説明

サーマルプリンタおよびサーマルプリンタを用いた印刷方法

【課題】印刷時間の遅延を抑制した上で、スマッジの発生を防止することができるサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】サーマルプリンタ1は、サーマルヘッド36と、受容紙11を搬送経路23に沿って移動させる搬送機構12と、搬送経路23に配置されサーマルヘッド36と対向するプラテン部材25と、サーマルヘッド36をインクリボン13および受容紙11を挟んでプラテン部材25に加圧接触した印字可能位置Aと、プラテン部材25から離れた非印字位置Bとの間で移動させる持上げ機構41と、印字動作を行なう印字制御部52と、印字動作が終了してからの経過時間を測定する計時部56と、持上げ機構41を制御する持上げ機構制御部58とを具備している。持上げ機構制御部58は、経過時間がヘッド離反時間を超えた場合にサーマルヘッド36をプラテン部材25から離反させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サーマルヘッドにより熱転写インクリボンから受容紙にインクを熱転写させて印刷を行うサーマルプリンタおよびサーマルプリンタを用いた印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラベルプリンタやバーコードプリンタ等に用いられるサーマルプリンタは、ラインサーマルヘッド(以下、サーマルヘッドという)を備えている。サーマルヘッドは、複数の発熱素子を受容紙の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に配列することにより構成されている。
【0003】
熱転写インクリボン(以下、インクリボンという)を使用するサーマルプリンタにおいて、サーマルヘッドは、重なった受容紙およびインクリボンを挟んで、プラテンローラに加圧接触している。そして駆動モータによってプラテンローラを回転させて受容紙を搬送経路上に沿って搬送させながら、前記インクリボンにサーマルヘッドの発熱素子を当接させることにより、インクリボンから受容紙にインクを熱転写させている。前記インクリボンは、前記搬送経路に沿って移動しながら、リボン巻取りローラに巻き取られる。
【0004】
サーマルヘッドは、印刷終了後であっても、プラテンローラに加圧接触した状態で固定されている。このため、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に存するインクリボンおよび受容紙は、印刷終了後の停止した状態であっても、常にサーマルヘッドからの圧力を受け続ける。
【0005】
停止しているにもかかわらず、サーマルヘッドからの圧力がインクリボンおよび受容紙に作用し続けていると、受容紙に対するインクリボンのインクの滲み(いわゆるスマッジ)が発生する。このスマッジを防止するため、インク層の上に耐スマッジ保護層を有しているインクリボンが知られている。
【0006】
一方で、インク層のみを有するインクリボンを利用すると、スマッジが発生し、印字画質が悪化するおそれがある。このようなインク層のみを有するインクリボンを利用するため、例えば下記の特許文献1に開示されるサーマルプリンタは、印刷終了後のインクリボンおよび受容紙が停止した状態ではサーマルヘッドを持ち上げてプラテンローラから離反させ、印刷時にはサーマルヘッドをプラテンローラに押し当てることで、スマッジの発生を防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に開示されるサーマルプリンタは、印刷時ごとにサーマルヘッドをプラテンローラに押し当て、印刷終了ごとにサーマルヘッドをプラテンローラから離反させている。このため、印刷終了後のインクリボンおよび受容紙が停止した状態においては、必ずサーマルヘッドがプラテンローラから離反している。このようなサーマルプリンタでは、印刷を行なうために必ずサーマルヘッドをプラテンローラに押し当てる動作が必要となり、印刷に時間がかかってしまう。
【0008】
従ってこの発明は、印刷時間の遅延を抑制した上で、スマッジの発生を防止することができるサーマルプリンタおよびサーマルプリンタを用いた印刷方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のサーマルプリンタは、インクリボンのインクを受容紙に熱転写させる発熱素子を有するサーマルヘッドと、前記受容紙を搬送経路に沿って移動させる搬送機構と、前記搬送経路に配置され前記サーマルヘッドと対向するプラテン部材と、持上げ機構と、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を発熱させる印字動作を行なう印字制御部と、前記印字動作が終了してからの経過時間を測定する計時部と、前記持上げ機構を制御する持上げ機構制御部とを具備している。
【0010】
前記持上げ機構は、前記サーマルヘッドを、前記インクリボンおよび前記受容紙を挟んで前記プラテン部材に加圧接触した印字可能位置と、前記プラテン部材から離れた非印字位置との間で移動させる。
【0011】
前記持上げ機構制御部は、前記経過時間が前記サーマルヘッドを前記非印字位置に移動させるヘッド離反時間を超えた場合に前記サーマルヘッドを前記非印字位置に移動させ、前記印字動作を行なう際に前記サーマルヘッドが前記非印字位置にある場合に前記サーマルヘッドを前記印字可能位置に移動させるように前記持上げ機構を制御する。
【0012】
本発明の印刷方法は、サーマルヘッドを、インクリボンおよび受容紙を挟んでプラテン部材に加圧接触した印字可能位置に配置すること、前記サーマルヘッドが前記印字可能位置に配置された状態で前記受容紙を移動させるとともに、サーマルヘッドの発熱素子を発熱させて前記受容紙に印刷する印字動作を行なうこと、計時部によって前記印字動作が終了してからの経過時間を測定すること、経過時間がヘッド離反時間を超えた場合に前記サーマルヘッドを前記プラテン部材から離れた非印字位置に配置させることを具備している。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサーマルプリンタによれば、選択されたインクリボンおよび受容紙の種類や、測定された温度に基づいてサーマルヘッドをプラテンローラから離反させるため、サーマルヘッドをプラテンローラから離反させる回数を最低限に抑えることができる。このため、印刷時間の遅延を抑制した上で、スマッジの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の1つの実施形態に係るラベルプリンタを模式的に示す縦断面図。
【図2】図1に示されたラベルプリンタのサーマルヘッド周辺を拡大して模式的に示す側面図。
【図3】図1に示されたラベルプリンタの電気的接続を示すブロック図。
【図4】図1に示されたラベルプリンタの印刷制御の一例を示すフローチャート。
【図5】図1に示されたラベルプリンタのヘッド離反時間算出手段の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の1つの実施形態に係るサーマルプリンタの一例であるラベルプリンタについて、図1から図5を参照して説明する。
図1はラベルプリンタ1の内部を模式的に示している。図2はラベルプリンタ1の一部を拡大して示している。図3はラベルプリンタ1の要部の電気的接続を示すブロック図である。このラベルプリンタ1は、筐体2を備えている。筐体2の内部には、受容紙の一例であるラベル用紙11を搬送するための搬送機構12と、インクリボン13を供給するためのインクリボン送り機構14などが収容されている。
【0016】
筐体2は、図1において下側に位置する本体ケース2aと、本体ケース2aに対しヒンジ部(図示せず)を介して上下方向に回動可能に設けられたカバー2bとを含んでいる。筐体2の前面2c側に、ラベル排出口17と、外部入力装置18および表示部19(図3に示す)などが配置されている。
【0017】
筐体2の内部に形成された受容紙収容部21にラベル用紙ロール11aが収容されている。ラベル用紙ロール11aは、台紙付きのラベル用紙11をロール状に巻いたものであり、台紙11bが外側を向くように巻かれている。ラベル用紙11には、台紙11bと接する面に粘着層が設けられており、必要に応じてラベル用紙11を台紙11bから剥がすことができるようになっている。
【0018】
筐体2の内部に、ラベル用紙11を搬送するための搬送経路23が形成されている。搬送経路23は、受容紙収容部21にセットされたラベル用紙ロール11aの下面からラベル排出口17に向ってほぼ水平方向に延びている。そしてこの搬送経路23の途中に、プラテン部材の一例であるプラテンローラ25と、ガイドローラ26と、ピンチローラ27などが配置されている。
【0019】
プラテンローラ25とガイドローラ26等はラベル用紙11を搬送するための搬送機構12の一部をなし、図示しないモータおよびギヤ等を含む駆動手段によって所定の方向に回転するように構成されている。図1における矢印Fがラベル用紙11の搬送方向を示している。
【0020】
ラベル排出口17は搬送経路23の終端付近に形成されている。ラベル排出口17の近傍に台紙剥離ガイド31が設けられている。台紙剥離ガイド31は、台紙11bを備えたラベル用紙11をラベル排出口17の直前で急角度に折曲げることにより、ラベル用紙11のラベル11cを台紙11bから剥離させるようにしている。台紙11bから剥離したラベル11cはラベル排出口17から取り出すことができる。搬送経路23の下方には、剥離された台紙11bを巻き取るための台紙巻取り機構32が設けられている。台紙巻取り機構32は、図示しないモータおよびギヤ等を含む駆動手段によって回転する台紙巻取りローラ34を含んでいる。
【0021】
搬送経路23の途中にサーマルヘッド36が設けられている。図2に拡大して示すようにサーマルヘッド36はプラテンローラ25の上方に対向して配置されている。プラテンローラ25とサーマルヘッド36との間には、台紙11b付きのラベル用紙11およびインクリボン13が挟まれるようになっている。
【0022】
サーマルヘッド36は、ヘッドブラケット38の下面に固定されている。サーマルヘッド36の下面の先端部に発熱素子39が設けられている。発熱素子39は、プラテンローラ25の軸線方向に沿って、ラベル用紙11の搬送方向と直角な方向(主走査方向)に所定間隔で複数配置されている。
【0023】
図1に示すように、サーマルヘッド36は、ヘッドブラケット38を介して持上げ機構41に取り付けられている。持上げ機構41は、駆動手段43と、機構部44とを有している。駆動手段43は、例えば自己保持型ソレノイドや永久磁石等を用いたアクチュエータである。機構部44は、駆動手段43によって駆動することで、ヘッドブラケット38に取り付けられたサーマルヘッド36を移動させる。
【0024】
インクリボン送り機構14は、ラベルプリンタ1内のインクリボンロール13aから繰出されるインクリボン13を、搬送経路23上のラベル用紙11に向けて供給するように構成されている。ラベル用紙11に向けて供給されたインクリボン13は、ラベル用紙11上に重なった状態でプラテンローラ25とサーマルヘッド36との間を通ったのち、上方に向きを変えてインクリボン巻取りローラ47に巻取られるようになっている。
【0025】
図2に示すように、サーマルヘッド36は持上げ機構41によって、重なったインクリボン13およびラベル用紙11を挟んでプラテンローラ25に加圧接触した印字可能位置Aと、プラテンローラ25から離れた非印字位置Bとの間で移動する。印字可能位置Aでは、発熱素子39はインクリボン13に接触している。
【0026】
外部入力装置18は、例えばオペレーターが手動でデータを入力する入力キーである。なお、外部入力装置18はこれに限らず、図示しないホストコンピュータからデータを入力される端子またはアンテナや、使用されるラベル用紙ロール11aやインクリボンロール13aに設けられたRFIDタグを読み取るリーダなどを用いても良い。
【0027】
図3に示すように、ラベルプリンタ1は、温度検知手段51と、印字制御部52と、ヘッド動作制御部53とを有している。温度検知手段51は、例えばサーミスタや熱電対のような温度センサである。
【0028】
温度検知手段51は、筐体2の内部の温度を測定する。印字制御部52は、受け取った制御信号に応じてサーマルヘッド36の複数の発熱素子39を発熱させ、ラベル11cにインクリボン13のインクを熱転写する印字動作を行なう。
【0029】
ヘッド動作制御部53は、計時部56と、ヘッド離反時間算出部57と、持上げ機構41を制御する持上げ機構制御部58とを有している。ヘッド離反時間算出部57は、サーマルヘッド36を非印字位置Bに移動させてプラテンローラ25から離反させるヘッド離反時間を算出する。計時部56は、印字制御部52より印刷終了を知らせる信号を受け取ってからの経過時間を測定する。
【0030】
ヘッド離反時間算出部57は、ヘッド離反時間算出手段格納庫61に格納された複数のヘッド離反時間算出手段62と、ヘッド離反時間算出手段選択部63と、ヘッド離反時間計算部64とを有している。ヘッド離反時間算出手段62は、例えば温度とヘッド離反時間との関係式である。
【0031】
ヘッド離反時間算出手段選択部63は、外部入力装置18と、ヘッド離反時間算出手段格納庫61と、ヘッド離反時間計算部64とに接続されている。ヘッド離反時間計算部64は、温度検知手段51と、持上げ機構制御部58とに接続されている。計時部56は、印字制御部52と、持上げ機構制御部58とに接続されている。
【0032】
図4は前記ラベルプリンタ1を用いて印刷を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。以下にこのフローチャートを参照しながら本実施形態のラベルプリンタ1による印刷方法の一例について説明する。
【0033】
まず、インクリボン13およびラベル用紙11の種類を選択するステップS10では、オペレーターが外部入力装置18を操作して、印字に用いるインクリボン13およびラベル用紙11の種類を選択する。例えば、表示部19に複数のインクリボン13およびラベル用紙11の型式番号等の情報が表示される。オペレーターは、表示部19に表示された情報からラベルプリンタ1にセットされたインクリボン13およびラベル用紙11の種類を選択し、外部入力装置18に入力する。
【0034】
選択されたインクリボン13およびラベル用紙11の情報は、ヘッド離反時間算出手段選択部63に送られる。ヘッド離反時間算出手段62を選択するステップS11において、ヘッド離反時間算出手段選択部63は、受け取ったインクリボン13およびラベル用紙11の情報に応じて、ヘッド離反時間算出手段格納庫61から最適なヘッド離反時間算出手段62を選択する。
【0035】
図5は第1ないし第3のヘッド離反時間算出手段62a,62b,62cごとの温度とヘッド離反時間との関係を示している。図5中の一点鎖線で示すグラフは、第1のヘッド離反時間算出手段62aである。図5中の実線で示すグラフは、第2のヘッド離反時間算出手段62bである。図5中の破線で示すグラフは、第3のヘッド離反時間算出手段62cである。
【0036】
例えばヘッド離反時間算出手段選択部63は、選択されたインクリボン13およびラベル用紙11の組み合わせに対応する第1ないし第3のヘッド離反時間算出手段62a,62b,62cのいずれか1つのヘッド離反時間算出手段62を選択する。ヘッド離反時間算出手段選択部63は、選択したヘッド離反時間算出手段62を、ヘッド離反時間計算部64に送信する。
【0037】
上記ステップS11の後、ステップS12においてヘッド持上げ動作後かどうかの判定を行なう。すなわち、サーマルヘッド36がプラテンローラ25に加圧接触した印字可能位置Aに位置するか、プラテンローラ25から離れた非印字位置Bに位置するかを判定する。
【0038】
サーマルヘッド36が非印字位置Bに位置した場合、ステップS13に移行する。ステップS13において、持上げ機構制御部58は、持上げ機構41を作動させてサーマルヘッド36を印字可能位置Aに移動させる。サーマルヘッド36が印字可能位置Aに移動すると、サーマルヘッド36が重なったインクリボン13およびラベル用紙11を挟んでプラテンローラ25に加圧接触する。
【0039】
サーマルヘッド36が印字可能位置Aに位置していると、ステップS14において、印字制御部52が印字指令を受け取って印字を開始する。ステップS15において、印字制御部52は、受け取った印字データに応じて印字動作を行なう。ステップS16で印字動作が終了すると、印字制御部52は計時部56に印字動作終了を知らせる信号を送信する。
【0040】
上記ステップS14で印字が開始されると、ステップS17において、温度検知手段51は筐体2の内部の温度を測定する。温度検知手段51は、測定した温度のデータをヘッド離反時間計算部64に送信する。
【0041】
ステップS18において、ヘッド離反時間計算部64は、ヘッド離反時間算出手段選択部63から受け取ったヘッド離反時間算出手段62と、温度検知手段51から受け取った温度のデータとを用いて、ヘッド離反時間を算出する。ヘッド離反時間計算部64は、算出したヘッド離反時間のデータを持上げ機構制御部58に送信する。
【0042】
図5を用いて、上記ステップS18について具体的に説明する。例えばヘッド離反時間算出手段選択部63が第2のヘッド離反時間算出手段62bを選択し、温度検知手段51が測定した温度が30℃である場合、ヘッド離反時間計算部64が計算するヘッド離反時間は60秒となる。
【0043】
温度検知手段51が測定した温度が40℃よりも高い場合、ヘッド離反時間算出手段選択部63が第1ないし第3のヘッド離反時間算出手段62a,62b,62cのいずれを選択しても、ヘッド離反時間計算部64が計算するヘッド離反時間は0秒となる。
【0044】
上記ステップS16で印字制御部52が計時部56に印字動作終了を知らせる信号を送信すると、ステップS19において、計時部56は印字動作が終了してからの経過時間の計測を開始する。計時部56は、経過時間の計測を開始すると、経過時間のデータを持上げ機構制御部58に送り続ける。
【0045】
ステップS20において、持上げ機構制御部58は、計時部56から受け取った経過時間が、ヘッド離反時間計算部64から受け取ったヘッド離反時間を超えているか否かを判定する。
【0046】
具体的に説明すると、ヘッド離反時間計算部64が計算したヘッド離反時間が60秒の場合、持上げ機構制御部58は、印字動作が終了してからの経過時間が60秒を超えているか否かを判定する。
【0047】
持上げ機構制御部58は、経過時間がヘッド離反時間を超えていないと判定した場合、ステップS21において次の印字指令があるか否かを判定する。次の印字指令が無い場合、上記ステップS20に戻り、再度判定を行なう。次の印字指令がある場合、上記ステップS12に戻り、受け取った印字指令に基づいて印字を行なう。
【0048】
上記ステップS20において、経過時間がヘッド離反時間を超えた場合、ステップS22に移行する。ステップS22において、持上げ機構制御部58は、持上げ機構41を作動させる。持上げ機構41がサーマルヘッド36を非印字位置Bに移動させてプラテンローラ25から離反させると、終了となる。
【0049】
ヘッド離反時間計算部64が計算したヘッド離反時間が0秒の場合、持上げ機構制御部58は、印字動作が終了した時点で持上げ機構41を作動させ、サーマルヘッド36をプラテンローラ25から離反させる。
【0050】
なお、上記ステップS22でサーマルヘッド36を非印字位置Bに移動させた後で再度印字を行なう場合、サーマルヘッド36は、上記ステップS13において印字可能位置Aに移動し、プラテンローラ25に加圧接触する。
【0051】
前記構成のラベルプリンタ1によれば、印字が終了してからの経過時間が、算出したヘッド離反時間を超えた場合にのみ、サーマルヘッド36を非印字位置Bに移動させてプラテンローラ25から離反させる。これにより、スマッジが発生するおそれがある場合にはサーマルヘッド36をプラテンローラ25から離反させ、かつサーマルヘッド36をプラテンローラ25から離反させる回数を最低限に抑えることができる。
【0052】
詳しく述べると、スマッジが発生するまでの時間は、使用するインクリボン13およびラベル用紙11の組み合わせや、温度によって異なる。前記構成のラベルプリンタ1によれば、インクリボン13およびラベル用紙11の組み合わせによって最適なヘッド離反時間算出手段62を選択し、温度に応じてヘッド離反時間を算出する。これにより、スマッジが発生するおそれがある条件においてのみ、サーマルヘッド36を非印字位置Bに移動させてプラテンローラ25から離反させるため、サーマルヘッド36をプラテンローラ25から離反させる回数を最低限に抑えることができる。
【0053】
サーマルヘッド36が非印字位置Bにある場合、印字動作のためにサーマルヘッド36を印字可能位置Aに移動させる時間が必要となり、印刷時間が遅延する。さらに、サーマルヘッド36を印字可能位置Aに移動させてプラテンローラ25に加圧接触させると、サーマルヘッド36、インクリボン13およびラベル用紙11が振動するため、この振動が沈静するための時間が必要となり、印刷時間がさらに遅延する。しかしながら、サーマルヘッド36をプラテンローラ25から離反させる回数を最低限に抑えることにより、これらの遅延を抑制することができ、なおかつスマッジの発生を防止することができる。
【0054】
さらに、サーマルヘッド36を印字可能位置Aに移動させてプラテンローラ25に加圧接触させる際に、サーマルヘッド36とプラテンローラ25との間に挟まれるインクリボン13およびラベル用紙11の挟み込み不良が生じ、印字不良や送りジワの原因となるおそれがある。しかしながら、サーマルヘッド36をプラテンローラ25から離反させる回数を最低限に抑えることにより、これらの不具合を抑制することができる。
【0055】
以上説明したように本実施形態のラベルプリンタ1の印刷方法は、下記の工程を含んでいる。
(1)外部入力装置18によってインクリボン13およびラベル用紙11の情報を入力すること、
(2)複数のヘッド離反時間算出手段62を、ヘッド離反時間算出部57に格納すること、
(3)入力されたインクリボン13およびラベル用紙11の情報に応じて、ヘッド離反時間算出部57に格納された複数のヘッド離反時間算出手段62の中から1つを選択すること、
(4)サーマルヘッド36を、インクリボン13およびラベル用紙11を挟んでプラテンローラ25に加圧接触した印字可能位置Aに配置すること、
(5)サーマルヘッド36が印字可能位置Aに配置された状態でラベル用紙11を移動させるとともに、サーマルヘッド36の発熱素子39を発熱させてラベル用紙11に印刷する印字動作を行なうこと、
(6)計時部56によって印字動作が終了してからの経過時間を測定すること、
(7)温度検知手段51によって温度を検知すること、
(8)検知された温度および選択されたヘッド離反時間算出手段62によってヘッド離反時間を算出すること、
(9)経過時間がヘッド離反時間を超えた場合にサーマルヘッド36をプラテンローラ25から離れた非印字位置Bに配置させること。
【0056】
以上述べた工程(1)〜(9)を有する印刷方法により、印刷時間の遅延を抑制した上で、スマッジの発生を防止することができる。
【0057】
なお、上記実施形態において、印字終了後の経過時間がヘッド離反時間を超えた場合のみサーマルヘッド36をプラテンローラ25から離反させる構成としたが、印字終了ごとにサーマルヘッド36をプラテンローラ25から離反させるモードや、印字が終了してもサーマルヘッド36がプラテンローラ25に加圧接触した状態のまま保つモードなどと切り替え可能な構成としても良い。
【0058】
さらに、本発明を実施するにあたり、発明の構成要素を発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更して実施できることは言うまでもない。例えば、本発明のサーマルプリンタはラベルプリンタに限らず、バーコードプリンタのような他のプリンタでも良い。また、温度や、インクリボンおよび受容紙の種類にかかわらず、印刷終了後の経過時間があらかじめ設定されたヘッド離反時間を超えた場合にサーマルヘッドを非印字位置に移動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ラベルプリンタ,11…ラベル用紙,12…搬送機構,13…インクリボン, 14…インクリボン送り機構,23…搬送経路,25…プラテンローラ,36…サーマルヘッド,39…発熱素子,41…持上げ機構,52…印字制御部,56…計時部,58…持上げ機構制御部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開平10−157244号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンのインクを受容紙に熱転写させる発熱素子を有するサーマルヘッドと、
前記受容紙を搬送経路に沿って移動させる搬送機構と、
前記搬送経路に配置され前記サーマルヘッドと対向するプラテン部材と、
前記サーマルヘッドを、前記インクリボンおよび前記受容紙を挟んで前記プラテン部材に加圧接触した印字可能位置と、前記プラテン部材から離れた非印字位置との間で移動させる持上げ機構と、
前記サーマルヘッドの前記発熱素子を発熱させる印字動作を行なう印字制御部と、
前記印字動作が終了してからの経過時間を測定する計時部と、
前記経過時間が前記サーマルヘッドを前記非印字位置に移動させるヘッド離反時間を超えた場合に前記サーマルヘッドを前記非印字位置に移動させ、前記印字動作を行なう際に前記サーマルヘッドが前記非印字位置にある場合に前記サーマルヘッドを前記印字可能位置に移動させるように前記持上げ機構を制御する持上げ機構制御部と、
を具備したことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段が検知した温度に応じて、前記ヘッド離反時間を算出するヘッド離反時間算出部と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記ヘッド離反時間算出部は、複数のヘッド離反時間算出手段を有しており、前記複数のヘッド離反時間算出手段の中から1つを選択し、選択された前記ヘッド離反時間算出手段を用いて前記ヘッド離反時間を算出することを特徴とする請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記ヘッド離反算出部に前記インクリボンおよび前記受容紙の情報を入力する外部入力装置をさらに具備しており、
前記ヘッド離反時間算出部は、前記外部入力装置から入力された前記インクリボンおよび前記受容紙の情報に応じて前記複数のヘッド離反時間算出手段の中から1つを選択することを特徴とする請求項3に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
サーマルヘッドを、インクリボンおよび受容紙を挟んでプラテン部材に加圧接触した印字可能位置に配置すること、
前記サーマルヘッドが前記印字可能位置に配置された状態で前記受容紙を移動させるとともに、サーマルヘッドの発熱素子を発熱させて前記受容紙に印刷する印字動作を行なうこと、
計時部によって前記印字動作が終了してからの経過時間を測定すること、
経過時間がヘッド離反時間を超えた場合に前記サーマルヘッドを前記プラテン部材から離れた非印字位置に配置させること、
を具備したことを特徴とするサーマルプリンタの印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−56803(P2011−56803A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209502(P2009−209502)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】