンバ手段、および、試薬とサンプルとの間の化学反応の測定を可能にする、保持チャンバ手段と連通するキュベット手段も含む。サンプルプロセッサカードの使用によって、カード内部の試薬およびサンプルの流れは、遠心分離機内でカードが高い遠心力を受けるとき、カード上の2つ以上の方向に働く遠心力のみによっておそらくは実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,883,763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改良されたサンプル処理カートリッジおよび方法を提供することである。
【0007】
この目的および以下の記載から明らかになる他の目的は、添付される独立請求項に規定される本発明によって実現されるだろう。さらなる実施形態が、添付される従属請求項に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の局面によれば、遠心力が変更されるのに関してカートリッジの方向として少なくとも二つの方向に働く遠心力の下で処理を実行するためのサンプル処理カートリッジが提供され、カートリッジは、サンプルを収容するのに用いられる第1キャビティ、および第1キャビティと液体連通する第2キャビティを含む。ここで第1および第2キャビティは、カートリッジに作用する遠心力が第1方向から第2方向に変更されるとき、第1キャビティ内のサンプルがそこから第2キャビティに移動するように配置され、(a)第1キャビティは第1方向に働く遠心力に垂直に(カートリッジの平面内で)引き伸ばされ、(b)第2キャビティは第1キャビティと比較して浅く、第1方向に働く遠心力の方向に第1キャビティが引き伸ばされるよりもさらに第2の方向に働く遠心力の方向に引き伸ばされている。
【0009】
(a)からもたらされる技術的効果は、引き伸ばされたサンプル各点においてサンプルの他の部分よりも高い密度を有する材料の、第1キャビティの「底部」への距離が短いことである。(b)からもたらされる技術的効果は、より浅い第2キャビティ内のサンプルが遠心力の方向により広げられ、これはサンプルからの、例えば血漿の除去を容易にすることである。一般的に、十分な遠心力が与えられたとき、カートリッジは様々な密度を有する流体要素(例えば、細胞からの血漿、または液体からのナノ/マイクロ粒子)の、非常に迅速でかつ正確なマイクロ分離を可能にする。これは、液体からの粒子(細胞を含む)の分離だけではなく、様々な密度の液体の分離(例えば血漿からの脂質)、様々な密度の粒子(細胞を含む)の分離を可能にする。
【0010】
前記平面において、または前記平面と平行な平面において、第2キャビティは、第1キャビティが第1の方向に働く遠心力と垂直に延びて存在するのと比較して、第2方向に働く遠心力に対する垂直方向への延びが少なくてよい。
【0011】
カートリッジは、そこを起点とするサンプルまたは材料が除かれてよい、少なくとも1つの追加のキャビティおよび/またはチャンネルを備えた、少なくとも1つの上部層および下部層をさらに含んでよい。これは、3次元の処理または試験または分析を可能にする。液体は小型のカートリッジ内で増加された機能を提供する複数の層の間で前後に動いてよい。
【0012】
カートリッジは、そこから生じるサンプルまたは材料を測定するための、実質的にV−またはU−型のマイクロチャンネルをさらに含んでよい。カートリッジに、V−またはU−型のマイクロチャンネルの毛管力を超える遠心力を与えることによって、V−またはU−型のマイクロチャンネルの液体のメニスカスは常に遠心力に対して完全に垂直であってよく、それによってカートリッジの測定チャンネル内に含まれる液体体積の正確さを改善する。
【0013】
カートリッジは、密度が高い流体粒子を阻止するように適合されるが、ただし低密度の液体および/または流体粒子を通過させる、1つ以上のトラップをさらに含んでよい。例示の目的のトラップは、入口チャンバ、中間のU形状のチャンネル、出口チャンバ、入口チャンバと中間チャンネルの一端との間の第1の2−チャンネルスプリッタ、および中間チャンネルの他方の端と出口チャンバとの間の第2の2−チャンネルスプリッタ、をさらに含んでよい。例として与えられる他のトラップは、その凹部分に入口と出口とを有する腎臓形状のループを含む。これらのトラップによって、粒子を保持するための多孔質バリアを含む必要がない。さらに、低密度の流体粒子は効果的にかつ繰り返し高密度流体粒子を通過し、それと相互作用する。
【0014】
さらに、第1キャビティはカートリッジの平面内に延びて存在し、前記平面と垂直の深さを有し、第2キャビティは第1キャビティと比較して浅く、第1キャビティの幅と比較して、異なる方向に、かつ大きな量、前記平面内に延びている。
【0015】
さらに、第2キャビティはチャンネルシステムとして構成されてよい。
【0016】
さらに、カートリッジは、カートリッジのキャビティまたはチャンネル内に配置される少なくとも1つの多孔質材料を含んでよく、他の材料(例えば、そこから送られるサンプルまたは材料および/または少なくとも1つの試薬または類似のもの)が、遠心力に対してカートリッジの方向を変えることによって、多孔質材料を通って通過し得る(横断および/または横方向流れ)ようにする。例えば、多孔質材料が上部層および/または下部層への中間チャンネル内に配置されてよい。同様に、カートリッジが中間チャンネルへの入口を含んでよく、この入口はカートリッジの1つの層の中間チャンネルの一端に配置され、入口は中間チャンネルからの出口と実質的に同じ方向に配置され、この出口はカートリッジの他の層の中間チャンネルの他端に提供され、液体が中間チャンネルの全体積を通じて流れるようにする。例えば、多孔質材料はフィルタ、多孔質膜、交差流路フィルタ、ピラーを備えたチャンネルまたはキャビティ、ビーズまたは粒子状材料を保持するための1つ以上の多孔質ストッパ、粒子または繊維材料または球形ビーズなどで満たされたチャンネルであってよい。フィルタまたは多孔質膜はディスク状のカートリッジの面に対して0°から90°の間の任意の角度で配置されてよい。多孔質材料は、濃縮、分離、および分画、または媒体交換の目的で使用されるとき、ただし化学的および/または電気化学特性にも基づき、様々な分子量を有する分子および粒子を保持するサイズフィルタとして機能してよい。さらに、多孔質材料は、それを通って流体/液体流が通過する、任意のタイプのセンサ、リアクタ、またはアクチュエータ、典型的にはフォトニック結晶センサであってもよい。さらに、前記多孔質材料の表面は、正または負に帯電された基、極性基、疎水性基、または流体内部の分子と相互作用し得る他のタイプの化学的特徴または活性を有する化学基により化学的に官能化されてよい。典型的に、これらはシリカ、イオン交換材料、など様々なタイプのクロマトグラフィー媒体であってよい。さらに、前記多孔質材料の表面は、酵素または他のタイプの触媒材料などの、特定の捕捉特性、化学活性を備えた分子で化学的に官能化されてよい。分子は特定の抗体、核酸プローブ、レクチン、または受容体リガンドシステムの任意の1要素、例えば(ストレプト)アビジンおよびビオチンなど、酵素およびその酵素基質であってよい。遠心力に関連するカートリッジの方向によって制御されるとき、体積比に対して大きな表面積を与える多孔質材料を通る液体流の組み合わせ、溶液中の分子と多孔質材料表面の反応基との間の広範囲の相互作用を可能にし、それによって、結合、捕捉、酵素転移などの化学または物理反応の速度を実質的に増加させる。遠心力に関して変更されたカートリッジの方向は、液体が多孔質材料、アクチュエータ、リアクタ、またはセンサを通って前後に洗浄するのに使用されてよく、それによって溶液中の分子が多孔質材料表面上の固定された基と相互作用する確率を増加させる。
【0017】
本発明の他の局面によれば、遠心力の下でサンプルを処理および/または分析する方法が提供され、この方法は以下を含む:上述のサンプル処理カートリッジの第1キャビティ内にサンプルを準備する段階、カートリッジに第1方向に働く遠心力を与える段階、および遠心力を第1方向から第2方向に変更する段階。この局面は、前述した局面と同様の特徴および技術的効果を示し得る。
【0018】
カートリッジは、外部軸に関してカートリッジを回転させることにより遠心力を与えられてよく、遠心力の方向がカートリッジ内部の軸に関してカートリッジを回転させることにより変更される。
【0019】
さらに、カートリッジは、(上述の)V−またはU−形状マイクロチャンネルの細孔力を超える遠心力を与えられてよい。
【0020】
さらに、そこから生じるサンプルまたは材料は、前記第1および第2キャビティを含むチャンネルおよびキャビティの第1システムに平行なカートリッジの平面に横方向に延びるチャンネルおよびキャビティの(第2)システムに入ることが可能とされてよい。
【0021】
この方法は、他の材料流体が(上述の)多孔質材料を通過するような、遠心力に関するカートリッジの方向の変更をさらに含んでよい。
【0022】
本発明によれば、少なくとも2つの方向に働く遠心力の下で処理などを実施するためのサンプル処理カートリッジも提供され、このカートリッジは以下を含む:サンプルを含むように適合された第1キャビティ、および第1キャビティと連通する液体内の第2キャビティまたはチャンネルシステム、ここで第1キャビティはカートリッジの面内に延ばされて存在し、前記面と垂直な深さを有し、第2キャビティまたはチャンネルシステムは第1キャビティと比較して浅く、第1キャビティの幅と比較して大きな量だけ、異なる方向で前記面(または前記面に平行な面)内に延びる。このカートリッジは、前述した局面と同じ特徴および技術的効果を示してよい。特に、それは、異なる密度を有する液体要素(例えば、細胞からの血漿、または液体からのナノ/マイクロ粒子)の非常に迅速なマイクロ分離を可能にする。
【0023】
これらの特徴およびさらに本発明について、本発明の実施形態を示す、添付される図面を参照してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1a〜1cは本発明の実施形態によるサンプル処理カートリッジの上面図を表す。
【図2】図1a〜1cのカートリッジの概略的な断面側面図である。
【図3】図3a〜3eは本発明の実施形態によるトラップの上面図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるトラップの上面図である。
【図5】本発明の実施形態によるサンプル処理カートリッジの概略的な断面側面図である。
【図6】本発明の1つまたは複数の実施形態による他のサンプル処理カートリッジの部分的な上面図である。
【図7】本発明の1つまたは複数の実施形態によるさらに他のサンプル処理カートリッジの上面図である。
【図8】本発明の1つまたは複数の実施形態によるさらに他のサンプル処理カートリッジの上面図である。
【図9】図8のカートリッジ内の多孔質フィルタ膜を示す拡大された上面図である。
【図10】図9の印がついた部分の断面B−B’の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
概して、本発明は分析サンプルおよび試薬処理装置(カートリッジ)および方法の提供を追求し、ここで装置はその中に保存される試薬を備えることができ、そこにサンプルを供給し、その後、液体を1つのキャビティまたはチャンバの中から1つ以上の他のチャンバに(分割)効果的に移動するために、遠心力に関連して制御された方法でカートリッジの方向を変更することによってそこに2またはそれ以上の次元で遠心力を与え、試薬とサンプルとを混合し、かつ可溶性試薬と機能化された表面との間の効果的な相互作用を可能にし、化学的反応を測定することによって、一連の化学分析を2次元または3次元で実行することができる。
【0026】
本発明は、双方が様々な密度を有する流体要素(液体、細胞、溶解されたナノおよびマイクロ粒子、繊維、およびそのようなものの破片)の効果的な分離、並びにカートリッジ内部の様々な形状のマイクロチャンネルおよびキャビティ内部の様々な液体のnL量、μL量、並びにmL量の処理および移動に使用することができる、かつこれらの液体を、ナノおよび/またはマイクロ粒子を保持するチャンネルまたはキャビティ、多孔質構造(例えば多孔質膜および/またはフィルタ)、およびピラー構造内で得られるような、非常に大きな機能表面と相互作用させるために使用することができる、新規の流体の機能の提供をさらに追及する。これらの機能は、どのようなアクチュエータ(ポンプ、バルブ、またはカートリッジ内で流れを制御するための表面改質)も必要とせず、方向を有する液体流に関する細孔力に依存する必要はない。これは、カートリッジ内で流体要素に働く遠心力に関して単にカートリッジの方向を変更することによって、および流体要素の流れは可能となるキャビティおよびマイクロチャンネルの発明的設計によって、得ることができる(マイクロ流体素子)。
【0027】
本発明の実施形態によるサンプル処理容器またはカートリッジ10が図1a−1cおよび2を参照して記述される。
【0028】
カートリッジ10は、上部面12および下部面14を含み、これらは側壁16とともに、概してプレートまたはディスク形状の本体を画定する。上部面12および下部面14はホイルのカバーであってよい。カートリッジ本体内には、上部面12および下部面14によって覆われた複数の相互接続されたチャンバまたはキャビティおよびチャンネルなどが提供される。カートリッジは光学的に透明であってよく、半透明であってもよい。カートリッジは例えば環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン、またはポリカーボネートなどのプラスチックで作られてよい。カートリッジは、使い捨てかつシール可能であってよい。さらに、カートリッジのキャビティおよびチャンネルは、成形、熱エンボス加工、フライス加工などで提供されてよい。
【0029】
特に、カートリッジ10は第1分離キャビティ18を含む。第1キャビティ18は、面12および14に平行なカートリッジの面P内に延びて(図1aの点線に沿って)存在する。第1キャビティ18の幅はW18で示され、第1キャビティの長さはL18で示される。さらに、カートリッジは、サンプルを第1キャビティ18内部に供給する入口手段20を含むか、またはそれと流体連通する。
【0030】
第1キャビティ18は、カートリッジ10の第2キャビティ22と流体連通する。図1a−1cおよび2に示される実施形態において、第1キャビティ18および第2キャビティ22は1つのキャビティの基本的に異なる部分であるが、あるいはそれらは分離されてよく、例えばチャンネル(図示されない)によって接続されてよい。
【0031】
第2キャビティ22は、L22の量(この量または長さL22>W18)、面12および14に平行な前記面内の方向(図1aおよび1bに点線で示される)に延びて存在する。この方向は、図1a−1cの上面図に見られるように、第1キャビティの幅の方向と異なる。さらに、第2キャビティ22は概して第1キャビティ18の長さ(L18)と比較して幅が狭い。また、図2の側面図に見られるように、第2キャビティ22は(より深い)第1キャビティ18と比較して浅い。第1キャビティ18の深さはD18で表され、第2キャビティ22の深さはD22で表される。深さの実際の差は、例えば2:1から10:1であってよい。第1キャビティ18と第2キャビティ22との間は、いくらか丸みを有して、または斜めになって推移してよい。
【0032】
使用の間、カートリッジ10は概して水平に配置され、遠心分離装置(図示されない)内に提供される。使用されてよい遠心分離装置の例は、発明の名称が「Centrifugation apparatus、use of such an apparatus, and centrifugation method」である、その内容が参照によりここに組み込まれる、本出願人の同時係属特許出願に開示される。使用され得る遠心分離装置の他の例は、その内容が参照によりここに組み込まれる、米国特許第4,814,282号公報(Holenら)に開示される。
【0033】
遠心分離装置において、カートリッジ10およびその中の任意のサンプルまたは試薬に遠心力を与えるため、カートリッジ10は遠位の垂直軸24に関して回転してよい。さらに、カートリッジ10はカートリッジと交差する垂直軸26に関して回転してよく、遠心力に関するカートリッジの向きを変更するようにする。これは、2次元の遠心分離と呼ばれてよい。
【0034】
遠心力の下でサンプルを処理または分析する方法の例において、まずサンプル28が入口手段20を介して第1キャビティ18に提供される。サンプル28は例えば血液サンプルであってよく、典型的には約10μL(マイクロリットル)であり、ただし原則として1マイクロリットルの数分の1から数mLの範囲であり得る。
【0035】
次いでカートリッジは、典型的には100×Gから2000×Gの間である(ここでGは地球表面の重力)遠心力30を受ける。図1aに見られるように、遠心力30は、第1キャビティ18に実質的に垂直である方向に働く(第1キャビティ18は遠心力30に垂直に延びて存在する)。この段階において、血液サンプル28内の血漿32(血液サンプル26中で血漿は血液細胞34と比較して低い密度を有する)は、重い血液細胞34から分離される。
【0036】
その後、軸24の周りの回転の間、カートリッジ10も内部軸26に関して回転され、カートリッジのマイクロチャンネルおよびキャビティに関する遠心力の方向が変更される。カートリッジに働く遠心力の「新たな」方向は36で表され、図1bに示される。カートリッジがそのように回転されるので、サンプルは深い第1キャビティ18から浅い第2キャビティ22まで移動される。さらに、第2キャビティ22は、第1キャビティが以前の遠心力30の方向に延在されたのに比べて、「新たな」遠心力36の方向にさらに延ばされて存在する。すなわち、第2キャビティ22の長さL22は、第1キャビティ18の幅W18と比較して大きい。
【0037】
浅い第2キャビティ22において、遠心力36が与えられる一方で、分離されたサンプルは遠心力の方向にさらに広がる。これは、図1bに説明されるように、内部軸26に関してカートリッジ10をさらに回転することによって、血漿32を除くことを容易にし、分離の総時間は低減される。次いで分離された血漿32は、カートリッジ10の他の部分において、さらなる処理または分析または試験を受けてよい。
【0038】
カートリッジ10は、V−またはU−形状のマイクロチャンネル38をさらに含んでよい(例えば図1c参照)。このチャンネルは様々な形状を有してよい。正確な測定を行うために、2つの相互接続されたチューブ38a、38bの間に、定義されたマイクロ流体ループがあるとよく、遠心分離に起因してそれらの間で液体は釣り合う(同じ高さになる)。U−形状(またはV−形状)マイクロチャンネル38は、典型的には面Pなど面12および14に平行な面内に位置する。U−形状のマイクロチャンネル38は典型的には約50−200μmの幅を有する。U−形状のマイクロチャンネル38は、例えば血漿32を受け取りかつ測定するために、第2キャビティ22に続いて配置されてよいが、その代わりに、他の測定を目的として、カートリッジ10内の他の場所に配置されてもよい。
【0039】
U−形状のマイクロチャンネル38内の液体(例えば血漿32)に連続的に働く遠心力は、マイクロチャンネル38の細孔力を大きく上回るように随時調節されてよい。幅100μmのU−形状マイクロチャンネル38に関して、細孔力を超える遠心力は典型的には約100×Gである。表面張力および細孔力が上回り、U−形状の湾曲部分が実質的に遠心力の方向を指すとき、液体のメニスカス40は液体に働く遠心力41と完全に直角である。これは、カートリッジ内に含まれる液体の体積を測定するとき、精度を改善する。遠心力に関して(すなわち、内部軸26に関して)カートリッジをさらに回転することによって、メニスカス40は遠心力と直角に保持され、液体の正確かつ制御された移動を可能にする。
【0040】
カートリッジ10のようなサンプル処理カートリッジは、密度が高い流体粒子(典型的には粒子および細胞)を保持するための少なくとも1つのトラップをさらに含んでよく、一方で低密度の流体要素(液体および懸濁液中の粒子)は高密度の要素によって置き換えられ、故に低密度の要素はデカンテーションの原理に従ってトラップを通過および出ることが可能になる。カートリッジに働くg−力(遠心力)は、含有される流体要素の密度に従って沈殿を調節するよう変更されてよい。少なくとも1つのトラップが、免疫凝集(典型的にはラテックス免疫測定法)を通じて典型的に得られる凝集体を分離および洗浄するのに、および/または捕捉のための固相として働く機能化マイクロ粒子またはナノ粒子で作られたカラムを構築するのに、または化学的もしくは物理的相互作用に関する他のタイプの表面を構築するのに、使用されてよい。少なくとも1つのトラップを用いることによって、液体よりも高い密度の粒子を保持する多孔質バリアを有する必要がなくなる。粒子はカートリッジ内部の任意の場所に適切に分配されてよく、次いで懸濁液は2次元遠心分離を通じて少なくとも1つのトラップ内に移送されてよく、そこで粒子の密度とカートリッジに働く遠心力の方向に関連して液体の流れを制限するキャビティおよびチャンネルの構造とに起因して、粒子「カラム」または多孔質プラグが形成される。
【0041】
液体(多孔質カラム/プラグの粒子と比較して密度が低い)は次いで2次元遠心分離作用により多孔質カラム/プラグを迅速に、1度または複数回通過させられてよい。もしもこれらの粒子が、例えば正もしくは負に帯電した基、極性基、疎水性基、または流体内部の分子と相互作用し得る他のタイプの化学特性もしくは作用を有する化学基、などの化学官能基を有する場合、固定された生体分子、典型的には酵素またはモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントなどの生体特異性捕捉分子、ストレプトアビジン、単鎖核酸(N.A.)フラグメント/プローブ、または他のレセプタ分子、付属の酵素基質、抗原、エピトープ、アビジン保持分子、核酸単鎖または溶液内リガンドは、固定化レセプタ分子と相互作用を強いられる。この方法によって、非常に迅速かつ効果的な相互作用、および全てのタイプのリガンド分子の粒子への捕捉、並びに洗浄工程において典型的に使用される高密度の粒子からの低密度の液体の非常に効果的な分離が得られてよい。これは、典型的にはクロマトグラフィー処理に適し、ここで随時流体の流れは遠心力の方向によって注意深く制御される。これらのタイプのトラップ構造は、図1に関連して記載されるデカンテーションによる、異なる密度の液体および/または粒子の非常に正確な分離を改善しかつ簡単化する。
【0042】
トラップの例は図3a−3eに説明され、42で示される。トラップ42は、入口チャンバ44、中間U形状チャンネル46、出口チャンバ48、入口チャンバ44と中間チャンネル46の一端52との間の第1の2チャンネルスプリッタ50、および中間チャンネル46の他端56と出口チャンバ48との間の第2の2チャンネルスプリッタ54を含む。トラップ42は、典型的には、面12および面14に平行なカートリッジ10の平面(面Pなど)内に位置するよう配置される。
【0043】
操作または使用の間、カートリッジ内のトラップ42は、図3aに説明されるように、遠心力58をまず受ける。入口チャンバ44に到達する液体60および粒子62を含む懸濁液は、遠心力58に起因して、トラップ42を通って広がる。
【0044】
懸濁液の粒子62は、周囲の液体60よりも密度が高いことに起因して、U形状チャンネル46内で沈殿を開始し、遠心力58は、図3bに説明されるように、最終的に多孔質プラグまたはカラムに粒子62を詰める。
【0045】
図3bに湾曲した矢印で示されるようなトラップ42の傾き(例えば、外部軸に関して回転される間、内部軸の周りでカートリッジを回転することによる)は、粒子62により形成されるカラムを通じて液体60を効果的に勢いよく流す。液体60および粒子62はその時点での遠心力に従って随時移動してよいが、液体60と比較して高い密度を有する粒子62は、図3cおよび3dにさらに説明されるように、遠心分離中心から最も離れたトラップ42の一部を占有する。図3cおよび3dに見られるように、2チャンネルスプリッタ50および54は各々、粒子62をトラップし一方で液体60が通過し得る、急な角度(<90°)を有する屈曲64を有する。
【0046】
繰り返されるカートリッジの(および、故にトラップ42の)制御された傾きによりトラップ42に粒子62が保持されてよく、一方で液体60は粒子62で形成されたプラグまたはカラムを通って前後に流れ、液体60内の分子を粒子62の表面分子と相互作用させる。これは、様々なレセプタリガンド系における効果的な相互作用、並びに効果的な洗浄を可能にする。
【0047】
液体60の大部分は、粒子62を囲む少量を除いては(空隙容量)、流子62から分離され、図3eに説明されるように出口チャンバ48の排出によりトラップ42を空にする。
【0048】
トラップの他の例が図4に説明され、66で示される。トラップ66は、その凹部に入口70および出口72を備えた腎臓形状のループチャンネル68を含む。トラップ66は、典型的には面12および14に平行なカートリッジ10の面(例えば面P)に位置して配置され、トラップ66の機能は図3a−3eに説明されるトラップ42の機能と同様である。
【0049】
図3および図4の構造の組み合わせおよびその変形は、分析に含まれる処理および材料に従って決定されてよい。
【0050】
カートリッジ10のようなサンプル処理カートリッジは、少なくとも1つの追加のチャンネルおよび/またはキャビティを備えた1つ以上の上部層および/または下部層をさらに含んでよい。言い換えれば、カートリッジは、前述のチャンネルおよびキャビティの組みに平行な面内に横方向に延びて存在するチャンネルおよびキャビティの1つ以上のシステムを含んでよい。そのようなカートリッジの例は図5に概略的に説明され、さらなる例が図8−10に説明される。図5のカートリッジは、キャビティ76を含む様々なキャビティおよびチャンネルを備えた階層または層74を含む。層74内の様々なキャビティおよびチャンネルは、例えば前述の第1および第2キャビティ、U形状マイクロチャンネルなどであってよい。
【0051】
図5において、カートリッジはキャビティ80を備えた上部層78をさらに含む。上部層78は層74の上に配置される。上部層78のキャビティ80は中間レベルチャンネル82によって層74のキャビティ76と流体連通する。中間レベルチャンネル82は、それらの間に斜めにまたは対角線上に延びてよい。カートリッジ内でキャビティ76、80、および中間レベルチャンネル82を適切に配置することによって、液体および懸濁液などの流体物が、カートリッジ内の流体物に働く遠心力の方向が変わるとき(例えば、外部軸に関して回転される間、内部軸に関してカートリッジを回転する)、キャビティ76とキャビティ80との間の中間レベルチャンネル82を介して効果的に移送され得る。液体を低いキャビティ76からキャビティ80まで移送する場合、典型的にカートリッジに作用する約10×Gから約1000×Gの遠心力は、液体がキャビティ76からキャビティ80へと上方に動くとき、重力を超えるのに十分大きい。
【0052】
上部層78の代わりに、またはそれを補完するために、カートリッジは1つ以上の下部層84を含んでよい。下部層84は上部層78と同様のものであってよいが、図5に示されるように、上部層に対して層74の反対側に配置される。
【0053】
それ故に、3次元の処理または試験または分析は、上部または下部層78および84への液体または流体要素の通過を可能にすることによって実現されてよい。要素が上部または下部層に達したとき、要素は、遠心力に関してカートリッジを回転することによって、元々の面または他の面内に戻されるまで、その面でマイクロチャンネルおよびキャビティの構造に従って処理されかつ横方向に移送され得る。液体は、プレート型カートリッジの領域を広げる必要なく小型デバイスにおける機能の増加を可能にする複数の層の間を、前後に動いてよい。
【0054】
典型的には、過剰な液体または不要物を吸収および捕捉するための吸収パッドなどの吸収材料が、カートリッジのさらなる面に配置されてよい。
【0055】
同様に、粒子を濾過するための、または特定の分子と化学的に相互作用する、もしくは捕捉するためのフィルタまたは多孔質膜が、ある層から他の層への通路(例えば中間レベルチャンネル82)に配置されてよい。この種の多孔質フィルタは、吸収材料と直接組み合わせて、またはカートリッジの下部または上部層に延びる新たなキャビティおよびチャンネルと組み合わせて、使用されてよい。そのようなフィルタまたは多孔質膜の例は図1に示され、85で示される。
【0056】
図6は、本発明の1つまたは複数の実施形態による他のサンプル処理カートリッジの一部の上面図である。図6に説明されるカートリッジは、2次元遠心分離システムにおいて、g−力(遠心力)と垂直に延びる深いチャンネルからの第2の遠心分離位置での半径方向に延びる浅いチャンネルシステムへの移送と、密度が高い細胞(粒子)を保持し一方で細胞よりも密度が低い血漿分は通過が可能であるトラップとしてのこの浅いチャンネルシステムの構造とを両方使用して、血液サンプル全体の細胞から2つの画定された血漿の一定分量を分離するよう設計される。そのような工程は、発明の名称が「Centrifugation apparatus、use of such an apparatus, and centrifugation, and centrifugation method」である、本出願人の同時係属特許出願に開示されるカメラ−ストロボシステムにより監視され制御されてよい。浅いチャンネルシステムは、各フラクション(aおよびbの各々)の個々の正確な測定を可能にする液体分割システムにさらに接続される。
【0057】
特に、図6のカートリッジは、全血液のための入口20および深い(「第1」)キャビティ18の一端に配置された不要物出口86を含む。前述のように、深いキャビティ18は、入口20を介して提供された全血液サンプルの血液細胞から血漿を分離するよう働く。深いキャビティ18の他端において、密度により液体要素(細胞/粒子)をトラップするための浅いチャンネルシステム22’が接続される。浅いチャンネルシステム22’は、全体的に遠心力34の方向に引き延ばされ、前述の第2キャビティ22の変形形態である。浅いチャンネルシステム22’は、その一端が深いキャビティ18と流体連通し、他端が急角度で浅いチャンネルシステム22’のループチャンネル90と接続される、入口チャンネル88を含む。浅いチャンネルシステム22’は、同様にループチャンネル90と接続されるが、図6に示されるようにY形状の接続である、出口チャンネル92をさらに含む。
【0058】
図6のカートリッジは、ループチャンネルを洗浄し、測定されたサンプルフラクションが測定ループから任意の後続の反応チャンバ(例えば、キュベット、粒子カラム、またはフィルタ)へと完全に移送されることを確実にする、分析バッファーのための第2入口94、過剰な血漿のための第2不要物出口96、および個別のフラクション(例えば血漿)を分割および測定するためのシステム98をさらに含む。前記システム98は、互いに隣り合って配置された、1つが血漿の各フラクションaおよびbに関する、2つのU形状マイクロチャンネル38a、38bを含んでよい。U形状マイクロチャンネル38a、38bは前述のU形状マイクロチャンネル38として形成され操作されてよく、それによって同じかまたは異なるが正確な、遠心力に関してカートリッジの方向により決定される液体体積を測定する。血漿の分割フラクションは、同じ分析の平行操作、分析物の様々な感度範囲、または様々な解析を可能にする、同じ試薬または異なるタイプの試薬に曝されてよい。
【0059】
規定される段階において遠心力に関連して図6のカートリッジの方向を前後に続いて変更することによって、カートリッジ内のサンプルまたは他の材料の分離、トラッピング、分割、乾燥試薬の溶解、混合、および測定が実施されてよい。
【0060】
図7は本発明の1つまたは複数の実施形態による他のサンプル処理カートリッジの上面図である。図7に説明されるカートリッジは、全血液サンプルの血液細胞からの例えば血漿の分離に関する分離キャビティを含む。分離キャビティは、深い領域18および浅い領域22’を含む。深い領域18は、前述の第1キャビティ18と同じであり、浅い領域22’は前述の第2キャビティ22の変形形態である。分離キャビティは、その一端で、遠心分離のとき外部サンプル分配装置108からサンプル(例えば、全血液サンプル)を受け取る入口またはキャビティ20’と流体連通する。分離キャビティは、その前記端において前述したように、下部の、または上部の流体システムに液体が入ることを可能にする開口またはチャンネル82’とも流体連通する。分離キャビティの反対側の端において、前述のように、それは測定を目的としてU形状マイクロチャンネル38と流体連通する。
【0061】
図7のカートリッジは、バッファーを分割するためのチャンネルおよびキャビティのシステム100、および溶解されバッファーと混合されかつ、説明されたような、プログラムされたシーケンスに従って処理される乾燥試薬を保持するためのチャンネルおよびキャビティのシステム102をさらに含んでよい。
【0062】
同様に、図7のカートリッジは、トラップ104をさらに含んでよい。トラップ104は、密度が高い流体粒子を保持し、一方で低い密度の液体要素を通過可能にするよう適合され、図3a−3eおよび4の各々におけるトラップ42および66と同様のものであってよい。トラップ104の1つの入口は、キャビティ106を通ってU形状マイクロチャンネル38から測定サンプルを、かつシステム102から試薬を供給するチャンネルシステムに接続される。トラップ104の他端は、出口82”(典型的にはカートリッジの他の面において不要物チャンバまたは不要物パッド)と流体連通する。
【0063】
図7のカートリッジに遠心力を与え、次いで遠心力に関して適切にカートリッジの方向を変えることによって、カートリッジ内のサンプルまたは他の材料の移送、分離、分割、洗い流し、乾燥試薬溶解、混合、トラッピング、洗浄、測定などは、続いておよび/または平行に部分的に実施されてよい。
【0064】
サンプル分配装置108は、カートリッジ上に留められてよい。サンプル分配装置はサンプルを引き込む(典型的には指の血液から取り込まれるような、全血液10μL)ためのキャビティ110、およびサンプル分配装置108がカートリッジに取り付けられるとき開口されるバッファーキャビティ112を含む。
【0065】
図8−10は本発明の1つまたは複数の実施形態による他のサンプル処理カートリッジを説明する。図8に説明されるような、および図9および10に関してさらに詳細に記述されるようなカートリッジは、中間多孔質材料を含む。多孔質材料は、典型的には、サンプルと試薬が多孔質材料を通って洗い流されるとき起こる反応の任意のシーケンスを通じて、その上に着色された、蛍光の、または他のタイプの光学的に活性な化合物が形成された、フィルタまたは多孔質膜であってよい。回転するカートリッジの上方または下方に配置される光学的センサ(すなわちデジタルカメラ)によって着色された表面を見るために、多孔質膜の主たる表面は、カートリッジを保持する回転ディスク(図示されない)の面にあるのが好ましい。図8−10に説明される構造は、回転ディスクの面に平行に配置される多孔質膜85の全領域を通って、液体が遠心力に垂直に通過することを可能にする。液体は遠心力の下で混合キャビティ106’から、(入口)チャンネル80を通って中間レベルチャンネル82内部に流れる。次いで液体は、カートリッジの下部層内の(出口)チャンネル76内部にさらに流れることができる前に、中間レベルチャンネル82を満たす。遠心力の作用に関連してカートリッジの方向を変えることによって、液体はチャンネル76の延長においてキャビティ107内に流れる。液体は中間レベルチャンネル82内で、遠心力に関してカートリッジの方向を繰り返し変えることによって、キャビティ106’および107の間を多孔質膜85を通って前後に洗い流してよい。さらに、液体は不要物キャビティ、典型的には吸収パッドに直接導かれてよく、またはチャンネル80’を通ってさらなる処理のために他の中間レベルチャンネル82’’’を通って流れることが可能である。
【0066】
以下において、図8に示される構造を例として、本発明の技術的効果および利点が説明される。カートリッジは、発明の名称が「Centrifugation apparatus use of such an apparatus and centrifugation method」である、本出願人の同時係属特許出願に記載される遠心分離装置と組み合わせて使用されるのが好ましいが、米国特許第4,814,282号公報(Holenら)に記載される装置と組み合わせて使用されてもよい。この特定の例において、分析システムを通って免疫膜流に基づく少量の血液サンプル内の特定の血漿−たんぱく質(抗原)の量の測定に使用されたカートリッジが記載された。
【0067】
サンプル分配装置108は、開口キャビティ110の細孔力を使用して指を刺すことにより全血液として少ない体積を引き込むために使用される。引き込まれる全血液の体積は、キャビティ110の体積によって決定されるが、通常0.1μLから100μLの間であり、典型的には10μLである。カートリッジの流体構造および自動化回転および回転が、自動化分析試験の遅い段階においてサンプルの1つまたはそれ以上の血漿フラクションの正確な測定結果を与えるため、全血液の正確な体積は手続のこの段階ではそれほど重要ではない。
【0068】
次いで操作者はサンプル分配装置108をカートリッジ10のコア要素と結合し、これらはスナップロックなどの適切なシステムによって互いに保持される。これによって、カートリッジは、小さな隠れた通気孔(図示されない)を除いては完全に密閉された、好ましい状態になり得る。
【0069】
この一体化において、液体試薬を保持するキャビティ112は、例えばホイルを切断することによって開口される。液体試薬を含むキャビティ112はサンプル分配装置の一部である必要はないが、カートリッジのどこか(例えば上部または下部層)に配置されてよい。さらに、カートリッジまたはサンプル分配装置は様々な液体および/または乾燥試薬を備えた幾つかのキャビティを有してよい。サンプル分配装置108およびカートリッジ10のコア要素を一体化した後、カートリッジは装置の操作者によって遠心分離装置内に配置される。遠心分離装置内の所定の位置にカートリッジを保持する機構を除いて、カートリッジと装置との間には、例えばポンプ結合、バルブコントローラ、電気コンタクトプラグ、または他のタイプの接合部分などの、どのような接合部分も必要ない。遠心分離装置は、この遠心分離プレートを回転することによってカートリッジを遠心力に曝す前に、遠心分離装置の主遠心分離プレート上で0°とみなされる規定された第1の方向にカートリッジを向けるように設計される。
【0070】
遠心分離装置内部の手段は、初期段階の間、典型的にはカートリッジ上のバーコードなどを読み取り、このバーコードなどはカートリッジを識別し、装置が以下の手順で自動的に実施する遠心分離回転およびカートリッジ回転のための適切なプログラムを選択する。
【0071】
図8に示されるような、遠心力30=0°である方向にあるカートリッジ10の回転(典型的には40Hz)において、キャビティ112の液体バッファー試薬は遠心力によってキャビティ100に移動し、キャビティ100、105、および107の間でさらに分割され、一方で全血液サンプルは入口手段20を介して第1キャビティ18内部に移動する。全血液サンプルは、遠心力(典型的には500×G)に起因して、遠心軸から最も遠く離れた、キャビティ18の一部に広がることを強いられる。このキャビティ18(引き延ばされかつ深い)は、遠心力に垂直な面に延びて存在し、血液サンプルはキャビティの縁部(「底部」)19に近い薄い層内に広がる。血液サンプル内部の血液細胞は、血漿よりも密度が高いことに起因して、遠心軸から最も遠い領域に移動し、壁19に最も近い領域を占有し、それによって遠心軸の近くに薄いが識別可能である血漿層を形成する。血液細胞を含まない血漿薄膜は、遠心分離プレートの半径および遠心分離の速度に依存して、典型的には20から120秒の間に形成される。
【0072】
図8に記載されるカートリッジが時計回り(<56°)に回転するとき、血漿および血液細胞は2つの異なる層内に第2キャビティ22内部に移動する。第1キャビティ18と比較して遠心力の方向にはより延びて存在するが、遠心力に垂直な面内でより浅くかつ狭い、この第2キャビティ22において、血液細胞からの血漿の分離は維持される。これは、血漿表面から血液細胞への距離が、その前のキャビティ18内にあるときと比較して実質的に大きいことを暗に示している。
【0073】
さらに時計回りに56°にカートリッジを回転することによって、細胞を含まない血漿のフラクションは測定キャビティ38内部に流れる。この回転の間、キャビティ100、105、および107内の液体試薬は、遠心力に起因して、キャビティ102、103、および101内部に各々流れる。これらのキャビティにおいて、液体試薬は乾燥試薬を溶解してよい。例として述べた特定の免疫学的分析において、キャビティ102は目的とする抗原に特異性を有する、乾燥されるかまたは凍結乾燥された標識モノクローナル抗体を含む。抗体標識は典型的にはコロイド金、蛍光色素分子、酵素、または検知に適する他の標識などの強い染料である。
【0074】
遠心分離回転は、分析の残りに関して、血液細胞から血漿を分離する間使用される速度と比較して低い速度(典型的には10Hz)に低減されてよい。次いで図8のカートリッジは、反時計回りに83°回転される。画定される血漿の測定されるフラクションは、キャビティ38にトラップされる。キャビティ22内の過剰の血漿および血液細胞はキャビティ18および中間レベルチャンネル82’、およびさらに吸収パッド87の内部を通って流れ、吸収パッドはカートリッジの下部層84に位置してよい。同時に、キャビティ101の液体試薬部分はキャビティ109内部に流れる。
【0075】
次いでカートリッジは時計回りに60°回転してキャビティ109内の液体がキャビティ22内部に流れるのを可能にし、一方でキャビティ38、101、102、および103内の他の液体はそれら各々のキャビティ内部に残る。カートリッジを反時計回りに60°回転し、キャビティ22内の液体はこのキャビティから吸収パッド87内に流れ、それによって血液サンプルの残余物に関してキャビティ22および18を洗い流す。
【0076】
次いでカートリッジは時計回りに108°回転し、それによってキャビティ101内の血漿および液体はチャンネル38を通ってキャビティ106’内部に流れる。その後カートリッジは前後に傾けられ、血漿および続く希釈液体がキャビティ106’内部の高位を勢いよく流れ、それによって血漿と希釈液体を混合し、一方でキャビティ102および103内部の液体試薬がなおも各々のキャビティ内部に残ることを可能にする。次いで希釈された血漿は、反時計回りの適切な回転によって、多孔質材料85(典型的には抗体でコーティングされた多孔質膜)を含む中間レベルチャンネル82内部に流れることが可能となる。次の時計回りの回転において、希釈された血漿は、前述の図9に従って、この膜85を通って勢いよく流される。多孔質膜上に固定化された抗体は、各々の抗原を特異的に捕捉し、一方で希釈サンプル内部の他の全ての分子は溶解されたままである。カートリッジをさらに時計回りに回転することによって、希釈されたサンプルの液体の全てが下部のキャビティ76に移動し、最終的に中間レベルチャンネル82’に入る。この時計回りの回転において、キャビティ102内の標識された抗原特異的抗体を含む液体試薬はキャビティ106’内部に流れ、一方でキャビティ103内の液体はこのキャビティ103内部に残る。次いで液体をキャビティ106’から多孔質膜85を通ってさらに下部キャビティ76内部に勢いよく流すための前述の一連の回転が、繰り返される。多孔質膜に捕捉されている抗原分子が対応する標識された抗体に結合する。その間に、希釈された血漿を使い果たした抗原はチャンネル80’および中間レベルチャンネル82”を通って吸収パッド87内部に流される。
【0077】
その後カートリッジは時計回りの方向にさらに回転され、キャビティ103の液体がキャビティ106’内部に流れるようにする。次いで液体をキャビティ106’から多孔質膜85を通ってさらに下部キャビティ76内部に勢いよく流すための前述されたのと同じ一連の回転が、繰り返される(3度目)。それによって洗浄液体は多孔質膜から非特異的に結合された標識抗体を除去する。最終的に、全ての液体試薬は吸収パッド87に行き着く。
【0078】
次いで多孔質膜上に捕捉された標識抗体は光学的手段または他の手段によって測定されてよい。典型的には、金コロイドで標識された抗体は膜上で赤色を生じ、一方で蛍光色素分子により標識された抗体は光励起で蛍光を放射する。
【0079】
記載された分析シーケンスは多くの段階を含むが、そのような反応シーケンスは本発明の結果として数分以内、典型的には2から5分で実施され得る。
【0080】
図8−10に記載される特定のカートリッジ構造は、分析の間免疫学的膜による血漿−たんぱく質の流れの測定に適用されるとき、本発明の利点を示すのに使用される例である。本発明は、様々な用途の領域においてさらなる価値を提供し、宇宙空間であっても機能する。様々なサンプルは、任意のタイプの有機または無機材料、ウイルス、バクテリア、菌類、または真核生物、組織、および体液に由来して使用され得る。測定されるパラメータは、低分子量および高分子量材料、たんぱく質、脂質、栄養分、核酸、細胞、ウイルス、バクテリアなどを含む任意のタイプの無機、有機、または生体材料であってよい。様々な免疫学的分析、核酸抽出、精製および増幅解析、酵素分析、およびその他を含む様々な試薬および分析シーケンスが、図1から10に記載される流体要素の変形を組み合わせる本発明の利点を生かして、迅速かつ効果的に実施され得る。
【0081】
当業者は、本発明が前述の好ましい実施形態によって決して制限されないことを理解するだろう。対照的に、多くの修正および変更が添付される請求項の範囲内で可能である。
【0082】
さらに、本願に記載される様々な特徴は、場合によって単独でまたは組み合わせて具現化されてよい。
【0083】
この目的を達成するために、(少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施するための)サンプル処理カートリッジが考えられ、カートリッジはそこを起点とするサンプルまたは材料が移動され得る少なくとも1つの追加のキャビティを有する上部層および下部層を含む(ただし、必然的に深い第1キャビティおよび浅い第2キャビティまたは任意の粒子トラップまたはU形状マイクロチャンネルではない)。
【0084】
サンプル処理カートリッジ(少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施する)も考えられ、カートリッジは、そこを起点とするサンプルおよび/または試薬または材料を測定するための、1つまたは複数の実質的にU形状のマイクロチャンネルを含む(ただし、必然的に深い第1キャビティおよび浅い第2キャビティまたは任意の上部/下部層ではない)。
【0085】
サンプル処理カートリッジ(少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施する)も考えられ、カートリッジは、高い密度の流体粒子を阻止し、かつ低い密度の流体粒子を通過させるように適合された少なくとも1つのトラップを含む(ただし、必然的に深い第1キャビティおよび浅い第2キャビティまたは任意の上部/下部層、またはU形状マイクロチャンネルではない)。
【0086】
サンプル処理カートリッジ(少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施する)も考えられ、カートリッジは、カートリッジのキャビティまたはチャンネル(例えば中間層チャンネル)内に配置された多孔質材料の少なくとも1つの構成単位を含み、遠心力に関してカートリッジの方向を変更することによって他の材料が多孔質材料を通過してよい。多孔質材料の少なくとも1つの構成単位は、多孔質材料の表面に固定化された反応基で溶液中の分子間のさらなる相互作用を可能にするように適合された、官能基を有するフィルタ、多孔質膜、センサ、反応器、またはアクチュエータであってよい。
【符号の説明】
【0087】
10 カートリッジ
12 上部面
14 下部面
16 側壁
18 第1分離キャビティ
20 入口手段
22 第2キャビティ
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【技術分野】
【0001】
本発明はサンプル処理カートリッジまたは容器に関する。本発明は、遠心力の下でサンプルを処理および/または分析する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
細胞、粒子、および沈殿物の沈殿を促進するための、並びに密度が異なる液体または細胞の分離のための手段としての遠心分離は、長い間化学および生物化学の所定の手順として欠くことができない部分であった。
【0003】
2次元の遠心分離は、一つの軸の周りの個々のカートリッジの回転を実行する装置内で一般的に得られ、これらのカートリッジは他の遠位の軸の周りの分離手段によって回転される。
【0004】
米国特許第4,883,763号公報(Holenら)は、その中に供給する試薬を含む実質的に閉じたチャンバで形成されるサンプルプロセッサカードを開示する。カードはサンプルをカードに供給するための入口手段、カードに供給されるサンプルを受け取るために入口手段と連通するキャピラリー手段、およびカードに与えられた第1方向の遠心力の影響下で入口手段からキャピラリー手段を通って進んできた過剰なサンプルを受け取るためにキャピラリー手段と連通するオーバーフロー手段を含む。カードは試薬供給から試薬を、第2方向でカードに作用する遠心力に対応してキャピラリー手段からサンプルを受け取るために使用される保持チャンバ手段、および、試薬とサンプルとの間の化学反応の測定を可能にする、保持チャンバ手段と連通するキュベット手段も含む。サンプルプロセッサカードの使用によって、カード内部の試薬およびサンプルの流れは、遠心分離機内でカードが高い遠心力を受けるとき、カード上の2つ以上の方向に働く遠心力のみによっておそらくは実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,883,763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改良されたサンプル処理カートリッジおよび方法を提供することである。
【0007】
この目的および以下の記載から明らかになる他の目的は、添付される独立請求項に規定される本発明によって実現されるだろう。さらなる実施形態が、添付される従属請求項に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の局面によれば、遠心力が変更されるのに関してカートリッジの方向として少なくとも二つの方向に働く遠心力の下で処理を実行するためのサンプル処理カートリッジが提供され、カートリッジは、サンプルを収容するのに用いられる第1キャビティ、および第1キャビティと液体連通する第2キャビティを含む。ここで第1および第2キャビティは、カートリッジに作用する遠心力が第1方向から第2方向に変更されるとき、第1キャビティ内のサンプルがそこから第2キャビティに移動するように配置され、(a)第1キャビティは第1方向に働く遠心力に垂直に(カートリッジの平面内で)引き伸ばされ、(b)第2キャビティは第1キャビティと比較して浅く、第1方向に働く遠心力の方向に第1キャビティが引き伸ばされるよりもさらに第2の方向に働く遠心力の方向に引き伸ばされている。
【0009】
(a)からもたらされる技術的効果は、引き伸ばされたサンプル各点においてサンプルの他の部分よりも高い密度を有する材料の、第1キャビティの「底部」への距離が短いことである。(b)からもたらされる技術的効果は、より浅い第2キャビティ内のサンプルが遠心力の方向により広げられ、これはサンプルからの、例えば血漿の除去を容易にすることである。一般的に、十分な遠心力が与えられたとき、カートリッジは様々な密度を有する流体要素(例えば、細胞からの血漿、または液体からのナノ/マイクロ粒子)の、非常に迅速でかつ正確なマイクロ分離を可能にする。これは、液体からの粒子(細胞を含む)の分離だけではなく、様々な密度の液体の分離(例えば血漿からの脂質)、様々な密度の粒子(細胞を含む)の分離を可能にする。
【0010】
前記平面において、または前記平面と平行な平面において、第2キャビティは、第1キャビティが第1の方向に働く遠心力と垂直に延びて存在するのと比較して、第2方向に働く遠心力に対する垂直方向への延びが少なくてよい。
【0011】
カートリッジは、そこを起点とするサンプルまたは材料が除かれてよい、少なくとも1つの追加のキャビティおよび/またはチャンネルを備えた、少なくとも1つの上部層および下部層をさらに含んでよい。これは、3次元の処理または試験または分析を可能にする。液体は小型のカートリッジ内で増加された機能を提供する複数の層の間で前後に動いてよい。
【0012】
カートリッジは、そこから生じるサンプルまたは材料を測定するための、実質的にV−またはU−型のマイクロチャンネルをさらに含んでよい。カートリッジに、V−またはU−型のマイクロチャンネルの毛管力を超える遠心力を与えることによって、V−またはU−型のマイクロチャンネルの液体のメニスカスは常に遠心力に対して完全に垂直であってよく、それによってカートリッジの測定チャンネル内に含まれる液体体積の正確さを改善する。
【0013】
カートリッジは、密度が高い流体粒子を阻止するように適合されるが、ただし低密度の液体および/または流体粒子を通過させる、1つ以上のトラップをさらに含んでよい。例示の目的のトラップは、入口チャンバ、中間のU形状のチャンネル、出口チャンバ、入口チャンバと中間チャンネルの一端との間の第1の2−チャンネルスプリッタ、および中間チャンネルの他方の端と出口チャンバとの間の第2の2−チャンネルスプリッタ、をさらに含んでよい。例として与えられる他のトラップは、その凹部分に入口と出口とを有する腎臓形状のループを含む。これらのトラップによって、粒子を保持するための多孔質バリアを含む必要がない。さらに、低密度の流体粒子は効果的にかつ繰り返し高密度流体粒子を通過し、それと相互作用する。
【0014】
さらに、第1キャビティはカートリッジの平面内に延びて存在し、前記平面と垂直の深さを有し、第2キャビティは第1キャビティと比較して浅く、第1キャビティの幅と比較して、異なる方向に、かつ大きな量、前記平面内に延びている。
【0015】
さらに、第2キャビティはチャンネルシステムとして構成されてよい。
【0016】
さらに、カートリッジは、カートリッジのキャビティまたはチャンネル内に配置される少なくとも1つの多孔質材料を含んでよく、他の材料(例えば、そこから送られるサンプルまたは材料および/または少なくとも1つの試薬または類似のもの)が、遠心力に対してカートリッジの方向を変えることによって、多孔質材料を通って通過し得る(横断および/または横方向流れ)ようにする。例えば、多孔質材料が上部層および/または下部層への中間チャンネル内に配置されてよい。同様に、カートリッジが中間チャンネルへの入口を含んでよく、この入口はカートリッジの1つの層の中間チャンネルの一端に配置され、入口は中間チャンネルからの出口と実質的に同じ方向に配置され、この出口はカートリッジの他の層の中間チャンネルの他端に提供され、液体が中間チャンネルの全体積を通じて流れるようにする。例えば、多孔質材料はフィルタ、多孔質膜、交差流路フィルタ、ピラーを備えたチャンネルまたはキャビティ、ビーズまたは粒子状材料を保持するための1つ以上の多孔質ストッパ、粒子または繊維材料または球形ビーズなどで満たされたチャンネルであってよい。フィルタまたは多孔質膜はディスク状のカートリッジの面に対して0°から90°の間の任意の角度で配置されてよい。多孔質材料は、濃縮、分離、および分画、または媒体交換の目的で使用されるとき、ただし化学的および/または電気化学特性にも基づき、様々な分子量を有する分子および粒子を保持するサイズフィルタとして機能してよい。さらに、多孔質材料は、それを通って流体/液体流が通過する、任意のタイプのセンサ、リアクタ、またはアクチュエータ、典型的にはフォトニック結晶センサであってもよい。さらに、前記多孔質材料の表面は、正または負に帯電された基、極性基、疎水性基、または流体内部の分子と相互作用し得る他のタイプの化学的特徴または活性を有する化学基により化学的に官能化されてよい。典型的に、これらはシリカ、イオン交換材料、など様々なタイプのクロマトグラフィー媒体であってよい。さらに、前記多孔質材料の表面は、酵素または他のタイプの触媒材料などの、特定の捕捉特性、化学活性を備えた分子で化学的に官能化されてよい。分子は特定の抗体、核酸プローブ、レクチン、または受容体リガンドシステムの任意の1要素、例えば(ストレプト)アビジンおよびビオチンなど、酵素およびその酵素基質であってよい。遠心力に関連するカートリッジの方向によって制御されるとき、体積比に対して大きな表面積を与える多孔質材料を通る液体流の組み合わせ、溶液中の分子と多孔質材料表面の反応基との間の広範囲の相互作用を可能にし、それによって、結合、捕捉、酵素転移などの化学または物理反応の速度を実質的に増加させる。遠心力に関して変更されたカートリッジの方向は、液体が多孔質材料、アクチュエータ、リアクタ、またはセンサを通って前後に洗浄するのに使用されてよく、それによって溶液中の分子が多孔質材料表面上の固定された基と相互作用する確率を増加させる。
【0017】
本発明の他の局面によれば、遠心力の下でサンプルを処理および/または分析する方法が提供され、この方法は以下を含む:上述のサンプル処理カートリッジの第1キャビティ内にサンプルを準備する段階、カートリッジに第1方向に働く遠心力を与える段階、および遠心力を第1方向から第2方向に変更する段階。この局面は、前述した局面と同様の特徴および技術的効果を示し得る。
【0018】
カートリッジは、外部軸に関してカートリッジを回転させることにより遠心力を与えられてよく、遠心力の方向がカートリッジ内部の軸に関してカートリッジを回転させることにより変更される。
【0019】
さらに、カートリッジは、(上述の)V−またはU−形状マイクロチャンネルの細孔力を超える遠心力を与えられてよい。
【0020】
さらに、そこから生じるサンプルまたは材料は、前記第1および第2キャビティを含むチャンネルおよびキャビティの第1システムに平行なカートリッジの平面に横方向に延びるチャンネルおよびキャビティの(第2)システムに入ることが可能とされてよい。
【0021】
この方法は、他の材料流体が(上述の)多孔質材料を通過するような、遠心力に関するカートリッジの方向の変更をさらに含んでよい。
【0022】
本発明によれば、少なくとも2つの方向に働く遠心力の下で処理などを実施するためのサンプル処理カートリッジも提供され、このカートリッジは以下を含む:サンプルを含むように適合された第1キャビティ、および第1キャビティと連通する液体内の第2キャビティまたはチャンネルシステム、ここで第1キャビティはカートリッジの面内に延ばされて存在し、前記面と垂直な深さを有し、第2キャビティまたはチャンネルシステムは第1キャビティと比較して浅く、第1キャビティの幅と比較して大きな量だけ、異なる方向で前記面(または前記面に平行な面)内に延びる。このカートリッジは、前述した局面と同じ特徴および技術的効果を示してよい。特に、それは、異なる密度を有する液体要素(例えば、細胞からの血漿、または液体からのナノ/マイクロ粒子)の非常に迅速なマイクロ分離を可能にする。
【0023】
これらの特徴およびさらに本発明について、本発明の実施形態を示す、添付される図面を参照してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1a〜1cは本発明の実施形態によるサンプル処理カートリッジの上面図を表す。
【図2】図1a〜1cのカートリッジの概略的な断面側面図である。
【図3】図3a〜3eは本発明の実施形態によるトラップの上面図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるトラップの上面図である。
【図5】本発明の実施形態によるサンプル処理カートリッジの概略的な断面側面図である。
【図6】本発明の1つまたは複数の実施形態による他のサンプル処理カートリッジの部分的な上面図である。
【図7】本発明の1つまたは複数の実施形態によるさらに他のサンプル処理カートリッジの上面図である。
【図8】本発明の1つまたは複数の実施形態によるさらに他のサンプル処理カートリッジの上面図である。
【図9】図8のカートリッジ内の多孔質フィルタ膜を示す拡大された上面図である。
【図10】図9の印がついた部分の断面B−B’の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
概して、本発明は分析サンプルおよび試薬処理装置(カートリッジ)および方法の提供を追求し、ここで装置はその中に保存される試薬を備えることができ、そこにサンプルを供給し、その後、液体を1つのキャビティまたはチャンバの中から1つ以上の他のチャンバに(分割)効果的に移動するために、遠心力に関連して制御された方法でカートリッジの方向を変更することによってそこに2またはそれ以上の次元で遠心力を与え、試薬とサンプルとを混合し、かつ可溶性試薬と機能化された表面との間の効果的な相互作用を可能にし、化学的反応を測定することによって、一連の化学分析を2次元または3次元で実行することができる。
【0026】
本発明は、双方が様々な密度を有する流体要素(液体、細胞、溶解されたナノおよびマイクロ粒子、繊維、およびそのようなものの破片)の効果的な分離、並びにカートリッジ内部の様々な形状のマイクロチャンネルおよびキャビティ内部の様々な液体のnL量、μL量、並びにmL量の処理および移動に使用することができる、かつこれらの液体を、ナノおよび/またはマイクロ粒子を保持するチャンネルまたはキャビティ、多孔質構造(例えば多孔質膜および/またはフィルタ)、およびピラー構造内で得られるような、非常に大きな機能表面と相互作用させるために使用することができる、新規の流体の機能の提供をさらに追及する。これらの機能は、どのようなアクチュエータ(ポンプ、バルブ、またはカートリッジ内で流れを制御するための表面改質)も必要とせず、方向を有する液体流に関する細孔力に依存する必要はない。これは、カートリッジ内で流体要素に働く遠心力に関して単にカートリッジの方向を変更することによって、および流体要素の流れは可能となるキャビティおよびマイクロチャンネルの発明的設計によって、得ることができる(マイクロ流体素子)。
【0027】
本発明の実施形態によるサンプル処理容器またはカートリッジ10が図1a−1cおよび2を参照して記述される。
【0028】
カートリッジ10は、上部面12および下部面14を含み、これらは側壁16とともに、概してプレートまたはディスク形状の本体を画定する。上部面12および下部面14はホイルのカバーであってよい。カートリッジ本体内には、上部面12および下部面14によって覆われた複数の相互接続されたチャンバまたはキャビティおよびチャンネルなどが提供される。カートリッジは光学的に透明であってよく、半透明であってもよい。カートリッジは例えば環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン、またはポリカーボネートなどのプラスチックで作られてよい。カートリッジは、使い捨てかつシール可能であってよい。さらに、カートリッジのキャビティおよびチャンネルは、成形、熱エンボス加工、フライス加工などで提供されてよい。
【0029】
特に、カートリッジ10は第1分離キャビティ18を含む。第1キャビティ18は、面12および14に平行なカートリッジの面P内に延びて(図1aの点線に沿って)存在する。第1キャビティ18の幅はW18で示され、第1キャビティの長さはL18で示される。さらに、カートリッジは、サンプルを第1キャビティ18内部に供給する入口手段20を含むか、またはそれと流体連通する。
【0030】
第1キャビティ18は、カートリッジ10の第2キャビティ22と流体連通する。図1a−1cおよび2に示される実施形態において、第1キャビティ18および第2キャビティ22は1つのキャビティの基本的に異なる部分であるが、あるいはそれらは分離されてよく、例えばチャンネル(図示されない)によって接続されてよい。
【0031】
第2キャビティ22は、L22の量(この量または長さL22>W18)、面12および14に平行な前記面内の方向(図1aおよび1bに点線で示される)に延びて存在する。この方向は、図1a−1cの上面図に見られるように、第1キャビティの幅の方向と異なる。さらに、第2キャビティ22は概して第1キャビティ18の長さ(L18)と比較して幅が狭い。また、図2の側面図に見られるように、第2キャビティ22は(より深い)第1キャビティ18と比較して浅い。第1キャビティ18の深さはD18で表され、第2キャビティ22の深さはD22で表される。深さの実際の差は、例えば2:1から10:1であってよい。第1キャビティ18と第2キャビティ22との間は、いくらか丸みを有して、または斜めになって推移してよい。
【0032】
使用の間、カートリッジ10は概して水平に配置され、遠心分離装置(図示されない)内に提供される。使用されてよい遠心分離装置の例は、発明の名称が「Centrifugation apparatus、use of such an apparatus, and centrifugation method」である、その内容が参照によりここに組み込まれる、本出願人の同時係属特許出願に開示される。使用され得る遠心分離装置の他の例は、その内容が参照によりここに組み込まれる、米国特許第4,814,282号公報(Holenら)に開示される。
【0033】
遠心分離装置において、カートリッジ10およびその中の任意のサンプルまたは試薬に遠心力を与えるため、カートリッジ10は遠位の垂直軸24に関して回転してよい。さらに、カートリッジ10はカートリッジと交差する垂直軸26に関して回転してよく、遠心力に関するカートリッジの向きを変更するようにする。これは、2次元の遠心分離と呼ばれてよい。
【0034】
遠心力の下でサンプルを処理または分析する方法の例において、まずサンプル28が入口手段20を介して第1キャビティ18に提供される。サンプル28は例えば血液サンプルであってよく、典型的には約10μL(マイクロリットル)であり、ただし原則として1マイクロリットルの数分の1から数mLの範囲であり得る。
【0035】
次いでカートリッジは、典型的には100×Gから2000×Gの間である(ここでGは地球表面の重力)遠心力30を受ける。図1aに見られるように、遠心力30は、第1キャビティ18に実質的に垂直である方向に働く(第1キャビティ18は遠心力30に垂直に延びて存在する)。この段階において、血液サンプル28内の血漿32(血液サンプル26中で血漿は血液細胞34と比較して低い密度を有する)は、重い血液細胞34から分離される。
【0036】
その後、軸24の周りの回転の間、カートリッジ10も内部軸26に関して回転され、カートリッジのマイクロチャンネルおよびキャビティに関する遠心力の方向が変更される。カートリッジに働く遠心力の「新たな」方向は36で表され、図1bに示される。カートリッジがそのように回転されるので、サンプルは深い第1キャビティ18から浅い第2キャビティ22まで移動される。さらに、第2キャビティ22は、第1キャビティが以前の遠心力30の方向に延在されたのに比べて、「新たな」遠心力36の方向にさらに延ばされて存在する。すなわち、第2キャビティ22の長さL22は、第1キャビティ18の幅W18と比較して大きい。
【0037】
浅い第2キャビティ22において、遠心力36が与えられる一方で、分離されたサンプルは遠心力の方向にさらに広がる。これは、図1bに説明されるように、内部軸26に関してカートリッジ10をさらに回転することによって、血漿32を除くことを容易にし、分離の総時間は低減される。次いで分離された血漿32は、カートリッジ10の他の部分において、さらなる処理または分析または試験を受けてよい。
【0038】
カートリッジ10は、V−またはU−形状のマイクロチャンネル38をさらに含んでよい(例えば図1c参照)。このチャンネルは様々な形状を有してよい。正確な測定を行うために、2つの相互接続されたチューブ38a、38bの間に、定義されたマイクロ流体ループがあるとよく、遠心分離に起因してそれらの間で液体は釣り合う(同じ高さになる)。U−形状(またはV−形状)マイクロチャンネル38は、典型的には面Pなど面12および14に平行な面内に位置する。U−形状のマイクロチャンネル38は典型的には約50−200μmの幅を有する。U−形状のマイクロチャンネル38は、例えば血漿32を受け取りかつ測定するために、第2キャビティ22に続いて配置されてよいが、その代わりに、他の測定を目的として、カートリッジ10内の他の場所に配置されてもよい。
【0039】
U−形状のマイクロチャンネル38内の液体(例えば血漿32)に連続的に働く遠心力は、マイクロチャンネル38の細孔力を大きく上回るように随時調節されてよい。幅100μmのU−形状マイクロチャンネル38に関して、細孔力を超える遠心力は典型的には約100×Gである。表面張力および細孔力が上回り、U−形状の湾曲部分が実質的に遠心力の方向を指すとき、液体のメニスカス40は液体に働く遠心力41と完全に直角である。これは、カートリッジ内に含まれる液体の体積を測定するとき、精度を改善する。遠心力に関して(すなわち、内部軸26に関して)カートリッジをさらに回転することによって、メニスカス40は遠心力と直角に保持され、液体の正確かつ制御された移動を可能にする。
【0040】
カートリッジ10のようなサンプル処理カートリッジは、密度が高い流体粒子(典型的には粒子および細胞)を保持するための少なくとも1つのトラップをさらに含んでよく、一方で低密度の流体要素(液体および懸濁液中の粒子)は高密度の要素によって置き換えられ、故に低密度の要素はデカンテーションの原理に従ってトラップを通過および出ることが可能になる。カートリッジに働くg−力(遠心力)は、含有される流体要素の密度に従って沈殿を調節するよう変更されてよい。少なくとも1つのトラップが、免疫凝集(典型的にはラテックス免疫測定法)を通じて典型的に得られる凝集体を分離および洗浄するのに、および/または捕捉のための固相として働く機能化マイクロ粒子またはナノ粒子で作られたカラムを構築するのに、または化学的もしくは物理的相互作用に関する他のタイプの表面を構築するのに、使用されてよい。少なくとも1つのトラップを用いることによって、液体よりも高い密度の粒子を保持する多孔質バリアを有する必要がなくなる。粒子はカートリッジ内部の任意の場所に適切に分配されてよく、次いで懸濁液は2次元遠心分離を通じて少なくとも1つのトラップ内に移送されてよく、そこで粒子の密度とカートリッジに働く遠心力の方向に関連して液体の流れを制限するキャビティおよびチャンネルの構造とに起因して、粒子「カラム」または多孔質プラグが形成される。
【0041】
液体(多孔質カラム/プラグの粒子と比較して密度が低い)は次いで2次元遠心分離作用により多孔質カラム/プラグを迅速に、1度または複数回通過させられてよい。もしもこれらの粒子が、例えば正もしくは負に帯電した基、極性基、疎水性基、または流体内部の分子と相互作用し得る他のタイプの化学特性もしくは作用を有する化学基、などの化学官能基を有する場合、固定された生体分子、典型的には酵素またはモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントなどの生体特異性捕捉分子、ストレプトアビジン、単鎖核酸(N.A.)フラグメント/プローブ、または他のレセプタ分子、付属の酵素基質、抗原、エピトープ、アビジン保持分子、核酸単鎖または溶液内リガンドは、固定化レセプタ分子と相互作用を強いられる。この方法によって、非常に迅速かつ効果的な相互作用、および全てのタイプのリガンド分子の粒子への捕捉、並びに洗浄工程において典型的に使用される高密度の粒子からの低密度の液体の非常に効果的な分離が得られてよい。これは、典型的にはクロマトグラフィー処理に適し、ここで随時流体の流れは遠心力の方向によって注意深く制御される。これらのタイプのトラップ構造は、図1に関連して記載されるデカンテーションによる、異なる密度の液体および/または粒子の非常に正確な分離を改善しかつ簡単化する。
【0042】
トラップの例は図3a−3eに説明され、42で示される。トラップ42は、入口チャンバ44、中間U形状チャンネル46、出口チャンバ48、入口チャンバ44と中間チャンネル46の一端52との間の第1の2チャンネルスプリッタ50、および中間チャンネル46の他端56と出口チャンバ48との間の第2の2チャンネルスプリッタ54を含む。トラップ42は、典型的には、面12および面14に平行なカートリッジ10の平面(面Pなど)内に位置するよう配置される。
【0043】
操作または使用の間、カートリッジ内のトラップ42は、図3aに説明されるように、遠心力58をまず受ける。入口チャンバ44に到達する液体60および粒子62を含む懸濁液は、遠心力58に起因して、トラップ42を通って広がる。
【0044】
懸濁液の粒子62は、周囲の液体60よりも密度が高いことに起因して、U形状チャンネル46内で沈殿を開始し、遠心力58は、図3bに説明されるように、最終的に多孔質プラグまたはカラムに粒子62を詰める。
【0045】
図3bに湾曲した矢印で示されるようなトラップ42の傾き(例えば、外部軸に関して回転される間、内部軸の周りでカートリッジを回転することによる)は、粒子62により形成されるカラムを通じて液体60を効果的に勢いよく流す。液体60および粒子62はその時点での遠心力に従って随時移動してよいが、液体60と比較して高い密度を有する粒子62は、図3cおよび3dにさらに説明されるように、遠心分離中心から最も離れたトラップ42の一部を占有する。図3cおよび3dに見られるように、2チャンネルスプリッタ50および54は各々、粒子62をトラップし一方で液体60が通過し得る、急な角度(<90°)を有する屈曲64を有する。
【0046】
繰り返されるカートリッジの(および、故にトラップ42の)制御された傾きによりトラップ42に粒子62が保持されてよく、一方で液体60は粒子62で形成されたプラグまたはカラムを通って前後に流れ、液体60内の分子を粒子62の表面分子と相互作用させる。これは、様々なレセプタリガンド系における効果的な相互作用、並びに効果的な洗浄を可能にする。
【0047】
液体60の大部分は、粒子62を囲む少量を除いては(空隙容量)、流子62から分離され、図3eに説明されるように出口チャンバ48の排出によりトラップ42を空にする。
【0048】
トラップの他の例が図4に説明され、66で示される。トラップ66は、その凹部に入口70および出口72を備えた腎臓形状のループチャンネル68を含む。トラップ66は、典型的には面12および14に平行なカートリッジ10の面(例えば面P)に位置して配置され、トラップ66の機能は図3a−3eに説明されるトラップ42の機能と同様である。
【0049】
図3および図4の構造の組み合わせおよびその変形は、分析に含まれる処理および材料に従って決定されてよい。
【0050】
カートリッジ10のようなサンプル処理カートリッジは、少なくとも1つの追加のチャンネルおよび/またはキャビティを備えた1つ以上の上部層および/または下部層をさらに含んでよい。言い換えれば、カートリッジは、前述のチャンネルおよびキャビティの組みに平行な面内に横方向に延びて存在するチャンネルおよびキャビティの1つ以上のシステムを含んでよい。そのようなカートリッジの例は図5に概略的に説明され、さらなる例が図8−10に説明される。図5のカートリッジは、キャビティ76を含む様々なキャビティおよびチャンネルを備えた階層または層74を含む。層74内の様々なキャビティおよびチャンネルは、例えば前述の第1および第2キャビティ、U形状マイクロチャンネルなどであってよい。
【0051】
図5において、カートリッジはキャビティ80を備えた上部層78をさらに含む。上部層78は層74の上に配置される。上部層78のキャビティ80は中間レベルチャンネル82によって層74のキャビティ76と流体連通する。中間レベルチャンネル82は、それらの間に斜めにまたは対角線上に延びてよい。カートリッジ内でキャビティ76、80、および中間レベルチャンネル82を適切に配置することによって、液体および懸濁液などの流体物が、カートリッジ内の流体物に働く遠心力の方向が変わるとき(例えば、外部軸に関して回転される間、内部軸に関してカートリッジを回転する)、キャビティ76とキャビティ80との間の中間レベルチャンネル82を介して効果的に移送され得る。液体を低いキャビティ76からキャビティ80まで移送する場合、典型的にカートリッジに作用する約10×Gから約1000×Gの遠心力は、液体がキャビティ76からキャビティ80へと上方に動くとき、重力を超えるのに十分大きい。
【0052】
上部層78の代わりに、またはそれを補完するために、カートリッジは1つ以上の下部層84を含んでよい。下部層84は上部層78と同様のものであってよいが、図5に示されるように、上部層に対して層74の反対側に配置される。
【0053】
それ故に、3次元の処理または試験または分析は、上部または下部層78および84への液体または流体要素の通過を可能にすることによって実現されてよい。要素が上部または下部層に達したとき、要素は、遠心力に関してカートリッジを回転することによって、元々の面または他の面内に戻されるまで、その面でマイクロチャンネルおよびキャビティの構造に従って処理されかつ横方向に移送され得る。液体は、プレート型カートリッジの領域を広げる必要なく小型デバイスにおける機能の増加を可能にする複数の層の間を、前後に動いてよい。
【0054】
典型的には、過剰な液体または不要物を吸収および捕捉するための吸収パッドなどの吸収材料が、カートリッジのさらなる面に配置されてよい。
【0055】
同様に、粒子を濾過するための、または特定の分子と化学的に相互作用する、もしくは捕捉するためのフィルタまたは多孔質膜が、ある層から他の層への通路(例えば中間レベルチャンネル82)に配置されてよい。この種の多孔質フィルタは、吸収材料と直接組み合わせて、またはカートリッジの下部または上部層に延びる新たなキャビティおよびチャンネルと組み合わせて、使用されてよい。そのようなフィルタまたは多孔質膜の例は図1に示され、85で示される。
【0056】
図6は、本発明の1つまたは複数の実施形態による他のサンプル処理カートリッジの一部の上面図である。図6に説明されるカートリッジは、2次元遠心分離システムにおいて、g−力(遠心力)と垂直に延びる深いチャンネルからの第2の遠心分離位置での半径方向に延びる浅いチャンネルシステムへの移送と、密度が高い細胞(粒子)を保持し一方で細胞よりも密度が低い血漿分は通過が可能であるトラップとしてのこの浅いチャンネルシステムの構造とを両方使用して、血液サンプル全体の細胞から2つの画定された血漿の一定分量を分離するよう設計される。そのような工程は、発明の名称が「Centrifugation apparatus、use of such an apparatus, and centrifugation, and centrifugation method」である、本出願人の同時係属特許出願に開示されるカメラ−ストロボシステムにより監視され制御されてよい。浅いチャンネルシステムは、各フラクション(aおよびbの各々)の個々の正確な測定を可能にする液体分割システムにさらに接続される。
【0057】
特に、図6のカートリッジは、全血液のための入口20および深い(「第1」)キャビティ18の一端に配置された不要物出口86を含む。前述のように、深いキャビティ18は、入口20を介して提供された全血液サンプルの血液細胞から血漿を分離するよう働く。深いキャビティ18の他端において、密度により液体要素(細胞/粒子)をトラップするための浅いチャンネルシステム22’が接続される。浅いチャンネルシステム22’は、全体的に遠心力34の方向に引き延ばされ、前述の第2キャビティ22の変形形態である。浅いチャンネルシステム22’は、その一端が深いキャビティ18と流体連通し、他端が急角度で浅いチャンネルシステム22’のループチャンネル90と接続される、入口チャンネル88を含む。浅いチャンネルシステム22’は、同様にループチャンネル90と接続されるが、図6に示されるようにY形状の接続である、出口チャンネル92をさらに含む。
【0058】
図6のカートリッジは、ループチャンネルを洗浄し、測定されたサンプルフラクションが測定ループから任意の後続の反応チャンバ(例えば、キュベット、粒子カラム、またはフィルタ)へと完全に移送されることを確実にする、分析バッファーのための第2入口94、過剰な血漿のための第2不要物出口96、および個別のフラクション(例えば血漿)を分割および測定するためのシステム98をさらに含む。前記システム98は、互いに隣り合って配置された、1つが血漿の各フラクションaおよびbに関する、2つのU形状マイクロチャンネル38a、38bを含んでよい。U形状マイクロチャンネル38a、38bは前述のU形状マイクロチャンネル38として形成され操作されてよく、それによって同じかまたは異なるが正確な、遠心力に関してカートリッジの方向により決定される液体体積を測定する。血漿の分割フラクションは、同じ分析の平行操作、分析物の様々な感度範囲、または様々な解析を可能にする、同じ試薬または異なるタイプの試薬に曝されてよい。
【0059】
規定される段階において遠心力に関連して図6のカートリッジの方向を前後に続いて変更することによって、カートリッジ内のサンプルまたは他の材料の分離、トラッピング、分割、乾燥試薬の溶解、混合、および測定が実施されてよい。
【0060】
図7は本発明の1つまたは複数の実施形態による他のサンプル処理カートリッジの上面図である。図7に説明されるカートリッジは、全血液サンプルの血液細胞からの例えば血漿の分離に関する分離キャビティを含む。分離キャビティは、深い領域18および浅い領域22’を含む。深い領域18は、前述の第1キャビティ18と同じであり、浅い領域22’は前述の第2キャビティ22の変形形態である。分離キャビティは、その一端で、遠心分離のとき外部サンプル分配装置108からサンプル(例えば、全血液サンプル)を受け取る入口またはキャビティ20’と流体連通する。分離キャビティは、その前記端において前述したように、下部の、または上部の流体システムに液体が入ることを可能にする開口またはチャンネル82’とも流体連通する。分離キャビティの反対側の端において、前述のように、それは測定を目的としてU形状マイクロチャンネル38と流体連通する。
【0061】
図7のカートリッジは、バッファーを分割するためのチャンネルおよびキャビティのシステム100、および溶解されバッファーと混合されかつ、説明されたような、プログラムされたシーケンスに従って処理される乾燥試薬を保持するためのチャンネルおよびキャビティのシステム102をさらに含んでよい。
【0062】
同様に、図7のカートリッジは、トラップ104をさらに含んでよい。トラップ104は、密度が高い流体粒子を保持し、一方で低い密度の液体要素を通過可能にするよう適合され、図3a−3eおよび4の各々におけるトラップ42および66と同様のものであってよい。トラップ104の1つの入口は、キャビティ106を通ってU形状マイクロチャンネル38から測定サンプルを、かつシステム102から試薬を供給するチャンネルシステムに接続される。トラップ104の他端は、出口82”(典型的にはカートリッジの他の面において不要物チャンバまたは不要物パッド)と流体連通する。
【0063】
図7のカートリッジに遠心力を与え、次いで遠心力に関して適切にカートリッジの方向を変えることによって、カートリッジ内のサンプルまたは他の材料の移送、分離、分割、洗い流し、乾燥試薬溶解、混合、トラッピング、洗浄、測定などは、続いておよび/または平行に部分的に実施されてよい。
【0064】
サンプル分配装置108は、カートリッジ上に留められてよい。サンプル分配装置はサンプルを引き込む(典型的には指の血液から取り込まれるような、全血液10μL)ためのキャビティ110、およびサンプル分配装置108がカートリッジに取り付けられるとき開口されるバッファーキャビティ112を含む。
【0065】
図8−10は本発明の1つまたは複数の実施形態による他のサンプル処理カートリッジを説明する。図8に説明されるような、および図9および10に関してさらに詳細に記述されるようなカートリッジは、中間多孔質材料を含む。多孔質材料は、典型的には、サンプルと試薬が多孔質材料を通って洗い流されるとき起こる反応の任意のシーケンスを通じて、その上に着色された、蛍光の、または他のタイプの光学的に活性な化合物が形成された、フィルタまたは多孔質膜であってよい。回転するカートリッジの上方または下方に配置される光学的センサ(すなわちデジタルカメラ)によって着色された表面を見るために、多孔質膜の主たる表面は、カートリッジを保持する回転ディスク(図示されない)の面にあるのが好ましい。図8−10に説明される構造は、回転ディスクの面に平行に配置される多孔質膜85の全領域を通って、液体が遠心力に垂直に通過することを可能にする。液体は遠心力の下で混合キャビティ106’から、(入口)チャンネル80を通って中間レベルチャンネル82内部に流れる。次いで液体は、カートリッジの下部層内の(出口)チャンネル76内部にさらに流れることができる前に、中間レベルチャンネル82を満たす。遠心力の作用に関連してカートリッジの方向を変えることによって、液体はチャンネル76の延長においてキャビティ107内に流れる。液体は中間レベルチャンネル82内で、遠心力に関してカートリッジの方向を繰り返し変えることによって、キャビティ106’および107の間を多孔質膜85を通って前後に洗い流してよい。さらに、液体は不要物キャビティ、典型的には吸収パッドに直接導かれてよく、またはチャンネル80’を通ってさらなる処理のために他の中間レベルチャンネル82’’’を通って流れることが可能である。
【0066】
以下において、図8に示される構造を例として、本発明の技術的効果および利点が説明される。カートリッジは、発明の名称が「Centrifugation apparatus use of such an apparatus and centrifugation method」である、本出願人の同時係属特許出願に記載される遠心分離装置と組み合わせて使用されるのが好ましいが、米国特許第4,814,282号公報(Holenら)に記載される装置と組み合わせて使用されてもよい。この特定の例において、分析システムを通って免疫膜流に基づく少量の血液サンプル内の特定の血漿−たんぱく質(抗原)の量の測定に使用されたカートリッジが記載された。
【0067】
サンプル分配装置108は、開口キャビティ110の細孔力を使用して指を刺すことにより全血液として少ない体積を引き込むために使用される。引き込まれる全血液の体積は、キャビティ110の体積によって決定されるが、通常0.1μLから100μLの間であり、典型的には10μLである。カートリッジの流体構造および自動化回転および回転が、自動化分析試験の遅い段階においてサンプルの1つまたはそれ以上の血漿フラクションの正確な測定結果を与えるため、全血液の正確な体積は手続のこの段階ではそれほど重要ではない。
【0068】
次いで操作者はサンプル分配装置108をカートリッジ10のコア要素と結合し、これらはスナップロックなどの適切なシステムによって互いに保持される。これによって、カートリッジは、小さな隠れた通気孔(図示されない)を除いては完全に密閉された、好ましい状態になり得る。
【0069】
この一体化において、液体試薬を保持するキャビティ112は、例えばホイルを切断することによって開口される。液体試薬を含むキャビティ112はサンプル分配装置の一部である必要はないが、カートリッジのどこか(例えば上部または下部層)に配置されてよい。さらに、カートリッジまたはサンプル分配装置は様々な液体および/または乾燥試薬を備えた幾つかのキャビティを有してよい。サンプル分配装置108およびカートリッジ10のコア要素を一体化した後、カートリッジは装置の操作者によって遠心分離装置内に配置される。遠心分離装置内の所定の位置にカートリッジを保持する機構を除いて、カートリッジと装置との間には、例えばポンプ結合、バルブコントローラ、電気コンタクトプラグ、または他のタイプの接合部分などの、どのような接合部分も必要ない。遠心分離装置は、この遠心分離プレートを回転することによってカートリッジを遠心力に曝す前に、遠心分離装置の主遠心分離プレート上で0°とみなされる規定された第1の方向にカートリッジを向けるように設計される。
【0070】
遠心分離装置内部の手段は、初期段階の間、典型的にはカートリッジ上のバーコードなどを読み取り、このバーコードなどはカートリッジを識別し、装置が以下の手順で自動的に実施する遠心分離回転およびカートリッジ回転のための適切なプログラムを選択する。
【0071】
図8に示されるような、遠心力30=0°である方向にあるカートリッジ10の回転(典型的には40Hz)において、キャビティ112の液体バッファー試薬は遠心力によってキャビティ100に移動し、キャビティ100、105、および107の間でさらに分割され、一方で全血液サンプルは入口手段20を介して第1キャビティ18内部に移動する。全血液サンプルは、遠心力(典型的には500×G)に起因して、遠心軸から最も遠く離れた、キャビティ18の一部に広がることを強いられる。このキャビティ18(引き延ばされかつ深い)は、遠心力に垂直な面に延びて存在し、血液サンプルはキャビティの縁部(「底部」)19に近い薄い層内に広がる。血液サンプル内部の血液細胞は、血漿よりも密度が高いことに起因して、遠心軸から最も遠い領域に移動し、壁19に最も近い領域を占有し、それによって遠心軸の近くに薄いが識別可能である血漿層を形成する。血液細胞を含まない血漿薄膜は、遠心分離プレートの半径および遠心分離の速度に依存して、典型的には20から120秒の間に形成される。
【0072】
図8に記載されるカートリッジが時計回り(<56°)に回転するとき、血漿および血液細胞は2つの異なる層内に第2キャビティ22内部に移動する。第1キャビティ18と比較して遠心力の方向にはより延びて存在するが、遠心力に垂直な面内でより浅くかつ狭い、この第2キャビティ22において、血液細胞からの血漿の分離は維持される。これは、血漿表面から血液細胞への距離が、その前のキャビティ18内にあるときと比較して実質的に大きいことを暗に示している。
【0073】
さらに時計回りに56°にカートリッジを回転することによって、細胞を含まない血漿のフラクションは測定キャビティ38内部に流れる。この回転の間、キャビティ100、105、および107内の液体試薬は、遠心力に起因して、キャビティ102、103、および101内部に各々流れる。これらのキャビティにおいて、液体試薬は乾燥試薬を溶解してよい。例として述べた特定の免疫学的分析において、キャビティ102は目的とする抗原に特異性を有する、乾燥されるかまたは凍結乾燥された標識モノクローナル抗体を含む。抗体標識は典型的にはコロイド金、蛍光色素分子、酵素、または検知に適する他の標識などの強い染料である。
【0074】
遠心分離回転は、分析の残りに関して、血液細胞から血漿を分離する間使用される速度と比較して低い速度(典型的には10Hz)に低減されてよい。次いで図8のカートリッジは、反時計回りに83°回転される。画定される血漿の測定されるフラクションは、キャビティ38にトラップされる。キャビティ22内の過剰の血漿および血液細胞はキャビティ18および中間レベルチャンネル82’、およびさらに吸収パッド87の内部を通って流れ、吸収パッドはカートリッジの下部層84に位置してよい。同時に、キャビティ101の液体試薬部分はキャビティ109内部に流れる。
【0075】
次いでカートリッジは時計回りに60°回転してキャビティ109内の液体がキャビティ22内部に流れるのを可能にし、一方でキャビティ38、101、102、および103内の他の液体はそれら各々のキャビティ内部に残る。カートリッジを反時計回りに60°回転し、キャビティ22内の液体はこのキャビティから吸収パッド87内に流れ、それによって血液サンプルの残余物に関してキャビティ22および18を洗い流す。
【0076】
次いでカートリッジは時計回りに108°回転し、それによってキャビティ101内の血漿および液体はチャンネル38を通ってキャビティ106’内部に流れる。その後カートリッジは前後に傾けられ、血漿および続く希釈液体がキャビティ106’内部の高位を勢いよく流れ、それによって血漿と希釈液体を混合し、一方でキャビティ102および103内部の液体試薬がなおも各々のキャビティ内部に残ることを可能にする。次いで希釈された血漿は、反時計回りの適切な回転によって、多孔質材料85(典型的には抗体でコーティングされた多孔質膜)を含む中間レベルチャンネル82内部に流れることが可能となる。次の時計回りの回転において、希釈された血漿は、前述の図9に従って、この膜85を通って勢いよく流される。多孔質膜上に固定化された抗体は、各々の抗原を特異的に捕捉し、一方で希釈サンプル内部の他の全ての分子は溶解されたままである。カートリッジをさらに時計回りに回転することによって、希釈されたサンプルの液体の全てが下部のキャビティ76に移動し、最終的に中間レベルチャンネル82’に入る。この時計回りの回転において、キャビティ102内の標識された抗原特異的抗体を含む液体試薬はキャビティ106’内部に流れ、一方でキャビティ103内の液体はこのキャビティ103内部に残る。次いで液体をキャビティ106’から多孔質膜85を通ってさらに下部キャビティ76内部に勢いよく流すための前述の一連の回転が、繰り返される。多孔質膜に捕捉されている抗原分子が対応する標識された抗体に結合する。その間に、希釈された血漿を使い果たした抗原はチャンネル80’および中間レベルチャンネル82”を通って吸収パッド87内部に流される。
【0077】
その後カートリッジは時計回りの方向にさらに回転され、キャビティ103の液体がキャビティ106’内部に流れるようにする。次いで液体をキャビティ106’から多孔質膜85を通ってさらに下部キャビティ76内部に勢いよく流すための前述されたのと同じ一連の回転が、繰り返される(3度目)。それによって洗浄液体は多孔質膜から非特異的に結合された標識抗体を除去する。最終的に、全ての液体試薬は吸収パッド87に行き着く。
【0078】
次いで多孔質膜上に捕捉された標識抗体は光学的手段または他の手段によって測定されてよい。典型的には、金コロイドで標識された抗体は膜上で赤色を生じ、一方で蛍光色素分子により標識された抗体は光励起で蛍光を放射する。
【0079】
記載された分析シーケンスは多くの段階を含むが、そのような反応シーケンスは本発明の結果として数分以内、典型的には2から5分で実施され得る。
【0080】
図8−10に記載される特定のカートリッジ構造は、分析の間免疫学的膜による血漿−たんぱく質の流れの測定に適用されるとき、本発明の利点を示すのに使用される例である。本発明は、様々な用途の領域においてさらなる価値を提供し、宇宙空間であっても機能する。様々なサンプルは、任意のタイプの有機または無機材料、ウイルス、バクテリア、菌類、または真核生物、組織、および体液に由来して使用され得る。測定されるパラメータは、低分子量および高分子量材料、たんぱく質、脂質、栄養分、核酸、細胞、ウイルス、バクテリアなどを含む任意のタイプの無機、有機、または生体材料であってよい。様々な免疫学的分析、核酸抽出、精製および増幅解析、酵素分析、およびその他を含む様々な試薬および分析シーケンスが、図1から10に記載される流体要素の変形を組み合わせる本発明の利点を生かして、迅速かつ効果的に実施され得る。
【0081】
当業者は、本発明が前述の好ましい実施形態によって決して制限されないことを理解するだろう。対照的に、多くの修正および変更が添付される請求項の範囲内で可能である。
【0082】
さらに、本願に記載される様々な特徴は、場合によって単独でまたは組み合わせて具現化されてよい。
【0083】
この目的を達成するために、(少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施するための)サンプル処理カートリッジが考えられ、カートリッジはそこを起点とするサンプルまたは材料が移動され得る少なくとも1つの追加のキャビティを有する上部層および下部層を含む(ただし、必然的に深い第1キャビティおよび浅い第2キャビティまたは任意の粒子トラップまたはU形状マイクロチャンネルではない)。
【0084】
サンプル処理カートリッジ(少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施する)も考えられ、カートリッジは、そこを起点とするサンプルおよび/または試薬または材料を測定するための、1つまたは複数の実質的にU形状のマイクロチャンネルを含む(ただし、必然的に深い第1キャビティおよび浅い第2キャビティまたは任意の上部/下部層ではない)。
【0085】
サンプル処理カートリッジ(少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施する)も考えられ、カートリッジは、高い密度の流体粒子を阻止し、かつ低い密度の流体粒子を通過させるように適合された少なくとも1つのトラップを含む(ただし、必然的に深い第1キャビティおよび浅い第2キャビティまたは任意の上部/下部層、またはU形状マイクロチャンネルではない)。
【0086】
サンプル処理カートリッジ(少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施する)も考えられ、カートリッジは、カートリッジのキャビティまたはチャンネル(例えば中間層チャンネル)内に配置された多孔質材料の少なくとも1つの構成単位を含み、遠心力に関してカートリッジの方向を変更することによって他の材料が多孔質材料を通過してよい。多孔質材料の少なくとも1つの構成単位は、多孔質材料の表面に固定化された反応基で溶液中の分子間のさらなる相互作用を可能にするように適合された、官能基を有するフィルタ、多孔質膜、センサ、反応器、またはアクチュエータであってよい。
【符号の説明】
【0087】
10 カートリッジ
12 上部面
14 下部面
16 側壁
18 第1分離キャビティ
20 入口手段
22 第2キャビティ
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力に対してカートリッジの方向が変更されるとき、少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施するためのサンプル処理カートリッジ(10)であって、
サンプルを収容するよう適合された第1キャビティ(18)、および
第1キャビティと流体連通する第2キャビティ(22)を含み、
第1および第2キャビティは、カートリッジに働く遠心力が第1方向(30)から第2方向(36)に変更されるとき、第1キャビティ内のサンプルがそこから第2キャビティに移動するように配置され、
第1キャビティは、カートリッジの面(P)内で、第1方向に働く遠心力に垂直に延びて存在し、
第2キャビティは第1キャビティと比較して浅く、第1キャビティが第1方向に働く遠心力の方向に延びる程度と比較して、第2方向に作用する遠心力の方向にさらに延びている、サンプル処理カートリッジ。
【請求項2】
前記面または前記面に平行な面において、第1キャビティが第1方向に働く遠心力に垂直に延びる程度と比較して、第2キャビティが第2方向に作用する遠心力に垂直に延びる程度が少ない、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
そこを起点とするサンプルまたは材料が移動され得る少なくとも1つのさらなるキャビティおよび/またはチャンネルを備える上部層(78)および下部層(84)の少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
そこを起点とするサンプルまたは材料を測定するための、実質的にV形状またはU形状のマイクロチャンネル(38)をさらに含む、請求項1から3の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
密度が高い流体粒子を阻止するが、密度が低い液体および/または流体粒子を通過させるように適合された少なくとも1つのトラップ(42、66)をさらに含む、請求項1から4の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記トラップが、
入口チャンバ(44)、
中間U形状チャンネル(46)、
出口チャンバ(48)、
入口チャンバと中間チャンネルの一端との間の、第1の2チャンネルスプリッタ(50)、
中間チャンネルの反対側の端と出口チャンバとの間の、第2の2チャンネルスプリッタ(54)、
を含む、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記トラップが、その凹部に入口(70)および出口(72)を有する腎臓形状のループ(68)を含む、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項8】
第1キャビティがカートリッジの面内に延びて存在し、前記面に垂直な深さを有し、第2キャビティが第1キャビティと比較して浅く、前記面内の異なる方向に、第1キャビティの幅よりも大きな量だけ延びて存在する、請求項1から7の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
第2キャビティがチャンネルシステムとして構成される、請求項1から8の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
カートリッジのキャビティまたはチャンネル内に配置される少なくとも1つの多孔質材料をさらに含み、遠心力に対してカートリッジの方向を変更することによって、他の材料が多孔質材料を通過し得るようにする、請求項1から9の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
多孔質材料(85)が上部層および/または下部層への中間レベルチャンネル(82)内に配置される、請求項3から10の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項12】
中間レベルチャンネル(82)への入口(80)がカートリッジの1つの層(74)内の中間レベルチャンネル(82)の一端に提供され、入口は中間レベルチャンネル(82)からの出口(76)と実質的に同じ方向に配置され、この出口はカートリッジの他の層(84)内の中間レベルチャンネル(82)の他端に提供される、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
遠心力の下で、サンプルを処理および/または分析する方法であって、
請求項1から12の何れか一項に記載のサンプル処理カートリッジ(10)の第1キャビティ(18)にサンプルを提供する段階、
カートリッジに第1方向(30)に働く遠心力を与える段階、
遠心力を第1方向から第2方向(36)に変更する段階、
を含む方法。
【請求項14】
外部軸(24)に関してカートリッジを回転させることによって、カートリッジが遠心力を受け、遠心力の方向がカートリッジ内部の軸(26)に関してカートリッジを回転させることによって変更される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
V形状またはU形状マイクロチャンネル(38)の細孔力を超える遠心力をカートリッジに与える、請求項4を引用する請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
そこを起点とするサンプルまたは材料が、前記第1および第2キャビティを含むチャンネルおよびキャビティの第1システムに平行な、カートリッジの面内に横方向に延びるチャンネルおよびキャビティのシステムに入ることが可能である、請求項13から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
遠心力に対してカートリッジの方向を変更し、前記他の材料が多孔質材料を通過するようにする段階をさらに含む、請求項10、11、または12を引用する請求項13〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施するためのサンプル処理カートリッジ(10)であって、
サンプルを収容するよう適合された第1キャビティ(18)、および
第1キャビティと流体連通する第2キャビティ(22)またはチャンネルシステムを含み、
第1キャビティがカートリッジの面内に延びて存在し、前記面に垂直な深さを有し、第2キャビティまたはチャンネルシステムが第1キャビティと比較して浅く、前記面内に、または前記面と平行な面内の異なる方向に、第1キャビティの幅よりも大きな量だけ延びて存在する、サンプル処理カートリッジ。
【請求項1】
遠心力に対してカートリッジの方向が変更されるとき、少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施するためのサンプル処理カートリッジ(10)であって、
サンプルを収容するよう適合された第1キャビティ(18)、および
第1キャビティと流体連通する第2キャビティ(22)を含み、
第1および第2キャビティは、カートリッジに働く遠心力が第1方向(30)から第2方向(36)に変更されるとき、第1キャビティ内のサンプルがそこから第2キャビティに移動するように配置され、
第1キャビティは、カートリッジの面(P)内で、第1方向に働く遠心力に垂直に延びて存在し、
第2キャビティは第1キャビティと比較して浅く、第1キャビティが第1方向に働く遠心力の方向に延びる程度と比較して、第2方向に作用する遠心力の方向にさらに延びている、サンプル処理カートリッジ。
【請求項2】
前記面または前記面に平行な面において、第1キャビティが第1方向に働く遠心力に垂直に延びる程度と比較して、第2キャビティが第2方向に作用する遠心力に垂直に延びる程度が少ない、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
そこを起点とするサンプルまたは材料が移動され得る少なくとも1つのさらなるキャビティおよび/またはチャンネルを備える上部層(78)および下部層(84)の少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
そこを起点とするサンプルまたは材料を測定するための、実質的にV形状またはU形状のマイクロチャンネル(38)をさらに含む、請求項1から3の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
密度が高い流体粒子を阻止するが、密度が低い液体および/または流体粒子を通過させるように適合された少なくとも1つのトラップ(42、66)をさらに含む、請求項1から4の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記トラップが、
入口チャンバ(44)、
中間U形状チャンネル(46)、
出口チャンバ(48)、
入口チャンバと中間チャンネルの一端との間の、第1の2チャンネルスプリッタ(50)、
中間チャンネルの反対側の端と出口チャンバとの間の、第2の2チャンネルスプリッタ(54)、
を含む、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記トラップが、その凹部に入口(70)および出口(72)を有する腎臓形状のループ(68)を含む、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項8】
第1キャビティがカートリッジの面内に延びて存在し、前記面に垂直な深さを有し、第2キャビティが第1キャビティと比較して浅く、前記面内の異なる方向に、第1キャビティの幅よりも大きな量だけ延びて存在する、請求項1から7の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
第2キャビティがチャンネルシステムとして構成される、請求項1から8の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
カートリッジのキャビティまたはチャンネル内に配置される少なくとも1つの多孔質材料をさらに含み、遠心力に対してカートリッジの方向を変更することによって、他の材料が多孔質材料を通過し得るようにする、請求項1から9の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
多孔質材料(85)が上部層および/または下部層への中間レベルチャンネル(82)内に配置される、請求項3から10の何れか一項に記載のカートリッジ。
【請求項12】
中間レベルチャンネル(82)への入口(80)がカートリッジの1つの層(74)内の中間レベルチャンネル(82)の一端に提供され、入口は中間レベルチャンネル(82)からの出口(76)と実質的に同じ方向に配置され、この出口はカートリッジの他の層(84)内の中間レベルチャンネル(82)の他端に提供される、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
遠心力の下で、サンプルを処理および/または分析する方法であって、
請求項1から12の何れか一項に記載のサンプル処理カートリッジ(10)の第1キャビティ(18)にサンプルを提供する段階、
カートリッジに第1方向(30)に働く遠心力を与える段階、
遠心力を第1方向から第2方向(36)に変更する段階、
を含む方法。
【請求項14】
外部軸(24)に関してカートリッジを回転させることによって、カートリッジが遠心力を受け、遠心力の方向がカートリッジ内部の軸(26)に関してカートリッジを回転させることによって変更される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
V形状またはU形状マイクロチャンネル(38)の細孔力を超える遠心力をカートリッジに与える、請求項4を引用する請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
そこを起点とするサンプルまたは材料が、前記第1および第2キャビティを含むチャンネルおよびキャビティの第1システムに平行な、カートリッジの面内に横方向に延びるチャンネルおよびキャビティのシステムに入ることが可能である、請求項13から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
遠心力に対してカートリッジの方向を変更し、前記他の材料が多孔質材料を通過するようにする段階をさらに含む、請求項10、11、または12を引用する請求項13〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも2つの方向に作用する遠心力の下で処理を実施するためのサンプル処理カートリッジ(10)であって、
サンプルを収容するよう適合された第1キャビティ(18)、および
第1キャビティと流体連通する第2キャビティ(22)またはチャンネルシステムを含み、
第1キャビティがカートリッジの面内に延びて存在し、前記面に垂直な深さを有し、第2キャビティまたはチャンネルシステムが第1キャビティと比較して浅く、前記面内に、または前記面と平行な面内の異なる方向に、第1キャビティの幅よりも大きな量だけ延びて存在する、サンプル処理カートリッジ。
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−515966(P2013−515966A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547047(P2012−547047)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/NO2010/000488
【国際公開番号】WO2011/081530
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512169785)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/NO2010/000488
【国際公開番号】WO2011/081530
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512169785)
【Fターム(参考)】
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