サーマルプリントヘッドの製造方法
【課題】グレーズ層の突条の幅を延びる方向にわたって均一化する。
【解決手段】セラミックの素板71に、その表面から突出してその表面に沿って延びる凸部95を含むパターンでガラスペーストをスクリーン印刷する。この凸部95は、中央の幅太部96と両端部の幅細部97とを持つ。素板71に付着したガラスペーストを焼成して、グレーズ層を形成する。その後、グレーズ層の表面に所定のパターンで抵抗体層および電極層を形成し、保護被膜層で覆う。
【解決手段】セラミックの素板71に、その表面から突出してその表面に沿って延びる凸部95を含むパターンでガラスペーストをスクリーン印刷する。この凸部95は、中央の幅太部96と両端部の幅細部97とを持つ。素板71に付着したガラスペーストを焼成して、グレーズ層を形成する。その後、グレーズ層の表面に所定のパターンで抵抗体層および電極層を形成し、保護被膜層で覆う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、発熱抵抗素子を配列した発熱体板と、その素子を発熱させる駆動素子を搭載した回路基板と、それらを支える放熱板とを有する。発熱体板は、絶縁基板と、発熱抵抗体層と、アルミニウムなどの電極となる導電層とを有している。この絶縁基板は、アルミナなどのセラミック基板上にグレーズ層を形成したものである。発熱抵抗体層および導電層は、絶縁基板の表面にスパッタ法などの薄膜形成方法によって、積層形成された後、フォトエッチングプロセスにより所定のパターンに形成される。発熱抵抗体層および導電層には、発熱抵抗体と個別電極とが一直線上に形成したものを主走査方向に配列されている。発熱抵抗体および電極の表面には、保護膜層が薄膜形成方法で形成される。
【0003】
発熱体板は、製品の要求仕様に応じてグレーズ層の厚さを変えたり、あるいは、発熱抵抗体が配列される部分の形状を凸に形成して製品性の向上を図ったりしている。発熱体板にとって、記録媒体との密着性は重要である。したがって、発熱体板の表面層である保護膜層の平滑性が重要であり、また、下地を形成している絶縁基板の全体的な平坦性および記録媒体と直接接触する凸部の直線性や表面形状の平坦性が重要である。
【0004】
絶縁基板は、平滑に面加工されたセラミック基板上にグレーズ(ガラス)を所定の厚みにスクリーン印刷し、高温焼成することによって形成される。グレーズには、平面状のグレーズをフォトエッチングプロセスによって所定のパターンに形成した後、グレーズをエッチングすることにより、グレーズ面に凹凸部を形成する。その後、グレーズ(ガラス)を高温招請して溶融するR化処理を施す。これにより、絶縁基板に曲面を持つ凹凸が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−351799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーマルプリントヘッドの絶縁基板を形成する際、高温で溶融したグレーズの流動性とレベリング作用とにより、グレーズは基板における面分布の構造や、形成する凹凸部の面内の配置により、所望の形状にならない場合がある。たとえば、基板を分割して複数の製品を製造する場合など基板面に複数本の凸条を形成する場合において、直線状に形成された凸部の両端部は、表面張力による膨らみが発生して盛り上がるメカニカス作用が及ぼされる場合がある。また、凸部の裾野には、逆にへこみが発生する場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、サーマルプリントヘッドのグレーズ層の突条の幅を延びる方向にわたって均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は、素板を分割した基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、前記素板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い帯状の凸部を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、前記焼成工程の後に前記前記素板を複数の部分に分割する分割工程と、を具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、基板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い帯状の凸部を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、基板とその基板の表面に形成されたガラス層と間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、基板の表面に外縁部にその内側よりも前記ガラスペーストの厚さが薄い部分を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、を具備することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、基板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い複数の互いにほぼ平行に延びる凸部とほぼ平行な2つの前記凸部の間に延びる溝部とを含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、前記焼成工程の後に前記溝部で前記前記素板を複数の部分に分割する分割工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サーマルプリントヘッドのグレーズ層の凸条の幅を延びる方向にわたって均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一実施の形態におけるガラスペーストのパターニング終了後の上面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視側面図である。
【図4】本発明に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一実施の形態における焼成後のグレーズ層の上面図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI矢視断面図である。
【図7】本発明に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一実施の形態を断面図とともに示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る製造方法の一実施の形態によって製造されたサーマルプリントヘッドの上面図である。
【図9】本発明に係る製造方法の一実施の形態によって製造されたサーマルプリントヘッドを用いたサーマルプリンタの断面図である。
【図10】幅および高さが一定の直線状の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の上面図である。
【図11】平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の断面図である。
【図12】平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の他の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。
【0015】
図8は、本発明に係る製造方法の一実施の形態によって製造されたサーマルプリントヘッドの上面図である。図9は、本実施の形態の製造方法によって製造されたサーマルプリントヘッドを用いたサーマルプリンタの断面図である。
【0016】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド11は、放熱板30と発熱体板20と回路基板40とを有している。放熱板30は、たとえばアルミニウムなどの金属で形成された長方形の平板である。
【0017】
発熱体板20は、セラミック基板22およびグレーズ層25からなる絶縁基板を有している。セラミック基板22は、たとえばアルミナ(Al2O3)で形成された長方形の平板である。セラミック基板22の一方の表面は放熱板30と向かい合っており、他方の表面にはグレーズ層25が融着している。グレーズ層25は、ガラスで形成されている。グレーズ層25には、セラミック基板22の表面から突出する突条部21が形成されている。突条部21は、セラミック基板22の一方の長辺に近接してほぼ直線状に延びている。
【0018】
グレーズ層25の表面には、突条部21が延びる方向に沿って間隔を置いて突条部21を跨ぐように抵抗体層が形成されている。また、抵抗体層の表面には、金属配線層28が形成されている。金属配線層28には突条部21の一部を跨ぐ切欠部が形成されていて、抵抗体層の金属配線層28と重なり合わない部分が発熱抵抗体26となる。このようにして発熱抵抗体26が突条部21の表面に間隔を置いて複数配列されて、突条部21のラインに沿った帯状の発熱領域24が形成されている。発熱体板20には、グレーズ層25、金属配線層28および抵抗体層の保護のために、これらを覆う絶縁保護層29が形成されている。
【0019】
また、サーマルプリントヘッド11は、発熱領域24を発熱させる駆動回路を有している。その駆動回路は、たとえば発熱体板20と同じ側の表面で放熱板30に載置された回路基板40の上に形成されている。回路基板40には、発熱領域24に所定の発熱パターンを形成するための制御信号や駆動電力が入力される。この駆動回路は、たとえば回路基板40に設けられた駆動素子42などの電気部品を有している。発熱体板20と駆動回路とは、たとえば発熱体板20と回路基板40との間に架け渡されたボンディングワイヤ44によって電気的に接続される。さらに、回路基板40の表面に形成された配線パターンと駆動素子42との間もボンディングワイヤ44で電気的に接続される。駆動素子42およびボンディングワイヤ44は、たとえば樹脂48によって封止される。
【0020】
このサーマルプリントヘッド11を用いたプリンタは、発熱領域24の表面の法線上に位置する軸52を中心とする円筒状のプラテンローラ50を有している。プラテンローラ50によって被印刷媒体60がサーマルプリントヘッド11に押し付けられる。この状態で発熱領域24の発熱抵抗体26が発熱することによって、被印刷媒体60に印画される。被印刷媒体60が副走査方向に搬送されながら、主走査方向に延びる発熱領域24が所定のパターンで発熱することによって、被印刷媒体60には所望の画像が形成される。
【0021】
次に、本実施の形態の製造方法を説明する。
【0022】
図7は、本実施の形態のサーマルプリントヘッドの製造方法を断面図とともに示すフローチャートである。
【0023】
まず、セラミックの素板71の主面にガラスペースト72を印刷する(S1)。ガラスペースト72の厚さは、たとえば30〜120μmとする。
【0024】
次に、ガラスペースト72の表面に感光性レジスト73を塗布する(S2)。感光性レジスト73の厚さは、たとえば10〜20μmである。所定のマスクを用いて感光性レジスト73の一部を露光させ、エッチングにより露光部分を取り除く(S3)。
【0025】
一部が取り除かれた感光性レジスト73が表面に残っている状態で、ガラスペースト72の一部をエッチングによって取り除く(S4)。エッチングによって取り除く厚さは、たとえば1〜5μmである。これによりガラスペースト72の表面に、溝91および外周部の小厚部92が形成される。エッチング(S4)の後、ガラスペースト72の表面に残存している感光性レジスト73を除去する(S5)。
【0026】
次に、溝91および小厚部92を含むガラスペースト72の表面全体に、再び感光性レジスト74を塗布する(S6)。次に、所定のマスクを用いて感光性レジスト74の一部を露光させ、エッチングにより露光部分を取り除く(S7)。この際、少なくとも工程S4で形成された溝91および小厚部92は、感光性レジスト74が取り除かれるようにする。
【0027】
感光性レジスト74が残っている状態で、ガラスペースト72の一部をエッチングによって取り除く(S8)。エッチングによって取り除く厚さは、たとえば20〜70μmである。このとき、工程S4で形成された段差は保持されたまま、エッチングが進行する。その結果、工程S4で形成された溝91および小厚部92に対応する位置に、溝93および小厚部94が形成されることとなる。
【0028】
次に、感光性レジスト74を除去する(S9)。これによりガラスペースト72のパターニングが完了し、絶縁基板に所定のパターンでガラスペースト72が付着した素板71ができあがる。
【0029】
ガラスペースト72のパターニングが完了した(S9)後、素板71に所定のパターンで付着したガラスペースト72を焼成する(S10)。この際、ガラスペースト72の温度をガラスの軟化点温度以上にして、所定の時間保持し、その後、常温まで冷却する。ガラスペースト72は、軟化点以上の温度になって流動性が大きくなり、表面張力および重力の作用によって、丸みを帯びた形状となり、グレーズ層25が形成される。
【0030】
図10は、幅および高さが一定の直線状の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の上面図である。図11は、平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の断面図である。図12は、平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の他の断面図である。
【0031】
幅および高さが一定の直線状の凸部を持つパターンでガラスペーストを形成した場合、そのガラスペーストを焼成すると、その凸部の端部近傍には、盛り上がった部分81が形成される。同様に、素板71の外縁においても盛り上がった部分84が形成される。また、凸部の端部近傍では、突条の幅が広い部分82が形成される。これは表面張力によるメニスカス作用によるものである。
【0032】
また、平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合、それらの凸部の間隔が小さいと、2つの凸部の表面張力が互いに影響を与える。その結果、それらのガラスペーストの状態で凸部の間が平坦だと、焼成した後に、凸部の間に盛り上がった部分83が形成されたり、凸部の裾野部分で傾斜角度が小さくなる場合がある。特に、凸部のピッチが3mm以下の場合に、この影響が顕著に現れる。
【0033】
しかし、本実施の形態では、焼成時のガラスの流動に対応して、予めガラスペーストのパターンを形成しておくことにより、焼成後のグレーズ層25の形状を適切に制御している。
【0034】
図1は、本実施の形態におけるガラスペーストのパターニング終了後の上面図である。図2は、図1のII−II矢視断面図である。図3は、図1のIII−III矢視側面図である。なお、本実施の形態では、一枚のセラミックの素板71から8枚の発熱体板20を形成することとしている。図1の破線は、これらの複数の発熱体板20に切り分けるための切断線を示している。
【0035】
工程S8まででガラスペースト72のパターニングが完了する。焼成前のガラスペースト72は、焼成後の突条部21に対応する位置に帯状の凸部95が形成されている。この帯状の凸部95は、中央の幅太部96と、両端の幅細部97とからなっている。
【0036】
また、本実施の形態では、一枚の素板71から複数の発熱体板20を形成するため、一枚の素板71上にガラスペースト72の複数の凸部95が形成されている。これらの凸部95のうち、平行に延びる2つの凸部95の間のほぼ中央には、溝93が形成されている。
【0037】
さらに、素板71の外縁部分には、ガラスペースト72の厚さが薄い小厚部94が形成されている。小厚部94の幅は、コーナー部を除き、外縁に沿って一定である。コーナー部において小厚部94の幅は、広くなっている。
【0038】
図4は、本実施の形態における焼成後のグレーズ層の上面図である。図5は、図4のV−V矢視断面図である。図6は、図4のVI−VI矢視断面図である。
【0039】
このように本実施の形態では、焼成時のガラスの流動に対応して、予めガラスペーストのパターンを形成している。このため、焼成後のグレーズ層25の形状が適切に制御される。
【0040】
突条部21の両端部では、ガラスペースト72の状態で幅を小さくしているため、図12に示すような盛り上がった部分81,84や図10に示すような幅が広い部分82は形成されていない。その結果、突条部21の高さは、主走査方向でほぼ一定で、端部では増大することなく小さくなっていく。突条部21の幅は、主走査方向でほぼ一定で、端部では増大することなく小さくなっていく。
【0041】
また、平行に延びる突条部21の間では、ガラスペースト72の状態で溝93を形成しているため、図11に示すような盛り上がった部分81は形成されない。その結果、突条21の間は、平坦になる。
【0042】
さらに、素板71の外縁部分には、ガラスペースト72の状態で薄肉部94を設けているため、盛り上がった部分は形成されない。その結果、素板71の表面に形成されたグレーズ層25の外縁部分も盛り上がることなく、外縁のごく近傍までその内側と厚さが同じグレーズ層25が形成される。
【0043】
このようにして素板71の表面にグレーズ層25が形成された後、グレーズ層の表面に抵抗膜層および金属層を形成する。抵抗膜層および金属層を所定の形状にエッチングすることにより、本実施の形態の発熱抵抗体26および金属配線層28が形成される。
【0044】
発熱抵抗体26および金属配線層28が形成された板に、絶縁保護層29を被膜する。その後、図1に破線で示す切断線で切断して、8枚の発熱体板20が形成される。このようにして製造された発熱体板20および駆動素子42を搭載した回路基板40を放熱板30に載置し、駆動素子40と発熱体板20との間にボンディングワイヤ44を架け渡し、駆動素子40およびボンディングワイヤ44を封止することにより、サーマルプリントヘッド11が完成する。
【0045】
このように本実施の形態によれば、焼成前のガラスペーストの形状を適切に設定することにより、焼成後に適切な形状のグレーズ層を得ることができる。このため、グレーズ層の形成後に盛り上がった部分などを研磨しなくても、適切な形状のサーマルプリントヘッド11を製造することができる。つまり、低コストで高い品質のサーマルプリントを製造することができる。
【0046】
たとえば、グレーズ層25に形成された突条部21の端部に盛り上がった部分は形成されないため、より長い範囲で断面形状が実質的に同じ突条部21が形成される。その結果、より長い範囲で高さが均一な発熱領域24を形成することができる。
【0047】
また、突条部21の端部に盛り上がった部分が形成されると、その部分にプラテンローラ50が接触することにより、主走査方向の中央部付近でのプラテンローラ50の発熱領域24への押しつけ圧力が低下し、印画にかすれが生じる不具合が生じる可能性がある。しかし、本実施の形態によれば、突条部21には一部盛り上がったところがないため、プラテンローラ50の押しつけ圧力が主走査方向で均一になりやすい。したがって、印画精度が向上する。
【0048】
プラテンローラ50は、ある幅で発熱領域24に接触する。したがって、突条部21の幅が変化すると、プラテンローラ50と発熱領域24との接触状態が変化する。つまり、突条部21の端部に幅が広い部分が形成されると、その部分でのプラテンローラ50と発熱領域24との接触状態が他の部分と異なることになる。その結果、印画精度が低下する可能性がある。しかし、本実施の形態によれば、突条部21は実質的に一定の幅で両端部のごく近傍まで延びているため、プラテンローラ50と発熱領域24との接触状態は、主走査方向に長い領域でほぼ一定となる。その結果、印画精度が向上する。
【0049】
また、素板71の外縁部分にはグレーズ層25が盛り上がった部分が形成されると、製品にする際にはその部分を切り落としたり、その盛り上がりがあっても問題ない構造のサーマルプリントヘッドとする必要がある。しかし、本実施の形態では、素板71の外縁部分にはグレーズ層25が盛り上がった部分が形成されず、グレーズ層25が平坦な部分が素板71の大部分を占めることになる。
【0050】
その結果、一枚の素板71からより多くのサーマルプリントヘッド11を製造することができる。あるいは、素板71の外縁部分を切り落とさなくても、外縁近傍まで発熱領域24などを形成したコンパクトなサーマルプリントヘッド11を製造することができる。また、グレーズ層25が盛り上がった部分が形成されると、製品にする際にはその部分を切り落とす必要がなければ、その分の作業工数を低減できる。
【0051】
また、一枚の板からそれぞれ突条部21を持つ複数のサーマルプリントヘッド11を製造する場合であっても、それらの突条部21の間に盛り上がった部分は形成されない。したがって、突条部21の間隔を狭くすることができ、一枚の板からより多くのサーマルプリントヘッド11を製造することができる。突条21の間隔を狭くしても、それらの間に盛り上がった部分が形成されないため、盛り上がった部分の研磨を行う必要がなく、作業工数を低減できる。あるいは、盛り上がった部分を避けてサーマルプリントヘッド11を製造する必要がないため、材料の無駄が低減される。
【符号の説明】
【0052】
11…サーマルプリントヘッド、20…発熱体板、21…突条部、22…セラミック基板、24…発熱領域、25…グレーズ層、26…発熱抵抗体、28…金属配線層、29…絶縁保護層、30…放熱板、40…回路基板、42…駆動素子、44…ボンディングワイヤ、48…樹脂、50…プラテンローラ、52…軸、60…被印刷媒体、71…素板、72…ガラスペースト、73…感光性レジスト、74…感光性レジスト、91…溝、92…小厚部、93…溝、94…小厚部、95…凸部、96…幅太部、97…幅細部
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、発熱抵抗素子を配列した発熱体板と、その素子を発熱させる駆動素子を搭載した回路基板と、それらを支える放熱板とを有する。発熱体板は、絶縁基板と、発熱抵抗体層と、アルミニウムなどの電極となる導電層とを有している。この絶縁基板は、アルミナなどのセラミック基板上にグレーズ層を形成したものである。発熱抵抗体層および導電層は、絶縁基板の表面にスパッタ法などの薄膜形成方法によって、積層形成された後、フォトエッチングプロセスにより所定のパターンに形成される。発熱抵抗体層および導電層には、発熱抵抗体と個別電極とが一直線上に形成したものを主走査方向に配列されている。発熱抵抗体および電極の表面には、保護膜層が薄膜形成方法で形成される。
【0003】
発熱体板は、製品の要求仕様に応じてグレーズ層の厚さを変えたり、あるいは、発熱抵抗体が配列される部分の形状を凸に形成して製品性の向上を図ったりしている。発熱体板にとって、記録媒体との密着性は重要である。したがって、発熱体板の表面層である保護膜層の平滑性が重要であり、また、下地を形成している絶縁基板の全体的な平坦性および記録媒体と直接接触する凸部の直線性や表面形状の平坦性が重要である。
【0004】
絶縁基板は、平滑に面加工されたセラミック基板上にグレーズ(ガラス)を所定の厚みにスクリーン印刷し、高温焼成することによって形成される。グレーズには、平面状のグレーズをフォトエッチングプロセスによって所定のパターンに形成した後、グレーズをエッチングすることにより、グレーズ面に凹凸部を形成する。その後、グレーズ(ガラス)を高温招請して溶融するR化処理を施す。これにより、絶縁基板に曲面を持つ凹凸が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−351799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーマルプリントヘッドの絶縁基板を形成する際、高温で溶融したグレーズの流動性とレベリング作用とにより、グレーズは基板における面分布の構造や、形成する凹凸部の面内の配置により、所望の形状にならない場合がある。たとえば、基板を分割して複数の製品を製造する場合など基板面に複数本の凸条を形成する場合において、直線状に形成された凸部の両端部は、表面張力による膨らみが発生して盛り上がるメカニカス作用が及ぼされる場合がある。また、凸部の裾野には、逆にへこみが発生する場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、サーマルプリントヘッドのグレーズ層の突条の幅を延びる方向にわたって均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は、素板を分割した基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、前記素板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い帯状の凸部を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、前記焼成工程の後に前記前記素板を複数の部分に分割する分割工程と、を具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、基板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い帯状の凸部を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、基板とその基板の表面に形成されたガラス層と間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、基板の表面に外縁部にその内側よりも前記ガラスペーストの厚さが薄い部分を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、を具備することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、基板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い複数の互いにほぼ平行に延びる凸部とほぼ平行な2つの前記凸部の間に延びる溝部とを含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、前記焼成工程の後に前記溝部で前記前記素板を複数の部分に分割する分割工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サーマルプリントヘッドのグレーズ層の凸条の幅を延びる方向にわたって均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一実施の形態におけるガラスペーストのパターニング終了後の上面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視側面図である。
【図4】本発明に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一実施の形態における焼成後のグレーズ層の上面図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI矢視断面図である。
【図7】本発明に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一実施の形態を断面図とともに示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る製造方法の一実施の形態によって製造されたサーマルプリントヘッドの上面図である。
【図9】本発明に係る製造方法の一実施の形態によって製造されたサーマルプリントヘッドを用いたサーマルプリンタの断面図である。
【図10】幅および高さが一定の直線状の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の上面図である。
【図11】平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の断面図である。
【図12】平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の他の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。
【0015】
図8は、本発明に係る製造方法の一実施の形態によって製造されたサーマルプリントヘッドの上面図である。図9は、本実施の形態の製造方法によって製造されたサーマルプリントヘッドを用いたサーマルプリンタの断面図である。
【0016】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド11は、放熱板30と発熱体板20と回路基板40とを有している。放熱板30は、たとえばアルミニウムなどの金属で形成された長方形の平板である。
【0017】
発熱体板20は、セラミック基板22およびグレーズ層25からなる絶縁基板を有している。セラミック基板22は、たとえばアルミナ(Al2O3)で形成された長方形の平板である。セラミック基板22の一方の表面は放熱板30と向かい合っており、他方の表面にはグレーズ層25が融着している。グレーズ層25は、ガラスで形成されている。グレーズ層25には、セラミック基板22の表面から突出する突条部21が形成されている。突条部21は、セラミック基板22の一方の長辺に近接してほぼ直線状に延びている。
【0018】
グレーズ層25の表面には、突条部21が延びる方向に沿って間隔を置いて突条部21を跨ぐように抵抗体層が形成されている。また、抵抗体層の表面には、金属配線層28が形成されている。金属配線層28には突条部21の一部を跨ぐ切欠部が形成されていて、抵抗体層の金属配線層28と重なり合わない部分が発熱抵抗体26となる。このようにして発熱抵抗体26が突条部21の表面に間隔を置いて複数配列されて、突条部21のラインに沿った帯状の発熱領域24が形成されている。発熱体板20には、グレーズ層25、金属配線層28および抵抗体層の保護のために、これらを覆う絶縁保護層29が形成されている。
【0019】
また、サーマルプリントヘッド11は、発熱領域24を発熱させる駆動回路を有している。その駆動回路は、たとえば発熱体板20と同じ側の表面で放熱板30に載置された回路基板40の上に形成されている。回路基板40には、発熱領域24に所定の発熱パターンを形成するための制御信号や駆動電力が入力される。この駆動回路は、たとえば回路基板40に設けられた駆動素子42などの電気部品を有している。発熱体板20と駆動回路とは、たとえば発熱体板20と回路基板40との間に架け渡されたボンディングワイヤ44によって電気的に接続される。さらに、回路基板40の表面に形成された配線パターンと駆動素子42との間もボンディングワイヤ44で電気的に接続される。駆動素子42およびボンディングワイヤ44は、たとえば樹脂48によって封止される。
【0020】
このサーマルプリントヘッド11を用いたプリンタは、発熱領域24の表面の法線上に位置する軸52を中心とする円筒状のプラテンローラ50を有している。プラテンローラ50によって被印刷媒体60がサーマルプリントヘッド11に押し付けられる。この状態で発熱領域24の発熱抵抗体26が発熱することによって、被印刷媒体60に印画される。被印刷媒体60が副走査方向に搬送されながら、主走査方向に延びる発熱領域24が所定のパターンで発熱することによって、被印刷媒体60には所望の画像が形成される。
【0021】
次に、本実施の形態の製造方法を説明する。
【0022】
図7は、本実施の形態のサーマルプリントヘッドの製造方法を断面図とともに示すフローチャートである。
【0023】
まず、セラミックの素板71の主面にガラスペースト72を印刷する(S1)。ガラスペースト72の厚さは、たとえば30〜120μmとする。
【0024】
次に、ガラスペースト72の表面に感光性レジスト73を塗布する(S2)。感光性レジスト73の厚さは、たとえば10〜20μmである。所定のマスクを用いて感光性レジスト73の一部を露光させ、エッチングにより露光部分を取り除く(S3)。
【0025】
一部が取り除かれた感光性レジスト73が表面に残っている状態で、ガラスペースト72の一部をエッチングによって取り除く(S4)。エッチングによって取り除く厚さは、たとえば1〜5μmである。これによりガラスペースト72の表面に、溝91および外周部の小厚部92が形成される。エッチング(S4)の後、ガラスペースト72の表面に残存している感光性レジスト73を除去する(S5)。
【0026】
次に、溝91および小厚部92を含むガラスペースト72の表面全体に、再び感光性レジスト74を塗布する(S6)。次に、所定のマスクを用いて感光性レジスト74の一部を露光させ、エッチングにより露光部分を取り除く(S7)。この際、少なくとも工程S4で形成された溝91および小厚部92は、感光性レジスト74が取り除かれるようにする。
【0027】
感光性レジスト74が残っている状態で、ガラスペースト72の一部をエッチングによって取り除く(S8)。エッチングによって取り除く厚さは、たとえば20〜70μmである。このとき、工程S4で形成された段差は保持されたまま、エッチングが進行する。その結果、工程S4で形成された溝91および小厚部92に対応する位置に、溝93および小厚部94が形成されることとなる。
【0028】
次に、感光性レジスト74を除去する(S9)。これによりガラスペースト72のパターニングが完了し、絶縁基板に所定のパターンでガラスペースト72が付着した素板71ができあがる。
【0029】
ガラスペースト72のパターニングが完了した(S9)後、素板71に所定のパターンで付着したガラスペースト72を焼成する(S10)。この際、ガラスペースト72の温度をガラスの軟化点温度以上にして、所定の時間保持し、その後、常温まで冷却する。ガラスペースト72は、軟化点以上の温度になって流動性が大きくなり、表面張力および重力の作用によって、丸みを帯びた形状となり、グレーズ層25が形成される。
【0030】
図10は、幅および高さが一定の直線状の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の上面図である。図11は、平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の断面図である。図12は、平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合の他の断面図である。
【0031】
幅および高さが一定の直線状の凸部を持つパターンでガラスペーストを形成した場合、そのガラスペーストを焼成すると、その凸部の端部近傍には、盛り上がった部分81が形成される。同様に、素板71の外縁においても盛り上がった部分84が形成される。また、凸部の端部近傍では、突条の幅が広い部分82が形成される。これは表面張力によるメニスカス作用によるものである。
【0032】
また、平行な複数の凸部を持つパターンに形成されたガラスペーストを焼成した場合、それらの凸部の間隔が小さいと、2つの凸部の表面張力が互いに影響を与える。その結果、それらのガラスペーストの状態で凸部の間が平坦だと、焼成した後に、凸部の間に盛り上がった部分83が形成されたり、凸部の裾野部分で傾斜角度が小さくなる場合がある。特に、凸部のピッチが3mm以下の場合に、この影響が顕著に現れる。
【0033】
しかし、本実施の形態では、焼成時のガラスの流動に対応して、予めガラスペーストのパターンを形成しておくことにより、焼成後のグレーズ層25の形状を適切に制御している。
【0034】
図1は、本実施の形態におけるガラスペーストのパターニング終了後の上面図である。図2は、図1のII−II矢視断面図である。図3は、図1のIII−III矢視側面図である。なお、本実施の形態では、一枚のセラミックの素板71から8枚の発熱体板20を形成することとしている。図1の破線は、これらの複数の発熱体板20に切り分けるための切断線を示している。
【0035】
工程S8まででガラスペースト72のパターニングが完了する。焼成前のガラスペースト72は、焼成後の突条部21に対応する位置に帯状の凸部95が形成されている。この帯状の凸部95は、中央の幅太部96と、両端の幅細部97とからなっている。
【0036】
また、本実施の形態では、一枚の素板71から複数の発熱体板20を形成するため、一枚の素板71上にガラスペースト72の複数の凸部95が形成されている。これらの凸部95のうち、平行に延びる2つの凸部95の間のほぼ中央には、溝93が形成されている。
【0037】
さらに、素板71の外縁部分には、ガラスペースト72の厚さが薄い小厚部94が形成されている。小厚部94の幅は、コーナー部を除き、外縁に沿って一定である。コーナー部において小厚部94の幅は、広くなっている。
【0038】
図4は、本実施の形態における焼成後のグレーズ層の上面図である。図5は、図4のV−V矢視断面図である。図6は、図4のVI−VI矢視断面図である。
【0039】
このように本実施の形態では、焼成時のガラスの流動に対応して、予めガラスペーストのパターンを形成している。このため、焼成後のグレーズ層25の形状が適切に制御される。
【0040】
突条部21の両端部では、ガラスペースト72の状態で幅を小さくしているため、図12に示すような盛り上がった部分81,84や図10に示すような幅が広い部分82は形成されていない。その結果、突条部21の高さは、主走査方向でほぼ一定で、端部では増大することなく小さくなっていく。突条部21の幅は、主走査方向でほぼ一定で、端部では増大することなく小さくなっていく。
【0041】
また、平行に延びる突条部21の間では、ガラスペースト72の状態で溝93を形成しているため、図11に示すような盛り上がった部分81は形成されない。その結果、突条21の間は、平坦になる。
【0042】
さらに、素板71の外縁部分には、ガラスペースト72の状態で薄肉部94を設けているため、盛り上がった部分は形成されない。その結果、素板71の表面に形成されたグレーズ層25の外縁部分も盛り上がることなく、外縁のごく近傍までその内側と厚さが同じグレーズ層25が形成される。
【0043】
このようにして素板71の表面にグレーズ層25が形成された後、グレーズ層の表面に抵抗膜層および金属層を形成する。抵抗膜層および金属層を所定の形状にエッチングすることにより、本実施の形態の発熱抵抗体26および金属配線層28が形成される。
【0044】
発熱抵抗体26および金属配線層28が形成された板に、絶縁保護層29を被膜する。その後、図1に破線で示す切断線で切断して、8枚の発熱体板20が形成される。このようにして製造された発熱体板20および駆動素子42を搭載した回路基板40を放熱板30に載置し、駆動素子40と発熱体板20との間にボンディングワイヤ44を架け渡し、駆動素子40およびボンディングワイヤ44を封止することにより、サーマルプリントヘッド11が完成する。
【0045】
このように本実施の形態によれば、焼成前のガラスペーストの形状を適切に設定することにより、焼成後に適切な形状のグレーズ層を得ることができる。このため、グレーズ層の形成後に盛り上がった部分などを研磨しなくても、適切な形状のサーマルプリントヘッド11を製造することができる。つまり、低コストで高い品質のサーマルプリントを製造することができる。
【0046】
たとえば、グレーズ層25に形成された突条部21の端部に盛り上がった部分は形成されないため、より長い範囲で断面形状が実質的に同じ突条部21が形成される。その結果、より長い範囲で高さが均一な発熱領域24を形成することができる。
【0047】
また、突条部21の端部に盛り上がった部分が形成されると、その部分にプラテンローラ50が接触することにより、主走査方向の中央部付近でのプラテンローラ50の発熱領域24への押しつけ圧力が低下し、印画にかすれが生じる不具合が生じる可能性がある。しかし、本実施の形態によれば、突条部21には一部盛り上がったところがないため、プラテンローラ50の押しつけ圧力が主走査方向で均一になりやすい。したがって、印画精度が向上する。
【0048】
プラテンローラ50は、ある幅で発熱領域24に接触する。したがって、突条部21の幅が変化すると、プラテンローラ50と発熱領域24との接触状態が変化する。つまり、突条部21の端部に幅が広い部分が形成されると、その部分でのプラテンローラ50と発熱領域24との接触状態が他の部分と異なることになる。その結果、印画精度が低下する可能性がある。しかし、本実施の形態によれば、突条部21は実質的に一定の幅で両端部のごく近傍まで延びているため、プラテンローラ50と発熱領域24との接触状態は、主走査方向に長い領域でほぼ一定となる。その結果、印画精度が向上する。
【0049】
また、素板71の外縁部分にはグレーズ層25が盛り上がった部分が形成されると、製品にする際にはその部分を切り落としたり、その盛り上がりがあっても問題ない構造のサーマルプリントヘッドとする必要がある。しかし、本実施の形態では、素板71の外縁部分にはグレーズ層25が盛り上がった部分が形成されず、グレーズ層25が平坦な部分が素板71の大部分を占めることになる。
【0050】
その結果、一枚の素板71からより多くのサーマルプリントヘッド11を製造することができる。あるいは、素板71の外縁部分を切り落とさなくても、外縁近傍まで発熱領域24などを形成したコンパクトなサーマルプリントヘッド11を製造することができる。また、グレーズ層25が盛り上がった部分が形成されると、製品にする際にはその部分を切り落とす必要がなければ、その分の作業工数を低減できる。
【0051】
また、一枚の板からそれぞれ突条部21を持つ複数のサーマルプリントヘッド11を製造する場合であっても、それらの突条部21の間に盛り上がった部分は形成されない。したがって、突条部21の間隔を狭くすることができ、一枚の板からより多くのサーマルプリントヘッド11を製造することができる。突条21の間隔を狭くしても、それらの間に盛り上がった部分が形成されないため、盛り上がった部分の研磨を行う必要がなく、作業工数を低減できる。あるいは、盛り上がった部分を避けてサーマルプリントヘッド11を製造する必要がないため、材料の無駄が低減される。
【符号の説明】
【0052】
11…サーマルプリントヘッド、20…発熱体板、21…突条部、22…セラミック基板、24…発熱領域、25…グレーズ層、26…発熱抵抗体、28…金属配線層、29…絶縁保護層、30…放熱板、40…回路基板、42…駆動素子、44…ボンディングワイヤ、48…樹脂、50…プラテンローラ、52…軸、60…被印刷媒体、71…素板、72…ガラスペースト、73…感光性レジスト、74…感光性レジスト、91…溝、92…小厚部、93…溝、94…小厚部、95…凸部、96…幅太部、97…幅細部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素板を分割した基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、
前記素板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い帯状の凸部を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、
前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、
前記焼成工程の後に前記前記素板を複数の部分に分割する分割工程と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記パターンには互いにほぼ平行に延びる複数の前記凸部とほぼ平行な2つの前記凸部の間に延びる溝部を含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記パターンは外縁部にその内側よりも前記ガラスペーストの厚さが薄い部分を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項4】
基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、
基板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い帯状の凸部を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、
前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項5】
基板とその基板の表面に形成されたガラス層と間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、
基板の表面に外縁部にその内側よりも前記ガラスペーストの厚さが薄い部分を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、
前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項6】
基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、
基板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い複数の互いにほぼ平行に延びる凸部とほぼ平行な2つの前記凸部の間に延びる溝部とを含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、
前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、
前記焼成工程の後に前記溝部で前記前記素板を複数の部分に分割する分割工程と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項1】
素板を分割した基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、
前記素板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い帯状の凸部を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、
前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、
前記焼成工程の後に前記前記素板を複数の部分に分割する分割工程と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記パターンには互いにほぼ平行に延びる複数の前記凸部とほぼ平行な2つの前記凸部の間に延びる溝部を含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記パターンは外縁部にその内側よりも前記ガラスペーストの厚さが薄い部分を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項4】
基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、
基板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い帯状の凸部を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、
前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項5】
基板とその基板の表面に形成されたガラス層と間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、
基板の表面に外縁部にその内側よりも前記ガラスペーストの厚さが薄い部分を含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、
前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項6】
基板とその基板の表面に形成されたガラスの突条とその突条の表面にその突条が延びる方向に間隔を置いて配列された複数の抵抗体と間隙を挟んでその抵抗体に接続された電極とを有するサーマルプリントヘッドの製造方法において、
基板の表面から突出して前記表面に沿って延びて両端部の幅が細い複数の互いにほぼ平行に延びる凸部とほぼ平行な2つの前記凸部の間に延びる溝部とを含むパターンでガラスペーストを前記表面に付着させるパターニング工程と、
前記パターニング工程の後に、前記ガラスペーストを焼成する焼成工程と、
前記焼成工程の後に、前記抵抗体および前記電極を形成する金属層工程と、
前記焼成工程の後に前記溝部で前記前記素板を複数の部分に分割する分割工程と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−71383(P2013−71383A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213482(P2011−213482)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】
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