説明

サーマルプリンタ

【課題】 用いる用紙の厚みに応じてプラテンとサーマルプリンタヘッドの発熱素子列との位置を微調整するに際して、作業性を良好にする。
【解決手段】 案内経路を介して発熱素子列115bがプラテン116に当接する位置である印字位置に配置されるサーマルプリンタヘッド115を、発熱素子列115bとプラテン116とを結ぶ直線方向と略直交する方向である調節方向に変位自在に保持し、サーマルプリンタヘッド115の両側方から突出する位置決めピン115aを調節方向に移動自在となるように位置決め溝132に嵌合させ、位置決め溝の相対向する辺から選択的に出没する可動片の変位によって位置決め溝132内の位置決めピン115aの位置を調節方向に変位させ、これによって発熱素子列115bの位置を調節方向に調節可能とする。プラテン116の軸心を板金からなるフレームでサーマルプリンタヘッド115の調節方向に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに係り、特に、プラテンとサーマルプリンタヘッドとの位置関係を調節可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタでは、高品位な印刷を実現する上で、サーマルプリンタヘッドが有する発熱素子列とプラテンとの当接位置が重要である。つまり、発熱素子列は、プラテンの軸心を中心とする放射線上に位置することが望ましい。
【0003】
これに対して、プラテンとサーマルプリンタヘッドとは、用紙を介在させて使用する。用紙が介在すれば、プラテンと発熱素子列との位置関係が微妙にずれる。このため、プラテンと発熱素子列との位置関係は、用紙を介在させた状態を想定して調節されなければならない。
【0004】
図10は、プラテンとサーマルプリンタヘッドの発熱素子列との位置関係を示す模式図であり、(a)は厚さが薄い用紙を使用した場合の位置関係、(b)は厚さが厚い用紙を使用した場合の位置関係をそれぞれ示す模式図である。用紙1には様々な厚さのものがある。プラテン2とサーマルプリンタヘッド3の発熱素子列4との間の位置は、厚さが薄い用紙1を介在させた場合と厚さが厚い用紙1を介在させた場合とで変動する。一例として、厚さが薄い用紙1を介在させた場合を想定し、プラテン2の放射線Rの線上に発熱素子列4が位置付けられるようにプラテン2とサーマルプリンタヘッド3との位置関係を設定すると、厚さが厚い用紙1を用いた場合、発熱素子列4の位置は放射線Rの線上からずれる。用紙1の厚み分だけ、サーマルプリンタヘッド3がプラテン2から離反する方向に変位するからである。この際、用紙1が厚くなればそれだけ腰の強さも増し、用紙1それ自体もプラテン2から僅かに離反する。このような現象は、放射線Rの線上からの発熱素子列4の位置ずれに拍車をかける。
【0005】
特許文献1には、用紙の厚みに応じたプラテンと発熱素子列との位置ずれに対する対処策を提供する技術が記載されている。この技術は、ブラケットにサーマルプリンタヘッドをネジ固定するに際して、ブラケットとサーマルプリンタヘッドとの間を微小距離変位自在としておく。変位方向は、用紙の通紙方向である。そして、ブラケットに設けられた貫通孔とサーマルプリンタヘッドに設けられた開口穴との組合せを上記微小距離変位分だけ複数組設けておき、位置決めピンを所望組の貫通孔及び開口穴に貫通させることで、ブラケットとサーマルプリンタヘッドとの間を位置調整可能とする、というものである。特許文献1の段落0006、0012及び図1を参照されたい。
【0006】
【特許文献1】特開平07−125379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、サーマルプリンタヘッドの位置調節をする場合、ブラケットにサーマルプリンタヘッドを固定するネジを緩め、所望組のブラケットの貫通孔とサーマルプリンタヘッドの開口穴とを位置合わせして位置決めピンを挿入し、再びネジを締め付ける、という作業が必要となり、そのための作業が煩雑である。また、貫通孔と開口穴とに位置決めピンを挿入するという構成上、サーマルプリンタヘッドの上面に位置決めピンの配置空間や作業空間を必要とするため、プリンタ全体のレイアウトを大きく制限してしまう。
【0008】
本発明の目的は、用いる用紙の厚みに応じてプラテンとサーマルプリンタヘッドの発熱素子列との位置を微調整するに際して、作業性を良好にすることである。
【0009】
本発明の目的は、用いる用紙の厚みに応じてプラテンとサーマルプリンタヘッドの発熱素子列との位置を微調整可能に構成するに際して、プリンタ全体にレイアウト上の制限をもたらさないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のサーマルプリンタは、プラテンを有する下ユニットと、複数個の発熱素子が直線上に並ぶ発熱素子列を有し、当該発熱素子列が前記プラテンに当接する位置である印字位置に配置されるサーマルプリンタヘッドを有し、当該サーマルプリンタヘッドの発熱素子列が用紙の案内経路を介して前記プラテンに対して接離するように前記下ユニットに対して支点を中心に回動自在の上ユニットと、前記サーマルプリンタヘッドを前記発熱素子列と前記プラテンの回転中心とを結ぶ直線方向と略直交する方向である調節方向に変位自在に保持するヘッド保持機構と、前記サーマルプリンタヘッドの両側方から突出する位置決めピンと、前記下ユニットに上下方向から着脱自在に設けられ、前記プラテンの軸心を回転自在に保持する軸ホルダと、前記位置決めピンを上方向から嵌合させて保持し、前記位置決めピンを保持した状態で前記サーマルプリンタヘッドを前記印字位置に位置付ける前記軸ホルダに形成された位置決め溝と、前記位置決め溝を横切るように変位自在であって変位することによって当該位置決め溝の相対向する辺から選択的に出没する可動片を有し、当該可動片の出没位置に応じて前記位置決め溝内の前記位置決めピンの位置を前記調節方向に異なる二箇所に位置決めし、前記サーマルプリンタヘッドを前記調節方向に異なる二箇所の前記印字位置に位置付ける変位機構と、前記下ユニットに設けられ、前記軸ホルダに保持された前記プラテンの軸心を前記サーマルプリンタヘッドの調節方向に位置決めする板金からなるフレームと、を備える。
【0011】
別の面から見た本発明のサーマルプリンタは、プラテンを有する下ユニットと、複数個の発熱素子が直線上に並ぶ発熱素子列を有し、当該発熱素子列が前記プラテンに当接する位置である印字位置に配置されるサーマルプリンタヘッドを有し、当該サーマルプリンタヘッドの発熱素子列が前記プラテンに対して接離するように前記下ユニットに対して支点を中心に回動自在の上ユニットと、前記サーマルプリンタヘッドの両側方から突出する位置決めピンと、前記下ユニットに上下方向から着脱自在に設けられ、前記プラテンの軸心を回転自在に保持する軸ホルダと、前記位置決めピンを上方向から嵌合させて保持し、前記位置決めピンを保持した状態で前記サーマルプリンタヘッドを前記印字位置に位置付ける前記軸ホルダに形成された位置決め溝と、前記下ユニットに設けられ、前記軸ホルダに保持された前記プラテンの軸心を前記サーマルプリンタヘッドの調節方向に位置決めする板金からなるフレームと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、位置決め溝の相対向する辺から選択的に可動片を出没させると位置決めピンが調節方向に変位し、これに応じてサーマルプリンタヘッドの発熱素子列も調節方向に変位調節することができ、したがって、用いる用紙の厚みに応じてプラテンとサーマルプリンタヘッドとの位置を微調整するための作業性を良好にすることができ、また、用いる用紙の厚みに応じてプラテンとサーマルプリンタヘッドとの位置を微調整するための構造や作業空間に大きな空間を必要としないことから、プリンタ全体にレイアウト上の制限をもたらすことを防止することができる。フレームは、軸ホルダに保持されたプラテンの軸心をサーマルプリンタヘッドの調節方向に位置決めするので、プラテンの軸心方向と発熱素子列の配列方向との平行度を確保することができ、したがって、印字品質を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の一形態を図1ないし図9に基づいて説明する。本実施の形態は、サーマルラベルプリンタへの適用例である。
【0014】
図1は、サーマルラベルプリンタ全体の斜視図である。筐体状のハウジング101が設けられ、このハウジング101は、上下に分割されている。下方に位置するハウジング101及びその収納物は下ユニット102を構成し、上方に位置するハウジング101及びその収納物は上ユニット103を構成する。上ユニット103は、後方位置に設けられた図示しない支点を中心として下ユニット102に対して回動開閉自在となっている。
【0015】
ハウジング101の正面には、フロントパネル104が設けられている。フロントパネル104も、上下に分割され、下ユニット102と上ユニット103とに分配されている。フロントパネル104における下ユニット102と上ユニット103との境界部分には、発行口105が設けられている。上ユニット103のハウジング101は、発行口105の上方位置の部分が回動開閉自在となっている。下ユニット102のフロントパネル104には、左下方に位置させて電源スイッチ106が設けられている。
【0016】
図2は、上ユニット103を開放した状態を示す斜視図である。下ユニット102には、ロール状に巻回されたロール紙様の用紙107が収納保持されている。用紙107は、詳細を図示しないが、長尺状の台紙に感熱ラベルが一定間隔で貼付されたラベル用紙である。このような用紙107の収納空間から発行口105に至る空間には、フィードローラユニット108と下ベースユニット109とセンサユニット110とが設けられている。これらのフィードローラユニット108、下ベースユニット109及びセンサユニット110は、樹脂モールド部品に必要な部品類が取り付けられて構成されている。つまり、フィードローラユニット108には、フィードローラ111が回転自在に取り付けられている。下ベースユニット109には、プラテンユニット112が着脱自在に取り付けられている。そして、センサユニット110には、三つの光センサ113(図3参照)が取り付けられている。
【0017】
上ユニット103には、上ベースユニット114が設けられている。上ベースユニット114も、下ベースユニット109と同様に、樹脂モールド部品に必要な部品類が取り付けられて構成されている。必要な部品類の代表は、サーマルプリンタヘッド115である。
【0018】
このような下ベースユニット109と上ベースユニット114との間には、用紙107の収納空間から発行口105に至る空間に位置させて、用紙107を案内する案内経路(図示せず)が形成される。
【0019】
図3は、下ユニット102に収納されている下ベースユニット109及びセンサユニット110の分解斜視図である。図3に示すように、下ベースユニット109に対してセンサユニット110が取り付けられている。下ベースユニット109は、下ユニット102の内部に収納されて固定される。
【0020】
図4は、図3に示す下ベースユニット109に対してプラテンユニット112を着脱する状態を示す分解斜視図である。プラテンユニット112は、プラテン116を回転自在に支持し、ラベル剥離板117を固定する。このようなプラテンユニット112の詳細については、図6に基づいて後述する。下ベースユニット109には、その先端両側方部に、プラテンユニット112を着脱自在に保持する一対のホルダ受け118が形成されている。これらのホルダ受け118は、プラテンユニット112の一部が挿入される受け穴119を有し、これらの受け穴119に一部が挿入されたプラテンユニット112を位置決めする。
【0021】
図5は、図4とは反対側から見た下ユニット102に収納されている下ベースユニット109及びプラテンユニット112を示し、更に下ベースユニット109がフレームに取り付けられている状態を示す分解斜視図である。前述したように、下ユニット102には、下ベースユニット109が取り付けられている。下ベースユニット109は、下ユニット102に直接取り付けられているわけではなく、フレームFを介して下ユニット102に取り付けられている。つまり、下ユニット102には、左右一対の板金からなるフレームFR、FLが取り付けられており、これらのフレームFR、FLに、樹脂モールド部品である下ベースユニット109が固定されている。左右一対のフレームFR、FLには、それらの上辺に、プラテンユニット112が有するプラテン116の軸心であるプラテン軸120を位置決めする位置決め部Dが切欠き形成されている。位置決め部Dは、上方開口のコの字形状をしており、プラテン軸120を3点で位置決めする。このようなフレームFR、FLによるプラテン軸120の位置決めについては、後に詳述する。
【0022】
図6は、プラテンユニット112の分解斜視図である。プラテン116は、プラテン軸120の外周中央部にプラテンゴム121が固定されて構成されている。プラテンユニット112は、プラテン軸120を回転自在に保持する一対の軸ホルダ122を有する。これらの軸ホルダ122は、U字形状に屈曲した樹脂モールド品であるホルダ本体123を備えている。ホルダ本体123は、U字形状の一片を構成する内側片123aにプラテン軸120を貫通させるための貫通孔124を有し、U字形状の別の一片を構成する外側片123bにプラテン軸120を貫通させるための貫通溝125を有する。貫通孔124は真円ではない異形孔となっている。このような貫通孔124には、その異形形状に嵌合する形状の軸受126が嵌合している。貫通孔124と軸受126との嵌合は非真円形状をもっての嵌合となるため、回り止めされている。軸受126には中心部に保持孔127が形成されており、この保持孔127にプラテン軸120が回転自在に嵌合し、これによってプラテン軸120が軸受された状態となっている。
【0023】
ホルダ本体123は、ラベル剥離板117をも保持する。つまり、ラベル剥離板117は、その両端に突部128を備え、これらの突部128がホルダ本体123に形成された剥離板保持孔129に嵌合している。これによって、ラベル剥離板117が一対のホルダ本体123に保持されている。
【0024】
ホルダ本体123においては、内側片123aの方が外側片123bよりも幅広となっている。下ベースユニット109に形成されたホルダ受け118は、そのようなホルダ本体123の形状に合わせて、内側片123aを収納する内側片受け118aと外側片受け118bとを有する(図4参照)。内側片受け118aは、外側片受け118bに対して溝状の形状を有しており、ホルダ本体123の内側片123aを遊びなく嵌合保持する。これに対して、外側片受け118bは、ホルダ本体123の外側片123bを、撓ませた状態で内側片123aの近接離反方向に変位自在に保持する。つまり、ホルダ受け118におけるプラテン116の軸方向の長さは、ホルダ受け118に嵌合した状態のホルダ本体123における内側片123aと外側片123bとの間の長さよりも短く形成されている。その分、外側片123bは弾性変形し、その復元力によって、ホルダ受け118に対するホルダ本体123の嵌合状態を維持する。
【0025】
このような構造のホルダ本体123には、これらのホルダ本体123をホルダ受け118に保持させた場合の位置決め構造と、ホルダ受け118からの着脱作業を支援する作業支援構造とが設けられている。位置決め構造として、内側片123aには、ホルダ受け118にホルダ本体123を嵌合させていった場合にホルダ受け118に当接し、ホルダ本体123を位置決めする位置決め部130が形成されている。作業支援構造として、外側片123bの端部に第1のグリップ131が形成されている。第1のグリップ131は、これらの第1のグリップ131を摘んでホルダ本体123の外側片123bを内側片123aの方向に変位させ、そのまま軸ホルダ122をホルダ受け118から取り外したり、その逆の作業を遂行したりする上で、当該作業の作業性を良好にする。
【0026】
以上説明したように、プラテンユニット112は、プラテン116及びラベル剥離板117を保持し、下ユニット102に対してそれらのプラテン116及びラベル剥離板117の着脱作業を容易にするという役割を果たす。プラテンユニット112のもう一つの重要な役割は、上ユニット103に設けられたサーマルプリンタヘッド115を可動自在に位置決めするという役割である。そのための構造について次に説明する。
【0027】
図7は、プラテンユニット112の一部を構成する軸ホルダ122及び可動片を示す側面図である。ホルダ本体123の内側片123aには、貫通孔124の上方に位置させて位置決め溝132が形成されている。この位置決め溝132は、上ユニット103に設けられたサーマルプリンタヘッド115の両側方から突出する一対の位置決めピン115aを嵌合させ、サーマルプリンタヘッド115を位置決めする。位置決めピン115aの直径は、位置決め溝132の直径よりも僅かに小径である。これにより、位置決めピン115aは、位置決め溝132の内部で僅かに変位自在である。この場合の変位方向は、サーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115b(図2参照)がプラテン116に当接している条件下で、発熱素子列115bとプラテン116の回転中心とを結ぶ直線方向と略直交する方向である。この方向を、便宜上、「調節方向」という。また、サーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bがプラテン116に当接する位置を、便宜上、「印字位置」という。
【0028】
軸ホルダ122は、位置決め溝132に位置決めピン115aが嵌合して位置決めされているサーマルプリンタヘッド115を、位置決め溝132の内部で位置決めピン115aの位置を変位させることで位置調節自在とする変位機構133を有している。そのための構造として、軸ホルダ122は、ホルダ本体123の内側片123aと外側片123bとの間に位置させて、可動片134を有している。可動片134は、図6及び図7に示すように、ホルダ本体123の内側片123aに形成された貫通孔124に位置合わせされて配置され、プラテン軸120が貫通孔124を貫通するに際して貫通孔124と共にプラテン軸120を貫通させるリング状の基部135から放射方向に突出形成されている。基部135は、プラテン軸120が嵌合する真円状の基部孔136を有するため、プラテン軸120の周りを回動自在である。このような可動片134の先端部には、第2のグリップ137が設けられている。したがって、第2のグリップ137を摘んで基部135を回動させることで、位置決め溝132の相対向する辺から可動片134を選択的に出没させることができる。図7(a)は、位置決め溝132の左側の辺から可動片134が出ている状態を、図7(b)は、位置決め溝132の右側の辺から可動片134が出ている状態を、それぞれ示している。前述したように、位置決めピン115aは位置決め溝132の内部で僅かに変位自在であるため、位置決め溝132に対する可動片134の出没状態に応じて、位置決めピン115aは調節方向に異なる二箇所に位置決めされる。その結果、サーマルプリンタヘッド115も、調節方向に異なる二箇所の印字位置に位置付けられることになる。
【0029】
ここで、図5を参照しながら、フレームFR、FLによるプラテン軸120の位置決めについて述べる。フレームFに形成されている位置決め部Dは、プラテン116のプラテン軸120を位置決めするために、プラテン軸120の軸受126を支持している。つまり、プラテン軸120の軸受126は、位置決め部Dに嵌合して3点支持された状態となっている。この場合の3点は、発熱素子列115bとプラテン116の回転中心とを結ぶ直線方向と略直交する方向である「調節方向」に2点と、軸受126の下方の1点とである。つまり、位置決め部Dは、前述したように上方開口のコの字形状をしており、コの字をなす3片のそれぞれで軸受126を保持している。これによって、プラテン軸120の軸受126は、位置決め部Dに嵌合して3点支持されている。
【0030】
図8は、上ユニット103に収納されている上ベースユニット114に対してサーマルプリンタヘッド115を着脱する状態を示す分解斜視図である。サーマルプリンタヘッド115は、図示しない複数個の発熱素子が直線上に並んで前述した発熱素子列115bを形成するヘッド本体115cが樹脂モールド品であるヘッドカバー115dに取り付けられて形成されている。前述した位置決めピン115aは、一例として金属により形成され、ヘッドカバー115dのモールド成形時に一体に埋設されている。
【0031】
このようなサーマルプリンタヘッド115は、ヘッド保持機構138によって上ユニット103に収納保持されている上ベースユニット114に、当該上ベースユニット114に近接離反する方向及び調節方向に変位自在で、かつ、着脱自在に取り付けられている。つまり、上ベースユニット114のサーマルプリンタヘッド115を保持する部分はヘッド保持部139となっており、ヘッド保持部139には調節方向に長い一対の長孔140が平行に形成されている。サーマルプリンタヘッド115は、そのヘッドカバー115dから上方に延出して当該延出方向及び調節方向に遊びをもって長孔140に下方から挿入される一対の被保持部141を有している。これらの被保持部141は、ヘッドカバー115dに対して位置固定的に取り付けられている。そして、それらの被保持部141は、長孔140に挿入された状態で抜け止め機構142によって抜け止めされている。したがって、サーマルプリンタヘッド115は、被保持部141がその延出方向及び調節方向にのみ遊びをもって長孔140に抜け止め挿入されていることから、ヘッド保持部139に対して、当該ヘッド保持部139に対して近接離反する方向及び調節方向に変位自在に取り付けられている。
【0032】
もっとも、ヘッド保持部139に対して近接離反するサーマルプリンタヘッド115の自由移動は、ヘッド保持部139に取り付けられた図示しない弾性体としてのコイルスプリングによって規制されている。つまり、ヘッド保持部139には、ヘッド保持部139とサーマルプリンタヘッド115との間に介在するようにコイルスプリングが取り付けられている。そこで、サーマルプリンタヘッド115は、コイルスプリングによってヘッド保持部139から離反する方向に付勢されている。
【0033】
図9は、サーマルプリンタヘッド115の抜け止め機構142を示す(a)は平面図、(b)は正面図である。抜け止め機構142は、被保持部141に付与された長孔140の短手方向への弾性力を構成として備えている。抜け止め機構142を構成する他の構成の一つは、被保持部141の先端部に形成され、当該被保持部141が長孔140に挿入される際に長孔140の縁部に当接することで被保持部141を撓ませる傾斜部143である。傾斜部143は、被保持部141が長孔140に挿入される際に長孔140の縁部に当接する位置に形成されている。抜け止め機構142を構成する他の構成のもう一つは、傾斜部143に連続して形成され、傾斜部143が長孔140を通過することで撓んだ被保持部141が初期形状に復元した場合、長孔140の周縁に引っ掛かって被保持部141を抜け止めする爪部144である。
【0034】
図9は、更に、一対の長孔140と一対の被保持部141との寸法関係や位置関係を示している。図9(a)に示すように、長孔140の短手方向の幅と被保持部141の同一方向の幅とを比較すると、被保持部141の幅の方が狭く形成されている。これにより、長孔140に対する被保持部141の挿入が可能となっている。長孔140の長手方向の幅と被保持部141の同一方向の幅とを比較すると、被保持部141の幅の方が狭く形成されている。これにより、被保持部141は、長孔140の中を移動自在である。この場合の移動方向(図9(a)中、矢印で示す)は、調節方向である。したがって、サーマルプリンタヘッド115は、調節方向に移動自在となる。図9(b)に示すように、被保持部141の先端部に形成された傾斜部143が長孔140を乗り越えた場合、被保持部141の外側は長孔140の縁部に接触する。これにより、爪部144が長孔140の周縁に引っ掛かり、初期形状に復元した被保持部141を抜け止めする。同時に、一対の被保持部141を結ぶ方向への被保持部141の移動が規制される。したがって、サーマルプリンタヘッド115も、その発熱素子列115bの長手方向への移動が規制される。
【0035】
このような構成において、前述したように、下ベースユニット109と上ベースユニット114との間には、用紙107の収納空間から発行口105に至る空間に位置させて、用紙107を案内する案内経路(図示せず)が形成されている。プラテン116は、その外周面が案内経路に位置付けられ、サーマルプリンタヘッド115は、その発熱素子列115bが案内経路を介してプラテン116に当接している。プラテン116に対するサーマルプリンタヘッド115の当接は、ヘッド保持部139とサーマルプリンタヘッド115との間に介在するコイルスプリング(図示せず)による。そこで、プラテン116を回転駆動することによって用紙107が引き出され、用紙107に設けられている図示しない感熱ラベルに対して、サーマルプリンタヘッド115によって印字がなされる。プラテン116の駆動は、図6に示すように、プラテン軸120にピン145で抜け止めした駆動ギヤ146に図示しない動力源からの動力を伝達することによって実行される。
【0036】
印字に際して、サーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bは、プラテン116の放射線上に位置付けられていることが望ましい(図10参照)。この位置は、例えば、厚さが薄い用紙107を用いた場合を例示する図10(a)に示すような位置である。本実施の形態のサーマルラベルプリンタは、厚さが薄い用紙107を用いた場合、軸ホルダ122のホルダ本体123に形成された位置決め溝132に対して、可動片134が図7(a)又は(b)の状態に位置付けられている。より詳細には、図7に例示する軸ホルダ122がサーマルラベルプリンタの正面から見て右側の軸ホルダ122であるとした場合、可動片134は図7(a)の位置に位置付けられる。反対に、図7に例示する軸ホルダ122がサーマルラベルプリンタの正面から見て左側の軸ホルダ122であるとした場合、可動片134は図7(b)の位置に位置付けられる。本実施の形態のサーマルラベルプリンタは、そのような状態で、プラテン116の放射線上にサーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bが位置付けられるように各部が構成されている。したがって、用紙107の厚さが厚くなると、図10(b)に示すように、サーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bの位置がプラテン116の放射線上からずれる。この場合のずれ方向は、用紙107の進行方向と反対の方向である。そこで、この場合には、変位機構133によってサーマルプリンタヘッド115の位置を変位させる。そのために、第2のグリップ137を摘んで基部135を回動させることで、可動片134を図7(b)又は(a)の状態に位置付ける。より詳細には、図7に例示する軸ホルダ122がサーマルラベルプリンタの正面から見て右側の軸ホルダ122であるとした場合、可動片134を図7(b)の位置に位置付ける。反対に、図7に例示する軸ホルダ122がサーマルラベルプリンタの正面から見て左側の軸ホルダ122であるとした場合、可動片134を図7(a)の位置に位置付ける。これにより、位置決め溝132に嵌合している位置決めピン115aが可動片134に押されて調節方向に変位する。サーマルプリンタヘッド115は、前述したように、ヘッド保持機構138によって調節方向に変位自在に保持されているので、位置決めピン115aが調節方向に変位することで、サーマルプリンタヘッド115も調節方向に変位する。この場合の調節方向は、用紙107の進行方向と一致する方向である。したがって、プラテン116の放射線上にサーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bを位置付けることが可能となる。
【0037】
このように、用紙107の厚さに応じて位置決め溝132に対する可動片134の出没位置を調節することで、プラテン116の放射線上にサーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bを位置付けることが可能となり、印字品質の維持が図られる。この際、位置決め溝132に対する可動片134の位置調節は、第2のグリップ137を摘んで基部135を回動させだけという極めて簡単な作業によって遂行することができ、その作業性が良好である。しかも、変位機構133を構成する基部135、可動片134及び第2のグリップ137は、ホルダ本体123の内側片123aと外側片123bとの間に必然的に生ずる隙間を利用して配置されていることから、変位機構133がプリンタ全体にレイアウト上の制限をもたらしてしまうようなことを回避することができる。
【0038】
ここで、プラテンユニット112は、軸ホルダ122でプラテン116を回転自在に保持しており、軸ホルダ122に形成されている位置決め溝132でサーマルプリンタヘッド115の位置決めピン115aを位置決め保持している。したがって、理論上は、プラテン116のプラテン軸120の軸心方向と発熱素子列115bの配列方向とは、必ず平行になり、プラテン116に対するサーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bの左右振れは生じないはずである。ところが、プラテンユニット112は、樹脂モールド品である下ベースユニット109に形成されているホルダ受け118に、同様に樹脂モールド品である軸ホルダ122を嵌合させることによって位置決めされているという関係上、どうしても高い精度を出し難い。この場合、発熱素子列115bとプラテン116の回転中心とを結ぶ直線方向と略直交する方向である「調節方向」に左右の軸ホルダ122が互いに位置ずれすると、プラテン116のプラテン軸120の軸心方向とサーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bの配列方向との間の平行度が損なわれ易くなってしまう。これは、プラテン軸120の左右の位置ずれによって、軸ホルダ122に形成されている位置決め溝132に対するサーマルプリンタヘッド115の位置決めピン115aの保持位置が微妙にずれてしまうことが一つの原因であると考えられる。また、前述したように、プラテン軸120の駆動は、プラテン軸120に固定した駆動ギヤ146に図示しない動力源からの動力を伝達することによって実行していることから、プラテン軸120は片側駆動となっている。プラテン軸120に左右の位置ずれが生じ得る条件下でプラテン軸120を片側駆動することも、プラテン116のプラテン軸120の軸心方向とサーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bの配列方向との間の平行度が損なわれるもう一つの原因であると考えられる。もっとも、理由の当否はともかくとして、プラテン116のプラテン軸120の軸心方向とサーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bの配列方向との間の平行度が損なわれるという現象は、本出願の発明者が実際に実験をすることによって検証されている。
【0039】
これに対して、本実施の形態では、板金からなるフレームFが軸ホルダ122に保持されているプラテン116のプラテン軸120の軸心をサーマルプリンタヘッド115の調節方向に位置決めしている。このようにすることで、プラテン116のプラテン軸120は、発熱素子列115bとプラテン116の回転中心とを結ぶ直線方向と略直交する方向である「調節方向」にも、上下方向にも位置ずれしなくなる。これにより、プラテン116のプラテン軸120の軸心方向とサーマルプリンタヘッド115の発熱素子列115bの配列方向との間の平行度を確保することができ、その結果、印字品質を良好に保つことができる。
【0040】
加えて、本実施の形態によれば、下ベースユニット109に対するプラテンユニット112の着脱作業、及び、上ベースユニット114に対するサーマルプリンタヘッド115の着脱作業は、共に極めて簡単である。つまり、プラテンユニット112は、下ベースユニット109の側のホルダ受け118にホルダ本体123の外側片123bが弾性変形して圧入されているだけであるので、第1のグリップ131を摘んで軸ホルダ122をホルダ受け118に押し込むだけで、下ベースユニット109に対してプラテンユニット112を装着することができる。反対に、第1のグリップ131を摘んでホルダ本体123の外側片123bを内側片123aの方向に変位させ、そのまま軸ホルダ122をホルダ受け118から取り外すだけで、下ベースユニット109からプラテンユニット112を取り外すことができる。また、サーマルプリンタヘッド115は、その被保持部141を長孔140に挿入するだけで上ベースユニット114に装着される。反対に、一対の被保持部141の間隔を狭めた状態でサーマルプリンタヘッド115を引き抜くだけで、上ベースユニット114からサーマルプリンタヘッド115を取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の一形態を示すサーマルプリンタ全体の斜視図である。
【図2】上ユニットを開放した状態を示す斜視図である。
【図3】下ユニットに収納されている下ベースユニット及びセンサユニットの分解斜視図である。
【図4】下ユニットに収納されている下ベースユニット及びプラテンユニットの分解斜視図である。
【図5】図4とは反対側から見た下ユニットに収納されている下ベースユニット及びプラテンユニットを示し、更に下ベースユニットがフレームに取り付けられている状態を示す分解斜視図である。
【図6】プラテンユニットの分解斜視図である。
【図7】プラテンユニットの一部を構成する軸ホルダ及び可動片を示す側面図である。
【図8】上ユニットに収納されている上ベースユニットに対してサーマルプリンタヘッドを着脱する状態を示す分解斜視図である。
【図9】サーマルプリンタヘッドの抜け止め機構を示す(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図10】プラテンとサーマルプリンタヘッドの発熱素子列との位置関係について、(a)は厚さが薄い用紙を使用した場合の位置関係、(b)は厚さが厚い用紙を使用した場合の位置関係をそれぞれ示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
102…下ユニット,103…上ユニット,107…用紙,115…サーマルプリンタヘッド,115a…位置決めピン,115b…発熱素子列,116…プラテン,122…軸ホルダ,132…位置決め溝,134…可動片,133…変位機構,138…ヘッド保持機構,139…ヘッド保持部,140…長孔,141…被保持部,142…抜け止め機構,143…傾斜部,144…爪部,F…フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンを有する下ユニットと、
複数個の発熱素子が直線上に並ぶ発熱素子列を有し、当該発熱素子列が前記プラテンに当接する位置である印字位置に配置されるサーマルプリンタヘッドを有し、当該サーマルプリンタヘッドの発熱素子列が用紙の案内経路を介して前記プラテンに対して接離するように前記下ユニットに対して支点を中心に回動自在の上ユニットと、
前記サーマルプリンタヘッドを前記発熱素子列と前記プラテンの回転中心とを結ぶ直線方向と略直交する方向である調節方向に変位自在に保持するヘッド保持機構と、
前記サーマルプリンタヘッドの両側方から突出する位置決めピンと、
前記下ユニットに上下方向から着脱自在に設けられ、前記プラテンの軸心を回転自在に保持する軸ホルダと、
前記位置決めピンを上方向から嵌合させて保持し、前記位置決めピンを保持した状態で前記サーマルプリンタヘッドを前記印字位置に位置付ける前記軸ホルダに形成された位置決め溝と、
前記位置決め溝を横切るように変位自在であって変位することによって当該位置決め溝の相対向する辺から選択的に出没する可動片を有し、当該可動片の出没位置に応じて前記位置決め溝内の前記位置決めピンの位置を前記調節方向に異なる二箇所に位置決めし、前記サーマルプリンタヘッドを前記調節方向に異なる二箇所の前記印字位置に位置付ける変位機構と、
前記下ユニットに設けられ、前記軸ホルダに保持された前記プラテンの軸心を前記サーマルプリンタヘッドの調節方向に位置決めする板金からなるフレームと、
を備えるサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記ヘッド保持機構は、
前記サーマルプリンタヘッドをその上方から保持するヘッド保持部と、
前記ヘッド保持部に形成された前記調節方向に長い長孔と、
前記サーマルプリンタヘッドから上方に延出して当該延出方向及び前記調節方向にのみ遊びをもって前記長孔に下方から挿入される被保持部を有し、前記長孔に挿入された前記被保持部を着脱自在に抜け止め保持する抜け止め機構と、
前記ヘッド保持部と前記サーマルプリンタヘッドとの間に介在して設けられた弾性体と、
を有する、請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記抜け止め機構は、
前記被保持部に前記長孔の短手方向への弾性力を付与し、
前記被保持部の先端部に形成され、当該被保持部が前記長孔に挿入される際に前記長孔の縁部に当接することで当該被保持部を撓ませる傾斜部と、
前記傾斜部に連続して形成され、前記傾斜部が前記長孔を通過することで撓んだ前記被保持部が初期形状に復元した場合、前記長孔の周縁に引っ掛かって前記被保持部を抜け止めする爪部と、
を設けることによって形成されている、
請求項2記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
プラテンを有する下ユニットと、
複数個の発熱素子が直線上に並ぶ発熱素子列を有し、当該発熱素子列が前記プラテンに当接する位置である印字位置に配置されるサーマルプリンタヘッドを有し、当該サーマルプリンタヘッドの発熱素子列が前記プラテンに対して接離するように前記下ユニットに対して支点を中心に回動自在の上ユニットと、
前記サーマルプリンタヘッドの両側方から突出する位置決めピンと、
前記下ユニットに上下方向から着脱自在に設けられ、前記プラテンの軸心を回転自在に保持する軸ホルダと、
前記位置決めピンを上方向から嵌合させて保持し、前記位置決めピンを保持した状態で前記サーマルプリンタヘッドを前記印字位置に位置付ける前記軸ホルダに形成された位置決め溝と、
前記下ユニットに設けられ、前記軸ホルダに保持された前記プラテンの軸心を前記サーマルプリンタヘッドの調節方向に位置決めする板金からなるフレームと、
を備えるサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記フレームは、前記プラテンの軸心を3点で位置決めする、請求項1ないし4のいずれか一記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−101524(P2009−101524A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272817(P2007−272817)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】