説明

シアノビリン−N変異体、その修飾誘導体及びその応用

本発明は、シアノビリン-N変異体、そのPEG修飾誘導体及び薬剤調製のためのそれらの使用に関する。前記シアノビリン-N変異体は、配列Aと配列Bからなり、配列Aは、親水性とフレキシビリティーを有するリンカーペプチドであり、配列Bは、シアノビリン-Nのコドン最適化配列である。該シアノビリン-N変異体は、PEG修飾を経てその誘導体を得ている。該変異体及びその誘導体は共に、優れた抗HIV活性を示し、HIV又はその他のウイルス微生物に対する抗ウイルス薬の製造に使用される見通しがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬領域に該当し、具体的に、シアノビリン-N(CVN)変異体、そのPEG修飾誘導体及びそれらの製薬中の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
シアノビリン-N(Cyanovirin-N、CVN)は、米国の科学者BODYらがシアノバクテリアから溶出した、抗HIV活性を有するタンパク質である。CVNは、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1のエンベロープ糖蛋白であるgp120と特異的且つ高親和性に結合して、抗ウイルス活性を発揮し、この特徴によれば、ウイルスの変異の干渉を受けることもなく、同時に、広範囲スペクトル性の抗ウイルス性、安定性等の特徴を有する。それは、CVNタンパク質が価値ある抗ウイルス薬となり得ることを示している。[非特許文献1: BOYD M R, GUSTAFSON K R, MCMAHON J B, et al. Discovery of cyanovirin-N, a novel human immuno-deficiency virus-inactivating protein that binds viral surface envelope glycoprotein gp120: Potential applications to microbicide development [J]. Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 1997, 41(7): 1521-30.] 。しかし、該タンパク質の分子量が比較的小さく、且つ分子中には、二つのジスルフィド結合を有するため、該タンパク質を大腸菌で発現するのは難しく、産生量が少ない。原核生物由来の低分子タンパク質薬物として、半減期の短さ、細胞毒性、免疫応答の誘起等の欠点を有する。
【0003】
ポリエチレングリコール(PEG)は、無毒、無免疫の水溶性ポリマーであり、共有結合を介してタンパク質を修飾する。このPEG修飾は、医薬品のプロセスで、乏しい安定性や短い半減期等を有するタンパク質やペプチドの問題を解決又は改善するために用いる有効な方法である。(非特許文献2:IANG Z Y, XU S W, WANG Y Q. Chemistry for pegylation of protein and peptide molecules [J]. Chinese Journal of Organic Chemistry, 2003, 23( 12 ): 1340-7.)。PEG-マレイミドを利用して酸性条件下で、CVNを修飾することは、既に文献で報告されている。Zappeらは、62番目のグルタミンをシステインに置き換えた変異体(CVN(Q62C))を選択して、mPEG-マレイミド(mPEG-MAL)を用いて中性PH条件下で修飾した結果、その薬物性が有効に改善されたことを示している(非特許文献3:ZAPPE H, SNELL M E, BOSSARD M J. PEGylation of cyanovirin-N, an entry inhibitor of HIV [J]. Advanced Drug Delivery Reviews, 2008, 60(1): 79-87.)。
【0004】
具体的に、Zappeらの修飾策略は、62及び14番目のグルタミンをシステインに置き換えた変異体において、それぞれ20KD及び30KDのmPEG-マレイミドを選択して、中性PH及びアルカリ性に寄るPH条件下で、それを修飾したことである。その結果は、14番目のグルタミンをシステインに置き換えた変異体(CVN(Q14C))の修飾効率が非常に低いのに対して、62番目のグルタミンをシステインに置き換えた変異体(CVN(Q62C))が中性PHで、CVN変異体とmPEG-MALのモル比が1:3である条件下で、修飾率が比較的に高い。しかし、CVN(Q62C)の抗HIVの活性は、未変異のCVNより低く、且つ選択された修飾サイトがCVNの内部であるので、mPEG-マレイミド30KDa(mPEG-MAL-30KDa)の修飾を経た変異体は、抗HIVの活性が殆ど失われていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】BOYD M R, GUSTAFSON K R, MCMAHON J B, et al. Discovery of cyanovirin-N, a novel human immuno-deficiency virus-inactivating protein that binds viral surface envelope glycoprotein gp120: Potential applications to microbicide development [J]. Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 1997, 41(7): 1521-30.
【非特許文献2】IANG Z Y, XU S W, WANG Y Q. Chemistry for pegylation of protein and peptide molecules [J]. Chinese Journal of Organic Chemistry, 2003, 23( 12 ): 1340-7.
【非特許文献3】ZAPPE H, SNELL M E, BOSSARD M J. PEGylation of cyanovirin-N, an entry inhibitor of HIV [J]. Advanced Drug Delivery Reviews, 2008, 60(1): 79-87.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術に存在する欠陥や欠点に対して、本発明の目的として、まずは、より宿主に発現しやすく、より純化しやすく、且つ更なる修飾に有利である、CVN変異体を提供することにある。
【0007】
本発明のもうひとつの目的としては、タンパク質自身の細胞毒性及び免疫原性を低下させて、より応用に適応できる、CVN変異体の修飾誘導物を提供することにある。
【0008】
本発明のもう一つの目的としては、前記変異体及び修飾誘導物をエイズの予防及び/又は治療用薬物の製造への使用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を実現するために、本発明は、以下の技術を提供する。
【0010】
アミノ配列がA配列とB配列からなり、A配列がB配列のN末端に位置し、
A配列が
a.シーケンス表のSEQ ID NO: 1、
b.シーケンス表のSEQ ID NO: 1のアミノ残基配列について、ひとつ又はいくつかのアミノ酸を置換、欠失、挿入することにより得られた、親水性でフレキシブルな特性を有するもの、
の内いずれかひとつであり、
B配列が、
c.シーケンス表のSEQ ID NO: 2、
d.シーケンス表のSEQ ID NO: 2のアミノ残基配列について、ひとつ又はいくつかのアミノ酸をそのN末端の前の三つの残基を変更せずに置換、欠失、挿入することにより得られた特異的な抗HIVウイルス活性を有するもの、
の内何れか一つであることを特徴とするシアノビリン-N変異体。
【0011】
また、本発明は、シアノビリン-N変異体のコードされたヌクレオチド配列を提供する。
前記コードされたヌクレオチド配列は、
e.シーケンス表のSEQ ID NO: 3、
f.ストリンジェンシー条件下において、シーケンス表のSEQ ID NO: 3に限定したDNA配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列、
の内何れかひとつの配列を含有することが好ましい。
ここで、ストリンジェンシー条件とは、低塩濃度且つ高温であるハイブリダイゼーション条件であることを指し、例えば、0.1×SSC、0.1%SDS及び温度65℃の条件である。
【0012】
前記ヌクレオチド配列を、主に、宿主での目的蛋白の発現に用い、前記ヌクレオチド配列を含有する発現ベクター、細胞系、宿主菌等は共に、通常の技術手段を通して得ることができる。タンパク質が宿主から純化される過程も、通常の方法を用いても良い。
【0013】
純化した蛋白を得た上、本発明は、また、前記CVN変異体のN末端にPEG修飾を行い、その修飾サイトが一般的にN末端のグリシン残基のα-アミノ基に対する部位である、CVN変異体修飾誘導物を提供する。
【0014】
前記PEG修飾の修飾剤としては、mPEG-ALD(モノメトキシポリエチレングリコールアルデヒド)を用いることが好ましい。前記mPEG-ALDの分子量は、10KD〜20KDであることが好ましい。
【0015】
前記変異体及び修飾誘導物共に、エイズの予防及び/又は治療の薬物の製造に応用することができる。同様な抗ウイルスの機構に基づいて、本発明の変異体及び修飾誘導物は、その他のウイルス微生物による病気の予防及び/又は治療用薬物の製造に使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
先行技術に対して、本発明は、次の有益な効果を有する。
【0017】
本発明が提供したCVN変異体及びその修飾誘導体は、試験管内組換えCVNの抗ウイルス機能をより実現させるためのものであり、組換えL-CVNの抗HIV活性は向上した(WST法及び細胞融合法)。本発明において製造したLCVN末端に親水性でフレキシブルなペプチド配列を導入したため、N末端の規定サイトでのアミノ基修飾を行うことができる。我々の実験結果は、LCVNがN末端規定サイトがアミノ基で修飾された後、活性のある修飾物を得ることだけではなく、修飾物の抗ウイスル活性を一層向上させたことを証明した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】pET3c-6His-SUMO-LCVN組換えプラスミド図である。
【図2】組換えpET3c-6His-SUMO-LCVNプラスミドの制限酵素処理及びPCR分析結果である。ここで、M: DL2000 DNA marker、レーン1: pET3c -6His-SUMO-LCVN / Nde I+BamH I; レーン2: PCR産物である。
【図3】SDS-PAGE電気泳動のBL21/pET3c-6His-SUMO-LCVNの蛋白発現特性結果。ここで、各レーンは、左から右へ順次、IPTG未添加、IPTG誘導20h、誘導発現粉砕物の遠心上澄液、誘導発現粉砕物の遠心沈殿、である。
【図4】抽出タンパクLCVNの解析結果である。各レーンは、左から右へ順次、Sumo-LCVN融合タンパク、Sumo プロテアーゼ処理後のSumo-LCVN融合タンパク、LCVN タンパクである。(*)Sumo-LCVN 融合タンパクを示す。(**)LCVN タンパクを示す。
【図5】組換えLCVN の純度に関するRP-HPLC分析。
【図6】異なるpH及び混合比条件下での、10K mPEG-ALD修飾LCVNの Tricine-SDS-PAGE電気泳動パターン。ここで、左から右へ、レーン1はタンパクマーカー、レーン2、3、4はそれぞれ、PH3.5で、LCVNと10K mPEG-ALDのモル比が1:1、 1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターン、レーン5、6、7はそれぞれ、PH4.0で、LCVNと10K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターン、レーン8、9、10はそれぞれ、PH5.0で、LCVNと10K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5 の時の修飾物の電気泳動パターン、レーン11、12、13はそれぞれ、PH6.0で、LCVNと10K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターン、レーン14、15、16はそれぞれ、PH7.0で、LCVNと10K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターンである。
【図7】異なるPH 及び混合比条件下での、10K mPEG-ALD修飾LCVNの修飾率の比較図である。
【図8】異なるPH及び混合比条件下での、20K mPEG-ALD修飾LCVNのTricine-SDS-PAGE電気泳動パターン。ここで、左から右へ、レーン1は、タンパク マーカー、レーン2、3、4はそれぞれ、PH3.5で、LCVNと20K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターン、レーン5、6、7はそれぞれ、PH4.0で、LCVNと20K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターン、レーン8、 9、10はそれぞれ、PH5.0で、LCVNと20K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターン、レーン11、12、13はそれぞれ、PH6.0で、LCVNと20K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターン、レーン14、15、16はそれぞれ、PH7.0で、LCVNと20K mPEG-ALDのモル比が1:1、1:3、1:5の時の修飾物の電気泳動パターンである。
【図9】異なるPH及び混合比条件下での、20K mPEG-ALD修飾LCVNの修飾率の比較図である。
【図10】異なる反応時間での、10K mPEG-ALD修飾LCVNのTricine-SDS-PAGE 電気泳動パターン。ここで、レーン1は、タンパク マーカー ,レーン2-8の それぞれは、反応後1h、3h、5h、7h、9h、12hおよび24h のサンプル電気泳動結果。レーン9 は、未修飾のLCVNである。
【図11】異なる反応時間での、20K mPEG-ALD修飾LCVNのTricine-SDS-PAGE電気泳動パターン。ここで、レーン1は、タンパク マーカー、レーン2-8は それぞれ、反応後1h、3h、5h、7h、9h、12hおよび24h のサンプル電気泳動結果。レーン9 は、未修飾の LCVNである。
【図12】10K mPEG-ALD修飾LCVNの分離・精製のためのSP-Sepharose溶出曲線。
【図13】10K mPEG-ALD修飾LCVNの、SP-Sepharose分離精製を経た各組成の Tricine-SDS-PAGE電気泳動パターン。ここで、レーン1は、タンパクマーカー、レーン2-5はそれぞれ、修飾反応混合物、ペネトレーションピーク、80mM NaCl 含有buffer A の溶出ピーク、400mM NaCl含有buffer Aの溶出ピークである。
【図14】20K mPEG-ALD修飾LCVN修の、SP-Sepharose分離精製を経た溶出曲線。
【図15】20K mPEG-ALD修飾LCVNの、SP-Sepharose分離精製を経た各組成の Tricine-SDS- PAGE電気泳動パターンであり、レーン1は、タンパクマーカー、レーン2-5 は、修飾反応の混合物、ペネトレーションピーク、70mM NaCl 含有buffer A の溶出ピーク、400mM NaCl 含有buffer Aの溶出ピークである。
【図16a】異なる濃度のLCVN及びその修飾物で処理した後の、MT-4細胞生残率(%)である。
【図16b】異なる濃度のLCVN及びその修飾物で処理した後の、MT-4細胞生残率(%)である。
【図16c】異なる濃度のLCVN及びその修飾物で処理した後の、MT-4細胞生残率(%)である。
【図16d】異なる濃度のLCVN及びその修飾物で処理した後の、MT-4細胞生残率(%)である。
【図17a】CVNおよびLCVNの、HIV-1/IIIB 増殖抑制率(%)である。
【図17b】CVNおよびLCVNの、HIV-1/IIIB 増殖抑制率(%)である。
【図18】LCVN及びそのPEG修飾物の抗ヒト免疫不全ウイルス活性を示す。ここで、(a)は、位相差顕微鏡写真で、24h培養後の(1)MOLT-4細胞、(2)MOLT-4/IIIB細胞、 (3) MOLT-4とMOLT-4/IIIBの共培養細胞、(4)疑似処理(MOCK)の共培養細胞、(5)−(8)は、濃度113nMの、CVN、LCVN、10kPEG-LCVN、20kPEG-LCVNで処理後の、共培養細胞。黒色矢印で示すのが、HIV誘導で見られる融合巨大細胞である。 (b)は、CNV、LCVN、10kPEG-LCVN、20kPEG-LCVNの、各融合抑制活性であり、すべての実験は少なくとも、3回の独立実験後の統計処理結果である。
【図19】LCVN 及びそのPEG 修飾物の抗HSV-1活性に関するCPE観察結果である。A、正常対照、 B、ウイルス対照、C、陽性薬物ACV対照(1μg/ml)、D、L-CVNサンプル(1.562μg/ml)、E、SUMO-L-CVNサンプル(3.125μg/ml)、F、mPEG-ALD-10kDa-L-CVN(3.125μg/ml)、G、mPEG-ALD-20kDa-L-CVN(3.125μg/ml)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をより理解するために、本発明のいくつかの好ましい実施例を挙げたが、本発明の実施形態がこれに限られるものではない。
【0020】
本発明の実施例に関わる主な材料は、次の通りである。宿主菌大腸菌BL21(DE3)(Novagen社から購入 )、プラスミドpET3c( Novagen社から購入)、pET3c-SUMO-CVNは本室で保存するもの(その構築方法については既に特許出願を提出し、“その発明の名称は、「組換え藍藻の抗ウイルスタンパクの製造方法及び応用」であり、その出願番号は 200810198926.0である”、プラスミドの構築も公知の遺伝子工学方法を用いてもよく、その基本構想は、先ずPCR方法を通してSUMO-CVN 融合配列を得て、pET3cベクターと連結してからプラスミドpET3c-SUMO-CVNを得たことである。 )、SUMOプロテアーゼ(海基生物有限会社から購入)、Taqポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、DNA分子量標準、各種制限酵素は、タカラから購入、タンパク質分子量標準品 (ポリ研究所バイオテック株式会社から購入)、プライマーは上海生工生物会社から購入、Ni2+Sepharose Fast Flow、SP Sepharose Fast FlowはGE Healthcare会社から購入、MTT、WST はアメリカ SIGMA 社から購入、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)F株は 武漢大学ウイルス研究所から購入(CGMCC No.0396 )、Vero 細胞(CCL-81(商標))、MOLT-4細胞(CRL-1582(商標))、MT-4細胞(CRL-1942(商標))、HIV-I/IIIBウイルス(CRL-1973(商標)) 等は、ATCCから購入、mPEG-ALD(10K)およびmPEG-ALD(20K)は北京凱正生物工程発展有限会社から購入。
【0021】
NTA-0 buffer(20mmol/L Tris-HCl、pH 8.0、0.15mol/L NaCl)、NTA-20 buffer (20mmol/L Tris-HCl、pH 8.0、0.15mol/L NaCl、20mmol/Lイミダゾール)、NTA-250 buffer(20mmol/L Tris-HCl、pH 8.0、0.15mol/L NaCl、250mmol/L イミダゾール)、消化緩衝液(20mmol/L Tris-HCl、pH 8.0、0.15mol/L NaCl)、buffer A (20mmol/L NaAc-Ac、 pH 4.0)。
【0022】
実施例
1.組換えプラスミドpET3c-6His-SUMO-LCVNの構築
SUMO-L-CVN遺伝子の構築合成を二つのステップに分けて行ない、先ず二回のPCRを通して、L-CVN遺伝子を合成し、第一回PCR はpET3c-SUMO-CVNプラスミドを鋳型とし、F1-CVN、R-CVNを上下流プライマー とする。反応システムが鋳型1ngであり、上下流プライマーが各1μM、20μl Taq PCR MasterMixで、40μlまで水を加え、反応混合物を94℃で1min変性し、55℃までにアニーリングし、1min 保持し、72℃で1min伸長し、29 回サイクルを行った。反応物は、1%アガロースゲル電気泳動を行ない、ゲルから目的フラグメントを回収し、次のPCR 鋳型とする。第二回PCRは前回のPCR産物を鋳型とし、F2-CVN、R-CVNが上下流プライマーペアであり(その中、F2-CVNプライマーには、コードされた15個アミノ酸残基のフレキシブルなペプチドを含有する)、L-CVN全長配列を合成した。SUMO全長配列はPCR方法を通してpET3c-SUMO-CVNから合成した。SUMO配列末端とL-CVN配列前端の26bp重複相補配列を利用して、PCRを行ない、SUMO配列およびL-CVN配列を伸長鋳型とし、F-SUMO、R-CVNが上下流プライマーであり、通常の PCR条件下において、反応を行ない、反応物が1%アガロースゲル電気泳動を行ない、またゲルを回収し、SUMO-L-CVN全長配列を得た。
【0023】
プラスミドpET3Cおよび6His-SUMO-LCVN全長配列それぞれは、Nde IおよびBamH Iの二つの酵素で消化され、消化産物を1%アガロースゲルで電気泳動し、その消化産物を回収し、TDNAリガーゼで産物を連結し、大腸菌JM109コンピテントセルに組み込んで、アンピシリン含有 LB平板上に塗布し、37℃で一晩培養し、プラスミドを溶出し、PCRで増幅した後、Nde IとBamH I二つの酵素で消化してから鑑定し、陽性プラスミドをInvitrogen社に送り、シークエンスを行う。
【0024】
【表1】

【0025】
2.LCVN工程菌(組換え菌)のフラスコ振とう培養、タンパク精製および純度測定
シークエンシングが正しいプラスミドを大腸菌BL21(DE3)に転換し、工程菌 BL21[pET3c-6His-SUMO-LCVN]を得て、単細胞クローンを選択して培養して発現誘導し、 菌体を収集し、タンパクをSDS-PAGE 電気泳動で分析した。その結果は、BL21[pET3c-6His-SUMO-LCVN]陽性クローン菌株を誘導した後、大きさが約28kDaである融合タンパクを発現し、未誘導コントロール群は、相応位置で肉眼で見られる発現がなく、超音波で菌体を粉砕した後、融合タンパクが上澄液に存在し、可溶性発現となり、ゲル光密度スキャンを経て,可溶性目的タンパクが上澄液総タンパクの28.3±3.4 %を占めることを示す(図3)。
【0026】
高発現菌株を選択して、アンピシリン含有(100mg/L)LB培地1Lに接種し、37℃、 180rpmでOD600=0.6〜1.0までに培養し、温度を20℃に下げ、終濃度が0.5mMになるよう、IPTGを添加し、24h誘導発現した。4℃、6000xg、10minで遠心して菌体を収集し、一回凍結融解した後、菌体を沈殿し、1:10比率でNTA-10 bufferに再びサスペンションし、超音波で粉砕し(工作時間5s、間欠時間5s、99回を1循環とし、3循環を重複した)、4℃、25000xg、 30minで遠心して上澄液を収集した。
【0027】
上澄液を、カラム体積が20mlであるNi-NTAの親和クロマトグラフィーに入れ、流速が0.6ml/minで、NTA-0 bufferで基準線まで洗い、流速が1ml/minでNTA-20 bufferで要らないタンパクを洗浄し、NTA-250 bufferで目的タンパクを溶出した。純化した後の目的タンパク6His-SUMO-LCVNがSephadex G-25分子篩でイミダゾールを除去した後、SUMOプロテアーゼでの消化を行ない、SUMO 融合タンパクを除去した。
【0028】
濃度が1mg/mlになるよう、 6His-SUMO-LCVNを調整し、1U SUMOプロテアーゼ/mgを添加し、タンパクを融合し、30℃で、1h消化した。6His-SUMO標識、SUMOプロテアーゼ共に、6×His標識を含有するため、消化した後のサンプルを再びNi-NTA親和クロマトグラフィーに入れ、精製を行ない、6His標識付けのSUMO、未消化の6His-SUMO-LCVNおよびSUMOプロテアーゼを除去し、非融合の目的タンパクLCVNを得て、G-25分子篩カラムを経て塩を除去した後、凍結乾燥してLCVN製品を得て、物理的科学的特性を測定、活性測定又はPEG修飾用に供す。
【0029】
図3は、工程菌BL21[pET3c-6His-SUMO-LCVN]がIPTG誘導を経た後のタンパク発現図であり、その図から、誘導後、分子量が28kDである場所に明確な太いタンパク帯が現れ(レーン3)、それが6His-SUMO-LCVNの論理分子量と一致し、超音波で粉砕した後、目的タンパクが菌体粉砕後の上澄液に位置し、含量が菌体の可溶性タンパクの40%を占めることがわかった(バンド2)。図 4 は、SDS-PAGE分析LCVN精製過程であり、その中の、*で示す場所が6His-SUMO-LCVN融合タンパクであり、**で示す場所がLCVNタンパクである。図5は、LCVN製品の逆相高速液体クロマトグラフィ ー(RP-HPLC)純度分析結果であり、カラム型はC-18リバース柱で、測定器波長が280nm、流動相A:0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)含有超純水、流動相B:アセトニトリル、40%-60%のBで勾配溶離を行ない、保留時間が4-6minの間で、LCVNの溶出ピークが出た。
【0030】
3.LCVN工程菌の中規模発酵およびタンパク製造
工程菌BL21[pET3c-6His-SUMO-LCVN]から、単細胞クローンを選択して培養を行ない、試験管で誘導発現し、高発現菌株を選択して中規模発酵した。それぞれは三角フラスコ中で一および二種を適度の濃度までに培養し、10%接種量で発酵培地15Lに接種した。自動的に温度を37℃に制御し、適度の溶存酸素レベルをキープするよう、適宜回転速度および通気量を調整し、PH が7.0〜7.2になるよう、NaOHおよび HClで調整した。菌体の密度(OD600)が12程度になった時に、温度を20℃に下げ、終濃度が0.5mMになるよう、IPTGを添加し、20h誘導発現した。100ml/min、9000g連続的に遠心して菌体を収集し、15Lの発酵培地で約550g の湿菌体を得ることができ、収集した菌体を-20℃の冷凍庫で保存した。
【0031】
菌体沈殿を1:10の比率でNTA-0 bufferにサスペンションし、超音波で粉砕し(工作時間5s、間欠時間5s、99回を1循環とし、3循環を重複した)、4℃、25000xg、30minで遠心して上澄液を収集した。上澄液を、カラム体積が20mlであるNi-NTAの充填料に入れ、流速が1ml/minで、NTA-0 bufferで基準線まで洗い、流速が1ml/minでNTA-20 bufferで要らないタンパクを洗浄し、NTA-250 bufferで目的タンパクを溶出した。精製した後の目的タンパク6His-SUMO-LCVNがSephadex G-25分子篩でイミダゾールを除去した後、SUMOプロテアーゼでの消化を行ない、SUMO 融合タンパクを除去した。
【0032】
濃度が1mg/mlになるよう、 6His-SUMO-LCVNを調整し、1U SUMOプロテアーゼ/mgを添加し、タンパクを融合し、30℃で、1h消化した。6His-SUMO標識、SUMOプロテアーゼ共に、6×His標識を含有するため、消化した後のサンプルを再びNi-NTA親和クロマトグラフィーに入れ、精製を行ない、6His標識付けのSUMO、未消化の6His-SUMO-LCVNおよびSUMOプロテアーゼを除去し、非融合の目的タンパクLCVNを得て、G-25分子篩カラムを経て緩衝液を交換した後、制限量が3KDである限外ろ過を用いLCVNタンパクを濃縮し、物理的化学的特性測定、活性測定又はPEG修飾用に供す。
【0033】
4.LCVNタンパクの PEG修飾
薬用タンパクに対するPEG修飾を行うのは、その薬物動態学的特性、安定性および免疫原性等の多種類の製薬特性を改善する有効な方法である。タンパク質がPEG 修飾に提供できるサイトは、側鎖アミノ基、 N端アミノ基、側鎖カルボキシ基、C端カルボキシ基、側鎖メルカプト基等の多種類を含有する。先行技術のカルボキシ基修飾技術は、非特異的架橋反応を生じやすいため、アミノ基修飾がよく用いられ、その技術発展もより成熟している。Zappe等の研究結果は、野生型CVNの側鎖アミノ基又はN 端アミノ基に対する修飾は該タンパクの活性を破壊したことを示し、よって、著者が先ずCVNに対して部位特異的突然変異を行って、Q62C変異体を得、そして、62サイトで導入したCysに側鎖メルカプト基修飾を行ない、活性のあるタンパクを得た。自然のCVNでは、既に、存在する4個のCys残基の間で2組のジスルフィド結合を形成し、また、溶液中において、タンパク質のジスルフィド結合が動的異性およびバランス状態に置かれ、よって、Q62C変異を導入した後,導入したCysがジスルフィド結合の正しい配合に干渉しないことを避けにくく、或いは非62サイトのCys 修飾になってしまい、著者の最後の実験結果もCVN Q62変異体及びその修飾物の活性がすべて野生型CVNより低いことを示した。
【0034】
本発明では、製造したLCVN末端に親水性でフレキシブルな15ペプチド配列を導入したため、N 末端の部位特異的アミノ基修飾を試みてもよい。我々の実験結果は、LCVNがN末端の部位特異的アミノ基修飾をした後、活性のある修飾物を得ることだけではなく、しかも修飾物の抗ウイルス活性を一層向上することを証明した。
【0035】
アミノ基に対するPEG修飾の方法は、極めて多く、選択できる修飾剤も多く、本発明ではmPEG-ALD(10K)およびmPEG-ALD(20K)を選択して修飾剤とし、基質:修飾剤の比率、修飾pH、修飾反応時間等三つの方面から、LCVNの最適PEG修飾条件を選択した。
【0036】
選択pHが3.5、4.0、5.0、60、7.0、イオン強度が20mMのNa-Ac緩衝液、反応システム中のLCVNの濃度が5mg/ml、LCVNとmPEG-ALD(10K)のモル比がそれぞれ1:1、1:3、1:5を選択し、NaCNBHの終濃度は5mg/mlである。室温において、振動器で振動反応させ、反応3h後、サンプリングし、電気泳動で修飾反応の効果を観察した。mPEG-ALD(10K)でLCVN修飾した単純修飾物がSDS-PAGEにおける発現分子量が約30KDであり、SDS-PAGEの分析結果は、pH4.0、LCVNとmPEG-ALD(10K)のモル比が 1:3である条件において、単純修飾率が最も高いことを示した(図 6)。
【0037】
同様な方法で、mPEG-ALD(20K)のLCVN修飾の最適修飾pHおよび供給比を研究した。 mPEG-ALD(20K)でLCVNを修飾した後、単純修飾物がSDS-PAGEにおける発現分子量が 約50KDであり、実験結果は、pH5.0、LCVNとmPEG-ALD(20K) のモル比が1:1である条件において、単純修飾率が最も高いことを示した(図 18)。
【0038】
最適の修飾pHおよび供給比を確定した上で、mPEG-ALD(10K)およびmPEG-ALD(20K) のLCVN修飾を、それぞれ反応1h、3h、5h、7h、9h、12hと24hでサンプリングし、Tricine-SDS-PAGE電気泳動の最適の反応時間を観察した。SDS-PAGEの分析結果は、反応時間がmPEG-ALD(10K)およびmPEG-ALD(20K)のLCVN修飾反応に顕著な影響なく、時間コストを総合的に考慮すれば、最適の修飾反応時間が室温振動で、反応2hとすることが好ましいことを示した(図10および図11)。
【0039】
5.LCVNのPEG修飾物の分離精製
LCVNがPEG-ALDで修飾した後、 反応混合物には、主に、未修飾のLCVN、余ったPEG、PEGで多めに修飾したLCVN、PEG単純修飾のLCVNが存する。AKTA prime に加え、 分離精製システムを用いて、SP sepharoseクロマトグラフィーで単純修飾のmPEG-ALD-LCVNを分離精製し、流動相が20mMであるNa-Ac緩衝液(buffer A)とし、サンプルを入れる前に、まず、カラム体積の5倍のbufferAでカラムをバランスさせ、サンプルを入れてから、貫通ピークを収集し、そして、異なる濃度のNaCl含有bufferAで溶出を行い、各溶出ピークを収集した。流速は1ml/min、測定波長は、280nmである。収集したサンプルをSDS-PAGEゲル電気泳動で測定した。
【0040】
mPEG-ALD(10K)で LCVNを修飾した混合物は、SP sepharose陽イオンクロマトグラフィーで精製した後、修飾剤mPEG-ALDおよび多めに修飾された産物はSP sepharoseと 結合せず、貫通し、80mM NaCl含有buffer Aの溶出産物が単純修飾の mPEG-ALD(10K)-LCVNであり、400mM NaCl含有buffer Aの溶出産物は未修飾のLCVNである。図12は、mPEG-ALD(10K)-LCVNの分離精製の溶出曲線であり、ピーク1 が修飾剤および多めに修飾した産物、ピーク2 が単純修飾物、ピーク3が未修飾基質である。図13がSDS-PAGEで各溶出組成を分析した図であり、レーンM がタンパク質分子量標準、レーン Aが反応サンプルで、未修飾基質、単純修飾物および多めに修飾した産物が見られ、レーン1は貫通ピーク、レーン2は単純修飾物、言い換えれば、目的タンパクmPEG-ALD(10K)-LCVNであり、レーン3が未修飾物である。
【0041】
mPEG-ALD(20K)でLCVNを修飾した混合物は、SP sepharose陽イオンクロマトグラフィーで精製した後、修飾剤mPEG-ALDも多めに修飾した産物もサンプルの貫通ピークに存在し、70mM NaCl含有buffer Aの溶出産物が単純修飾の mPEG-ALD(20K)-LCVN、400mM NaCl含有buffer A の溶出産物が未修飾のLCVNである。
【0042】
図14は、mPEG-ALD(20K)-LCVNの分離精製の溶出曲線であり、ピーク1が修飾剤および多めに修飾した産物、ピーク2が単純修飾物、ピーク3が未修飾基質である。図15は、 SDS-PAGEで各溶出組成を分析した図であり、レーンMがタンパク質分子量標準、レーンAが反応サンプルで、未修飾基質、単純修飾物および多めに修飾した産物が見られ、レーン1は貫通ピーク、レーン2は単純修飾物、言い換えれば、目的タンパク mPEG-ALD(10K)-LCVNであり、レーン3が400mM NaClの溶出組成であり、未修飾物が見られたが、部分的な単純修飾物も含有する。
【0043】
応用実施例1 WST法でT 細胞に対するLCVNの細胞毒性の測定
CVN、LCVN及びPEG修飾物を、RPMI-1640培養液で5倍シリーズ希釈したRPMI-1640培養液とし、96ウェルの細胞培養プレートに入れ、ウェル毎に50μlで、CVNおよびLCVNの希釈範囲を10μg/mlから 0.04μg/mlとし、PEG修飾でLCVNの希釈範囲を50μg/mlから0.19μg/mlとする。MT-4細胞濃度を1×10/mlまでに調製し、ウェル毎に100μlで、均一してから、37℃で静置し、5% CO細胞培養箱で培養し、同時に細胞対照および陽性薬物対照(63nM アジドチミジン、AZT)を設け、サンプルごとに、平行的に三つの重複ウェルを測定した。四日後、培養プレートのウェル毎に10μl WST-1(水溶性テトラゾール、5mmol/L)溶液を入れ、引き続き4時間培養し、プレートリーダーに置き、吸光度(A)を読み取り、波長450/650nmで、細胞生残率(Relative percentage、RP、%)を計算し、 RPに基づいて、50% 毒性濃度(CC50 )を計算した。
【0044】
細胞生残率 (Relative percentage、%)=薬物処理群A値/細胞対照群A値×100%
図16は、異なる濃度のCVN、LCVN及びその修飾物等の4種類のタンパクでMT-4を処理した後の細胞生残率を示す図であり、図中において、N.C.が未処理のコントロール細胞を指し、コントロール細胞の密度が100%とする。AZTは陽性対照薬物、63nM アジドチミジンである。計算後の50%毒性濃度を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
応用実施例2 WST 法によるLCVNの抗ヒト免疫不全ウイルス活性の測定
CVN、LCVN及びPEG修飾物を、5倍シリーズ希釈したRPMI-1640培養液とし、96ウェルの細胞培養プレートに入れ、ウェル毎に50μlを入れた。MT-4細胞濃度を1×10/mlまでに調製し、ウェル毎に100μlで、均一してから、HIV-1/IIIBウイルスサスペンション液50μlを添加し、力価が100TCID50である。37℃で静置し、5% CO細胞培養箱に培養し、同時に細胞対照、ウイルス対照および陽性薬物対照(アジドチミジン、AZT)を設け、サンプルごとに、平行的に三つの重複孔を測定した。四日後、培養プレートにウェル毎に10μl WST-1(水溶性テトラゾール、5mmol/L)溶液を入れ、引き続き4時間培養し、プレートリーダーに置き、吸光度(A)を読み取り、波長が450/650nmである。
【0047】
細胞生残率(Relative percentage、%=薬物処理組A値/細胞対照組A値×100%
ウイルス抑制率(%)=(薬物処理組 A450/650-ウイルス対照組A450/650)/(細胞対照組 A450/650-ウイルス対照組 A450/650)×100%
Reed-Muench 法で50%抑制濃度(IC50)を計算し、 実施例×の50% 毒性濃度 (CC50)に基づいて、選択指数(TI)を計算した。TI=CC50/IC50。
【0048】
表3から分るように、陽性薬物AZTに対して、HIV-1/IIIB増殖に対するCVN、LCVNの抑制活性がより高い。
【表3】

【0049】
応用実施例3 融合抑制法でLCVN及びそのPEG修飾物の抗ヒト免疫不全ウイルス活性の測定
従来の研究により、T細胞間に伝播するHIV感染は、主に感染細胞表面発現のgp120の介入を通して、未感染の細胞の受容体と結合し、融合細胞を形成することにより発生したことが示されている。CVNは、特異的にgp120と結合し、 感染細胞と正常細胞の間の融合を抑制し、ウイルスの伝播を阻止する。よって、我々は、細胞融合を応用して、阻害モデルを適用し、 LCVN及びその誘導物の抗ウイルス活性を測定する[Tochikura TS, Nakashima H, Tanabe A, Yamamoto N. Human immunodeficiency virus (HIV)-induced cell fusion: quantification and its application for the simple and rapid screening of anti-HIV substances in vitro. Virology, 1988, 164(2): 542-546]。
【0050】
対数期まで生長したMOLT-4細胞およびMOLT-4/IIIB細胞の密度が1×10/mlになるまで調製し、それぞれ250μlの細胞サスペンション液を取り、等体積で混合し、24ウェルの細胞培養プレート中(細胞総数が5×10/500μl/ ウェルである)に添加し、CVN、LCVN及びその PEG修飾物を4倍シリーズ希釈した牛胎児血清および抗生物質含有RPMI-1640培地とし,受薬物の種類毎に、3つの濃度(452nM、113nM、28nM)を選定し、等体積加で細胞サスペンション液に入れ、同時に各種対照組を設け、全てのサンプルを並行的に2個の重複ウェルとし、37℃、5%COで24 時間培養した。24h後、細胞サスペンション液を取り、 トリパン青で染色した後、細胞カウントプレートに入れ、顕微鏡で生存したMOLT-4細胞数をカウントした。MOLT-4/IIIB細胞がHIV-I/IIIBウイルス顆粒を耐えずに生じるため、しかも、正常のMOLT-4細胞との融合により、大きい多核細胞(合胞体)を形成し、正常の宿主細胞を感染し、細胞をカウントするに際して、融合細胞がカウントプレートに入らないため、細胞カウントプレートにおける正常の大きさのMOLT-4又はMOLT-4/IIIB細胞数をカウントし、また、形成した合胞体の細胞数を推算することができ、投薬共培養組の細胞数および共培養しなかったMOLT-4細胞数を比較し、融合指数(FI、fusion index)を計算した。
FI=1−(共培養細胞ウェルの細胞数÷MOLT-4細胞のみ含有対照ウェル中の細胞数)
投薬共培養細胞および未投薬共培養細胞の融合指数を比較し、融合抑制率(FIR、fusion inhibition rate)を計算した。
FIR (%)=[1-(FIT/FIC)]×100、その中、FITは投薬サンプルの融合指数、FICは、未投薬共培養細胞の融合指数である。
【0051】
【表4】

表4から、HIV-1/IIIBに対するLCVNの融合抑制活性は、どの分量の組でも、CVNより高く、また、中分量及び高分量の時、LCVNのPEG修飾物の活性が未修飾のLCVNより高いことが分る。
【0052】
図18(a)は、位相差顕微鏡で、24h培養後の(1)MOLT-4 細胞、(2)MOLT-4/IIIB細胞、(3)共培養後の細胞、(4)仮処理の共培養後の細胞、(5-8)濃度が 113nMであるCVN/LCVN/10kPEG-LCVN/20kPEG-LCVN 処理後の共培養細胞を観察し、黒色矢印で示す場所が融合の巨大細胞であり、未共培養組には融合細胞がなく、共培養組には、典型の融合細胞が見られるのに、投薬組は、殆ど融合細胞が見られない。
【0053】
図18(b)は、CNV、LCVN、10kPEG-LCVN、20kPEG-LCVNの融合抑制活性であり、全ての実験は少なくとも、3回独立実験後の統計学の処理結果である。HIV-1/IIIBに対するLCVNの融合抑制活性は、どの分量の組でも、明確にCVNより高く、また、中分量及び高分量の時、LCVNのPEG修飾物が、分子量向上に連れ、活性が高くなるものの、低分量組には、PEG修飾物の活性が分子量の向上に連れ、かえて低下してしまう。
【0054】
応用実施例4 MTT法でLCVNの抗単純ヘルペスウイルス(HSV-1)活性の測定
単純ヘルペスウイルスI型(HSV-I)は、人に広い感染を起す一種類のDNAウイルスであり、人類は、その唯一の宿主となり、健康成人の中には、約90%がHSV-1を感染している。HSV-Iは、口唇疱疹、ヘルペス性角結膜炎、新生児脳炎等の多種類の病気を起し、HSV-I は、神経節内に潜伏して感染することができるため、その症状が繰り返しやくい。本実験は、MTT法を用いて、組換えLCVN及びその修飾物、野生型 CVNのVero 細胞に対する毒性を測定し、CPE法で細胞に対する薬物の活性を観察した。
【0055】
単層Vero 細胞に、異なる希釈度の受薬物および100TCID50のHSV-1 ウイルス液を各50μl添加し、同時に正常細胞対照及びウイルス対照組を設けた。5% COで48h培養し、ウェル毎に5mg/ml MTT 10μlを入れ、 5% COで引き続き4h培養し、上澄液を捨て、ウェル毎に200μl DMSOを添加し、室温、遮光で30min を放置し、培養プレートを10min程度振動し、マイクロプレートリーダーで比色し(波長570nm 、波長630nmを参照)、吸光度を測定し、サンプルの50%毒性濃度(50% cytotoxic concentration、CC50)を計算した。
【0056】
図19は、一回典型実験後の細胞の位相差顕微鏡下での形態であり、細胞に対するウイルスによる細胞変性効果(B)及び細胞に対する保護効果が見られる。その結果は、 LCVN及びその修飾物共に、良好な抗HSV-1活性を有し、質量濃度が近く且つモル濃度が比較的に低い条件下において、LCVN及びそのPEG修飾物は、陽性対照薬物ACVと殆ど近い抗ウイルス活性を示すことがわかる。毒性測定結果から、PEG修飾後は、Vero 細胞に対するLCVNの毒性が明確に低下したことが分る。
【0057】
前記実施例は、本発明の好ましい実施形態である。本発明の実施形態は、前記実施例に限定されたものではなく、本発明の基本思想及び原理を逸らさないその他の如何なる変更、修飾、置換、組み合わせ、簡略すべては、同等の置換方式となり、本発明の保護範囲に該当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ配列がA配列とB配列からなり、A配列がB配列のN末端に位置し、
A配列が、
a.シーケンス表のSEQ ID NO: 1、
b.シーケンス表のSEQ ID NO: 1のアミノ残基配列について、ひとつ又はいくつかのアミノ酸を置換、欠失、挿入することにより得られた、親水性でフレキシブルな特性を有するもの、
の内何れか一つであり、
B配列が、
c.シーケンス表のSEQ ID NO: 2、
d.シーケンス表のSEQ ID NO: 2のアミノ残基配列について、ひとつ又はいくつかのアミノ酸をそのN末端の前の三つの残基を変更せずに置換、欠失、挿入することにより得られた特異的な抗HIVウイルス活性を有するもの、
の内何れか一つであること、
を特徴とするシアノビリン-N変異体。
【請求項2】
請求項1に記載のシアノビリン-N変異体がコードされたヌクレオチド配列。
【請求項3】
e.シーケンス表のSEQ ID NO: 3、
f.ストリンジェンシー条件下において、シーケンス表のSEQ ID NO: 3に限定したDNA配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列、
の内何れか一つの配列を含有することを特徴とする請求項2に記載のシアノビリン-N変異体のコードされたヌクレオチド配列。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のヌクレオチド配列を含有することを特徴とする発現ベクター。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のヌクレオチド配列を含有することを特徴とする宿主菌。
【請求項6】
請求項1に記載のシアノビリン-N変異体のN末端にPEG修飾を行うことを特徴とするシアノビリン-N変異体修飾誘導体。
【請求項7】
前記PEG修飾の修飾剤がモノメトキシポリエチレングリコールアルデヒド(mPEG-ALD)である請求項6に記載のシアノビリン-N変異体修飾誘導体。
【請求項8】
前記mPEG-ALDの分子量が10KD〜20KDである請求項6に記載のシアノビリン-N変異体修飾誘導体。
【請求項9】
請求項1に記載のシアノビリン-N変異体の、エイズの予防及び/又は治療用薬物の製造への使用。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のシアノビリン-N変異体の修飾誘導体の、エイズの予防及び/又は治療用薬物の製造への使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−503609(P2013−503609A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527184(P2012−527184)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国際出願番号】PCT/CN2010/073124
【国際公開番号】WO2011/026351
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512054274)ジナン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】