説明

サーモサイクラーおよびサンプルポート

本発明は、連続流系、特に核酸の増幅における複数の温度帯間の、液の自動化および連続サイクリングのためのサーモサイクラーに関する。本発明はまた、ある量の液体試料を連続流系へ導入するための改善されたサンプルポートに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーモサイクラーに関し、および特に複数の温度帯の間の自動および連続サイクリングのためのサーモサイクラーに関する。
【0002】
本発明は主に、核酸増幅用のサーモサイクラーとしての使用のために開発されており、および以降はこの用途に関して説明される。しかし、本発明はこの特定の使用分野に限定されないことが理解される。
【0003】
本発明はまた、連続流系に関し、および特にある量の液体試料を連続流系へ導入するためのサンプルポートに関する。しかし、本発明はこの特定の使用分野に限定されないことが理解される。
【背景技術】
【0004】
本明細書を通じて先行技術の考察のいずれも、そのような先行技術が広く公知であることのまたは本分野における一般常識の一部をなすことの承認とは決して見なされない。
【0005】
目的の産物を生じるために複数のまたはサイクルの化学反応を必要とする系は、しばしば注意深い温度調節を、および反応が温度を保たれる時間にわたる再現可能なおよび正確な調節を必要とする。そのような反応は、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)のような核酸増幅反応を含む。
【0006】
PCRとは、1サイクルが完了するごとに特定のポリヌクレオチド配列の等比級数的増幅を結果として生じる複数サイクルを含む方法である。PCRの方法はよく知られており、および、『PCR:実践的方法』(PCR: A Practical Approach)M.J.マクファーソン(McPherson)他、IRLプレス社(IRL Press)(1991)、『PCR手順:方法および応用の手引き』(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)、イニス(Innis)他、アカデミック・プレス社(Academic Press)(1990)、および『PCR技術:DNA増幅のための原理および応用』(PCR Technology: Principals and Applications for DNA Amplification)H.A.エーリッヒ(Erlich)、ストックトン・プレス社(Stockton Press)(1989)を含む多数の書籍に記載されている。PCRはまた、US 4,683,195; 4,683,202; 4,800,159; 4,965,188; 4,889,818; 5,075,216; 5,079,352; 5,104,792; 5,023,171; 5,091,310;および5,066,584を含む多数の米国特許に記載されている。
【0007】
PCR法は典型的には、ポリヌクレオチドを変性する段階、次いで少なくとも一対のプライマーオリゴヌクレオチドを変性したポリヌクレオチドへアニーリング、すなわち、プライマーを変性ポリヌクレオチドテンプレートへハイブリダイズする段階を含む。アニーリング段階後、ポリメラーゼ活性を有する酵素が、プライマーオリゴヌクレオチドを組み込む新しいポリヌクレオチド鎖の合成を触媒し、および元の変性ポリヌクレオチドを合成テンプレートとして使用する。この一連の段階(変性、プライマーアニーリング、およびプライマー伸長)が、一つのPCRサイクルを構成する。
【0008】
サイクルが反復されるにつれ、前のサイクルに由来する新たに合成されたポリヌクレオチドが以降のサイクルで合成のためのテンプレートとして働くため、新たに合成されるポリヌクレオチドの量は等比級数的に増加する。プライマーオリゴヌクレオチドは、典型的には、2つのアニーリング部位間の領域が増幅されるように、所定の二本鎖ポリヌクレオチド配列の反対の鎖とアニーリングできる対で選択される。
【0009】
DNAの変性は典型的には90から95℃付近で起こり、変性DNAへのプライマーのアニーリングは典型的には40から60℃付近で行われ、およびアニーリングしたプライマーをポリメラーゼで伸長する段階は典型的には70から75℃付近で行われる。したがって、PCRサイクル中、反応混合物の温度を変化させなければならず、および多サイクルPCR実験中には何度も変化させなければならない。
【0010】
一つ以上の温度調節された要素すなわち「ブロック」が反応混合物を保持し、およびブロックの温度が経時的に変化する、DNA増幅および配列決定に使用されるいくつかのサーマル「サイクラー」が先行技術で開示されている。これらの装置は、反応混合物をサイクリングさせるのが遅い、および温度調節が決して理想的でないという欠点がある。ヒートブロックの温度を循環的に上昇および低下させる必要を克服する目的で、サーモサイクラーとして本分野で知られる装置を他者が考案している。この装置では、温度調節された複数のブロックが別々の目的温度に保たれ、および反応混合物をブロックからブロックへ移動するためにロボットアームが用いられる。典型的なサーモサイクラー系がUS5,443,791;5,656,493および6,656,724で開示される。しかし、理解されるように、これらの系は独自の一連の欠点がある。たとえば、それらは処理量が相対的に限られており、物理的に大きく、壊れやすく、高価で、および常に日常保守が必要である。
【0011】
これらの前記の装置が遭遇する困難は、US 5,270,183で開示される発明によって一部が対処された。要約すると、その発明は、さまざまな温度に保持された実質的に円柱形の物体の周りにチューブを巻き付けることによってさまざまな温度にさらされる、連続したチューブを通る反応物を対象とした。試料間の交差汚染を防ぐため、反応混合物は、個々の反応混合物を分離するキャリヤー液流へ注入され、および、2または3の別々の加熱帯を通過した。キャリヤー液および反応混合物は不混和性であり、そのため、各試料はキャリヤー液の部分によって、前および後の試料から綺麗に分離される。この配置は、いくつかの試料の連続処理を可能にする。しかし、この装置には欠点があり、たとえば、加熱帯が空間的に離れているため、反応の経過のリアルタイム観測を行うには不便である。さらに、加熱帯を物理的に互いに分離すると、扱いにくくなりがちである。
【0012】
US 5,270,183に開示される発明からの進歩がWO 03/016558に記載され、そこでは単一の円柱形の物体が縦方向に分割されて、異なる温度へ加熱されうる少なくとも2つの区画を提供し、そのため、その物体は異なる温度の周囲表面を有しうる。反応物がその物体の周囲に巻き付けられた連続チューブを通る際、反応物は交替する温度にさらされる。しかし、そのようなサーモサイクラーの問題は、円柱の周囲を走査する線形追跡装置を用いてデータの十分速い読み出しを得ることが困難である点である。
【0013】
上記のサーモサイクラーを含め、一般的に連続流系および装置に関して、それらは典型的には陽圧下で操作され、および、反応チューブのような連続チューブ/導管を通じてキャリヤー液をポンプで送るためのポンプを必要とする。典型的には、これらのポンプは、高圧または超高圧ポンプである。したがって、これらの先行技術の連続流装置は、チューブを通って高圧でポンプで送られているキャリヤー液流中へ液体試料を送るための専門的な高圧注入ポートを必要とする。これらの高圧注入ポートはさまざまな欠点を有する。しかし、主な欠点は、たとえば主に試料を注入するためのセプタム−針の配置による負荷中の試料の汚染といった試料間の、または試料が配管を下る際の試料間の、交差汚染の傾向である。
【0014】
このように、ここで記載されるサーモサイクラー装置を含む連続流系、および試料取扱および配送手段の改善の必要はまだ残っている。
【0015】
上記の先行技術の欠点の少なくとも一つを克服または改善すること、または有用な代替物を提供することが本発明の目的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の一部の好ましい実施形態は、循環的なまたは進行的な方法でチューブ内の液体の温度を変えることができるか、または液体を一定温度に維持することができ、先行技術の装置と比較して液体が維持される温度の調節が改善されているサーモサイクラーを提供し、および、チューブ内で起こっている反応を監視するための改善された手段を提供する。本発明の他の実施形態は、連続流系での、特に試料が加圧下でポンプで送られるのでなくカラムまたはチューブを通って引かれる連続流系での使用のためのサンプルポートを提供する。
【0017】
第一の態様によると、本発明は、独立して規定の温度を維持し、それによって対応する複数の温度帯を規定するための、複数の入れ子式の熱交換器を含み;前記熱交換器は反応チューブを受容するように適合され、そのため前記反応チューブは前記熱交換器と熱伝導連絡にあり、それによって前記熱交換器と接する反応チューブを通過する液はその温度帯を循環的に通過する、サーモサイクラーを提供する。
【0018】
関連する一態様によると、本発明は、各熱交換器が複数のトンネルを含みおよび規定の温度を維持するように適合され、それによって複数の温度帯を定義する、一対の入れ子式の内側および外側熱交換器;および温度帯との熱的接触のためのトンネルに接し、それによって反応チューブが交互に各熱交換器の連続的なトンネルを通され、そのため反応チューブを通る液が温度帯を循環的に通る反応チューブを含むサーモサイクラーを提供する。
【0019】
熱交換器は好ましくは同軸に配置されるが、しかしこの種の配置はサーモサイクラーの設計または機能性に決定的ではない。
【0020】
好ましくはトンネルは、同軸の熱交換器の軸と平行に走る。好ましい一実施形態では、トンネルは少なくとも一側面が開いていて、反応チューブを実質的に熱交換器の表面に保持するための表面溝を提供する。代替的に、トンネルは一部が封入された表面溝であり、それによって反応チューブがその中に「閉じ込められる」ことを可能にする。
【0021】
外側熱交換器は、実質的に円形である横断面を有する環構造を有しうるが、しかしこの種類の配置はまた、サーモサイクラーの設計または機能性に決定的ではない。内側熱交換器は、管状または中空でない棒状またはブロックでありうる。任意に熱交換器はトロイド形である。
【0022】
熱交換器環の内側は、反応チューブを光学的に監視するための少なくとも一つのスロットを含みうる。
【0023】
一実施形態では、内側熱交換器の端面は、外側熱交換器の対応する端面と実質的に同一平面上にある。しかし、別の実施形態では、内側熱交換器の端面の一方または両方は、外側熱交換器の対応する端面から軸方向に位置しうる。
【0024】
各熱交換器の規定の温度は、さまざまな加熱および/または冷却方法によって維持されうる。好ましくは加熱および/または冷却方法は、抵抗線およびペルチェ素子から選択される。核酸増幅のためには、規定の温度は約95℃、約60℃、または約72℃でありうる。もちろん、熱交換器の任意の特定部分について、任意の範囲の温度が容易に選択および維持されうることが理解される。熱交換器は好ましくは一定温度に維持される。しかし、熱交換器は、たとえば約55℃ないし約95℃でありうる、軸方向に変化する温度プロファイルを維持するように適合されうる。しかし、特定の用途に従って、任意のさまざまな温度プロファイルが選択されうることが理解される。
【0025】
本発明の特定の一実施形態では、各熱交換器は好ましくは、それぞれの端面上に、相互に対向する一連の反応チューブ配列構成を含む。その構成は、チューブが各熱交換器の各端面と実質的に同一平面上にあるようにチューブを位置づけるための縦方向にくぼんだ放射状に伸びるスロットでありうる。その構成は、外側熱交換器の内側周辺端部上に、および内側熱交換器の外側周辺端部上に配置される。
【0026】
好ましくは各熱交換器内のトンネルは、半径方向に等距離であり、および間隔を開けた配列で配置される。任意の数のトンネルまたは溝が各熱交換器内/上に提供されうるが、しかしトンネルまたは溝の典型的な数は、約15ないし75である。好ましくはトンネルの数は40から50である。
【0027】
好ましくは反応チューブは実質的に透明であり、および、テフロン(Teflon)またはテフゼル(Tefzel)または同様の材料といった不活性弾性材料から形成される。好ましくはチューブの内表面は疎水性である。チュービングは、反応チューブを通ってポンプで送られている液へ熱交換器から熱を伝導するために、改善された温度/熱伝導連絡のためのトンネルとぴったり合う関係について選択されるべきである。熱交換器に関しての反応チューブ配置は、連続流構成が達成されうるものである。好ましくは反応チューブは取り外し可能でありおよび交換可能である。
【0028】
本発明の別の一実施形態では、外側および内側熱交換器は、複数の分離した軸方向に間隔を開けた熱交換器へ再分割でき、各熱交換器は隣接する熱交換器と同一かまたは異なりうる温度を維持するように適合される。この実施形態を用いて、本発明は、その所定の温度にある熱交換器の数に従って各温度での滞留時間が変化する、2段階、3段階または4段階反応を実施するようにプログラムされうる。熱交換器の隣接するブロックは、一定温度を長時間維持するために使用されうる。たとえば、変性またはアニーリングよりも長い伸長反応を提供するために、4つの熱交換器のうち2つが約70℃に維持されうる。任意に、高温および低温熱交換器の配置は、蛍光測定が温度サイクルの異なる点で起こりうるように再配列されうる。さらに、熱交換器は任意の数の温度帯を提供するために任意の回数、分割されうるが、しかし4温度帯がほとんどのPCR/LCR反応には十分であることが理解される。
【0029】
サーモサイクラーはまた、別の温度帯を提供するために、外側熱交換器を囲む一つ以上の別の熱交換器も含みうる。
【0030】
好ましくは反応チューブは、反応チューブへ液を導入するための入口ポート、および反応チューブを通る流れを維持するための配送装置を含む。
【0031】
使用に当たって、配送装置は加圧下の反応チューブを通る流れを維持する。
【0032】
好ましくは圧力は約70ないし約700kPaである。背圧は典型的には反応チューブの終端に約30ないし70kPaにて加えられる。本発明の別の実施形態では、サーモサイクラーを通る液体の流れは、フローチューブの出口に加えられる陰圧によって維持される。これは、試料を大気圧にて無接触および無汚染の方法を用いて導入することを可能にする長所がある(以下参照)。
【0033】
好ましくは、液は、反応または分析すべき試料、分析または反応に使用される試薬、およびキャリヤー液を含む。一実施形態では、試料は次の試料から、実質的に試料間の汚染を防ぐため、キャリヤー液によって、すなわちキャリヤー−試料−キャリヤー配置によって分離される。しかし、代替的な一実施形態では、洗液もまた試料間に、すなわちキャリヤー−洗液−キャリヤー−試料−キャリヤー−洗液−キャリヤー配置で散在されうる。好ましいキャリヤー液はシリコンオイル、または生物汚染物質を含まない任意の合成複合油である。好ましくは洗液は純水である。サーモサイクラーが核酸増幅に用いられる実施形態では、キャリヤー液はRNAまたはDNAといった核酸を欠いているべきである。好ましくは、反応または分析すべき試料はDNAまたはRNAを含む試料といった核酸である。試料の他の成分は、典型的には、オリゴヌクレオチドプライマー、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、および少なくとも一つの熱安定性DNAポリメラーゼ、その酵素活性な断片、その酵素活性な誘導体および逆転写酵素を含む。
【0034】
好ましくは、試料が規定の温度で維持される時間は、流速、熱交換器の相対軸長および/または反応チューブの直径の選択によってあらかじめ選択されうる。サーモサイクラーを核酸増幅に利用する本発明の一実施形態では、タイミングは下記の反応が起こるのに十分である:
(a)DNAのその構成鎖への変性;
(b)DNA中の相補配列へのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング;および
(c)新しいDNA鎖の合成;
好ましくはこれらの段階は、目的レベルの増幅が達成されるまで反復される。
【0035】
サーモサイクラーはまた、試料を変性するための前コイルも含むことができ、そこで試料は典型的には約2ないし10分間変性される。
【0036】
好ましくは、反応チューブ内の反応を監視するためのマーカー試薬もまた、反応液および/または試料に添加される。マーカー試薬は、蛍光色素、挿入色素、発色基質、または蛍光部分と共有結合したオリゴヌクレオチドプローブから成る群から適切に選択されうる。
【0037】
別の実施形態では、サーモサイクラーは増幅産物についてDNA−融解分析を提供するための、外側熱交換器を囲む別のC形熱交換器を含みうる。C形熱交換器の円周ギャップは、約20ないし約100(でありうるが、しかしC形熱交換器の円周ギャップは好ましくは約20(である。C形熱交換器は、約70℃ないし約95℃に変化しうる、円周で変化する温度プロファイルを含みうる。しかし、任意の温度プロファイルが特定の用途に応じて選択されうることが理解される。反応チューブは、試料が円周の周りを移動する際に、変化する温度プロファイルに晒されるように、C形熱交換器の上側または下側端面周囲の単一ループに配置されうる。任意に、試料の蛍光は、融解プロファイルが測定されうるように、ループを回って移動する際に検出される。しかし、代替的な実施形態では、C形熱交換器は反応チューブを保持するための溝を含み、そこで溝は熱交換器の側面に配置される。融解検出試験は典型的には約1ないし20分間、好ましくは2分間で実施される。
【0038】
さらに別の一実施形態では、増幅産物の後融解が、反応チューブが熱交換器の周りに巻き付けられた、およびC形熱交換器の両端の温度が異なる温度で維持されたC形熱交換器で実施されうる。融解装置上でのチューブの各回転はしたがって別々の温度になり、融解測定において熱交換器上でチューブの回転回数と同数の測定を与える。チューブはまた、C形熱交換器の内周の周りに巻き付けることもでき、そのため、高速スピンスキャナーを用いて融解分解能は、熱交換器の周りの回転回数でなくスキャン速度に基づく。この方法はまた、チューブ長が相当に(たとえば10倍より大)短いと考えると、はるかに速い融解時間を提供する。
【0039】
サーモサイクラーはさらに、反応チューブ内で起こる反応の経過を監視するための走査型検出器を含みうる。好ましくは反応の経過は蛍光によって測定される。一実施形態では走査型検出器は、内側および外側熱交換器の間の円周ギャップ内のチューブを直接測定するために、サーモサイクラー熱交換器環の上(または下)に軸方向に取り付けられた回転自在ユニットを含む。ユニットは、入射光源および検出器を持つ少なくとも一つの検出チャンネルを含みうる。たとえば、入射光源は適当なフィルター付きの水銀アーク灯でよく、および入射光源はLEDまたはレーザーでよい。好ましくはユニットは、青、緑、黄および赤色入射光に対応する4つの検出チャンネルを含む。さらに、ユニットは好ましくは、C形熱交換器が設置される際に融解プロファイルを検出するための少なくとも1つの「融解」検出チャンネルをさらに含む。好ましくは、回転自在ユニットは、500rpmより大で回転する。前述の走査型検出器は、波長ごとに1つの励起および1つの検出器ポートだけを必要とすることがわかる。
【0040】
別の一実施形態では、走査型検出器は、スロットを通じて反応の経過をそれによって検出するための、内側熱交換器内の中心に位置する、軸周りに回転可能である45°ミラーを含みうる。この実施形態では、走査型検出器は入射光をサーモサイクラーの軸に沿って導き、入射光はミラーが一回転完了する際にミラーによって反応チューブの各「回転」ごとに反射され、そのため反応チューブを連続的にスキャンでき、および回転する光線を通過する際に各反応が検出できる。落射蛍光は同一の光路を通って戻りおよびダイクロイックミラーを通過して検出器へ通りうる。蛍光検出は、交互の照射および検出スキャンを用いて、照射と同時または遅延しうる。
【0041】
これらの検出器は、迅速なデータ取得のため、反応チューブ内で起こっている反応の経過をリアルタイムで検出できることがわかる。
【0042】
別の実施形態では、複数の検出器が熱交換器間の円周ギャップ上に取り付けられ、ここで露出した反応チューブの数について同数の検出器が提供される。代替的に、検出器は反応チューブの群または対を測定する。カメラ、光ダイオードおよび光電子増倍管を含む任意の種類の検出器が適当である。
【0043】
第二の態様によると、本発明は、第一の態様のサーモサイクラー装置を用いて、核酸をPCRまたはLCR形式で増幅する方法を提供する。
【0044】
第三の態様によると、本発明は、第一の態様のサーモサイクラー装置を用いて、核酸融解検出検定を実施する方法を提供する。
【0045】
第四の態様によると、本発明は、第一の態様に記載の装置を用いて調製された核酸を提供する。
【0046】
本発明の装置は、他の方法、たとえば抗体−抗原結合反応を分析する方法に有利に使用されうることが理解される。
【0047】
第五の態様によると、本発明は、出口および、キャリヤー流および液体試料の両方が導入される共通の入口を有する連続流チューブを通って流れる流動キャリヤー流へある量の液体試料を導入するためのポートを提供し、前記ポートは下記を含む:前記入口に前記流動キャリヤーを連続的に供給するためのリザーバー、前記入口上に実質的に一定レベルの流動キャリヤーを維持するように適応された前記リザーバー、および前記リザーバーは前記連続流チューブの前記入口と滑らかに接続することができ、そのため、使用時に、前記リザーバーが実質的に大気圧である場合、および前記流動キャリヤーが、導入される液体試料の物理的形状を維持するのにその性質が十分であるように選択される場合、前記流動キャリヤー流および前記液体試料は前記連続流チューブを通って引かれる。
【0048】
好ましくは液体試料は水系試料であり、および流動キャリヤーは疎水性液体である。流動キャリヤーは適当には、シリコンオイルのような油でありうる。疎水性液体が油である、請求項3に記載のサンプルポート。
【0049】
第六の態様によると、本発明は、第五の態様に記載のサンプルポートを含む連続流装置を提供する。
【0050】
好ましくは連続流装置は核酸増幅反応を実施するためのサーモサイクリング装置である。核酸を増幅する好ましい方法はPCRである。
【0051】
第七の態様によると、本発明は、出口および、キャリヤー流および液体試料の両方が導入される共通の入口を有する連続流チューブを通って流れる流動キャリヤー流へある量の液体試料を導入するための方法を提供し、前記方法は下記の段階を含む:第五の態様に記載のポートを提供する;前記連続流チューブの前記入口を前記リザーバーと滑らかに接続する;前記流動キャリヤーを前記リザーバーへ導入および前記液体試料を前記流動キャリヤーへ導入、前記流動キャリヤーは、導入される液体試料の物理的形状を維持するのにその性質が十分であるようにおよび前記リザーバーが実質的に大気圧である場合に前記流動キャリヤー流および前記液体試料が前記連続流チューブを通って引かれるように選択される。
【0052】
第八の態様によると、本発明は、出口および、キャリヤー流および液体試料の両方が導入される共通の入口を有する連続流チューブを通って流れる流動キャリヤー流へある量の液体試料を導入するための方法を提供し、前記方法は下記の段階を含む:第五の態様に記載のポートを提供する;前記連続流チューブの前記入口を前記リザーバーと滑らかに接続する;前記流動キャリヤーを前記リザーバーへ導入;液体試料ディスペンサーを前記リザーバーに入った前記流動キャリヤーに浸漬;前記液体試料を隣接する前記入口へ分注、および任意に前記分注された液体試料を前記液体試料ディスペンサーで、前記分注された液体試料が前記入口へ導入されおよび前記連続流チューブを通って引かれるように操作、前記流動キャリヤーは、導入される液体試料の物理的形状を維持するのにその性質が十分であるようにおよび前記リザーバーが実質的に大気圧である場合に前記流動キャリヤー流および前記液体試料が前記連続流チューブを通って引かれるように選択される。
【0053】
文脈で明らかにそうでないと示されない限り、説明および請求項の全体を通じて、「含む」「含んだ」などの語は排他的または網羅的な意味でなく包含的な意味;すなわち、「含むがそれに限定されない」の意味と解されるべきである。
【0054】
操作例で以外、または別に示される場合は、成分の量または反応条件を示すここで用いられるすべての数字は、「約」の語によって改変されているとすべての場合で解されるべきである。実施例は本発明の範囲を限定しないことが意図される。下記では、または別に示される場合は、「%」は「重量%」を意味し、「比」は「重量比」を意味し、および「割合」は「重量割合」を示す。
【0055】
定義
本発明の説明および請求において、下記の用語が下記に示す定義に従って使用される。ここで用いられる用語は本発明の特定の実施形態を説明する目的のためだけであることもまた理解され、および限定的でないと解されることが意図される。別に定義されない限り、ここで用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に理解されるのと同一の意味を有する。
【0056】
ここでは「貫通する」の「貫く」は反応チューブが熱交換器と噛み合わされていることを言う。したがって、たとえば、反応チューブは図3に明らかに示される通り、熱交換器のトンネル内に位置するかまたはそれを通って巻かれている。「貫く」の語はまた、反応チューブが熱交換器の表面に配置された表面溝に可逆的に捕捉的に受容されている、すなわち「閉じ込められる、または熱交換器の周りに巻かれている実施形態を包含することが意図される。
【0057】
本発明に関連して用いられる「トンネル」の語は、反応チューブを熱伝導連絡に受容するための、開口が熱交換器の壁の中である、すなわち完全に封じ込まれている、および熱交換器の表面内または表面上の半円状の開口、チャンネルおよび/または溝の構成を含むことが意図される。「トンネル」および「溝」の語はここでは相互に交換可能に使用されうる。
【0058】
本発明に関連して用いられる「入れ子式の」の語は、少なくとも1つの熱交換器がもう1つの熱交換器を実質的に囲み、または実質的にもう1つの境界内に位置する、熱交換器の構成をいうことが意図される。たとえば、好ましい実施形態では(図1参照)一対の環が提供され、そこで一方の環の直径が他方より小さく、そのため小さい直径の環はより大きい直径の環の境界内に配置されうる。
【0059】
吸引力が連続流チューブ出口に適用される際に流動キャリヤー流が連続流チューブを通って引かれることに関する「引かれる」および「引く」の語は、ポンプする力が入口に適用される際に流動キャリヤー流を連続流チューブを通って「押す」、「推進する」または「ポンプする」とは区別されるべきである。ポンプ力は典型的には、HPCLポンプのような高圧ポンプの使用によって提供される。対照的に、吸引力は典型的には吸引/吸入/真空ポンプの使用によって、任意に真空瓶型配置と組み合わせて適用される。本発明の目的のためには、ポンプ力は正の力および吸引力は負の力であると考えることができる。さらに、本発明の目的のためには、リザーバーは、キャリヤー液が連続流チューブを通って引かれる際、実質的に大気圧より大きい加圧が無いと考えられる。液はまた、引力の作用によって連続流チューブを通って「引かれる」ことが可能である(ある種のキャリヤー液が使用される場合)。
【0060】
ここで用いられる「大気圧」の語は、実質的に101.325kPa(すなわち760mmHg)の大気圧または異なる海抜ではその等価をいうことが意図される。しかし、当業者は、この語がある程度の変形を許すことを、および数字は正確な値と解されるべきでないことを理解する。
【0061】
本発明の好ましい実施形態が、添付の図面を参照して例示の目的のみで説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
図1から3をまず参照して、サーモサイクラーは一対の分離した入れ子式の内側および外側直円柱熱交換器環1および2をそれぞれ含む。各環は壁を通って縦方向に伸びる複数のトンネル3を含む。トンネルの数は約15ないし70でありうるが、しかし典型的な構成では約40個のトンネルが提供される。各熱交換器環1および2は、異なる規定の温度を維持しそれによって2つの温度帯を定義するよう適応される。温度は一つ以上の抵抗線またはペルチェ素子(図示せず)の形の加熱および/または冷却手段を用いて維持される。熱交換器環1および2の軸長に沿った温度プロファイルは、実質的に一定値に維持される。熱交換器環の内側1および/または外側2はまた、一対の分離した軸方向に間隔を開けた部分環(図示せず)に分割されうる。部分環のそれぞれは、異なる規定の温度を維持し、それによって第三および/または第四の温度帯を定義するよう適応されうる。温度帯は、任意の温度に維持されうるが、しかしPCR方法論を用いる核酸増幅のためには、温度は典型的には約95℃、約60℃、および約72℃から選択される。しかし、代替的な実施形態では、サーモサイクラーは、別の温度帯を提供するための、外側熱交換器を囲む一つ以上の別の熱交換器を含みうる。
【0063】
反応チューブ4はトンネル3と密着する関係で貫いて噛み合わされ、それによって熱交換器環1および2から反応チューブ中の液へ熱を伝導する。反応チューブは各環1および2の連続するトンネルを通って交互に貫通し、そのため反応チューブ4を通過する液は循環的に温度帯を通過する。
【0064】
典型的には反応チューブ4は透明であり、および、テフロン(Teflon)またはテフゼル(Tefzel)または同様の材料といった不活性材料から形成され、およびチューブはトンネルを通って貫通することを可能にするように好ましくは弾性である。さらに、チューブ4の内表面は、試料、その内容または他の潜在的汚染物質の付着を防ぐため、疎水性であるべきである。
【0065】
各環1および2は各端面8および9上に互いに対向する反応チューブ配列構成7のアレイ5および6を含む。構成7は外側環2の内側周辺端部10に、および内側環1の外側周辺端部11に配置される。構成7は、好ましくは、チューブが各環1および2の各端面8および9と実質的に同一平面上に位置するように、チューブ4を配置するための縦方向にくぼんだ半径方向に伸びるスロットである。
【0066】
反応チューブ4はさらに、液をチューブへ導入するための入口ポート、およびチューブを通る一定流量を維持するための配送装置を含む(共に図示せず)。適当には、配送装置は、約70ないし約700kPaの圧力下で反応チューブを通る約100−200μL/分の流量を維持する容積式ポンプの形である。背圧もまた反応チューブの終端に加えることができ、および約30ないし70kPaに維持することができ、しかし系はまた背圧無しでも良好に動作する。背圧が加えられる場合は、液は液流の脱気または蒸発を回避または最小化するために加圧下に保たれる。
【0067】
反応チューブに導入される液は、反応または分析すべき試料、分析または反応に使用される試薬、およびキャリヤー液を含む。キャリヤー液は、反応または分析すべき試料を次の試料から分離し、および実質的に試料間の汚染を防ぐ。キャリヤー液は典型的にはシリコンオイルであるが、しかしRNAまたはDNAといった生物汚染物質を含まない任意の合成油もまた使用されうる。
【0068】
核酸増幅のための典型的な試料は、DNA、オリゴヌクレオチドプライマー、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、および少なくとも1つの熱安定性DNAポリメラーゼ、その酵素活性な断片、その酵素活性な誘導体および逆転写酵素を含みうる。
【0069】
理解される通り、流速、熱交換器環1および2の相対軸長および/または反応チューブ4の直径は、試料が規定の温度で維持される時間を調節しうる。典型的な核酸増幅反応では、時間は下記の反応が起こるのに十分である:
(a)DNAのその構成鎖への変性;
(b)DNA中の相補配列へのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング;および
(c)新しいDNA鎖の合成。
これらの3段階は、試料が温度帯を通って進行的にポンプされる際、目的レベルの増幅が達成されるまで反復される。増幅段階の数は、サーモサイクラー中に提供されるトンネルの数、すなわち試料が指定の温度帯を通過する回数に比例する。
【0070】
反応チューブ内の化学反応を監視するためのマーカー試薬もまた、試料に添加されうる。マーカー試薬は典型的には蛍光色素であるが、しかし挿入色素、発色基質、または蛍光部分と共有結合したオリゴヌクレオチドプローブでありうる。
【0071】
別の実施形態では、サーモサイクラーは、増幅産物について後融解を提供するための、外側熱交換器2を囲むC形熱交換器(図示せず)を含む。C形熱交換器の円周ギャップは、典型的には約20(であり、および熱交換器は、約70℃ないし約95℃の円周で変化する温度プロファイルを含む。特に好ましい一実施形態では、チューブ4はC形熱交換器の外側円周周囲に配置され、そのため、試料が円周周囲をポンプされる際、試料は融解プロファイルを経験する。しかし、非常に好ましい一実施形態では、反応チューブ4はC形熱交換器の表面に配置された溝内に保持される。
【0072】
代替的な実施形態では、サーモサイクラーは、マーカー試薬を検出しおよびしたがって反応チューブ4内で起こっている反応の経過を監視するための走査型検出器を含みうる。1つの構成では、図5から8で最も良く示されるように、走査型検出器は、熱交換器間の円周ギャップ13、または構成7、またはC形熱交換器の表面に配置された溝内のチューブ4を直接走査するため、環1および2の上(または下)に取り付けられた回転自在ユニット12を含む。たとえば、入射光および検出系は、熱交換器環1および2の上に配置された回転自在ユニットの端に取り付けることができる。4つの検出チャンネル(LED/ダイオードまたはレーザー/ダイオードの組み合わせ)を取り付けることができ、そのため最大4つのフルオロフォアを1試料に多重化でき、および4つのチャンネルすべてがデータを同時に取得できる。IRダイオードのような、回転の軸に沿って光学的に連動した装置が、検出器からデータフローを主データ処理ユニットへ送ることができ、またはデータを検出器へ送ることができる。しかし、任意の無線データ通信が適当である。融解データは回転自在ユニット12に取り付けられた「融解」チャンネル20から回収される。
【0073】
走査型検出器は理想的には、回転する検出器ヘッド内に位置する小型発電機によって動力供給される。代替的に、回転ブラシが使用されうる。しかし、たとえばステッピング・モーター21のように、検出器に動力供給するための任意の手段が使用されうる。
【0074】
別の構成では、内側熱交換器環は、反応チューブを光学的に監視するための環状スロット14を含む。図10で最も良く示されるように、ダイクロイックミラー15が軸方向にPCR装置の一側面に取り付けられ、および軸周りに回転可能である45°ミラー16が環の内側に配置され、それによって環状スロット14を通って反応チューブ内の反応の経過を検出する。走査型検出器は入射光をサーモサイクラーの軸に沿って導き、入射光はミラー16が一回転完了する際にチューブの各回転ごとに反射される。チューブを連続的にスキャンでき、および回転する光線を通過する際に各反応が検出できる。落射蛍光は同一の光路を通って戻りおよびダイクロイックミラー16を通過して検出器へ通りうる(図示せず)。モーター17によるミラーの迅速な回転は、チューブが連続的に走査されること、および各反応が回転する光線を通過する際に検出されることを可能にする。蛍光検出は、交互の照射および検出スキャンを用いて、照射と同時または遅延しうる。
【0075】
さらに別の実施形態では、走査型検出器の各走査は、試料同定のためにデータ処理コンピューターへ光度データを送る。各走査でのバイト数は同一であって、データがバッファに保存されることを可能にし、新しい各走査が加えられる際にデータを一列シフトさせる。これは線形平面上に広がるチューブ蛍光の動態イメージを生じる。別個のコンピュータープロセスが次いで、境界検出イメージ分析法によって試料を検出する。試料「スラグ」またはボーラス内のデータ点は平均され、およびそのサイクル数でのその「スラグ」について蛍光レベルが生成される。これらの蛍光レベルおよびサイクル数を次いで用いて、ロータージーン(Rotor−gene)ソフトウェアを用いた分析のための標準ロータージーンREXファイルデータ形式を作製するが、しかし任意の適当なデータ形式が許容される。
【0076】
ここでサンプルポートアセンブリおよびその連続流系との使用について、理解される通り、本発明に記載のポートは、先行技術の高圧注入ポートまたは特化された注入装置の必要無しに、液体試料の連続流カラムへの導入を可能にする。ポートは先行技術の高圧注入ポートと比較して相対的に安価であり、可動部が無く、および摩耗する部品(たとえばセプタム)が無い。さらに、本発明に記載のポートは、標準の排気ピペットチップを用いた大気圧での試料負荷を可能にし、チップはニードルシリンジ注入装置と比較して相対的に安価であるため、容易にバッチ滅菌でき、および各チップは一度使用後に廃棄でき、それによって試料交差汚染を無くす。対照的に、先行技術のニードルシリンジ注入装置は、試料注入間に清掃/滅菌されなければならない。さらに、「液切れ(タッチオフ)」負荷法は「無接触」であり,つまり負荷ポート内で汚染が無い。さらに、本発明に記載の ポートは、事実上任意の市販の実験室ロボット系による自動試料負荷に特に適する。
【0077】
好ましくは、流動キャリヤーは、チューブ出口に吸引力を加えることによって、連続流チューブを通して「引かれる」(高圧下でのポンプによる「押す」と反対に)。流動キャリヤー流を連続流チューブを通して引くことは、今や高圧ポンプの必要が無く、および、より重要なことには、高圧注入ポートの必要が無いため、先行技術の装置と比較して費用便益を提供する。しかし、代替的な一実施形態では、流動キャリヤーは、重力の作用下で流動キャリヤーが連続流チューブを通って引かれるように選択される。
【0078】
連続流チューブの出口に加えられる吸引力は、たとえば、連続流チューブの出口を単純な真空ポンプ配置と接続することによって、相対的に容易に提供されうる。たとえば、約10から100kPaの真空を内径1mmの長さ15メートルの連続流チューブに加えることは、約50ないし500μL/分の流量を提供する。しかし、流速はチューブの内径および/または油のグレードおよび/またはチューブ出口に加えられる真空の量に比例することが理解される。チューブは油のグレードおよびチューブ内径の適当な選択によって、重力によってさえ供給されうる。当業者は、特定の用途に従って、他の真空および流速が提供されうることを理解する。好ましくは真空は、連続流チューブを通る均一流速が維持されるように調節されるべきである。
【0079】
好ましくはリザーバーは大気圧に開放されているかまたは大気圧に維持され、それによって「無圧力負荷ポート」を提供する。好ましいリザーバーは、連続流チューブを捕捉して受容するよう適応される、中心が先細の基部を含む。しかし、代替的な一実施形態では、リザーバーにある長さの導管をあらかじめ取り付けることができ、そのためそのあらかじめ取り付けられた、ある長さの導管の出口が既存の連続流チューブの入口に滑らかに接続されうる。連続流チューブに空気が混入しないことを確実にするため、リザーバーは、リザーバーが流動キャリヤーで完全に満たされる際、チューブ入口が、リザーバーに入っている流動キャリヤーの容積内に沈められるように構成される。チューブ入口は、上からの液体試料を受容するように、好ましくは実質的に垂直に構成される。好ましくは連続流チューブの一部がリザーバーに入り、そのため連続流チューブ入口が、リザーバーが流動キャリヤーで完全に満たされる際、リザーバーに入っている流動キャリヤーの容積の高さのほぼ中心に配置される。蠕動ポンプのような適当なポンプが、リザーバーに流動キャリヤーを供給し、および光学センサーが流動キャリヤーのリザーバーへの添加速度を調節することによって、規定の液レベルを維持する。代替的に、液レベルを維持するために、堰型配置が提供されうる。しかし、リザーバーが流動キャリヤーで実質的に大気圧にて十分維持されている場合には、他の配置が当業者に明らかとなる。
【0080】
液体試料は、たとえばピペットのチップのような、試料ディスペンサーの先端を、連続流チューブ入口の真上に配置し、および液体試料をゆっくり分注することによって、連続流チューブ内へ導入されうる。好ましくは液体試料は約20μLである。しかし、液体試料は1μLほど少なくてもよく、または50μLほど多くてもよい。表面張力作用のため、疎水性油キャリヤー中に分注された水系液体試料は、実質的に球形である。任意にピペットの先端は液体試料の球と接触したままであり、球を連続流チューブ入口へ操作することを助け、および球がリザーバーの壁へ「落ちる」ことを防ぐ。流動キャリヤーの連続流チューブ入口への流れがあるため、液体試料の球はそこで入口へ「発射」され、そこから連続流チューブ内へ、出口に加えられる吸引力によって引き込まれる。複数の液体試料が連続流チューブへ指定時間間隔で導入されうることが理解される。液体試料は同一または異なる試料でありうる。好ましくは、しかし必ずしも必要ではないが、介在する「洗浄」液が試料間に加えられる。説明すると、好ましい試料負荷は下記の配列を含む:洗液−試料−洗液−試料−洗液−など。もちろん各洗液/試料液はキャリヤー液によって分離される。除去されうる任意の部分の試料は前の試料によってでなく洗液によって「捕捉」されるため、この配列は、試料交差汚染を低減した。好ましくは洗液は水である。
【0081】
本発明のサンプルポートは、高処理量自動化系に特に適する。本発明の一実施形態では、サンプルポートに複数の連続試料(および必要に応じて洗液の用量)を、ロボット試料取扱系によって入れることができる。高処理量用途のためのサンプルポートの別の実施形態では、複数の連続流チューブが提供されうる。連続流チューブ入口は好ましくは、間隔を開けてリザーバー内のアレイとなる。この実施形態はまた、ロボット試料取扱に繋がり、それによってロボット系が複数の液体試料を複数の連続流チューブ入口へ導入できる。代替的に、連続流チューブのアレイが下流で平行構成で合流して単一の連続流チューブとなることができ、それによって「平行」マニホールドを定義する。この実施形態では液体試料はマニホールドの一方の端から他方の端へ連続的に負荷され、それによって、液体試料が連続流チューブに引き込まれおよび通る際、均等に間隔を開けることを可能にする。しかし、別の実施形態では、連続流チューブ開口のアレイは下流で合流して直列の単一の連続流チューブとなることができ、それによって「直列」マニホールドを定義する。有利なことに、この実施形態では液体試料は同時に負荷されうる。
【0082】
代替的な一態様では、低圧試料負荷ポートが、高圧連続流系での使用のために提供される。この態様では、一対の間隔を開けたチューブが提供され、それは一対の間隔を開けた回転プレートの間に置かれ、回転ステージを定義する。一つの位置では、チューブのうち一つが大気に開放され、一方でもう一つが高圧連続流チューブと接続されている。大気に開放されているチューブは流動キャリヤーを含み、および液体試料を受容しうる。一旦液体試料が負荷されれば、ステージが回転され、そのため大気に開放されているチューブが「接続」に切り替えられ、もう1つのチューブを後の液体試料を受容するために使用可能に残す。その過程は次いで反復可能である。このポート配置は使い捨てチップを用いる試料導入を提供し、および突き刺し可能なセプタムが無いためニードルシリンジ装置は必要無く、およびしたがって試料交差汚染の可能性が低減されることが理解される。
【0083】
本発明に記載のポートは多数の型の連続流装置に適応可能となることが理解される。もちろん、連続流チューブの出口へ、高圧ポンプによって液流を「押す」よりもそこへ液/液体を引くために吸引力を加える必要がある。しかし、真空ポンプは相対的に一般的でおよび安価な実験装置であり、連続流チューブの出口へ吸引力を提供するように相対的に容易に適応されうるため、出願者は、既存の連続流系を本発明の装置で改変するのに伴うコストは相対的に小さいと考える。
【0084】
一実施形態では、本発明は吸引力で動作する任意の連続流装置に適する。たとえば、それはPCT公開番号WO03/016558に記載される連続流装置との使用に適応されうる。WO03/016558によると、複数の液体試料によって割り込まれる流動キャリヤー流が、複数の異なる温度帯を有する円筒形の熱交換器の周りに巻かれた連続流チューブを通って過圧下でポンプされる。温度帯は、核酸のその構成鎖への変性;核酸中の相補配列へのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング;および新しい核酸鎖の合成を提供するように選択される。連続流チューブを通って流れる液体試料は、目的レベルの増幅が達成されるまで、これらのさまざまな温度へ循環的な方法で供される(連続流チューブが熱交換器の周囲に巻き付けられた回数での増幅倍数)。これらのおよび同様の先行技術の装置は、流動キャリヤー流を連続流チューブへ強力に通すための高圧ポンプ、および液体試料を流動キャリヤー流へ導入するための高圧注入ポートの使用を必然的に要する。この機器は相対的に複雑で、高価であり、定期メンテナンスおよび熟練操作者を必要とする。対照的に、本発明は、ここに記載される通りの新規ポートを使用、および連続流チューブを通して流動キャリヤー流を押す/推進する/ポンプするよりも引くことによって、そのような高圧機器の使用を有利に回避する。
【0085】
連続流系を用いてPCRを実施する際、使用する流動キャリヤーは好ましくは、RNAまたはDNAといった外来核酸のような生物汚染物質を欠き、および、連続流チューブを通って流れる液体試料間の汚染を実質的に防ぐように選択される。しかし、本発明では、流動キャリヤーはまた好ましくは、液体試料の物理的性質を維持するように選択される。出願者は、シリコンオイルが本発明に特に適することを見出している。理想的には流動キャリヤーは、約5ないし50センチストークの粘度を有するシリコンオイルである。しかし、油の粘度はこの範囲に限定されないことが理解される。理論に制約されることを望まず、シリコンオイルの適当性は主に相対的に均一な鎖長によると考えられている。したがって、適当な粘度およびこれらの鎖長特性を有する任意の油が流動キャリヤーとして有用である。出願者はまた、好ましいシリコンオイルは中性浮力を液体試料へ提供するもの、すなわち約0.95ないし0.99g/ccの密度を有するものと観察している。しかし、油密度はこの範囲に限定されないことが理解される。
【0086】
好ましくは液体試料は、PCR実験用の成分の混合物である。たとえば、液体試料は、分析または反応すべき試料、および分析または反応に使用される試薬を含む。好ましくは分析または反応すべき試料は、DNAまたはRNA含有試料といった核酸である。試料の他の成分は、典型的には、オリゴヌクレオチドプライマー、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、および少なくとも一つの熱安定性DNAポリメラーゼ、その酵素活性な断片、その酵素活性な誘導体および逆転写酵素を含む。
【0087】
連続流チューブは好ましくは実質的に透明、弾性であり、および疎水性内表面を有する不活性材料から形成される。たとえば、テフロン(Teflon)またはテフゼル(Tefzel)または同様の材料から形成された連続流チューブが好ましい。しかし連続流チューブは、吸引力下で液がそれを通って引かれることを可能にする任意の適当な材料で形成されうる。好ましくはチューブの内径は約1ないし1.6mmである。
【0088】
本発明のサンプルポートが連続流PCR装置に特に適する一方、本発明の装置および方法はこの分野に限定されないことが理解される。たとえば、本発明は、試料蛍光が各サイクルで測定されるタンパク質解離系および等温反応に適する。しかし、本発明は、連続流系への試料の汚染低減した負荷のためのロボット法に特に適する。
【0089】
サンプルポートおよびその連続流系とのその使用を示す図をここで参照し、全体を通じて同じ参照番号は同じ部品をいう。まず図18を参照して、本発明は、ポート1の形の装置、および液体試料2を、連続流チューブ4へ流れ込みおよびそれを通って流れる流動キャリヤー3流へ導入するための方法を提供する。連続流チューブ4は好ましくはテフロン(Teflon)から形成され、および出口(図示せず)および流動キャリヤー3流および液体試料2が共に導入される共通の入口5を含む。ポート1は入口5に流動キャリヤー3を連続的に供給するためのリザーバー6を含む。リザーバー6は好ましくは大気へ開放されて構成されるため、流動キャリヤー3流は、重力によって、または出口に十分な吸引力が加えられる際に、連続流チューブ4を通って引かれうる。
【0090】
上記で考察する通り、本発明はPCRを用いる核酸の増幅のための連続流装置に特に適し、およびまたロボット系による自動化高処理量試料取扱に特に適する。典型的には、これらの装置では複数の液体試料2が連続流チューブ4に導入され、そこで液体試料2のそれぞれが、液体試料2間の汚染を防ぐために、ある量の流動キャリヤー3によって分離される。先行技術の装置では、この液体試料2および流動キャリヤー3の流れは、連続流チューブ4を通ってポンプされ、および連続流チューブ4は適当な熱交換器7によって提供される少なくとも1つの温度帯に曝露される。しかし、この態様の本発明では液体試料2および流動キャリヤー3の流れは、たとえば、真空瓶型の配置8によって、連続流チューブの出口に吸引力を加えることによって連続流チューブ4を通って引かれうる。液体試料2はPCR実験様の液体の混合物であることができ、および流動キャリヤー3は、たとえばRNAまたはDNAのような核酸といった外来性生物汚染物質を含まない油といった疎水性液である。
【0091】
図18をまた参照して、リザーバー6は好ましくは中心が先細の基部9を含む。連続流チューブ入口5はリザーバー6に入った流動キャリヤー3の容積内に沈み、および上から液体試料2を受容するために垂直に構成される。堰10が流動キャリヤー3のレベルを維持するために提供される。リザーバー6の表面11は大気圧に開放され、および蠕動ポンプのようなポンプ(図示せず)がリザーバー6に流動キャリヤー3を入口12を通って供給する。ウェル14内の流動キャリヤー3のオーバーフロー13はリサイクルのためにポンプに戻される。
【0092】
図18から20をここで参照して、本発明の方法は、まず連続流チューブ4を流動キャリヤー3の入ったリザーバー6へ接続しおよび吸引力を出口に加え、そのため流動キャリヤー3が連続流チューブ4を通って均一に引かれるようにすることを含む。液体試料2が次いで連続流チューブ4へ、ピペット16のチップ15を連続流チューブ入口5の上に配置しおよび液体試料2約10(Lを分注することによって導入される。シリコンオイル3中へ分注される水系液体試料2は実質的に球形である。好ましくはピペット16のチップ15は液体試料2の球と接触したままであり、球を連続流チューブ入口5へ操作することを助け、および球がリザーバー6の壁へ「落ちる」ことを防ぐ。流動キャリヤー3の連続流チューブ入口5への流れがあるため、液体試料2の球はそこで入口5へ「発射」され(図20参照)、そこから連続流チューブ4内へ、出口に加えられる吸引力によって引き込まれる。
【0093】
上記で考察する通り、流動キャリヤー3が連続流チューブ4を通って流れる液体試料2間の汚染を防ぐ一方、本出願者は、流動キャリヤー3はまた液体試料2の物理的性質を維持するように選択されるべきであると判断している。説明すると、流動キャリヤー3は好ましくは、約5ないし50センチストークの粘度を有し、および約0.98g/ccの密度を有しそれによって中性浮力を液体試料2へ提供するシリコンオイルである。出願者は、正しくない油が用いられる場合、液体試料2の球はリザーバー6の壁へ「落ちる」および壁に付着/留まるようになる傾向があることを見出している。さらに、球が下降するのが速すぎる場合、球は連続流チューブ入口5の近くに「引っ掛かり」および連続流チューブ4に完全に引き込まれない可能性がある。
【0094】
ここで図21を参照すると、一対の試料チューブ17、18が代替的なポート配置に提供される。試料チューブ17、18は、一対の間隔を開けた平行プレート19の間に置かれ、回転ステージを定義する。試料チューブ17のうちの一つはポンプから流動キャリヤー3で連続的に満たされ、一方でもう一つの試料チューブ17は液体試料2を大気圧にて受容するために空いている。一旦液体試料2が試料チューブ18に負荷されると、チューブ18は次いで回転ステージ20の回転によって「接続」に切り替えられ、それによってi液体試料2を連続流チューブ4へ導入する。試料チューブ18(「接続」に今切り替えられた)で「置き換えられた」試料チューブ17はしたがって、後の液体試料2を受容するために使用可能である。
【0095】
高処理量用途のための代替の構成では、複数の核酸増幅を同時に実施するために、複数の連続流チューブ4が提供されうる。連続流チューブ入口5は好ましくはリザーバー6内で間隔を開けてアレイとなる。この実施形態はロボット試料取扱に繋がり、それによってロボット系が複数の液体試料2を複数の連続流チューブ入口5へ導入できる。代替的に、連続流チューブのアレイが下流で平行構成で合流して単一の連続流チューブ1となることができ、それによって「平行」マニホールドを定義する。この実施形態では、液体試料2はマニホールドの一方の端から他方の端へ連続的に負荷され、それによって、液体試料2が連続流チューブ4に引き込まれおよび通る際、均等に間隔を開けることを可能にする。別の実施形態では、連続流チューブ開口5のアレイは下流で合流して直列の単一の連続流チューブ4となることができ、それによって「直列」マニホールドを定義する。理解される通り、この実施形態では液体試料2は同時に負荷されうる。
【0096】
本発明に記載のサンプルポートは、多数の種類の連続流装置に容易に適応可能である。ポート自体以外に、これらの既存の装置に対する唯一の実質的な変化は、重力による供給が不十分である場合に、液体流を高圧ポンプによって「押して」通すよりも液をそれを通って引くための、連続流チューブの出口への吸引力の提供である。吸引力は、必要な場合は、標準的な真空ポンプなどによって供給されうる。
【0097】
本発明はここで下記の実施例を参照して説明され、実施例はすべての点で説明であっておよび非制限的であると考えられるべきである。
【実施例】
【0098】
実施例1:試料注入(正に加圧された系)
本発明の重要な一態様は、汚染無しの試料注入、すなわち、水系試料が油の流れを中断することなしに、および一つの試料由来の蛍光が次を汚染することなしに、試料が装置を通過する際に試料を完全に分離する能力である。実際綿ではステンレス鋼シリンジの内側および外側を洗浄、次いで試料を注入し、次いでさらに洗浄段階を行うことが重要である。たとえば、長さ300mmのステンレス鋼針をCASロボットヘッドに取り付け、および試料を回収および負荷するのに用いる。汚染を最小化するため、好ましくは針の内容積は試料体積より大きい。これらの実施形態では、針の内容積は約8μLであり、およびそのため、試料が針の後ろからおよびシリンジバレル内へ引き出されることなく、最大5μLの試料が安全に負荷されうる。負荷シリンジ系はミリQ水でパージされ、および試料は下記の通り針へ負荷される:
1) 油2μLを負荷
2) 試料5μLを負荷
3) 針の外側を「噴水器」で洗浄
4) 油2μLを負荷
油は固定チューブから負荷されるが、しかし、代替的な実施形態では針の外側の「噴水器」洗浄の必要を無くすために、「油噴出器」を用いることができる。
5) 8μLを系の負荷ポートに負荷。
6) 針を負荷ポートから除去。
7) 針の内側および外側を洗浄するため、針を水100μLでパージ。
8) 15〜30秒待つ
9) InjectミリQ水20μLを負荷ポートに注入。
10) 15〜30秒待つ
11) 1)を繰り返す
【0099】
実施例2:反応チューブのリアルタイム監視
反応チューブを通る試料の連続スキャンから組み立てられたラスターイメージを提供する図15を参照する。蛍光がグレースケール密度増加で示される横線は各スキャンを表す。図の数字はチューブ内を移動する3つの試料を特定する。試料中の蛍光が発色した後の最後の数回転だけが示される。
【0100】
図15に示されるデータは、試料の相対強度がチューブの回転数に対してプロットされる図16へ変換されうる。図16に示されるデータは、フロー装置を通過する試料中の蛍光変化の動的分析を可能にする。この特定の実施例では、試料C2、C4およびC6は使用した特定のアンプリコンについてのDNAテンプレートを含み、および交互の試料C1、C3、C5およびC7はテンプレートを含まなかった。
【0101】
実施例3:DNA融解検出試験
テンプレートあり(閾値を超える曲線)およびテンプレート無し(閾値を超えない曲線)で分析された試料のDNA融解曲線を示す図17を参照する。産物が融解する温度は、実質的に正しい産物が生じていることの確認として使用されうる。
【0102】
実施例4:大気圧サンプルポート(「無汚染」試料インジェクター)
本発明のサンプルポートの使用は、汚染の無い試料適用のための改善された方法および、試料を注入するために容易に滅菌されうるおよび必要に応じて試料適用後に各チップが廃棄されうる標準ピペットチップの使用を可能にする。
本発明に記載のサンプルポートは、内径1.0mm、外径1.6mm、および長さ約15mのETFE(テフゼル(Tefzel))チューブに滑らかに接続された。水と同様の密度および粘度5センチストークのシリコンオイルを引いた。この油は重力の作用下でチューブを通って流れるのに十分であり、および油は注入ポートが連続流チューブの出口より約50cm高い場合に100μL/分で流れた。水と同様の密度および粘度50センチストークのシリコンオイルを引いた場合は、200μL/分流速を達成するためにはチューブ出口に20kPaの真空を加える必要があった。
【0103】
界面活性剤を含む市販のPCR緩衝液およびTAQが供給される。この界面活性剤はDNAを流れの過程の間に水相から油相へ移動させる原因になる。PCR陽性および陰性対照を分析することは、陽性の後約20サイクルの陰性試料の汚染を結果として生じる(すなわち百万分の1)。典型的には10億分の1レベルの増幅が達成されるため、このレベルの汚染はPCR用途には許容されない。
【0104】
別の一連の実験において、各試料を下記の通りミリQ水でのパージ後に負荷した:
1) 水5μLを負荷
2) 試料5μLを負荷
3) 1)を繰り返す
【0105】
各PCR反応試料間に純水試料を注入することによって(すなわち「洗浄」液)、サイクル3で増幅された陽性試料および3サイクルまで分析された陰性試料の間に汚染は観察されなかった。注入された試料はH2O−陽性−H2O−陰性−H2O−陽性...など)であった。したがって、各試料間の水注入は10億分の1よりも良い汚染レベルを提供する。
【0106】
本発明は特定の実施例を参照して説明されているが、本発明は多数の他の形で実施されうることが当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は本発明に記載のサーモサイクラーの透視平面図である。
【図2】図2は図1に示すサーモサイクラーの透視裏面図である。
【図3】図3は図1に示すサーモサイクラーの平面図であり、トンネルを貫通している反応チューブの一部を示す。
【図4】図4はPCR装置に組み込まれて示されるサーモサイクラーの透視図である。
【図5】図5は図4と同様の図であるが、熱交換器環の上に取り付けられた回転可能な走査型検出器を含む。
【図6】図6は図5と同様の、走査型検出器が90(回転して示される図である。
【図7】図7は図6と同様の、検出チャンネルを示す図である。
【図8】図8は図7と同様の図である。
【図9】図9はPCR装置に組み込まれて示されるサーモサイクラーの、内側熱交換器が明確にするため透過された透視平面図である。
【図10】図10は図9に示すPCR装置の側面図である。
【図11】図11は図10と同様であるが、外側熱交換器が明確にするために除去されおよび内側熱交換器が45°回転ミラーおよび反応チューブの光学測定を可能にするためのスロットを示すために透過された図である。
【図12】図12はダイクロイックミラーおよび付属の光学素子を示す図9の透視裏面図である。
【図13】図13は図12に示すダイクロイックミラーおよび付属の光学素子の透視図である。
【図14】図14は45°回転ミラー装置の透視図である。
【図15】図15は反応チューブを通過する試料の連続スキャンから組み立てられたラスターイメージである。
【図16】図16は相対強度対チューブの回転数のグラフに変換された図15に示すデータである。
【図17】図17はテンプレートあり(閾値を超える曲線)およびテンプレート無し(閾値を超えない曲線)で分析された試料のDNA融解曲線を示す。
【図18】図18は本発明の第5の態様に記載の装置の側面図であり、液体試料を連続流チューブ入口へ導入する前を示す。
【図19】図19は図1と同様の図であるが、流動キャリヤーのリザーバーへ導入される液体試料を示す。
【図20】図20は図2と同様の図であるが、連続流チューブ入口に引き込まれる液体試料を示す。
【図21】図21は代替的な装置の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立して規定の温度を維持し、それによって対応する複数の温度帯を規定するための、複数の入れ子式の熱交換器を含み;前記熱交換器は反応チューブを受容するように適合され、そのため前記反応チューブは前記熱交換器と熱伝導連絡にあり、それによって前記熱交換器と接する反応チューブを通過する液はその温度帯を循環的に通過する、サーモサイクラー。
【請求項2】
請求項1に記載のサーモサイクラー装置を用いる、PCRまたはLCR形式で核酸を増幅する方法。
【請求項3】
請求項1に記載のサーモサイクラー装置を用いる、核酸融解検出検定を実施する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の装置を用いて調製された核酸。
【請求項5】
出口および、キャリヤー流および液体試料の両方が導入される共通の入口を有する連続流チューブを通って流れる流動キャリヤー流へある量の液体試料を導入するためのサンプルポートであって、下記を含む前記ポート:前記流動キャリヤーを連続的に前記入口に供給するためのリザーバー、前記入口上に実質的に一定レベルの流動キャリヤーを維持するように適応された前記リザーバー、および前記リザーバーは前記連続流チューブの前記入口と滑らかに接続することができ、そのため、使用時に、前記リザーバーが実質的に大気圧である場合、および前記流動キャリヤーが、導入される液体試料の物理的形状を維持するのにその性質が十分であるように選択される場合、前記流動キャリヤー流および前記液体試料は前記連続流チューブを通って引かれる。
【請求項6】
液体試料が水系試料である、請求項5に記載のサンプルポート。
【請求項7】
キャリヤー液が疎水性液体である、請求項5または請求項6に記載のサンプルポート。
【請求項8】
疎水性液体が油である、請求項7に記載のサンプルポート。
【請求項9】
油がシリコンオイルまたはシリコンを基礎とする油である、請求項8に記載のサンプルポート。
【請求項10】
出口および、キャリヤー流および液体試料の両方が導入される共通の入口を有する連続流チューブを通って流れる流動キャリヤー流へある量の液体試料を導入するための方法であって、下記の段階を含む前記方法:請求項5に記載のサンプルポートを提供;前記連続流チューブの前記入口を前記リザーバーと滑らかに接続;前記流動キャリヤーを前記リザーバーへ導入および前記液体試料を前記流動キャリヤーへ導入、前記流動キャリヤーは、導入される液体試料の物理的形状を維持するのにその性質が十分であるようにおよび前記リザーバーが実質的に大気圧である場合に前記流動キャリヤー流および前記液体試料が前記連続流チューブを通って引かれるように選択される。
【請求項11】
出口および、キャリヤー流および液体試料の両方が導入される共通の入口を有する連続流チューブを通って流れる流動キャリヤー流へある量の液体試料を導入するための方法であって、下記の段階を含む前記方法:請求項5に記載のポートを提供;前記連続流チューブの前記入口を前記リザーバーと滑らかに接続;前記流動キャリヤーを前記リザーバーへ導入;液体試料ディスペンサーを前記リザーバーに入った前記流動キャリヤーに浸漬;前記液体試料を隣接する前記入口へ分注、および任意に前記分注された液体試料を前記液体試料ディスペンサーで、前記分注された液体試料が前記入口へ導入されおよび前記連続流チューブを通って引かれるように操作、前記流動キャリヤーは、導入される液体試料の物理的形状を維持するのにその性質が十分であるようにおよび前記リザーバーが実質的に大気圧である場合に前記流動キャリヤー流および前記液体試料が前記連続流チューブを通って引かれるように選択される。
【請求項12】
請求項5に記載のサンプルポートを含む連続流装置。
【請求項13】
核酸増幅反応を実施するためのサーモサイクリング装置である、請求項12に記載の連続流装置。
【請求項14】
請求項13に記載の連続流装置を用いる、PCRまたはLCR形式で核酸を増幅する方法。
【請求項15】
反応チューブ内で起こっている反応の経過を監視するための走査型検出器をさらに含む、請求項1に記載のサーモサイクラー。
【請求項16】
反応が蛍光によって測定される、請求項15に記載のサーモサイクラー。
【請求項17】
反応チューブ内で起こっている反応を直接測定するため、走査型検出器が、内側熱交換器環の上または下または内部に軸方向に取り付けられた回転自在ユニットを含む、請求項15または請求項16に記載のサーモサイクラー。
【請求項18】
反応チューブが内側および外側熱交換器の間のギャップでおよび/またはのぞきスロットを通して直接測定される、請求項17に記載のサーモサイクラー。
【請求項19】
反応チューブ内で起こっている反応の経過を監視するため、入れ子式の熱交換器の間のギャップの上に複数の検出器が取り付けられ、露出した反応チューブの数と同数の検出器が提供される、請求項15または請求項16に記載のサーモサイクラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2009−525032(P2009−525032A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552647(P2008−552647)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000108
【国際公開番号】WO2007/087690
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(508233630)コーベット ライフ サイエンス プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】