説明

サーバおよびコンテンツデータの送信方法

【課題】 車内ネットワークシステムにおいて、アプリケーションやクライアントのQoS・ユーザビリティを確保する。
【解決手段】 カテゴリーの異なる複数のコンテンツデータを格納するデータストレージ12を設ける。データストレージ12から取り出されたコンテンツデータを所定の通信速度でクライアント21、22に出力する可変データレート回路13と、自車の走行速度を検出する車速センサ42とを設ける。車速センサ42の検出出力により可変データレート回路13を制御してクライアント21、22に出力されるコンテンツデータの通信速度を自車の走行速度に対応して動的に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サーバおよびコンテンツデータの送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CDプレーヤやDVDプレーヤなどのAV機器を自動車に搭載し、車内で音楽や映画などを楽しむことができるようにした車載用AV装置が普及しつつある。この車載用AV装置においては、ディスプレイおよびスピーカが例えば図5に示すように配置される。
【0003】
すなわち、図5は、車載用AV装置を搭載した自動車内部の一例を示す平面図であり、ダッシュボードの中央付近にディスプレイ21Cが設けられ、運転席DSの運転者や助手席PSの搭乗者からディスプレイ21Cに表示される映像を見ることができるようにされている。また、助手席PSと運転席DSとの間であって両座席PS、DSの背もたれ付近に、ディスプレイ22Cが設けられ、後部座席RSの搭乗者からディスプレイ22Cに表示される映像を見ることができるようにされている。
【0004】
さらに、左右の前部ドアにスピーカ21L、21Rが設けられ、これらスピーカ21L、21Rには、左および右チャンネルのオーディオ信号が供給される。また、左右の後部ドアにスピーカ22L、22Rが設けられ、これらスピーカ22L、22Rには、左および右チャンネルのオーディオ信号が供給される。
【0005】
したがって、前部の座席PS、DSの搭乗者はディスプレイ21Cおよびスピーカ21L、21Rにより映画などを視聴することができ、後部の座席RSの搭乗者はディスプレイ22Cおよびスピーカ22L、22Rにより映画などを視聴することができる。また、スピーカ21L、21Rあるいは22L、22Rを使用してCDなどの音楽を聴取することもでき、ディスプレイ21C、22Cに地図や道路状況を表示してカーナビゲーションを行うこともできる。
【0006】
そして、このように複数のディスプレイ21C、22Cおよびスピーカ21L〜22Rを配置する場合、前部座席DS、PSの搭乗者と、後部座席RSの搭乗者とがそれぞれ自由に映像や音響を再生できるように、クライアント・サーバシステムを構築することが考えられる。
【0007】
すなわち、前部座席DS、PSのディスプレイ21Cおよびスピーカ21L、21Rのために第1のクライアントを用意し、後部座席PSのディスプレイ22Cおよびスピーカ22L、22Rのために第2のクライアントを用意する。なお、これらクライアントは、ダッシュボードや前部座席DS、PSおよび後部座席RSの下などに配置することができる。
【0008】
また、トランクルームにサーバを用意し、このサーバには、映画などを視聴するための映像データ、音楽などを聴取するためのオーディオデータ、ナビゲーションを行うための地図データなどを蓄積しておく。そして、サーバは、前部座席DS、PSのクライアントあるいは後部座席RSのクライアントからの要求があると、その要求にしたがったデータを取り出して該当するクライアントに送出する。
【0009】
したがって、前部座席DS、PSの搭乗者および後部座席RSの搭乗者は、それぞれ自由に映像や音響を利用することができる。そして、その場合、クライアント・サーバシステムとしているので、メンテナンスや拡張などが容易であるとともに、映像や音響をサーバにおいて1元的に管理することができる。
【0010】
なお、先行技術文献として例えば以下のものがある。
【特許文献1】特開昭59−225700号公報
【特許文献2】特開平10−32898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、一般に車載用AV装置においては、CDを再生しながらナビゲーションの地図を表示するなどのように、複数の処理を同時に実行する場合が多い。したがって、上述のように車載用AV装置をクライアント・サーバシステムに構築した場合には、サーバは、映像データ、オーディオデータ、地図データを同時にクライアントに送出することになる。
【0012】
ところが、そのようにサーバが、クライアントに複数のデータを同時に送出しようとすると、このとき、クライアント・サーバ間に要求される通信速度が、クライアント・サーバ間の許容最高通信速度を超えてしまうことがある。すると、そのような状況下では、そのデータに該当するアプリケーションやクライアントのQoSが低下してしまう。
【0013】
例えば、カーナビゲーションの場合、地図データの通信に十分な速度を確保できないと、地図のスクロールや自動車の走行にともなう表示の更新をスムーズに行うことができなくなる。また、映像や音響の場合、十分なデータ速度を確保できないと、映像や音声(音響)が途切れたり、ノイズを生じたりしてしまう。
【0014】
この発明は、以上のような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明においては、
車両に搭載されるクライアント・サーバシステムのサーバにおいて、
カテゴリーの異なる複数のコンテンツデータを格納するデータストレージと、
このデータストレージから取り出された上記コンテンツデータを所定の通信速度でクライアントに出力する可変データレート回路と、
自車の走行速度を検出する車速センサと
を有し、
この車速センサの検出出力により上記可変データレート回路を制御して上記クライアントに出力されるコンテンツデータの通信速度を上記自車の走行速度に対応して動的に変更する
ようにしたサーバ
とするものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、データがサーバ10からクライアント21、22に送出されるときの優先度や速度を、自動車の走行速度や座席の位置などにしたがって動的に変更して最適化しているので、クライアント21、22においては、地図、映像、音楽などを適切に再生することができ、そのデータに該当するアプリケーションやクライアントのQoSやユーザビリティを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ここで、車載用AV装置により地図、映画、動画、音楽、音声などを再生する場合について考えると、それらのコンテンツを再生してもよいかどうか、再生してもよいとすれば、どの程度の再生をしてもよいかは、自動車の走行速度により異なり、さらに、運転席DS、助手席PSと、後部座席RSとでも異なる。
【0018】
例えば、前部座席PS、DSのディスプレイ21Cに表示される地図は、自動車の走行速度が速いときには、その走行速度に見合ったペースで常に更新する必要があるが、後部座席RSのディスプレイ22Cに表示される地図は、そのような必要はない。むしろ、ディスプレイ22Cに表示される地図は、目的値の設定やルートの確認などのため自動車が停止しているときに、表示をスムーズに更新できることが望まれる。また、前部座席PS、DSで再生される映像は、運転者は走行中に観るわけにいかないが、助手席PSの搭乗者は運転に影響を与えない程度であれが、観ても問題はない。
【0019】
この発明は、このように、自動車の走行速度やディスプレイ21C、22Cおよびスピーカ21L〜22Rの設置位置によってコンテンツの再生の許容度が異なる点に着目し、クライアント・サーバ間に要求される通信速度が、クライアント・サーバ間の許容最高通信速度を超えないようにするものである。
【0020】
以下、この発明の一例について、図1により説明する。なお、この例において、ディスプレイ21C、22Cおよびスピーカ21L〜22Rは、図5により説明したように自動車内に配置されているものとする。
【0021】
図1において、符号10はサーバを示し、このサーバ10は自動車の例えばトランクルームに設置されている。また、符号21、22はクライアントを示し、これらクライアント21、22は例えば運転席DSおよび助手席PSの下に設置されている。
【0022】
そして、サーバ10は、本体回路11、データストレージ12および可変データレート回路13を有する。本体回路11は、図示はしないが、CPUやメモリなどから構成され、この装置10をサーバとして機能させるとともに、後述す各種の処理を実行あるいは実現するものである。
【0023】
また、データストレージ12は、カテゴリーの異なる複数のコンテンツデータを格納するもので、例えばハードディスク装置により構成されている。そして、このハードディスク装置12には、この例においては、ナビゲーション用のデータとして、地図データ、ルート情報のデータ、ランドマークのデータなどが格納されているとともに、映画やテレビ放送などの映像データ、音楽や語りなどの音響データ(音楽データ、音声データ)、ゲームなどのコンテンツデータも格納されている。なお、この場合、ハードディスク装置12に格納されているコンテンツデータは、それぞれのコンテンツに適したデータ圧縮方式、例えばMPEG方式やJPEG方式によりデータ圧縮されている。
【0024】
さらに、可変データレート回路13は、ハードディスク装置12から取り出されたデータを本体回路11により指定されたビットレートでクライアント21、22に送出するためのものである。このため、可変データレート回路13は、この例においては、デコーダ/エンコーダ回路により構成され、ハードディスク装置12から取り出されたデータを、もとのコンテンツデータにデコードするとともに、本体回路11により指定されたビットレートで再エンコードして通信可能な通信速度のデータを出力するものである。
【0025】
一方、クライアント21、22は、一般のAVクライアント・サーバシステムにおけるクライアントと同様に構成されているものであり、クライアント21にディスプレイ21Cおよびスピーカ21L、21Rが接続され、クライアント22にディスプレイ22Cおよびスピーカ22L、22Rが接続されている。
【0026】
そして、これらサーバ10およびクライアント21、22は、例えばイーサネット(登録商標)により構成された車内ネットワーク30を通じて互いに接続されている。
【0027】
また、この例においては、ナビゲーション装置40が設けられている。このナビゲーション装置40は、この装置40をナビゲーション装置として機能させるため、マイクロコンピュータにより構成された制御回路41を有する。そして、ナビゲーション装置40には、自車の走行速度を検出する車速センサ42が設けられ、その検出出力が制御回路41およびサーバ10に供給される。
【0028】
さらに、ナビゲーション装置40には、自律航法ユニット、例えばジャイロ43と、GPSユニット44とが設けられている。そして、ジャイロ43からは、自車の移動する方向などのデータが取り出され、GPSユニット25からは、自車の位置などのデータが取り出され、これらデータが制御回路41に供給される。
【0029】
このような構成において、クライアント21あるいは22からサーバ10に例えば音楽データの送信を要求すると、ハードディスク装置12から音楽データが取り出され、この取り出された音楽データが、デコーダ/エンコーダ回路13を通じて車内ネットワーク30に送り出され、クライアント21あるいは22に供給される。
【0030】
したがって、スピーカ21L、21Rあるいは22L、22Rから音楽を出力することができる。同様にして、ハードディスク装置12に格納されている映像をディスプレイ21Cあるいは22Cにより再生することができる。
【0031】
また、クライアント21あるいは22からサーバ10にナビゲーションのための表示を要求すると、車速センサ42、ジャイロ43およびGPSユニット44の出力信号が制御回路41により処理されて自車位置が判別され、この判別結果に基づいてハードディスク装置12からは自車位置を含む地図の地図データが取り出される。そして、この取り出された地図データが、ネットワーク30を通じてクライアント21あるいは22に供給され、したがって、ディスプレイ21Cあるいは22Cに自車位置を含む地図が表示される。
【0032】
そして、このように音響、映像あるいは地図などの再生をする場合、サーバ10とクライアント21、22との間の通信速度の優先度を、例えば以下のように設定する。すなわち、
m:データ(あるいはそのデータを再生するアプリケーション)の識別子
地図データのとき、m=1
音楽データのとき、m=2
映像データのとき、m=3など
n:クライアントの識別子
クライアント21のとき、n=1
クライアント22のとき、n=2
とするとき、
Pmn=Dmn+Cn ・・・ (1)
Pmn:サーバとクライアントnとの間の通信速度の優先度
Dmn:クライアントnに供給されるデータmの重み
Cn :クライアントnの重み
とする。なお、優先度Pmnが大きくなるほど、データmの許容最高通信速度Vmnが高くされ、より多くのデータmの伝送が可能とされる。
【0033】
そして、重みDmn、Cnは、
Dmn=dmn+αmn・x ・・・ (2)
Cn =cn+βn・x ・・・ (3)
dmn、cn:識別子m、nにより決まる定数
x :走行速度により決まるパラメータ
αmn、βn:識別子m、nにより決まる係数
とする。
【0034】
したがって、(1)〜(3)式から優先度Pmnは、
Pmn=Dmn+Cn
=(dmn+αmn・x)+(cn+βn・x) ・・・ (4)
となる。
【0035】
以下に、これら数値の具体例を示す。まず、パラメータxは、例えば図2に示すように、走行速度が速くなるほど大きくなるものとされる。
【0036】
また、データmの重みDmnは、例えば図3Aに示すような大きさとされる。すなわち、図3Aにおいては、クライアントnがクライアント21(n=1)の場合には、m=1〜3に対応して
dm1=3、7あるいは8
αm1=1、−1あるいは−1
とされ、クライアントnがクライアント22(n=2)の場合には、m=1〜3に対応して
dm2=7、7あるいは1
αm2=−1、−1あるいは1
とされる。
【0037】
さらに、クライアントnの重みCnは、例えば図3Bに示すような大きさとされるもので、クライアントnがクライアント21の場合には、
c1=2
β1=0.5
とされ、クライアントnがクライアント22の場合には、
c2=4
β2=−0.5
とされる。
【0038】
そして、自動車の走行速度を60km/hとすれば、図2からx=3となる。したがって、一例として、クライアント21がサーバ10から地図データおよび音楽データをダウンロードするとともに、クライアント22が音楽データおよび映像データをダウンロードをする場合を考えると、優先度Pmnは(4)式から
クライアント21における地図データ(m=1)のときの優先度P11
P11=(3+x)+(2+0.5x)
=(3+3)+(2+0.5×3)
=9.5
クライアント21における音楽データ(m=2)のときの優先度P21
P21=(7−x)+(2+0.5x)
=(7−3)+(2+0.5×3)
=7.5
クライアント22における音楽データ(m=2)のときの優先度P22
P22=(7−x)+(4−0.5x)
=(7−3)+(4−0.5×3)
=6.5
クライアント22における映像データ(m=3)のときの優先度P32
P32=(1+x)+(4−0.5x)
=(1+3)+(4−0.5×3)
=6.5
となる。
【0039】
そこで、この優先度Pmnを用いてクライアントnに対するデータmの許容最高通信速度Vmnを、
Vmn=Pmn/優先度の総和×Vmax ・・・ (5)
Vmax:ネットワーク30の最大通信容量(許容最高通信速度)
に設定する。
【0040】
上述の優先度Pmnの場合、Vmax=10Mbpsとすれば、
クライアント21に対する地図データ(m=1)の許容最高通信速度V11
V11=9.5/(9.5+7.5+6.5+6.5)×10Mbps
=約3.2Mbps
クライアント21に対する音楽データ(m=2)の許容最高通信速度V21
V21=7.5/(9.5+7.5+6.5+6.5)×10Mbps
=2.5Mbps
クライアント22に対する音楽データ(m=2)の許容最高通信速度V22
V22=6.5/(9.5+7.5+6.5+6.5)×10Mbps
=約2.2Mbps
クライアント22に対する映像データ(m=3)の許容最高通信速度V32
V32=6.5/(9.5+7.5+6.5+6.5)×10Mbps
=約2.2Mbps
とする。
【0041】
ここで、
S11:クライアント21が地図データ(m=1)に必要とする通信速度
S21:クライアント21が音楽データ(m=2)に必要とする通信速度
S22:クライアント22が音楽データ(m=2)に必要とする通信速度
S32:クライアント22が映像データ(m=3)に必要とする通信速度
とするとき、
S11=5Mbps
S21=0.5Mbps
S22=0.5Mbps
S32=10Mbps
あるとすれば、クライアント21に対する地図データ(m=1)の許容最高通信速度V11は、クライアント21が地図データ(m=1)に必要とする通信速度S11に対して、
ΔV11=V11−S11
=3.2Mbps−5Mbps
=−1.8Mbps
となり、1.8Mbpsの不足を生じることになる。
【0042】
同様に、
ΔV21=V21−S21
=2.5Mbps−0.5Mbps
=2Mbps
ΔV22=V22−S22
=2.2Mbps−0.5Mbps
=1.7Mbps
ΔV32=V32−S32
=2.2Mbps−10Mbps
=−7.8Mbps
となる。つまり、許容最高通信速度V11、V32には不足を生じ、許容最高通信速度V21、V22には余りを生じる。
【0043】
そこで、この剰余分ΔV21、V22を不足分ΔV11、V32に再配分する。この再配分は、優先度Pmnにしたがった割り合いで割り振る。
【0044】
今の場合、剰余分ΔV21、ΔV22の合計は3.7Mbps(=2Mbps+1.7Mbps)であるが、これを優先度Pmnにしたがって
v11=P11/(P11+P32)×(ΔV21+ΔV22)
=9.5/(9.5+6.5)×3.7
=約2.2Mbps
v32=P32/(P11+P32)×(ΔV21+ΔV22)
=6.5/(9.5+6.5)×3.7
=約1.5Mbps
に分割し、許容最高通信速度V11、V32に割り振る。
【0045】
したがって、
V11=最初のV11+v11
=3.2Mbps+2.2Mbps
=5.4Mbps
V32=最初のV32+v32
=2.2Mbps+1.5Mbps
=3.7Mbps
となる。ただし、この割り振りの結果、許容最高通信速度V11(=5.4Mbps)は、必要な通信速度S11(=5Mbps)よりも大きい。しかし、許容最高通信速度V32(=3.7Mbps)は、必要通信速度S32(=10Mbps)よりも小さい。
【0046】
このため、さらに再配分を行い、この割り振り結果の剰余分(V11−S11)を許容最高通信速度V32に割り当てる。すなわち、
V32=割り振り後のV32+割り振り結果の剰余分(V11−S11)
=3.7Mbps+(5.4Mbps−5Mbps)
=4.1Mbps
とする。
【0047】
以上の結果、許容最高通信速度V11〜V32は、
V11=5Mbps
V21=0.5Mbps
V22=0.5Mbps
V32=4Mbps(端数は切り捨て)
に設定する。この許容最高通信速度V11〜V32の設定は、本体回路11がデコーダ/エンコーダ回路13におけるエンコード時のレートを設定することにより行うことができる。
【0048】
図4において、符号100は、サーバ10が上述した許容最高通信速度V11〜V32の設定を行うためのルーチンの一例を示す。このルーチン100は本体回路11のCPUにより実行されるものであるが、図4においては、この発明に関係する部分だけを抜粋して示している。
【0049】
そして、このルーチン100が実行されると、ステップ101において、ナビゲーション装置40の車速センサ42の検出出力により自車の走行速度が検出され、この走行速度の検出結果が、例えば図2の表にしたがってパラメータxに変換される。続いて、ステップ102において、(4)式にしたがって優先度Pmnが計算され、次にステップ103において、その優先度Pmnを用いてクライアントnに対するデータmの許容最高通信速度Vmnが計算される。
【0050】
続いて、ステップ104において、デコーダ/エンコーダ回路13のエンコード時のレートが、データmごとにステップ103により算出された許容最高通信速度Vmnに設定される。そして、ステップ105において、ハードディスク装置12からコンテンツデータが取り出されてデコーダ/エンコーダ回路13に供給され、ステップ103により設定されたレートでエンコードされ、ネットワーク30を通じてクライアント21あるいは22へと送出される。そして、処理はステップ101に戻る。
【0051】
こうして、クライアント21、22は、それらの要求したデータを得ることができる。
【0052】
そして、その場合、上述のクライアント・サーバシステムにおいては、コンテンツデータがサーバ10から送出されるときの優先度や速度を、自動車の走行速度や座席の位置などにしたがって動的に変更して最適化しているので、クライアント21、22においては、地図、映像、音楽などを適切に再生することができ、そのコンテンツデータに該当するアプリケーションやクライアントのQoSやユーザビリティを確保することができる。
【0053】
例えば、カーナビゲーションの場合、地図のスクロールや自動車の走行にともなう表示の更新をスムーズに行うことができる。あるいは、映像や音響の場合、映像や音声(音響)の途切れやノイズの発生を抑えることができる。
【0054】
なお、上述において、走行速度は自動車の速度計などから得ることもできる。また、上述においては、図2にも示すように、走行速度に対してパラメータxを多段階に対応させたが、例えば停止中と走行中とによってパラメータxを2段階に対応させてもよい。そして、その場合には、停止中・走行中の判別を加速度センサ、角速度センサ、自動車から得られるサイドブレーキ信号などにより行うことができる。
【0055】
〔略語の一覧〕
AV :Audio and Visual
CD :Compact Disc
CPU :Central Processing Unit
GPS :Global Positioning System
JPEG:Joint Photographic Experts Group
MPEG:Motion Picture Experts Group
QoS :Quality Of Service
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の一形態を示す系統図である。
【図2】この発明を説明するための表の図である。
【図3】この発明を説明するための表の図である。
【図4】この発明を説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0057】
10…サーバ、11…本体回路、12…ハードディスク装置、13…デコーダ/エンコーダ回路、21および22…クライアント、30…車内ネットワーク、40…ナビゲーション装置、42…車速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるクライアント・サーバシステムのサーバにおいて、
カテゴリーの異なる複数のコンテンツデータを格納するデータストレージと、
このデータストレージから取り出された上記コンテンツデータを所定の通信速度でクライアントに出力する可変データレート回路と、
自車の走行速度を検出する車速センサと
を有し、
この車速センサの検出出力により上記可変データレート回路を制御して上記クライアントに出力されるコンテンツデータの通信速度を上記自車の走行速度に対応して動的に変更する
ようにしたサーバ。
【請求項2】
請求項1に記載のサーバにおいて、
上記複数のコンテンツデータのそれぞれの優先順位に応じて、上記クライアントに出力されるコンテンツデータの通信速度に重みをつける
ようにしたサーバ。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載のサーバにおいて、
上記クライアントの優先順位に応じて、そのクライアントに出力されるコンテンツデータの通信速度に重みをつける
ようにしたサーバ。
【請求項4】
車両に搭載されるクライアント・サーバシステムのサーバにおいて、
カテゴリーの異なる複数のコンテンツデータを格納するデータストレージと、
このデータストレージから取り出された上記コンテンツデータを所定の通信速度でクライアントに出力する可変データレート回路と、
自車の走行速度を検出する車速センサと
を有し、
この車速センサの検出出力と、上記複数のコンテンツデータのそれぞれの優先順位と、上記クライアントの優先順位とに応じて、上記可変データレート回路を制御して上記クライアントに出力されるコンテンツデータの通信速度を動的に変更する
ようにしたサーバ。
【請求項5】
車両に搭載されるクライアント・サーバシステムのサーバからクライアントへコンテンツデータを送信する場合において、
カテゴリーの異なる複数のコンテンツデータを格納しているデータストレージから、クライアントの要求にしたがったコンテンツデータを取り出し、
この取り出したコンテンツデータを、上記要求をしてきたクライアントに送信するとともに、
車速センサにより自車の走行速度を検出し、
この検出出力により、上記取り出したコンテンツデータを上記要求をしてきたクライアントに送信するときの通信速度を動的に制御する
ようにしたコンテンツデータの送信方法。
【請求項6】
車両に搭載されるクライアント・サーバシステムのサーバからクライアントへコンテンツデータを送信する場合において、
カテゴリーの異なる複数のコンテンツデータを格納しているデータストレージから、クライアントの要求にしたがったコンテンツデータを取り出し、
この取り出したコンテンツデータを、上記要求をしてきたクライアントに送信するとともに、
車速センサにより自車の走行速度を検出し、
この検出出力と、上記複数のコンテンツデータのそれぞれの優先順位と、上記クライアントの優先順位とに応じて、上記取り出したコンテンツデータを上記要求をしてきたクライアントに送信するときの通信速度を動的に制御する
ようにしたコンテンツデータの送信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−142920(P2006−142920A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333841(P2004−333841)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】