説明

サーマス・エガートソニイ(THERMUSEGGERTSSONII)DNAポリメラーゼ

本発明は、プライミングされた1本鎖M13mp18DNAおよび60℃のインキュベーション温度を用いてDNA複製アッセイにおいて同一条件下で測定した場合、DNAポリメラーゼが>35塩基/秒であるインビトロ(in−vitro)プライマー伸長速度を有しおよびアミノ酸配列の配列番号:2または4を含むDNAポリメラーゼのプライマー伸長速度より速い、好熱性ポリメラーゼに関する。本発明はまた、該ポリメラーゼを含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞に関する。本発明は、本発明に記載のポリメラーゼを含む核酸複製キットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマス・エガートソニイ(Thermus eggertssonii)に由来する熱安定性DNAポリメラーゼ、それを製造および単離する方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
好熱性細菌(ここでは「好熱菌」という)は高温で増殖する能力がある。25〜40℃の範囲の温度で最も良く増殖する中温菌、または15〜20℃で最も良く増殖する好冷性細菌とは違って、好熱菌は50℃を上回る温度で最も良く増殖する。実際、一部の好熱菌は65〜75℃で最も良く増殖する一方、超好熱菌は最高130℃の温度で最も良く増殖する(非特許文献1,参照により本開示に含まれる)。
【0003】
好熱菌は好気性または嫌気性である可能性があり、および、光合成細菌(たとえば、紅色細菌、緑色細菌、および藍藻)、真正細菌(たとえば、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、チオバチルス(Thiobacillus)、デスルホトマキュラム(Desulfotomaculum)、サーマス(Thermus)、乳酸菌、放線菌、スピロヘータ、およびその他多数の属)、および古細菌(たとえば、パイロコッカス(Pyrococcus)、サーモコッカス(Thermococcus)、サーモプラズマ(Thermoplasma)、サーモトガ(Thermotoga)、スルホロブス(Sulfolobus)、およびメタン生成菌)を含む幅広い属および種でみられる。したがって、好熱菌が通常見られる環境には大きな幅があるが、これらの範囲のすべてが高温を伴う。
【0004】
好熱菌は、他の細菌と同様に、ポリメラーゼI、II、III、IV、およびVという5種類のDNAポリメラーゼを含む。好熱菌生息地の性質を考えると、これらの酵素は典型的には熱安定性を示し、および一般に熱安定性DNAポリメラーゼと呼ばれる。DNAポリメラーゼI(「Pol I」)は最も量の多いポリメラーゼであり、および一般的に、DNA複製中に岡崎フラグメントの結合を可能にする修復様反応を含む、ある種のDNA修復を担う。Pol IはUV照射および放射線類似薬によって誘導されるDNA損傷の修復に必須である。DNAポリメラーゼIIは、SOS応答を誘導するDNA損傷の修復に関与すると考えられている。Pol IおよびDNAポリメラーゼIIIの両方を欠く変異体では、DNAポリメラーゼIIはUVに誘導される傷害を修復する。DNAポリメラーゼIIIは多サブユニットレプリカーゼである。
【0005】
熱安定性DNAポリメラーゼは、分子生物学のいくつかの用途で非常に有用であることがわかっている。そのような用途の一つが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCR法については、たとえば、参照により本開示に含まれる米国特許第4,683,195号明細書および第4,683,202号明細書に記載される。PCR反応では、標的DNAの熱変性、反応混合物の冷却と共にテンプレートへのプライマーのハイブリダイゼーション、およびテンプレート配列と相補的な伸長産物を生じるプライマー伸長の基本的な段階のために、プライマー、テンプレート、およびヌクレオシド三リン酸が適当な緩衝液中でDNAポリメラーゼと混合される。熱変性は反復され、プライマーは反応混合物の冷却と共に伸長産物とアニーリングし、および以前に生じた伸長産物が次のプライマー伸長反応のためのテンプレートとなる。このサイクルが数回反復され、結果として目的核酸配列の指数的増幅が生じる。熱安定性DNAポリメラーゼの使用は、酵素活性の損失無しでの反復加熱/冷却サイクルを与える。
【0006】
いくつかの用途、たとえばロングレンジPCRは、現在利用可能なPol Iタンパク質(たとえば、Taq DNA Pol I)のエラー率によって妨げられる。エラー率の低下に加えて、改善した配列識別活性、プライマーミスマッチ許容、および増加した熱安定性を示すDNA Pol Iの使用からいくつかの用途が利益を受ける。たとえば、プライマーミスマッチを許容するDNA Pol Iは縮重プライマーの使用を含むPCR法に有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Black, Microbiology Principles and Applications, 2d edition, Prentice Hall, New Jersey, 145-146, 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、真正細菌T.エガートソニイ(T.eggertssonii)(Teg)からの新規のDNA Pol Iの単離および特徴づけに一部由来する。ここで開示される通り、Teg DNA Pol Iは先行技術のDNA Pol I タンパク質と比較して顕著に優れた特徴を有する。
【0009】
一態様では、本発明は、機能性Teg DNA Pol I断片、およびTeg DNA Pol Iの変異体を含む、Teg DNA Pol Iタンパク質を提供する。提供されるTeg DNA Pol Iタンパク質はまた、Pol I融合タンパク質およびPol Iキメラタンパク質を含む。さまざまな株のT.エガートソニイ(T.eggertssonii)に由来する完全長Teg DNA Pol Iのアミノ酸配列が例示される。コドン最適化されたT.エガートソニイが提供される。
【0010】
一実施形態では、本発明は配列番号:6、17、18、19、20、21、22および23から成る群から選択されるアミノ酸配列との、95%より大、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含むTeg DNA Pol Iを提供する。
【0011】
コドン最適化されたT.エガートソニイ(T.eggertssonii)が提供される(アミノ酸配列の配列番号44)。
【0012】
好ましい一実施形態では、本発明は配列番号6のアミノ酸配列との95%より大、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含むTeg DNA Pol Iを提供する。また、コドン最適化されたT.エガートソニイ(T.eggertssonii)のキメラが提供される(アミノ酸配列の配列番号44)。
【0013】
一実施形態では、本発明は、配列番号:6、17、18、19、20、21、22および23から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むTeg DNA Pol Iを提供する。一実施形態では、コドン最適化された形が好ましい(配列番号44)。
【0014】
一実施形態では、本発明は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むTeg DNA Pol Iを提供する。コドン最適化されたT.エガートソニイ(T.eggertssonii)が提供される(アミノ酸配列の配列番号44)。
【0015】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質は、いくつかの非常に望ましい特徴を有する。たとえば、一実施形態では、本発明は、5'−3'エキソヌクレアーゼ活性を有するTeg DNA Pol Iを提供する。一実施形態では、本発明は、TaqDNAPol Iよりも高い忠実度を有するTeg DNA Pol Iを提供する。一実施形態では、本発明は、TaqDNAPol Iよりもミスマッチプライマーを効率的に伸長する能力があるTeg DNA Pol Iを提供する。
【0016】
好ましい一実施形態では、Teg DNA Pol Iは、5’−3’エキソヌクレアーゼドメイン、内部3’−5’−エキソヌクレアーゼドメイン(固有のヌクレアーゼ活性の無い構造ドメイン)およびポリメラーゼドメインを含む。一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインはさらに、配列番号:6の残基434〜448、556〜615、751〜830で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含むパームサブドメインを含む。
【0017】
好ましい一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインはさらに、配列番号:44の残基438−452、560−619、755−834で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含むパームサブドメインを含む。
【0018】
特に好ましい一実施形態では、パームサブドメインは配列番号:6の残基434−448、556−615、751−830で示されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
特に好ましい一実施形態では、パームサブドメインは配列番号:44の残基438−452、560−619、755−834で示されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインは、配列番号:6の残基449−555で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含むサムサブドメインを含む。
【0021】
好ましい一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインは、配列番号:44の残基453−559で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含むサムサブドメインを含む。
【0022】
特に好ましい一実施形態では、サムサブドメインは配列番号:6の残基449−555で示されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
特に好ましい一実施形態では、サムサブドメインは配列番号:44の残基453−559で示されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインは、配列番号:6の残基616−750で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含むフィンガーサブドメインを含む。
【0025】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインは、配列番号:44の残基620−754で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含むフィンガーサブドメインを含む。
【0026】
特に好ましい一実施形態では、フィンガーサブドメインは配列番号:6の残基616−750で示されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
特に好ましい一実施形態では、フィンガーサブドメインは配列番号:44の残基620−754で示されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質はまた、完全長Teg DNA Pol Iタンパク質の機能性断片を含む。一実施形態では、本発明は、完全長Teg DNA Pol Iの機能性断片を含むTeg DNA Pol Iを提供する。一実施形態では、Teg DNA Pol Iは本質的に完全長Teg DNA Pol Iの機能性断片から成る。好ましい一実施形態では、Teg DNA Pol Iは、配列番号:6および好ましくは配列番号44から成る群から選択されるアミノ酸配列の断片を含む。
【0029】
好ましい一実施形態では、Teg DNA Pol Iは、配列番号:6の残基1−288で示されるアミノ酸配列の5’−3’エキソヌクレアーゼドメイン、配列番号:6の残基296−433で示されるアミノ酸配列の3’−5’エキソヌクレアーゼドメイン、および配列番号:6の残基289−830で示されるアミノ酸配列のポリメラーゼドメインを含む。一実施形態では、Teg DNA Pol Iは本質的に、5’−3’エキソヌクレアーゼ、3’−5’エキソヌクレアーゼドメインおよびポリメラーゼドメインから成る。
【0030】
好ましい一実施形態では、Teg DNA Pol Iは、配列番号:44の残基5−292で示されるアミノ酸配列の5'−3'エキソヌクレアーゼドメイン、配列番号:44の残基300−437で示されるアミノ酸配列の3’−5’エキソヌクレアーゼドメイン、および配列番号:44の残基293−834で示されるアミノ酸配列のポリメラーゼドメインを含む。一実施形態では、Teg DNA Pol Iは本質的に、5’−3’エキソヌクレアーゼ、3’−5’エキソヌクレアーゼドメインおよびポリメラーゼドメインから成る。
【0031】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインはパームサブドメインを含む。好ましい一実施形態では、パームサブドメインは、配列番号:6の残基434−448、556−615および751−830で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に好ましい一実施形態では、パームサブドメインは、配列番号:6の残基434−448、556−615および751−830で示されるアミノ酸配列を含む。
【0032】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインはパームサブドメインを含む。好ましい一実施形態では、パームサブドメインは、配列番号:44の残基438−452、560−619および755−834で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に好ましい一実施形態では、パームサブドメインは、配列番号:44の残基438−452、560−619および755−834で示されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインはサムサブドメインを含む。好ましい一実施形態では、サム領域は、配列番号:6の残基449−650で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に好ましい一実施形態では、サムサブドメインは、配列番号:6の残基449−650で示されるアミノ酸配列を含む。
【0034】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインはサムサブドメインを含む。好ましい一実施形態では、サム領域は、配列番号:44の残基453−654で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に好ましい一実施形態では、サムサブドメインは、配列番号:44の残基453−654で示されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインはフィンガーサブドメインを含む。好ましい一実施形態では、フィンガーサブドメインは、配列番号:6の残基616−750で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に好ましい一実施形態では、フィンガーサブドメインは、配列番号:6の残基616−750で示されるアミノ酸配列を含む。
【0036】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iのポリメラーゼドメインはフィンガーサブドメインを含む。好ましい一実施形態では、フィンガーサブドメインは、配列番号:44の残基620−754で示されるアミノ酸配列との少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に好ましい一実施形態では、フィンガーサブドメインは、配列番号:44の残基620−754で示されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iは、配列番号:6の残基1−288で示されるアミノ酸配列を含むN末端5’−3’−エキソヌクレアーゼドメインを本質的に欠く切断DNAPol Iであり、該DNAPol Iは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。エキソヌクレアーゼ活性を欠く該切断変異体Teg DNA Pol Iは本質的に、配列番号:6の残基289から830で示されるアミノ酸配列を含む。
【0038】
一実施形態では、Teg DNA Pol Iは、配列番号:44の残基5−292で示されるアミノ酸配列を含むN末端5’−3’−エキソヌクレアーゼドメインを本質的に欠く切断DNAPol Iであり、該DNAPol Iは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。エキソヌクレアーゼ活性を欠く該切断変異体Teg DNA Pol Iは本質的に、配列番号:44の残基293から834で示されるアミノ酸配列を含む。
【0039】
一実施形態では、変異体TegDNAポリメラーゼIは、配列番号:6の679位に、グルタミン酸残基をリジンまたはアルギニンといった正に荷電したアミノ酸で置き換える置換を有するアミノ酸配列を含む。DNA基質に結合したTaqDNAポリメラーゼIの三次元構造の分析は、TaqDNAポリメラーゼ配列(配列番号:2)における対応する位置(681)のグルタミン酸の負電荷が、DNA基質におけるプライミング鎖の負に荷電したリン酸骨格と接触することを示している。その接触は静電反発作用を生じ、ポリメラーゼの伸長速度および処理能力を制限する。その位置にグルタミン酸の代わりにリジンを有する変異体は、より速い伸長速度およびより高い処理能力を示している。これらの性質を有する変異体TegDNAポリメラーゼは、迅速PCR、DNA配列決定、長い標的配列の増幅といったさまざまな用途に望ましい。
【0040】
一実施形態では、変異体TegDNAポリメラーゼIは、配列番号:44の683位に、グルタミン酸残基をリジンまたはアルギニンといった正に荷電したアミノ酸で置き換える置換を有するアミノ酸配列を含む。DNA基質に結合したTaqDNAポリメラーゼIの三次元構造の分析は、TaqDNAポリメラーゼ配列(配列番号:2)における対応する位置(681)のグルタミン酸の負電荷が、DNA基質におけるプライミング鎖の負に荷電したリン酸骨格と接触することを示している。その接触は静電反発作用を生じ、ポリメラーゼの伸長速度および処理能力を制限する。その位置にグルタミン酸の代わりにリジンを有する変異体は、より速い伸長速度およびより高い処理能力を示している。これらの性質を有する変異体TegDNAポリメラーゼは、迅速PCR、DNA配列決定、長い標的配列の増幅といったさまざまな用途に望ましい。
【0041】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質はまた、望ましい性質を有する、Teg DNA Pol Iタンパク質の変異体を含む。Pol I変異体には、完全長Pol I変異体の機能性断片が含まれる。
【0042】
一実施形態では、変異体TegDNAポリメラーゼIは、配列番号:6の612−613位に単一または複合置換を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、変異体TegDNAポリメラーゼIは、配列番号:44の616−617位に単一または複合置換を有するアミノ酸配列を含む。Taqおよび大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIについて実施されたランダム変異誘発実験は、それらの配列中の対応する位置のアミノ酸残基が、重合基質としてのrNTPとdNTPとの間の識別を制御することを示している。それらはまた、RNAまたはDNAでプライミングされたDNAテンプレート、プライマーの3'末端に塩基ミスマッチを有するテンプレートおよび完全にアニーリングしたプライマーの間、ならびに標識および非標識dNTP基質の間の識別を制御する。これらの位置の置換の性質に基づいて、さまざまな用途のための有用な性質を持ついくつかの変異体Teg DNA Pol Iが提供されうる。ミスマッチプライマーの伸長に対して識別が向上した変異体は、対立遺伝子特異的PCRに有用である。標識ddNTP基質に対する親和性が向上した変異体は、蛍光DNA配列決定およびリアルタイムPCRに有用である。
【0043】
一実施形態では、本発明は、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性の低下した変異体Teg DNA Pol Iを提供する。好ましい一実施形態では、配列番号:6の43位に対応するTegPol I変異体のグリシン残基が、アスパラギン酸またはグルタミン酸のどちらかに変異している。別の好ましい一実施形態では、配列番号:44の47位に対応するTegPol I変異体のグリシン残基が、アスパラギン酸またはグルタミン酸のどちらかに変異している。
【0044】
一実施形態では、本発明は、配列番号:6の830位のC末端グリシン残基がグルタミン酸残基で置換されている変異体Teg DNA Pol Iを提供する。好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:44の834位のC末端グリシン残基がグルタミン酸残基で置換されている変異体Teg DNA Pol Iを提供する。C末端グルタミン酸残基を有する他のサーマス(Thermus)DNAポリメラーゼIの三次元構造は、その残基のベータカルボキシル基が、決定的に重要なマグネシウムイオンをポリメラーゼ活性部位に安定化および配位するのに関与していることを示す。その追加のカルボキシル基を提供することは、変異体TegDNAポリメラーゼIが連続的DNA合成を実施できる有効なマグネシウム濃度を低下させる。マグネシウム濃度の上昇はDNA増幅PCRの特異性に負の影響を有するため、より低いマグネシウム濃度で働く能力は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に決定的に重要である。
【0045】
本発明の別の一実施形態では、Teg DNA Pol Iの変異体は、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)DNAポリメラーゼIファミリーのDNAポリメラーゼ中の1残基がデオキシおよびジデオキシリボヌクレオチドの間の識別に決定的に重要であるという知識に基づく(テーバー(Taber),S.,リチャードソン(Richardson),C.C.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,July 3,92 (14): 6339−43,大腸菌(Escherichia coli)DNAポリメラーゼIファミリーのDNAポリメラーゼおよび単一残基がデオキシおよびジデオキシリボヌクレオチドの間の識別に決定的に重要である(A single residue and DNA polymerase of the Escherichia coli DNA polymerase I family is critical for distinguishing between deoxy- and dideoxyriboncleotides))。好ましい一実施形態では、Pol I変異体は、配列番号:6の665位に対応する位置の野生型フェニルアラニンの代わりに置換残基を有するアミノ酸配列を含む。好ましい一実施形態では、置換残基はチロシンである。好ましい一実施形態では、Pol I変異体は、配列番号:44の669位に対応する位置の野生型フェニルアラニンの代わりに置換残基を有するアミノ酸配列を含む。好ましい一実施形態では、置換残基はチロシンである。
【0046】
一実施形態では、変異体Teg DNA Pol Iは、配列番号:6に示されるアミノ酸配列のN末端に4個の追加のアミノ酸残基Met、Pro、Arg/LysおよびGlyを有する。一実施形態では、変異体Teg DNA Pol Iは、配列番号:44に示されるアミノ酸配列のN末端に4個の追加のアミノ酸残基Met、Pro、Arg/LysおよびGlyを有する。DNA基質に結合したTaqDNAポリメラーゼの解読された三次元構造に基づき、これらの3個の追加のN末端残基は、N末端ヌクレアーゼドメイン中のDNA結合部位の一部である。追加のN末端アミノ酸の非存在下では、TegDNAポリメラーゼはそのDNA基質に対して弱まった結合親和性および強度を有する。強化されたDNA基質結合性を有するTeg DNA Pol I変異体は、配列番号:6に示される野生型配列を有するTeg DNA Pol Iよりも良好な処理能力およびより速い伸長速度を有する。改善された処理能力およびより速い伸長速度は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用途を実施するのに用いられる熱安定性DNAポリメラーゼの重要な機能的性質である。それらは、より高い感度でより長い標的配列の増幅を可能にし、試料中の必要とするDNAテンプレートを少なくする。この一実施形態における変異体Teg DNA Pol Iの2位の追加のプロリン残基は、先行技術でよく確立されている、大腸菌(E.coli)においてN末端アミノ酸残基を安定化する規則に従って、大腸菌(E.coli)宿主細胞の内因性細胞質プロテイナーゼによるN末端分解に対して組み換えポリメラーゼを安定化する。
【0047】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質はまた、非Teg DNA Pol Iタンパク質部分と融合されたTeg DNA Pol Iタンパク質を含む、DNAPol I融合タンパク質を含む。一実施形態では、DNAPol I融合タンパク質は、本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質のエキソヌクレアーゼドメインを含む。一実施形態では、DNAPol I融合タンパク質は、本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質のポリメラーゼドメインを含む。本発明のDNAPol I融合タンパク質は、たとえば、精製に備える部分、またはDNAPol I融合タンパク質のTeg DNA Pol Iタンパク質と比較して変化した熱安定性または変化した触媒活性に寄与する部分を含みうる。
【0048】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質はまた、別のポリメラーゼの一つ以上のドメインと融合したTeg DNA Pol Iタンパク質を含む、DNAPol Iキメラタンパク質を含む。
【0049】
一態様では本発明は、本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。Teg DNA Pol I核酸は、本発明のDNAPol I融合タンパク質およびDNAPol Iキメラタンパク質をコードする核酸を含む。好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:5から成る群から選択されるヌクレオチド配列との少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%、非常に好ましくは少なくとも約99%同一性を有するヌクレオチド配列を含む、Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:43から成る群から選択されるヌクレオチド配列との少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%、非常に好ましくは少なくとも約99%同一性を有するヌクレオチド配列を含む、Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。
【0050】
特に好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:5から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、Teg DNA Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。特に好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:43から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、Teg DNA Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。
【0051】
またここで提供されるのは、Teg DNA Pol I核酸の複製および発現のためのベクターである。一実施形態では、本発明は、細胞におけるTeg DNA Pol Iタンパク質の発現のためのTeg DNA Pol I発現ベクターを提供する。
【0052】
またここで提供されるのは、宿主細胞を本発明のベクターで形質転換するための方法、およびそのように形質転換された宿主細胞である。宿主細胞は原核および真核細胞を含む。好ましい一実施形態では、宿主細胞は大腸菌(E.coli)宿主細胞である。
【0053】
一態様では、本発明は、本発明のTeg DNA Pol Iを製造および/または単離するための方法を提供する。一実施形態では、方法は天然に存在するTeg DNA Pol Iを真正細菌T.エガートソニイ(T.eggertssonii)から精製することを含む。別の一実施形態では、方法はTeg DNA Pol Iを組み換え法により製造することおよびPol Iを単離することを含む。好ましい一実施形態では、方法は細菌をTeg DNA Pol I発現ベクターで形質転換することおよびPol Iタンパク質を形質転換された細菌から単離することを含む。
【0054】
一態様では、本発明は、核酸増幅のための組成物および方法を提供する。組成物は、本発明の一つ以上のTegPol Iタンパク質を含む。方法は、本発明のTegPol Iタンパク質を含む増幅反応混合物中でDNA分子を増幅反応に供することを含む。
【0055】
好ましい一実施形態では、増幅方法に使用される核酸分子はDNAである。好ましい一実施形態では、DNA分子は2本鎖である。別の実施形態では、DNA分子は1本鎖である。好ましい一実施形態では、2本鎖DNA分子は直鎖DNA分子である。別の実施形態では、DNA分子は非直鎖、たとえば環状またはスーパーコイルDNAである。
【0056】
好ましい一実施形態では、増幅方法は、好ましくはDNAであり好ましくは2本鎖である核酸分子を温度サイクルモードによって増幅するのに有用な、熱サイクル増幅法である。好ましい一実施形態では、方法は核酸分子を熱サイクル増幅反応混合物中で熱サイクル増幅反応に供することを含む。熱サイクル増幅反応混合物は、本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質を含む。
【0057】
好ましい一実施形態では、増幅方法はPCR法である。一実施形態では、方法は縮重PCR法である。一実施形態では、方法はリアルタイムPCR法である。
【0058】
一実施形態では、本発明は、核酸増幅用の、本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質を含む反応混合物を提供する。本発明の好ましい反応混合物はDNA増幅に有用である。好ましい一実施形態では、反応混合物は熱サイクル増幅反応に有用な熱サイクル反応混合物である。増幅反応混合物は、たとえばdNTP、プライマー、緩衝液、および/または安定剤のような、しかしそれらに限定されない、追加の試薬を含みうる。
【0059】
一実施形態では、本発明は、ヌクレオチド多型を含む相同配列標的の増幅に有用である、PCRで縮重プライマーを用いて核酸を増幅するための反応混合物を提供する。反応混合物は本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質を含む。縮重プライマーを用いるPCRのための反応混合物は、たとえばdNTP、縮重プライマー、緩衝液、および/または安定剤といった、しかしそれらに限定されない、追加の試薬を含みうる。
【0060】
好ましい一実施形態では、反応混合物は本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質を含み、Teg DNA Pol Iは反応混合物中に、120pg/μL以上、より好ましくは140pg/μL以上、より好ましくは160pg/μL以上、より好ましくは180pg/μL以上、より好ましくは200pg/μL以上、より好ましくは400pg/μL以上、より好ましくは600pg/μL以上の濃度で存在する。
【0061】
好ましい一実施形態では、反応混合物は双性イオン緩衝液を含む。好ましい一実施形態では、双性イオン緩衝液は約pH7.5−8.9の間のpHを有する。好ましい一実施形態では、緩衝液は、有機双性イオン酸および有機双性イオン塩基、カリウムイオン、およびマグネシウムイオンの組み合わせを含む。
【0062】
特に好ましい一実施形態では、反応混合物は30mMビシン(Bicine)、59mMトリス(Tris)、50mM KCl、2mM酢酸マグネシウムを含む。
【0063】
一実施形態では、本発明は、リアルタイム産物検出を伴うPCR反応に有用である、核酸を増幅するための反応混合物を提供する。リアルタイム反応混合物は本発明のTeg DNA Pol Iを含む。リアルタイムPCR反応混合物は、dNTP、蛍光プローブ、プライマー、緩衝液、安定剤、核酸結合色素および/または受動参照色素を含むがそれらに限定されない、他の試薬を含みうる。
【0064】
好ましい一実施形態では、反応混合物はTeg DNA Pol Iを含み、熱安定性TegポリメラーゼIは反応混合物中に、120pg/μL以上、より好ましくは140pg/μL以上、より好ましくは160pg/μL以上、より好ましくは180pg/μL以上、より好ましくは200pg/μL以上、より好ましくは400pg/μL以上、より好ましくは600pg/μL以上の濃度で存在する。
【0065】
好ましい一実施形態では、反応混合物は双性イオン緩衝液を含む。好ましい一実施形態では、双性イオン緩衝液は約pH7.5−8.9の間のpHを有する。好ましい一実施形態では、緩衝液は、有機双性イオン酸および有機双性イオン塩基、カリウムイオン、およびマグネシウムイオンの組み合わせを含む。
【0066】
特に好ましい一実施形態では、反応混合物は、40mMビシン(Bicine)、90mMトリス(Tris)、40mM KCl、4mM酢酸マグネシウム、および100mMソルビトールを含む緩衝液を含む。
【0067】
別の好ましい一実施形態では、反応混合物は、25mMTaps、0.05mg/mL不凍タンパク質I、10.3mMトリス(Tris)、50mM KCl、5mM酢酸マグネシウム、100mMソルビトール、および0.2mg/mLBSAを含む緩衝液を含む。
【0068】
一態様では、本発明は、ここに開示される核酸増幅反応混合物中にTeg DNA Pol Iを含む、核酸増幅反応チューブを提供する。
【0069】
好ましい一実施形態では、増幅反応チューブは、ここに開示される熱サイクル増幅反応混合物中にTeg DNA Pol Iを含む、熱サイクル増幅反応チューブである。
【0070】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応チューブは、ここで開示されるPCR反応混合物中にTegDNAポリメラーゼIを含む、PCR反応チューブである。
【0071】
好ましい一実施形態では、PCR反応チューブは、ここで開示される変性PCR反応混合物中にTeg DNA Pol Iを含む、変性PCR反応チューブである。
【0072】
別の好ましい一実施形態では、PCR反応チューブは、ここで開示されるリアルタイムPCR反応混合物中にTeg DNA Pol Iを含む、リアルタイムPCR反応チューブである。
【0073】
一態様では、本発明は、ここで開示されるTeg DNA Pol Iを含む、核酸、好ましくはDNAであり、好ましくは2本鎖のものを増幅するのに有用である核酸増幅キットを提供する。好ましい一実施形態では、増幅キットはここで開示される増幅反応混合物を含む。
【0074】
好ましい一実施形態では、増幅キットは、核酸、好ましくはDNAであり、好ましくは2本鎖のものを温度サイクルモードによって増幅するのに有用である熱サイクル増幅キットである。熱サイクル増幅キットは、ここで開示されるTeg DNA Pol Iを含む。好ましくは、熱サイクル増幅キットは、ここで開示される熱サイクル増幅反応混合物を含む。
【0075】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅キットは、核酸、好ましくはDNAであり、好ましくは2本鎖のものをPCRによって増幅するためのPCRキットである。PCRキットは、ここで開示されるTeg DNA Pol Iを含む。好ましくはPCRキットは、ここで開示されるPCR反応混合物を含む。
【0076】
好ましい一実施形態では、PCRキットは変性PCRキットであり、好ましくはここで開示される変性PCR反応混合物を含む。
【0077】
別の好ましい一実施形態では、PCRキットはリアルタイムPCRキットであり、好ましくはここで開示されるリアルタイムPCR反応混合物を含む。
【0078】
好ましい一実施形態では、ここで提供される核酸増幅キットは、核酸増幅反応混合物を含み、増幅反応混合物はある量のTeg DNA Pol Iを含むため、反応混合物をテンプレートDNA、それとハイブリダイズ可能なプライマーおよび/またはプローブと混合でき、および任意に適当に希釈できて、負荷された反応混合物を生じ、ここで熱安定性DNAPol Iは、ハイブリダイズしたプライマーを伸長することによってDNAテンプレートを増幅する能力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、環境試料から単離されたすべての遺伝的サーマス(Thermus)系統(種)内の異なる遺伝子座についての酵素対立遺伝子頻度を提供する。
【図2】図2は、サーマス(Thermus)遺伝的系統(種)内の遺伝的多様性を提供する。
【図3】図3は系統樹(MLEE分析)を提供する。
【図4a】図4aは、見出されたすべてのサーマス(Thermus)特異的系統(種)の株について表現型検査陽性の割合を提供する。単離されたサーマス(Thermus)株の、別々の遺伝的系統(種)との関連は、サーマス(Thermus)特異的参照株の酵素対立遺伝子頻度をマーカーとして用いるMLEE分析の結果に基づいて実施した。
【図4b】図4bは、見出されたすべてのサーマス(Thermus)特異的系統(種)のうち、さらに多くの表現型検査陽性株の割合を提供する。
【図5】図5は、さまざまなサーマス(Thermus)遺伝的系統(種)内のチオ硫酸酸化の比を提供する。
【図6】図6は、本発明で考察されるアライメントに用いられた参照配列についてのNCBIデータベース受入番号を提供する。
【図7a】図7aは、T.アクアティカス(T.aquaticus)(Taq)、T.ブロキアヌス(T.brockianus)(Tbr)、T.フラブス(T.flavus)(Tfl)、T.フィリフォルミス(T.filiformis)(Tfl)、T.サーモフィルス(T.thermophilus)(Tth)、T.アンチラニカイヌス(T.antiranikainus)、T.イグニテラエ(T.igniterrae)、T.オシマイ(T.oshimai)、T.スコトダクタス(T.scotoductus)、および4株のT.エガートソニイ(T.eggertssonii)(Teg)の16SrRNA遺伝子についての核酸配列アライメント比較を提供する。
【図7b】図7bは、T.アクアティカス(T.aquaticus)(Taq)、T.ブロキアヌス(T.brockianus)(Tbr)、T.フラブス(T.flavus)(Tfl)、T.フィリフォルミス(T.filiformis)(Tfl)、T.サーモフィルス(T.thermophilus)(Tth)、T.アンチラニカイヌス(T.antiranikainus)、T.イグニテラエ(T.igniterrae)、T.オシマイ(T.oshimai)、T.スコトダクタス(T.scotoductus)、および4株のT.エガートソニイ(T.eggertssonii)(Teg)の16SrRNA遺伝子についての核酸配列アライメント比較を提供する。
【図8】図8は、図7に示される16SrRNA遺伝子断片アライメントに基づく系統樹を示す。
【図9】図9は、T.アクアティカス(T.aquaticus)(Taq)、T.フラブス(T.flavus)(Tfl)、T.フィリフォルミス(T.filiformis)(Tfl)、T.サーモフィルス(T.thermophilus)(Tth)、および7株のT.エガートソニイ(T.eggertssonii)(Teg)のI型DNAポリメラーゼ(PolA)の活性部位モチーフAおよびC間の保存領域についてのアミノ酸配列アライメント比較を提供する。
【図10】図10は、図9の保存領域アライメントに基づいて計算された系統樹を提供する。
【図11a】図11aは、T.アクアティカス(T.aquaticus)(Taq)、T.ブロキアヌス(T.brockianus)(Tbr)、T.フラブス(T.flavus)(Tfl)、T.フィリフォルミス(T.filiformis)(Tfl)、T.サーモフィルス(T.thermophilus)(Tth)、およびT.エガートソニイ(T.eggertssonii)(Teg)由来I型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列アライメント比較を提供する。
【図11b】図11bは、T.アクアティカス(T.aquaticus)(Taq)、T.ブロキアヌス(T.brockianus)(Tbr)、T.フラブス(T.flavus)(Tfl)、T.フィリフォルミス(T.filiformis)(Tfl)、T.サーモフィルス(T.thermophilus)(Tth)、およびT.エガートソニイ(T.eggertssonii)(Teg)由来I型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列アライメント比較を提供する。
【図12】図12は、図11のアミノ酸配列アライメントに基づいて計算された系統樹を提供する。
【図13】図13は、サーマス・エガートソニイ(Thermus eggertssonii)由来の完全長polA遺伝子をコードする発現ベクターPRI−pSO4の物理地図を提供する。
【図14】図14は、4時間の時間経過にわたる、可溶性タンパク質としてのTegDNAポリメラーゼ発現の誘導を示す電気泳動像を提供する。
【図15】図15は、組み換えDNAポリメラーゼIのための大スケール精製工程の略図を提示する。
【図16】図16は、ブチルセファロースでの疎水性相互作用クロマトグラフィーによるTegDNAポリメラーゼの精製のSDS−PAGEゲル分析を提供する。
【図17】図17は、ヘパリンセファロースでのリガンドアフィニティクロマトグラフィーによるTegDNAポリメラーゼの精製のSDS−PAGE分析を提供する。
【図18】図18は、精製組み換えTaq−およびTbrDNAポリメラーゼに対して、TegDNAポリメラーゼ単離の精製最終産物を比較するSDS−PAGEゲル分析を提供する。
【図19】図19は、ベータ−アクチンPCR活性アッセイにおける、Tegの第一段階酵素希釈物のアガロースゲル分析を提供する。
【図20】図20は、三段階ポリメラーゼPCR活性アッセイにおける第一試験の結果を提供する。図20は、既知量のTaqDNAポリメラーゼによって生じた終点PCR産物に対して、TegDNAポリメラーゼ濃縮物のさまざまな希釈によって生じた終点PCR産物の量を比較する電気泳動像を示す。
【図21】図21は、三段階ポリメラーゼPCR活性アッセイにおける最終試験の結果を示す。図21は、既知量のTaqDNAポリメラーゼによって生じた終点PCR産物に対して、TegDNAポリメラーゼ濃縮物のさまざまな希釈によって生じた終点PCR産物の量を比較する電気泳動像を示す。
【図22】図22は、終点PCR産物の量の、3種類のサーマス(Thermus)DNAポリメラーゼ:TaqDNAポリメラーゼ(5U/ul)、TegDNAポリメラーゼ(5U/ulに調整)およびTbrDNAポリメラーゼ(5U/Ulに調整)についてのPCRアッセイに用いられたポリメラーゼ単位の量に対するプロットを提供する。PCR産物の終点量についてのプロット中のデータ点は、図21の電気泳動像の濃度測定に基づいて計算された。
【図23】図23は、同一条件下で発現および精製されたTeg−、Taq−およびTbrDNAポリメラーゼを比較する、DNAポリメラーゼプライマー伸長速度アッセイの電気泳動像を提供する。
【図24】図24は、リアルタイムPCRを用いるTeg、Taq、およびTbr間の熱安定性データ比較を提供する。
【図25】図25は、Teg、Taq、およびTbr間のリアルタイムPCR増幅比較を提供する。
【図26】図26は、G−TおよびG−G塩基対ミスマッチに対するTegDNAポリメラーゼの忠実度を示す。
【図27】図27は、G−TおよびG−G塩基対ミスマッチに対するTaqDNAポリメラーゼの忠実度を示す。
【図28】図28は、TegおよびTaqについてのミスマッチ伸長データを提供する。
【図29】図29は、TegおよびTaqを用いたミスマッチプライマー組み合わせについてのPCR増幅データを提供する。
【図30】図30は、ここで開示される配列を含む表を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0080】
Teg DNA Pol I核酸およびTeg DNA Pol Iタンパク質
一態様では、本発明はTeg DNA Pol Iタンパク質を提供する。本発明のTegDNAポリメラーゼは、PCRにおける使用のための適当な、および一部の場合にはよりよい酵素を提供する。ここで示される通り、TegDNAポリメラーゼは他の一般的に用いられるDNAポリメラーゼI酵素に対して、より速い伸長速度、およびより高い忠実度を含む、顕著な長所を提供する。より高い忠実度の酵素は、正しい産物を増幅するのに、および、誤診および/または発現エラーを結果として生じうる、変異の導入を回避するのに必須である。さらに、より速い伸長速度は、PCR熱プロトコルに必要な時間を低減し、そのようにして実験効率を高めおよび一般費用を低減するのに決定的に重要である。
【0081】
本発明は、プライミングされた1本鎖M13mp18DNAおよびインキュベーション温度60℃を用いてDNA複製アッセイで同一条件下で測定した場合、DNAポリメラーゼが>35塩基/秒であるin−vitroプライマー伸長速度を有しおよびアミノ酸配列の配列番号:2または4を含むDNAポリメラーゼのプライマー伸長速度に対して少なくとも5塩基/秒より速い、単離および精製された好熱性ポリメラーゼに関する。
【0082】
別の好ましい一実施形態では、本発明は、a)測定すべきポリメラーゼよりもDNAテンプレートが10倍過剰で存在し、b)反応が等温条件下で(60℃にて)実施され、c)緩衝液が30mMビシン(Bicine)、59mMトリス(Tris)、50mM KClおよび2mM酢酸マグネシウムを含み、およびd)pHが8.7である条件下で、アミノ酸配列の配列番号:2を含むDNAポリメラーゼのdTTP誤取り込みの頻度と比べて、DNAテンプレート鎖上のGに向かい合った位置での正しいdCTPの取り込みに対してdTTP誤取り込みがより低頻度である、DNAポリメラーゼに関する。
【0083】
別の好ましい一実施形態では、本発明のDNAポリメラーゼは、a)測定すべき酵素が10倍過剰で存在し、b)反応が等温条件下で実施され、c)緩衝液が30mMビシン(Bicine)、59mMトリス(Tris)、50mM KClおよび2mM酢酸マグネシウムを含み、およびd)pHが8.7である条件下で、アミノ酸配列の配列番号:2を含むDNAポリメラーゼのdGTP誤取り込みの頻度と比べて、DNAテンプレート鎖上のGに向かい合った位置での正しいdCTPの取り込みに対してdGTP誤取り込みがより低頻度である。
【0084】
一実施形態では、DNAポリメラーゼは少なくとも一つの内因性エキソヌクレアーゼ活性を有し、ここでDNAポリメラーゼは内因性5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する。
【0085】
別の一実施形態では、DNAポリメラーゼは、アミノ酸配列の配列番号:2を含むDNAポリメラーゼと比べて、テンプレート鎖中のG塩基に向かい合った位置にミスマッチT塩基を有するプライマーを伸長するためのより高い効率を有する。
【0086】
好ましい一実施形態では、DNAポリメラーゼは、配列番号:6、17、18、19、20、21、22および23から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。好ましい一実施形態では、DNAポリメラーゼは配列番号:44から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0087】
本発明はまた、本発明に記載の精製されたDNAポリメラーゼおよび配列番号:6の完全または部分アミノ酸配列を含むキメラポリメラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。本発明は好ましくは、本発明に記載の精製されたDNAポリメラーゼおよび配列番号:44の完全または部分アミノ酸配列を含むキメラポリメラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。
【0088】
好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号6に記載の精製されたキメラポリメラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号44に記載の精製されたキメラポリメラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸配列に関する。
【0089】
本発明はまた、配列番号:5の任意の完全または部分核酸配列を含むベクターに関する。本発明はまた、配列番号:43の任意の完全または部分核酸配列を含むベクターに関する。好ましい一実施形態では、本発明は、ヌクレオチドが、発現されたタンパク質が元の活性を保持するようにアライメントされうる、配列番号5に記載の核酸配列を含むベクターに関する。特に好ましい一実施形態では、ベクターは配列番号5に記載の核酸配列を含む。配列番号43について同様が達成されうる。
【0090】
本発明はまた、1)アミノ酸配列の配列番号:6、44、または17〜23のうちいずれか一つの全体または一部を含むDNAポリメラーゼをコードする単離された核酸に調節可能に結合するプロモーター領域(element)、2)リボソーム結合部位、3)選択可能な代謝マーカー遺伝子、4)宿主細胞において機能的な複製開始点、および任意に5)DNAポリメラーゼをコードする核酸配列転写物の翻訳を促進する3'非翻訳配列領域を含む、請求項10に記載のベクターに関する。
【0091】
本発明は、a)本発明に記載の好熱性DNAポリメラーゼI、任意にb)反応緩衝液、およびc)任意にヌクレオチドを含む核酸複製キットに関する。
【0092】
好ましい一実施形態では本発明は、DNA配列決定キットおよびDNA増幅キットの群から選択されおよび本発明に記載のポリメラーゼを含む、請求項12に記載の核酸複製キットに関する。
【0093】
ここで、下記で図30に列記するいくつかの核酸およびタンパク質配列を開示する。
【0094】
本発明のいくつかのTeg DNA Pol Iタンパク質は真正細菌サーマス・エガートソニイ(Thermus eggertssonii)に「由来する」。ここで使用される通り、特定の細菌属または種「の」または「に由来する」遺伝子とは、特定の細菌属または種の直接の、または直接に由来することを意味しない。正確には、その語句は、特定の細菌属または種の内因性遺伝子への特定遺伝子の対応をいう。
【0095】
Teg DNA Pol Iタンパク質は「機能性」ポリメラーゼである。機能性とは、DNAポリメラーゼが、1本鎖DNAテンプレート鎖にアニーリングしたプライマーの3’末端を3’−5’方向に伸長する速度(速さ)、たとえばプライマー伸長速度によって特徴づけることができる、ポリメラーゼ活性をいう。好ましい一実施形態では、本発明のTegDNAポリメラーゼIは、同一のプライマー伸長アッセイ条件下でTaqDNAポリメラーゼIよりも少なくとも5塩基/秒間速い速度でプライマーの3'末端を伸長する能力によって特徴づけられる。特定の実施形態では、本発明のTegDNAポリメラーゼは、伸長速度が35塩基/秒と等しいまたは35塩基/秒より大、より好ましくは40塩基/秒より大、より好ましくは60塩基/秒より大、より好ましくは70塩基/秒より大、および非常に好ましくは80塩基/秒より大の速度で機能する。I型DNAポリメラーゼの比較される伸長速度は60℃にて、30mMビシン(Bicine)、59mMトリス(Tris)(pH8.7)、50mM KCl、2mM酢酸マグネシウム、250μmol dATP、250μmol dCTP、250μmol dGTP、250μmol dTTP、375ng(0.15pmol)ssM13mp18DNA(ニューイングランドバイオラブズ社(new England Biolabs)、品番N4040S)および3pmolのM13リバース配列決定プライマー(配列番号:41、ニューイングランドバイオラブズ社、品番S1233S)と1単位の各DNAポリメラーゼIを含む20μlの反応物中で測定される。反応物中の新たに合成されたプライマー伸長産物の長さは30秒間隔で合計5分間にわたって測定される。プライマー伸長産物のサイズ(長さ)は、2本鎖参照DNA分子(完全長プライマー伸長産物と同一サイズを有するM13mp18 RF I DNA、ニューイングランドバイオラブズ社、品番N4018S)に対する、1%TEAE−緩衝アガロースゲルでの電気泳動移動度を、比較することによって測定する。
【0096】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質は「熱安定性」ポリメラーゼである。熱安定性とは、80℃を上回る温度による非可逆的不活性化に抵抗性であるポリメラーゼをいう。DNAポリメラーゼは、プライマーを5’から3’への方向に伸長することによって、1本鎖DNAテンプレートに相補的であるDNA分子の形成を合成する。熱安定性DNAポリメラーゼは、熱不活性化に完全に耐性である必要は必ずしもなく、および、したがって、熱処理はそのDNAポリメラーゼ活性をある程度低下させうる。熱安定性DNAポリメラーゼは典型的には好熱性細菌から単離され、Tegが一例である。好ましい一実施形態では、本発明のTeg DNA Pol IはTaqDNAポリメラーゼIと同程度に熱安定性であり、およびTbrDNAポリメラーゼIよりも熱安定性である。
【0097】
好ましい一実施形態では、本発明のTegDNAポリメラーゼは、TaqDNAポリメラーゼIと比較して同等な、またはより好ましくはより高い「忠実度」を示す。ここでは、「忠実度」、「DNAポリメラーゼ忠実度」および「ポリメラーゼ忠実度」とは、プライミング鎖の3’末端での「間違った」ヌクレオチドの取り込みに対して識別するポリメラーゼの能力をいう。「間違った」ヌクレオチドとは、テンプレート鎖中の向かい合った塩基とワトソン/クリック型水素結合を取ることができない塩基を有するヌクレオチドをいう。ポリメラーゼ活性部位での立体構造変化の熱力学制限は「間違った塩基識別」の基礎となる機構を提供する。立体構造的制限は、「非ワトソン−クリック」塩基対のDNAらせん歪みによって強制される。先行技術では、忠実度はしばしば、エラー率の逆数と混同される。ポリメラーゼのエラー率は複雑なパラメーターを表し、複製中にすべて同時に起こる3つの異なる過程の結果に依存する:ミスマッチ塩基の取り込み、ミスマッチ塩基の切り取り(たとえばエキソヌクレアーゼ校正)またはミスマッチ塩基の伸長。忠実度は第一の過程の結果だけを調節する。それはミスマッチ塩基取り込みおよび複製産物中にポリメラーゼ複製エラーを永続的に固定するミスマッチ伸長の協調作用を必要とする。12種類の可能な塩基ミスマッチ組み合わせのそれぞれが、特定のらせん歪み特徴を有する。したがって、任意のポリメラーゼの合成忠実度は、12の個別のミスマッチ塩基対忠実度の平均値を含む。G/T塩基対は、標準のワトソン/クリック塩基対と比較してDNA二重らせんに最小の歪みを生じる。G/G塩基対は歪みが大きいため、DNAポリメラーゼが複製中に未完成DNA鎖のらせん内にそれを組み込むことはほぼ不可能である。したがってG/T塩基対またはG/G塩基対に対する識別は、12種類の理論的に可能なミスマッチ塩基対の集団のうち、忠実度の最低および最高端をそれぞれ示す。DNAポリメラーゼの一般的な忠実度は、その両極の塩基対忠実度の平均として表すことができる。PCRを基礎とする多数の用途について、3’−5’エキソヌクレアーゼを含むポリメラーゼが用いられる。この3’−5’ヌクレアーゼ活性は、エラーを修正するための校正機能を提供する。忠実度はマッチおよびミスマッチdNTP間の競合によって推定されうるが、はるかに便利な方法は、間違ったおよび正しいdNTPについて挿入の動態を個別の反応で測定することである(エコールズ(Echols)およびグッドマン(Goodman),『DNA複製における忠実度機構』("Fidelty Mechanisms in DNA Replication"),Annual Review of Biochemistry,60:477−511,1991,参照により本開示に含まれる)。Kcat(w)/Km(w)のKcat(r)/Km(r)に対する比は、ここでrは正しいヌクレオチドの取り込みを表しおよびwは間違ったヌクレオチドの取り込みを表し、誤挿入効率f(ins)を測定対象の酵素の忠実度はf(ins)の逆数である。

cat−酵素1モル当たりの単位時間に産物へ変換された基質の最大モル数
cat/KM−酵素ヌクレオチド複合体を産物へ変換する効率
Km−Vmax1/2の場合の基質濃度
【0098】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質は明瞭な「ドメイン」を含む。ここでは、「ドメイン」とは、自己安定化しおよびしばしば残りのタンパク質鎖とは独立して折りたたまれる、全体構造の成分をいう。多数のドメインは、1遺伝子または1遺伝子ファミリーのタンパク質産物に独自ではなく、代わりにさまざまなタンパク質に見られる。ドメインはしばしば、属するタンパク質の生物機能を目立って象徴するため、命名されおよび特定される。
【0099】
本発明の多数のTeg DNA Pol Iタンパク質は、少なくとも3つの明瞭なドメイン、特に、N末端5’−3’ドメイン、内部3’−5’−エキソヌクレアーゼドメイン(ヌクレアーゼ活性を持たない)およびポリメラーゼドメインを含む。ポリメラーゼドメインは典型的にはタンパク質のC末端の3分の2に存在し、およびタンパク質のDNA依存性およびRNA依存性DNAポリメラーゼ活性の両方を担う。N末端の3分の1部分は5’−3’−エキソヌクレアーゼドメインを含む。ポリメラーゼドメインのパームサブドメインは、配列番号:6のアミノ酸434−448、556−615、751−830位から成り;ポリメラーゼドメインのサムサブドメインはアミノ酸449−555位を含み、一方ポリメラーゼドメインのフィンガーサブドメインは残りのアミノ酸616位から750位までによって形成される。コドンが最適化される場合、ポリメラーゼドメインのパームサブドメインは、配列番号:44のアミノ酸438−452、560−619、755−834位から成り;ポリメラーゼドメインのサムサブドメインはアミノ酸453−559位を含み、一方ポリメラーゼドメインのフィンガーサブドメインは残りのアミノ酸620位から754位までによって形成される。
【0100】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質は、例示されるアミノ酸配列、または例示される核酸配列によってコードされるものよりも、短くてもまたは長くてもよい。
【0101】
本発明に含まれるTeg DNA Pol Iタンパク質の断片は、好ましくは少なくとも一つの抗原エピトープをTeg DNA Pol Iと共有し、Teg DNA Pol Iとの少なくとも指示された配列同一性を有し、およびここでさらに定義されるTeg DNA Pol Iタンパク質活性を有する。
【0102】
さらに、より完全に概要を下記に示す通り、Teg DNA Pol Iタンパク質は、たとえば、エピトープまたは精製タグの付加、他の融合配列の付加、または追加のコードおよび非コード配列の解明によって、例示したものより長いものを作ることができる。
【0103】
本発明のTeg DNA Pol Iタンパク質および核酸は、好ましくは組み換えである。ここではおよび下記でさらに定義される通り、核酸とは、DNAまたはRNAのどちらか、またはデオキシ−およびリボヌクレオチドの両方を含む分子をいうことができる。核酸は、センスおよびアンチセンス核酸を含む、オリゴヌクレオチド、cDNAおよびゲノムDNAを含む。そのような核酸はまた、生理的環境においてそのような分子の安定性および半減期を増加させるため、リボース−リン酸骨格に修飾を含みうる。
【0104】
核酸は、2本鎖、1本鎖でありうるか、または2本鎖および1本鎖配列の両方の部分を含みうる。当業者に理解される通り、1本鎖の描写(「ワトソン」)はまた他方の鎖の配列(「クリック」)を定義する;したがって、図に示される配列はまた、配列の相補鎖を含む。
【0105】
ここでは組み換え核酸の語によって、一般的に、エンドヌクレアーゼによる核酸の操作による、通常天然には見られない形の、本来in vitroで形成された、核酸を意味する。したがって、直鎖型の単離されたTeg DNA Pol I核酸、または通常結合していないDNA分子のライゲーションによってin vitroで形成された発現ベクターは、共に本発明の目的について組み換えと考えられる。一旦組み換え核酸が作製されおよび宿主細胞または生物へ再導入されたら、それは非組み換え的に、すなわちin vitro操作でなく、むしろ宿主細胞のin vivo細胞機構を用いて、複製する;しかし、そのような一旦組み換えによって作製された核酸は、以降は非組み換え的に複製するが、本発明の目的についてまだ、組み換えと考えられる。
【0106】
同様に、組み換えタンパク質とは、組み換え法を用いて、すなわち上述の通りの組み換え核酸の発現を通じて、作られたタンパク質である。該タンパク質は、通常随伴する一部のまたはすべてのタンパク質および化合物から単離または精製でき、およびしたがって実質的に純粋でありうる。たとえば、単離されたタンパク質は、任意の試料中の総タンパク質の重量で、好ましくは少なくとも約0.5%、より好ましくは少なくとも約5%を構成する、天然状態で通常随伴する物質の少なくとも一部を随伴しない。実質的に純粋なタンパク質は、総タンパク質の、重量で少なくとも約75%を含み、少なくとも約80%が好ましく、および少なくとも約90%が特に好ましい。その定義は、T.エガートソニイ(T.eggertssonii)由来Teg DNA Pol I タンパク質の、別の生物または宿主細胞での産生を含む。タンパク質は、誘導性プロモーターまたは高発現プロモーターの使用を通じて、通常見られるよりも顕著に高い濃度で作製でき、そのためタンパク質は上昇した濃度レベルで作製される。タンパク質は、下記で考察する通りの、エピトープタグの付加、またはアミノ酸置換、挿入および欠失のように、天然では通常見られない形でありうる。
【0107】
一実施形態では、TegDNAポリメラーゼIのコード配列は、全体または一部が、本分野で公知である化学的方法を用いて合成される(カルザース(Caruthers)他,Nuc.Acids Res.Symp.Ser.,7:215−233,1980; クレア(Crea)およびホーン(Horn),Nuc.Acids Res.,9:2331,1980; マテウッチ(Matteucci)およびカルザース(Caruthers),Tetrahedron Lett.,21:719,1980; およびチョウ(Chow)およびケンペ(Kempe),Nuc.Acids Res.,9:2807−2817,1981)。本発明の別の実施形態では、タンパク質自体が、完全長TegDNAポリメラーゼIアミノ酸配列またはその一部を合成するための化学的方法を用いて作製される。たとえば、ペプチドは、固相法によって合成され、樹脂から切断され、および調製高速液体クロマトグラフィーによって精製されうる(クレイトン(Creighton),『タンパク質構造および分子原理』(Proteins Structures and Molecular Principles),WHフリーマン・アンド・カンパニー(W H Freeman and Co),ニューヨーク州ニューヨーク,1983)。本発明の別の実施形態では、合成ペプチドの組成はアミノ酸分析または配列決定によって確認される(クレイトン、前出)。
【0108】
直接ペプチド合成は、さまざまな固相法を用いて実施でき(ロバージュ(Roberge)他,Science 269:202−204,1995)、および自動合成は、たとえば、ABI431Aペプチドシンセサイザー(パーキンエルマー社(Perkin Elmer))を用いて取扱説明書に従って達成されうる。さらに、TegDNAポリメラーゼIのアミノ酸配列、またはその任意の部分を、他の配列と化学的方法を用いて結合し、および/または直接合成中に変化し、変異体ポリペプチドを作製しうる。
【0109】
いくつかの天然に存在するTeg DNA Pol Iタンパク質および核酸がここで例示される。これらはサーマス・エガートソニイ(Thermus eggertssonii)のいくつかの株から得られている。本発明の他の Teg DNA Pol Iタンパク質および核酸はいくつかの方法で同定されうる。たとえば、Teg DNA Pol Iは、ここで例示されるTeg DNA Pol Iとのそのパーセント配列同一性によって、またはここで例示されるTeg DNA Pol I核酸とのそのコード核酸のパーセント同一性によって、同定されうる。
【0110】
一実施形態では、本発明は、ここで例示されるTeg DNA Pol Iタンパク質との、95%より大の、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%、より好ましくは少なくとも約99%同一性を有するTeg DNA Pol Iタンパク質を提供する。
【0111】
別の一実施形態では、本発明は、ここで例示されるTeg DNA Pol I核酸との少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%、より好ましくは少なくとも約99%同一性を有する核酸配列によってコードされるTeg DNA Pol Iタンパク質を提供する。
【0112】
本分野で公知である通り、いくつかの異なるプログラムを用いて、タンパク質または核酸が既知の配列と配列同一性または類似性を有するかどうか特定することができる。詳細な考察については、D.マウント(Mount),『バイオインフォマティクス』(Bioinformatics),コールド・スプリング・ハーバー・プレス社(Cold Spring Harbor Press),ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,New York),2001,ISBN 0−87969−608−7を参照。配列同一性および/または類似性は、スミス(Smith)およびウォーターマン(Waterman),Adv.Appl.Math.2:482 (1981)の局所配列同一性アルゴリズム、ニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch),J.Mol.Biol.48:443 (1970)の配列同一性アライメントアルゴリズムによって、ピアソン(Pearson)およびリップマン(Lipman),PNAS USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実施によって(ウィスコンシン・ジェネティクスソフトウェアパッケージ,ジェネティクス・コンピューター・グループ,ウィスコンシン州マディソン市サイエンスドライブ575における、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA in the ウィスコンシン・ジェネティクス(Wisconsin Genetics)ソフトウェアパッケージ,ジェネティクス・コンピューター・グループ(Genetics Computer Group),ウィスコンシン州マディソン市サイエンスドライブ575(575 Science Drive,Madison,WI)(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, WI)、デベロー他,Nucl.Acid Res.12:387−395(1984)による最適一致配列プログラムを含むがそれらに限定されない、本発明の分屋で公知である標準的方法を用いて、好ましくはデフォルト設定を用いて、または検査によって、決定される。好ましくは、パーセント同一性はFastDBによって下記のパラメーターに基づいて計算される:ミスマッチペナルティ1;ギャップペナルティ1;ギャップサイズペナルティ0.33;および結合ペナルティ30、『配列比較および分析の最新法』(Current Methods in Sequence Comparison and Analysis),『高分子配列決定および合成:方法と応用精選』(Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications),pp 127−149 (1988),アラン・R・リス社(Alan R.Liss,Inc.)。
【0113】
有用なアルゴリズムの一例はPILEUPである。PILEUPは一群の関連配列から複数の配列アライメントを、前進的な対のアライメントを用いて生成する。それはまた、アライメントを生成するのに用いるクラスター関係を示す樹状図をプロットできる。PILEUPはフェング(Feng)およびドゥーリトル(Doolittle),J.Mol.Evol.35:351−360(1987)の前進的アライメント方法の簡易化を用いる;その方法は、ヒギンズ(Higgins)およびシャープ(Sharp)CABIOS 5:151−153(1989)によって記載された方法に類似している。有用なPILEUPパラメーターは、デフォルトギャップ重み3.00、デフォルトギャップ長重み0.10、および加重末端ギャップを含む。
【0114】
有用なアルゴリズムの別の一例は、アルトシュル(Altschul)他,J.Mol.Biol.215,403−410,(1990)およびカーリン(Karlin)他,PNAS USA 90:5873−5787(1993)に記載される、BLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、アルトシュル(Altschul)他,Methods in Enzymology,266:460−480(1996)から得られたWU−BLAST−2プログラムである。WU−BLAST−2はいくつかの検索パラメーターを用い、その大部分がデフォルト値に設定される。調整可能なパラメーターは下記の値を用いて設定される:重なりスパン=1、重なり画分=0.125、語閾(T)=11。HSP S および HSP S2パラメーターは動的値であり、ならびに目的配列が検索されている特定データベースの組成および特定配列の組成に依存してプログラム自身によって決定される;しかし、値は感度を高めるために調整されうる。
【0115】
別の有用な アルゴリズムは、アルトシュル(Altschul)他 Nucleic Acids Res.25:3389−3402によって報告された、ギャップ付きBLASTである。ギャップ付きBLASTはBLOSUM−62置換スコアを用い;閾Tパラメーターは9に設定;ギャップ無し伸長を開始する2ヒット法;ギャップ長kに10+kのコストを負荷;Xuは16に設定、およびXgはデータベース検索段階で40に、およびアルゴリズム出力段階で67に設定する。ギャップ付きアライメントは〜22ビットに相当するスコアによって開始される。パーセントアミノ酸配列同一性値は、アライメント領域中のより長い配列の、マッチする同一残基数を残基総数で割って決定される。より長い配列とは、アライメント領域中に最多の実際の残基を有するものである(アライメントスコアを最大化するためにWU−Blast−2によって導入されたギャップは無視される)。
【0116】
アライメントは、アライメントすべき配列中へのギャップの導入を含みうる。さらに、図に示すタンパク質配列よりも多数のまたは少数のアミノ酸を含む配列については、当然、一実施形態では、配列同一性の割合は、アミノ酸の総数に対する同一アミノ酸の数に基づいて決定される。したがって、一実施形態では、たとえば、図に示すものより短い配列のパーセント配列同一性は、短いほうの配列のアミノ酸の数を用いて決定される。パーセント同一性計算では、挿入、欠失、置換、などといった配列変異のさまざまな現れについては相対重みは割り当てられない。
【0117】
一実施形態では、同一性だけが正のスコアが付き(+1)およびギャップを含むすべての形の配列変異が値0を割り当てられ、配列類似性計算について下記に示す加重スケールまたはパラメーターの必要を回避する。パーセント配列同一性は、たとえば、アライメント領域中のより短い配列の、マッチする同一残基の数を残基総数で割り、および100を掛けて計算できる。より長い配列とは、アライメント領域中に最多の実際の残基を有するものである。
【0118】
同様の方法で、パーセント(%)核酸配列同一性は、ここに例示されるTeg DNA Pol I核酸中のヌクレオチド残基と同一である、候補配列中のヌクレオチド残基の割合として定義される。好ましい方法は、デフォルトパラメーターに設定されたWU−BLAST−2のBLASTNモジュールを利用し、それぞれ1および0.125に設定された重なりスパンおよび重なり画分を使用する。
【0119】
当業者に理解される通り、本発明の配列は、配列決定エラーを含みうる。すなわち、誤ったヌクレオシド、フレームシフト、未知ヌクレオシド、または他の種類の配列決定エラーが任意の配列に存在しうる;しかし、正しい配列は、ここでのホモロジーおよびストリンジェンシー定義内に入る。
【0120】
「核酸」またはオリゴヌクレオチドまたは文法的同等物はここでは、共有結合した少なくとも2個のヌクレオチドを意味する。本発明の核酸は一般的にホスホジエステル結合を含むが、しかし一部の場合には、ここで概略を示す通り、特にアンチセンス核酸またはプローブに関して、たとえば、ホスホラミド(Beaucage, et al., Tetrahedron, 49(10):1925 (1993) およびその参考文献; Letsinger, J. Org. Chem., 35:3800 (1970); Sprinzl, et al., Eur. J. Biochem., 81:579 (1977); Letsinger, et al., Nucl. Acids Res., 14:3487 (1986); Sawai, et al., Chem. Lett., 805 (1984), Letsinger, et al., J. Am. Chem. Soc., 110:4470 (1988); and Pauwels, et al., Chemica Scripta, 26:141 (1986))、ホスホロチオエート(Mag, et al., Nucleic Acids Res., 19:1437 (1991); and U.S. Patent No. 5,644,048)、ホスホロジチオエート(Briu, et al., J. Am. Chem. Soc., 111:2321 (1989))、O−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein,『オリゴヌクレオチド およびアナログ:実践的手法』(Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach), Oxford University Pressを参照)、およびペプチド核酸骨格および結合(see Egholm, J. Am. Chem. Soc., 114:1895 (1992); Meier, et al., Chem. Int. Ed. Engl., 31:1008 (1992); Nielsen, Nature, 365:566 (1993); Carlsson, et al., Nature, 380:207 (1996)を参照, すべて参照により本開示に含まれる))を含む代わりの骨格を有しうる核酸アナログが含まれる。他のアナログ核酸は、陽性骨格を有するもの(Denpcy, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6097 (1995)); 非イオン性骨格(U.S. Patent Nos. 5,386,023; 5,637,684; 5,602,240; 5,216,141; and 4,469,863; Kiedrowshi, et al., Angew. Chem. Intl. Ed. English, 30:423 (1991); Letsinger, et al., J. Am. Chem. Soc., 110:4470 (1988); Letsinger, et al., Nucleoside & Nucleotide, 13:1597 (1994); チャプター2および3, ASC Symposium Series 580, 『アンチセンス研究における糖修飾』("Carbohydrate Modifications in Antisense Research"), Y.S. Sanghui および P. Dan Cook編; Mesmaeker, et al., Bioorganic & Medicinal Chem. Lett., 4:395 (1994); Jeffs, et al., J. Biomolecular NMR, 34:17 (1994); Tetrahedron Lett., 37:743 (1996))およびU.S. Patent Nos. 5,235,033 および 5,034,506, ならびに チャプター6および7, ASC Symposium Series 580, 『アンチセンス研究における糖修飾』("Carbohydrate Modifications in Antisense Research"), Y.S. SanghuiおよびP. Dan Cook編に記載されたものを含む非リボース骨格を含む。一つ以上の炭素環糖を含む核酸、および「ロックされた核酸(locked nucleic acids)」もまた核酸の定義に含まれる(Jenkins, et al., Chem. Soc. Rev., (1995) pp. 169-176を参照)。いくつかの核酸アナログが、Rawls, C & E News, June 2, 1997, page 35に記載される。これらの参考文献のすべてが明示的に参照により本開示に含まれる。リボース−リン酸骨格のこれらの修飾は、標識といった追加部分の付加を円滑化するため、または生理的環境におけるそのような分子の安定性および半減期を増大させるために実施されうる。さらに、天然に存在する核酸およびアナログの混合物が作製されうる。代替的に、異なる核酸アナログの混合物、および天然に存在する核酸およびアナログの混合物が作製されうる。核酸は、指定される通り1本鎖または2本鎖である可能性があり、または2本鎖または1本鎖配列の両方の部分を含みうる。核酸は、ゲノムおよびcDNAの両方のDNA、RNAまたは、核酸がデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの任意の組み合わせを含む核酸であるハイブリッド、および、ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キササニン(xathanine)、ヒポキササニン(hypoxathanine)、イソシトシン、イソグアニン、などを含む任意の塩基の組み合わせでありうる。
【0121】
Teg DNA Pol Iタンパク質をコードする核酸に関して、遺伝子コードの縮重のため、そのすべてが本発明のタンパク質をコードする、極めて多数の核酸が作製されうることが当業者に理解される。したがって、特定のアミノ酸配列を同定しているならば、当業者は、タンパク質のアミノ酸配列を変化させない方法で一つ以上のコドンの配列を単に改変することによって、任意の数の異なる核酸を作製できる。
【0122】
好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:5から成る群から選択されるヌクレオチド配列との、少なくとも約98%、非常に好ましくは少なくとも約99%同一性を有するヌクレオチド配列を含む、Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。非常に好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:43から成る群から選択されるヌクレオチド配列との、少なくとも約98%、非常に好ましくは少なくとも約99%同一性を有するヌクレオチド配列を含む、Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。
【0123】
特に好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:5から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、Teg DNA Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。特に好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:43から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、Teg DNA Pol Iタンパク質をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。
【0124】
一実施形態では、本発明は、ここに記載されるTeg DNA Pol Iタンパク質断片をコードするTeg DNA Pol I核酸を提供する。
【0125】
一部の実施形態では、Pol I核酸はハイブリダイゼーション試験を通じて同定されうる。したがって、たとえば、高ストリンジェンシー条件下で、配列番号:5、好ましくは43から成る群から選択されるヌクレオチド配列と、または配列番号:5、好ましくは43から成る群から選択されるアミノ酸配列をコードするもの、またはその相補鎖、またはその断片またはその相補鎖とハイブリダイズする核酸は、Teg DNA Pol I核酸と考えられる。高ストリンジェンシー条件が本分野で知られている;たとえばサムブルック(Sambrook)他,『分子クローニング:実験の手引き第3版』(Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd edition),2001,コールド・スプリング・ハーバー・プレス社(Cold Spring Harbor Press),ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,New York); および『分子生物学実験プロトコール』(Short Protocols in Molecular Biology),オースベル(Ausubel),他編を参照,共に参照により本開示に含まれる。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、および異なる状況下では異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションについての広範なガイドは、ティッセン(Tijssen),『生化学と分子生物学の方法−核酸プローブとのハイブリダイゼーション』(Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes,『ハイブリダイゼーションの原理の概観と核酸アッセイの戦略』(Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays)(1993)に見られる。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHにて特異的配列について、融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択される。Tmとは(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度下で)標的と相補的であるプローブの50%が標的配列と平衡にてハイブリダイズする温度である(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは、プローブの50%が平衡にて占有されている)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0ナトリウムイオン未満、典型的には約0.01から1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)、pH7.0から8.3にて、および温度が短プローブ(たとえば10から50塩基)について少なくとも約30℃および長プローブ(たとえば50塩基より大)について少なくとも約60℃である条件となる。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドといった不安定化剤の添加によって達成されうる。
【0126】
天然起源から一旦単離されれば、たとえば、プラスミドまたは他のベクター内に含まれまたはそこから直鎖核酸セグメントとして切り出されれば、組み換えPol I核酸は、修飾または変異体核酸およびタンパク質を作製するための前駆体核酸として使用されうる。
【0127】
本発明の核酸を用いて、さまざまな発現ベクターが作製される。発現ベクターは、自己複製する染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに統合されるベクターのどちらでもよい。一般的に、これらの発現ベクターは、Teg DNA Pol Iタンパク質をコードする核酸と調節可能に結合した、転写および翻訳調節核酸を含む。調節配列の語は、特定の宿主生物において、調節可能に結合したコード配列の発現に必要なDNA配列をいう。原核生物に適した調節配列は、たとえば、プロモーター、任意にオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
【0128】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、調節可能に結合している。たとえば、プレ配列または分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するタンパク質前駆体として発現される場合、ポリペプチドのためのDNAと調節可能に結合している;プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合、コード配列と調節可能に結合している;またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を円滑化するような位置にある場合は、コード配列と調節可能に結合している。別の一例として、調節可能に結合したとは、近接するように結合したDNA配列、および、分泌リーダーの場合には、近接しておよび読み取り相(reading phase)にあるように結合したDNA配列をいう。しかし、エンハンサーは近接している必要は無い。結合は、便利な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の方法に従って用いられる。転写および翻訳調節核酸は、一般的に、Pol Iタンパク質を発現するために用いられる宿主細胞に適する;たとえば、バチルス(Bacillus)由来の転写および翻訳調節核酸配列が、タンパク質をバチルスで発現するために好ましく用いられる。多数の種類の適当な発現ベクター、および適当な調節配列が、さまざまな宿主細胞について本分野で知られている。
【0129】
一般的に、転写および翻訳調節配列は、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終止配列、およびエンハンサーまたはアクチベーター配列を含みうるがそれらに限定されない。好ましい一実施形態では、調節配列は、プロモーターおよび転写開始および終止配列を含む。
【0130】
プロモーター配列は、構成的または誘導性プロモーターをコードする。プロモーターは、天然に存在するプロモーターまたはハイブリッドプロモーターのどちらでもよい。二つ以上のプロモーター領域(element)を組み合わせるハイブリッドプロモーターもまた本分野で知られており、および本発明において有用である。
【0131】
さらに、発現ベクターは追加の領域を含みうる。たとえば、発現ベクターは2個の複製系を持つことが可能であり、それによって2種類の生物で、たとえば発現用に哺乳類または昆虫細胞で、および、クローニングおよび増幅用に原核宿主で、維持されることを可能にする。さらに、発現ベクターを組み込むために、発現ベクターは宿主細胞ゲノムと相同な少なくとも一つの配列、および好ましくは発現構造に隣接する2個の相同配列を含む。組み込みベクターは、ベクターの組み入れに適当な相同配列を選択することによって、宿主細胞の特定の遺伝子座へ方向付けることができる。組み込みベクターの構築は本分野でよく知られている。
【0132】
さらに、好ましい一実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための、選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は本分野でよく知られており、および使用される宿主細胞によって異なる。
【0133】
本発明のPol Iタンパク質は、Pol I核酸を含む発現ベクターを用いて形質転換された宿主細胞を、該タンパク質の発現を誘導または引き起こすための適当な条件下で培養することによって作製されうる。Pol Iタンパク質発現に適当な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択によって異なり、および当業者によって通常の実験を通じて容易に確認されうる。たとえば、発現ベクターにおける構成的プロモーターの使用は、宿主細胞の成長および増殖を最適化することを必要とし、一方、誘導性プロモーターの使用は、誘導に適当な増殖条件を必要とする。さらに、一部の実施形態では、採集のタイミングが重要である。たとえば、昆虫細胞発現に用いられるバキュロウイルス系は溶解性ウイルスであり、およびしたがって採集時間選択は産物収量に決定的に重要でありうる。
【0134】
適当な宿主細胞は、酵母、細菌、古細菌、真菌、および昆虫、および哺乳類細胞を含み、動物細胞を含む。特に適しているのは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melonagaster)細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)および他の酵母、大腸菌(E.coli)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、SF9細胞、C129細胞、293細胞、ニューロスポラ(Neurospora)、BHK、CHO、COS、および HeLa細胞、線維芽細胞、シュワン細胞腫細胞株、JurkatおよびBJAB細胞といった不死化哺乳類骨髄性およびリンパ系細胞株である。
【0135】
一実施形態では、Pol Iタンパク質は哺乳類細胞で発現される。哺乳類発現系もまた本分野で知られており、およびレトロウイルス系を含む。哺乳類プロモーターは、哺乳類RNAポリメラーゼに結合、およびTeg DNA Pol Iのコード配列のmRNAへの下流(3')転写を開始する能力のある、任意のDNA配列である。プロモーターは、コード配列の5'末端近くに通常は位置する転写開始領域、および転写開始部位の25〜30塩基対上流に位置するTATAボックスを有する。TATAボックスは、RNAポリメラーゼIIがRNA合成を正しい部位で開始するのを指示すると考えられる。哺乳類プロモーターはまた、典型的にはTATAボックスの100から200塩基対以内の上流に位置する、上流プロモーター領域(エンハンサー領域)を含む。上流プロモーター領域は、転写が開始される率を決定し、および両方向に作用しうる。哺乳類プロモーターとして特に有用なのは、哺乳類ウイルス遺伝子由来のプロモーターであり、なぜなら該ウイルス遺伝子はしばしば高度に発現されおよび広い宿主範囲を有するためである。例は、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーターを含む。
【0136】
典型的には、哺乳類細胞によって認識される転写終止およびポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンの3'側に位置する調節領域であり、およびしたがって、プロモーター領域と共に、コード配列に隣接する。成熟mRNAの3'末端は、部位特異的翻訳後切断およびポリアデニル化によって形成される。転写ターミネーターおよびポリアデニル化シグナルの例は、SV40由来のものを含む。
【0137】
外来核酸を哺乳類宿主、および他の宿主へ導入する方法は本分野でよく知られており、および使用される宿主細胞によって異なる。方法は、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈澱、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウイルス感染、リポソーム中へのポリヌクレオチドの封入、および核へのDNAの直接マイクロインジェクションを含む。
【0138】
好ましい一実施形態では、Pol Iタンパク質は細菌系で発現される。細菌発現系は本分野でよく知られている。
【0139】
適当な細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼを結合、および、Pol Iのコード配列のmRNAへの下流(3’)転写を開始する能力のある、任意の核酸配列である。細菌プロモーターは、コード配列の5'末端近くに通常は位置する転写開始領域を有する。この転写開始領域は典型的には、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。代謝経路酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例は、ガラクトース、ラクトースおよびマルトースといった糖代謝酵素由来のプロモーター配列、およびトリプトファンといった生合成酵素由来の配列を含む。バクテリオファージ由来のプロモーターもまた使用でき、および本分野で知られている。さらに、合成プロモーターおよびハイブリッドプロモーターもまた有用であり、たとえば、tacプロモーターはtrpおよびlacプロモーター配列のハイブリッドである。さらに、細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼに結合しおよび転写を開始する能力を有する非細菌起源の天然に存在するプロモーターを含みうる。
【0140】
機能するプロモーター配列に加えて、効率的なリボソーム結合部位が望ましい。大腸菌(E.coli)では、リボソーム結合部位はシャイン・ダルガノ(Shine−Delgarno)(SD)配列と呼ばれ、および、開始コドン、および開始コドンの3〜11塩基上流に位置する長さ3〜9塩基の配列を含む。
【0141】
発現ベクターはまた、細菌におけるPol Iタンパク質の分泌を提供するシグナルペプチド配列を含みうる。シグナル配列は典型的には、本分野で公知である通り、細胞からのタンパク質の分泌を指示する、疎水性アミノ酸から成るシグナルペプチドをコードする。タンパク質は、増殖培地中に(グラム陽性細菌)、または細胞の内膜と外膜の間に位置する細胞膜周辺腔に(グラム陰性細菌)分泌される。
【0142】
細菌発現ベクターはまた、形質転換されている菌株の選択を可能にするための、選択可能なマーカー遺伝子を含みうる。適当な選択遺伝子は、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンといった薬物に対して耐性を細菌に与える遺伝子を含む。選択可能なマーカーはまた、ヒスチジン、トリプトファンおよびロイシン生合成経路におけるもののような生合成遺伝子を含む。
【0143】
これらの領域が発現ベクターに組み込まれる。細菌用の発現ベクターは本分野でよく知られており、および特に、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、大腸菌(E.coli)、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris)、およびストレプトコッカス・リビダンス(Streptococcus lividans)用のベクターを含む。
【0144】
細菌発現ベクターは、塩化カルシウム処理、エレクトロポレーションなどといった、本分野でよく知られた方法を用いて、細菌宿主細胞を形質転換する。
【0145】
一部の実施形態では、Pol Iタンパク質は昆虫細胞で産生される。昆虫細胞の形質転換のための発現ベクター、および特に、バキュロウイルスを基礎とする発現ベクターは、本分野でよく知られている。
【0146】
一実施形態では、Pol Iタンパク質は酵母細胞で産生される。酵母発現系は本分野でよく知られており、および、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アランス(Candida alans)および C.マルトーサ(maltosa)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クロイベロマイセス フラジリス(Kluyveromyces fragilis)および K.ラクチス(lactis)、ピキア・ギレリモンディ(Pichia guillerimondii)およびP.パストリス(pastoris)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤローウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のための発現ベクターを含む。酵母における発現のための好ましいプロモーター配列は、誘導性GAL1,10プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、および酸性ホスファターゼ遺伝子由来プロモーターを含む。選択可能な酵母マーカーは、ツニカマイシンに対する耐性を与えるADE2、HIS4、LEU2、TRP1、およびALG7;G418に対する耐性を与えるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子;および酵母が銅イオンの存在下で増殖するのを可能にするCUP1遺伝子を含む。
【0147】
好ましい一実施形態では、TegDNAポリメラーゼIは「精製されている」または「単離されている」。ここでは、DNAPol Iを精製または単離するとは、試料からの夾雑物の除去をいう。DNAPol Iタンパク質は、試料中に他の何の成分が存在するかに応じて、当業者に公知であるさまざまな方法で単離または精製されうる。標準的な精製方法は、電気泳動、分子的方法、免疫学的方法、およびイオン交換、疎水性、親和性クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー法、および等電点電気泳動を含む。たとえば、Pol Iタンパク質は、標準的な抗Teg DNA Pol I抗体カラムを用いて精製されうる。限外ろ過およびダイアフィルトレーション法もまた、タンパク質濃縮と併用して、有用である。適当な精製法の一般的指針については、スコープス(Scopes),R.,『タンパク質精製』(Protein Purification),シュプリンガー・フェアラーク社(Springer−Verlag),ニューヨーク州(1982)を参照。必要な精製の程度は、Teg DNA Pol Iタンパク質の使用に応じて変化する。一部の場合には精製は不要である。
【0148】
好ましい一実施形態では、組み換えTeg DNA Pol Iは、中温性細菌宿主細胞で発現され、および70から80℃の間の温度での熱処理を通じた宿主細胞タンパク質の除去によって精製される;組み換えTegDNAポリメラーゼIのパーセントは、それによって試料中で増大する。単離されたポリペプチドとは、(1)起源細胞から単離される際に通常随伴する、ポリヌクレオチド、脂質、糖質、または他の材料の少なくとも約50%から分離されており、(2)単離されたポリペプチドが天然で結合しているポリペプチドのすべてまたは一部と(共有または非共有相互作用によって)結合しておらず、(3)天然で結合していないポリペプチドと、(共有または非共有相互作用によって)調節可能に結合している、または(4)天然に存在しない、本発明のポリペプチドをいう。好ましくは、単離されたポリペプチドは、治療、診断、予防または研究使用に干渉する、天然の環境で見出される他のいかなる夾雑性ポリペプチドまたは他の夾雑物も実質的に含まない。
【0149】
DNAPol I変異体
好ましい一実施形態では、本発明はPol Iタンパク質変異体を提供する。これらの変異体は、3分類のうち一つ以上に該当する:置換、挿入および欠失変異体。これらの変異体は通常、Pol Iタンパク質をコードするDNA中のヌクレオチドの位置特異的変異誘発によってカセットまたはPCR変異誘発を用いて、または、変異体をコードするDNAを作製するための本分野でよく知られた他の方法によって、およびその後、上記で概説された通り、DNAを組み換え細胞培養で発現することによって、調製される。しかし、変異体タンパク質断片はまた、確立された方法を用いてin vitro合成によって調製されうる。アミノ酸配列変異体は、それらを天然に存在する対立遺伝子または種間Pol Iタンパク質と区別する性質である、変異の規定の性質によって特徴づけられる。一実施形態では、変異体は、天然に存在するアナログと同一の質的生物活性を示す。好ましい一実施形態では、改変された特徴を有する変異体が、下記により完全に概説される通り、提供される。
【0150】
アミノ酸配列変異を導入するための部位または領域が規定される一方、変異自体は規定される必要が無い。たとえば、任意の部位での変異の性能を最適化するために、ランダム変異誘発を標的コドンまたは領域で実施でき、および発現されたタンパク質変異体を目的活性の最適組み合わせについてスクリーニングできる。既知の配列を有するDNA中の規定位置で置換変異を実施する方法はよく知られており、たとえば、M13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発である。変異体のスクリーニングは、ここに記載される通り、Pol I活性を測定するアッセイを用いて実施できる。
【0151】
アミノ酸置換は、典型的には単一残基のものである;挿入は通常は約1ないし20アミノ酸のオーダーであるが、それより顕著に大きい挿入もまた許容されうる。欠失は約1ないし約20残基の範囲であるが、一部の場合には欠失ははるかに大きい可能性がある。
【0152】
置換、欠失、挿入またはその任意の組み合わせが、最終誘導体に到達するために使用されうる。一般的にこれらの変化は、分子の変化を最小化するために、数個のアミノ酸について実施される。しかし、一部の状況では、より大きな変化が許容されうる。Pol Iタンパク質の特徴に小さな変化が望まれる場合は、置換が一般的に下記の表に従って実施される:

【0153】
機能または免疫学的同一性における実質的な変化が、表Iに示されるものよりも保存性が低い置換を選択することによって実施される。たとえば、より顕著に影響しうる置換が実施されうる:変化の部分のポリペプチド骨格の構造、たとえばアルファらせんまたはベータシート構造;標的部位での分子の電荷または疎水性;または側鎖のかさ。ポリペプチドの性質に最大の変化を生じると一般的に予測される置換は、(a)親水性残基、たとえばセリルまたはスレオニルが、疎水性残基、たとえばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニルを(または、によって)置き換える;(b)システインまたはプロリンが、任意の他の残基を(または、によって)置き換える;(c)陽性側鎖を有する残基、たとえばリシル、アルギニル、またはヒスチジルが、陰性残基、たとえばグルタミルまたはアスパルチルを(または、によって)置き換える;または(d)かさ高い側鎖を有する残基、たとえばフェニルアラニンが、側鎖を有しない残基、たとえばグリシンを(または、によって)置き換えるものである。
【0154】
一実施形態では、天然に存在するアナログと同一の質的生物活性を示す変異体が提供される。
【0155】
好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:2、4、6、8、10および12から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むPol Iタンパク質の活性と比較して上昇したPol I生物活性を示すPol I変異体を提供する。
【0156】
別の好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:2、4、6、8、10および12から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むPol Iタンパク質の活性と比較して低下したPol I生物活性を示すPol I変異体を提供する。
【0157】
好ましい実施形態では、Teg DNA Pol Iは、任意の各ドメインまたはドメインの組み合わせに随伴する触媒機能を促進、低減または消去するさまざまな手段によって変化されうる。適当な欠失および位置特異的変異誘発手順は本分野でよく知られている。
【0158】
一実施形態では、本発明は、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性の低減した変異体Teg DNA Pol Iを提供する。好ましい一実施形態では、TegPol I変異体の、配列番号6の43位に対応するグリシン残基が、アスパラギン酸またはグルタミン酸に変異している。
【0159】
一実施形態では、本発明は、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性の低減した変異体Teg DNA Pol Iを提供する。好ましい一実施形態では、TegPol I変異体の、配列番号44の47位に対応するグリシン残基が、アスパラギン酸またはグルタミン酸に変異している。
【0160】
一実施形態では、変異体Teg DNA Pol Iは、配列番号:6の679位に、そこのグルタミン酸残基をリジンまたはアルギニンといった正に荷電したアミノ酸で置き換える置換を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、変異体Teg DNA Pol Iは、配列番号:44の683位に、そこのグルタミン酸残基をリジンまたはアルギニンといった正に荷電したアミノ酸で置き換える置換を有するアミノ酸配列を含む。本分野で提供されるDNA基質に結合したTaqDNAポリメラーゼIの三次元構造の分析は、TaqDNAポリメラーゼ配列の配列番号:2中の対応する位置(681)のグルタミン酸の負電荷が、DNA基質中のプライミング鎖の負に荷電したリン酸骨格と接触することを示している。その接触は、静電反発作用を生じ、ポリメラーゼの伸長速度および処理能力を制限する。グルタミン酸の代わりにリジンをその位置に有する、本分野で公知であるTaqDNAPol Iの変異体は、より速い伸長速度およびより良好な処理能力を示している。それらの性質を有する変異体TegDNAポリメラーゼは、迅速PCR、DNA配列決定、長い標的配列の増幅といったさまざまな用途に望ましい。
【0161】
一実施形態では、変異体Teg DNA Pol Iは、配列番号:6の612−613位に単一または複合置換を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、変異体Teg DNA Pol Iは、配列番号:44の616−617位に単一または複合置換を有するアミノ酸配列を含む。Taqおよび大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIについて先行技術で実施されたランダム変異誘発実験は、それらの配列中の対応する位置のアミノ酸残基が、重合基質としてのrNTPとdNTPとの間の識別を制御することを示している。それらはまた、RNAまたはDNAでプライミングされたDNAテンプレート、プライマーの3'末端に塩基ミスマッチを有するテンプレートおよび完全にアニーリングしたプライマーの間、および標識および非標識dNTP基質の間の識別を制御する。これらの位置の置換の性質に基づいて、さまざまな用途のための有用な性質を持ついくつかの変異体Teg DNA Pol Iが提供されうる。ミスマッチプライマーの伸長に対して識別が向上した変異体は、対立遺伝子特異的PCRに有用である。標識ddNTP基質に対する親和性が向上した変異体は、蛍光DNA配列決定およびリアルタイムPCRに有用である。
【0162】
一実施形態では、本発明は、ジデオキシリボヌクレオチドの取り込みに対する識別が低下した変異体TePol Iを提供する。そのような変異体は、DNA配列決定に有用である。好ましい一実施形態では、Pol I変異体は、配列番号6の665位に相当する位置の野生型フェニルアラニンの代わりに置換残基を有するアミノ酸配列を含む。好ましい一実施形態では、置換残基はチロシンである。同一の変異が配列番号44に存在するのが好ましい。
【0163】
一実施形態では、本発明は、配列番号:6の830位のC末端グリシン残基がグルタミン酸残基で置換された変異体Teg DNA Pol Iを提供する。好ましい一実施形態では、本発明は、配列番号:44の834位のC末端グリシン残基がグルタミン酸残基で置換された変異体Teg DNA Pol Iを提供する。C末端グルタミン酸残基を有する他のサーマス(Thermus)DNAポリメラーゼIの三次元構造は、その残基のベータカルボキシル基は、ポリメラーゼ活性部位において決定的に重要なマグネシウムイオンを安定化および配位するのに関与することを示す。その追加のカルボキシル基を提供することは、変異体TegDNAポリメラーゼIが連続的DNA合成を実施できる有効なマグネシウム濃度を低下させる。マグネシウム濃度の上昇はDNA増幅PCRの特異性に負の影響を有するため、より低いマグネシウム濃度で機能する能力は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に決定的に重要である。
【0164】
一実施形態では,変異体Teg DNA Pol Iは、配列番号:6に示されるアミノ酸配列のN末端に4個の追加のアミノ酸残基Met、Pro、Arg/LysおよびGlyを有する。好ましい一実施形態では、変異体Teg DNA Pol Iは、配列番号:44に示されるアミノ酸配列のN末端に4個の追加のアミノ酸残基Met、Pro、Arg/LysおよびGlyを有する。DNA基質に結合したTaqDNAポリメラーゼの解読された三次元構造に基づき、これらの3個の追加のN末端残基は、N末端ヌクレアーゼドメイン中のDNA結合部位の一部である。追加のN末端アミノ酸の非存在下では、TegDNAポリメラーゼはそのDNA基質に対して弱まった結合親和性および強度を有する。強化されたDNA基質結合性を有するTeg DNA Pol I変異体は、配列番号:6に示される野生型配列を有するTeg DNA Pol Iよりも良好な処理能力およびより速い伸長速度を有する。改善された処理能力およびより速い伸長速度は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用途を実施するのに用いられる熱安定性DNAポリメラーゼの重要な機能的性質である。それらは、より高い感度でより長い標的配列の増幅を可能にし、試料中の必要とするDNAテンプレートを少なくする。この実施形態における変異体Teg DNA Pol Iの2位における追加のプロリン残基は、先行技術でよく確立されている、大腸菌(E.coli)においてN末端アミノ酸残基を安定化する規則に従って、大腸菌(E.coli)宿主細胞の内因性細胞質プロテイナーゼによるN末端分解に対して組み換えポリメラーゼを安定化する。
【0165】
本発明の一部の実施形態では、タンパク質からのアミノ酸の欠失は、コードする遺伝物質中の欠失によって、または変異またはフレームシフトによる翻訳終止コドンの導入によって達成される。別の実施形態では、該タンパク質の一部を除去するために、タンパク質分子のタンパク質分解処理が実施される。さらに別の実施形態では、欠失変異体は、野生型配列を制限消化し、および適当に設計したオリゴマーを目的の活性をコードする消化断片へアニーリングして新しい開始部位を導入することによって構築される。
【0166】
一実施形態では、変異体Teg DNA Pol Iは、N末端5’−3’−エキソヌクレアーゼドメインを欠く切断DNAPol Iであり、該DNAPol Iは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。エキソヌクレアーゼ活性を欠く該切断変異体Teg DNA Pol Iは本質的に、配列番号:6の残基289から830で示されるアミノ酸配列を含む。エキソヌクレアーゼ活性を欠くTeg DNA Pol Iの別の切断形は本質的に、配列番号:44の残基293から834で示されるアミノ酸配列を含む。
【0167】
Pol Iポリペプチドの共有修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有修飾の一つの種類は、Pol Iポリペプチドの標的アミノ酸残基を、該ポリペプチドの選択された側鎖またはN−またはC末端残基と反応できる有機誘導化剤と反応させることを含む。二官能基剤との誘導体化が、より十分に下記で述べられている通りに、たとえば、抗Pol I抗体を精製するための方法での使用のためにまたはスクリーニングアッセイのために、Pol Iを非水溶性担体マトリクスまたは表面と架橋するために有用である。一般的に用いられる架橋剤は、たとえば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、たとえば、4−アジドサリチル酸を有するエステル、ホモ二官能性イミドエステル、3,3'−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)のようなジスクシンイミジルエステル、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンのような二官能性マレイミドを含み、および、メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような薬剤を含む。
【0168】
他の修飾は、グルタミニルおよびアスパラギニル残基のそれぞれ対応するグルタミルおよびアスパルチル残基への脱アミド、プロリンおよびリジンの水酸化、セリルまたはスレオニル残基の水酸基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のアミノ基のメチル化[T.E.クレイトン(Creighton)、『タンパク質:構造および分子的性質』(Proteins: Structures and Molecular Properties),W.H.フリーマン・アンド・カンパニー(W.H.Freeman & Co.),サンフランシスコ(San Francisco),pp.79−86 (1983)],N末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0169】
本発明によって考慮されるDNAPol Iタンパク質の別の種類の共有修飾は、ポリペプチドをさまざまな非タンパク質性高分子の一つ、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンと、U.S.Patent Nos.4,640,835;4,496,689;4,301,144;4,670,417;4,791,192または4,179,337に示される方法で結合することを含む。
【0170】
DNAPol I融合タンパク質およびDNAPol Iキメラタンパク質
本発明の一部の実施形態では、TegDNAポリメラーゼIのドメインを、「融合タンパク質」を作製するのに使用できる。ここでは、「融合タンパク質」の語は、外来タンパク質断片と結合した目的タンパク質を含むキメラタンパク質をいう。融合パートナーは、宿主細胞で発現される通りの組み換えキメラタンパク質の溶解性を高めることができ、宿主細胞または培養上清からの組み換え融合タンパク質の精製を可能にする親和性タグを提供でき、または両方である。融合パートナーは、塩基誤取り込みを訂正する3'−5'−校正エキソヌクレアーゼ活性またはDNAテンプレートとの結合強度および親和性を改善するための追加のDNA結合部位といった、親ポリメラーゼには無い新規の望ましい機能を導入しうる。前者の場合のそのような融合パートナーの適した例は、古細菌校正DNAポリメラーゼの内部3'−5'−エキソヌクレアーゼドメインである。後者の場合の融合パートナーの例は、Ssod7のような好熱性古細菌由来の小熱安定性ヒストン様タンパク質、またはメタノコッカス・ジャナシイ(Methanococcus janaschii)由来DNAトポイソメラーゼの複数DNA結合ドメインである。必要に応じて、融合タンパク質は目的タンパク質から、本分野で公知であるさまざまな酵素的または化学的手段によって除去されうる。
【0171】
本発明の一部の実施形態では、TegDNAポリメラーゼIは、「キメラタンパク質」を作製するのに使用されうる。ここでは、「キメラタンパク質」および「キメリカルタンパク質」とは、二つ以上の親タンパク質に由来するアミノ酸配列部分を含む単一タンパク質分子をいう。ここでは「一部」の語は、タンパク質をいうのに用いる場合(「任意のタンパク質の一部」のように)、そのタンパク質の断片をいう。断片は、アミノ酸残基3個から、アミノ酸配列全体からアミノ酸1個を引いたものまでのサイズ範囲でありうる。これらの親分子は、遺伝的に異なる起源に由来する類似タンパク質、単一生物に由来する異なるタンパク質、または異なる生物に由来する非類似タンパク質でありうる。
【0172】
本発明のPol Iポリペプチドはまた、別の非相同ポリペプチドまたはアミノ酸配列と融合されたPol Iポリペプチドを含むキメラ分子を形成する方法で修飾されうる。一実施形態では、そのようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとのPol Iポリペプチドの融合を含む。好ましい一実施形態では、そのようなタグは下記に示す「フラグタグ」である。エピトープタグは一般的に、Pol Iポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に配置される。ポリペプチドのそのようなエピトープタグ形の存在は、タグに対する抗体を用いて検出されうる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体を用いる親和性精製によって、またはエピトープタグに結合する別の種類の親和性マトリクスによって、Pol Iポリペプチドが容易に精製されることを可能にする。代替的な一実施形態では、キメラ分子は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定領域との、Pol Iポリペプチドとの融合を含みうる。キメラ分子の二価形については、そのような融合は、下記にさらに考察する通り、IgG分子のFc領域とでありうる。
【0173】
さまざまなタグポリペプチドおよびそのそれぞれの抗体は本分野でよく知られている。例は、ポリヒスチジン(poly−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;インフルエンザHAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[フィールド(Field)他,Mol.Cell.Biol.,8:2159−2165(1988)];c−mycタグおよびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[エヴァン(Evan)他,Molecular and Cell Biology,5:3610−3616(1985)];および単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[パボルスキー(Paborsky)他,Protein Engineering,3(6):547−553(1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラグペプチド[ホップ(Hopp)他,BioTechnology,6:1204−1210(1988)];KT3エピトープペプチド[マーティン(Martin)他,Science,255:192−194(1992)];チューブリンエピトープペプチド[スキナー(Skinner)他,J.Biol.Chem.,266:15163−15166 (1991)];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[ルッツ・フレイヤームス(Lutz−Freyermuth)他,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393−6397(1990)]を含む。
【0174】
Pol Iタンパク質はまた、本分野でよく知られている方法を用いて、融合タンパク質としても作製されうる。したがって、たとえば、モノクローナル抗体の作製のために、目的のエピトープが小さい場合は、Pol Iタンパク質をキャリヤータンパク質に融合して免疫原を形成しうる。代替的に、発現を高めるために、または別の理由で、Pol Iタンパク質は融合タンパク質として作製されうる。たとえば、Pol Iタンパク質がペプチドである場合、該ペプチドをコードする核酸は、発現目的で別の核酸と結合されうる。同様に、本発明のPol Iタンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、などといったタンパク質標識と結合されうる。
【0175】
一部の実施形態では、本発明のPol I核酸、および/またはタンパク質、および/または抗体は標識化されている。標識化とはここでは、化合物が、該化合物の検出を可能にするために結合した少なくとも一つの元素、同位体または化合物を有することを意味する。一般的に、標識は4つに分類される:a)同位体標識、放射性または安定同位元素でありうる;b)免疫標識、抗体または抗原でありうる;c)着色または蛍光色素;d)磁性部分。標識は任意の位置で化合物に組み込むことができる。
【0176】
核酸複製
一態様では、本発明は、核酸分子をTegDNAポリメラーゼIを含む複製反応混合物中で複製反応に供することを含む、核酸分子を複製する方法を提供する。
【0177】
核酸複製とは、テンプレート核酸分子が完全にまたは一部複製される過程をいう。したがって、核酸複製反応の産物は、複製しているテンプレート核酸分子と完全にまたは一部相補的でありうる。核酸複製は、伸長産物の各位置で、テンプレート核酸の塩基と相補的なヌクレオチドを組み込んで、テンプレート核酸とハイブリダイズしたプライマーを5'−3'方向へ伸長することによって実施される。プライマーは、たとえば、1本鎖DNAテンプレートの領域とハイブリダイズする合成オリゴヌクレオチドでありうる。プライマーはまた、たとえば、1本鎖DNAテンプレートの第2の領域と相補でありおよび自己プライミングできる、1本鎖DNAテンプレートの一部でありうる。核酸複製反応の範囲内に含まれるのは、等温複製反応、配列決定反応、増幅反応、熱サイクル増幅反応、PCR、迅速PCR、およびロングレンジPCRである。
【0178】
核酸複製反応で複製される核酸は、好ましくはDNAであり、および複製は好ましくは、TegDNAポリメラーゼIのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性が関与する。
【0179】
好ましい一実施形態では、ここで提供される反応混合物は、双性イオン緩衝液を含む。好ましい一実施形態では、双性イオン緩衝液は約pH7.5〜8.9の間のpHを有する。好ましい一実施形態では、緩衝液は、有機双性イオン酸および有機双性イオン塩基、カリウムイオン、およびマグネシウムイオンの組み合わせを含む。
【0180】
非常に好ましい一実施形態では、ここで提供される反応混合物は、30mMビシン(Bicine)、59mMトリス(Tris)、50mM KCl、2mM酢酸マグネシウムを含む。
【0181】
ここでは核酸複製反応において、プライマー伸長が実施される温度は、好ましくは約60〜72℃の間、より好ましくは約62〜68℃の間である。
【0182】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応でプライマーアニーリングおよびプライマー伸長が実施される温度は、約60〜72℃、より好ましくは約62〜68℃の間、より好ましくは約62〜65℃の間であるが、最適温度は本分野でよく知られている通り、プライマー長、塩基含量、テンプレートとのプライマー相補性の程度、および他の因子によって決定される。
【0183】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応で変性が実施される温度は、約90〜95℃の間、より好ましくは92〜94℃の間である。好ましい熱サイクル増幅方法は、約90℃ないし約95℃、より好ましくは92〜94℃のピーク温度、および約10ないし約100サイクル、より好ましくは約25ないし約50サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0184】
核酸増幅
一態様では、本発明は、ここで開示されるTegDNAポリメラーゼIを含む増幅反応混合物中で核酸分子を増幅反応に供することを含む、核酸分子を増幅するための方法を提供する。好ましくは、増幅反応は、ここで記載される増幅反応チューブ中で実施される。
【0185】
核酸分子は、文献に記載された手動または自動増幅方法のうち任意のものにしたがって増幅されうる。ここでは「増幅」とは、目的ヌクレオチド配列のコピー数を増加するための任意のin vitro方法をいう。増幅された核酸は好ましくはDNAであり、および増幅は好ましくはTegDNAポリメラーゼIのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を含む。より好ましくは、DNA増幅は、C末端にGlyからGluへのアミノ酸置換およびN末端に4個の追加のアミノ酸(Met、Pro、Arg、Gly)を有する変異体TegDNAポリメラーゼIを含む。
【0186】
一実施形態では、核酸増幅は、DNA分子またはプライマーへのヌクレオチドの取り込みを結果として生じ、それによって、核酸テンプレートと相補的な新しいDNA分子を形成する。形成されたDNA分子およびそのテンプレートは、別のDNA分子を合成するためのテンプレートとして使用されうる。ここでは、一つの増幅反応は、多数回のDNA複製から成りうる。DNA増幅反応は、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)を含む。一つのPCR反応は、10から100「サイクル」のDNA分子の変性および合成から成りうる。そのような方法は、PCR(参照により本開示に含まれる米国特許第4,683,195および4,683,202号明細書に記載される通り),鎖置換増幅(「SDA」)(参照により本開示に含まれる米国特許第5,455,166に記載される通り),および核酸配列基礎型増幅(「NASBA」)(参照により本開示に含まれる米国特許第5,409,818号明細書に記載される通り)を含むがそれらに限定されない。たとえば、増幅は、低減された熱でのDNA融解の効率増大のためにヘリカーゼさえ使用しうる、ローリングサークル複製系によって達成されうる(ユザコウ(Yuzhakou)他,Cell 86:877−886(1996)およびモク(Mok)他,J.Biol.Chem.262:16558−16565(1987)を参照,参照により本開示に含まれる)。
【0187】
好ましい一実施形態では、熱サイクル増幅反応で変性が実施される温度は、約90℃から95℃より大の間,より好ましくは92〜94℃の間である。好ましい熱サイクル増幅方法は、約90℃ないし95℃より大、より好ましくは92〜94℃のピーク温度、および約10ないし約100サイクル、より好ましくは約25ないし約50サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0188】
好ましい一実施形態では、(a)標的配列の末端が十分に詳細に知られているため、末端にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーが合成されうる、および(b)連鎖反応を開始するために少量の標的配列が利用可能であるならば、PCR反応が、TegDNAポリメラーゼIを用いて、含まれる反応段階数に対して指数的な量で、少なくとも一つの標的核酸配列を生じるために実施される。連鎖反応の産物は、使用した特定のプライマーの末端に対応する末端を有する別々の核酸2本鎖となる。
【0189】
精製形または非精製形の、任意の起源の核酸が、目的の標的核酸配列を含むかまたは含むと考えられるならば、開始核酸として使用されうる。したがって、本工程は、たとえば、DNAまたはメッセンジャーRNAを含むRNAを使用でき、そのDNAまたはRNAは1本鎖または2本鎖でありうる。さらに、それぞれの1本鎖を含むDNA−RNAハイブリッドが使用されうる。これらのいずれかの核酸の混合物もまた使用でき、または前の増幅反応から同一のまたは異なるプライマーを用いて生じた核酸もまたそのように使用できる。増幅された核酸は好ましくはDNAである。増幅すべき標的核酸配列は、より大きな分子の一部だけでよく、または、異なる分子として最初は存在しえ、結果として標的配列が核酸全体を構成する。増幅すべき標的配列は、最初に純粋な形で存在する必要は無い:ヒト全DNAに含まれるβ−グロビン遺伝子の一部、または特定の生物試料の非常に小さい画分だけを構成する特定の微生物に起因する核酸配列の一部といった、複雑な混合物の小さい画分でありうる。開始核酸は、同一のまたは異なりうる、二つ以上の目的の標的核酸配列を含みうる。したがって、本方法は、多量の1つの標的核酸配列を作製するためだけでなく、同一のまたは異なる核酸分子上に位置する複数の標的核酸配列を同時に増幅するためにも有用である。
【0190】
核酸は、細菌、酵母、ウイルス、および植物または動物といった高等生物を含む、任意の起源に由来するDNAまたはRNA、ならびにプラスミドおよびクローン化したDNAまたはRNAを含み、および任意の起源から得ることができる。DNAまたはRNAは、たとえば、血液または他の液体、またはたとえば絨毛膜絨毛または羊膜細胞といった組織材料から、マニアチス(Maniatis)他,『分子クローニング:実験の手引き』(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),(ニューヨーク(New York):コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー社(Cold Spring Harbor Laboratory))pp 280−281(1982)によって記載されたようなさまざまな方法によって抽出されうる。
【0191】
任意の特異的(すなわち、標的)核酸配列が本方法によって作製されうる。標的配列の両端の十分な数の塩基が十分に詳細に判りさえすれば、目的の配列の異なる鎖とハイブリダイズする、および、一方のプライマーから合成される伸長産物が、テンプレート(相補鎖)から分離される際、規定の長さの核酸への、他方のプライマーの伸長のためのテンプレートとなりうるように配列に沿った相対的位置にハイブリダイズする、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーが調製されうる。配列の両端での塩基についての知識が多いほど、プライマーの標的核酸配列に対する特異性は高くなり、および、したがって、該処理の効率は高くなる。プライマーの語は以後、特に、増幅すべき断片の末端配列に関する情報に何らかのあいまいさがある場合は、二つ以上のプライマーをいう可能性があると理解される。たとえば、核酸配列がタンパク質配列情報から推論される場合、遺伝コードの縮重に基づくすべての可能なコドン変異を表す配列を含むプライマーの集合が、各鎖について使用されうる。この集合に由来する1つのプライマーが、増幅すべき目的の配列の末端と相同となる。
【0192】
一部の代替的な実施形態では、ランダムプライマー、好ましくはヘキサマーが、テンプレート核酸分子を増幅するために用いられる。そのような実施形態では、増幅される正確な配列はあらかじめ定められていない。
【0193】
さらに、単一プライマーを用いる片側増幅が実施されうることが、当業者に理解される。
【0194】
オリゴヌクレオチドプライマーは、たとえば、ホスホトリエステルおよびホスホジエステル法またはその自動化された実施形態といった、任意の適当な方法を用いて調製されうる。そのような自動化された一実施形態では、参照により本開示に含まれるビューケージ(Beaucage)他,Tetrahedron Letters,22:1859−1862 (1981)によって記載される通り、ジエチロホスホラミダイトが出発材料として用いられ、および合成されうる。修飾された固相担体上でオリゴヌクレオチドを合成するための一つの方法が、参照により本開示に含まれる米国特許第4,458,006号明細書に記載される。生物起源から単離されているプライマーを用いることもまた可能である(たとえば制限エンドヌクレアーゼ消化物)。
【0195】
好ましいプライマーは、約15〜100、より好ましくは約20〜50、非常に好ましくは約20〜40塩基の長さを有する。
【0196】
標的核酸配列は、その配列をテンプレートとして含む核酸を用いることによって増幅される。核酸が2本鎖を含む場合、テンプレートとして使用できる前に、別個の段階としてまたはプライマー伸長産物の合成と同時に、核酸の鎖を分離する必要がある。この鎖分離は、物理的、化学的、または酵素的手段を含む任意の適当な変性法によって達成されうる。核酸の鎖を分離する1つの物理的方法は、核酸が完全に(>99%)変性するまで核酸を加熱することを含む。典型的な熱変性は、約1ないし10分間の範囲の時間にわたる、約80℃ないし105℃、好ましくは約90℃から約98℃、さらにより好ましくは93℃から95℃の範囲の温度を含みうる。鎖分離はまた、ヘリカーゼとして知られる酵素の分類からの酵素、または、ヘリカーゼ活性を有しおよびDNAを変性することが知られている酵素RecAによっても誘導されうる。参照により本開示に含まれる、RecAを用いるための方法は、C.ラディング(Radding),Ann.Rev.Genetics,16:405−37(1982)に総説があり、およびヘリカーゼを用いて核酸の鎖を分離するのに適した反応条件は、Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology,Vol.XLIII『DNA:複製および組み換え』(DNA:Replication and Recombination)(ニューヨーク(New York):コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー社(Cold Spring Harbor Laboratory),1978)によって記載される。
【0197】
増幅すべき配列を含む元の核酸が1本鎖である場合、その相補鎖が、オリゴヌクレオチドプライマーをそこに加えることによって合成される。適当な単一プライマーが添加される場合、プライマー、TegDNAポリメラーゼI、および下記の4種類のヌクレオチドの存在下で、プライマー伸長産物が合成される。産物は1本鎖核酸と一部相補的となり、および該核酸鎖とハイブリダイズして等しくない長さの鎖の2本鎖を形成し、2本鎖は上記の通り1本鎖へ分離して2本の分離した相補的な1本鎖を生じうる。
【0198】
元の核酸が、増幅すべき配列を含む場合、生じるプライマー伸長産物は元の核酸の鎖と完全に相補的となり、および等しい長さの鎖の2本鎖を元の核酸と形成し、1本鎖分子へ分離される。
【0199】
核酸鎖の相補鎖が分離される際、核酸が元は2本鎖でも1本鎖でも、該鎖は別の核酸鎖の合成のためのテンプレートとして用いられる準備が出来ている。この合成は任意の適当な方法を用いて実施されうる。一般的に、それは緩衝水溶液中で生じる。一部の好ましい実施形態では、緩衝液pHは約7.5〜8.9である。好ましくは、モル過剰(クローン化した核酸については、通常は約1000:1プライマー:テンプレート、およびゲノム核酸については、通常は約106:1プライマー:テンプレート)の2つのオリゴヌクレオチドプライマーが、分離されたテンプレート鎖を含む緩衝液へ添加される。しかし、当然、ここでの処理が診断用途に用いられる場合は相補鎖の量は未知でありうるため、相補鎖の量に対するプライマーの量を確実に決定することはできない。しかし、実際問題として、添加するプライマーの量は一般的に、増幅すべき配列が複雑な長鎖核酸鎖の混合物中に含まれる場合、相補鎖(テンプレート)の量よりモル過剰となる。処理の効率を改善するためにはモル大過剰が好ましい。
【0200】
ヌクレオシド三リン酸、好ましくはdATP、dCTP、dGTP、dTTPおよび/またはdUTPもまた、適当な量で合成混合物に添加される。
【0201】
新規に合成された鎖およびその相補核酸鎖は、2本鎖分子を形成し、それは処理の次の段階で用いられる。次の段階では、2本鎖分子の鎖は上記の手順のうちのいずれかを用いて分離され、1本鎖分子を与える。
【0202】
新しい核酸は1本鎖分子上で合成される。上記の条件下で反応が進行するために必要であるならば、追加のポリメラーゼ、ヌクレオチド、およびプライマーが添加されうる。再び、合成はオリゴヌクレオチドプライマーの一端で開始され、およびテンプレートの1本鎖に沿って進行して、別の核酸を生じる。
【0203】
鎖分離および伸長産物合成の段階は、目的の量の特定核酸配列を生じるのに必要な回数反復されうる。生じた特定核酸配列の量は、指数的に増加する。
【0204】
2つ以上の特定核酸配列を、最初の核酸、または核酸の混合物から作製することが望まれる場合、適当な数の、異なるオリゴヌクレオチドプライマーが利用される。たとえば、2つの異なる特定核酸配列を作製すべき場合、4つのプライマーが利用される。プライマーのうち2つは特定核酸配列の一方に特異的であり、および残りの2つのプライマーは第2の特定核酸配列に特異的である。この方法で、2つの異なる特定配列のそれぞれが、本処理によって指数的に作製されうる。もちろん、異なるテンプレート核酸配列の末端配列が同一である場合は、プライマー配列は互いに同一となり、およびテンプレート末端配列と相補的となる。
【0205】
さらに、上述の通り、代替的な一実施形態では、ランダムプライマー、好ましくはヘキサマーが、テンプレート核酸分子を増幅するのに用いられる。
【0206】
さらに、単一プライマーを用いる片側増幅が実施されうる。
【0207】
本発明は、各段階後に新しい試薬が添加される段階形式で、または同時実施でき、すべての試薬が最初の段階で、または一部段階的および一部同時に添加され、所定数の段階後に新しい試薬が添加される。たとえば安定剤のような、追加の材料は、必要に応じて添加されうる。目的の量の特定核酸配列を作製するために適当な長さの時間が経過後、反応は、酵素を任意の公知の方法で不活性化することによって、または反応の成分を分離することによって、停止されうる。
【0208】
したがって、本発明に記載の核酸分子の増幅では、核酸分子を、好ましくは熱安定性TegDNAポリメラーゼIを含む組成物と、適当な増幅反応混合物中で接触させる。
【0209】
一実施形態では、本発明は、「ロングレンジPCR」と一般に呼ばれる方法によって大きい核酸分子を増幅する方法を提供する(バーンズ(Barnes),W.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:2216−2220(1994)(「バーンズ」);チェン(Cheng),S.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:5695−5699(1994),参照により本開示に含まれる)。約5〜6キロベースより大の核酸分子を増幅するのに有用な1つの方法では、標的核酸分子を接触させる組成物は、TegDNAポリメラーゼIを含むだけでなく、3'−5'エキソヌクレアーゼ活性を示す低濃度の第2のDNAポリメラーゼ(「exo+」ポリメラーゼ)(好ましくは熱安定性修復型ポリメラーゼ、またはpolCαサブユニット)も、濃度を約0.0002〜200単位/ミリリットル、好ましくは約0.002〜100単位/mL、より好ましくは約0.002〜20単位/mL、さらにより好ましくは約0.002〜2.0単位/mL、および非常に好ましくは濃度を約0.40単位/mLで含む。本方法での使用に好ましいexo+ポリメラーゼは、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)PolC、Pfu/DEEPVENTまたはTli/NENT(商標)(バーンズ(Barnes);米国特許第5,436,149号明細書、参照により本開示に含まれる);サーモトガ種由来の熱安定性ポリメラーゼ、たとえばTmaPol I(米国特許第5,512,462号明細書、参照により本開示に含まれる);およびサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neaPol Itana)から単離されたある種の熱安定性ポリメラーゼおよびその変異体、たとえばTne(3'exo+)である。サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)のPolC産物もまた好ましい。ロングレンジPCRの考察については、たとえば、参照により明示的に本開示に含まれるデイビーズ(Davies)他,Methods Mol Biol.2002;187: 51−5を参照。
【0210】
核酸配列決定
一態様では、本発明は、TegDNAポリメラーゼを含む配列決定反応混合物中での配列決定反応に核酸を供することを含む、核酸、好ましくはDNAを配列決定するための方法を提供する。
【0211】
好ましくは、使用されるTegDNAポリメラーゼIは、配列決定反応混合物中の3'末端ジデオキシヌクレオチドを除去できる3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。
【0212】
さらに、配列決定については、本発明に記載のTeg変異体が用いられることが好ましい。本発明に記載のこのTegPol I変異体は、配列番号6の665位に対応する位置に、野生型フェニルアラニンの代わりに置換残基を有するアミノ酸配列を含む。好ましい一実施形態では、置換残基はチロシンである。配列番号43中に前記置換を有することもまた好ましい。
【0213】
核酸分子は、文献に記載された手動または自動配列決定方法のいずれかに従って配列決定されうる。そのような方法は、ジデオキシ配列決定方法(「サンガー(Sanger)配列決定」;サンガー(Sanger),F.,他,J.Mol.Biol.,94:444−448(1975);サンガー(Sanger),F.,他,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74:5463−5467 (1977);米国特許第4,962,022および5,498,523,参照により本開示に含まれる)、ならびにPCRに基づく方法およびより複雑なPCRに基づく核酸フィンガープリンティング法によって、たとえばランダム増幅多型DNA(「RAPD」)分析(ウィリアムズ(Williams),J.G.K.,他,Nucl.Acids Res.,18(22):6531−6535,(1990),参照により本開示に含まれる)、任意プライミングPCR(Arbitrarily Primed PCR)(「AP−PCR」)(ウェルシュ(Welsh),J.,他,Nucl.Acids Res.,18(24):7213−7218,(1990),参照により本開示に含まれる)、DNA増幅フィンガープリンティング(「DAF」)(カエタノ・アノレス(Caetano−Anolles)他,Bio/Technology,9:553−557,(1991),参照により本開示に含まれる)、マイクロサテライトPCRまたはマイクロサテライト領域DNA指定増幅(「DAMD」)(ヒース(Heath),D.D.,他,Nucl.Acids Res.,21(24): 5782−5785,(1993),参照により本開示に含まれる)、および増幅断片長多型(「AFLP」)分析(ヴォス(Vos),P.,他,Nucl.Acids Res.,23(21):4407−4414 (1995);リン(Lin),J.J.,他,FOCUS,17(2):66−70,(1995),参照により本開示に含まれる)を含むがそれらに限定されない。
【0214】
配列決定すべき核酸分子をTegDNAポリメラーゼIと配列決定反応混合物中で一旦接触させると、配列決定反応は上記で開示される手順または本分野で公知である手順に従って進行しうる。
【0215】
キット
一態様では、本発明は、ここで開示される通りのTegDNAポリメラーゼIを利用する核酸複製のためのキットを提供する。本発明に記載のキットは、少なくとも、ここで開示される通りの本発明に係るDNAポリメラーゼIを含む。
【0216】
好ましい一実施形態では、核酸増幅キットは、緩衝液、ヌクレオチド、またはここに記載される通りの、ヌクレオチドを含む緩衝液を含む。
【0217】
本発明に記載の核酸配列決定キットは、TegDNAポリメラーゼIおよび好ましくはジデオキシヌクレオチド三リン酸を含む。配列決定キットは、標準的な核酸配列決定手順を実施するために必要な、たとえばピロホスファターゼ、配列決定ゲルを処方するためのアガロースまたはポリアクリルアミド媒体、および配列決定された核酸の検出に必要な他の成分のような、追加の試薬および化合物をさらに含みうる(DNA配列決定の方法に関する米国特許第4,962,020 および 5,498,523を参照)。
【0218】
核酸増幅キットは好ましくは、TegDNAポリメラーゼIおよびdNTPを含む。増幅キットは、標準的な核酸増幅手順を実施するために必要な、追加の試薬および化合物をさらに含みうる(PCRによるDNA増幅の方法に関する、米国特許第4,683,195 および 4,683,202を参照、参照により本開示に含まれる)。
【0219】
別の好ましい実施形態では、本発明の核酸複製キットは、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する第2のDNAポリメラーゼをさらに含みうる。好ましいのはPfu/DEEPVENT、Tli/VENT(、Tma、Tne(3’exo+)、およびその変異体および誘導体である。PolCもまた好ましい。
【0220】
一実施形態では、核酸増幅キットは、「縮重プライマー」を用いてPCR用途を実施するために必要な成分をさらに含みうる。「縮重プライマー」の語は、塩基多型を有するさまざまな相同配列へのアニーリングおよびその増幅を可能にするように、配列中の数箇所でいくつかの選択肢を有するプライマーをいう。
すなわち:
5’−TCG AAT TCI CCY AAY TGR CCN T−3’(配列番号35)
Y = ピリミジン = C / T (縮重度= 2X)
R = プリン = A / G (縮重度 = 2X)
I = イノシン = C / G / A / T
N = ヌクレオチド = C / G / A / T (縮重度 = 4X)
【0221】
縮重プライマー中に設計されうる、アミノ酸の高度に保存された領域またはモチーフの証拠がある;これらの領域は、種間で保存されている可能性がある。縮重プライマーは、次いで、これらの配列を釣り上げるのに使用されうる。この方法で増幅された配列は、次いで、配列が正しいことを確認するために配列決定されうる。それらは次いで、ゲノムライブラリ(原核)またはcDNAライブラリ(真核)から目的遺伝子を釣り上げるためのプローブとして使用されうる。
【0222】
一実施形態では、核酸増幅キットは、「リアルタイムPCR」用途を実施するために必要な成分をさらに含みうる。「リアルタイムPCR」の語は、蛍光シグナルの検出および定量に基づく系を表す。このシグナルは、反応中のPCR産物の量に比例して増加する。各サイクルで蛍光放出の量を記録することによって、PCR産物の量における最初の顕著な増加が標的テンプレートの開始量と相関する、指数期の間のPCR反応を監視することが可能である。核酸標的の開始コピー数が多いほど、蛍光の顕著な増加が早く観察される。3〜15サイクルの間に測定される、ベースライン値を上回る蛍光の顕著な増加は、蓄積したPCR産物の検出を示す。成分は、挿入色素、蛍光標識されたプライマーおよびプローブ、およびその誘導体を含むがそれらに限定されない。
【0223】
本発明のキットは説明書を含みうる。
【0224】
ベクターおよび宿主細胞
本発明は、本発明のポリヌクレオチド分子を含むベクター、およびそのようなベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。本発明のポリヌクレオチドのいずれも、一般的に選択可能なマーカーおよび複製開始点を含むベクターに含まれうる。ベクターは、細菌またはウイルス分子に由来するもののような、適当な転写および/または翻訳調節配列をさらに含む。そのような調節配列の例は、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、および適当な配列を含む。プロモーターヌクレオチド配列がコード配列の転写を指示する場合、プロモーターヌクレオチド配列はコードDNA配列と調節可能に結合している。
【0225】
本発明の標的ポリペプチドをコードする分子のクローニングに適したベクターの選択は、ベクターが形質転換する宿主細胞、および、該当する場合は、標的ポリペプチドを発現するべき宿主細胞に依存する。適当な宿主細胞は上記で考察されているが、原核生物、酵母などの生物を含む。具体例は、大腸菌属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)およびサルモネラ属(SalmonellaI)の細菌、およびシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、およびスタフィロコッカス属(Staphylococcus)のメンバー;サッカロマイセス属(Sacchoromyces)、ピキア属(Pichia)、およびクルベロマイセス属(Kluveromyces)の酵母を含む。
【0226】
本発明のTegDNAポリメラーゼIは、非相同タンパク質またはペプチドをコードする配列と組み換えによって結合され、融合タンパク質構造物を生じうる。そのような非相同タンパク質またはペプチドは、たとえば、精製の向上、分泌の増大、または安定性の増大を可能にするために含められうる。たとえば、シグナルペプチド(分泌リーダー)をコードする核酸配列は、TegDNAポリメラーゼIがシグナルペプチドを含む融合タンパク質として翻訳されるように、TegDNAポリメラーゼI配列とフレーム内で融合されうる。
【0227】
特定ベクターへの挿入、特定発現系または宿主での使用の容易さ(たとえば、制限部位を改変することによる)、などを促進するための、本発明のポリヌクレオチド分子をコードするTegDNAポリメラーゼIの改変は、公知でありおよび本発明での使用が考慮されている。TegDNAポリメラーゼIポリペプチドの作製のための遺伝子工学的方法は、無細胞発現系、細胞系、宿主細胞、組織、および動物モデルにおけるポリヌクレオチド分子の発現を含む。
【0228】
抗体
本発明の新規ポリペプチド、およびそのセグメントは、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を生じるために使用されうる。抗体の設計および産生のための方法は本分野で知られており、たとえば、『抗体:実験の手引き』(Antibodies: A Laboratory Manual),ハーロー(Harlow)およびランド(Land)(編),1988コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス社(Cold Spring Harbor Laboratory Press),ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor ,New York);『モノクローナル 抗体,ハイブリドーマ:生物分析の新次元』(Monoclonal Antibodies,Hybridomas: A New Dimension in Biological Analysis),ケネット(Kennet)他 (編),1980プレナム・プレス社(Plenum Press),ニューヨーク(New York)を参照。
【実施例】
【0229】
例1:新規サーマス(Thermus)種−T.エガートソニイ(T.eggertssonii)−の「表現型特徴づけ、多座酵素電気泳動」(MLEE)による同定およびアイスランドの地熱部位からの環境分離体の16S rRNA系統分析
計101検体の天然細菌分離体が、沿岸部(Snaefellsnes、OxarfjordurおよびReykjanes)、および低地(Hveragerdi)および高地領域(Hveravellir、HrafntinnuskerおよびHagongur)の両方を含む、アイスランドの8箇所の別々の地熱領域の水および堆積物から単離された。これらの場所は、植生および全体的な物理化学性が多様で、広い範囲のpHおよび温度、異なる水分活性および化学組成にわたった。採取から3時間後、試料をR2Aおよび160培地上に塗沫し、および72℃および78℃にて1〜2日インキュベートした(スキルニスドティル(Skirnisdottir)他2000c)(リーズナー(Reasoner)およびゲルドライヒ(Geldreich)1985)。淡黄色のコロニーを取り、および160培地上での反復した塗沫によって精製した。増殖および特性検査は液体160培地または160寒天プレート上で72℃にて実施した。160およびR2A培地上で72および78℃にて1日インキュベートした後、直径2〜3mmの淡黄色のコロニーが出現した。結果として生じたコロニーを160培地上でさらに精製した。
【0230】
多座酵素電気泳動(MLEE)分析を、101検体のサーマス(Thermus)種分離体を別々の遺伝的/分類学的系統と関連づけるために最初に実施した。したがって、この試験は、世界のさまざまな場所で分離された、系統保存機関に寄託された参考株を含んだ。米国イエローストーン国立公園で分離されたサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)YT−1株(基準株,DSM 625)、ニュージーランドで分離されたサーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)Wai33 A.1株(基準株,DSM 4687,ATCC 43280)、日本で分離されたサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)HB8株(基準株,DSM 579,ATCC 27634;旧名はフラボバクテイリウム・サーモフィラム(Flavobacterium thermophilum)であった)、日本で分離されたサーマス・フラブス(Thermus flavus)AT−62株(DSM 674,ATCC 33923)、米国イエローストーン国立公園の温泉から分離されたサーマス・ブロキアヌス(Thermus brockianus)YS38株(基準株 NCIMB 12676)、米国の人工地熱系から分離されたサーマス属未同定種(Thermus sp.)X−1株(ATCC 27978)、およびアイスランドの水道湯から分離されたサーマス・スコトダクタス(Thermus scotoductus)SE−1株(基準株 ATCC 51532)。
【0231】
多座酵素電気泳動(MLEE)は、任意の集団におけるいくつかの酵素の異なる対立遺伝子の分布をマッピングするために用いられる電気泳動法である。遺伝的関係は、共有される対立遺伝子の割合に基づく、遺伝子型の類似性から計算される。MLEEは、多数の試料を同時に処理することができる安価な方法である。それはDNAと比較できる:種の分離においてはDNAハイブリダイゼーション、分類学的方法としては、種以下のレベルで非常に高感度であるため、階層分類により適している。MLEE分析のための細胞は下記の方法によって調製された。
【0232】
精製後、分離体を一夜65℃にて160培地寒天プレート上で成育し、および掻き取って採集した。細胞をTE緩衝液(10mMトリス(Tris)−HClおよび1mM EDTA,pH 8.0)に懸濁して5ml中に約1gとし、および次いでフレンチプレスで700psiにて破砕した。粗抽出物を20000 X g にて30分間4℃で遠心分離し、および上清を回収し、および−80℃にて使用まで保存した。使用前に、試料を再び遠心分離し、および清澄な上清を回収した。試料を7.5 % (w/v) ポリアクリルアミドゲルで泳動し、および泳動後にゲルを、アルカリンホスファターゼ(AP)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)、エステラーゼ(EST)(非特異的)、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ(GPI)、ヘキソキナーゼ(HK)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ヌクレオシドホスホリラーゼ(NP)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)および非特異的デヒドロゲナーゼ(UDH)についてアッセイした。酵素染色の実証は、0.2Mトリス(Tris)緩衝液(pH8.0)がここでは用いられた以外は別に記載されている(マンチェンコ(Manchenko)1994;ペツルスドティル(Petursdottir)他2000)。各酵素の特徴を示す電気泳動像は、負極移動度の降順に番号を付され、対応する構造遺伝子座にて対立遺伝子と結びつけられた。酵素活性の不在はヌル対立遺伝子が原因とされた。10個の酵素遺伝子座にわたる対立遺伝子の特徴的な組み合わせ(多座遺伝子型)を電気泳動型(ET)とした。
【0233】
多座酵素電気泳動によって特徴づけられた101個のサーマス(Thermus)株間の遺伝的多様性および系統関係を、作者Dr.T.S.ホイッタム(Whittam)の好意で提供された、コンピューターソフトウェアパッケージETDIVおよびETCLUSによって分析した。ETまたは分離体のどちらかでの酵素遺伝子座における遺伝的多様性はETまたは分離体での対立遺伝子頻度h=(1−Σxi2)(n/n−1)から計算され、ここでxiは第i番目の対立遺伝子の頻度であり、およびnはETまたは分離体の数である。平均遺伝的多様性(H)は、すべての遺伝子座にわたるh値の算術平均である。群内多様性HSは、別々の試料採取場所(部分集団)について得られた多様性値の平均として計算された。総遺伝的多様性HTは、全体としての集団について計算された多様性値である。細分された集団については、総多様性HTは、部分集団内の多様性よりも大きくなる。ナイ(Nei)の遺伝子分化係数(ナイ他 1983)GSTを次いで、(HT−HS)/HTとしてETDIVソフトウェアを用いて計算した。この係数は、全体の変動のうちどのくらい大きい割合が、部分試料間の分化が原因であるかを示す。参考株を含めた、すべての分離体の平均結合アルゴリズムに基づく樹状図を作成した(図参照)。距離はETのペア間のミスマッチ遺伝子座の割合として測定した。ETのペア間の遺伝的距離は、異なる対立遺伝子が存在した(ミスマッチ)酵素遺伝子座の割合として表し、およびETのクラスター化を、遺伝的距離のマトリクスから、平均結合法(UPGMA)によって実施した(コーガント(Caugant)他 1987;ペツルスドティル(Petursdottir)他 2000)。MLEE分析の結果を図に要約する。
【0234】
101検体のアイスランドのサーマス(Thermus)株のMLEE分析に基づき、サーマス(Thermus)の7つの別々のおよび遺伝的に高度に分岐した集団が観察された(図を参照)。系統のうち6つは、以前にアイスランドで見つかっている、有効に記載されたサーマス(Thermus)種の、T.ブロキアヌス(T.brockianus)、T.サーモフィルス(T.thermophilus)、T.オシマイ(T.oshimai)、T.スコトダクタス(T.scotoductus)、T・アントラニキアニイ(T.antranikianii)および T.イグニテラエ(T.igniterrae)に割り当てることができた。T.アクアティカス(T.aquaticus)および T.フィリフォルミス(T.filiformis)はアイスランドに近縁を持たないように見える。5つの分離体の1つの系統が明らかに新規サーマス(Thermus)種を表す。
【0235】
表現型分析および生理学的分析を、MLEE分析からの分離体の部分集合について実施した。この分析用に選択された分離体は、同一系統のおよび異なる地理上の領域に由来する、いくつかの異なるクローンを代表するように選択された。
【0236】
細胞形態を、160培地での増殖後、対数増殖期における位相差顕微鏡によって分析した。コロニー形態を、160培地寒天プレート上で18時間65℃にて増殖後にすべての株について測定した。すべての株をグラム染色した。
【0237】
増殖を温度50、65および78℃にて160培地プレート上で調べた。増殖をpH5.0、6.0、8.0、8.7および9.5にて160培地寒天プレート上で分析し、およびpHはHClおよびNaOHを用いて調整した。
【0238】
塩およびイオン耐容を、0.5、1および2%NaCl、50 mM MgSO4、50 mM CaSO4、2 mM CuSO4、50 mM Na2SO4、50 mM Na2SO3および50 mM Na223を加えた160培地寒天プレート上で試験した。キレート剤EDTAの存在下での増殖を、2および5mM EDTAを加えた160培地寒天プレート上で分析した。
【0239】
単一炭素源の利用を、以前に記載した通り0.2〜0.4%有機化合物を含む最少培地寒天プレート上で試験した(クリストヤンソン(Kristjansson)他 1994;ペツルスドティル(Petursdottir)他 1996)。増殖性を下記の単一炭素源について調べた:酢酸、アラビノース、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、カゼイン、クエン酸、ギ酸、フルクトース、ガラクトース、グルタミン酸、グルタミン、グルコース、グリセロール、ヒスチジン、アルファ−ケトグルタル酸、ラクトース、ロイシン、リジン、リンゴ酸、マルトース、オルニチン、プロリン、ピルビン酸、ラフィノース、ラムノース、セリン、ソルビトール、コハク酸、スクロース、デンプン、酒石酸、スレオニン、バリン、およびキシロース。
【0240】
抗生物質に対する感受性を、160培地プレート上で試験した。アンピシリン(10μg)、バシトラシン(10U)、クロラムフェニコール(30μg)、ゲンタマイシン(10μg)、ナリジクス酸(30μg)、ペニシリン−G(10U)、リファンピシン(2μg)、ストレプトマイシン(10μg)、テトラサイクリン(30μg)およびバンコマイシン(30μg)を含むオキソイド社(Oxoid)6mmディスクを用いた。阻止帯の直径を測定し、およびオキソイド社標準値に従って感受性を採点した。増殖性をすべての上記試験について1、3および5日間インキュベーション後に調べた。
【0241】
硝酸還元を、マイクロタイタープレートを用いる改変を用い、以前に記載された通り、2および5日齢培養を用いて試験した(スミバート(Smibert)他1994)。細胞形態を、160培地での対数増殖期に位相差顕微鏡法によって分析した。
【0242】
コロニー形態を、160培地寒天プレート上で18時間増殖後に測定した。新規サーマス(Thermus)種系統のコロニーは、特徴的な拡散性コロニー形態を有し、および同一の生息地から採取された多数の他のサーマス(Thermus)種よりも薄い黄色着色を有した。単一桿体が位相差顕微鏡法によって見られた。細胞は長さが2ないし4μmおよび直径が0.6〜0.8μmのさまざまなサイズであった。
【0243】
新規サーマス(Thermus)種系統のプレート上のコロニーについて最適増殖温度は約70℃であった。プレート上の最大増殖温度は約84℃であり、および最低増殖温度は40℃であった。しかし、液体中では、最大増殖温度は82℃であり、および42℃未満では増殖は起こらなかった。新規サーマス(Thermus)種の全株が、約4.9ないし9.8のpH増殖範囲を有し、pH最適範囲が広かった。
【0244】
塩耐容試験および炭素源利用の結果を図4aおよび4bに示す。新規サーマス(Thermus)種系統の全株が、0.5および1%NaClで増殖したが、2%塩濃度では増殖しなかった。単一炭素源として試験された36種類の異なる化合物のうち、すべての新規サーマス(Thermus)種株は、酢酸、アラビノース、アルギニン、ギ酸、ガラクトース、グルタミン、グルコース、グリセロール、プロリン、ピルビン酸、ソルビトール、スクロース、デンプン、およびキシランレマゾールブリリアントブルーを利用できた。新規サーマス(Thermus)種系統の1株であるIT−2795はまた、ヒスチジンおよびロイシンを利用できた。
【0245】
すべての新規サーマス(Thermus)種株は、リファンピシンおよびナリジクス酸に耐性の試験結果になったが、しかしIT−2795株はまたゲンタマイシンに耐性であった(図4b参照)。
【0246】
カタラーゼ活性の存在を、3%(v/v)過酸化水素溶液を用いて試験し、およびオキシダーゼ活性を1%(w/v)テトラメチル−p−フェニレンジアミンの室温での酸化によって測定した(スミバート(Smibert)およびクリーグ(Krieg)1994)。すべての株はグラム陰性であり、および胞子を生じなかった。すべての株の新規サーマス(Thermus)種は、オキシダーゼ、カタラーゼおよび硝酸還元について陽性であった。最も特徴的な表現型特性として、5つの新規サーマス(Thermus)種株のどれもチオ硫酸酸化の能力が無く、一方、同一の生息地から分離されたT.ブロキアヌス(T.brockianus)、T.サーモフィルス(T.thermophilus)、T.イグニテラエ(T.igniterrae)、T.スコトダクタス(T.scotoductus)、T.オシマイ(T.oshimai)の株の大多数が、チオ硫酸酸化について陽性試験結果になった(図5参照)。
【0247】
系統試験のための株は、MLEE分析によって得られたUPGMAクラスター化に基づいて選択された。各系統のいくつかの代表の系統位置は、16S rRNA遺伝子を系統マーカーとして用いて部分配列決定によって定めた。下記の株を分析した:165、220、346、2101、2103、2120、2123、2121、2126、2127、2133、2135、2789、2791、2795、および6230。DNAは、ダイナビーズDNAダイレクト(Dynabeads DNA Direct)キット(ダイナル社(Dynal))を用いて取扱説明書に従って単離された。ダイナザイム(DyNAzyme)ポリメラーゼ(フィンザイムズ社(Finnzymes))を取扱説明書に従って用いることによって、16S rRNA遺伝子のPCR増幅を実施した。プライマーセットはF9およびR1544から成った(スキルニスドティル(Skirnisdottir)他、2001)。反応は下記の通りであった:25サイクル95℃にて50秒、52℃にて50秒、および72℃にて3分間。PCR産物の配列決定前に、PCR産物を、キアクイック(QIAquick)PCR精製キット(キアゲン社(QIAGENI))を用いて取扱説明書に従って精製した。株由来の16S rRNA遺伝子を、ABI 377 DNAシークエンサーで、ビッグダイ(BigDye)ターミネーターサイクル配列決定迅速反応キットを用いて取扱説明書に従って配列決定した(PEアプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems))。プライマーR805(5’−GACTACCCGGGTATCTAATCC’−3; 805−785)(配列番号:42)を配列決定に用いた。BLAST検索後、配列を、リボソーム・データベース・プロジェクト(マイダク(Maidak)他 1999)から得られたサーマス(Thermus)群内の他の配列と、およびドイツのミュンヘン工科大学微生物学科(Department of Microbiology of the Technical University in Munich,Germany)のARBデータベースアライメント(W.ルドヴィヒ(Ludwig),http://www2.mikro.biologie.tu−muenchen.de/arb/about.html)を用いることによって、手動でアライメントした。ARBデータベースのフィルターに基づく相同塩基位置を、アライメントに含め、および比較分析に用いた。進化距離を、対類似性から、ジュークス(Jukes)およびカンター(Cantor)の補正を用いることによって計算した(ジュークス他 1969)。距離樹は近隣結合アルゴリズムによって構築した。
【0248】
この分析で使用した生物の16S rRNA配列のGenBank受入番号は下記の通りである:サーマス・スコトダクタス(Thermus scotoductus)SE−1(AF032127)、サーマス属(Thermus)未同定種 NMX2 A.1(L09661)、サーマス属(Thermus)未同定種 ViI7(Z15061)、サーマス・アントラニキアニイ(Thermus antranikianii)HN3−7(Y18411)、サーマス属(Thermus)未同定種 ac−1(L37520)、サーマス・イグニテラエ(Thermus igniterrae)RF−4(Y18406)、SRI248(AF255591)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)YT−1(L09663)、未同定サーマス(Thermus)OPB31(AF027020)、サーマス属(Thermus)未同定種ac−7(L37522)、未同定サーマス(Thermus)OPB32(AF027021)、サーマス(Thermus)YSPID A.1(L10070)、未同定サーマス(Thermus)OPB19(AF027019)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)HB−8(X07998)、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)WAI 33 A.1(X58345)、サーマス属(Thermus)未同定種 YS38(Z15062)、T.オシマイ(T.oshimai)SPS−17(Y18416)、サーマス(Thermus)YSPID A.1(L10070)、サーマス(Thermus)ZHGIB A.4(L10071)、サーマス・フラブス(Thermus flavus)AT−62(L09660)、サーマス属(Thermus)未同定種 Tok8 A.1(L09666)、サーマス属(Thermus)未同定種 Tok20 A.1(L09665)、サーマス属(Thermus)未同定種 W28 A.1(L10068)およびサーマス属(Thermus)未同定種 T351(L09671)。
【0249】
16S rRNA遺伝子配列分析の結果として生じた、サーマス属(Thermus)分離体および参照種の系統樹を図8に示す。すべてのサーマス(Thermus)種の部分16S rRNA配列のアライメントを図7aおよび7bに示す。16S rRNA樹状図のパターンは、サーマス(Thermus)分離体と既知のサーマス(Thermus)種の関連についてのMLEE分析の結果、および新規の独立した遺伝的系統の発見を確認した。5つの別々の分離体を含むこの新しい系統は、新規のサーマス(Thermus)種を表す。該新種はグドムンドル・エガートソン(Gudmundur Eggertsson)に因んでサーマス・エガートソニイ(Thermus eggertssonii)と命名された。16S rRNA配列決定によると、この新しいサーマス(Thermus)種に属する分離体2123および2789は、T.ブロキアヌス(T.brockianus)(YS38株)およびT.イグニテラエ(T.igniterrae)(RF−4株)と非常に近縁であり、それぞれ98.3%および97.8%配列類似性を与えた(表1参照)。しかし、MLEE結果に見られる通り、それはT.ブロキアヌスとは遺伝的に遠く、異なる対立遺伝子をすべての遺伝子座に有した。分離体の#2789株がサーマス・エガートソニイの基準株として選ばれた(サーマス・エガートソニイIT−2789)。
【0250】
表1 異なる遺伝子座についてのサーマス(Thermus)系統内の対立遺伝子頻度


【0251】
例2:T.エガートソニイ(T.eggertssonii)およびその最近縁T.ブロキアヌス(T.brockianus)に由来する部分polA遺伝子配列のクローニングおよびサーマス(Thermus)参照種の部分polA遺伝子配列とのアライメント
ファミリーI DNAポリメラーゼ、別名Pol Aは、ブレイズワイト(Braithwaite)およびイトー(Ito)(ブレイズワイト他,『DNAポリメラーゼの収集、アライメント、および系統分類的関係』(Compilation,Alignment,and Phylogentic Relationships of DNA Polymerases.) Nucleic Acids Res.21 (1993) 787−802.参照により本開示に含まれる)によって示唆された通り、これらのポリメラーゼの活性部位を形成する、保存された配列モチーフを含む。これらのモチーフは、ブロックA,BおよびCとしばしば呼ばれる、高度に保存された配列ブロックを含む (ジョイス(Joyce)他,『DNA ポリメラーゼにおける機能および構造関係』(Function and Structure Relationships in DNA Polymerases).Annu.Rev.Biochem.63 (1994) 777−822.,参照により本開示に含まれる)。サーマス(Thermus)種由来のいくつかのファミリーA DNAポリメラーゼのアライメントを、保存されたブロックAおよびCを用いて実施した。これらのモチーフ内の不変アミノ酸残基は、既知のサーマス(Thermus)ポリメラーゼIコード配列:A−forw:5’−GCCGCCGACTACTCCCARATHGARHT−3’(配列番号:36)およびC−rev:3’−CANGTRCTRCTCTACCACAAGCTCCCG−5’(配列番号:37)からの縮重プライマーを推論することを可能にした。
【0252】
縮重CODEHOPプライマー(ローズ(Rose)他,『遠縁配列の増幅のためのコンセンサス縮重ハイブリッドオリゴヌクレオチドプライマー』(Concensus−degenerte Hybrid Oligonucleotide Primers for Amplification of Distantly Related Sequences.) nucleic Acids Res.26 (1998) 1620−1635.,参照により本開示に含まれる)は、さまざまなT.エガートソニイ(T.eggertssonii)株および1つのT.ブロキアヌス(T.brockianus)分離体(#140株)に由来するDNAポリメラーゼI遺伝子(polA)の600bp長コア断片を増幅することを可能にした。この遺伝子断片は、活性部位モチーフAおよびCの間の、I型DNAポリメラーゼの最も保存的な領域を含むコード領域を包含する。
【0253】
結果として生じるPCR産物を1%TAEゲル上で分離し、および約600塩基のバンドをゲルから切り出し、およびGFX,PCR DNAおよびゲルバンド精製キット(GEヘルスケア社(GE Healthcare))を取扱説明書に従って用いることによって精製した。5μlの精製されたPCR産物を用いて、PCRで生じた600bp断片をTOPA−TAベクター(TOPO TAクローニングキット、インビトロジェン社(Invitrogen))へクローニングした。DNAライゲーション、コンピテント細胞形質転換およびコロニー平板播種および増殖のための条件は、取扱説明書に従った。各クローニング実験から数個のコロニーを取り、小スケールプラスミドDNA精製のための標準的な実験手順を用いて配列決定のためにプラスミドDNAを単離した(マヌアチス(Manuatis)他、本文書に参照される通り)。サイクル配列決定反応は、ビッグダイ(BigDye)ターミネーターサイクル配列決定迅速反応キット(PEアプライド・バイオシステムズ社(PE Applied Biosystems))を用いて取扱説明書に従って、M13フォワードおよびリバースプライマーを用いて実施した。
【0254】
T.エガートソニイ(T.eggertssonii)およびブロキアヌス(brockianus)由来のpolA遺伝子コア断片の、結果として生じるDNA配列をベクターNTIソフトウェアパッケージ(インビトロジェン社(Invitrogen)、カールスバード(Carlsbad))を用いてアミノ酸配列に翻訳した。polAコア領域のこれらのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号18から23および配列17として本文書で参照される。
【0255】
ベクターNTIソフトウェアパッケージのクラスタルW(Clustal W)アルゴリズムを用いて、T.エガートソニイ(T.eggertssonii)およびブロキアヌス(brockianus)部分polA配列を、T.アクアティカス(T.aquaticus)(配列番号:16)、T.サーモフィルス(T.thermophilus) (配列番号:15)、T.フラブス(T.flavus)(配列番号:13)、およびT.フィリフォルミス(T.filiformis)(配列番号:14)のDNAポリメラーゼI由来の対応する配列領域とアライメントした。すべての部分サーマス(Thermus)種polAアミノ酸配列のアライメントを図9に示す。
【0256】
表2は、サーマス(Thermus)種DNAポリメラーゼの保存されたpolAコア領域についての配列多様性分析の結果を示す。T.エガートソニイ(T.eggertssonii)および他のサーマス(Thermus)種のpolA領域の間には、最も保存されたpolA領域でさえ、顕著な配列多様性が存在する。この結果はT.エガートソニイ(T.eggertssonii)が、サーマス(Thermus)属DNAポリメラーゼIファミリーの、独特の新規のメンバー(Teg DNA Pol I)をコードすることを示す。T.ブロキアヌス(T.brockianus)のpolA配列は、16S rRNA配列およびMLEE ETについてそうであった通り、Teg DNA Pol Iと最も近縁な配列である。

【0257】
さらに、polAコア領域の種内多様性を判定し、およびそれを最近縁種T.ブロキアヌス(T.brockianus)とのpolA配列の種間多様性と比較するために、5つのT.エガートソニイ(T.eggertssonii)株由来の部分polA配列を互いに対してアライメントした(表3参照)。

【0258】
表3の結果は、5つのT.エガートソニイ(T.eggertssonii)株間の平均polA配列多様性は0.3%±0.36%であることを示す。それはpolAコア配列の166残基当たり1個のアミノ酸置換(0.6%多様性)よりも小である。
【0259】
T.エガートソニイ(T.eggertssonii)株の5つの別個のpolA配列を、最近縁種T.ブロキアヌス(T.brockianus)の配列に対してアライメントする際、polAコア配列内の種間多様性は、平均して2.75%であり、たとえば166残基の配列内に4〜5アミノ酸置換である(表5参照)。T.エガートソニイ(T.eggertssonii)およびT.ブロキアヌス(T.brockianus)間の平均polA種間配列多様性は、遺伝的に異なる地理集団に由来する別々のT.エガートソニイ(T.eggertssonii)株間の種内多様性より約7倍高く、T.エガートソニイ(T.eggertssonii)によってコードされるDNAポリメラーゼIは最近縁種T.ブロキアヌス(T.brockianus)のアナログ酵素とは異なるポリメラーゼであることが確認される。

【0260】
例3:T.エガートソニイ(T.eggertssonii)に由来する完全なpolA遺伝子配列のクローニングおよびサーマス(Thermus)参照種のpolA遺伝子配列とのアライメント
T.エガートソニイ(T.eggertssonii)#248株に由来する600bp polA遺伝子断片のヌクレオチド配列を用いて、ジーンマイニング(GENEMINING)(商標)と呼ばれるPCRを基礎とした遺伝子ウォーキング法を使用して、TegDNAポリメラーゼIの完全なコード配列をクローニングした。この方法は、既知の配列の3’末端の下流および既知の配列の5'末端の上流の未知の配列をそれぞれ増幅するための2組のプライマーを用いる。2組のプライマーのそれぞれは、既知のpolA配列から推論された遺伝子特異的プライマーおよび任意3’末端配列を有する反対プライマーを含む。第3のプライマーが両方の組に加えられ、それは任意プライマーの5’末端側半分の配列を含む。この配列はまた、PCR産物のクローニングを円滑化する2つの特異な制限部位を含む。3’末端が未知のpolA配列の増幅のためのプライマーセットでは、遺伝子特異的プライマーはフォワードプライマーであった。未知の5’末端のpolAの増幅のためのセットでは、遺伝子特異的プライマーはリバースプライマーであった。下記の3つの任意プライマーを使用した:
Arb1: 5'-GGCCACGCGTCGACTAGTACNNNNNNNNNNGATAT-3', (配列番号: 38)
Arb.2: 5'-GGCCACGCGTCGACTAGTACNNNNNNNNNNACGCC-3, (配列番号: 39)
Arb.3: 5'-GGCCACGCGTCGACTAGTAC-3'. (配列番号: 40)
【0261】
各PCRは以前に記載された任意プライマーPCR法に従って2回実施した(カエタノ・アノレス(Caetano−Anolles),『核酸のin vivo増幅によるスキャン:新展開および用途』(Scanning of Nucleic Acids by In Vivo Amplification: New Developments and Applications.) Nat.Biotechnol.14 (1996) 1668−1674,参照により本開示に含まれる)。低いアニーリング温度での1回目(最大10サイクル)には、遺伝子特異的プライマーと反対の適当な標的配列が見つかれば常に、任意プライマー1および2のどちらでもPCR断片の集団に組み込まれた。より高いアニーリング温度での2回目には、個別のPCR産物が任意混合物から増幅された。これらのPCR産物は、任意プライマー1または2のどちらか一方を一端に、および遺伝子特異的プライマーを反対端に組み込んでいた。
【0262】
得られたPCR産物を次いで、前述の通り、精製し、クローニングし、および配列決定した。前の回に決定された内部配列断片に特異的なネステッドプライマーの組を用いたその後の一連のPCRによって、polA遺伝子のより保存度の低い隣接領域が得られた。polA遺伝子の完全なコード配列が得られた後、コード配列の5'−および3'−最末端に対する遺伝子特異的プライマーを設計した。このプライマーセットは、次いで、完全なTeg DNA Pol I遺伝子を1個の断片として増幅するために用いられた。5'末端フォワードプライマーは、唯一のEcoRI制限部位を含んだ。3'末端フォワードプライマーは、唯一のBglII制限部位を含んだ。ベクターの唯一の制限部位EcoR−IおよびBamHIを用いて、完全長polA PCR産物を、pBTac−1発現ベクター(べーリンガー・マンハイム社(Boehringer Mannheim),ペンツブルグ(Pensberg))へクローニングし、polA遺伝子を有するEcoRI/BglII断片を蓄積した。結果として生じるTegDNAポリメラーゼ発現ベクター−PRI−pSO4−の物理地図を図13に示す。選択されたベクターpBTAC−1とは異なる種類の抗生物質耐性マーカー遺伝子、プロモーター配列および複製開始点を含む発現ベクタープラスミドを使用しうることは当業者によく知られている。
【0263】
例4:T.エガートソニイ(T.eggertssonii)由来の完全なpolA配列の、サーマス(Thermus)参照種のpolA配列とのアライメント
完全長Teg、Tbr、TaqおよびTthDNAポリメラーゼのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、ソフトウェアパッケージ・ベクターNTI(インビトロジェン社(Invitrogen),カールスバード(Carslbad))のクラスタルW(Clustal W)アルゴリズムを用いてアライメントした。アライメントの結果を、DNA配列アライメントについて表6に、およびアミノ酸配列アライメントについて表7に要約する。完全なアミノ酸配列アライメントを図11aおよび11bに示し、および対応する系統樹を図12に示す。


【0264】
Teg DNA Pol I配列中のアミノ酸変異の大多数は、N末端5'−3'−エキソヌクレアーゼドメインに存在する。ポリメラーゼ内では、いくつかの非保存的アミノ酸置換が、DNA基質結合、処理能力およびプライマー伸長に関与することが知られている領域で顕著である。以前に既に確立された通り、最高度の配列ホモロジーをTegDNAポリメラーゼはTbrDNAポリメラーゼと共有するが、完全なpolA配列に対して、保存されたポリメラーゼコア領域よりも低いレベル(95%)である。DNAレベル対アミノ酸レベルで配列ホモロジー間に顕著な差は無い。Teg、TbrおよびTthDNAポリメラーゼは、TaqDNAポリメラーゼの配列と対毎にアライメントする場合、ほぼ全く同じ配列多様性(13〜14%)を示す。他のサーマス(Thermus)種の既知DNAポリメラーゼに対する完全なTegDNAポリメラーゼの、配列多様性の観察された程度は、TegDNAポリメラーゼがサーマス(Thermus)DNAポリメラーゼIファミリーの新規の独自メンバーであることを確立する。
【0265】
例5:TegDNAポリメラーゼIの発現
TegDNAポリメラーゼの発現のためのPRI−pSO4ベクターは、TegDNAポリメラーゼを大腸菌(E.coli)において発現するために使用できる発現ベクタープラスミドの一種の具体例である。当業者は、大腸菌(E.coli)における、および酵母菌ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cervisiae)またはクリベロマイセス・ラクチス(Klyveromyces lactis)といった他の宿主生物における、Teg DNAポリメラーゼの発現に適した非常にさまざまな発現ベクタープラスミドに詳しい。当業者にとって発現宿主の別の可能な選択は、不死化哺乳類細胞株および昆虫細胞株である。特定発現ベクターの選択は、宿主生物およびその遺伝的背景によって制限されおよび規定される。
【0266】
10ngの精製されたPRI−pSO4発現ベクタープラスミドを用いて、大腸菌(E.coli)発現細胞株Rosettagami(DE3)pLysS(ノバジェン社(Novagen),マディソン(Madison))のコンピテント細胞を形質転換した。この大腸菌(E.coli)株は、コード配列が固有大腸菌(E.coli)tRNA分子に一致しない稀なコドンを有する非相同タンパク質の発現に、遺伝的に最適化されている。Rosettagami (DE3)pLysS 大腸菌(E.coli)株のコンピテント細胞を含む該形質転換キットはノバジェン社から購入した。形質転換手順,細胞増殖,平板播種および組み換えクローンの選択は、取扱説明書に従って実施した。37℃にて100μ/mlアンピシリン含有2xYT−寒天プレート(テクノバ社(TechNova))上で24時間インキュベーション後、直径2〜3mmの単独コロニーを選択した。
【0267】
PRI−pSO4ベクタープラスミド上のTegDNAポリメラーゼの発現は、トリプトファンシンセターゼおよびβ−ラクタマーゼのための大腸菌(E.coli)遺伝子に由来するプロモーターの調節配列領域を含むハイブリッドTACプロモーターによって推進される。このプロモーターからの該遺伝子の転写は、エフェクター分子IPTGの存在によって誘導される。液体増殖培地2xYT(テクノバ社(TechNova))中でIPTG濃度1mMを用いて、PRI−pSO4ベクターからのTegDNAポリメラーゼ発現を誘導した。使用する正確なプロモーターおよび発現ベクター構築物に応じて、他のエフェクター分子、たとえばラムノースまたはアラビノース、またはIPTGの他の濃度を使用しうることは当業者に公知の事実である。増殖培地中のエフェクター分子濃度の実験的最適化が、他の発現構造を有するTegDNAポリメラーゼの最適発現レベルを達成するために必要である。使用した増殖培地の組成についても同じことが当業者について言える。発現ベクタープラスミドを有する細胞の選択に用いられる抗生物質の選択および濃度もまた当業者によく知られている。使用したベクタープラスミドの正確な性質に応じて、テトラサイクリン、カナマイシンまたはクロラムフェニコールといった他の抗生物質が使用されうる。
【0268】
エフェクター分子(IPTG)が添加された後の、ポリメラーゼの発現を始めさせるためのインキュベーション時間、たとえば誘導時間は、実験的最適化が必要なもう1つのパラメーターである。その目的で、100μg/mlアンピシリン含有2xYT培地50mlの入った3個のエルレンマイヤーフラスコに、それぞれPRI−pSO4/RosettaGami−pLysS細胞の単独コロニーを接種した。50ml培養を振とう機上で37℃および250rpmにて、大腸菌(E.coli)培養がOD6000.7から0.8の密度に達するまでインキュベートした。この時点で、すべての液体培養の1ml試料を採取し、およびIPTGを3個の液体培養のうち2個に、終濃度1mMとなるように添加した。培養試料中の細胞を、遠心分離によって採集し、および以降の処理まで−20℃にて凍結した。残りの培養のインキュベーションを上記条件下で継続した。2時間後、IPTGで誘導した第1の培養の細胞を遠心分離によって採集し、および−20℃にて冷凍保存した。6時間後、第2のIPTG誘導培養の細胞を採集した。すべての培養試料からの回収物を、10μg/mlリゾチームを含む10mMトリス(Tris)−HCl pH 8.0、10 mM EDTA、X mM PMSF中で30分間37℃にて溶解した。溶解後、粗溶解物を不溶性画分(沈澱)および可溶性タンパク質画分(上清)へ高速遠心分離(20000g、20分間)によって分離した。培養試料由来の両方の画分の部分試料を、等容のSDS−ゲル負荷緩衝液(バイオラッド社(Biorad))と混合し、5分間95℃にて加熱し、および次いでクライテリオン(Criterion)SDS−ポリアクリルアミドゲル(クライテリオン・トリス(Tris)−HClゲル4〜20%勾配、バイオラッド社)に負荷した。タンパク質画分の電気泳動分離、および分離されたタンパク質のクマシー(Coomassie)染色は、取扱説明書に従って実施した。粗タンパク質画分中のTegDNAポリメラーゼタンパク質バンドの検出を円滑にするため、精製TaqDNAポリメラーゼ(2μg)を電気泳動移動度マーカーとしてゲルに負荷した。誘導時間実験の電気泳動像を図14に示す。IPTG誘導無しの培養の大腸菌(E.coli)細胞ではポリメラーゼは発現されなかった。既に1mM IPTGでの誘導の2時間後、正しいサイズのTegDNAポリメラーゼバンドが、可溶性タンパク質画分に検出可能である。可溶性細胞画分中のTegDNAポリメラーゼの量は、誘導の4時間後まで上昇し続ける。いつでもTegDNAポリメラーゼバンドは不溶性細胞画分において特定できなかった。さらなる実験(データ記載せず)は、誘導の6時間後に、可溶性細胞画分中の発現されたTegDNAポリメラーゼの量は飽和したことを実証した。最大12時間のさらなるインキュベーションは、RosettaGami細胞における可溶性TegDNAポリメラーゼの量を増加も減少もしなかった。次いで、37℃にて6時間の誘導時間を以降のすべての実験に使用した。
【0269】
TegDNAポリメラーゼの大スケール精製のためのバイオマスを生産するために、250mlフラスコ中での100ml(100μg/mlアンピシリン含有2xYT培地)前培養に、PRI−pSO4/RosettaGami細胞の単独コロニーを接種した。培養を250rpmおよび37℃にて振とう機上で16時間にわたって一夜インキュベートした。翌朝、それぞれ100mg/mlアンピシリン含有2xYT培地各1L(37℃に調整)の入った2.8リットルのエルレンマイヤーフラスコ4個に、前培養1mlをそれぞれ接種した。これらの1L培養を37℃および250rpmにて、OD600が0.6から0.8の密度に達するまで増殖させた。この時、IPTGを終濃度1mMとなるように加えた。誘導後、インキュベーションを同一条件下でさらに6時間継続した。その後、培養フラスコを氷上へ移動した。すべての培養フラスコの細胞を、500mlボトルで5000rpmにて30分間の遠心分離によって採集した。表8はバイオマス生産からのデータを要約する。

【0270】
例6:TegDNAポリメラーゼの大スケール精製
TegDNAポリメラーゼを精製するための一般的精製手順の概要を図10に示す。該方法は4つの主な精製段階を用いる。最初に、粗細胞抽出物を75℃にてインキュベートして、非熱安定性大腸菌(E.coli)宿主タンパク質を変性および除去する。第2に、総核画分を熱処理細胞抽出物から、ポリエチレンイミン(PEI)を用いる沈澱によって除去する。第3に、清澄化した上清を、硫酸アンモニウム沈澱によって分画する。第4の段階は、ブチル−セファロースでの疎水性相互作用クロマトグラフィーを含み、および最後の段階は、ヘパリン−セファロース上でのリガンドアフィニティクロマトグラフィーを含む。
【0271】
タンパク質抽出のために、前の段階で生産された湿細胞バイオマス20gを、50mMトリス(Tris)−HCl pH 8.0、10 mM EDTA、1 mM DTT および 0.1% PMSFを含む細胞抽出緩衝液200mlに再懸濁した。粗細胞懸濁液を、超音波ミキサーを低設定(2〜3)(IKA T18)にて1から2分間ホモジナイズした。ホモジナイズした後、細胞懸濁液を氷上で10から15分間冷却して4〜8℃に調整した。
【0272】
次に、細胞をマイクロフルイダイザーで、冷却した懸濁液を毛細管に入口圧力15kPsiにて通すことによって破壊した。この段階は、より高い入口圧力30kPsiにてさらに2回実施した。通過の各回の間に、粗細胞抽出物を氷上で冷却した。細胞破壊の効率を、各段階後に、100X倍レンズを装備した位相差顕微鏡下で監視した。通常は、マイクロフルイダイザー毛細管を3回通過後、全細胞の>90%が溶解した。最終細胞抽出物を氷上で10分間冷却して4℃とした。
【0273】
熱処理のために、粗細胞抽出物を100mlポリプロピレン(PP)袋へ注意深く移し、それを次いで熱密封した。密封したPP袋内に補足される空気が最小量となるように注意した。密封したPP袋を、75℃に調整した水浴に沈め、および4から5分間毎に袋を裏返しながら20分間インキュベートした。20分後、粗細胞抽出物入りのPP袋を氷中で10分間冷却した。次いで、変性したタンパク質画分を細胞抽出物から、20000g(12000rpm)40分間4℃の遠心分離によって除去した。
【0274】
次の段階で、核酸画分を、清澄化した細胞抽出物上清から、ポリエチレンイミン(PEI)を用いて除去した。氷上で5分間にわたって緩やかな連続混合下で、濃縮PEI溶液(10%)をその終濃度が細胞抽出物中で0.1%に達するまで滴加した。PEIを含む細胞抽出物を、緩やかな連続混合下で20分間氷上でさらにインキュベートした。20分後、核酸沈澱を粗細胞抽出物から、20000g(12000rpm)40分間4℃の遠心分離によって分離した。
【0275】
遠心分離後、清澄化したPEI後の上清のイオン強度を、ブチルセファロースでのクロマトグラフィー分離用に細胞抽出物を準備するために調製した。10分間にわたって、硫酸アンモニウム粉末を少量ずつ、緩やかな連続混合下で、飽和が27.5%(細胞抽出物100ml当たり硫酸アンモニウム16g)に達するまで加えた。27.5%硫酸アンモニウム飽和で沈澱するタンパク質画分を分離するため、細胞抽出物を一夜4〜8℃にて16時間インキュベートし、および次いで翌日20000g(12000rpm)40分間4℃で遠心分離した。TegDNAポリメラーゼは上清画分中に可溶のままである。
【0276】
次に、清澄化した細胞抽出物の伝導度を、少量の硫酸アンモニウム粉末またはブチルセファロースカラム平衡緩衝液のどちらかを添加することによって、ブチルセファロースカラム平衡緩衝液の伝導度の5〜10mS以内に調製した。清澄化した細胞抽出物をカラムに負荷する前に、細胞抽出物を、500mlレシーバーボトル付きのミレックスGSステリカップ0.45μm無菌PESフィルターデバイス(MillexGS−SteriCup)、ミリポア社(Millipore))を通して減圧ろ過した。
【0277】
第1のクロマトグラフィー分離のために、ベッド直径2cmおよびベッド高10cmのファストフロー(Fast−Flow)高置換ブチルセファロース(GEヘルスケア(GE−Healthcare)、ファルマシア(Pharmacia))カラムを用いた。このカラムを、50mMトリス(Tris)−HCl pH 8.0、1 mM EDTA、1.21M硫酸アンモニウム(たとえば27.5%飽和)、および1 mM DTTを含む緩衝液で平衡化した。
【0278】
清澄化細胞抽出物をカラムに、10ml/分の定流速で負荷した。その後、カラムを2カラム容(CV)のカラム平衡緩衝液で洗浄した。
【0279】
TegDNAポリメラーゼを含む画分は、ブチルセファロースカラムから流速10ml/分で、硫酸アンモニウム塩濃度の段階的な低下勾配で溶出された。塩勾配は、さまざまな比のカラム平衡緩衝液および溶出緩衝液を、緩衝液勾配バルブで混合することによって形成された。0.5CVにわたる勾配の第1の区分では、溶出緩衝液中の硫酸アンモニウム濃度は1.21Mから666mMへ低下した。勾配の第2の区分では、溶出は硫酸アンモニウム666mMの一定濃度で2CVにわたって続いた。第3の勾配区分では、溶出緩衝液中の硫酸アンモニウム濃度は、660mMからゼロへ2CVにわたって低下した。TegDNAポリメラーゼは勾配の第3区分にカラムから溶出する。画分は2ml量の部分標本として回収された。
【0280】
最高濃度のTegDNAポリメラーゼを含む画分を決定するために、各溶出画分からの試料(10μl)を4〜20%クライテリオン(Criterion)勾配ゲル(バイオラッド社(Biorad))でのSDS−PAGE分析用に調製した。正しいサイズのTegDNAポリメラーゼバンドを同定するために、精製TaqDNAポリメラーゼ(2μg)をゲル上にマーカーとして負荷した。図16はブチルセファロースカラムから溶出した画分のSDS−PAGE分析の電気泳動像の例である。
【0281】
最高量のTegDNAポリメラーゼを含む画分をプールした。次に、プールしたTegDNAポリメラーゼ画分を、50mMトリス(Tris)−HCl pH8.0、50mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTTを含むヘパリンカラム平衡緩衝液に対して、12から16時間にわたって緩衝液を2回交換して透析した。透析後、プールしたTegDNAポリメラーゼ画分の伝導度を、カラム平衡緩衝液の伝導度へ調整した。調整されたTegDNAポリメラーゼプールを次いでファストフロー(Fast−Flow)ヘパリンセファロースカラム(ベッド高20cm;ベッド直径2cm)に流速7ml/分で負荷した。試料負荷後、カラムを2CVのヘパリンセファロース平衡緩衝液で洗浄した。
【0282】
TegDNAポリメラーゼを含む画分を、ヘパリンセファロースカラムから、流速7ml/分にて塩化カリウム塩濃度の直線増加勾配を用いて溶出した。塩化カリウム勾配は、さまざまな比のカラム平衡緩衝液および溶出緩衝液を、緩衝液勾配バルブで混合することによって形成された。ヘパリンセファロースカラム溶出緩衝液は、50mMトリス(Tris)−HCl pH8.0、0.75M KCl、0.1mM EDTA、1mM DTTを含んだ。溶出勾配は5CVにわたる50 mMから750mM KClの範囲の1区分で実施された。溶出画分は2ml量で回収した。TegDNAポリメラーゼは塩化カリウム濃度0.6ないし0.75Mの範囲で溶出した。
【0283】
最高濃度のTegDNAポリメラーゼを含む画分を決定するために、各画分からの試料(10μl)を4〜20%クライテリオン(Criterion)勾配ゲル(バイオラッド社(Biorad))でのSDS−PAGE分析用に調製した。正しいサイズのTegDNAポリメラーゼバンドを同定するために、精製TaqDNAポリメラーゼ(2μg)をゲル上にマーカーとして負荷した。図17はヘパリンセファロースカラムから溶出した画分のSDS−PAGE分析の電気泳動像の例である。
【0284】
最大量のTegDNAポリメラーゼを含む画分をプールし、および、40mM トリス(Tris)−HCl pH8.0、0.2mM EDTA、2mM DTT、200 mM KCl、1%ツイーン(Tween)20(シグマ社(SIGMA))、1%イゲパール(IGEPAL)−C630(シグマ社)を含みグリセロールを含まない2X保存液に対して48時間にわたって緩衝液を3回交換して透析した。最終の、プールしおよび透析したTegDNAポリメラーゼ画分を滅菌ろ過し(0.45μmPESフィルター)および、画分容の無菌のヌクレアーゼフリー99%グリセロール(シグマ社)と混合して、20mM トリス−HCl pH8.0、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.5%ツイーン20、0.5%イゲパール−C630を含む最終保存緩衝液濃度を達成した。
【0285】
最終の精製TegDNAポリメラーゼのタンパク質濃度を、ピアース社(Pierce)のキットを用いて取扱説明書に従って測定した。図18は、精製された組み換えTegDNAポリメラーゼのSDS−PAGE分析の電気泳動像を、精製された組み換えTaq−およびTbrDNAポリメラーゼの試料と比較して示す。TegDNAポリメラーゼの純度は、TegDNAポリメラーゼゲル試料のクマシー(Coomassie)染色されたタンパク質バンドの濃度測定定量分析による測定で>98%と判明した。表9はTegDNAポリメラーゼの大スケール精製の結果を要約する。

【0286】
例7:精製されたTegDNAポリメラーゼの比活性および活性濃度の測定
TaqDNAポリメラーゼの活性を測定するために開発された、非放射性の、PCRに基づく活性アッセイを用いた。アッセイは、ヒトゲノムDNAをテンプレートとして用いて増幅された、350bp PCR産物(ヒトベータアクチン遺伝子の断片)の終点定量に基づく。すべての反応物の量(各dNTP250μmol、テンプレートDNA50ng、プライマー40pmol、およびマグネシウムイオン2.0mM)は、DNAポリメラーゼを除いて、過剰に与えられ、そのため活性DNAポリメラーゼの量が産物収量の唯一の制限因子となる。各サイクルでのプライマー伸長およびアニーリングの時間は各8秒間の絶対最短値に設定された。サイクルの総数は30に設定され、ここで指数増幅期が産物飽和の段階に移行する。これらの条件下で、PCR産物の終点量は、反応50μl当たり0.2U〜0.8Uの範囲内でDNAポリメラーゼの入力量の線形関数である。市販TaqDNAポリメラーゼ(ロシュ・モレキュラー・ダイアグノスティカ(Roche Molecular Diagnostica);GMP−Taq)のロットが、製造元によって放射性プライマー伸長アッセイで5U/mlに調整されているが、本アッセイで酵素標準物質(enzyme calibrator)として用いられた。
【0287】
精製されたTegDNAポリメラーゼの濃縮ストックから開始して、一連の酵素希釈物を、ポリメラーゼ保存緩衝液で表10に概要を示す通り調製した。TaqDNAポリメラーゼに対するTegDNAポリメラーゼの既知のタンパク質濃度を、標的濃度5U/μlを含み、希釈の正しい範囲を定めるガイドとして用いた。

【0288】
完全な活性アッセイを標的濃度5U/μlに近づけるため、酵素希釈物の範囲に狭めて、連続3回のPCR実験を実施した。1回目のPCRで、反応50μl当たり0.2μlの各TegDNAポリメラーゼ希釈物を2連で、0.2μl(たとえば1U)のTaqDNAポリメラーゼと比較した。反応設定を表11に示す。反応に用いた10XTaq反応緩衝液は、100mMトリス(Tris)−HCl pH8.3、500mM KClおよび20mM酢酸マグネシウムを含む。アガロースゲル分析の電気泳動像を図19に示す。PCR産物収量の目視検査に基づき、ポリメラーゼ希釈物「1:15」、「1:20」および「1:25」を選択して、2回のPCR活性測定アッセイを進行した。さらに2つの中間希釈物(「1:17.5」および「1:22.5」)を2回目の分析に加えた。

【0289】
2回目のPCRアッセイについて、選択された酵素希釈物のそれぞれを、1:5に1XTaq反応緩衝液で希釈し、反応各50μlへの少量酵素のより正確な投与を可能にした。Taqポリメラーゼ標準対照を相応に1XTaq反応緩衝液で終濃度1U/μlに希釈した。2回目のPCR反応は異なる設定をした。各ポリメラーゼ希釈物は3回の試験反応によって示された。試験反応の各組は、それぞれ0.6μl(0.6U)、0.8μl(0.8U)から1.0μl(1.U)の範囲の、3つの異なる量のDNAポリメラーゼを用いた。Taq標準ポリメラーゼを用いた反応を相応して設定した(表12参照)。終点PCR産物のアガロースゲル分析の電気泳動像を図20に示す。半定量PCR産物収量パターンの目視検査に基づき、ポリメラーゼ希釈物「1:25」が5U/μl TaqDNAポリメラーゼ標準酵素と最も等価であることが判った。

【0290】
確立された希釈係数「1:25」を用いて、1ml量の調整されたTegDNAポリメラーゼを作製し、および最終活性試験に供した。2回目のように、少量酵素の正確な液体操作を確実にするために、試験用のポリメラーゼストック溶液(5U/μl)をさらに1:5に、1XTaq反応緩衝液を用いて希釈した。ここでは、各試験の組で4種類の異なるポリメラーゼ量(0.4、0.6、0.8、1.0μl)をPCR反応に加えて、それぞれ反応当たり0.4、0.6、0.8、および1.0単位を与えた。終点PCR産物のアガロースゲル分析の電気泳動像を図21に示す。
【0291】
終点PCR産物収量は、ルミイメージャー(LumiImager)(商標)ゲルスキャナ(ロシュ・モレキュラー・ダイアグノスティクス社(Roche Molecular Diagnostics))の専用ソフトウェアを用いて濃度測定によって測定した。各反応からの特定PCR産物バンドのピーク面積を、対応する反応において使用したポリメラーゼの量(単位または容量)に対してプロットした(図22参照)。その実験で比較した、TaqDNAポリメラーゼ標準物質を含む3種類のDNAポリメラーゼのプロットを示す。
【0292】
比較した3種類すべてのポリメラーゼの増幅プロットの傾きは非常に類似しているが、しかしTegDNAポリメラーゼのプロットは上方へシフトしている。Teg曲線の右側へ0.1UでのシフトがTegDNAポリメラーゼ活性プロットをTaqおよびTbrDNAポリメラーゼ増幅曲線とアライメントするので、TegDNAポリメラーゼの1:25希釈物の活性濃度は約15%(5.8U/μl)上昇していることが判明した。濃縮TegDNAポリメラーゼの希釈は相応して調整された。活性アッセイの結果を用いて、濃縮TegDNAポリメラーゼストック溶液の活性濃度および総活性を再計算した。結果を表13に要約する。

【0293】
例8:M13ssDNA複製アッセイにおける伸長速度、および熱安定性
DNAポリメラーゼの伸長速度は、プライミング(+)鎖が5’−3’方向へ伸長される時間間隔当たり塩基数(秒当たり塩基)によって測定される。プライマーの伸長を秒当たりごくわずかの塩基によって直接検出することは不可能なので、測定のための反応(重合)時間を延長するために長い1本鎖テンプレート分子が用いられる。この場合、7.2kb長1本鎖M13mp18DNAテンプレートを用いるM13ファージ複製アッセイを使用して、Teg−、Taq−およびTbrDNAポリメラーゼの伸長速度を比較して測定した。
【0294】
このアッセイでの臨界パラメーターは、一連の平行反応がさまざまな時間間隔で停止される、完全長2本鎖複製産物(7.2kb)が検出可能な最初の時点である。テンプレート鎖の塩基数での長さ(7200)を次いで、秒での最短時間間隔で割って、プライマー伸長速度を計算する(秒当たり塩基)。
【0295】
完全長2本鎖複製産物の存在は、反応産物のアガロースゲル上での分離によって視覚化される。完全長複製産物を、M13バクテリオファージの開環複製形I(RF−I)(M13mp18 RF−I DNA,ニューイングランドバイオラブズ社(New England Biolabs))を含む参照DNAマーカー分子のバンドとゲル中で同時に泳動する。1本鎖M13mp18テンプレートDNAは、すべての反応産物の前を最速で泳動する。部分的に2本鎖の、中間プライマー伸長産物は、明確なバンドを形成するのでなく、1本鎖テンプレートのバンドと完全長2本鎖複製産物のバンドとの間のどこかで拡散した雲状に泳動する(図23参照)。
【0296】
すべてのプライマー伸長反応を20μl量で60℃にて実施した。反応は、Teg−、Taq−、またはTbrDNAポリメラーゼのどれかを1単位、各dNTPを250μmol、0.3pmolのM13リバースプライマー(−48)24量体(配列番号:41;ニューイングランドバイオラブズ社(New England Biolabs))でプライミングされたssM13mp18を375ng(0.15pmol)、および30mM ビシン(Bicine)、X mMトリス(Tris)pH8.7、50mM KClおよび2.0mM酢酸マグネシウムを含む1X反応緩衝液を含んだ。1本鎖テンプレートDNAは、複製アッセイの前に別のハイブリダイゼーション反応でプライミングされた。プライマーハイブリダイゼーションは10分間75℃にて実施し、次いで30分間室温にてインキュベートした。
【0297】
各プライマー伸長反応は、一定の時点でdNTP基質の添加によって開始し、および目的の時間間隔経過後にEDTAの終濃度10mMとなるような添加によって停止した。1つのDNAポリメラーゼについてのプライマー伸長反応の完全な組は9つの平行反応を含み、30、60、90、120、180、210、240、270および300秒の反応時間間隔を包含した。
【0298】
3種類すべてのサーマス(Thermus)DNAポリメラーゼについてのプライマー伸長速度アッセイの結果は電気泳動像で図23に可視化される。2分30秒、3分および3分30秒が、完全長7.2kb複製産物がTeg−、Taq−またはTbrDNAポリメラーゼのどれかについてそれぞれ検出可能になった最初の時点である。それはTeg−、Taq−およびTbrDNAポリメラーゼそれぞれについてプライマー伸長速度として40塩基/秒、34.3塩基/秒および40塩基/秒に変換される。これらの速度はTeg−およびTaqDNAポリメラーゼのいくつかの異なる精製ロットを用いて再現された。
【0299】
TegDNAポリメラーゼの伸長速度は、TaqDNAポリメラーゼの速度より5塩基/秒速い。この差は顕著には見えないかもしれないが、しかし2つのポリメラーゼが7.2kbテンプレートDNAの複製を完了する際の30秒間の時間差に繋がる。同一のDNAテンプレートを、40サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応(熱安定性DNAポリメラーゼの際立って最も重要な用途)で増幅すると、この小さな差は、実験の全過程にわたる総時間差20分間に達する。本発明の当業者にとっては、迅速PCRサイクリング時間は、熱安定性DNAポリメラーゼの最も望まれる用途特性の1つである。
【0300】
例9:リアルタイムPCR用途におけるTaq−およびTbrDNAポリメラーゼの安定性に対するTegDNAポリメラーゼの熱安定性
熱安定性は熱安定性DNAポリメラーゼの最も重要な性能特性の1つである。好熱性微生物由来の起源は、PCRまたは熱サイクル配列決定反応における不可逆的熱不活性化に対するDNAポリメラーゼの十分な安定性に何ら保証を与えない。多数のDNAポリメラーゼが、新規の機能性またはより良好な性能特性を求めて、好熱性細菌から単離されているが、不十分な熱安定性がそれらのPCRでの有用性を限定している。そのような酵素の例は、ジオバチルス・ステロサーモフィルス(Geobacillus staerothermophilus)、サーモプラスマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)およびアクイフェックス・スピーシーズ(Aquifex spec)種由来のI型DNAポリメラーゼである。そのリストに加えるべき別の一例がここでTbrDNAポリメラーゼによって示される。
【0301】
DNAポリメラーゼの熱安定性を測定するための標準試験は無い。実際の安定性は、試験に用いられる反応条件に依存して大きく変動しうる。希釈水系緩衝液中の純粋な単一酵素は、安定化共溶媒、基質および補因子の存在下よりも低い熱安定性を有する。純粋なTaqDNAポリメラーゼは、95℃に曝露される際、半減期は5分未満である。「通常の」PCR−反応条件下では、dNTP、プライミングされたテンプレートDNA基質およびポリメラーゼに結合するマグネシウムイオンが、安定化作用を発揮する。実際には、PCR条件下での熱安定性だけが当業者に関連がある。
【0302】
Taq−およびTbrDNAポリメラーゼと比較したTegDNAポリメラーゼの熱安定性を試すために、リアルタイムPCRアッセイを選択した。試験は、実際のPCRサイクリングプログラムを開始する前に、95℃にて最大15分間のPCR反応混合物の前インキュベーションを含んだ。リアルタイムPCRは、生じたPCR産物のリアルタイムでの正確な相対定量を可能にする。リアルタイムPCRアッセイで測定される閾サイクル数(CT)は、増幅されたPCR産物の量の間接指標となる(テンプレートDNAの入力量が一定に保たれる場合)。閾サイクルとは、増幅されたPCR産物から放出される蛍光がバックグラウンド蛍光のレベルを超える、PCR実験中の最初のサイクルである。PCR産物の量は、次いで、すべての試験反応中ですべての他の因子が一定に保たれる場合、反応中の利用可能な活性DNAポリメラーゼ量の直接指標である。したがって、実験中にありうる唯一の変数が、95℃にて5ないし10分間の範囲にある前増幅曝露時間であるように、すべての反応は単一のマスターミックスから準備された。
【0303】
図25は、Teg−、Taq−およびTbrDNAポリメラーゼを用いたリアルタイムPCR実験の正確な反応条件および増幅プロットを示す。95℃への15分間曝露さえ、PCR性能、たとえばTegおよびTaqDNAポリメラーゼの活性に対して、測定可能な負の影響は無かった。TbrDNAポリメラーゼは、代わりに、負の影響を受けた。図24のプロットは、95℃での曝露時間対Ct値の2.5サイクル上方シフトを示す。
【0304】
例10:DNA合成忠実度TegDNAポリメラーゼ
DNAポリメラーゼの合成忠実度とは、プライミング鎖の3’末端での「間違った」ヌクレオチドの取り込みを識別する能力である。「間違った」ヌクレオチドとは、テンプレート鎖の対向塩基とのワトソン/クリック型水素結合を取れない塩基を持つヌクレオチドをいう。ポリメラーゼ活性部位における立体構造変化の熱力学的制限は、「間違った」塩基識別の基礎となる機構を提供する。立体構造的制限は、「非ワトソン−クリック」塩基対のDNAらせん歪みによって強制される。
【0305】
科学文献では、忠実度はエラー率の逆数としばしば混同される。ポリメラーゼのエラー率は複雑なパラメーターを表し、複製中にすべて同時に起こる3つの異なる処理の結果に依存する:ミスマッチ塩基の取り込み、ミスマッチ塩基の切り取り(たとえばエキソヌクレアーゼ校正)またはミスマッチ塩基の伸長。忠実度は第一の処理の結果だけを調節する。それはミスマッチ塩基取り込みおよび複製産物中にポリメラーゼ複製エラーを永続的に固定するミスマッチ伸長の協調作用を必要とする。
【0306】
12種類の可能な塩基ミスマッチ組み合わせのそれぞれが、特定のらせん歪み特徴を有する。したがって、任意のポリメラーゼの合成忠実度は、12の個別のミスマッチ塩基対忠実度の平均値を含む。G/T塩基対は、標準のワトソン/クリック塩基対と比較してDNA二重らせんに最小の歪みを生じる。G/G塩基対は歪みが大きいため、DNAポリメラーゼが複製中に未完成DNA鎖のらせん内にそれを組み込むことはほぼ不可能である。したがってG/T塩基対またはG/G塩基対に対する識別は、12種類の理論的に可能なミスマッチ塩基対の集団のうち、忠実度の最低および最高端をそれぞれ示す。DNAポリメラーゼの一般的な忠実度は、その両極の塩基対忠実度の平均として表すことができる。
【0307】
Teg−およびTaqDNAポリメラーゼのG/T−およびG/Gミスマッチ忠実度を、エコールズ(Echols)およびグッドマン(Goodman)によって大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIII用に開発された定常状態動態dNTP取り込みアッセイを用いて測定した(エコールズおよびグッドマン,『DNA複製における忠実度機構』(Fidelity Mechanisms in DNA Replication,) Annual Review of Biochemistry,60:477−511,1991,参照により本開示に含まれる)。同一のアッセイを用いて、該論文の著者らはTaqDNAポリメラーゼの忠実度を測定するのに成功した。
【0308】
該「グッドマン(Goodman)」アッセイは、図26に示す、プライミング(+)鎖上に欠けた3'末端を有する部分2本鎖DNAテンプレート分子を用いる。プライミング鎖の5'末端は、プライマー伸長産物の検出および定量のために32Pで標識されている。「G」は、ポリメラーゼによって入ってくるdNTP基質とマッチされる必要のある、プライミング鎖の3'末端に隣接するテンプレート塩基を形成する。すべてのアッセイ反応における反応産物は、1塩基伸長されたプライマー鎖(n+1)であり、それはPAAGEによって変性条件下で、伸長されていないDNAテンプレート分子から分離される。
【0309】
各ポリメラーゼを、3'の欠けたプライミング鎖のn+1位に、T/G、およびG/Gミスマッチ塩基対をを生じる能力について評価した。2組の反応を、2つの塩基ミスマッチ対のそれぞれについて実施した。第1の組の反応では、マッチするヌクレオチドdCTPの漸増濃度を用いた。第2の組では、ミスマッチのヌクレオチドの漸増濃度を用いた(dGTPまたはdTTPのどちらか)。他のすべての反応物の濃度を、すべての反応について一定に保った。すべての反応を、30mMビシン(Bicine)、59mMトリス(Tris)pH8.7、50mM KCl、2mM酢酸マグネシウムを含む20μl中で60℃にて8分間にわたって実施した。
【0310】
反応を、EDTA/ホルムアミド含有試料負荷緩衝液の添加によって停止した。すべての反応産物を、20%TBE緩衝PAAGで変性条件(8M尿素)下で平行して分離した。ゲル内の「n+1」プライマー伸長産物を、ホスホイメージャー(PhosphoImager)(アマシャム社(Amersham))によって検出しおよび濃度測定的に定量した。
【0311】
図26および27は、Teg−(図26)およびTaqDNAポリメラーゼ(図27)についての動態忠実度分析の結果を要約する。各電気泳動像上の明瞭な下側のバンドは、標識化され伸長されていないDNAテンプレートを表し、それはすべての反応において定常状態動態のためにポリメラーゼ酵素より10倍モル過剰に保たれた。テンプレートバンドの上の薄いバンドはn+1プライマー伸長産物を表し、それを定量した。表15はTeg−およびTaqDNAポリメラーゼの忠実度データを要約する。

【0312】
G/TミスマッチについてはTegDNAポリメラーゼの忠実度はTaqの忠実度をわずかに上回るだけである一方、TegはG/Gミスマッチについては1000倍を上回る高い忠実度を示す。これはすべての用途についてTegDNAポリメラーゼのTaqを上回る顕著な利益を表し、校正エキソヌクレアーゼ活性が関与していないためさらにその通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライミングされた1本鎖M13mp18DNAおよび60℃のインキュベーション温度を用いてDNA複製アッセイにおいて同一条件下で測定した場合、DNAポリメラーゼが>35塩基/秒であるインビトロ(in−vitro)プライマー伸長速度を有しおよびアミノ酸配列の配列番号:2または4を含むDNAポリメラーゼのプライマー伸長速度より速い、好熱性ポリメラーゼ。
【請求項2】
a)測定対象の酵素が10倍過剰で存在し、
b)反応が等温条件下で実施され、
c)緩衝液が30mMビシン(Bicine)、59mMトリス(Tris)、50mM KClおよび2mM酢酸マグネシウムを含み、および
d)pHが8.7である
条件下で、アミノ酸配列の配列番号:2を含むDNAポリメラーゼのdTTP誤取り込みの頻度と比べて、DNAテンプレート鎖上のGに向かい合った位置での正しいdCTPの取り込みに対してdTTP誤取り込みがより低頻度である、請求項1のDNAポリメラーゼ。
【請求項3】
a)測定対象の酵素が10倍過剰で存在する、
b)反応が等温条件下で実施される、
c)緩衝液が30mMビシン(Bicine)、59mMトリス(Tris)、50mM KClおよび2mM酢酸マグネシウムを含む、および
d)pHが8.7である
:条件下で、アミノ酸配列の配列番号:2を含むDNAポリメラーゼのdGTP誤取り込みの頻度と比べて、DNAテンプレート鎖上のGに向かい合った位置での正しいdCTPの取り込みに対してdGTP誤取り込みがより低頻度である、請求項1または2のDNAポリメラーゼ。
【請求項4】
DNAポリメラーゼが少なくとも一つの内因性エキソヌクレアーゼ活性を有し、DNAポリメラーゼが内因性5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項1のDNAポリメラーゼ。
【請求項5】
アミノ酸配列の配列番号:2を含むDNAポリメラーゼと比べて、ミスマッチプライマーを伸長するためのより高い効率を有する、請求項1から4に記載のDNAポリメラーゼ。
【請求項6】
配列番号:6、17、18、19、20、21、22、44および23から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1から7に記載のDNAポリメラーゼ。
【請求項7】
請求項1から8の精製されたDNAポリメラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸配列。
【請求項8】
配列番号:6または44の完全または部分アミノ酸配列を含む、キメラポリメラーゼ。
【請求項9】
請求項8の精製されたキメラポリメラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸配列。
【請求項10】
配列番号:5または43の任意の完全または部分核酸配列を含むベクター。
【請求項11】
a)アミノ酸配列の配列番号:6、または17〜23のいずれか一つの全体または一部を含むDNAポリメラーゼをコードする単離された核酸に調節可能に結合しているプロモーター領域、
b)リボソーム結合部位、
c)選択可能な代謝マーカー遺伝子、
d)宿主細胞において機能的な複製開始点、および任意に
e)DNAポリメラーゼをコードする核酸配列転写物の翻訳を促進する3’非翻訳配列領域
を含む、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
a)請求項1から8に記載の好熱性DNAポリメラーゼI、任意に
b)反応緩衝液、および
c)任意にヌクレオチド
を含む核酸複製キット。
【請求項13】
DNA配列決定キットおよびDNA増幅キットの群から選択される、請求項12に記載の核酸複製キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2010−505434(P2010−505434A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531829(P2009−531829)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060724
【国際公開番号】WO2008/043765
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】