説明

サーバ室の空調システム

【課題】省エネルギー化及び省スペース化を図る。
【解決手段】本発明は、冷熱源11と、空調機16と、空調機16により冷却された空調給気をサーバ室17に送出させる給気ダクト18と、サーバ室17でサーバの排熱を回収した空調還気をサーバ室17から空調機16に還送させる還気メインダクト19と、還気メインダクト19から分岐し、前記空調還気の一部を通過させる還気バイパスダクト20と、還気バイパスダクト20に設けられる潜熱冷却器21と、潜熱冷却器21の下流側で還気バイパスダクト20に合流した後に還気メインダクト19に接続される外気導入ダクト22と、を備え、前記空調還気の一部は、潜熱冷却器21において潜熱冷却されると共に加湿され、前記空調還気より絶対湿度の低い外気導入ダクト22に取り入れられた外気と混合された後、空調機16に還送されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバが設置されるサーバ室内を年間を通じて冷却し、該サーバ室内の温湿度を一定に保持するための空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットやコンピュータシステムの普及により、データセンターや企業内のサーバ室には多数のサーバが設置されており、これらのサーバからの発熱負荷が非常に大きくなっている。そのため、サーバの安定的な動作を確保すべく、サーバ室内を年間を通じて一定の温湿度環境に保持することを目的として、サーバ室に専用の空調システムが設置されている。
【0003】
従来のこの種の空調システムとしては、一般に、図6に示すように年間を通して一定の負荷で冷熱源のチラー11や空調機16を稼働させる空調システムや、図7に示すように低温の外気(OA)を取り入れて外気冷房を行う空調システムが知られている。
【0004】
さらに、従来、潜熱冷却方式による空調システムも提案されており、この方式の空調システムとしては、例えば、室温の上昇が設定温度を超えた場合にサーバ室内の空調給気系統に設置した噴霧器からミストを噴霧することにより冷却するラック冷却システム(特許文献1参照)や、或いは、加湿手段として室内に噴霧ノズルを設置して湿度制御を行う空調システム(特許文献2参照)や、或いは、冷却した純水を散布して絶対湿度を一定に保ちながら室内顕熱負荷の除去を行う気体浄化装置(特許文献3参照)や、或いは、室内からの空調還気と外気とを混合させた後に空気を設定温度まで加湿する外気冷房を利用したシステムなどが知られている。また、従来、外気冷房を利用したシステムにおける結露防止対策として、外気を一定の温度までヒータ等を用いて加温する技術や、外気調和機等により外気を一定温度に加温する技術(特許文献4参照)なども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−110469号公報
【特許文献2】特開2005−61647号公報
【特許文献3】特開2001−334121号公報
【特許文献4】特開平11−294832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術では、サーバ室内でミストを噴霧しているため、湿度が想定以上に高くなるおそれがあり、サーバに損害を与える危険性があるといった問題があった。
【0007】
また、上記した特許文献2に記載された技術では、顕熱冷却装置を通過した後に潜熱冷却を行ったり、或いは、室内からの空調還気と外気とを混合させた後に潜熱冷却を行ったりしているため、加湿手段を通過した後の湿度が高くなり過ぎないように制御する必要があるといった問題や、外気系統に外気調和機を設置する必要があるため、構成機器が多くなり、空調システムが複雑化するといった問題などがあった。
【0008】
さらに、上記した特許文献3に記載された技術では、絶対湿度を一定に保つために散水する水の冷却が必要となるため、冬期でもチラー等の冷熱源を運転させる必要があり、省エネルギー化を図り難いといった問題があった。
【0009】
また、上記した従来の外気冷房システムでは、室内からの空調還気と外気とを混合した後に加湿器で加湿しているため、加湿器を通過した後の湿度が高くなり過ぎないように制御する必要があり、システムが複雑化するといった問題や、単位風量当たりの潜熱冷却量が小さいため、機器が大型化して機器の設置スペースを広く必要とするといった問題などがあった。
【0010】
さらに、上記した従来の外気冷房システムにおける結露防止対策では、電力等を消費して加温しているため、加温のためのエネルギーが別途必要となり、省エネルギー化が図り難いといった問題や、外気調和機に加湿装置や除湿装置などが設けられているため、システムが複雑化するといった問題などがあった。
【0011】
本発明は、上記した各種課題を解決すべくなされたものであり、省エネルギー化及び省スペース化を図ることのできるサーバ室の空調システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、サーバが設置されるサーバ室内を年間を通じて冷却し、該サーバ室内の温湿度を一定に保持するための空調システムであって、被冷却媒体を冷却するための冷熱源と、該冷熱源により冷却された被冷却媒体が供給される冷却コイルを有する空調機と、該空調機の冷却コイルにより冷却された空調給気を前記サーバ室に送出させるための給気ダクトと、前記サーバ室において前記サーバの排熱を回収した空調還気を前記サーバ室から前記空調機に還送させるための還気メインダクトと、該還気メインダクトから分岐し、前記空調還気の一部を通過させる還気バイパスダクトと、該還気バイパスダクトに設けられる潜熱冷却器と、該潜熱冷却器の下流側で前記還気バイパスダクトに合流した後に前記還気メインダクトに接続される外気導入ダクトと、を備え、前記還気バイパスダクトを通過する前記空調還気は、前記潜熱冷却器において水の蒸発による潜熱冷却作用によって冷却されると共に加湿され、前記空調還気より絶対湿度の低い前記外気導入ダクトに取り入れられた外気と混合された後、前記空調機の冷却コイルに還送されることを特徴とする。
【0013】
そして、本発明に係るサーバ室の空調システムにおいて、前記潜熱冷却器は、水が滴下される気液接触材料を前記空調還気が通過するように構成されていることを特徴としてもよい。
【0014】
また、本発明に係るサーバ室の空調システムは、前記外気導入ダクトに取り入れられた外気を加温する加温ユニットを備え、該加温ユニットは、前記冷熱源と前記空調機の冷却コイルとの間で被冷却媒体を循環させるための被冷却媒体循環メイン配管から分岐される加温ユニット用被冷却媒体循環配管が接続される加温コイルを備え、該加温コイルを循環することにより温度の低下した被冷却媒体を前記空調機の冷却コイルへ供給すると共に、該空調機の冷却コイルを循環することにより温度の上昇した被冷却媒体を前記加温コイルへ供給することを特徴としてもよい。
【0015】
さらに、本発明に係るサーバ室の空調システムは、前記サーバ室内を冷却する別の空調機を備え、該別の空調機は、前記加温ユニット用被冷却媒体循環配管とは別に前記被冷却媒体循環メイン配管から分岐される被冷却媒体循環サブ配管が接続される冷却コイルを備え、前記加温コイルを循環することにより温度の低下した被冷却媒体を前記別の空調機の冷却コイルへ供給すると共に、該別の空調機の冷却コイルを循環することにより温度の上昇した被冷却媒体を前記加温コイルへ供給することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、省エネルギー化を図ることができると共に、機器の省スペース化を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るサーバ室の空調システムを示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るサーバ室の空調システムの動作を示す空気線図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るサーバ室の空調システムを示す構成図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るサーバ室の空調システムの動作を示す空気線図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るサーバ室の空調システムの変形例を示す構成図ある。
【図6】従来の一般的な空調システムを示す構成図である。
【図7】従来の一般的な外気冷房システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
先ず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の第1の実施の形態に係るサーバ室の空調システムについて説明する。
【0020】
図1に示されているように、本実施の形態に係る空調システム10は、被冷却媒体である水を冷却するための冷熱源としてのチラー11と、チラー11により冷却された水が冷水循環メイン配管12を介して供給される冷却コイル14や送風機15を有する空調機16と、空調機16の冷却コイル14により冷却された空調給気をサーバ室17に送出させるための給気ダクト18と、サーバ室17においてサーバの排熱を回収した空調還気をサーバ室17から空調機16に還送させるための還気メインダクト19と、還気メインダクト19から分岐して空調還気の一部を通過させる還気バイパスダクト20と、還気バイパスダクト20の途中に設けられる潜熱冷却器21と、潜熱冷却器21の下流側で還気バイパスダクト20に合流した後に還気メインダクト19に接続される外気導入ダクト22と、還気メインダクト19に接続される排気ダクト23と、を備えて構成されている。
【0021】
また、冷水循環メイン配管12には、チラー11から空調機16の冷却コイル14に冷水を送出するための冷水往管12aと、空調機16の冷却コイル14からチラーに冷水を還送するための冷水還管12bと、が設けられ、冷水往管12aの途中には冷水循環ポンプ24が接続されている。
【0022】
還気メインダクト19には、還気バイパスダクト20の分岐箇所の近傍下流側に第1還気風量調整ダンパー25が接続され、還気バイパスダクト20には、潜熱冷却器21の下流側に第2還気風量調整ダンパー26が接続されている。また、外気導入ダクト22には、還気バイパスダクト20との合流箇所の近傍上流側に外気風量調整ダンパー27が接続され、排気ダクト23には、排気ファン28が接続されている。
【0023】
潜熱冷却器21は、給水ポンプ29に圧送されて給水配管30を介して供給された水が滴下される気液接触材料を前記空調還気が通過するように構成された気化式のものであり、例えば、特開2010−201366号公報に記載の気液接触材料が使用されてもよい。この気液接触材料を構成する構造体の基材となるシートは、吸水性シートであり、この吸水性シートは、不織布などの繊維により構成され、繊維としては、親水性を阻害しないもので、不織布に加工したときヒダ折り加工適性を発現するものであれば特に制限はない。
【0024】
次に、上記した構成を備えた本実施の形態に係る空調システム10の動作について説明する。
【0025】
チラー11により冷水が供給された冷却コイル14を通過して所定の温度まで冷却された空調給気(SA)は、送風機15により圧送され、給気ダクト18を通ってサーバ室17内に吹き出される。
【0026】
サーバ室17内において、空調給気(SA)はサーバからの排熱を回収した後、図2の(1)の状態の空調還気(RA)となり、その一部分(後述する外気導入ダクト22から取り入れられる外気風量(OA)に相当する風量分)は排気(EA)として排気ファン28により排気ダクト23を通って外部に排出される。
【0027】
また、排気されなかったそれ以外の空調還気(RA)は、還気メインダクト19を通り、その内の所定風量の空調還気(RA−1)は、還気バイパスダクト20に分岐され、潜熱冷却器21において給水配管30を介して供給された水の蒸発による潜熱冷却作用によって所定温度(露点温度)まで冷却されると共に所定の絶対湿度まで加湿され、図2の(2)の状態の空調還気(RA−1)となる。
【0028】
次いで、この空調還気(RA−1)は、外気導入ダクト22を介して取り入れられた図2の(3)の状態の外気(OA)と混合され、図2の(4)の状態の空調還気(混合―1)となる。
【0029】
この時、外気(OA)の絶対湿度が空調還気(RA)より低い場合にのみ外気風量調整ダンパー27が開放され、空調還気(RA−1)は外気(OA)と混合され、それ以外の場合には、外気風量調整ダンパー27が閉鎖され、空調還気(RA−1)は外気(OA)と混合されないように制御される。
【0030】
また、この時、外気(OA)と混合された後の空調還気(混合―1)の絶対湿度が前記空調給気(SA)の所定絶対湿度と一致するように、空調還気(RA−1)と外気(OA)との風量比や潜熱冷却器21における潜熱冷却量が決定され、第2還気風量調整ダンパー26及び外気風量調整ダンパー27の開度や潜熱冷却器21が制御される。
【0031】
その後、前記空調還気(混合−1)は、還気バイパスダクト20に分岐されずに還気メインダクト19を通ってきた空調還気(RA−2)と混合され、図2の(5)の状態の空調還気(混合−2)となる。そして、この空調還気(混合―2)は、空調機16に還送され、冷却コイル14において所定温度まで冷却され、図2の(6)の状態の前記空調給気(SA)となる。
【0032】
以降、上記した動作が繰り返され、サーバ室17内は年間を通じて一定の温湿度環境に保持される。
【0033】
なお、前記外気(OA)の温湿度が該外気(OA)を前記空調還気(RA)と混合しただけで前記空調給気の温湿度条件を満たす場合には、潜熱冷却器21を稼働せずに外気冷房のみの運転を行うことも可能である。
【0034】
このように上記した本実施の形態に係るサーバ室の空調システム10によれば、高温低湿空気の空調還気(RA)系統に潜熱冷却器21を設置しているため、通過風量当たりの潜熱冷却量を増大させることができる一方、潜熱冷却器21の小型化を図ることができる。したがって、機器のコスト低減化及び省スペース化を図ることができる。また、潜熱冷却器21に前記気液接触材料を使用することにより、飽和効率が95%となるため、通風量を制御することで容易に加湿量を調整することができ、制御性を高めることができる。さらに、気化式の潜熱冷却器21を使用することにより、他の方式より効率よく潜熱冷却を行うことができ、給水量のロスを最小限に押さえることができ、省エネルギー効果をより高めることができる。
【0035】
また、温湿度変動の小さい空調還気を露点温度まで潜熱冷却しているため、制御が容易となり、制御性の向上を図ることができると共に、高温低湿空気の空調還気(RA)系統で潜熱冷却を行っているため、給水量のロスが小さく、効率を高めることができる。
【0036】
さらに、冬期などで外気(OA)が低温低湿度の場合には、チラー11の運転自体が不要となり、より一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
以下、本実施の形態に係る空調システム10を、図6に示す従来の一般的な空調システム1及び図7に示す従来の一般的な外気冷房システム2と比較して、本実施の形態に係る空調システム10の省エネルギー効果について検討を行う。
【0038】
ここで、図6の一般的な空調システム1は、空調機16とサーバ室17との間で空調空気(SA,RA)を循環させるのみで外気(OA)を導入しない一般空調運転を行い、図7の外気冷房システムは、外気冷房が利用できる期間は空調還気(RA)と外気(OA)とを混合し、加湿を行わない外気冷房運転を行い、外気冷房が利用できない期間は空調空気(SA,RA)を循環させるのみで外気を導入しない一般空調運転を行うものとする。なお、以下の説明では、図6及び図7中、本実施の形態に係る空調システム10と同等の構成については、図1と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
(1)各空調システムの稼働モデルの決定
先ず、東京(2009年)の1年間の外気条件分布のデータに基づいて、外気冷房システム2と本実施の形態に係る空調システム10とが外気冷房を利用可能な期間、本実施の形態に係る空調システム10が潜熱冷却を利用可能な期間、及びそれ以外の一般空調期間をそれぞれ決定する。
【0039】
前記外気冷房を利用可能な期間は、温度27℃以下且つ露点温度5.5℃〜15℃(ASHRAEによる室内条件:温度18〜27℃、湿度5.5〜15℃DP且つ60%以下)の範囲に入る期間とすると、2,600時間/年となる。
【0040】
また、前記潜熱冷却を利用可能な期間は、温度17.5℃以下且つ露点温度5.5℃未満で、空調給気(SA)を18℃、60%、空調還気(RA)28℃、32.8%、潜熱冷却器21を通過後の空調還気(RA−1)を17.55℃、94.9%と設定し、外気OA)が5.5℃DP未満の場合に、外気(OA)と空調還気(RA−1及びRA)とを混合して空調給気の温湿度条件となるものを選択すると、3,197時間/年となる。
【0041】
さらにまた、前記一般空調期間は、前記外気冷房を利用可能な期間と前記潜熱冷却を利用可能な期間を除いた、2,963時間/年となる。
【0042】
以上により、各空調システム1,2,10の稼働モデルを決定すると、一般的な空調システム1では、一般空調運転が8,760時間/年、外気冷房システム2では、外気冷房運転が2,600時間で一般空調運転が6,160時間/年、本実施の形態に係る空調システム10では、外気冷房運転が2,600時間、潜熱冷却運転が3,197時間で一般空調運転が3,197時間/年となる。
(2)省エネルギー効果の試算条件の設定
簡易的な検討を行うため、サーバ室17の面積を100m2、サーバ室17内のサーバの負荷を150kw(1.5kw/m2)、空調給気(SA)の風量を45,000m3/h程度とし、サーバ室17内では効率的な空調が行われていると想定する。
【0043】
また、機器動力としては、空調機16が20kw×3台(室外機、送風機15の動力を含む)、空調機16の送風機15の動力が7.5kw、空調機16の室外機の送風機の動力が7.5kw、潜熱冷却器21の給水ポンプ29の動力が0.4kwと仮定し、前記一般空調運転時の動力を60kw(空調機16×3台分)、前記外気冷房運転時の動力を15kw(空調機16の室内外の送風機分)、前記潜熱冷却運転時の動力を15.4kw(空調機16の室内外の送風機及び給水ポンプ29分)と想定する。
(3)省エネルギー効果の試算結果
上述した各空調システムの稼働モデルと試算条件に基づき、各空調システムにおける年間の電力消費量を算出すると、前記一般的な空調システム1では、
60kw×8,760h=525.6MWh
となり、前記外気冷房システム2では、
60kw×6,160h+15kw×2,600h=408.6Mwh
となり、前記一般的な空調システム2に比べて空調エネルギーを約22%削減することができる。
【0044】
そして、本実施の形態に係る空調システム10では、
60kw×2,963h+15kw×2,600h+15.4kw×3,197h
=266.0Mwh
となり、前記一般的な空調システム1に比べて空調エネルギーを約50%削減することができる。
【0045】
また、電気料金を15円/kwh、上水道料金を200円/m3と仮定して、これらの試算結果を、年間ランニングコストに換算すると、前記一般的な空調システム1では、788.4万円/年、前記外気冷房システム2では、612.9万円/年、本実施の形態に係る空調システム1では、405.1万円/年となり、本実施の形態に係る空調システム10は前記一般的な空調システム1と比べて、年間約40%のコスト削減を図ることができる。
【0046】
次に、図3及び図4を参照しつつ、本発明の第2の実施の形態に係るサーバ室の空調システムについて説明する。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、図3及び図4に中、上記した本発明の第1の実施の形態に係る空調システム10と同等の構成については、図1及び図2と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施の形態に係る空調システム30は、図3に示されているように、上記した本発明の第1の実施の形態に係る空調システム10の構成に、さらに、加温ユニット31が外気導入ダクト22の途中に設置されて構成されている。
【0048】
この加温ユニット31には、加温コイル32が設けられ、加温コイル32には、加温ユニット用冷水循環配管33が接続されている。この加温ユニット用冷水循環配管33は、冷水循環メイン配管12の冷水還管12bから三方弁34aを介して分岐される冷水往管33aと、冷水循環メイン配管12の冷水往管12aから三方弁34bを介して分岐される冷水還管33bとにより構成されている。
【0049】
次に、このような構成を備えた本実施の形態に係る空調システム30の動作について説明する。
【0050】
空調機16の冷却コイル14を通過して所定の温度まで冷却された空調給気(SA)は、送風機15により圧送され、給気ダクト18を通ってサーバ室17内に吹き出される。
【0051】
サーバ室17内において、空調給気(SA)はサーバからの排熱を回収した後、図4の(1)の状態の空調還気(RA)となり、その一部分(後述する外気導入ダクト22から取り入れられる外気風量(OA)に相当する風量分)は排気(EA)として排気ファン28により排気ダクト23を通って外部に排出される。
【0052】
また、排気されなかったそれ以外の空調還気(RA)は、還気メインダクト19を通り、その内の所定風量の空調還気(RA−1)は、還気バイパスダクト20に分岐され、潜熱冷却器21において給水配管30を介して供給された水の蒸発による潜熱冷却作用によって所定温度(露点温度)まで冷却されると共に所定の絶対湿度まで加湿され、図4の(2)の状態の空調還気(RA−1)となる。
【0053】
一方、外気導入ダクト22を介して取り入れられた図4の(3)の状態の外気(OA)が非常に低温の場合には、加温ユニット31の加温コイル32を通過して所定の温度まで加温され、図4の(4)の状態の外気(加温OA)となる。この時、加温ユニット31側で外気(OA)を加温することにより温度の低下した冷水(例えば、7℃)は冷水還管33b及び三方弁34bを介して冷水循環メイン配管12の冷水往管12aの冷水(例えば、7℃)と合流し、空調機16の冷却コイル14において空調給気(SA)を冷却するための熱源として利用される。
【0054】
また、空調機16の冷却コイル14において空調給気(SA)を冷却して温度の上昇した冷水(例えば、12℃)は、冷水還管12b及び三方弁34aを介して加温ユニット用冷水循環配管33の冷水往管33aに分岐され、加温ユニット31の加温コイル32において外気(OA)を加温するための熱源として利用される。
【0055】
次いで、このように加温された外気(加温OA)は、潜熱冷却器21を通過した前記空調還気(RA−1)と混合され、図4の(5)の状態の空調還気(混合―1)となる。
【0056】
この時、外気(OA)の絶対湿度が空調還気(RA)より低い場合にのみ外気風量調整ダンパー27が開放され、空調還気(RA−1)は外気(OA)と混合され、それ以外の場合には、外気風量調整ダンパー27が閉鎖され、空調還気(RA−1)は外気(OA)と混合されないように制御される。
【0057】
また、この時、外気(OA)と混合された後の空調還気(混合―1)の絶対湿度が前記空調給気(SA)の所定絶対湿度と一致するように、空調還気(RA−1)と外気(OA)との風量比や加温ユニット31による加温量や潜熱冷却器21における潜熱冷却量が決定され、第2還気風量調整ダンパー26及び外気風量調整ダンパー27の開度や加温ユニット31や潜熱冷却器21が制御される。
【0058】
その後、前記空調還気(混合−1)は、還気バイパスダクト20に分岐されずに還気メインダクト19を通ってきた空調還気(RA−2)と混合され、図4の(6)の状態の空調還気(混合−2)となる。そして、この空調還気(混合―2)は、空調機16に還送され、冷却コイル14において所定温度まで冷却され、図4の(7)の状態の前記空調給気(SA)となる。
【0059】
以降、上記した動作が繰り返され、サーバ室17内は年間を通じて一定の温湿度環境に保持される。
【0060】
なお、前記外気(OA)の温湿度が該外気(OA)を前記空調還気(RA)と混合しただけで前記空調給気の温湿度条件を満たす場合には、潜熱冷却器21を稼働せずに外気冷房のみの運転を行うことも可能である。
【0061】
このように上記した本実施の形態に係るサーバ室の空調システム30によれば、上記した本発明の第1の実施の形態に係る空調システム10による効果に加えて、さらに、以下の優れた効果を得ることができる。
【0062】
すなわち、本実施の形態に係るサーバ室の空調システム30によれば、加温ユニット31により外気(OA)を加温した後に潜熱冷却器21を通過した空調還気(RA−1)と混合しているため、寒冷地域などで外気(OA)が非常に低温の場合であっても、結露の発生を抑制することができる。
【0063】
また、加温ユニット31の温熱源として空調機16の排熱を利用する一方、加温ユニット31の排熱(冷熱)を空調機16の冷熱源として利用している(外気から取り出した冷熱を空調機16の冷却に利用する所謂フリークーリングとなる)ため、結露防止用ヒータ等を必要とすることなく温度調整を行うことができ、無駄のないエネルギー利用が可能となり、省エネルギー化を促進させることができる。
【0064】
また、上記した本発明の第2の実施の形態に係る空調システム30は、例えば、図5に示すように、加温ユニット31の排熱(冷熱)を、サーバ室17内を冷却する別の空調機35の冷熱源として使用することも可能である。この場合、別の空調機35には、冷水循環サブ配管36が接続され、この冷水循環サブ配管36は、冷水循環メイン配管12の冷水往管12aから三方弁37を介して分岐される冷水往管36aと、冷水循環メイン配管12の冷水還管12bから分岐される冷水還管36bとにより構成される。
【0065】
なお、上記した本発明の各実施の形態の説明では、給気ダクト18や還気メインダクト19など、「ダクト」と言う用語を使用しているが、この「ダクト」には、床下や天井内を空調給気や空調環気の流路として利用する床下チャンバーや天井チャンバーなどをも含むものとする。
【0066】
また、上記した本発明の各実施の形態の説明は、本発明に係るサーバ室の空調システムにおける好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0067】
10 空調システム
11 チラー(冷熱源)
12 冷水循環メイン配管(被冷却媒体循環メイン配管)
14 冷却コイル
16 空調機
17 サーバ室
18 給気ダクト
19 還気メインダクト
20 還気バイパスダクト
21 潜熱冷却器
22 外気導入ダクト
30 空調システム
31 加温ユニット
32 加温コイル
33 加温ユニット用冷水循環配管(加温ユニット用被冷却媒体循環配管)
35 別の空調機
36 冷水循環サブ配管(被冷却媒体循環サブ配管)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバが設置されるサーバ室内を年間を通じて冷却し、該サーバ室内の温湿度を一定に保持するための空調システムであって、
被冷却媒体を冷却するための冷熱源と、
該冷熱源により冷却された被冷却媒体が供給される冷却コイルを有する空調機と、
該空調機の冷却コイルにより冷却された空調給気を前記サーバ室に送出させるための給気ダクトと、
前記サーバ室において前記サーバの排熱を回収した空調還気を前記サーバ室から前記空調機に還送させるための還気メインダクトと、
該還気メインダクトから分岐し、前記空調還気の一部を通過させる還気バイパスダクトと、
該還気バイパスダクトに設けられる潜熱冷却器と、
該潜熱冷却器の下流側で前記還気バイパスダクトに合流した後に前記還気メインダクトに接続される外気導入ダクトと、
を備え、
前記還気バイパスダクトを通過する前記空調還気は、前記潜熱冷却器において水の蒸発による潜熱冷却作用によって冷却されると共に加湿され、前記空調還気より絶対湿度の低い前記外気導入ダクトに取り入れられた外気と混合された後、前記空調機の冷却コイルに還送されることを特徴とするサーバ室の空調システム。
【請求項2】
前記潜熱冷却器は、水が滴下される気液接触材料を前記空調還気が通過するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーバ室の空調システム。
【請求項3】
前記外気導入ダクトに取り入れられた外気を加温する加温ユニットを備え、該加温ユニットは、前記冷熱源と前記空調機の冷却コイルとの間で被冷却媒体を循環させるための被冷却媒体循環メイン配管から分岐される加温ユニット用被冷却媒体循環配管が接続される加温コイルを備え、該加温コイルを循環することにより温度の低下した被冷却媒体を前記空調機の冷却コイルへ供給すると共に、該空調機の冷却コイルを循環することにより温度の上昇した被冷却媒体を前記加温コイルへ供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のサーバ室の空調システム。
【請求項4】
前記サーバ室内を冷却する別の空調機を備え、該別の空調機は、前記加温ユニット用被冷却媒体循環配管とは別に前記被冷却媒体循環メイン配管から分岐される被冷却媒体循環サブ配管が接続される冷却コイルを備え、前記加温コイルを循環することにより温度の低下した被冷却媒体を前記別の空調機の冷却コイルへ供給すると共に、該別の空調機の冷却コイルを循環することにより温度の上昇した被冷却媒体を前記加温コイルへ供給することを特徴とする請求項3に記載のサーバ室の空調システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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