説明

サーバ装置、暗号強度制御方法、および、暗号強度制御プログラム

【課題】リアルタイムにストリーミング送信される表示データに動画コンテンツが含まれている可能性がある場合にのみ暗号強度を高くすることで、クライアント装置の省電力化が可能なサーバクライアントシステムを提供する。
【解決手段】サーバ装置は、表示データを所定の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置であって、実行されているアプリケーションプログラムを検出するアプリケーション検出手段と、前記アプリケーション検出手段によって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることを検出した場合に、表示データを前記所定の暗号強度と異なる暗号強度で暗号化を行う暗号化手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ装置において暗号化された表示データをクライアント装置にて復号して表示するサーバクライアントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サーバ装置において生成された表示データをクライアント装置へネットワークを介してストリーミング送信し、クライアント装置の表示画面に当該表示データを表示させるサーバクライアントシステムが普及している。
【0003】
上述のようなサーバクライアントシステムでは、サーバ装置において生成された表示データが、表示データを暗号化してストリーミング送信される。何故ならば、表示データにコンテンツ保護が求められる動画コンテンツが含まれている場合に、悪意を持ったユーザーによって、ネットワーク上で動画コンテンツを取得され複製されることを防止する必要があるからである。
【0004】
ところで、表示データの暗号化を行うためには、サーバ装置のCPUが、一定の演算処理を行う必要がある。また、サーバ装置から表示データを受信し、表示画面に表示するクライアント装置のCPUも、表示データの復号するために、一定の演算処理を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、クライアント装置は、一般的に屋外に持ち歩いて利用されるので、復号化処理の演算を行うための電力消費は、可能な限り抑制することが望ましい。つまり、復号化処理のための演算量は、少ないほうが望ましいことになる。
【0006】
そのため、送出される動画データごとに暗号強度を設定し、高いセキュリティが求められていない動画データについては暗号強度を低くして送出することで、クライアント装置における復号化処理のための電力消費を抑制するものがある。
【0007】
特許文献1には、サーバ装置において生成された表示データをクライアント装置へ送信し、クライアント装置の表示画面に表示データを表示させるサーバクライアントシステムが開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、クライアント装置からサーバ装置に対して送出される入力イベントを制限することで、通信時にかかる消費電力を抑制するクライアント装置が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献3には、サーバ装置に記憶されている動画データごとに、複数のレベルの暗号強度のいずれかを予め設定し、設定された暗号強度によって暗号化された動画データをクライアント装置に送信するサーバ装置が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2007−265207号公報
【特許文献2】特開2007−200142号公報
【特許文献3】特開2007−281706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述のようなサーバクライアントシステムでは、サーバ装置で生成された表示データをリアルタイムにストリーミング送信している。
【0012】
リアルタイムにストリーミング送信する場合、サーバ装置に予め蓄積されている動画データを送信する場合と異なり、特許文献3に開示されているように、予め暗号強度を設定しておくことができないという問題がある。
【0013】
すると、サーバ装置は、表示データに動画コンテンツが含まれる場合を想定して、常に高い暗号強度で表示データを暗号化し、クライアント装置にリアルタイムにストリーミング送信せざるを得なくなり、クライアント装置においては、表示データの復号化処理のために電力消費が高まる問題が発生する。
【0014】
そこで、本発明は、リアルタイムにストリーミング送信される表示データに動画コンテンツが含まれている可能性がある場合にのみ暗号強度を高くすることで、クライアント装置の省電力化が可能なサーバクライアントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1のサーバ装置は、表示データを所定の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置であって、実行されているアプリケーションプログラムを検出するアプリケーション検出手段と、前記アプリケーション検出手段によって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることを検出した場合に、表示データを前記所定の暗号強度と異なる暗号強度で暗号化を行う暗号化手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2のサーバ装置は、表示データを第1の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置であって、実行されているアプリケーションプログラムを検出するアプリケーション検出手段と、前記アプリケーション検出手段によって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることを検出した場合に、表示データを前記第1の暗号強度より強い暗号強度の第2の暗号強度で暗号化を行う暗号化手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第1の暗号強度制御方法は、表示データを所定の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置の暗号強度制御方法であって、実行されているアプリケーションプログラムを検出させるアプリケーション検出ステップと、前記アプリケーション検出ステップによって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることが検出された場合に、表示データを前記所定の暗号強度と異なる暗号強度で暗号化させる暗号化ステップとを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の第1の暗号強度制御プログラムは、表示データを所定の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置の暗号強度制御プログラムであって、実行されているアプリケーションプログラムを検出させるアプリケーション検出ステップと、前記アプリケーション検出ステップによって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることが検出された場合に、表示データを前記所定の暗号強度と異なる暗号強度で暗号化させる暗号化ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リアルタイムにストリーミング送信される表示データに動画コンテンツが含まれている可能性がある場合にのみ暗号強度を高くすることで、クライアント装置の省電力化が可能なサーバクライアントシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態のサーバクライアントシステムを説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態のサーバクライアントシステムの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態のサーバクライアントシステムを説明するためのブロック図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施の形態のサーバクライアントシステムは、サーバ装置10と、クライアント装置40とからなる。サーバ装置10とクライアント装置40とは、ネットワークを介して接続される。
【0023】
サーバ装置10からは、画像データがクライアント装置40に送出され、ユーザーはクライアント装置40を操作することによって、サーバ装置10を遠隔操作することができる。
【0024】
まず、本発明の実施の形態のサーバクライアントシステムの概略を説明すると、ユーザーの操作によってサーバ装置10において予め設定されている動画コンテンツを再生するアプリケーション(以下、動画APという。)が実行されている場合には、サーバ装置10から送出する画像データを暗号化する際の暗号強度を切り替えるというものである。以下、詳細に説明する。
【0025】
サーバ装置10は、制御部20を備えている。制御部20は、記録媒体に格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、表示手段21と、生成手段22と、AP監視手段23と、暗号化手段24と、送信手段25とを論理的に備える。なお、表示手段21と、生成手段22と、AP監視手段23と、暗号化手段24と、送信手段25とは、それぞれ専用のハードウェアで実現されていても良い。
【0026】
クライアント装置40は、制御部50を備えている。制御部50は、記録媒体に格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、表示手段51と、復号化手段52と、展開手段53と、受信手段54とを論理的に備える。なお、表示手段51と、復号化手段52と、展開手段53と、受信手段54とは、それぞれ専用のハードウェアで実現されていても良い。
【0027】
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態の動作について説明する。図2は、本発明の実施の形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【0028】
なお、サーバ装置10と、クライアント装置40とは、既に通信中であり、クライアント装置40からのユーザーの操作によって、サーバ装置10が遠隔操作され、表示手段21が表示する画像データ(表示データ)を、生成手段22がエンコード(圧縮)し、暗号化手段24が暗号化を行い、送信手段25がクライアント装置40に送出するという処理が行われる。
【0029】
図2を参照すると、サーバ装置10と、クライアント装置40とが、通信を開始すると、表示手段21が、クライアント装置40が備える表示画面(不図示)に表示するための画像データを、サーバ装置10が備える表示装置(不図示)に表示する(ステップS101)。
【0030】
ステップS101で画像データが表示されると、AP監視手段23が、所定のアプリケーションプログラムが実行されているか判定する(ステップS102)。
【0031】
所定のアプリケーションプログラムとは、例えば、動画APや、テレビ放送再生録画アプリケーションが挙げられる。これらのアプリケーションプログラムが実行されているということは、コンテンツ保護が要求される動画コンテンツやテレビ番組のコンテンツが表示される画像に含まれる可能性が高いからである。また、所定のアプリケーションには、個人情報等が表示される画像データに含まれる可能性のあるメール送受信アプリケーションも挙げられる。なお、上述の所定のアプリケーションの例は、あくまで一例であり、これらに限定されるものではない。
【0032】
ここで、所定のアプリケーションプログラムは、予め設定されているものとする。あるいは、サーバ装置の表示装置に連続して表示される画像データの変化量が閾値を超えている場合に、所定のアプリケーションプログラムが実行されていると判定されるようにしても良い。画像データの変化量が多いということは、動画コンテンツが再生されている可能性が高いからである。
【0033】
また、動画再生アプリケーションが実行されている場合でも、例えば、デジタル放送を録画したコンテンツや、映画コンテンツは、解像度や画質が高いので、動画再生アプリケーションが再生している動画コンテンツの解像度を示す情報や画質を示す情報を取得して、解像度や画質が高いと判断された場合には、所定のアプリケーションプログラムが実行されていると判断することにしても良い。このような判断を加えることによって、コンテンツ保護が要求されないようなパブリックドメインの動画像が再生されているような場合に、後述する高い暗号強度による暗号化がされるのを抑制することができる。
【0034】
ステップS102で、所定のアプリケーションプログラムが実行されていると判定された場合には(ステップS102/YES)、暗号強度の設定を強度1に設定する(ステップS103a)。
【0035】
一方で、ステップS102で、所定のアプリケーションプログラムが実行されていないと判定された場合には(ステップS102/NO)、暗号強度の設定を強度2に設定する(ステップS103b)。
【0036】
ここで、強度1は、強度2よりも暗号強度が高い設定である。なお、暗号強度とは具体的には暗号化を行う際の暗号鍵のビット数を指す。暗号強度を高くする場合には(強度1の場合には)、暗号鍵のビット数を高く設定する。
【0037】
なお、本発明の実施の形態では、暗号強度を2つの強度のいずれかに設定することとしているが、暗号強度の設定は、複数であれば、必ずしも2つに限定されるものではない。例えば、実行されているアプリケーションプログラム毎に異なる強度の暗号強度を設定しても良い。
【0038】
ステップS103a/S103bで暗号強度が設定されると、生成手段22は、表示装置に連続して表示される画像データを、キャプチャして、圧縮(エンコード)を行う(ステップS104)。
【0039】
ステップS104で画像データが圧縮されると、暗号化手段24は、圧縮された画像を、ステップS103a/S103bで設定された暗号強度で暗号化を行う(ステップS105)。
【0040】
ステップS105で画像データが暗号化されると、送信手段25が、暗号化された画像データを、ネットワークを介して、クライアント装置40に送出する(ステップS106)。このときに、画像データとともに、暗号強度を示す情報も併せて送出することとしても良い。
【0041】
ステップS106で画像データが送出されると、受信手段54が、画像データを受信する(ステップS107)。
【0042】
ステップS107で画像データが受信されると、復号化手段52が、画像データとともに送信されてきた暗号強度を示す情報を参照し、対応する暗号強度の暗号鍵を用いて復号化を行う(ステップS108)。
【0043】
ステップS108で復号化がなされると、展開手段53は、復号化された画像データを展開する(ステップS109)。
【0044】
ステップS109で展開されると、表示手段51は、展開された画像データをクライアント装置40が備える表示画面(不図示)に表示する(ステップS110)。
【0045】
以降、通信が切断されるまで、ステップS101からステップS110までの処理を繰り返す。
【0046】
以上のような処理により、暗号化される画像データにコンテンツ保護が要求されるような動画コンテンツが含まれている可能性がある場合にのみ暗号強度を高くすることになるので、クライアント装置での復号化に伴う演算処理が減少し、クライアント装置の省電力化が実現される。
【符号の説明】
【0047】
10 サーバ装置
20 制御部
21 表示手段
22 生成手段
23 AP監視手段
24 暗号化手段
25 送信手段
40 クライアント装置
50 制御部
51 表示手段
52 復号化手段
53 展開手段
54 受信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示データを所定の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置であって、
実行されているアプリケーションプログラムを検出するアプリケーション検出手段と、
前記アプリケーション検出手段によって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることを検出した場合に、表示データを前記所定の暗号強度と異なる暗号強度で暗号化を行う暗号化手段とを備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項2】
表示データを第1の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置であって、
実行されているアプリケーションプログラムを検出するアプリケーション検出手段と、
前記アプリケーション検出手段によって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることを検出した場合に、表示データを前記第1の暗号強度より強い暗号強度の第2の暗号強度で暗号化を行う暗号化手段とを備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項3】
前記所定のアプリケーションは、動画コンテンツを再生するアプリケーションプログラムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
表示データを所定の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置の暗号強度制御方法であって、
実行されているアプリケーションプログラムを検出させるアプリケーション検出ステップと、
前記アプリケーション検出ステップによって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることが検出された場合に、表示データを前記所定の暗号強度と異なる暗号強度で暗号化させる暗号化ステップとを備えることを特徴とする暗号強度制御方法。
【請求項5】
前記所定のアプリケーションは、動画コンテンツを再生するアプリケーションプログラムであることを特徴とする請求項4に記載の暗号強度制御方法。
【請求項6】
表示データを所定の暗号強度で暗号化してクライアント装置に送出するサーバ装置の暗号強度制御プログラムであって、
実行されているアプリケーションプログラムを検出させるアプリケーション検出ステップと、
前記アプリケーション検出ステップによって所定のアプリケーションプログラムが実行されていることが検出された場合に、表示データを前記所定の暗号強度と異なる暗号強度で暗号化させる暗号化ステップとを備えることを特徴とする暗号強度制御プログラム。
【請求項7】
前記所定のアプリケーションは、動画コンテンツを再生するアプリケーションプログラムであることを特徴とする請求項6に記載の暗号強度制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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