説明

サーモメカニカルパルプ製造装置および方法

【課題】高品質サーモメカニカルパルプを低エネルギー消費量で製造する簡素化された装置の提供。
【解決手段】スチーム処理された木材チップから相対的に回転する複数のディスクを有するリファイナー中でサーモメカニカルパルプを製造する装置において、加圧スクリュー排出装置16と、高固体コンシステンシーリファイナー供給材料を形成する手段と、一次リファイナー26と、半径方向に延びる内リングと半径方向に延びる外リングとを有する各プレート手段であって、各リングがバーと溝を交互するリファイナー仕事領域を有する各プレート、および前記膨張容積から前記供給材料を受け入れ、次いでディスクの実質的内径箇所の間に前記供給材料を供給するためのリファイナー供給装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース材料、特に木材チップのサーモメカニカルパルプ製造に用いる装置と方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の数十年にわたって、サーモメカニカルパルプ化(TMP)技術で製造されたメカニカルパルプの品質が改善されてきているが、これらのエネルギー集約型技術に要するエネルギーコストが上昇しているので、品質を維持する一方で、エネルギー効率を上げることがますます重要になってきている。本発明者は、アンドリッツ(Andritz)方式 RTS(商標)、RTプレサファイナー(Pressafiner)(商標)、およびRTフィブレーション(Fibration)(商標)プロセス技術に具現化されているように、当該技術水準を進歩させてきている。本発明者は、極めて短い保持時間で高温・高圧の下に供給材料を予熱し、次いでそのような高温・高圧の下に高速回転の相対するディスクの間でリファイニングする新しい運転条件を発見した(特許文献1を参照)。さらなる改良は、予熱の前に供給チップを前処理する方法に関するもので、それは、供給チップを加圧スチーム雰囲気下に調整し、調整されたチップを加圧スチーム雰囲気下に圧縮することによって行われる(特許文献2を参照)。さらに別の改良が、特許文献3に開示されているが、それは、前処理工程から排出された供給チップをフィブリル化せずに繊維化する方法であり、これは、例えば高強度リファイナーに供給する前に、低強度リファイナーで行われる。
【0003】
前述の技術開発過程における基本原理は、チップ材料の軸方向の繊維化分離と繊維化を、パルプを製造するための繊維のフィブリル化と区別し、それぞれを別個の装置で行うというものであった。前者のステップは、比較的低程度の仕事と繊維分離にマッチした低エネルギー消費量によりリファイナーの上流の専用機器内で行われる。一方、高エネルギー消費のリファイナーは、エネルギー効率が劣る繊維分離機能から解放され、全エネルギーをフィブリル化機能に一層効率的に使用することが可能となる。このことは、フィブリル化機能は繊維分離(離解としても知られる)よりも大きなエネルギーを使用しなければならないので、必要なことである。
【0004】
これらの技術開発により、確かにエネルギー効率は、特に高速ディスク(ダブルディスク式リファイナーについては1,500rpm以上、シングルディスク式リファイナーについては1,800rpm以上)を用いる装置においては改良された。しかし、特に高速リファイナーを用いない装置では、長期でのエネルギー効率は、短期ではある程度相殺されていた。それは、一次リファイナーの上流に設置する、比較的高価で、設置面積も大きい機器を必要とするからであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,776,305号明細書
【特許文献2】PCT/US98/14718号明細書
【特許文献3】PCT/US2003/022057号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高品質サーモメカニカルパルプを低エネルギー消費量で製造するための簡素化された装置と方法を提供することである。この簡素化には、加速化された受注とスタートアップを可能にする低コストの装置を提供することが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本質的に、本発明は、高速リファイナーを使用しない装置でも顕著なエネルギー効率を達成し、またリファイナーの上流に必要な機器の範囲と複雑さとを減少する。
【0008】
この目的は、RTS、RTプレサファイナー(Pressafiner)、およびRTフィブレーション(Fibration)プロセス技術の背後にある概念を合成し、簡素化された機器構成を用いることによって達成される。
すなわち、本発明のサーモメカニカルパルプ製造装置は、
スチーム処理された木材チップから回転ディスクリファイナーでサーモメカニカルパルプを製造する装置であって、
スチーム処理されたチップを受け入れる入口端と、飽和スチーム雰囲気で高い機械的圧縮力下に前記スチーム処理されたチップを浸軟し脱水する仕事部と、前記浸軟され脱水されたチップが膨張する排出端とを有する加圧浸軟スクリュー装置と、
前記スクリュー装置の排出端に設けられた手段であって、前記浸軟され脱水されたチップに希釈水を導入し、これによって、希釈水が前記膨張したチップに浸透し、該チップと共に約30〜55%の範囲の固体コンシステンシーを有するリファイナー供給材料を形成するための手段と、
それぞれが仕事プレートを有する、相対的に回転する複数のディスクを有する一次リファイナーであって、前記仕事プレートが相対する同軸関係に配置され、これによって、前記ディスクの内径から前記ディスクの外径に実質的に半径方向外側に延びるリファイナー間隙が規定される一次リファイナーと、
半径方向に延びる離解用の内リングと半径方向に延びるフィブリル化用の外リングとを有する各プレートであって、各リングが内側の供給領域と外側の仕事領域とを有し、前記内リングの仕事領域がバーと溝を交互にする第1パターンで規定され、前記外リングの供給領域がバーと溝を交互にする第2パターンで規定され、前記内リングの仕事領域の前記第1パターンが、前記外リングの供給領域第2パターンの溝よりも相対的に狭い溝を有する各プレートと、
前記供給チップを受け入れ、複数のディスクの実質的に内径箇所の間に前記供給材料を供給するリファイナー供給装置と、
を含むことを特徴とする。
また、本発明のもう一つのサーモメカニカルパルプ製造装置は、
スチーム処理された木材チップから相対的に回転する複数のディスクを有するリファイナー中でサーモメカニカルパルプを製造する装置であって、
スチーム処理されたチップを受け入れるための入口端と、高い機械的圧縮力下に前記チップを浸軟し脱水するための仕事部分と、前記浸軟され脱水され圧縮されたチップが調整されたチップとして、該調整されたチップが膨張している膨張容積に排出される排出端とを有する加圧スクリュー排出装置と、
希釈水を前記膨張容積に導入するための手段であって、これにより希釈水が前記膨張しているチップに浸透し該チップとともに高固体コンシステンシーリファイナー供給材料を形成する手段と、
それぞれがリファイニングプレート手段を有する相対的に回転する複数のディスクを有する一次リファイナーであって、前記リファイニングプレート手段が相対する同軸関係に配置され、これによって、前記ディスクの内径から前記ディスクの外径に実質的に半径方向外側に延びるリファイナー間隙が規定される一次リファイナーと、
半径方向に延びる内リングと半径方向に延びる外リングとを有する各プレート手段であって、各リングがバーと溝を交互するリファイナー仕事領域を有し、前記内リングの仕事領域が相対的に大きいバーと溝とを有し、前記外リングの仕事領域が相対的に小さいバーと溝とを有する各プレート、および
前記膨張容積から前記供給材料を受け入れ、次いでディスクの実質的内径箇所の間に前記供給材料を供給するためのリファイナー供給装置と、
を含むことを特徴とする。
本発明を実施するのに用いられる機器としては、加圧スクリュー排出機(pressurized screw discharger(PSD))と1台以上のリファイナーが必要なだけである。しかし、PSDとこれに関連するリファイニングプロセスには相当程度の部分修正が必要である。
【0009】
加圧スクリュー排出機(PSD)は、木材チップの破壊機能を有する機器の一種(浸軟加圧スクリュー排出機(macerating pressurized screw discharger (MPSD))であり、拡大するルート直径とブローバックバルブ(BBV)を備えたプラグ領域とを有している。MPSDの入口圧は、大気圧から約30psig、好ましくは5〜25psigの範囲にわたり得る。当プロセスのこの機器要素はRTプレサファイナー(Pressafiner)の前処理に用いられるものを模したものである。
【0010】
前記MPSDは、従来のPSDスクリュー機より高い固形分含有量まで脱水するので、通常のリファイニングコンシステンシーを維持するには、より高流量の希釈フローが必要である。
【0011】
一次リファイナー中の繊維化用の内プレート(内リング)は、破壊された木材チップを効果的に供給し、繊維化するように設計されている。当プロセスのこの機器要素はRTフィブレーション(Fibration)を模するために用いられる。
【0012】
一次リファイナー中の高効率の外プレート(外リング)は、製品品質とエネルギー所用値に依存して、供給型(高強度=>最小エネルギー消費量)、抑制型(低強度=>最大強度発現)、またはこれら両極端の型の間の強度レベルに設計される。
【0013】
広い意味では、本発明は木材チップのサーモメカニカルリファイニング方法に関し、この方法は、
チップをスチーム雰囲気に曝し、チップを柔軟化するステップと、
前記柔軟化されたチップを圧縮装置で浸軟し、部分的に離解するステップと、
前記浸軟され、部分的に離解されたチップを、相対するディスクの各々がバーと溝からなる内リングパターンとバーと溝からなる外リングパターンを有する一次回転ディスクリファイナーに供給するステップと、
前記内リングでチップの繊維化を実質的に完結し、得られた繊維を前記外リングでフィブリル化するステップと、
を含むことを特徴とするものである。
【0014】
装置構成としては、内リングが内側供給領域と外側仕事領域、そして外リングが内側供給領域と外側仕事領域を含むことが好ましい。この場合、内リングの仕事領域はバーと溝を交互する第1パターンで規定され、外リングの供給領域はバーと溝を交互する第2パターンで規定される。内リングの仕事領域の第1パターンは、外リングの供給領域の第2パターンの溝より相対的に狭い溝を有する。チップの繊維化は、低強度リファイニングによって内リングの仕事領域で実質的に完結し、一方、繊維のフィブリル化は、狭いプレート間隙で高強度リファイニングを行うことによって外リングの仕事領域で達成される。
【0015】
本発明の木材チップのサーモメカニカルリファイニング方法においては、
チップをスチーム雰囲気に曝し、チップを柔軟化するステップと、 前記柔軟化されたチップを、圧縮して破壊し、脱水して固体コンシステンシー55%以上とするステップと、
前記破壊され、脱水されたチップを約30〜55%の範囲のコンシステンシーに希釈するステップと、
前記希釈された破壊チップを、相対するディスク各々が、バーと溝からなる内リングパターンとバーと溝からなる外リングパターンを有する一次回転ディスクリファイナーに供給するステップと、
前記内リングでチップの繊維化を行い、得られた繊維を前記外リングでフィブリル化するステップと、を含むことが好ましい。
【0016】
圧縮による破壊、脱水および希釈は、すべて一次リファイナーの直ぐ上流の単一の一体化された機器で行うことができ、そして繊維化とフィブリル化とは両機能とも一次リファイナーの相対的に回転する一組のディスクの間で達成される。
【0017】
この新しい簡素化されたサーモメカニカルパルプ(TMP)リファイニング方法は、木材チップの破壊を目的とする加圧スクリュー排出機(PSD)と繊維分離を目的とする内プレートとを結合して行われるもので、従来のTMPパルプ化法に較べてTMPパルプ特性対エネルギー関係を効果的に改良するものであることが示された。
【0018】
この方法により、商業的に利用可能な3つのプロセスである、TMP、RTおよびRTSプロセスに対するパルプ特性/エネルギー関係が改良された。RTおよびRTSと称されるリファイニング構成は、短時間保持と高圧とを特徴とするリファイニングのことで、高圧とは、標準リファイナーディスク速度(RT)又は高速ディスク速度(RTS)において、通常75〜95psigである。
【0019】
内リファイニング領域の離解効率は、より高いリファイニング圧力で改良された。離解レベルは、リファイナーディスク速度の増加につれてさらに増加した。
【0020】
抑制 (holdback) 型の外リングで製造されたサーモメカニカルパルプは、排出(expel)型の外リングで製造されたパルプに較べて高度な総括強度特性を有していた。後者の構成では、所与のフリーネス(freeness)に対して必要とされるエネルギーは少なく、未蒸解繊維束も少量であった。
【0021】
本発明の方法を排出型の外プレートと組み合わせて用いた場合の所与のフリーネスに対する比エネルギーの節約は、比較対照のTMPパルプと比較すると、TMP、RTおよびRTSシリーズに対してそれぞれ15%、22%および32%であった。
【0022】
本発明の方法を重亜硫酸処理法と組み合わせて用いると、パルプ強度特性が改良され、パルプ白色度が著しく増加した。
【0023】
より高流量の希釈フローを用いれば、MPSDタイプのPSDから排出される高濃度の固形物も有効に補償される。希釈/含浸装置は、MPSDから排出されるチップの完全浸透を保証するようなものでなければならない。選択肢の一つとしては、分離して希釈するという方法であり、これは希釈液をMPSD排出部とリファイナー内部双方に加えるものである。
【0024】
本明細書においては、浸軟とは、圧縮剪断力の下にある固形物に関連する物理的メカニズムとして解釈すべきである。木材チップをスチーム加圧のスクリュー装置などで浸軟すると、チップ材は細胞粒境界を損傷せずに破壊され、相当程度ではあるが完全ではない(例えば、最大約30%の)繊維の軸方向分離が生じる。浸軟の大部分は、羽根部分の後のプラグ領域で生じるが、ある程度の初期の浸軟はプラグ領域の前の羽根部分にも生じ得る。プラグ領域の狭窄部分により、圧縮状態が増し、初めの羽根部分にもある程度の浸軟が生じ得る。
【0025】
本明細書において希釈液とも称されている含浸液(水および/または化学薬品)は、膨張した木材組織への液の取り込みが直ちに行われるように、浸軟スクリュー排出機の排出口の膨張領域または膨張室に直接添加される。破壊された木材チップは、最適パルプに好ましいリファイニングコンシステンシー範囲となるように、液体で十分に飽和されなければならない。液の取り込みの全てまたは殆どは、きつく圧縮されたチップが排出されるMPSDの排出口で行われる。別の態様の一つでは、希釈液は分割して供給され、一部の希釈液はMPSDスクリュー機排出口に、残りの希釈液はリファイナーの内リングと外リングとの間に導入される。後者の希釈液導入構成が有用なのは、MPSD排出口で液の過度の飽和が観察されているが、フィブリル化リファイニングをさらに最適化するために、希釈液を(内リングの後に)追加するのが有利であるときである。
【0026】
実施例として挙げるのであって、限定するものではないが、プラグ−パイプ領域でのコンシステンシーは、一般に58%〜65%の範囲であり、含浸/希釈が行われる膨張領域では約30%〜55%の範囲である。チップ材は、BBVのシールされていない領域全体(普通は完全シール状態ではないので、圧力は膨張領域と大略同じ)とシールされていない領域出口とリファイナーリボンフィーダー入口とではこのコンシステンシー範囲にある。ここは、蒸発が起きて加圧されている雰囲気ではあるが、目的は、リファイナープレート間への導入に用いられるリファイナーフィーダーに送るときに必要な最適リファイニングコンシステンシー、普通は約35%−55%を達成することである。
【0027】
大抵の場合、外リング(フィブリル化)の仕事領域のバー/溝は、内リング(離解)の仕事領域より密の構造になっていなければならない。メカニカルパルプ繊維を製造するには、繊維は先ず離解(木質構造から分離)され、次いでフィブリル化(繊維壁膜の除去)が行われなければならない。本発明の重要な構成は、内リングの仕事領域が主に離解を行い、外リングの仕事領域が主にフィブリル化を行うということである。本発明の新規性の重要な観点は、これらの二つのメカニズムで行われる分離を単一の機械で最大化することによって、繊維長さとパルプ特性に与える所要エネルギー関係をより効果的に最適化することである。内リングにおける離解作用は比較的大きなサイズの破壊されたチップに対して行われるから、関連する仕事領域のバー/溝のパターンは、あまりに密な構造ではあってはならない。そうでなければ、破壊されたチップが、内リングの溝を適切に通過して、均一に分散されなくなるからである。内リングから外リングの供給領域に受け入れられ、外リングの仕事領域に分散される際の離解されたパルプは、比較的細かいサイズのものなので、外リングの仕事領域のバー/溝パターンは、内リングよりも密なパターンである。本発明の別の利点は、より均一な分散(すなわち、リファイナープレート全体に対する優れた繊維被覆性)が、従来のプロセスに比べて内リングにも外リングにも得られることである。優れた供給が行われるということは、供給が安定して行われることを意味し、安定供給はリファイナー負荷変動を減少させ、負荷変動減少は、より均一なパルプ品質の維持につながる。
【0028】
本発明の重要な利点は、保持時間がプロセスの各機能ステップで最小限に抑えられることである。これが可能なのは、繊維材がプロセスの各ステップで十分にサイズ減少されるので、操作圧力の作用により、繊維を所要のレベルまで瞬時に加熱し、柔軟化し得るからである。このプロセスは、次の3段階の機能ステップ、すなわち、(1)破壊されたチップを形成するステップと(2)破壊されたチップを離解するステップと(3)離解されたチップをフィブリル化するステップと含むと考えられる。そのための機器は、ステップ(1)のMPSD排出口からリファイナー入口に至るまでの保持時間が最小限となるように構成する必要がある。リファイナーフィーダー装置(例えば、リボンフィーダーまたは側面装入フィーダー)は殆ど瞬時に作動し、内リング内でのステップ(2)を開始する。内リングの設計は、パルプ材が邪魔されないで通過する短い保持時間となるようにする必要がある。内リングは設計次第では、効果的に離解するため保持時間が長くなることもあるが、それでも正味の保持時間は、離解が相異なる機器で行われる場合と較べると短くなる。離解されたパルプ材は殆ど瞬時に外リングに流出し、そこでステップ(3)が行われる。ここでも保持時間は短い。外リングの実際の保持時間は、パルプ特性とエネルギー消費量とを最適化するように選択されたプレートの設計に依存する。各プロセス段階で(パルプ強度特性維持に必要な繊維柔軟化を達成しつつ)このように極めて短い(最小限の)保持時間とする利点は、最も優れた光学特性が得られることである。
【0029】
本発明者による先願である国際特許出願PCT/US2003/022057号明細書に記載の装置では、破壊されたチップは、フィブリル化目的の主役の一次リファイナーに送る前に、より小さな繊維化用リファイナーで離解され、操作圧力は、本発明の繊維化(離解)ステップよりもはるかに低かった。その圧力下の繊維化保持時間は、完全に分離しているリファイナーでははるかに長かった。パルプ白色度の保持に役立つには低温度の維持が望ましかった。その理由は、低強度リファイニング強度は温和だったからである。高温は、従ってパルプ強度保持には分離している繊維分離用リファイナーでは必要でもなく、望ましくもなかった。本発明では、離解とフィブリル化とは同じ高圧のリファイナーケーシング内で行われる。繊維化(離解)用の内リングのリファイニング強度は、それでも低く、高圧かつ短い保持時間で行われる。高圧(高温)にもかかわらず白色度への不利なインパクトは存在しない。保持時間が非常に短いからである。これは、本発明者の米国特許第5,776,305号明細書(RTSメカニズム)に記載のような高温でかつ短い予熱時間の驚くべき有益な効果と相似している。
【0030】
本発明をRTS装置に組み込むとき、リファイナーフィーダーの直ぐ上流に、分離している別の予熱コンベアを設置する必要はない。破壊されたチップは、MPSDからリファイナーに通常輸送される間に急速に加熱されるからである。膨張容積または膨張室から回転ディスクまでの雰囲気は、リファイナー操作圧力を、例えばRTSに対しては75psigから95psigとし、MPSDとリファイナー間の輸送の際の相当飽和温度における「保持時間」を、10秒よりはるかに短く、好ましくは2〜5秒の範囲とし、これは、好ましいRTS予熱保持時間に相当する。
【0031】
より包括的には、各プロセスステップの保持時間を最小に抑えて高品質のサーモメカニカルパルプ(TMP)をエネルギー効率よく製造する本発明のプロセス利点は、プロセスを実施する機器要素、設置面積および機器コスト要件を最小限に抑えられるという必然的有利性を備える。既設のTMP、RT−TMPまたはRTS−TMP装置は殆ど、本発明の少なくとも幾つかの形態に基づいて機器の設置面積を増加することなくアップグレード可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の態様に一つを示すTMPリファイナー装置の概略図である
【図2】本発明に用いるのに好適なタイプの希釈液注入機能付加圧浸軟スクリュー機の概略図(図2Aおよび図2B)である。
【図3】リファイナーディスクプレートの一部分の概略図で、内側の繊維化リングと別個の外側のフィブリル化リングとを示す図である。
【図4】ローターとステーターに用いられる一対の内側繊維化リングであって、傾斜しているバー部と溝部とを備えている内リングの例を示す図(図4Aおよび図4B)である。
【図5】遷移領域における一対の内側繊維化リングの、一対の外側フィブリル化リングに対する関係を示す図である。
【図6】実質的半径方向のバー部と溝部とを備えている一対の繊維化リングの例を示す図(図6Aおよび図6B)である。
【図7】外側フィブリル化リングの前面と側面の例をそれぞれ示す図(図7Aおよび図7B)と、外側領域と中間領域と内側領域それぞれのバー部と溝部の断面を示す図(図7Cおよび図7D)である。
【図8−1】外側フィブリル化リングの前面と側面の別の一つの例をそれぞれ示す図(図8A、図8Bおよび図8C)である。
【図8−2】屈曲供給バーを備えるローターディスク用外リングの例の側面と前面をそれぞれ示す図(図8D)と、図8Dの外リングと共に採用される、相対するステーターディスク用外リングの例の側面と前面をそれぞれ示す図(図8E)である。
【図9】内側繊維化プレートの操作をモデル化しその特性の測定を行うための実験室試験に用いられるプレートの概略図である。
【図10】外側フィブリル化プレートの操作をモデル化しその特性の測定を行うための実験室試験に用いられるプレートの概略図である。
【図11】本調査研究で得られた一連の大部分のリファイナーに対するパルプ特性結果を示す図である。
【図12】本調査研究で得られた一連の大部分のリファイナーに対するパルプ特性結果を示す図である。
【図13】本調査研究で得られた一連の大部分のリファイナーに対するパルプ特性結果を示す図である。
【図14】本調査研究で得られた一連の大部分のリファイナーに対するパルプ特性結果を示す図である。
【図15】本調査研究で得られた一連の大部分のリファイナーに対するパルプ特性結果を示す図である。
【図16】本調査研究で得られた一連の大部分のリファイナーに対するパルプ特性結果を示す図である。
【図17】本調査研究で得られた一連の大部分のリファイナーに対するパルプ特性結果を示す図である。
【図18】本調査研究で得られた一連の大部分のリファイナーに対するパルプ特性結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.概要
図1は、本発明の好ましい態様に基づくTMPリファイナー装置10を示す。標準大気圧入口プラグスクリューフィーダー12は、大気圧P=0psigのチップ源Sからスチーム前処理された(柔軟化した)チップを受け入れ、圧力P=0psigのスチーム前処理された木材チップをスチーム管14に送り、この管で、チップは圧力Pの飽和スチームの雰囲気に曝される。装置構成に依存するが、圧力Pは大気圧〜約15psigまたは15psig〜約25psigの範囲であり、保持時間は数秒〜分の範囲である。次ぎにチップは、浸軟加圧プラグスクリュー排出機(MPSD)16に送られる。
【0034】
浸軟加圧プラグスクリュー排出機16は、約5〜25psigの範囲にある圧力P4の入口端18を備え、この入口端からスチーム処理されたチップを受け入れる。好ましくは、MPSDは、スチーム管14の圧力Pと同じ入口圧力Pを有する。MPSDは、飽和スチーム雰囲気下で高圧縮力を機械的にかけてチップを強制的に脱水・浸軟させる仕事部20と、浸軟・脱水・圧縮されたチップが調整されたチップとして膨張領域または膨張室に圧力Pで排出される排出端22とを備え、膨張領域または膨張室では調整されたチップが膨張する。含浸液および希釈水を前記スクリュー機の排出端22に導入するためにノズルまたは同様な手段が設けられ、これにより希釈水は膨張するチップに浸透し、チップとともに約30〜55%の範囲の固形物コンシステンシーを有するリファイナー供給チップを供給管24において形成する。別法としては、希釈以外に含浸の必要がない場合は、希釈は、MPSD排出口に接続されているが、必ずしも一体化されている必要はない希釈室内で行うことができる。本明細書では、チップの浸軟または破壊とは、軸方向繊維分離が約20%を超えるがフィブリル化は生じていないことを意味する。
【0035】
高コンシステンシー一次リファイナー26は、圧力Pに維持されているケーシング28内に相対して回転する複数枚のディスクを備え、各ディスクはその上に仕事プレートを備える。複数枚の仕事プレートは合い向かうように同軸に配置され、これによりディスクの内径からディスクの外径に実質的に半径方向外側に広がるスペースを規定する。各プレートは半径方向に広がる内リングと半径方向に広がる外リングとを備え、各リングはバーと溝とが交互するパターンを有する。内リング上のパターンは相対的により大きいバーと溝を有し、外リング上のパターンは、相対的により小さい溝とバーを有する。リボンフィーダーのようなリファイナーフィーダー30は、供給チップをMPSDに関連した希釈領域から(直接、または中間バッファ槽を経由して)受け入れ、圧力Pの同チップを二枚のディスク間の空間でディスクの実質的内径の所に送る。以下に、より詳細に説明するように、内リングではチップの繊維化(離解)が、外リングではチップのフィブリル化が完結する。
【0036】
前記リファイナーは、シングルディスクリファイナー(一枚の回転するプレートが一枚の固定するステータープレートに面する)でも、ダブルディスクリファイナー(反対方向に回転する相対する2枚のディスク)でも、または米国、ペンシルベニア州マンシー(Muncy)所在のアンドリッツ社( Andritz Inc.)販売のツインディスクリファイナーでもよく、ツインディスクリファイナーでは、中央のステーターが両面にプレートを備え、各面が回転するディスクに面するようになっている。ダブルディスクリファイナーまたはツインディスクリファイナーに用いるチップフィーダーは、当技術分野では既知のように、シングルディスクリファイナー用のものとは少し異なるものである。
【0037】
本発明の装置は、次の3つの中心的なプロセス、すなわち、(1)典型的なTMP、(2)RT-TMP、または(3)RTS-TMPのいずれにも後から取り付けることが可能である。典型的なTMPでは、第1のPSF(プラグスクリューフィーダー)12またはロータリーバルブは、上流の大気圧条件とスチーム管での高圧条件との間の分離を行うものであり、スチーム管は、0〜30psigの圧力範囲で30秒〜180秒という典型的な保持時間で行う予熱器として作用する。本発明では、スチーム管の排出口の箇所にある第2のPSF(一般に、プラグスクリュー排出機またはPSDと称される)は、RTプレサファイナー(浸軟加圧プラグスクリュー排出機=MPSD)に改造するか、あるいはこれに置き換えることになる。RT-TMPとRTS-TMPの構成では、第1のPSFまたはロータリーバルブは、本質的に同じ目的に用いられ、スチーム管も0〜30psig範囲で操作し得る。すべての構成において、選択次第であるが、第1のPSFとしては、必ずしもMPSD(RTプレサファイナー)への入口を大気圧条件(0psig)で操作する製紙設備を選ぶ必要はない。注記するが、RTプレサファイナー前処理の際にこの入口を加圧する利点は、大気圧条件で操作するときは失われる。大気圧条件は、種々の木材チップ破壊用PSDスクリュー機を用いて針葉樹チップを処理するときは繊維に損傷を与える結果となる怖れがある。大気圧条件は、例えば広葉樹チップを処理するときには、もともと非常に短繊維であるから、満足な結果になるかも知れない。典型的なTMPプロセスは、MPSDへの入口で加圧スチームによる前処理が行われないときはPRMPと称される。MPSD(RTプレサファイナー)から排出されるチップ材は、次いでリファイニング雰囲気のより高温の所に排出される。RT−またはRTS−条件では、リファイニング雰囲気はより高温であり、これはリファイナーの高圧力(リグニンの遷移温度、Tgより遙かに高い温度に対応する75psigを超える圧力)に対応する。この態様では、リファイニングディスクに送られる前にチップがTg以上にある全時間は15秒未満、好ましくは5秒未満である。
【0038】
このことは、以下の表に要約される。
【表1】

【0039】
図2Aと図2Bは、本発明に用いるのに好適な希釈液注入機能付き浸軟加圧スクリュー機16の概略図である。図2Aの態様に基づくと、チップ材32は、仕事部20の中心にある脱水部に示されており、脱水部では、孔が開いた円筒壁34、回転可能な同軸シャフト36および回転羽根38の各直径は一定である。脱水部の直ぐ下流の仕事部のプラグ部分にはプラグ状のチップ40が形成される。プラグ部分では、壁には孔が開いておらず、シャフトにも羽根が設けられていないが、シャフト径は次第に大きくなり、流路断面は狭くなり、従って背圧が高くなるので、チップから中央部の円筒壁に形成された液抜き孔経由で押し出される液の流れが促進される。上記圧縮された流れと、これによる浸軟作用とは、孔が開いてない壁内に装入された管状圧縮インサート(図示せず)を用いたり、堅固なピンまたは類似部品(図示せず)をプラグ状のチップ内に円筒壁から突き出して用いたりすることによって、さらに促進または調整される。チッププラグは、一般に1,000psi〜3,000psiまたはそれ以上の範囲の機械的圧力下に高度に圧縮されている。浸軟は、全部ではないにしても大部分はこのプラグで起こる。チップはここで実質的に完全に破壊され、部分的離解も約20%を超え、通常は30%以上にも達する。
【0040】
チッププラグ終端のMPSD排出端22には、外側にフレア状に拡大する壁42とこの壁に相対して配置されたブローバックバルブ46の円錐形表面44との間に定義された断面積増大領域が形成されている。このブローバックバルブ46は、MPSDシャフト36の端部に設けられた円錐形凹み48に収まるストップ位置から最大限に引き込まれる位置まで軸方向にストローク調節可能である。これにより、膨張領域または膨張容積50の流路面積が調節され、同時にバルブと外側にフレア状に拡大した壁42の外端の間に夾まれたチップの流れによって52の箇所に軽度のシール作用が維持される。このチップの流れは、供給管24とMPSD16の間に一時的に生じる圧力差に応じて制御することができる。
【0041】
膨張領域50では、複数の圧力ホース54と関連ノズル(図示)を用いたり、あるいは加圧した円形リングを用いたりして含浸液を高圧下に供給する。脱水されたチップは、膨張領域50に入るや否や含浸液を急速に吸収し、膨張するので、膨張領域50の端部に軽度のシール領域を形成するのに役立つ。
【0042】
図2Bは、別の態様を示すもので、膨張領域50における含浸作用は、ブローバックバルブの円錐形面にある開口部56に液の流れを供給することによって達成される。この液は、高圧ホース経由でブローバックバルブのシャフト58を通して供給することができる。
【0043】
供給管24は、希釈されたチップをMPSD16からリファイナーフィーダー30に導入し、混合するための垂直の落下管であることが好ましい。しかし、理解されなければならないことは、供給管24における圧力Pは、フィーダー30とリファイナーケーシング28におけると同じ圧力であることである。リファイナーフィーダー30とリファイナーケーシング28に小さな圧力増または圧力降下を持たすことが望まれることであるかもしれないし、この操作はTMP分野で普通に行われていることである。ではあるけれども、このMPSDからリファイナーケーシングに続く領域における圧力は、一般に、30psigより非常に高く、通常45psig以上となるので、この圧力はMPSD入口スチーム圧力Pよりはるかに高い。しかし、チッププラグ40は極めて強く機械的に圧縮されているので、管の圧力が、95psigまたはそれ以上であっても、圧縮されたチッププラグは、未圧縮状態の繊維中の空孔の膨張によって膨張領域で急速に膨張する。従って、理解され得ることであるが、この供給管は、膨張室として作用し、容量膨張効果に寄与する。当業者ならば、膨張領域と供給管の設計と関係を容易に修正し、膨張と希釈とを主にMPSDに取り付けられているが一体構造ではない専用の膨張室で行わせることが可能である。
【0044】
図3は、リファイナーディスクプレート100の一部分の概略図で、繊維化用の内リング102とフィブリル化用の外リング104とを示す。各リングは、ディスクに取り付け可能な個別なプレート部材で構成することもできるし、リング全体を共通のベースに一体化して形成し、これをディスクに取り付け可能とすることもできる。各リングは、内側の供給領域106、108と、外側の仕事領域110、112とを備える。内リングの仕事(離解)領域は、バー114と溝116とを交互にする第1パターンで規定され、外リングの供給領域は、バー118と溝120とを交互にする第2パターンで規定される。内リングの供給領域106の非常に粗いバー122と溝124を経由して、予め破壊されたチップが非常に狭いバーと溝から構成される離解用領域110に導入される。次に繊維化されたチップは互いに混合し、外リングの供給領域108の入口である円環状遷移領域126を越える。一般に、内リング仕事領域110にある第1パターンは、外リング供給領域108にある第2パターンの溝より相対的に狭い溝を備える。外リングの仕事(フィブリル化)領域112は、バー128と溝130のパターンを有するが、溝130は内リングの仕事領域110の溝116より狭くなっている。
【0045】
一方のディスクにおける内リングの供給領域106の粗いバーと溝は、相対するディスクにおける供給流の通路形状がリボンフィーダーから相対するリングの仕事領域110に供給チップ材料を容易に導入する形状である限り、相対するディスクのバーと溝とを有さない供給領域と並置することができる。従って、すべての内リング102は、バー114と溝116を交互にするパターンを有する外側の繊維化領域110を有するが、関連する内側の供給領域106は必ずしもバーと溝とのパターンを有する必要はない。フィブリル化用リング104の外側領域112は、132と134のような複数の半径方向に順次配列された領域、および/または136と138のようなTMPリファイナーの「リファイニング領域」に周知の複数の相異なって並行的に交互する領域を備えることができる。図3では、外リング104は、バーと溝を交互する内側の供給領域108を備え、仕事領域112は、領域132に並行的に繰り返す台形として現れる、バー128と溝130を交互する第1パターンと、プレートの円周144まで延びる領域134に並行的に繰り返す台形として現れる、バー140と溝142を交互する別の一つのパターンとを有する。
【0046】
内リング102と外リング104の間の円環スペース126は、全くの空でもよいが、あるいは図3に示されているように、外リング供給領域108にある146のようなバーを幾つかこの円環スペースに延ばすようにもすることができる。円環スペース126は、内リングと外リングの半径方向の大きさを定めるもので、内リング102の半径方向の幅は、外リング104の半径方向の幅より小さく、好ましくは、内リング102の内端部148から外リング104の円周端144までのプレートの全半径の約35%未満である。また、内リング102の供給領域106の半径方向の幅は、内リング102の仕事領域110の半径方向の幅より大きく、外リング104の供給領域108の半径方向の幅は、仕事領域112の半径方向の幅より小さい。
【0047】
図3に関連して上記のプレートのタイプは、便宜上「RTF」プレートと称する。破壊され、部分的に離解されたチップ材は、先ず内リングの供給領域106に導入されるが、ここではそれ以上の離解は実質的に起こらず、次いで、チップ材が仕事領域110に供給されると、バー114と溝116によるエネルギー効率的な低強度の作用によって、チップ材の実質的すべてが離解される。このようなプレートは、関連する加圧浸軟スクリュー排出機を備えないリファイナー装置の代替プレートとして有益に用い得る。PMSDを備えている場合は、リファイナーの上流の高温処理と併せて完全な破壊と部分的な離解とを組み合わせることにより、プレート設計者としては、内リングの仕事領域110の半径方向の幅とエネルギー使用量とを最小限に抑えて、離解を完結することが可能となる。バー114と溝116のパターンと仕事領域110の幅とは、強度と保持時間に応じて変えることができる。上流側の破壊と部分的離解とが理想的でない場合は、プレート設計者としては、内リングの仕事領域110の半径方向幅を増加し、チップ材をある程度処理が促進されるように滞留させるパターンを選択し、一方では短くした高強度外リング112で満足なフィブリル化を行い、一次パルプの所与の性質に対して総括的エネルギー節約を達成することができる。さらに、本発明は、前記のRTFプレートに関して外リング104である程度の離解が起こり得ることも、あるいは内リング102である程度のフィブリル化が起こり得ることも妨げるものではない。
【0048】
図3に示される複合プレートは、単に代表例を示しているにすぎない。図4と図6は、内リング領域がとり得る他の例を示す。図4Aは、1枚の内リング150Aを示し、図4Bは、相対する内リング150Bを示す。図5は、相対する内リング150Aおよび150Bの並置概略図を関連した外リング152Aと152Bの部分がリファイナーに取り付けられている図とともに示す。内リングの供給間隙154は、ディスクの「目」の箇所に受け入れられた供給材料を軸方向の移送方向から内リングの半径方向仕事間隙156に向かって再導入するため、曲面状になっているのが好ましい。供給バー(非常に粗い配置バー)は、供給されるチップ材のサイズより大きい間隔で配置されるのが好ましい。例えば、チップ(チップ厚さ)を規定する3次元寸法で最も小さい寸法は一般に3〜5mmである。これは、木材組織に繊維の損傷を招く厳しいインパクトを与えることを回避するためである。従って、殆どの例では操作の間の最小限の間隙154は5mmとなるはずである。粗い配置の供給バーは、内リングの外側部分に適切な原料分散を行うという唯一の機能を果たし、チップには何も仕事をしなくてよい。供給バーはローターの内リングには取り付けられるが、ステーターの内リングには必ずしも必要ではない。
【0049】
図4の態様では、内リングのバーと溝は、半径方向に対して角度を付けて配置されているので、内リングに遠心的流れを抑制するとともに、左に回転すると、保持時間を増し、あるいは右に回転すると、流れを加速することになる。図6の態様では、内リング162Aと162Bは、実質的に半径方向の配置を有するので、遠心的流れは抑制も、加速もされない。図3と図5に示されるように、離解領域、例えば内リングの外側領域における入口バーは、長い面取り164、すなわち楔形が緩やかに閉じる形を有している。一般に、二枚の内リングの間の繊維化間隙156に至る入口は、半径方向、または半径方向に近い方向になっている(遷移方向を揃える)。このことは木材チップに強いインパクトを与えることも防止している。面取りの傾斜は、一般に、半径方向の距離15〜50mmにかけて高さが5mm下がるようにしなければならない。得られる勾配は、1:5〜1:10であるが、高さの下がりが3〜10mmで、勾配が1:3〜1:15ならば許容できる。チップの低強度「剥離」を規定するのはこの緩やかな楔という形状であり、きつい間隙で操作する従来のブレーカーバーが高強度インパクトを与えるのとは異なる点である。内プレートの仕事領域の操作間隙156は、1.5〜4.0mmのオーダーとし、外向きに緩やかに狭くすることもできる。面取り164が下の範囲の角度(例えば、1:3)ならば、大きな、例えば少なくとも1:40のテーパーの間隙156を用いなければならない。こうすれば、きつい間隙にもチップを容易に供給することになる。
【0050】
2枚の外リングが標準の操作間隙にあるときは、短い仕事領域110は3mm〜5mmの間隙で操作しなければならない。外リングの入口の間隙158は、内リングの外側部分の間隙より少し大きくなければならない。内リングの外側部分は、削られてテーパーになっているのが好ましく、テーパーの範囲はフラット〜約2°であるが、具体的には適用次第で異なる。大きなテーパーと大きな操作間隙を用いると、内リングで行われる仕事量が減少する。内リングの外側領域の構造は、繊維長さを最大に保存しつつ繊維を適切に分離するために、供給材料に与えるインパクトを最小限に抑えるような構造にしなければならない。
【0051】
離解領域110の溝幅は、木材チップ粒より小さく、離解領域に求められる最小操作間隙の大きさのオーダーでなければならない。一般に、溝は幅4mm超であってはならない。このことによって、木材チップ粒がバーの間に挟み込まれ、相対するディスクのバーに衝突するのではなくて、確実に間隙内で処理されるのが可能となる。
【0052】
離解用内領域110(あるいはワンピース型リファイナープレートにあってはプレート入口)では、チップは、円環スペース160を通過して外リング104に入る前に、繊維と繊維束に分解される。その外リングは、既知の高コンシステンシーリファイナープレート構造に酷似している。繊維が大部分離解されてしまえば、高強度インパクトはもはや加わらない。図3と図5から分かるように、未処理チップが外リングの供給領域108に入るようなことがあれば、この未処理チップが2本の粗いバー118と120の間に楔のように挟み込まれ、高強度のインパクトが加わることになろう。チップが2枚の離解用内リング102で適切に分離されておれば、大きな粒はもはや残っていないので、このタイプの作用は起こり得ない。
【0053】
内リングと外リングの間で機能の分離を行うことは、いわゆる「円錐形ディスク」にも組み込んで用いることができる。この円錐形ディスクはフラットな最初のリファイニング領域と、その後に同じリファイナー内に円錐形リファイニング領域とを備えているものである。その場合、本発明の離解用リングは上記フラットなリファイニング領域を代替し、その後に円錐部分に従来の「主プレート」リファイニング領域が設けられることになろう。普通、そのようなリファイナー用の円錐形部分は30°または45°の角度の円錐であるから、円筒形表面からは15°または22.5°の角度となる。そのような円錐形ディスクリファイナーの例は1981年8月11日に登録された米国特許第4,283,016号の明細書に記載されている。従って、本明細書で用いられる「ディスク」とは「円錐形ディスク」も含み、「実質的に半径方向」は、円錐形リファイナーの一般に外向き方向であるが、角度が付いた間隙をも含む。
【0054】
内リングの外側領域の入口には、半径方向または半径方向に近い遷移部分がある。仕事表面が始まる半径方向位置に大きな変位があると、間隙より大きい粒子がこの間隙に急に押し込まれるとき、普通、繊維長さが損傷する結果になる。この領域が始まる箇所に長い(長い方がよい)面取りを施すと、供給されたチップ材は、サイズが徐々に十分に小さくなって(粗さの減少)、仕事表面に形成された間隙に入ることができる。内リングの外側領域の溝幅は、十分に狭くすることによって、大きな不要の繊維粒子が溝に入り、次いでディスク間隙に押し込まれ、従って繊維の切断に至るようなことを防止しなければならない。一般に、溝幅は仕事表面の入口のディスク間隙より広くしてはならない。以上の作用の効率を向上したり、内プレートでのエネルギー入力を増大したりするためにサブ表面ダムまたは表面ダムを用いることができる。
【0055】
図7と図8にフィブリル化用の外リングの2つの態様が示される。これらは高強度から極低強度までの範囲を含んでいる。概念の説明目的であるが、図7のパターンは、高強度方向性の外リング166の典型例である。図8は、極低強度二方向性の設計182を示す。多岐にわたる他のバー/溝構造、例えば可変ピッチを備えているものも用い得る(米国特許第5,893,525号明細書を参照)。
【0056】
方向性リング166は、パターンが粗く、前方向に供給する領域172を備える。これにより、当領域の保持時間とエネルギーインプット能力が低下し、従って、より大きいエネルギーをリングの外側部分にかけることができ、それにより、そこに適用される仕事強度が増し、従ってよりタイトなディスク間隙で操作を行える。外リングの仕事領域には2つの領域168,170があり、外領域168は前領域170より細かい溝を備えている。領域168中の176のような溝の一部分または全部は、リングの真の半径に対し少し傾斜した角度であるクリアーなチャネルを規定することでき、一方、他の領域170中の180のような他の溝は、表面ダムまたはサブ表面ダム174または178を有することができる。全体としては、外リング166は、図3の外リング112に類似している。
【0057】
別の例として、図8の全長方向に延びる可変ピッチパターン182が本質的に半径方向のチャネルを有し、遠心方向の供給角を有さないものが挙げられる。供給領域190は非常に短く、仕事領域188は均一の溝幅または交互に変わる溝幅を有したり、または184と186に示されているように、交互に変わる、あるいは任意に可変の溝深さを有したりする。こうすることにより、プレート内の保持時間が長くなり、多数のバー交差と組み合わせると、低強度のエネルギー移動が可能となり、これにより大きなプレート間隙が生じる結果になる。
【0058】
外リングのバリエーションとしては、外リングから内リングに繊維が逆流するのを防止するように外リングの内側供給領域が設計される。図8Dは、屈曲供給バー195を有する供給領域194を備えるローターディスク用外リング192を示す。相対するステーターリング196は、図8Eに示されるように、前記の屈曲供給バー195に相対する内側供給領域198においてバーを備えないので、相対して回転する外リング192の屈曲供給バー195を具合よく収容する。そのようなアプローチを取ることにより、さらに内リングと外リングでそれぞれ離解ステップとフィブリル化ステップを完全に分離することが確実に達成される。
【0059】
図示のように、屈曲供給バー(インジェクターとも称する)195には、オプションとして、ローターおよび/またはステーターリングの供給領域に他の構造(例えば、ピラミッドの形をしたものや相対する半径方向バー)を付加して、屈曲バーから仕事領域へのチップ分散を助けることも可能である。従って、ローターの供給領域194の半径方向範囲の表面は、突出する屈曲バー195によって完全にまたは部分的に占めることもできるし、ステーター供給領域198の半径方向範囲の表面は、完全にフラットであるかまたは部分的に上記のチップ分散構造によって占めることもできる。ローターリングの屈曲バー195は、仕事領域バーの高さよりもある距離だけ高いので、供給領域194中に突出するが、相互に回転するステーターリングの供給領域198の相対する表面がフラットであることから、この高くなった距離も具合よく収容する。
【0060】
一般に、内リングの仕事領域全体のバーと溝のパターンは、好ましくは均一の第1平均密度を有し、外リングの供給領域全体のバーと溝のパターンは、好ましくは均一であるが低密度の第2平均密度を有する。
【0061】
2.パイロットプラント実験室試験
以上のように、繊維化を行う内リングとフィブリル化を高効率で行う外リングとの組み合わせが、本発明のプロセスの重要なポイントである。このプロセスの最適化は、アンドリッツ加圧36−1CPシングルディスクリファイナーを2段階で用いて実施された。第1段階では内プレートだけを用い、第2段階では外プレートだけを用いて実施された。内プレートとしては、特殊なデュラメタル(Durametal)社製D14B002型の3領域リファイナープレートを用い、中間領域の外側1/2と外領域全部を研磨して使用した(図9を参照)。前記中間領域の内側の1/2は、破壊された木材チップを離解するのに用いられる。外プレートとしては、デュラメタル(Durametal)社製36604型の方向性リファイナープレートを、供給(feed)(排出(expel))型と制限(restricting)(抑制(holdback))型の両リファイニング構成で用いた(図10を参照)。
【0062】
以下のプロセスバリエーションをシミュレーションするため、離解用内プレートを用い、次の3つのリファイニング構成を試験した。
1.RT[2〜3秒の保持時間(i)、85psig、1800rpm](ii)後掲の表中のA1を参照。
2.RTS[2〜3秒の保持時間(i)、85psig、2300rpm](ii)後掲の表中のA2を参照。
3.TMP[2〜3秒の保持時間(i)、50psig、1800rpm](iii)後掲の表中のA3を参照。
(i)PSD排出口からリファイナー入口までの保持時間。
(ii)スチーム管圧力= 5psi、保持時間= 30秒。
(iii)スチーム管圧力= 20psi、保持時間= 3分。
【0063】
破壊用MPSDと離解用内プレートの組合せを示すのに用いられる前付け記号は、f−である。従って、前記構成に用いられる記号は下記の通りである。
1)f−RT
2)f−RTS
3)f−TMP
【0064】
次に、リファイナー外プレートを用い、各々同じ圧力とリファイナー速度で繊維化(f)チップをリファイニングした。すなわち、
1)f−RT外プレート、85psig、1800rpm
2)f−RTS外プレート、85psig、2300rpm
3)f−TMP外プレート、50psig、1800rpm
【0065】
比エネルギーの大部分はリファイナー外プレート運転実験の際に加えられた。リファイナープレート方向(排出型と抑制型)と適用パワーの種々の条件をこの研究の外プレート実験の際に評価した。
【0066】
次いで、一次リファイニングされたパルプ各々を、加えた3レベルの比エネルギーで、アンドリッツ社製二次大気圧401リファイナーでリファイニングした。比較対照のTMPシリーズは、PMSDで木材チップの破壊を行わないで製造した。これは、内プレート使用の比較対照実験の生産速度を24.1ODMTPDから9.4ODMTPD(オーブン乾燥トン/日)に減少することによって行われた。これはPMSD中のチッププラグを効果的に減少させた。内プレート使用の比較対照実験の際にはプレートを調整して、仕事がブレーカーバーだけを用いて行われるようにした。すなわち、ブレーカーバーの後に設けられているリファイナー離解バーでは効果的なリファイニング作用は行われないようにした。次ぎに内プレートで処理されたチップを、36−1CPリファイナーで外プレートを用いてリファイニングした。次に一次リファイニングされたパルプを、幾つかのレベルの比エネルギーを使用してアンドリッツ社製401リファイナーでリファイニングした。
【0067】
表Aは、この試験研究で製造されたリファイナーシリーズ各々対する記号を示す。対応するサンプル識別記号も示す。
【表2】


【表3】


【表4】


【表5】

【0068】
抑制型一次外プレートで製造したリファイナーシリーズが、排出型外プレートを用いて得た各シリーズより、プレート間隔は大きく、長繊維含有度が高いものであった。このことにより、抑制型シリーズをリファイニングに用いて、一次フリーネスを下げ、一方、パルプの長繊維含有度を保持することが可能である。
【0069】
図11〜図18は、本実験研究で得られたほとんどのリファイナーシリーズに対するパルプ特性結果を示す。なお、極めて低い一次フリーネス(<500ml)で得られた2つのシリーズは、データが混むのでプロットからは除外した。
【0070】
図11 フリーネス対比エネルギー
対照標準のTMPシリーズが、所与のフリーネスに対し最も高い比エネルギー所要値を有した。f−TMPシリーズが、二番目に高い比エネルギー所要値を有し、次いでf−RTシリーズが続いた。f−RTSシリーズが、所与のフリーネスに対し最も低い比エネルギー所要値を有した。
【0071】
表 Bは、プロットされたリファイナーシリーズ各々の比エネルギー所要値を150mlのフリーネスで比較したものである。結果はリニア補間から求めた。
【表6】

【0072】
150mlのフリーネスに対して、f−RTS 2300 exシリーズ(離解、RTS、および高強度プレートの組合せ)が、対照標準のTMPシリーズより32%低いエネルギー所要値を有した。150mlのフリーネスに対して、f−RT 1800 hbおよびf−RT 1800 exシリーズは、対照標準TMPシリーズより18%および22%それぞれ低いエネルギー所要値を有した。f−TMP hbおよびf−TMP exシリーズは、対照標準TMPシリーズより10%および15%それぞれ低いエネルギー所要値を有した。これらの結果が示すものは、PSDとリファイナープレートを改造/交換しても、既存のTMP装置への投資は相当程度のリターンが得られるということである。
【0073】
図12 引っ張り強度対比エネルギー
f−RTS exパルプが、所与の比エネルギーでは、最も高い引っ張り強度を有し、その後にf−RTシリーズとf−TMPシリーズが続いた。対照標準のTMPパルプは、所与の比エネルギーでは、最も低い引っ張り強度を有した。
【0074】
PSD排出口に約3%亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)溶液を加えると、薬剤処理を行わない対応するシリーズに較べて引っ張り強度が増大した。
【0075】
52.5Nm/gの引っ張り強度は、3.1%NaHSOを添加し、1,754kWh/ODMTの比エネルギーで処理したf−RTS 2300 ex(3.1%NaHSO)シリーズで達成された。
【0076】
図13 引っ張り強度対フリーネス
薬剤処理無しのシリーズ
引っ張り強度の結果では2つのグループに分けられる帯域があった。下部帯域は、排出型外プレートを用いて得られたシリーズを表す。上部帯域は、抑制型外プレートを用いて得られたシリーズを表す。抑制型外プレートを用いて得られた引っ張り強度の平均増加は、約10%であった。f−RTS hbシリーズは、繊維化されたA3チップ材料が不足したのでこの実験では行われなかったことを注記する。
【0077】
亜硫酸水素塩処理シリーズ
約3%の亜硫酸水素塩をf−RT exとf−RTS exシリーズに添加することにより、hb型外プレートで得られたパルプと同等または高いレベルの引っ張り強度に増大した。
【0078】
表Cは、150mlのフリーネスで各リファイナーシリーズを比較するものである。外挿に用いられた回帰方程式は、図13に記入してある。
【表7】

【0079】
図14 引き裂き強度対フリーネス
抑制型外プレートを用いて得られたリファイナーシリーズが、最も大きい引き裂き強度と長繊維含有量を有した。
【0080】
表Dは、150mlのフリーネスでリファイナーシリーズを比較するものである。引き裂き強度の値は、リニア補間法を用いて得られた。
【表8】

【0081】
f−RT hbパルプは、最も高い引き裂き強度を有した。f−RTexとf−RTS exパルプも、同程度の引き裂き強度結果であった。
【0082】
図15 破裂強度対フリーネス
抑制型外プレートで製造されたf−RT 1800 hbとf−TMP 1800 hbシリーズが、所与のフリーネスでは最も高い破裂強度を有した。排出型外プレート、f−RT 1800 ex、f−TMP 1800 ex、f−RTS 2300 exを用いて製造されたリファイナーシリーズが、所与のフリーネスでは低い破裂強度を有した。
【0083】
約3%の亜硫酸水素塩を添加することにより、排出型外プレートで得られたシリーズの破裂強度は、抑制型外プレートで得られた化学処理無しシリーズと同等のレベルに増大した。
【0084】
表Eは、150mlのフリーネスに補間された破裂強度の結果を比較するものである。
【表9】

【0085】
図16 未蒸解繊維束対フリーネス
対照標準のTMPパルプが、最も高い未蒸解繊維束レベルを有した。排出型外プレートで製造されたリファイナーシリーズは、抑制型外プレートで製造された対応するシリーズより未蒸解繊維束は低かった。明確に証拠立てられたのは、f−前処理が未蒸解繊維束減少に役立つということである。
【0086】
表Fは、150mlのフリーネスに補間された各リファイナーシリーズに対する未蒸解繊維束レベルを比較するものである。
【表10】

【0087】
f−RTS exシリーズで製造されたパルプは、亜硫酸水素塩の添加・不添加を問わず、未蒸解繊維束レベルは最も低かった。亜硫酸水素塩の添加は、未蒸解繊維束を低下させた。
【0088】
図17 散乱係数対フリーネス
排出型外プレートで製造されたリファイナーシリーズが、最も高い散乱係数レベルを有した。
【0089】
表Gは、フリーネス150mlでの各シリーズに対する散乱係数測定の結果を示す。
【表11】

【0090】
約3%の亜硫酸水素塩を添加することにより、散乱係数は約1〜3m/kgだけ低下した。
【0091】
図18 白色度対フリーネス
すべてのf−シリーズでは、対照標準のTMPパルプより白色度は高かった。
【0092】
表Hは、150mlのフリ−ネスに補間したリファイナーシリーズ各々を比較するものである。
【表12】

【0093】
f−TMPシリーズは、対照標準のTMPシリーズより約2%高い白色度を有した。f−前処理の高圧縮PSDコンポーネントから木材抽出物を高度に除去したことが、白色度増加に最も寄与したと考えられる。
【0094】
f−RTSシリーズが最も白色度が高く(52.8)、次がf−RTシリーズで(平均=51.7)、さらにその後にf−TMPシリーズが続いた(平均=49.2)。
【0095】
3%の亜硫酸水素塩を添加することにより、f−RTS exシリーズでは、顕著に59.1まで白色度が増大した。
【0096】
3.内側領域リファイニング時の離解条件の比較
表Iは、内プレートによる繊維化で得られた特性を比較するものである。前に示したように、3つの離解装置の実験であるA1、A2、A3を実施し、f−RT、f−RTS、f−TMP構成のシミュレーションを行った。これらの内リング装置に、PSDから破壊されたチップを供給した。
【表13】

【0097】
プロセス条件が内側領域リファイニング時の間の離解効率に主要なインパクトを有していることは明らかである。破壊されたチップが、より高圧(A1、A2)でリファイニングされると、典型的なTMP加圧(50psi)でのリファイニングに比べ、顕著に低い未蒸解繊維束(=より多い離解繊維分)となる。離解に要するエネルギーも、高圧では少なくなった。最高の離解レベルは、高圧と高速(A2)を組み合わせるときに得られた。
【0098】
A2(f−RTS)のチップが最も高い繊維分離を受け、次位は、A1(f−RT)で処理されたチップである。A3(f−TMP)のチップは、離解されたサンプルの中では明らかに最も粗いものであった。
【0099】
注意すべきは、バー方向性は内側領域リファイニング実験の際には要因の一つではなかったということである。内プレートは双方向であったからである。
【0100】
離解に要するエネルギーは圧力が上昇するにつれて減少する。エネルギー損失は、従来の条件で離解するときに極めて大きかった。例えば、50psigの圧力では、85psigでのリファイニングと比較して同じ未蒸解繊維束の離解チップを得ようとするとき、100kWh/MTを優に超える比エネルギーを改めて加える必要があるだろう。
【0101】
4.実験手順
米国ウィスコンシン州産のホワイトスプルースチップが、これらの実施例に使われた。ホワイトスプルースチップに対するチップ材識別名、固体含有量および嵩密度は、表 IIに示される。
【0102】
最初、36−1CP加圧可変速リファイナーで幾つかの実験を行った。プレートパターンD14B002を用い、外側領域および1/2の中間領域を研磨して行った。これは、大型の単一ディスク型リファイナーの内側リングをシミュレーションするために行ったものである。最初の実験A1は、0.4バールのスチーム管に30秒プレスチーム保持時間、5.87バールリファイナーケーシング圧力、および1800rpmのマシン速度で行われた。A2では、マシン速度は2300rpmまで増加した。A3実験は、1.38バールのスチーム管に3分間プレスチーム保持時間、3.45バールリファイナーケーシング圧力、および1800rpmのマシン速度で行われた。A3−1実験も、A3と同様な条件で行われた。但し、生産速度は、リファイナー供給前にチップの組織破壊を防止するため、24.1ODMTPDから9.4ODMTPDまで減少した。この実験のプレート間隔も増やし、中間バー領域で効果的な作用が起こるのを防止したので、チップにはブレーカーバー処理だけが行われた。繊維品質分析は、サンプルA1−1には可能でなかった。ブレーカーバー処理だけが行われたチップは繊維化された形ではないからである。従って、未蒸解繊維束またはバウアーマクネット(Bauer Macnet)分析は適用可能ではない。
【0103】
これらのパルプ各々は、さらに他のシリーズを行うのに使用された。6つのシリーズがA1パルプで行われた。外プレート(Durametal社製 36604)が、36−1CPリファイナーに取り付けられ、リファイニングの外側領域のシミュレーションが行われた。6回の一次外側領域実験のチップは、全て36−1CP装置で5.87バールケーシング圧力および1800rpmの速度で行われた。これらの実験に対するプロセス記号はRTである。亜硫酸水素ナトリウム溶液がA17に添加され、2.8% NaHSO(乾燥基準)の薬剤濃度となった。各シリーズに対し、3回の二次リファイナー実験が行われた。
【0104】
A2チップに対して二つの実験シリーズが行われた。36−1CP外側領域実験による両生産物(A19とA20)は、5.87バールリファイナーケーシング圧力および2300rpmマシン速度で生産された。これらの実験に対するプロセス記号はRTSである。亜硫酸水素ナトリウム溶液がA20に添加された(3.1%NaHSO)。ここでも、各シリーズに対し3回の二次リファイナー実験が行われた。
【0105】
A3チップに対しても、幾つかのシリーズの実験が、それぞれ3.45バールリファイナーケーシング圧力および1800rpmで行われた。各シリーズに対し3回の二次リファイナー実験が行われた。これらの実験に対するプロセス記号はTMPである。
【0106】
A3−1チップについて2つの対照標準TMPシリーズが生産された(A43とA44)。これらは、内側領域リファイニングの間だけブレーカーバー処理が行われた。A43とA44は共に3.45バールスチーム圧力および1800rpmマシン速度でリファイニングされた。これらのパルプに対して幾つかの常圧リファイナー実験が行われ、前に生産されたシリーズと同等の範囲までフリーネスを下げた。
【0107】
すべてのパルプに関する試験は、標準Tappi(米国紙パルプ技術協会)法に基づき行われた。試験には、カナダ標準フリーネス(Canadian Standard Freeness)測定、プルマック未蒸解繊維束(Pulmac Shive)測定(0.10mmスクリーン)、バウアーマクネット(Bauer McNett)分級、光学的繊維長分析、物理特性および光学特性測定が行われた。
【表14】

【符号の説明】
【0108】
10…TMPリファイナー装置、12…標準大気圧入口プラグスクリューフィーダー、14…スチーム管、16…浸軟加圧スクリュー排出機(MPSD)、18…入口端、20…仕事部、22…排出端、24…供給管、26…高コンシステンシー一次リファイナー、28…ケーシング、30…リファイナーフィーダー、32…チップ、34…孔が開いた円筒壁、36…MPSDシャフト、38…回転羽根、40…チッププラグ、42…外側に広がった壁、44…円錐形表面、46…ブローバックバルブ、48…円錐形凹み、50…膨張領域、52…シール箇所、54…圧力ホース、56…開口部、58…ブローバックバルブシャフト、100…リファイナーディスクプレート、102…離解用内リング、104…フィブリル化用外リング、106、108…内側供給領域、110、112…外側仕事領域、114、118、122、128、140、146……バー、116、120、124、130、142…溝、126…円環状遷移部、132、134、136、138…リファイニング領域、144…円周、148…内端部、150A…内リング、150B…相対する内リング、152A…外リング、152B…相対する外リング、154…供給間隙、156…内リング間隙、158…外リング間隙、160…円環スペース、162A、162B…内リング、164…面取り、166…高強度方向性外リング、168…細かいパターンの外リング、170…粗いパターンの外リング、172、190、…供給領域、174、178…ダム、176、180…溝の一部、182…パターンの2方向性設計、184、186…溝深さ、188…仕事領域、195…屈曲供給バー、196…ステーターリング、198…ステーターリングの内側供給領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチーム処理された木材チップから相対的に回転する複数のディスクを有するリファイナー中でサーモメカニカルパルプを製造する装置において、
スチーム処理されたチップを受け入れるための入口端と、高い機械的圧縮力下に前記チップを浸軟し脱水するための仕事部分と、前記浸軟され脱水され圧縮されたチップが調整されたチップとして、該調整されたチップが膨張している膨張容積に排出される排出端とを有する加圧スクリュー排出装置と、
希釈水を前記膨張容積に導入するための手段であって、これにより希釈水が前記膨張しているチップに浸透し該チップとともに高固体コンシステンシーリファイナー供給材料を形成する手段と、
それぞれがリファイニングプレート手段を有する相対的に回転する複数のディスクを有する一次リファイナーであって、前記リファイニングプレート手段が相対する同軸関係に配置され、これによって、前記ディスクの内径から前記ディスクの外径に実質的に半径方向外側に延びるリファイナー間隙が規定される一次リファイナーと、
半径方向に延びる内リングと半径方向に延びる外リングとを有する各プレート手段であって、各リングがバーと溝を交互するリファイナー仕事領域を有し、前記内リングの仕事領域が相対的に大きいバーと溝とを有し、前記外リングの仕事領域が相対的に小さいバーと溝とを有する各プレート、および
前記膨張容積から前記供給材料を受け入れ、次いでディスクの実質的内径箇所の間に前記供給材料を供給するためのリファイナー供給装置と、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
各リングが、それぞれの仕事領域より粗いパターンのバーと溝を有する内側供給領域を有し、そして
前記外リングの供給領域が、前記内リングの仕事領域より粗いパターンを有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
木材チップのサーモメカニカルリファイニング方法において、
チップをスチーム雰囲気に曝し、チップを柔軟化するステップと、
前記柔軟化されたチップを圧縮装置で浸軟し、部分的に離解するステップと、
前記浸軟され、部分的に離解されたチップを、相対するディスクの各々が、バーと溝からなる内リングパターンとバーと溝からなる外リングパターンを有する一次回転ディスクリファイナーに供給するステップと、
前記内リングでチップの繊維化を実質的に完結し、得られた繊維を前記外リングでフィブリル化するステップと、
を含むことを特徴とする木材チップのサーモメカニカルリファイニング方法。
【請求項4】
各リングが内側の供給領域と外側の仕事領域を有し、内リングの仕事領域がバーと溝とを交互にする第1パターンにより規定され、外リングの供給領域が、バーと溝とを交互にする第2パターンにより規定され、
前記内リングの仕事領域の前記第1パターンが前記外リングの供給領域の前記第2パターンの溝より相対的に狭い溝を有し、
チップの前記繊維化が、内リングの仕事領域において低強度リファイニングで実質的に完結され、そして
繊維の前記フィブリル化が、外リングの仕事領域において高強度リファイニングで行われる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
木材チップのサーモメカニカルリファイニング方法において、
チップをスチーム雰囲気に曝し、チップを柔軟化するステップと、
前記柔軟化されたチップを、圧縮して破壊し、脱水して固体コンシステンシー55%以上とするステップと、
前記破壊され、脱水されたチップを約30〜55%の範囲のコンシステンシーに希釈するステップと、
前記希釈された破壊チップを、相対するディスク各々が、バーと溝からなる内リングパターンとバーと溝からなる外リングパターンを有する一次回転ディスクリファイナーに供給するステップと、
前記内リングでチップの繊維化を行い、得られた繊維を前記外リングでフィブリル化するステップと、
を含むことを特徴とする木材チップのサーモメカニカルリファイニング方法。
【請求項6】
前記チップが大気圧にあるスチーム雰囲気で柔軟化される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記柔軟化されたチップが、圧縮され破壊される前に、約30〜180秒の範囲の保持時間だけ約0〜30psigの範囲の圧力を有するスチーム管に送られる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記柔軟化されたチップが、圧縮され破壊される前に、約10〜40秒の範囲の保持時間だけ約0〜30psigの範囲の圧力を有するスチーム管に送られる請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記柔軟化されたチップが、圧縮され破壊される前に、約10〜40秒の範囲の保持時間だけ約5〜30psigの範囲の圧力を有するスチーム管に送られる請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮・破壊および脱水が約0〜30psigの範囲のスチーム入口圧力を有する浸軟プラグスクリュー排出機で行われる請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮・破壊および脱水が約5〜30psig範囲のスチーム入口圧力を有する浸軟プラグスクリュー排出機で15秒未満の時間だけ行われる請求項5に記載の方法。
【請求項12】
リファイナーの相対的に回転する複数のディスクが、30psigより大きな操作圧力においてスチーム雰囲気を有するケーシングに収められ、前記希釈および供給がリファイナー操作圧力と実質的に同じ圧力のスチーム雰囲気で行われる請求項5に記載の方法。
【請求項13】
リファイナーの相対的に回転する複数のディスクが、75psigより大きな操作圧力においてスチーム雰囲気を有するケーシングに収められ、前記希釈および供給がリファイナー操作圧力と実質的に同じ圧力のスチーム雰囲気で行われ、そしてチップが希釈され、リファイナーに供給され、約10秒未満の時間内だけ前記ディスク間に導入される請求項5に記載の方法。
【請求項14】
回転ディスクリファイナーのディスクに取り付けるための複合プレートであって、
バーと溝との第1粗パターンで規定される内側の供給領域とバーと溝との第1密パターンで規定される外側の仕事領域とを有する内リングと、
バーと溝との第2粗パターンで規定される内側の供給領域とバーと溝との第2密パターンで規定される外側の仕事領域とを有する外リングとを含み、
バーと溝との第2粗パターンは、バーと溝との第1粗パターンよりも溝が密であり、
バーと溝との第2密パターンは、バーと溝との第1密パターンよりも溝が密であることを特徴とする複合プレート。
【請求項15】
内リングと外リングの間に円環状スペースを含む請求項14に記載の複合プレート。
【請求項16】
外リングの供給領域のバーの全部でなく一部分が前記円環状スペースに延びている請求項15に記載の複合プレート。
【請求項17】
前記内リングと外リングとが別個の部材である請求項14に記載の複合プレート。
【請求項18】
前記内リングと外リングとが共通のベース上に取り付けられている請求項17に記載の複合プレート。
【請求項19】
前記内リングと外リングとが共通のベース上に一体化して形成されている請求項14に記載の複合プレート。
【請求項20】
前記複合プレートが、外リングの外円周まで延びる全半径を有し、各リングがそれぞれの半径方向の幅を有し、そして、
内リングの半径方向の幅が外リングの半径方向の幅より小さい請求項14に記載の複合プレート。
【請求項21】
内リングの半径方向の幅が前記全半径の約35%より小さい請求項20に記載の複合プレート。
【請求項22】
内リングの供給領域の半径方向の幅が、内リングの仕事領域の半径方向の幅より大きく、そして、
外リングの供給領域の半径方向の幅が、外リングの仕事領域の半径方向の幅より小さい請求項20に記載の複合プレート。
【請求項23】
外リングの仕事領域のバーと溝のパターンが、少なくとも2つの領域を有し、前記領域の一つが外リング供給領域に隣接し、前記領域の他の一つが前記外リングの外円周に隣接し、そして、
前記一つの領域のバーと溝のパターンが、前記他の領域のバーと溝のパターンより密でない、
請求項22に記載の複合プレート。
【請求項24】
内リングの仕事領域全体にわたるバーと溝のパターンが均一な密度を有する請求項23に記載の複合プレート。
【請求項25】
外リングの仕事領域のバーと溝のパターンが、少なくとも2つの領域を有し、前記領域の一つが外リング供給領域に隣接し、前記領域の他の一つが前記外リングの外円周に隣接しており、そして、
前記一つの領域のバーと溝のパターンが、前記他の領域のバーと溝のパターンより密でない請求項20に記載の複合プレート。
【請求項26】
外リングの内側供給領域のバーと溝の粗いパターンが、複数の屈曲バーを含む請求項14に記載の複合プレート。
【請求項27】
外リングの供給領域と仕事領域のバーがそれぞれの高さを有し、供給領域の前記屈曲バーが、仕事領域のバーの高さより大きい高さを有している請求項26に記載の複合プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−69042(P2011−69042A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263996(P2010−263996)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2005−198626(P2005−198626)の分割
【原出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(502075342)アンドリッツ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】