説明

サーモパイル型赤外線検出装置

【課題】高密度ポリエチレンからなるキャップを具備したサーモパイル型赤外線検出装置に於いて、赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップ測温用サーミスタをサーモパイル型赤外線検出装置へ具備する為の接着剤固定等の組み込み作業が追加される事により、サーモパイル型赤外線検出装置自身のコストアップにつながっている。
また、キャップ測温用サーミスタの組み込み性からリード線を細くする必要があり、組み込み作業の難易度が高いことからコストアップにつながっている。
【解決手段】キャップと測温用サーミスタの組み込み作業となる接着剤固定を廃止し、リード線を太くする事で、予めリードフォーミングされた測温用サーミスタをキャップ成型時に一体成形する事で測温用サーミスタ付きキャップとしてサーモパイル型赤外線検出装置へ具備する事を特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンフィルター又はシリコンレンズを有したサーモパイル型赤外線検出装置の前面に、意匠面となる高密度ポリエチレンからなるキャップを具備したサーモパイル型赤外線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられている一般的なサーモパイル型赤外線検出装置は、周辺の環境温度変化時の検出温度精度を向上させる為、サーモパイル型赤外線検出装置にアルミニウム、銅等からなるヒートシンクを具備する事でサーモパイル型赤外線検出装置の熱容量を増加させ、周辺の環境温度変化に対して、サーモパイル型赤外線検出装置自身の温度変化を抑制させる事により検出温度精度を向上している。
【0003】
また別の手法として、サーモパイル型赤外線検出装置の前面に赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップを具備し、キャップ内部の空気層による断熱効果によりサーモパイル型赤外線検出装置の温度変化を抑制し、サーモパイル型赤外線検出器内に搭載の自己温度測温用のサーミスタとは別に具備させた測温用サーミスタを高密度ポリエチレンからなるキャップに接着剤にて固定接触させ測温する事により、サーモパイル型赤外線検出装置の検出温度へ補正を行う事を特徴としている。
【特許文献1】特願2005―336148号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に従来のアルミニウムあるいは銅からなるヒートシンクを具備したサーモパイル型赤外線検出装置の斜視方向概略図を示す。実装部品については、図が煩雑となる為、割愛した。図4に内部断面構造概略図を示す。
サーモパイル型赤外線検出装置周辺の環境温度変化時の検出温度精度を向上させる為に、サーモパイル型赤外線検出装置へ具備されるアルミニウムあるいは銅からなる金属製のヒートシンクにより熱容量を増加し、サーモパイル型赤外線検出装置自身の温度変化を抑制し、熱伝導性の高い金属材料を使用する事により、サーモパイル型赤外線検出装置自身の温度バラツキを抑制する事で対策として施されてきた。
しかしながら、アルミニウムあるいは銅からなる金属製のヒートシンクは、材料自身が熱伝導性の高く希少価値のある金属である事と、目的の形状に合わせ加工を施す必要がある事、および、サーモパイル型赤外線検出装置へ搭載する為の組み込みの作業性が追加される事により、サーモパイル型赤外線検出装置自身のコストアップにつながっている。
【0005】
一方、図5は従来の高密度ポリエチレン製キャップ及び測温用サーミスタ搭載型のサーモパイル型赤外線検出装置の概略図を示す。図6に測温用サーミスタの接着剤固定の概略図を示す。
この手法においても、赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップ測温用サーミスタをサーモパイル型赤外線検出装置へ具備する為の接着剤固定等の組み込み作業が追加される事により、サーモパイル型赤外線検出装置自身のコストアップにつながっている。
また、キャップ測温用サーミスタの組み込み性からリード線を細くする必要があり、組み込み作業の難易度が高いことからコストアップにつながっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップ測温用サーミスタに於ける測温構造に於いて、キャップと測温用サーミスタの組み込み作業となる接着剤固定を廃止し、リード線を太くする事で、予めリードフォーミングされた測温用サーミスタをキャップ成型時に一体成形する事で測温用サーミスタ付きキャップとしてサーモパイル型赤外線検出装置へ具備する事を特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、サーモパイル型赤外線検出装置に於いて、赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップ測温用サーミスタをキャップ成型時に一体成形した測温用サーミスタ付きキャップとする事で、サーモパイル型赤外線検出装置前面の高密度ポリエチレンからなる意匠キャップの温度変化を検出する事で、サーモパイル型赤外線検出装置の検出温度を補正する構造としながら、キャップと測温用サーミスタの組み込み作業となる接着剤固定を廃止できる事でコストダウンが可能となる。
又、測温用サーミスタのリードを太く、予めフォーミングする事で、回路基板へ組み込みを簡素化し作業性を向上させる事でコストダウンが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップを具備する測温用サーモパイル型赤外線検出装置に於いて、リード線を太くしリードフォーミングされた測温用サーミスタをキャップ成型時に一体成形した測温用サーミスタ付きキャップとして具備した形状により提供される。サーモパイル型赤外線検出装置として、図1に斜視方向概略図を示す。図2に測温用サーミスタの固定構造概略図を示す。
【実施例1】
【0009】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。図1は、本発明のもっとも基本的な実施例であり、赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップを具備するサーモパイル型赤外線検出装置に於いて、リード線を太くする事で、予めリードフォーミングされた測温用サーミスタをキャップ成型時に一体成形した測温用サーミスタ付きキャップとして具備した形態を示すものである。図2に測温用サーミスタの固定構造概略図を示す。
【0010】
本実施例では、赤外線を受光することにより対象物の放射赤外線量を測定し対象物の温度を検出する事を可能にするサーモパイルチップへの赤外線入射量を対象物投影エリアより規定した赤外線検出領域を光学設計により導くシリコン等からなるフィルターまたは平凸レンズを使用し、赤外線透過窓を有する金属製CANケース、サーモパイルチップを電気的接続したリード端子を備えたヘッダーと共に外来からの環境的変化や電磁障害を防止するためにハーメチックシールとした一般的な構造であるサーモパイルセンサからなるサーモパイル型赤外線検出装置の前部へ、赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップ成型時に、リード線を太くする事で、予めリードフォーミングされた測温用サーミスタをキャップ成型時に一体成形した測温用サーミスタ付きキャップとして具備したサーモパイル型赤外線検出装置の構造となっている。
【0011】
サーモパイル型赤外線検出装置が温度計測機器に組み込まれる場合、通常各用途に応じて測定対象面から所定高さ位置に、対象面を望む規定された角度で保持使用される。図10は、ある規定設置位置から2ヶの赤外線検出域を有し、投影される検出域となる位置に光学設計配列されたサーモパイルチップを設置した2エリア検出のサーモパイル型赤外線検出装置を、所望の赤外線検出域測定面にて投影される検出域分布を模視した概略図である。
【0012】
また、サーモパイル型赤外線検出装置として、対象物の放射赤外線量を測定し対象物の温度を検出する事を可能にする前記の2エリア検出のサーモパイルチップのみならず、赤外線受光部を1素子有するのシングル型サーモパイル型赤外線検出装置、赤外線受光部をライン状に配列したインライン型のサーモパイルアレイ型赤外線検出装置、赤外線受光部をマトリックス状に配列したマトリックス型のサーモパイルマトリックス型赤外線検出装置の温度検出器のように赤外線受光部を1〜16素子有する多素子型サーモパイル型赤外線検出装置に於いても、本発明と同様に投影される各検出域の分布を維持しながら、サーモパイル型赤外線検出装置周辺の環境温度変化時の検出温度精度を向上する事が可能である。
【0013】
図11は、実施例1で用いた形態のサーモパイル型赤外線検出装置の周辺環境温度変化時に於けるキャップ測温用サーミスタ温度をグラフ化したものである。
周辺環境温度変化追従グラフ、従来のキャップ測温用サーミスタ温度グラフ、実施例1のキャップ測温用サーミスタ温度グラフとの比較に於いて、従来の手法と比較に於いても検出温度性能として同等である事を確認した。
【0014】
図12は、実施例1で用いた形態のサーモパイル型赤外線検出装置の周辺環境温度変化及び対象物温度変化時に於ける検出温度をグラフ化したものである。
周辺環境温度変化追従グラフ、サーモパイル型赤外線検出装置前面に設置された対象物の温度変化グラフ、実施例1のサーモパイル型赤外線検出装置の検出温度グラフ、実施例1を施す前のサーモパイル型赤外線検出装置の検出温度グラフとの比較に於いて、検出温度性能の向上を得た事を確認した。これは、従来の手法と比較に於いても検出温度性能として同等である事を確認した。
【実施例2】
【0015】
図7は、実施例1で用いた赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップを具備するサーモパイル型赤外線検出装置に於いて、リード線を太くする事で、予めリードフォーミングされた測温用サーミスタをキャップ成型時に一体成形した測温用サーミスタ付きキャップとして具備した形態の別構造概略図を示すものである。
本実施例に於いても実施例1の図10と同様の赤外線透過領域を得る事が可能であり、また、図11の実施例1のキャップ測温用サーミスタ温度グラフと同等の検出温度性能である事を確認した。また、図12の実施例1のサーモパイル型赤外線検出装置の検出温度グラフと同等の検出温度性能である事を確認した。
【実施例3】
【0016】
図9は、実施例1で用いた赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップの温度を測温する際に必要な、リード線を太くする事で、予めリードフォーミングされた測温用サーミスタを、キャップの成形とは別に高密度ポリエチレンにて予めパーツ成形する事で、パーツ成形測温用サーミスタとし、別途成形のキャップと超音波溶着する事により測温用サーミスタ付きキャップして具備する形態の構造概略図を示すものである。図8にキャップと超音波溶着前のパーツ成形測温用サーミスタの概略図を示す。
【0017】
本実施例に於いても実施例1の図10と同様の赤外線透過領域を得る事が可能であり、また、図11の実施例1のキャップ測温用サーミスタ温度グラフと同等の検出温度性能である事を確認した。また、図12の実施例1のサーモパイル型赤外線検出装置の検出温度グラフと同等の検出温度性能である事を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による最も基本的な実施例である、赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップを具備するサーモパイル型赤外線検出装置に於いて、リード線を太くする事で、予めリードフォーミングされた測温用サーミスタをキャップ成型時に一体成形した測温用サーミスタ付きキャップとして具備する形態の斜視方向概略図である。
【図2】図1の測温用サーミスタの固定構造概略図である。
【図3】従来のヒートシンク搭載型のサーモパイルセンサ型赤外線検出装置の斜視方向概略図である。
【図4】図3の内部構造断面図である。
【図5】従来の高密度ポリエチレン製キャップ及び測温用サーミスタ具備のサーモパイルセンサ型赤外線検出装置の斜視方向概略図である。
【図6】図5の測温用サーミスタの接着剤固定の概略図である。
【図7】実施例2の測温用サーミスタの固定構造概略図である。
【図8】実施例3の測温用サーミスタ付きキャップの構造概略図である。
【図9】図8のキャップと超音波溶着前のパーツ成形測温用サーミスタの概略図である。
【図10】サーモパイル型赤外線検出器における投影される検出域分布を模視した概略図である。
【図11】環境温度変化時のキャップ測温用サーミスタ温度追従グラフである。
【図12】環境温度変化および対象物温度変化時の温度追従確認グラフである。
【符号の説明】
【0019】
1 高密度ポリエチレン製キャップ
2 測温用サーミスタ
3 太くする事で、予めリードフォーミングされた測温用サーミスタリード
4 アンコーティング平凸シリコンレンズ
5 金属CANケース
6 ヘッダー
7 PCB基板
8 金属製ヒートシンク
9 サーモパイルセンサ
10 サーモパイルセンサリード
11 シリコン系接着剤
12 従来の測温用サーミスタリード
13 2エリア検出のサーモパイル型赤外線検出装置
14 投影される検出域
15 従来のキャップ測温用サーミスタ温度グラフ
16 実施例1のキャップ測温用サーミスタ温度グラフ
17 通常のサーモパイルセンサ型赤外線検出装置の検出温度グラフ
18 実施例1を施したサーモパイルセンサ型赤外線検出装置の検出温度グラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップ温度を測温する際に必要な測温用サーミスタを、接着剤を使用しないでキャップの成形と同時に一体成形し、測温用サーミスタ付きキャップとして具備する事を特徴とするサーモパイル型赤外線検出装置。
【請求項2】
請求項1の赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップの温度を測温する際に必要な測温用サーミスタのリード端子部を太くする事で、予めリードフォーミングした状態にて組み込みを行う事を特徴とするサーモパイル型赤外線検出装置。
【請求項3】
請求項1の赤外線透過性の高密度ポリエチレンからなるキャップの温度を測温する際に必要な測温用サーミスタを、キャップの成形とは別に高密度ポリエチレンにて予めパーツ成形測温用サーミスタとし、別途キャップと超音波溶着する事により測温用サーミスタ付きキャップとして具備する事を特徴とするサーモパイル型赤外線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−91368(P2010−91368A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260633(P2008−260633)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】