説明

サーバラック冷却装置

【課題】装置内に空冷部と液冷部を兼備する省エネ性に優れたサーバラック冷却装置を提供する。
【解決手段】ラック排気は、ラック冷却装置1の空冷部2の熱交換用パイプ2c群表面を通過する際に、冷媒Aとの熱交換により冷却される。一方、熱交換器4において冷媒Bにより液化した冷媒Aは往き側ヘッダー2aを重力降下して、各熱交換用パイプ2cに分岐する。さらに熱交換用パイプ2c内を流下していく間に、高温排気との熱交換によりこれを冷却し、自らは蒸発して冷媒蒸気となって戻り側ヘッダー2bに合流する。さらに戻り側ヘッダー2bを上昇して熱交換器4に戻り、ここで冷媒Bに放熱する。また、往き側ヘッダー2aから分岐配管3aを介して液冷部3に流入する冷媒Aの一部は、高発熱部7aと接触する吸熱部3bに導かれ、高発熱部7aを冷却する際に蒸発して戻り側ヘッダー2bに合流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーバラック冷却装置に係り、特に装置内に空冷部と液冷部を兼備する省エネ性に優れたサーバラック冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報通信機械室(データセンタ)において、ICT装置はサーバラックに格納されるのが一般的である。サーバラックは前面から冷気を吸込み、上面又は背面から排気するタイプが多く、各ラックは同方向を向けて横一列に配置される。機械室内にはこのようなラック列が複数列配置される。ICT装置内の冷却は、ベース空調機8によりラック近傍まで冷気を供給し、各ICT装置が備える冷却ファンにより冷気を装置内に導入することにより行われる。
近年、社会のICT化の進展に伴い、情報通信機器(ICT装置)の高速化、大容量化、高密度化が急速に進んでおり、発熱量の増加及び発熱の偏在等によるICT装置内の温度環境が悪化している。これを改善するために導入冷気風量を増加させる必要があるが、空気を介しての放熱量は、その物性上(熱伝達率等)限界がある。また、高発熱量を放熱するため、放熱フィン等の伝熱面積を大きくする必要があり、放熱フィン等の設置スペースも課題となっている。さらに送風量を増加させる必要があるため、送風機の動力増も課題となる。このため、室全体を均一に空調するベース空調方式のみでは足りず、ラック列内の高発熱箇所に空調機(タスク空調機)を設置する例もあるが、これを以ってしても適切に対応できないケースも多い。
【0003】
このような問題を解消するため、各サーバラックについて冷媒を用いて熱回収、冷却装置を組み込む、液冷方式による技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。図11は、この方式によるサーバラック100を示すものであり、本体101内に冷凍サイクルを形成する冷却装置102を収容し、その気化部である蒸発器102aを本体上下方向に配置している。サーバモジュール103では、発熱部103aで発生する熱を、ポンプ103bにより循環させる冷却液を介して放熱部103cに搬送し、ここで蒸発器102aと密着させて冷媒に放熱している。この方式によれば局所的な排熱処理が可能となり、サーバラック内部においては効率的な熱処理と言い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−363308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液冷方式には以下のような問題がある。
ICT装置内の構成機器の中には、電気部品という性質上、空気による冷却が必要かつ適当な機器もあり、これを考慮すると液冷設備と空冷設備の2方式の空調設備を備える必要がある。また、構成部品に接触して直接冷却するため、故障時又は内封液漏洩時の影響が甚大である。また、液冷設備の高温排気が隣接ラックに悪影響を及ぼす恐れがあるという問題もある。さらに、構成部品の位置に吸熱部を配置するため、ICT装置の入れ替え毎に設備の更新が必要という問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、
ICT装置を収容するサーバラックの冷却において、省エネ性向上に資するとともに、ICT装置を構成する要素・部品ごとに適切な冷却方式を選択でき、ICT装置の入れ替え(設置または撤去)にも柔軟に対応可能であり、かつ、冷媒系統故障時のリスクを軽減することができる、サーバラック冷却装置を提供するものである。
【0007】
本発明は以下の内容をその要旨とする。すなわち、本発明に係るサーバラック冷却装置は、
(1)冷却対象空間に収容され、室内に供給される冷気を吸気して高温空気を排気するサーバラックを冷却するためのサーバラック冷却装置であって、
サーバラックの外面に近接、又は、内部に配置され、吸気又は排気を冷却する空冷部と、サーバラック内に配置され、ラック内に格納されるICT機器の高温発熱体を直接冷却するための液冷部と、該空冷部の上方に配置される熱交換器と、を含んで構成され、
該空冷部は、配管内を第一の冷媒が通過するように構成した往き側配管と、戻り側配管と、往き側配管と戻り側配管の間に配置される1以上の熱交換用パイプと、を備え、
該液冷部は、往き側配管から分岐して戻り側配管に合流する冷媒循環部と、該冷媒循環部内を流れる第一の冷媒との熱交換により該高温発熱体から吸熱する吸熱部と、を備え、
該空冷部、該液冷部及び該熱交換器の間を、第一の冷媒が自然循環方式により流れるように構成し、かつ、該熱交換器において、第一の冷媒を介して回収した排熱を、第二の冷媒を介して系外に放熱するように構成した、ことを特徴とする。
【0008】
本発明において、「自然循環方式」とは、凝縮器を蒸発器より高い位置に設置して冷媒の液と蒸気との比重差を用いて動力なしに熱を搬送する手段をいう。冷媒としてフロン、CO2、炭化水素、水などの低沸点媒体を用いることができる。また、熱交換器部において第二の冷媒を介して外部に放熱する手段として、冷却水の循環や、ヒートポンプシステムの蒸発器として冷媒を蒸発させることができる。
【0009】
(2)上記発明において、前記液冷部の前記冷媒循環部と前記吸熱部とを結ぶ熱搬送手段をさらに備え、該熱搬送手段が、冷媒自然循環方式によるものであることを特徴とする。
【0010】
(3)上記発明において、前記熱搬送手段が、ヒートパイプであることを特徴とする。

【0011】
(4)上記各発明において、前記空冷部と前記熱交換器とを一体に備え、かつ、前記空冷部と前記冷媒循環部の接続部において着脱可能に構成した、ことを特徴とする。
【0012】
(5)冷却対象空間に収容され、室内に供給される冷気を吸気して高温空気を排気するサーバラックを冷却するためのサーバラック冷却装置であって、
サーバラックの外面に近接、又は、内部に配置され、吸気又は排気を冷却する空冷部と、該空冷部の上方に配置される熱交換器と、を含んで構成され、
該空冷部は、配管内を第一の冷媒が通過するように構成した往き側配管と、戻り側配管と、往き側配管と戻り側配管の間に配置される1以上の熱交換用パイプと、を備え、
該空冷部及び該熱交換器の間を、第一の冷媒が自然循環方式により流れるように構成し、かつ、該熱交換器において、第一の冷媒を介して回収した排熱を、第二の冷媒を介して系外に放熱するように構成した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記各発明によれば、自然循環方式(含むヒートパイプ方式)の採用により、冷媒循環のための動力を必要としないため消費電力削減の効果がある。さらに、ICT装置内に高圧の液を流すことがないため、万一の漏洩時にも被害を最小限に抑えることができるという効果がある。
また、ICT装置の構成要素・部品ごとに最適な冷却方式が追加・選択可能となり、冷却に要するエネルギーを最小化できるという効果がある。
【0014】
また、1つの装置内に空冷部と液冷部を兼備しているため、2種類の冷却システムを別個に構築する必要がなく、コスト削減および設置スペース削減が実現できるという効果がある。
また、液冷部においてICT装置の要素・部品を直接冷却するため、冷媒温度を高く設定できる。このため、冷熱源である冷媒の運用温度を上げることができ、冷凍機の運転効率向上を図ることができるという効果がある。
【0015】
さらに、冷媒の運用温度を高めに設定できることから、冷熱源として例えばフリークーリングのような外気冷熱を利用するシステムにあっては、外気利用運転時間を長く取ることができ、通年ランニングコストを低減できるという効果がある。
【0016】
さらに、液冷部の冷媒運用温度を空冷部と比較して高めに設定できることから、冷媒流路を空冷部通過後とする(空冷部と液冷部の冷媒をカスケードに流す)こともできる。これにより、パラレルに流す場合と比較して必要な冷媒循環量を減らすことができ、冷媒循環に必要な動力削減が可能となり、省エネルギー化に資する。
また、液冷部と空冷部の接続をカップリング接続機構により着脱可能に構成した発明にあっては、通常、短周期で行われているICT装置の入れ替え(設置または撤去)への対応が容易になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一の実施形態に係るサーバラック冷却装置1の全体構成(正面)を示す図である。
【図2】同側断面の構成を示す図である。
【図3】液冷部3の詳細構成を示す図である。
【図4】サーバラック冷却装置1を用いた機械室空調システム1Aを示す図である。
【図5】第二の実施形態に係るサーバラック冷却装置30を示す図である。
【図6】サーバラック冷却装置30の液冷部31の詳細構成を示す図である。
【図7】第三の実施形態に係る機械室空調システム40Aを示す図である。
【図8】第四の実施形態に係る機械室空調システム50Aを示す図である。
【図9】第五の実施形態に係るサーバラック冷却装置60の全体構成(側断面)を示す図である。
【図10】同平断面を示す図である。
【図11】従来のサーバラック冷却装置100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るサーバラック冷却装置の実施形態について、図1乃至10を参照してさらに詳細に説明する。重複説明を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0019】
(第一の実施形態)
図1、4を参照して、本実施形態に係るサーバラック冷却装置(以下、ラック冷却装置と略記する場合がある)1は、情報通信機械室(データセンター)5内に収容される複数のサーバラック6の背面側に取り付けられ、サーバラック6から排出される高温排気を冷媒自然循環方式により冷却する装置である。ラック冷却装置1は、後述するようにベース空調機8とともに機械室空調システム1A内に設置される。
【0020】
サーバラック冷却装置1は、サーバラック6の排気面に配置される空冷部2、ラック内ICT機器(以下、サーバと略記する場合がある)内部の高発熱部7a(例えばCPU、トランス等)を直接冷却する液冷部3と、空冷部2の上部に熱交換器4と、を主要構成として備えている。
【0021】
サーバラック冷却装置1の冷媒系統は、冷媒自然循環方式を採用する低圧冷媒A系統(請求項における第一の冷媒)と、系外の冷熱源9から冷熱を供給して排熱を回収する冷媒B系統(請求項における第二の冷媒)の2系統により構成されている。冷媒A系統は、空冷部2、液冷部3及び冷媒B系統から冷気の供給を受ける熱交換器4により構成されている。また、冷媒B系統は、室外機9、冷媒A系統からの排熱を回収する熱交換器4及び循環回路9a、9bにより構成されている。なお、本実施形態では冷媒B系統として直膨空冷方式を想定しているが、これに限らず水冷方式を採用することもできる。
【0022】
図2、3を参照して、空冷部2は、両端に垂直方向に配置される往き側配管(ヘッダー部)2a及び戻り側配管(ヘッダー部)2bと、両配管間に水平あるいは垂直方向に1本ないしは複数本配置される熱交換用パイプ2c群と、必要に応じ両配管の所定の位置に設けられ、先端に接続用カップリングを備えた液冷部接続口2d、2eと、を主要構成として備えている。配管2a、2b及び熱交換用パイプ2c内部を冷媒Aが流れるように構成されている。各熱交換用パイプ2cは熱交換促進の際にはフィン付パイプにより構成され、また冷媒通過量を均一化するため配管抵抗を合わせるための不図示の調整手段(例えばコイル構造)が講じられている。なお、熱交換用パイプ2cには、冷媒の流れを促すための緩やかな傾斜を設けたり、垂直に設置したりすることもできる。
【0023】
液冷部3は、必要に応じ往き側配管2aから分岐して戻り側配管2bに合流する分岐配管3aを主要構成とする冷媒循環部3eと、分岐配管3aの経路中に高発熱部7aと接触してこれを直接冷却する吸熱部3bと、を備えている。分岐配管3aの端部3c、3dと、両ヘッダーの液冷部接続口2d、2eには接続用カップリング機構2f、2g(例えばフレア接続等)が設けられており、着脱可能に構成されている。なお、液冷を必要としないサーバ(例えば図2の最下段サーバ参照)については分岐配管3aを接続せず、液冷部接続口2hを閉止可能に構成されている。往き側配管2a及び戻り側配管2bは、後述するようにそれぞれ配管9a、9bに接続されている。
【0024】
次に図4を参照して、ラック冷却装置1が収容されている機械室5の空調システムについて説明する。本実施形態に係る機械室空調システム1Aは、アンビエント空調としてのベース空調機8と、局所空調としての複数のサーバラック冷却装置1と、を冷気供給源として備えている。機械室5内部は、床パネル5d及び天井パネル5eにより、室内空間5a、天井空間5b、二重床空間5cの3つの空間に区画されている。
室内空間5aには、複数のサーバラック6がラック列6bを構成して収容されている。サーバラック6内部は複数段に分割されており、各段にサーバ7が格納されている。各サーバ7はそれぞれ冷却ファン(図示せず)を備えており、ラック全体として前面から冷気を吸込み、装置内部を冷却したのち高温空気を背面から排気するように構成されている。かかる構成により、ラック列6bの前面側にはコールドアイル5gが、背面側にはホットアイル5hが構成される。
【0025】
空調機8は、蒸発器8a及び送風機8bを備えた室内機と、蒸発器8aと冷媒配管で接続される圧縮機、凝縮器等を主要構成とする室外機(いずれも不図示)を備えている。空調機8は、機内に導入される室内空気を蒸発器8aにおいて発生させた冷熱により冷却し、送風機8bにより機械室5内に供給する。
【0026】
以上の構成により、機械室5における室内及びサーバ7の冷却は以下のように行われる。空調機8に導入される室内空気は蒸発器8aにおいて冷気となって二重床空間5cに送出され、さらに床パネル5dに複数設けられた吹出し口5fを介してコールドアイル5gに供給される。冷気は各サーバラック6前面側から導入され、ラック内のサーバ7を冷却した後に高温排気となって背面側からホットアイル5hに排出される。ラック排気は、ラック冷却装置1の空冷部2の熱交換用パイプ2c表面を通過する際に、冷媒Aとの熱交換により冷却されるとともに、冷媒Aは蒸気となる。
一方、熱交換器4において冷媒Bにより蒸発した冷媒Aは液化し往き側配管2aを重力降下して、再び熱交換用パイプ2cに戻っていく。熱交換用パイプ2c内を流下していく間に、高温排気との熱交換によりこれを冷却し、自らは蒸発して再び冷媒蒸気となって戻り側配管2bを通り上昇して熱交換器4に戻り、ここで冷媒Bに放熱する。また、必要に応じ往き側配管2aから分岐配管3aを介して液冷部3に流入する冷媒Aの一部は、高発熱部7aと接触する吸熱部3bに導かれ、高発熱部7aを冷却する際に蒸発して戻り側配管2bに戻っていく。
【0027】
以上述べたように、ラック冷却装置1をサーバラック6の排気面近傍に設置することにより排気温度を低下させることができ、ベース空調機8の負荷軽減に繋がりベース空調設備の小型化が可能となる。
なお、本実施形態では(ベース空調機+ラック冷却装置)の組み合わせにより空調する例を示したが、ラック列内にタスク空調機を配設して、(タスク空調機+ラック冷却装置)の組み合わせにより空調する態様とすることもできる。さらに、(ベース空調機+タスク空調機+ラック冷却装置)の組み合わせの態様とすることもできる。さらに、ラック冷却装置単体による空調態様とすることもできる。
【0028】
また、本実施形態ではラック冷却装置をサーバラックの背面側に設置する例を示したが、これに限らず例えば上面排気タイプのサーバラックに対してはラック上部設置等、排気面の外側近傍にラック冷却装置を取り付ける態様とすることができる。
【0029】
また、本実施形態では空冷部と液冷部とを組み合わせてラックを冷却する例を示したが、液冷部を用いることなく空冷部のみでラックを冷却する態様とすることもできる。
【0030】
(第二の実施形態)
次に、図5、6を参照して本発明の他の実施形態について説明する。
本実施形態に係るサーバラック冷却装置30が上述のサーバラック冷却装置1と異なる点は、液冷部31の冷媒循環部3eと吸熱部3bとの間に、熱交換材料として冷媒が流れる自然循環方式(1例としてヒートパイプ32)を用いていることである。空冷部2の構成はラック冷却装置1と同様である。液冷部31は、往き側配管2aからと戻り側配管2bに接続する配管33と、蒸発部32aにおいて高発熱部7aから吸熱して凝縮部32bにおいて接続配管33内の冷媒に放熱するヒートパイプ32と、を備えている。接続配管33の端部33a、33bは、両配管の液冷部接続口2d、2eとカップリング機構2f、2dにより着脱可能に接続している。あらかじめ、接続が決まっている場合には、固定式であってもよい。
ヒートパイプ32内部には蒸発部32aで吸熱して気相状態になり、凝縮部32bで放熱して液相状態となるような特性を有する作動流体が封入されている。作動流体としては、水、フロン、CO2、炭化水素などの低沸点媒体を用いることができる。
【0031】
このような構成により凝縮部32b内部の気相状態の作動流体は、接続配管33を介して凝縮部32bに導かれた冷媒と熱交換して凝縮する。凝縮した作動流体液は管内を流下して蒸発部32aに至り、ここで高発熱部7aと熱交換してこれを冷却し、蒸発部32a内部の作動流体自身は蒸発し、パイプ内を上昇して凝縮部32bに戻る。以上の挙動を繰り返すことによりサーバ内の高発熱部を冷却する。接続配管33には、凝縮部32bとの接続を容易に、かつ確実に行なうため接続部材を使用する(不示図)。
なお、サーバ内の他の構成部品については、上述の実施形態と同じくベース空調機8及びラック冷却装置30の空冷部2により冷却される。
【0032】
(第三の実施形態)
次に、図7を参照して本発明の他の実施形態について説明する。
本実施形態に係る機械室空調システム40Aの構成が上述の第一の実施形態に係る空調システム1Aと異なる点は、ベース空調機8を備えていないことである。従って、各サーバラック6の冷却はサーバラック冷却装置1のみにより行なわれる。また、室内空気循環を送風機41により行っていることである。ラック冷却装置1の構成自体は第一の実施形態と同一である。
また、空調システム40Aにおけるサーバラック6の冷却形態についても、必要に応じて実施される液冷部3による高発熱部の冷却を含め第一の実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
【0033】
(第四の実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態に係る機械室空調システム50Aの構成が第一の実施形態と異なる点は、サーバラック冷却装置50の配置である。すなわち、サーバラック冷却装置50の空冷部51はサーバラック6の背面(排気面)側ではなく、前面(吸気面)側に配置されている。また、液冷部52は前面側から分岐して、ラック内部に配置されている。その他の構成については、ラック前面側に配置するための構造上の相違を除いて、接続用カップリングの構成を含めて、サーバラック冷却装置1と同様である。その他、冷媒循環系統の構成等についても同様であるので、図示及び重複説明を省略する。
かかる構成により、サーバラック冷却装置1は、ラック前面からラック内部に導入される吸気をより冷却することが可能となり、ベース空調機8の負荷軽減に寄与する。
【0034】
本実施形態に係るサーバラック冷却装置にあっては、前面設置であるためラック内部に所望温度の空気を供給することが容易に可能となる。
また、ラック内にサーバを設置する際に、サーバと本冷却装置の接続作業を前面から行うことができ、ラックのメンテナンススペースを前面に集約できるという特長を有する。
【0035】
なお、本実施形態では(ベース空調機+ラック冷却装置)の組み合わせによる空調システムの例を示したが、第一の実施形態と同様にラック列内にタスク空調機を配設して、(タスク空調機+ラック冷却装置)の組み合わせ、又は、(ベース空調機+タスク空調機+ラック冷却装置)の組み合わせの態様とすることもできる。さらに、ラック冷却装置単体による態様とすることもできる。
【0036】
(第五の実施形態)
さらに、図9、10を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態に係るサーバラック冷却装置60は、熱交換器4を除く装置全体がラック内部に収容されている点において、空冷部がラック外部に配置されているサーバラック冷却装置1等と異なる。また、サーバラック6は前面扉部6c、背面部6dに開口がなく、コールドアイル5gからの吸気が行われない点も異なる。
サーバラック冷却装置60の構成は、基本的にサーバラック冷却装置1と同一であり、空冷部61と、必要に応じてラック内ICT機器内部の高発熱部7aを直接冷却する液冷部62と、を主要構成として備えている。
【0037】
空冷部61は、内部を冷媒Aが通過する往き側配管61a、戻り側配管61b、両配管間に1本ないし複数本配置され、高性能化のためフィン付熱交換用パイプ61cを備えている。熱交換用パイプ61cは、ラック内を循環する空気流の方向と直角方向に配置されている。
液冷部62は、空冷部61の両配管から延長され、合流する配管62aと、配管62の経路中に高発熱部7aと接触してこれを直接冷却する吸熱部62bと、を備えている。空冷部61と液冷部62とは、サーバラック冷却装置1と同様の接続用カップリング機構61f、61gにより、必要に応じ着脱可能に構成されている。
その他の構成及び冷媒循環系統についてはサーバラック冷却装置1と同様であるので、図示及び重複説明を省略する。
【0038】
次に、サーバラック冷却装置60におけるサーバ7の冷却態様について説明する。サーバ7が備えるファン7bにより、ラック内を循環する空気は空冷部61において冷却され、冷気となってサーバ7内に吸い込まれる。この場合、空冷部61は循環空気と直角方向に配置されているため、熱交換用パイプ61cによる熱交換効率の向上が図られる。液冷部62による高発熱部7aの直接冷却の態様については、上述の各実施形態と同様である。
本実施形態に係るサーバラック冷却装置にあっては、ラック内で冷却空気を循環させるため、他のラックの稼働率の変動に伴う吸込み面空気温度変化の影響を受けることなく、ラック毎の温度管理が極めて容易という特長を有する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、熱源方式、冷媒種類、空調方式、建築構造等を問わずサーバラック内のICT装置の冷却装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1,20、30、40・・・・サーバラック冷却装置
1A,20A、30A、40A、50A・・・・機械室空調システム
2、20a、51、61・・・・空冷部
2a、21、61a ・・・往き側配管
2b、22、61b・・・戻り側配管
2c、61c・・・熱交換用パイプ
2d・・・液冷部接続口
2f、2g・・・カップリング機構
3、20b、31・・・液冷部
3a・・・分岐配管
3b・・・吸熱部
3e・・・冷媒循環部
5・・・・機械室
6・・・・サーバラック
7・・・・ICT装置(サーバ)
7a・・・高発熱部
8・・・・ベース空調機
9・・・・冷媒循環回路
32・・・ヒートパイプ
71・・・送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象空間に収容され、室内に供給される冷気を吸気して高温空気を排気するサーバラックを冷却するためのサーバラック冷却装置であって、
サーバラックの外面に近接、又は、内部に配置され、吸気又は排気を冷却する空冷部と、
サーバラック内に配置され、ラック内に格納されるICT機器の高温発熱体を直接冷却するための液冷部と、
該空冷部の上方に配置される熱交換器と、を含んで構成され、
該空冷部は、配管内を第一の冷媒が通過するように構成した往き側配管と、戻り側配管と、往き側配管と戻り側配管の間に配置される1以上の熱交換用パイプと、を備え、
該液冷部は、往き側配管から分岐して戻り側配管に合流する冷媒循環部と、該冷媒循環部内を流れる第一の冷媒との熱交換により該高温発熱体から吸熱する吸熱部と、を備え、
該空冷部、該液冷部及び該熱交換器の間を、第一の冷媒が自然循環方式により流れるように構成し、かつ、
該熱交換器において、第一の冷媒を介して回収した排熱を、第二の冷媒を介して系外に放熱するように構成した、
ことを特徴とするサーバラック冷却装置。
【請求項2】
前記液冷部の前記冷媒循環部と前記吸熱部とを結ぶ熱搬送手段をさらに備え、
該熱搬送手段が、冷媒自然循環方式によるものであることを特徴とする請求項1に記載のサーバラック冷却装置。
【請求項3】
前記熱搬送手段が、ヒートパイプであることを特徴とする請求項2に記載のサーバラック冷却装置。
【請求項4】
前記空冷部と前記熱交換器とを一体に備え、かつ、前記空冷部と前記冷媒循環部の接続部において着脱可能に構成した、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のサーバラック冷却装置。
【請求項5】
冷却対象空間に収容され、室内に供給される冷気を吸気して高温空気を排気するサーバラックを冷却するためのサーバラック冷却装置であって、
サーバラックの外面に近接、又は、内部に配置され、吸気又は排気を冷却する空冷部と、該空冷部の上方に配置される熱交換器と、を含んで構成され、
該空冷部は、配管内を第一の冷媒が通過するように構成した往き側配管と、戻り側配管と、往き側配管と戻り側配管の間に配置される1以上の熱交換用パイプと、を備え、
該空冷部及び該熱交換器の間を、第一の冷媒が自然循環方式により流れるように構成し、かつ、
該熱交換器において、第一の冷媒を介して回収した排熱を、第二の冷媒を介して系外に放熱するように構成した、
ことを特徴とするサーバラック冷却装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−8888(P2013−8888A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141411(P2011−141411)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】